μ受容体:MOP↑
- Morphineに結合するので、ギリシャ語の「m」に相当するμ受容体と呼ばれる。
アゴニスト | βエンドルフィン |
endomorphin-1 |
DAMGO =選択的μオピオイド受容体作動薬
[D-Ala2, N-MePhe4, Gly-ol]-enkephalin
H-Tyr-D-Ala-Gly-N-MePhe-Gly-OH |
アンタゴニスト | β-funaltrexamine |
- 1980年にGavril W Pasternakらがμ受容体を、μ1受容体と、μ2受容体の、2つのサブクラスに分類したサブタイプを分類した。*
μ1受容体:MOP1
- オピオイドペプチドとオピオイドアルカロイドの両方に等しく高い親和性を示す。
- 主に脊髄より上位レベルでの鎮痛、多幸感、掻痒感、縮瞳、尿閉に関与する。
- 鎮静作用やプロラクチン放出作用も知られている。
- μ1受容体はオピオイドに強い親和性があり、鎮痛に主に関与する。
- 少量のオピオイドは親和性の高いμ1受容体に優先的に結合する。
- μ1受容体拮抗薬:nanoxonazinc
|
μ2受容体
- オピオイドペプチドよりも、オピオイドアルカロイドに高い親和性を示す。
- 主に脊髄レベルでの鎮痛、鎮静、呼吸抑制に関わる。
- μ2受容体のその他の作用としては呼吸抑制、徐脈、血圧低下、多幸感、悪心、腸蠕動抑制、オッディの括約筋収縮、排尿障害、筋硬直、縮瞳などがあげられる。
- μ2受容体の親和性は、μ1受容体との親和性よりも弱ので、少量のオピオイドは親和性の高いμ1受容体に優先的に結合し、呼吸抑制は比較的起こりにくい。
- オピオイドの投与量が増えると、薬剤はμ2受容体を占めるようになり、呼吸抑制が起こりやすくなる。
- μ2受容体の特異的拮抗薬:D-Pro2-Endomorphin-1
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δ受容体 DOP↑
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κ受容体 KOP↑
- 世界初の選択的オピオイドκ受容体作動薬:ナルフラフィン:経口そう痒改善薬
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○シグマ受容体, σ受容体
- 現在σ受容体は、非オピオイド受容体、非ドーパミン受容体、非フェンサイクリジン受容体の独立した受容体として位置づけられている。
1976年 | William Robert Martin(P 1921〜1993)ら*は、
N-allyl-normetazocine(SKF-10047)の効果がμ受容体にもκ受容体にもよらないので、第3のオピオイド受容体の存在を示唆した。 |
| その後の研究から、σ受容体はオピオイド受容体から除外された。
- (-)選択性が知られているオピオイド受容体(→異性体)と異なり、SKF-10047の光学異性体のうち、(+)体が選択的に結合する。
- σ受容体への(+)SKF-10047の結合や、(+)SKF-10047の行動薬理学的作用の多くがオピオイド受容体拮抗薬であるnaloxoneやnaltrexoneによって拮抗されないことが報告された。
- プロトタイプのリガンドであるSKF-10047の薬理作用が、オピオイド受容体のアンタゴニストによって拮抗されない。
- [3H]SKF-10047結合に対してオピオイド受容体アンタゴニストが親和性を示さない。
|
1992年 | Remi Quirionがσ受容体には少なくとも2つのサブタイプ(σ1、σ2)があることを確認した。[PubMed] |
1996年 | Hanner(モルモットの肝とヒトの胎盤絨毛がん choriocarcinoma)がσ2受容体を単離精製、クローニングした。続いて、Seth et al.(マウスの腎, 1997)、Pan et al.(マウスの脳, 1998)、Prasad et al.(ヒトの脳, 1998)、Seth et al.(ラットの脳, 1998)らがσ1受容体↓をクローニングした。 |
- 223個のアミノ酸からなり、主に小胞体膜に存在し、活性化されると他の細胞内小器官や原型質膜に移行する。
- 内在性のニューロステロイドによって調整される細胞内受容体と考えられている。
- 不安感、幻覚、精神異常、鎮痛は弱い。
- 小胞体上のIP3受容体に直接連結し、小胞体からのカルシウム流出を増強する。
- リガンドによる受容体の細胞内移行は、作用の場を小胞体から細胞膜へシフトする働きを持つと推測される。
- 細胞膜へ移行後、カリウムチャンネルに結合し、NMDA受容体の活性、神経の興奮性を調節する。
- 記憶、学習過程の変調、ストレス、不安、うつ病、攻撃性、薬物依存症、および統合失調症、さらには神経保護作用との関与が指摘されている。
- 精神活性物質などの慢性投与でもたらされるシグマ受容体数の増加は、リガンド非依存的にシナプスやミエリン形成を促進し、細胞の形態学的変化を誘導する。
σ1受容体
- 1996年にσ1受容体のcDNAとゲノムが複数の動物種でクローニングされた。
- 分子量:25.3kDa 223個のアミノ酸からなる膜1回貫通型受容体
- 記憶、薬物耽溺、制吐作用、痛みの制御など多彩な作用に関連している。
- 主として小胞体に存在する。小胞体タンパク。
- σ1受容体研究の出発点は、SKF10047などのbenzomorphan類が起こす精神病様症状であった。しかし、σ1受容体への親和性の有するのは、benzomorphan類のうち右旋性の(+)体であり、benzomorphan類は、NMDA受容体のPCP結合部位への親和性を持つことがわかり、benzomorphan誘導性の精神症状の、PCP結合部位への作用である可能性がある。
- 近年開発されたσ1受容体選択性が高いリガンドを投与しても精神病症状は起こらない。
- 間接的にNMDA受容体を介してグルタミン酸神経系を制御する。
- 脳内では部位特異的に、神経細胞、グリア細胞内に発現する。
- ニューロステロイドに親和性が高く,神経の分化・新生などの神経可塑的なプロセスや、情動ストレス、認知機能や薬物依存などの高次脳機能に対して広範囲に関与する。
- DHEASやprogesteroneなどのニューロステロイドはσ1受容体を介して、シナプス可塑性(LTP)を著しく促進するだけでなく、脳虚血による形態的・機能的神経障害を保護する作用がある(Chen el al., Neuropharmacol 2006a, 2006b; Li et al, 2006)。
- 1993年に古典的シグマ受容体アゴニストの代表格である(+)-SKF-10,047に学習記憶障害改善作用が報告されて以来、新規シグマ1受容体アゴニストの創製と各種痴呆症モデルでの検討が実施され、現在ではシグマ1受容体サブタイプが学習記憶形成過程に重要な役割を果たしていることが明らかとなっている。
- 定型抗精神病薬(haloperidolなど)、コカイン、抗うつ薬(imipramineやfluvoxamineなど)などがσ1受容体に親和性を有することから、統合失調症の認知機能障害および精神病性(妄想性うつ病)に対してσ1受容体のアゴニストが治療薬になる可能性が考えられる。
- fluvoxamineは脳内のσ1受容体に親和性を示すが、paroxetineはσ1受容体に親和性が弱い。
- 細胞膜の脂質・糖脂質の分布を変化させることにより、成長因子・栄養因子の反応性を修飾し,効果を発現している可能性がある。
|
- 非オピオイド系鎮痛薬のペンタゾシンや多くの向精神薬がσ1受容体に結合することは知られており、認知機能改善、抗うつ作用などに関連するといわれている。
○カンナビノイド受容体 Cannabinoid receptor ←→カンナビノイド/内因性カンナビノイド
- カンナビノイドとは大麻(cannabis sativa)が含む多数の生理活性物質の総称。
- 大麻の加工品であるマリファナを多量に摂取すると、嗜好や感覚の異常、錯乱、幻覚、記憶障害が起こる。
- マリファナの有効成分である△9-THCがCB1受容体とTRPA1(ANKTM1)受容体に結合して起こる。
- オピオイド受容体と同様に、先ずカンナビノイドの受容体の存在が明らかにされ、その後、内因性カンナビノイドの機能がわかりだした。
- 1990年代になってから、CB1受容体とCB2受容体がクローニングされた。ヒトの場合,CB1受容体とCB2受容体の間には44%のホモロジーがある。
WA Devane 1988, cloning experiments of Matsuda et al., CB2 Munro
- 角化細胞に発現しているCB2受容体が、角化細胞からのβ-エンドルフィン放出を刺激し、β-エンドルフィンが神経終末のμ受容体に働いて、痛みを抑制する。[Ibrahim et al., PNAS, 2005, 102: 3093-3098]
| CB1受容体 | CB2受容体 |
| |
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発現部位 |
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中枢作用 |
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末梢作用 |
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中枢作用 |
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内因性リガンド |
- アナンダマイド/2-AG/NADA
- 少量のアナンダミドはCB1受容体に作用し、多量になるとTRPV1受容体にも作用する。
- 2-AGは、CB1受容体にも作用するが、親和性は低く、主にCB2受容体のリガンドとみなされている。
- NADAはCB1受容体とTRPV1の両方の内因性リガンドであると考えられている。
|
agonist |
- aminoalkylindole cannabinoid WIN 55,212-2(WIN-2)
