トリプトファン tryptophan:Trp
2-アミノ-3-(インドリル)プロピオン酸
- 必須アミノ酸
- 側鎖にインドール環を持ち、芳香族アミノ酸に分類される。
- 糖原性・ケト原性を持つ。
- 多くのタンパク質中に見出されるが、含量は低い。
- トリプトファンの代謝系には2つある。トリプトファンはセロトニンとキヌレニンに変換される.
セロトニン経路 | 摂取されたトリプトファン多くは中枢神経系においてセロトニンやメラトニンとなる。 |
キヌレニン経路 | 完全分解されるかニコチン酸に代謝される。その代謝経路の途中にキヌレン酸がある。キヌレニン経路はビタミンB6酵素が多く関与している。トリプトファン代謝のキヌレニン経路で、キヌレニンから二種の神経細胞毒[3-ハイドロキシキヌレニン(3-HK)とキノリン酸(QA)]が生成される一方、キヌレニンは神経細胞保護作用を有するキヌレン酸に変換する。 |
- 生体内には、NAD(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)をはじめ、セロトニン・メラトニン、キヌレニンなどがある。
- 植物において重要な成長ホルモンであるインドール酢酸の前駆体、インドールアルカロイド(トリプタミン類)などの前駆体として重要
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キヌレニン kynurenine 参考1
2-アミノ-3-(インドリル)プロピオン酸
1931年 | 1925年頃から古武弥四郎(こたけ やしろう、1879/7/12〜 1968/5/30日, 京都帝国大学→大阪帝国大学→和歌山県立医科大学の生化学、医化学者)が犬や家兎を用い大量のトリプトファン(これを準備するのも一大仕事である)を経口または皮下投与し、その尿から代謝物キヌレニンらしきものを単離した。キヌとユレはそれぞれラテン語の犬、尿に相当することばである。しかしこの実験は再現性が悪く、1931年に古武、岩尾がホッペザイラー生理化学誌(Hoppe-Seylers Zeitschrift fur Physiologische Chemie) に発表した。 |
- ナイアシンの生合成に使われるトリプトファンの代謝中間体である。
- 最初、犬の尿から分離された。
- トリプトファン代謝では、アリールホルムアミダーゼによってN'-ホルミルキヌレニンから合成され、キヌレニン-3-オキシゲナーゼによって3-ヒドロキシキヌレニンに変換される。
- トリプトファンは健常者では主にセロトニンに変換されるが、線維筋痛症患者ではトリプトファンがキヌレニンに変換されるために、脳内セロトニンが減少する。
- うつ病や統合失調症や Cell, online 25 September 2014 参考1/1
筋肉を鍛えると、キヌレニンが脳へ到達する前にKATによって無害なキヌレン酸に変化するために、うつにならない。
- キヌレン酸の前駆物質
- L-キヌレニン:サクラマスの性フェロモン、排卵メス尿に含まれる。
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キヌレン酸 kynurenic acid:KYN
- L-トリプトファンの代謝産物:キヌレニンからそのアミノ基転移反応で生
じる。
- 1853年にJustus von Liebig(1803/5/12〜1873/4/18, ドイツの化学者)が犬の尿から発見した。
- 内在性のNMDA受容体拮抗物質(特にグリシン結合部位を遮断する)
- 顔面けいれんに関連を持つ。
- 統合失調症のキヌレン酸仮説(Kynurenic acid hypothesis):統合失調症患者の死後脳や脳脊髄液ではキヌレン酸が増加→NMDA受容体機能低下
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