Sulfonamidochrysoidine (KI-730)(プロントジル prontosil rubrum®、prontosil soluble®)
- 最初に発見されたサルファ薬
- スルホンアミドを含む染料:赤色のアゾ色素(アゾ基 -N=N- をもった色素)
- プロントジルは抗菌薬として使用されていたが、この抗菌活性はアゾ基の還元により生じたスルファニルアミドに由来することが明らかになり、サルファ剤開発の契機となった。
1932年 | Fritz Mietzsch(1896〜1958, ドイツ IG Farben染料会社(現在Bayer AG)のBayer研究室の化学者)とJoseph Klarer(1898〜1953, Mietzschの同僚)はSulfonamidochrysoidine (KI-730=プロトジル)を合成した。ドイツ特許局は12月25日に特許を認定した。 |
1932年 | Gerhard Domagk(1895/10/30〜1964/4/24, ドイツ IG Farben染料会社(現在Bayer AG)の細菌学者、病理学者、1939年ノーベル医学生理学賞受賞者)がプロントジルが化膿性疾患に極めて有効であることを発見した。致死量のレンサ球菌のstreptococcus pyogenesに感染したマウスにプロントジルを投与すると生き延びることを観察した。 1935年2月、Domagkの娘のHildegardeは編み棒の針によるレンサ球菌感染症に罹患し、他の治療がすべて効果を発揮しない段階に至ってprontosil rubrum®を投与したところ完治した。Domagkが臨床報告したのは1935年になってから。最初Streptozanと名づけたが、すぐに Prontosilに変更した。 |
1933年 | 5月、Foester(Dusseldorfの内科医)はstaphylococal septicemiaに感染した10歳の幼児にプロントジルを投与すると急激に回復したことを報告した。 |
1936年 | Franklin Delano Roosevelt, Jr.(1914/8/17〜1988/8/17, Franklin D. Roosevelt大統領の5男)は連鎖球菌性咽頭炎(streptococcal throat infection)になり、その時の治療にプロントジルが投与されると、奇跡的に回復した。the New York Timesは「New Control for Infections《と報じた。 |
1936年 | Jacques Tréfouël(1897〜1977, フランスPasteur InstituuteのFourneau研究所の化学者)らはプロントジルはプロドラッグであり、代謝されてsulfanilamide (para-aminophenylsulfonamide)になって、抗菌効果を発揮することを発見した。それでsulfanilamideはProntosil Albumと呼ばれた。 |
1937年 | 塩野義からアクチゾール Aktizolとして発売された。(喀血性連鎖状球菌性疾患の化学的療法剤) |
|
スルファニルアミド sulfanilamide(Prontosil Album)
- 短時間作用性サルファ剤、無色
1908年 | Paul Gelmo(オーストリアのUniversity of Vienna)は学位論文の研究で、プロントジル関連化合物のpara-aminobenzenesulfonamideを合成した。 |
1936年 | Jacques Tréfouël(1897〜1977, フランスPasteur InstituuteのFourneau研究所の化学者)とThérèse Tréfouël(1892〜1978,Jacques Tréfouëlの妻で、共同研究者)夫妻、Federico Nitti、Daniel Bovet(1907〜1992, スイス生まれのイタリア人スイス、パスツール研究所の薬学者、1957のノーベル医学生理学賞受賞者)らはプロントジルは試験管内ではブドウ球菌などの化膿菌に対しては無効なのに、ヒトの生体内では有効なことを知り、この物質は体内でアゾ基のところで分解した結果、有効成分が生成されるのではないかと考えた。2種の代謝解産物のうち、スルホンアミド基(-SO2NH2)をもった部分が極めて有効であることを突き止めた。プロントジルはプロドラッグであり、代謝されてsulfanilamide (para-aminophenylsulfonamide)になって、抗菌効果を発揮することを発見した。それでsulfanilamideはProntosil Album(白色プロントジル)と呼ばれた。 |
- Donald Devereux Woods(1912/2/16〜1964/11/6, 英国ロンドンMiddlesex Hospitalの細菌学者)とPaul Fildes(1882/2/10〜1971/2/5, 英国の病理学者) は PABAがsulfanilamideを抑制することを発見した。sulfanilamideが有効な細菌は、その成長にPABAを要求することを知り、スルファミンの化学構造がそのビタミンに極めて近似していることに注目して、sulfanilamideはPABAよりも細菌との親和性が強いために、細菌はPABAの利用ができなくなる。細菌は結合力のより強いsulfanilamideと結合してしまって、PABAを取り込むことができなくなると結論づけた。
|
スルファピリジン sulfapyridine:SP
|
スルファメトキサゾール(サルファメソキサゾール) sulfamethoxazole:SMK
- 中程度持続性サルファ剤、ジヒドロプテロイン酸シンターゼ阻害薬
- 細菌の葉酸合成酵素に対しパラアミノ安息香酸と拮抗する。
|
トリメトプリム・スルファメトキサゾール合剤 trimethoprim-sulfamethoxazole combination:ST合剤(バクタ®)
- 1961年にスルファメトキサゾール:SMXとトリメトプリム:TMPを5対1の比率で配合した合剤が開発された。
- 作用機序としては葉酸の合成を阻害することであり、2種類の葉酸合成拮抗薬を用いることで相乗効果を得ている。
- 腸内細菌の葉酸合成も阻害するので副作用に葉酸欠乏がある。
- 尿路感染、前立線炎、急性および慢性気管支炎、急性中耳炎、副鼻腔炎、放線菌症、赤痢、サルモネラ感染症の治療に用いられる。
- ニューモシスチス・カリニ感染やマルトフィリア感染症にも用いる。
- また、TMP/SMXに感受性があり、他の抗生物質に耐性を示すグラム陰性桿菌による重症感染症(髄膜炎、骨髄炎)にも用いる。
|
→サラゾスルファピリジン |