| GW405833(Purdue),AM1241(Adolor)やPRS-211375(Pharmos) |
○タキキニン受容体 ←タキキニン/NK-1受容体拮抗薬
- 細胞膜7回貫通型
- Gq/G11と連関し、PLCを介したCaイオン動員機構。
タキキニン | 受容体 | 前駆物質 | Gタンパク | agonist | antagonist |
P物質(SP) | NK1 | α-プレプロタキキニン | Gq/11 | Substance P methylester | [D-Pro2, D-Tro7,9]-SP CP-96, 345 CP99994 |
ニューロキニン (neurokinin: NK) A | NK2 | β-プレプロタキキニン | Gq/11 | β-[Ala8]NKA4-10 | GR94800 GR159897 |
ニューロキニン (neurokinin: NK) B | NK3 | β-プレプロタキキニン | Gq/11 | GR138676 | SR142802 SB223412 |
- NK1受容体は脊髄後角のI層とIII層に多く存在し、II層にはほとんどみられない。
- NK1受容体のインターナリゼーションによる脱感作
- NK1受容体を持つニューロンを選択的に不活性化する物質→SP-サポリン
○CGRP容体 ←CGRP/CGRP受容体関連薬
- 血管平滑筋に発現していて、血管拡張に関与している。
- CGRP受容体は脊髄後角内に発現していると予想されるが、解析されていない。
- 薬理学的には、2つのsubtypeがある。
CGRP1受容体
- 髄膜・脳動脈平滑筋に発現している。
- 片頭痛の病態に重要である。
- 遮断薬:human CGRP8-37
- CGRP受容体はカルシトニン受容体様受容体(calcitonin receptor-like receptor:CRLR)と受容体活性調節タンパク1(receptor activity-modifying protein type-1:RAMP-1)のへテロダイマーで構成される。
- CGRP受容体はCRLRがRAMPに修飾されることにより機能することが知られている。
カルシトニン受容体様受容体(calcitonin receptor-like receptor):CRLR
- Gタンパク質共役型受容体
- CRLRの機能はRAMP-1により調節されている。
- CRLRはCGRP受容体とともに、アドレノメデュリン(AM)受容体のサブユニットでもある。
|
受容体活性調節タンパク(receptor activity-modifying protein):RAMP
- 1~3まで知られている。
- RAMP-1は1回膜貫通型タンパク
- RAMP-1はCRLRと共に CGRP受容体を構成する。
- RAMP-1は片頭痛におけるCGRPのactivityと相関していて、その活性化はcAMPの上昇を伴う。
- RAMP-2は同じCRLRと結合し、AM受容体を構成する。
| |
CGRP2受容体 |
VIP容体とPAC容体 ←→ VIP/PACAP
- VIPとPACAPは、一部同じ受容体に作用する。
受容体 | Gタンパク | |
VPAC1(PAC2/VIPl) | Gs | - VPAC1とVPAC2はPACAPとVIPに対してほぼ同程度の親和性を示す。
- VPAC1とPACAP3/VIP2はACとカップルする。
- 活性化されたPKAは、NMDA受容体をリン酸化する。
|
VPAC1(PAC3/VIP2) | Gs |
PAC1 | Gs | - PAC1型は、PACAPに対してVIPよりも、100倍から1000倍ほど高い親和性を示すPACAP特異的受容体である。
- PAC1はcAMPによる PKA経路とカップルしていて、PLCを活性化し、細胞内カルシウムを動員する。
- 活性化されたPKAは、NMDA受容体をリン酸化する
|
○ソマトスタチン容体 ←ソマトスタチン
- 細胞膜7回貫通型
受容体 | Gタンパク | | agonist | antagonist |
sst1 | Gi | 脊髄後角 | sst des-Ala1,2,5 | |
sst2 | sst2A | Gi/o | 脊髄後角 DRGにはsst2Aが発現 | Octreotide, seglitide BIM23027 | Cyanamid154806 |
sst2B |
sst3 | Gi/o | 脊髄後角 | BIM23052, NNC269100 | |
sst4 | 不明 | | | |
sst5 | 不明 | | | |
- ラット脳におけるオートラジオグラフィーによる検討によると、ソマトスタチン受容体は大脳皮質・海馬・扁桃体などに多い。
- うつ病患者では、髄液中のソマトスタチン濃度が低下しているという報告がある。
○CCK受容体 ←→CCK
- 細胞膜7回貫通型
受容体 |
|
Gタンパク |
agonist | antagonist |
CCK-A =CCK1 |
主に消化管に存在する |
Gq/11 |
CCK8>>gastrin=CCK4, A71623 | Devazepide, lorglumide グルタミン酸誘導体のロキシグルミド |
CCK-B =CCK2 |
主に神経系に存在 |
Gq/11 |
CCK8>=gastrin=CCK4 |
CI988, L365260, YM022. PD134,308 |
○ガラニン受容体 ←→ガラニン
- 細胞膜7回貫通型
受容体 | Gタンパク | agonist | antagonist | |
GalR1 | Gi | | | 損傷時は抗侵害性 |
GalR2 | Gq | | | 正常時は侵害受容性 |
非選択的 | | M35 | |
○NPY受容体 ←→ニューロペプチド Y
- 細胞膜7回貫通型
受容体 | Gタンパク | agonist | antagonist |
Y1 |
Gi/o | [Pro34]NPY NPY13-16 | GR231118 SR120107A |
Y2 |
Y4-Y6 |
Y2 | Gi/o | NPY13-36, NPY18-36 | |
- 選択的Y1受容体アゴニストの脳室内投与による抗不安効果、Y1受容体のアンチセンスヌクレオチドを用いたY1受容体発現抑制に伴う不安増大から、NPYの抗不安作用は扁桃体中心核のY1受容体を介して発揮されると考えられている。
- Y1受容体は免疫細胞(Bリンパ球、Tリンパ球、樹状細胞、マクロファージ、肥満細胞、ナチュラルキラー細胞など)にも発現している。
○アセチルコリン受容体 acetylcholine receptor ←→アセチルコリン
/発痛物質/関連物質/薬/ボツリヌス療法/抗コリン作用
┏ムスカリン受容体---副交感神経支配の効果器
┗ニコチン受容体---交感神経節、副交感神経節、神経筋接合部
ムスカリン受容体 muscarinic acetylcholine receptor ←→ムスカリン/抗コリン作用/関連薬/ニコチン受容体/DREADD
- 構成するアミノ酸の違いにより5種類(m1〜m5)の遺伝子サブタイプが確認されている。
- 薬理学的にはM1、M2、M3はそれぞれm1、m2、m3に対応し、m4は M1とM2の中間の性質を示す。
- m4、m5受容体に関しては存在していることは確認されているがまだ分布、生体内の役割については明らかになっていない。
- m1、m3、m5サブタイプは百日咳毒素非感受性のGタンパク(Gq/11)と共役し、ホスホリパーゼCを活性化することで細胞内Ca2+濃度の上昇をもたらす。
- m2とm4サブタイプは百日咳毒素感受性のGタンパク(Gi/o)と共役して、アデニル酸シクラーゼの抑制を起こし、細胞内のcAMP濃度を低下させる。
ムスカリン性カリウムチャネルmuscarinic potassium channel ←→GIRK>内向き整流性カリウム
- 2つのGIRK1と2つのGIRK4で構成されたヘテロ4量体である。
- 心臓に存在しているムスカリンカリウムチャネルは、副交感神経の緊張がM2ムスカリン受容体を活性化し、心拍が低下させる。
- ムスカリン感受性K+電流(IKACh):心房筋細胞、洞房結節細胞において副交感神経興奮時にムスカリン受容体が刺激されたとき活性化するアセチルコリン感受性K+電流
|
ムスカリン様作用 ←→抗コリン作用/ムスカリン受容体関連
- 副交感神経支配効果器官に対する作用
- 血圧下降、血管拡張
- 徐脈(M2)、気管支収縮
- 腺分泌促進、消化管収縮、消化管運動促進、縮瞳(瞳孔括約筋の収縮)、尿量増加
|
- 上田泰己先生のグループはChrm1とChrm3遺伝子が欠損したマウスは通常のマウスよりも睡眠時間が数時間短く、レム睡眠がほとんど検出できないことを発見した。
ニコチン受容体 Nicotinic acetylcholine receptor:nAChR
←→ニコチン/関連薬/関連物質/ムスカリン受容体 参考1
- イオンチャネル一体型リガンド作動性受容体
- ヒトにおいては、6種(α1-7,α9-10,β1-4,δ,ε,γ)のサブタイプが報告されていて、それらがホモもしくはヘテロ五量体を形成して、その組み合わせによってそれぞれの構造に特異的な薬理学的特性を示す。
- ニコチンによる依存は腹側被蓋野のα4β2ニコチン性アセチルコリン受容体が関与する。
- タバコを吸うと、数秒以内に肺から脳内にニコチンが入って、α4β2ニコチン受容体と結合し、ドーパミンが放出される。これによって、喫煙者は快感、満足感を得る。ニコチンが減ってドーパミンが出なくなると、同じ快感、満足感を得たいために、またタバコを吸いたくなる。 ←→varenicline(禁煙補助薬)
- マクロファージに神経性ニコチン受容体(NN)が存在することが明らかとなり、免疫系において炎症調節因子として有用に働いている。
- 迷走神経から放出されるアセチルコリンは、マクロファージのα7型ニコチン性アセチルコリン受容体のを介して、TNF遊離抑制を介して炎症の拡大を防いでいる。 ←参考1
- 中枢に存在するニコチン性アセチルコリン受容体は、記憶・学習・認知などの脳神経機能に関与すると共に、抗不安作用や鎮痛効果、神経保護効果など多様な性質を有することが知られている。
- 脚橋被蓋核にニコチンを注入すると鎮痛効果が現れ、ムスカリン受容体アンタゴニスト(pirenzepineなど)を静注するとその効果が拮抗される。
- 橋網様体や背側縫線核にカルバコールを注入すると鎮痛効果が現れる(背側縫線核にはコリン作動性ニューロンや繊維終末は確認されていないが。)
ニコチン様作用
- 最初、骨格筋の攣縮や神経節伝達の増強、後に、脱分極性阻害薬として働き、神経伝達を抑制し、筋力低下を起こす。
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中枢作用
- 脳内ムスカリン様受容体に作用し、不安、振戦、運動失調、言語障害、錯乱、幻覚が現れ、昏睡、痙攣、死に至ることがある。
- 緑内障、麻痺性イレウス、膀胱アトニー、重症筋無力症の診断と治療
|
○ドーパミン受容体
←→ドーパミン/作動性神経/快による鎮痛系/トランスポーター/薬/薬物依存/パーキンソン病
- ドーパミンD受容体はGタンパク質に結合するGタンパク質結合受容体のファミリーで、下流の因子を活性化または抑制する働きを持っています。
受容体 | Gタンパク | |
D1受容体 | Gs |
AC↑ | - 中枢神経系で最も豊富なドーパミン受容体
- 腎血管や腸間膜動脈に存在し、血管拡張をもたらす。
- 線状体背側部に発現がみられ、黒質に投射する。
- 神経細胞の成長を調節し、いくつかの行動反応に関係している。
- 海馬に対するドーパミン神経毒や受容体アゴニストの注入によって、空間記憶の保持や作業記憶課題が変化する。
- D1受容体欠損マウスでは恐怖記憶の消去や空間学習の障害が生じる
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D2受容体 | Gi/o | AC↓ |
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D3受容体 | Gi/o | AC↓ |
|
D4受容体 | Gi/o | AC↓ |
- 統合失調症やパ−キンソン病の治療薬の標的
- Seemanらは1993年に、統合失調症死後脳の線条体ではD4受容体が著しく増加していることを示した。
- D4受容体は認知や情動と関連している大脳皮質や辺縁系に多く存在し、非定型抗精神病薬であるクロザピンと親和性が高いことから性格との関係が注目されてきた。
- D4受容体を規定する遺伝子の第3エクソン中には48塩基対を繰返し単位とする反復配列があり、個人によってその繰返し数に2〜12の多型が存在することが分かり、性格テスト結果との関連性解析で繰返し数が多いと新規性希求が強いことが明らかになった。エクソン中の多型は、遺伝子から転写・翻訳される受容体タンパクの構造変化をもたらしその機能に影響を与えるため、本多型が性格を規定する要因であろうことが推測される。
- D4受容体遺伝子とドーパミントランスポーター遺伝子(DAT1)はADHDとの関連が報告されている。
- 統計的には4回の繰り返しをもつ人が多いことがわかっている。新奇性探求の強い人は7回の繰り返しをもつことが多いといわれている。
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D5受容体 | Gs | AC↑ |
- 脳の辺縁領域の神経細胞で見られます。
- D1サブタイプよりも10倍高いドーパミン親和性をもつ。
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○エンドセリン受容体 ←→エンドセリン
- 柳沢正史先生(テキサス大学)が筑波大大学院当時に、血管収縮因子としてのエンドセリンを同定(Nature,1988.PNAS,1988.)、エンドセリンのペプチド異性体、エンドセリン受容体、酵素変換エンドセリンを次々と同定、機能解析(PNAS,1989.Nature,1990.など)した。
- エンドセリンには3種類(ET-1、ET-2、ET-3)、エンドセリン受容体は2種類あり、両者の構造は非常に類似していますが、3種類のエンドセリンに対する親和性は異なる。
受容体 | ETA受容体 | ETB受容体 |
エンドセリンとの親和性 | ET-1≧ET-2>>ET-3 | ET-1=ET-2=ET-3 |
Gタンパク | Gq PLC↑ |
中枢神経系 | 中脳(血圧調節) | + | ++ |
アストロサイト(増殖) | | +++ |
血管系 | 大動脈平滑筋(収縮) | +++ | + |
大静脈平滑筋(収縮) | | +++ |
内皮細胞(NO 遊離) | | +++ |
心筋 | 陽性変力作用 | ++ | + |
陽性変時作用 | ++ | + |
冠血管(収縮) | +++ | + |
血管以外の平滑筋 (主に収縮) | 気道,腸管,膀胱, 子宮,輸精管など | ++ | |
肺組織 (クリアランス受容体) | ++ | + |
内分泌組織 | 副腎皮質 (アルドステロン合成・分泌) | ++ | +++ |
脳下垂体前葉 (ACTH、プロラクチン分泌) | + | + |
脳下垂体後葉 (バソプレシン分泌) | + | ++ |
卵巣 (女性ホルモンの合成促進) | ++ | ++ |
腎臓 | 輸入・輸出細動脈(収縮) | +++ | + |
尿細管(Na+排泄,利尿 | | +++ |
メサンギウム細胞(収縮) | | +++ |
○ニューロテンシン受容体:NTR、NTSR ←→ニューロテンシン
- Gタンパク質共役受容体:GPCR
- 脳では、NTSはドーパミン作動系の機能、オピオイド非依存性鎮痛作用、食物摂取の抑制を調節しており、その一方、腸では広範な消化過程を調節している。
- binding assayにより高親和性受容体および低親和受容体の2種類の存在が知られている。
- NTR1、NTR2、NTR3
- 高親和性受容体は424アミノ酸からなるGタンパク共役型膜7回貫通型受容体である。
- IP3/DGシステムを介して,細胞内カルシウムイオン濃度とPKC活性を調節する。
- NTSR1アゴニスト:PD149163、NTSR1アンタゴニスト:SR48692
○ガストリン放出ペプチド(GRP)受容体 ←→ガストリン放出ペプチド
- ホスホリパーゼCシグナル伝達経路を活性化する、グリコシル化された7回膜貫通型Gタンパク質共役受容体:GPCR
- GRPRの選択的アンタゴニストであるRC-3095は、関節炎や敗血症モデルにおいて消炎作用を有することが最近見出されている。
- 肺、結腸、前立腺などの多くのがんで異常に発現している。
- 自閉症と複数の外骨腫を持つ個人は、ガストリン放出ペプチド受容体遺伝子内にある染色体8と染色体Xブレークポイントの間でバランスの取れた乗換えを持っている。
- 脊髄後角に発現し、かゆみを特異的に伝達する。
- エストロゲンが脊髄において、ガストリン放出ペプチド受容体神経を活性化することで引っ掻き行動を制御する。
○オレキシン受容体 ←→オレキシン
- オーファンGタンパク質共役型受容体のリガンド探しから、桜井武 and 柳沢正史らが同定した。
- オレキシン受容体にはオレキシン1受容体 OX1R とオレキシン2受容体 OX2R の2種類のサブタイプが存在し、いずれもGタンパク共役型受容体(GPCR)である。
OX1R | |
OX2R | - 内側中隔核 medial septal nucleus、対角帯核 nucleus of the diagonal band、海馬CA3野、視床下部弓状核、視床下部外側 lateral hypothalamus、結節乳頭核などに優位に発現している。
- OX2RではオレキシンAとオレキシンBに対して同様の親和性を持っている。
|
- 両受容体のアミノ酸配列の相同性は64%である。また、異種動物間のオレキシン受容体の相同性が高く、ヒトとラットのOX1RとOX2Rの相同性はそれぞれ94%と95%である。
- オレキシン受容体は視床下部に特異的に発現する受容体として発見されたが、のちに腸筋層間神経叢や腸の内分泌細胞、副腎など種々な末梢組織にも分布していることが判明した。
- 脳においても、オレキシン作動性神経が投射している部位にオレキシン受容体が見出されている。
- オレキシン受容体発見当初はその細胞内応答として細胞内Caイオンの増加が認められている。その後、細胞内シグナルに関する多くの研究成績が報告されてきているが、オレキシン受容体とGタンパクとの共役様式はかなり複雑で詳細は解明されていない。
- Zhuらは、フォルスコリン刺激によるcAMPの蓄積反応実験からOX1RはPTX-insensitiveなGタンパクと独占的に共役するが、OX2RはPTX-insensitiveとPTX-sensitiveの両タイプのGタンパクと共役できると報告している。(PTX:pertussis toxin)
- ヒトの胎仔副腎皮質におけるOX2Rは GsとGiの両方と共役するが、成人になるとGiが減少してGqとの共役が増加するという報告もある。
- Karterisらの最近の研究では、ラットを絶食させた場合とそうでない場合とでは、オレキシン受容体と優先的に共役するGタンパクの種類が異なってくることを報告している。絶食させたラットの副腎ではOXRとGiとの共役が増加し、視床下部ではGq, Gs, Goとの共役が増加した。
- カンナビノイド1受容体(CB1R)とOX1Rがヘテロ複合体を形成するという報告や、OX1RとOX2Rがヘテロ複合体を形成するという報告もある。
○サイトカイン受容体 cytokine receptor ←→サイトカイン
・IL-1受容体 ←→IL-1/薬 参考1
- IL-1は細胞膜表面のIL-1受容体を介して作用することが知られている。
- IL-1受容体にはタイプI(IL-1RI)及びタイプII(IL-1RII)の2つのサブタイプが存在する。これらの受容体は細胞膜を1回貫通する構造をとっていて、細胞外ドメインと細胞内ドメインに大きく分けて考えられる。細胞外ドメインは免疫グロブリン様構造を有する一方、細胞内ドメインの構造はToll様受容体と相同性が高く、Toll/IL-1受容体相同領域(TIRドメイン)と呼ばれる。
- IL-1RIIは細胞内ドメインをほぼ欠損しているためシグナル伝達には関与しないがIL-1との結合能は持っているため、IL-1とIL-1RIとの結合を阻害しむしろ抑制的に働く(以降、細胞内ドメインを持つIL-RIをIL-1受容体と表記する)。
- IL-1に対する可溶性受容体が存在することが明らかになっていて、IL-1をトラップすることによりシグナル伝達を阻害している。
- IL-1受容体拮抗体(IL-1Ra):アナキンラ(anakinra, 商品名キネレット)
Ⅱ型IL-1受容体:IL-1RII、IL-1R2
- IL-1受容体のひとつ。
- 最初に発見されたデコイ受容体はIL-1R2
- IL-1R2は機能的な細胞内領域を欠損していて、細胞内へシグナルを伝達することができない。このことから、IL-1R2はIL-1に対するデコイ受容体として機能すると考えられている。
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・IL-2受容体←→IL-2 参考1
- IL-2の受容体はα鎖(CD25、55kDa、251アミノ酸残基)、β鎖(CD122、75kDa、525アミノ酸残基)及びγ鎖(CD132、64kDa、369アミノ酸残基)の3つの細胞膜表面タンパク質から構成される。
- これらのタンパク質複合体がIL-2分子と非共有結合を形成し、細胞内へのシグナル伝達を行う。
- β及びγ鎖はタイプI インターロイキン受容体ファミリーに属する。受容体タンパク質は二量体を形成して細胞内して細胞内へシグナルを伝えるが、通常は単量体で細胞膜上を自由に移動している(いわゆる流動モザイクモデル)。しかし、リガンドが接近すると受容体タンパク質は二量体を形成して受容体として機能しうる状態になる。
- IL-2受容体α鎖は細胞内ドメインが極端に短くシグナル伝達には関与しないが、β鎖は非受容体型チロシンキナーゼであるJAK1と会合している。
- IL-2とIL-15ではIL-2受容体β鎖を共有しており、これらのサイトカインは類似の生理作用を示す。β鎖と同様にγ鎖もJAK3と複合体を形成しており、シグナル伝達に必須である。受容体と会合するこれらのキナーゼは受容体の細胞外ドメインにIL-2が結合することにより活性化してMAPキナーゼ経路、PI3キナーゼ-Akt経路及びJAK-STAT経路の活性化を行う。
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・IL-6受容体(CD126)←→IL-6
- 膜結合型IL-6受容体 IL-6Rの他にヒトの血清や尿に存在する分泌型の可溶性IL-6受容体(Soluble IL-6 Receptor、sIL-6R)が存在する。
- 分泌型は膜結合型受容体の細胞内領域及び膜貫通領域を除去した構造をとり、分泌型受容体も膜結合型受容体と同程度のIL-6親和性を示す。
- 分子量130kDaの糖タンパク質であるGP130(CD130)と会合して細胞内にシグナルを伝える。
- 近年ではIL-27及びIL-31もIL-6ファミリーに属すると考えられている。また、IL-6は脂肪細胞から分泌され、脂質代謝に関与するアディポカイン Adipokine と呼ばれるグループに属する。
- 関節の滑膜細胞などのIL-6受容体を欠いた細胞もgp130は有しており、IL-6と会合したsIL-6Rがgp130と相互作用することによってIL-6に対する反応性を獲得している。
Glycoprotein 130:GP130 =IL6ST、CD130
- 分子量130kDaの糖タンパク質、IL-6ファミリー
- IL-6受容体はgp130と会合して細胞内にシグナルを伝える。
- gp130はIL-6受容体以外にもIL-11受容体をはじめ、白血球遊走阻止因子 :LIF、オンコスタチンM:OSM、毛様体神経栄養因子 Ciliary Neurotrophic Factor:CNTF 、カルジオトロフィン-1(CT-1)、CLC(カルジオトロフィン様サイトカイン)が含まれ、炎症・免疫反応や心臓発生、受精に関与している。
- gp130の細胞内領域には、I型サイトカイン受容体スーパーファミリー間で保存された、領域Box1, Box2構造が存在し、この部分にチロシンキナーゼJAKファミリーに属するJAK1, JAK2, TYK2が構成的に会合することが明らかとなっている。刺激により、gp130が二量体を形成するとともに、gp130に会合するJAKも相互接近し、JAKどうしをチロシンリン酸化することにより活性化するものと考えられている。
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デコイ受容体、デコイレセプター decoy receptor
- 特定のサイトカインなどと結合するが、結合しても何もシグナル伝達を行わない受容体
- シグナル伝達を行う本来の受容体のリガンドを奪う。
- 最初に発見されたデコイ受容体はIL-1RII
- 骨粗鬆症の抑制作用を持つTNF受容体スーパーファミリーのひとつであるサイトカインのosteoprotegerin:OPG
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・ケモカイン受容体 chemokine receptor: ←→ケモカイン
- ケモカインをリガンドとする受容体
- 7回膜貫通Gタンパク質共役型レセプター
- ヒトには現在までに18個のケモカイン受容体の存在が報告されてる。血球には複数種類のケモカイン受容体が発現する。
- 単球/マクロファージには,CCケモカインに対するレセプターであるCCR1?・CCR2・CCR5・CCR8?, CXCケモカインに対する受容体であるCXCR1・CXCR2・CXCR4と、CX3CL1?に対するレセプターであるCX3CR1?が発現していることが報告されている。
ケモカイン受容体CXCR1 ←→CXCケモカイン
- Holmesのグループが1991年にCXCR1遺伝子をクローニングした。
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ケモカイン受容体CXCR2
- Murphyのグループが1991年にCXCR2遺伝をクローニングした。
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ケモカイン受容体CXCR4
- ケモカインCXCL12の単量体と二量体の両方を認識し、ケモカインファミリーのリガンドバイアスの特徴をよく示している。
- 間質細胞由来因子-1:SDF1はケモカイン受容体CXCR4のリガンド
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・TNF受容体 Tumor necrosis factor receptor:TNFR ←→腫瘍壊死因子:TNF/細胞死受容体
- TNFの生理作用は、赤血球を除いた生体内の細胞に広く存在しているTNF受容体を介して発現する。
- TNFRファミリーは神経成長因子受容体と細胞外領域に相同性を有し、TNF/NGF受容体ファミリーとも呼ばれる。
- 多くの細胞の表面には、p55Rとp75Rという2種類のTNFαレセプターが存在する。TNFαは標的細胞表面のp55R・p75Rを介して細胞を刺激し、MMP-1,3,COX-2など関節破壊や炎症に関わる物質の産生を促す。また細胞膜表面のp55R・p75Rも酵素的に切断され可溶性TNF受容体としてTNFαの調節因子として機能する。
- ヒトのTNF受容体は2種類あり、異なる作用をする。アポトーシスを誘導するデスドメインを持つかどうかで区別される。
- エタネルセプト:完全ヒト型可溶性TNFα/βレセプター製剤
@リウマチのための生物学的製剤
TNFR1 p55R TNF‐R55 |
Tumor necrosis factor receptor 1:TNFR1- 全身の多くの組織に構成的に発現している。分子量55kDa
- TNFR1はデスドメインを持ち、いくつかのタンパク質がデスドメイン同士で結合しあって、カスパーゼの活性化からアポトーシス誘導と、TRAF2からのNF-κB活性化を引き起こします。
- TNF非存在下においてはSODD(silencer of death domains)と呼ばれる分子が恒常的にTNFR1のデスドメインと会合しており、TNFR1を介するシグナルを負に制御していると考えられている。
- TNFがTNFR1に会合することにより受容体の立体構造の変化が誘導され、SODDが遊離しTRADDと呼ばれるアダプター分子がリクルートされてくる。受容体に会合したTRADDはFADD、RIPTRF2と呼ばれる分子群をリクルートし、それぞれの分子がアポトーシス誘導、転写因子の1つであるNF-κBの活性化をもたらす。
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TNFR2 p75R TNF‐R75 |
Tumor necrosis factor receptor 2:TNFR2- 低親和性神経成長因子受容体
- TNFによる主な生理作用はTNFR2が担っている。分子量75kDa
- TNFR2に対する親和性はTNFR1に対するものよりも5倍高い。
- 何らかの刺激を介して免疫系の細胞に発現する誘導型の受容体である。
- TNFR2はデスドメインを持っておらず、TNF-αの結合によりTRAF2のルートのみが活性化されて、NF-κBが活性化される。
- p75Rは神経栄養因子が結合する低親和性受容体でもある。
- 軸索の伸展を制御する受容体
- 神経栄養因子をリガンドとする受容体であるが、TNF受容体あるいはCD95(Fas/Apo-1)などの属する受容体ファミリーの一員であり、Trk受容体とは極めて異なった性質を持っている。
- p75はTrks受容体と協同して高親和性を支える分子と長い間考えられてきた.が、NGFとBDNFの前駆体であるプロNGFとプロBDNFも細胞外に分布されてp75に高親和性で結合し,結果としてアポトーシスを引き起こすことが発見され,大きな反響を呼んだ。
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○アンギオテンシン受容体 angiotensin receptor: AT受容体 ←→アンギオテンシンII/アンジオテンシンII受容体拮抗薬
- 機能が拮抗するAT1とAT2の2種類のサブタイプがある。
AT1受容体 | AT2受容体 |
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- 分布:血管平滑筋、肺、肝臓、腎臓、副腎、卵巣、脾臓、脳
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- 各組織において血圧を維持する方向に働く。
- 血管に対しては血管収縮作用、血管壁肥厚作用、動脈硬化作用
- 心筋には心筋収縮力増強作用、心筋肥大作用として作用する。
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- 特に組織の損傷時に発現が亢進するとされている。
- 各組織において血圧降下作用、血管平滑筋増殖抑制作用、アポトーシス促進作用などを示す。
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○Mas-related G-protein coupled receptor: MRGs
=アンギオテンシン(1-7)受容体
←→Ang-(1-7)
- mas-1遺伝子によってコードされるGタンパク共役型受容体。
- Santosらは、オーファンGタンパク質共役型受容体のMasがアンジオテンシン-(1-7):Ang-(1-7)の機能的受容体であり、Ang-(1-7)活性の分子的基盤となることを突き止めた。
- sensory neuron-specific receptors: SNSR
- ホスホリパーゼCの活性化によりイノシトールリン酸代謝回転を促進し、生じたIP3が小胞体に作用してCa++の増加をもたらす。
○Mas-related G-protein coupled receptor member D: MRGPRD
- Beta-alanine receptor = G-protein coupled receptor TGR7
- 感覚神経の無髄線維に優位に存在する。
- IB4(+)ニューロンはMrgprd(+)である。
- ATP感受性イオンチャネルのP2X3受容体に発現する。
- 皮膚の角層や真皮、角化細胞と連絡する感覚神経に局在する。
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○血管内皮細胞増殖因子受容体 Vascular Endothelial Growth Factor Receptor:VEGFR
- 受容体型チロシンキナーゼの一種であり、リガンドであるVEGFは血管内皮細胞の増殖・遊走の促進、血管透過性の亢進、単球・マクロファージの活性化などを引き起こすが、VEGFRはこれらの作用発現に関与している。
- VEGFRにはVEGFR-1、VEGFR-2、VEGFR-3の3種類に加えて、可溶性VEGFR(Soluble VEGFR)としてsVEGFR-1、sVEGFR-2およびsVEGFR-3が知られている。
- VEGFR-1およびVEGF-2は血管内皮細胞に発現し、血管新生の過程において中心的な役割を担っているが、VEGF-3はリンパ管に発現して、その発生に関与している。
- 細胞膜タンパク質であるニューロピリンがVEGF-Aの選択的スプライシング産物であるVEGF165に対して結合能を持つことも報告されている。
○ニューロピリン受容体 Neuropilin:NRP
- 分子量約130kDaの膜貫通型タンパク質であり、VEGF-Aの受容体として血管内皮細胞に発現していることが発見された。
- 血管において、ニューロピリン1はVEGF-Aと結合するとVEGFR2のキナーゼ活性を増強し、血管新生や脈管形成・血管透過性の亢進を促進する。
- ニューロピリン1およびニューロピリン2は VEGF-A165の受容体としても作動する。
- ニューロピリン1はVEGF-A165だけでなく、Sema3Aに対する共受容体として作用する。
- 分泌型のクラス3セマフォリン:Semaには7つのサブタイプが同定されていて、セマフォリン3E以外はニューロピリン1、あるいはニューロピリン2を直接の受容体とする。
- ニューロピリン1、ニューロピリン2はプレキシンAと複合体を構成し、クラス3セマフォリンの機能的な受容体を形成する。
- NRP1は血管だけでなく腫瘍にも発現しており、非小細胞肺がん、神経膠芽腫、大腸がん、卵巣がん患者の疾病組織において高発現していることが確認されている。
○プレキシン受容体 Plexins
- プレキシンはセマフォリンに結合し、ニューロンの発達、免疫応答、その他の過程を調節するシグナルを伝達する細胞表面受容体である。
- プレキシンを介するシグナル伝達は、R-RasおよびM-Rasに対して特異的なグアノシントリホスファターゼ(GTPアーゼ)活性化タンパク質(GAP)の活性に依存することが提唱されている。
- プレキシンのGAP活性のこのような活性化には、セマフォリンがプレキシンの細胞外ドメインに結合するのと同時に、Rho GTPアーゼであるRac1またはRnd1がプレキシンの細胞質領域に結合する必要がある。
- プレキシンはA-Dの四つのサブファミリーに分類される。
- N末端はセマフォリンと同様にセマドメインとなっており、それ以外の細胞外ドメインも各サブタイプでほぼ共通である。
- 立体構造の解析から、セマフォリンとプレキシンのセマドメインは七枚の羽のようなユニットからなるβプロペラ構造を持っていることが明らかとなった。
- セマフォリンとプレキシンの結合はお互いのセマドメイン同士を介して行われる。セマフォリン3サブファミリーは直接プレキシンと結合しないが、ニューロピリンとの結合を介してプレキシンAのセマドメインと相互作用する。プレキシンの中には、膜貫通型チロシンキナーゼや免疫グロブリンスーパーファミリー等と会合するものがある。これらの分子はプレキシンによる情報伝達を修飾する役割を担っている。
○血小板膜糖タンパク質受容体 glycoprotein ←→血小板膜糖タンパク/血小板/薬 参考1/2
- 血小板膜糖タンパク(glycoprotein:GP)に対する受容体
GPIb受容体(glycoprotein Ib-V-IX受容体)
- 血小板膜糖タンパクGPIb/IX/V複合体は一次止血においてはじめに働く膜受容体
- 血管壁が損傷すると、血管内皮細胞下組織のコラーゲンが露出し、コラーゲンに、血漿中のフォン・ウィルブランド因子(von Willebrand因子:vWF)が結合する。このvWFに、血小板がGPIb受容体を介してつながり、血管内皮細胞下組織に粘着して停滞する。
- この粘着を契機に血小板は活性化され血栓が形成される。
- von Willebrand因子は、GPIb受容体だけではなく、GPIIb/IIIa受容体のα鎖を介しても、結合する。
- GP I b/IV/V複合体が欠損するとBernard-Soulier 症候群(BSS)と呼ばれる、巨大血小板を伴う出血性疾患となる。
- 細動脈に相当する高ズリ速度(1,000-10,000s-1)の状態では血小板の粘着、凝集はVWF-GP I b相互作用で始まり、ADPによる活性化や活性化 インテグリンαIIbβ3とフィブリノゲンの結合等が関与するが、高度狭窄細動脈や狭窄冠状動脈で見られる極めて高いズリ速度下(10,000-40,000s-1以上)では血栓形成はVWF-GPIb相互作用にのみ依存しており血小板の活性化も必要無いことが明らかとなった。
- 出血のリスクの少ない抗血小板薬のターゲットしてVWF-GPIb軸は注目を集めている。
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GPIIb/IIIa受容体(glycoprotein II b/III a、αIIbβ3)
- 血小板膜糖タンパクGPIIb/IIIa(別名インテグリンαIIbβ3)は血小板凝集に必要不可欠な分子であり、GPIIb/IIIa受容体はα鎖を介してvWFと結合し、γ鎖を介してフィブリノゲンと結合する。
- 血小板におけるフィブリノゲンおよびvon Willebrand因子の受容体であり、血栓形成の最終段階である血小板凝集に必要不可欠である。
- 接着タンパク受容体ファミリーであるインテグリンスーパーファミリーに属し、GPIIb(αIIb)とGPIIIa((β3)が Caイオン依存性に1:1の比率にて複合体を形成している。
- 血小板あたり約80,000分子と最も豊富に存在する接着タンパク受容体である。
- GP II b/IIIaは細胞を接着させるだけでなくシグナル伝達分子として機能しており、この分子を介して細胞内から細胞外へ(inside-outシグナル)、また細胞外から細胞内へ(outside-inシグナル)と、シグナルを双方向に伝達する。
- 血小板上のGPIIb/IIIaは通常非活性化状態にあり、活性化シグナル(inside-outシグナル)により活性化型に構造を変え、接着タンパク受容体として機能する。
- GPIIb/IIIaの先天的な欠損症がGlanzmann(グランツマン)血小板無力症である。
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○CRF受容体 ←→CRF/薬 →参考1
- ストレス等に対応している。
- Gタンパク共役型受容体
1型CRH受容体 type 1 CRHR-1 | - 急性ストレスにする。
- 特異的なリガンド:Urocortin(UCN)が1996年に哺乳類で発見された。マウスウロコルチン3 は38アミノ酸残基
- CRFは室傍核と孤束核や迷走神経背側核にあるCRF type1受容体を介して、下部消化管(結腸)の運動を亢進させる。
←→過敏性腸症候群
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2型CRH受容体 type 2 CRHR-2 | |
○パターン認識受容体 Pattern Recognition Receptors: PRR
- Toll様受容体(TLR)を含むパターン認識受容体は、特定の感染性の微生物から放出される病原関連分子パターン(pathogen- associated molecular pattern:PAMPs)、ならびに損傷を受けた細胞またはアポトーシス性細胞から放出される損傷関連分子パターン(damage-associated molecular pattern:DAMP)によって活性化される。
- 細胞質や核内にもPAMPの認識分子が存在し、RLRs (RIG-Ⅰ,MDA5,LGP2)、NLRs(NOD1,NOD2,NALP3など)などが同定されている。これらはTLRsとともに、PRMs(pattern-recognition molecules)とも呼ばれる。
- 種々のPRMsは特有のシグナル経路を活性化し、異なった細胞応答に至る。PRRsによるPAMPの重複認識は免疫応答を多様化し、種々の免疫エフェクター細胞の誘導に深く関与する。
Toll様受容体 Toll-like receptor:TLR →参考1/2/3
- 「Toll」(ドイツ語):「狂った」という意味
1980年代 | Tollはショウジョウバエで正常な発生(背腹軸の決定)に必要な遺伝子として発見された。 |
1996年 | Jules A. Hoffmann(2011年 ノーベル生理学医学賞受賞者)のグループが、Tollは発生に関わるだけでなく、感染防御に極めて重要な役割を果たしていることを明らかにした。 |
1997年 | JanewayのグループがショウジョウバエのTollのヒトホモログ(human Toll; TLR4)の存在を報告し、Toll-like receptorと命名した。 |
1998年 | Bruce Beutler(2011年 ノーベル生理学医学賞受賞者)のグループ哺乳類のToll様受容体の一つであるTLR4が哺乳類LPS受容体複合体の膜通過成分であることを実証した。 |
- 動物の細胞表面にある受容体タンパク質
- パターン認識レプター
- 10種異常のToll様受容体ファミリーが見つかっていて、病原体認識を認識する。
- 動物の細胞表面にある受容体タンパク質で、種々の病原体を感知して自然免疫(一般の病原体を排除する非特異的な免疫作用)を作動させる機能がある。
- 自然免疫系では、マクロファージなどの細胞表面にあるToll様受容体ファミリーが細菌やウイルスなどの病原体を認識し、これをきっかけに様々なシグナル伝達が起こり、やがて病原体を攻撃する獲得免疫系の活性化など種々の免疫応答が引き起こされるようになる。
- 脊椎動物では、獲得免疫が働くためにもToll様受容体などを介した自然免疫の作動が必要である。
- TLRまたはTLR類似の遺伝子は、哺乳類やその他の脊椎動物(インターロイキン1受容体など)、昆虫などにもあり、最近では植物にも類似のものが見つかっていて、進化的起源はディフェンシン(defensin ヒトから植物まで広く生物界に存在する抗ウイルスペプチド)などと並び非常に古いと思われる。
- TLRは自然免疫においてウイルス・細菌の構成成分を認識し,タイプIインターフェロン(IFN)や炎症性サイトカイン産生の誘導、樹状細胞の成熟化を介してリンパ球に感染防御のシグナルを伝達するパターン認識受容体である。
- TLRの刺激は炎症性サイトカイン遺伝子発現と共にIL-1遺伝子の発現誘導も促進する。
- TLRのひとつTLR9タンパク質が、メチル化されていないCpG核酸断片を認識し、免疫機能をオンにする。
- 炎症の引き金になるのもTLRである。
- RP105:TLRの一部分にだけ相同性を示すタンパク質
Toll様受容体4、Toll-like receptor 4:TLR4
- Toll様受容体のサブタイプ
- 病原体に特徴的な分子を認識するToll様受容体の1つで、グラム陰性菌の外膜の成分であるリポ多糖(LPS)やグラム陽性菌のペプチドグリカン層にあるリポテイコ酸をリガンドとして認識する受容体である。
- ラットの第1臼歯(M1)を露髄して、CFAなどを浸漬させることによって歯髄炎を作成すると、歯髄組織に発現する熱ショックタンパク:Hsp70が、三叉神経節の細胞体に軸索輸送される。Hsp70は歯髄支配三叉神経節細胞から分泌され、舌を支配している三叉神経節細胞上のToll様受容体4(TLR4)と結合し、舌支配三叉神経節細胞の興奮性が増強される。TLR4のアンタゴニストであるLPS-RSを投与すると、逃避反射の閾値の低下が回復する。 参考1/2/3
- Joyce A. DeLeoは神経損傷後に、ミクログリアにTLR-4が発現し、これが引き金となってneuropathic painが引き起こされることを発見した。
- Linda R WatkinsらはTLR4を抑制するペプチドを脊髄のグリア細胞に投与すると、坐骨神経損傷によるneuropathic painを改善できることを示した。peptide inhibitor to disrupt the TLR4-MD2 association
LPS-RS
- 光合成細菌Rhodobacter sphaeroidesに由来する、TLR4のアンタゴニスト
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TLR(Toll Like Receptor)阻害ペプチド TLR Inhibitor Peptide
- IKK-γ、NFkB p65、NFkB p65 (pSer276)、NFkB p65 (pSer529/536)、TIRAP (TLR2 and TLR4)、TIRAP (TLR2 and TLR4)、VIPER(TLR4)、TRAF6
ウイルス由来TLR4阻害ペプチド Viral Inhibitory Peptide of TLR4:VIPER
- TLR受容体4を介した応答を強力かつ特異的に阻害するウイルス由来のペプチドで、特定のTLR経路を阻害する物質の中で最初に発見された。
- VIPERは輸送配列である9Rホモポリマーと結合した、ワクチニアウイルスのA46タンパク質(A46 vaccinia viral protein)に由来するアミノ酸11個の阻害配列である。
- VIPERはTLR4レセプターのTIR(Toll / IL-1 Receptor)ドメインおよびTLR4のアダプタータンパク質であるMal(MyD88 Adaptor-Like)やTRAM(TRIF-Related Adaptor Molecule)に結合し、TLR4 / MalおよびTLR4 / TRAM、TIR / TIR相互作用を阻害することによって、TLR4シグナル伝達を阻害する。しかし正確な結合部位や抑制のメカニズムはまだ十分に解明されていない。
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- オピオイド耐性にもグリアが関与し、LPSの生理作用発現は、宿主細胞の細胞膜表面に存在するToll様受容体4を介して行われる。
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Nod-like受容体:ヌクレオチド結合性多量体ドメイン(NOD)様受容体
Nucleotide binding oligomerization domain-like receptor:NLR
←→ヌクレオチド結合ドメイン(NBD)および、ロイシンリッチリピート(LRR)受容体:NLR
- 病原体の細胞壁由来成分や異物(尿酸結晶、アルミニウムゲル等)の認識に関わる受容体
- 病原体の痕跡や異物を認識(リガンド認識)することにともない、複数結合した構造(多量体)を形成することで活性化し、細胞内に病原体感染の情報を伝達する。
- NODモジュールを持つタンパク質
- N末端側に同じドメイン同士が結合しやすい性質を持つ同種結合ドメインである、パイリンドメイン(PYD)か、カスパーゼリクルートメントドメイン(CARD)を持ち、中央にATPase活性を持つと予想される配列(Walker's A-and B-Box)を含むドメインであるヌクレオチド結合性多量体化ドメイン(NOD)、C末端側にロイシンの豊富な繰り返し配列であるロイシンリッチリピート(LRR)(=リガンド認識部位)を持つ。
- LRRはロイシン残基が一定間隔で存在するモチーフが複数個並ぶ分子構造で、TLRやNLRが病原体構成成分の認識を司るドメインである。
- NLRはTLRと同じく微生物を認識し得る領域であるLRRを持つが、TLRのように細胞外領域で微生物を認識するのではなく、細胞質内で微生物を認識する。
- 30を超える大きなファミリーをなしている。その中でNOD1、NOD2、NAIP5、IPAF、NALP3の5つが病原微生物を認識する。
- 自己重合と構造変化に関わるためのドメイン複合領域を分子中央に持つ。NODを持つタンパク質はNODと近接するドメインの違いにより、多様な情報伝達系で中心的スイッチ分子として働く。
ヌクレオチド結合性多量体化ドメイン
Nucleotide binding oligomerization domain:NOD |
NODタンパク
- 細菌の細胞壁ペプチドグリカンに関連する小分子を認識する。
- Nod1、Nod2と相同性を有する一連の細胞質内タンパク質
- NOD1、NOD2はペプチドグリカンをそれぞれ特異的認識している。
- ヒトではNod1、Nod2のほか、NLRP3(CIAS,Cryopyrin)、NLRPC4(Ipaf,CARD12)、NLRP1、NAIP、CIITAなど約20、マウスで30強、魚類で数百種のNLRファミリータンパク質が存在し、植物で数千種ほどある細胞質性病原耐性(R)遺伝子産物と構造上の相同性を持つ。
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Nod1
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- RIG-I like receptor(RLR)と同様に、NLRの中には細菌成分などのパターン認識受容体(PRR)として機能するものがあり、さらに植物R遺伝子産物も特異的病原体認識に重要であることから、NLRは外来成分の認識に関わる極めて保存されたしくみの構成員とも言える。
- インフラマソームを構成する受容体
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RIG様受容体 RIG-I-like receptor:RLR ←→レチノイン酸受容体
- 細胞質内のウイルス由来のRNAの認識に関わる、TLRと構造の似た細胞質内の受容体
retinoic acid-inducible gene-I:RIG-I
- ヒトの自然免疫系で働くタンパク質の分子
- ウイルスが細胞内に進入した時にウイルス由来のRNAを認識し、抗ウイルス作用を示すI型インターフェロン産生の誘導を引き起こす、細胞質内に存在するRNAヘリカーゼである。
- 京都大学の藤田尚志教授らによってその機能が明らかにされた。「リィグ・ワン」と誤って発音されることが多いが、正しくは「リィグ・アイ」である。
- レチノイン酸によって誘導されるRIG-Iはインターフェロンやウイルス感染によってもそのmRNAの発現が誘導される。N末端領域に二つのCARD様のドメインを持ち、中央にヘリカーゼドメイン、C末端のドメイン(repressor domain: RD)はN末端のCARD様ドメインの働きを抑制する機能をもつことが知られている。ウイルス由来のと5’末端がリン酸化された平滑末端をもつ二重鎖RNAはc末端ドメイン(CTD)によって認識され、RNAと結合すると、タンパク質の構造変化が起こり、C末端による抑制がはずれ、N末端のCARD様ドメインが活性化し、下流のIPS-1分子にシグナルを伝えることでI型インターフェロンの産生を誘導する。
- 東京大学の谷口教授らのグループはRIG-IがB型DNAを直接結合し認識することを報告している。この認識が単純ヘルペスI型ウイルス感染時のI型インターフェロン産生にに必要であると報告している。また谷口教授らはRIG-IがウイルスのRNAやDNAを認識する時にはHMGBタンパク質が必要であることを報告している。
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小胞体膜受容体 ←→小胞体
---イノシトール3リン酸(IP3)受容体、およびリアノジン受容体:いずれも細胞膜でなく小胞体膜にあり、リガンドに反応して小胞体内のカルシウムを細胞質に放出する。
○IP3受容体 ↓IP3
- 細胞内の小胞体膜に存在するCa2+ チャンネル。
- 非興奮精細胞での主要なCa2+誘起性Ca2+遊離機構:CICR
- PLCの活性化で産生されるIP3により開口するチャンネル。
- IP3受容体の役割は、小胞体内に存在するCa2+の放出を制御することである。
- 細胞質側にIP3とCa2+の両方が結合すると、Ca2+ チャンネルが開いてCa2+を通す。
- IP3受容体の活性化は一過性の Ca2+上昇を惹起するだけではなく、放出された Ca2+自体によって反復的な正と負のフィードバック制御(約0.5μMをピークに、それぞれ低 Ca2+と高Ca2+で起こる2相性制御)を受け、Ca2+ waveや Ca2+ oscillationといった時空間的な Ca2+ dynamicsをもたらす。しかし、その分子レベルの機序については不明な点が多く残っている。
- 1989年に御子柴先生らがIP3受容体の一次構造を決定した。これにより、細胞内のCa2+波やCa2+振動を起こす小胞体Ca2+チャネルとしてIP3受容体が初期発生のみならず、脳の発生・分化や高次機能に必須な役割を果たしていることを確認した。
- IP3受容体は現在まで3タイプに分類され、すべてホモ4量体を形成する膜タンパクで、同一ユニット上にリガンド結合部位とCa2+チャンネル部位が存在しリガンド結合によりチャンネル部分が機能する。
- IP3受容体の抑制剤:2-APB(2-aminoethoxycipahenyl borate)、Xestospongin C
- アルコール誘発性の急性膵炎発症初期にIP3受容体がかかわっている。
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○リアノジン受容体 sarcoplasmic reticulum ryanodine receptor:RyR
- 骨格筋にあるCa2+放出チャネルとして同定された。
- 細胞の筋小胞体や小胞体におけるカルシウムコンダクタンスチャネルに関与する。
- 5000個のアミノ酸からなる。
- 心筋と平滑筋は2型、骨格筋は1型
- リアノジン(アルカロイド)と結合してチャネルをサブコンダクタンス状態にし、筋小胞体から細胞質へカルシウムイオンをゆっくりと連続的に放出させる。
- リアノジン受容体は、筋での主要なCa2+誘起性Ca2+遊離機構:CICR
- 細胞膜上のCa2+チャネルと連動して開口する。
- このチャネルはカルシウムイオンに感受性であり、IP3には感受性でない。
- 内因性リガンドはcADPR(サイクリックADPリボース)であるとされている。
- 電位依存性Ca2+チャネルから流入すると、Ca2+がリアノジン受容体を活性化し、小胞体内からもカルシウムが細胞質に放出されると、筋収縮がひき起こされる。
- リアノジン受容体とIP3 受容体はアミノ酸配列相同性を有する膜タンパク質の四量体構造をとり、分子進化的および機能的に近縁である。
- 悪性高熱症はリアノジン受容体をコードするRYR1の遺伝子変異
- ダントロレンナトリウムはリアノジン受容体に結合して、Ca2+誘起性Ca2+遊離機構:CICRを阻害する。
- ルテニウムレッドもリアノジン受容体の選択的アンタゴニスト
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核内受容体
- 核内受容体は、ステロイドや甲状腺ホルモン、レチノイド、ビタミンDなどの受容体であり、主に、リガンドが結合すると細胞質から核内へ移行して転写調節因子としてはたらく。
- リガンドの不明な核内受容体、リガンド結合とは別のしくみで活性が調節される核内受容体もある。
- ヒトで48の遺伝子にコードされていて、代謝、恒常性、分化、成長、発生、老化、生殖などの機能を担う。
- N末端にAF-1領域 (かつてA/Bドメインと呼ばれた)があり、リガンド非依存的に転写活性化作用をもつ。AF-1は、核内受容体間で多様性に富む領域である。中央部にDNA結合領域 (DBD) (C) があり、2つのジンクフィンガーモチーフ(70アミノ酸)から成る。DBDは、受容体間のホモロジーが高い。C末端側にリガンド結合領域 (LBD) (E)(250アミノ酸)をもつ。LBDのC末端 (F領域) にあるαヘリックスをAF-2ヘリックスといい、受容体の活性調節に関係がある。構造の特殊な核内受容体として、A/B領域を欠くもの(HNF4g)、A/B, C領域を欠くもの(SHP)がある。D領域はヒンジ領域で、DBDとLBDの連結部位である。
- 核内受容体は通常2量体、ホモダイマー(ステロイド受容体)あるいはヘテロダイマー(RXRとPPARs, LXR, FXRなど)を形成して転写調節を行う。単量体でDNAに結合するもの(ERR, LRH1, SF1, NGFIB)もある。HNF4sやNGFIBは、リガンド結合とは無関係に活性化されており、これらはオーファン核内受容体と呼ばれる。
グルココルチコイド受容体 Glucocorticoid Receptor:GR ←→グルココルチコイド →参考1
- ステロイド受容体(核内受容体)
- グルココルチコイドが結合すると、立体構造が変化して、熱ショックタンパク質が外れ、DNA結合部位(zinc finger)が、露出し、核内に移動し、ニ量体を形成し、グルココルチコイド応答性エレメント(glucocorticoid responsive element:GRE)に結合する。そして、DNAのmRNAへの転写に影響を与え、酵素タンパク質(抗炎症タンパクのリポコルチン)の合成を調節する。
- グルココルチコイド受容体は細胞内に存在するリガンド依存性に活性化される転写調節因子であり、GRα、GRβの2型が存在する。
GRα
- 細胞質内に存在し、ステロイドの作用発現にかかわる。
- 777個のアミノ酸残基からなるタンパク質であり、全身の組織に広く分布している。
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GRβ
- 核内に存在し、ステロイドと結合しないとされる。
- C末端側のリガンド結合ドメインの一部が欠損しているので、核内に存在する。
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- 脳内に広く分布している。
- HPA axisの調節
- 海馬はグルココルチコイドホルモンに対して脳内で最も感受性の高い部位である。
- 海馬がHPA axisを抑制的に作用するのに対し、扁桃体が促進作用を示すことが知られている。
- 母子分離ストレスにより、成体の海馬のグルココルチコイド受容体遺伝子のプロモーター領域のDNAメチル化が亢進し、グルココルチコイド受容体の発現量が低下する。その結果、HPA系のネガティブ・フィードバックが障害される。
- 母子分離ストレスにより、成体の視床下部室傍核のアルギニンバソプレッシン遺伝子のプロモーター領域のメチル化が低下している。その結果、HPA系のネガティブ・フィードバックが障害される。
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エストロゲン受容体 Estrogen Receptor:ER ←→エストロゲン/エストロゲン製剤/タモキシフェン
- ステロイド受容体スーパーファミリーに属する分子の一つである。
- 卵胞ホルモン受容体とも呼ばれる。
- 1950年代にエルウッド・ジェンセンとハーバート・ヤコブソンは放射性元素であるトリチウムでラベルしたエストロゲン分子が標的組織に集積する性質を持つことを見出した。そこで、これらの組織にはエストロゲンに対する受容体が存在するのではないかという仮説に行き当たり、1966年にヒトやラットの組織からエストロゲン受容体(ER)が発見された(後にERαと呼ばれる分子である)。その後、1986年にERをコードする遺伝子配列が分かり、1993年にER遺伝子のノックアウトマウスが作成された。1996年に第二のERタンパク質であるERβがラットの前立腺から発見され、その解釈は複雑さを増した。研究が進むと、ERαとERβの間にはDNA結合ドメインの相同性もなく、組織分布も異なることが分かり、それぞれ異なった機能を有していることが示されている。
- エストロゲンとはエストロン(E1)、エストラジオール(E2)およびエストリオール(E3)の3種類の分子を指しており、いずれもERとの結合能を有するが、中でも生体における産生量はE2が多い。
- エストロゲンの生理作用を発現するためには標的組織に存在しているエストロゲン受容体への結合を介する必要がある。
- エストロゲン受容体に対してリガンドが結合するとERは活性化を受けてDNAへの結合が促進され、遺伝子の転写を制御する転写因子として機能する。また、植物中に含まれるイソフラボンなどの分子(植物性エストロゲン)や内分泌撹乱物質もERに対して結合能を有し、作用を発現することが知られている。
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レチノイン酸受容体 Retinoic acid receptor:RAR ←→レチノイン酸/RIG様受容体
- 核内ホルモン受容体 甲状腺ホルモンと類似
- レチノイン酸受容体(Retinoic acid receptor, RAR) とレチノイド X 受容体(retinoid X receptor, RXR)という 2 種類のタンパクが結合しヘテロ二量体となっている。
- レチノイン酸はレチノイン酸受容体(RAR)とPPARβ(もしくはPPARδ)と呼ばれる他の核内受容体との会合および活性化によりさまざまな作用が起こる。
- 配列特異的に DNA に結合し、レチノイン酸と結合すると転写活性化因子として働く。
- アストロサイト分化の細胞外促進因子
- ラットの母子分離Cross -fosteringにおいて、ADP細胞培養の神経分化能低下、レチノイン酸受容体RARαの遺伝子発現低下、RARαプロモーター領域のDNAメチル化が亢進
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レチノイン酸受容体関連オーファン受容体 Retinoic acid receptor-related Orphan Receptor
= RAR-related Orphan Receptor:ROR ←→レチノイン酸/orphan GPCR
- DNA結合領域がRARと類似性をもつレチノイド関連核内受容体である。
- RORのリガンドは未知であり、構成的な転写活性化能をもつとされ、脳の発達や免疫系などに関与していると示唆されている。
核内受容体NR1F2、nuclear receptor subfamily 2, group F, member 2:NR1F2
= レチノイン酸受容体関連オーファン受容体ベータ、レチノイド関連オーファン受容体β、retinoid-related orphan receptor-beta、RAR-related orphan receptor beta :ROR-beta
- 核内受容体NR1サブファミリーをコードするタンパク、転写因子
- オーファン核内受容体に属し、RORE配列に結合して転写を活性化する。
- 胎生期の大脳皮質のIV層特異的マーカー
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RORαおよびRORγt 参考1
- 核内受容体のRORαおよびRORγt(レチノイン酸受容体関連オーファン受容体αおよびγt)は、インターロイキン17を産生するヘルパーT細胞であるTH17細胞の分化に不可欠である。
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chicken ovalubumin upstream
promoter transcription factor:COUP-TF
- オーファン型核内受容体
- 転写因子
- ニワトリの卵白アルブミン遺伝子の 5′上流に結合して転写調節をすることが同定されている。
- COUP-TFI/II が、正常な脳の発生に必要な神経幹細胞の時系列特異的な分化能の変化の制御に必須であり、鍵となる因子でる。
- 1986年にHela細胞から分離された。
トリ卵白アルブミン上流プロモータ転写因子 I (COUP-TF1, NR2F1)
- 原始的な生物(ウニ等)からヒトまで全ての後口生物で保存されている。
- 1989年にヒトCOIUP-TFIのcDNAがクローニングされた。
- Apolipoprotein AIというコレステロール代謝に関わる遺伝子のプロモーター上にdimerを形成して結合する遺伝子としてクローニングされた。
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トリ卵白アルブミン上流プロモータ転写因子 II (COUP-TF2, NR2F2)
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VerbA-related gene (EAR-2, NR2F6) |
chicken ovalbumin upstream promoter transcription factor (COUP-TF)-interacting protein 2:CTIP2
- 抗 chicken ovalbumin upstream promoter transcription factor(COUP-TF)-interacting protein 2(CTIP2)抗体:第V層神経細 胞の神経細胞の層特異的マーカー
- Bcl11bとの相互作用を介して、または配列特異的な結合によってターゲット配列に作用し、標的遺伝子の転写調節をしている。
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deleted in colorectal carcinoma, deleted in colorectal cancer:DCC
- 依存性受容体
- 軸索ガイダンス分子ネトリン1などのリガンドと結合していない受容体の1つであり、胎児期の神経回路形成に関わる。
- 線虫、ショウジョウバエからヒトまで系統を超えて保存されたファミリーを形成する。1990年、大腸がんの進展に伴って起こる染色体欠失部位に存在する腫瘍抑制遺伝子の候補分子として同定された(それがこの分子の名前の由来である)が、その後、ネトリン受容体としての機能が明らかにされた。
- 線虫UNC-40の相同遺伝子であり、DCC/UNC-40ファミリーと総称されることもある。
- 免疫グロブリンスーパーファミリーに属する膜1回貫通分子であり、ネトリンが結合すると軸索誘引活性を発揮する。別種のネトリン受容体であるUNC5と共に機能すると、ネトリンに対して軸索反発活性を示す。
- 最近dependence receptorとしての機能も注目されている。DCCをはじめとする依存性受容体は、ネトリン1などのリガンドと結合していなければ、アポトーシスを引き起こす。
- DCCはこれまで、腫瘍抑制遺伝子であると考えられてきたが、Dccが1 コピー欠失したマウスには発がん傾向がなく、その役割は不明である。Patrick Mehlenらは現在、ネトリン1の過剰発現が、おそらくはDCCが誘発するアポトーシスを阻害することによって、大腸癌発生に寄与していることを示しており、DCCの腫瘍抑制能が、ネトリン1の細胞外濃度しだいであることがわかった。*
Robo
- Roboはショウジョウバエの交連軸索投射異常を示す変異体のスクリーニングから発見されたタンパク質
- 膜貫通型受容体の1つであり、主としてRoboの細胞外領域の免疫グロブリン様ドメインにリガンドであるSlitが結合することにより、細胞内にシグナルを伝達する。
- ショウジョウバエの正中線ではRoboは交連神経の軸索(commissural axon) に発現し、一方Slitは正中部のグリア細胞 (midline glia)から分泌され、通常、1度だけ正中線を交差する交連軸索がrobo 変異体では、何度も正中線を交差する現象が見られることから、roundabout (robo)と名づけられた。
- Robo-Slitを介したシグナル伝達は脊椎・無脊椎動物の中枢神経系の発生と発達過程において重要な役割を果たしており、軸索誘導以外に細胞移動、細胞接着、細胞極性や細胞骨格などの様々な現象を調節している。
- Roboは線虫からヒトまで保存されている分子で、脊椎動物では4つのサブファミリー:Robo1/DUTT1, Robo2, Robo3/Rig-1, Robo4/Magic roundaboutが同定されている。
Robo1/DUTT1 |
Robo2
- Robo2とRobo3は吻側移動経路にそって強く発現している。
- Robo2とRobo3の両者とも移動する新生ニューロンに発現しているが、周囲でトンネルを形成するアストロサイトの細胞体および突起により強く発現している。
- 吻側移動経路では新生ニューロンにリガンドであるSlitが、周囲のアストロサイトにその受容体Roboが発現している。
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Robo3/Rig1 |
Robo4/Magic
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- 細胞接着因子の1つである免疫グロブリンスーパーファミリーに属し、その構造は細胞外領域に免疫グロブリン様ドメイン(immunogloubulin-like, Ig domain) とフィブロネクチンタイプⅢドメイン(fibronectin type 3, FN3 domain) を有し、細胞内領域に保存された細胞内モチーフ(conserved cytoplasmic motif, CC)をもつ。
- Slit-Roboの相互作用に重要であるSlitの2番目のロイシンリッチリピート(leucine-rich repeats, LRR)とRoboのIg1ドメイン, Ig2ドメイン はRobo1からRobo3まで保存されている。
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