DNAポリメラーゼ DNA polymerase
- 1本鎖の核酸を鋳型として、それに相補的な塩基配列を持つDNA鎖を合成する酵素の総称
- 一部のウイルスを除くすべての生物に幅広く存在する。
DNA依存性DNA ポリメラーゼ DNA‐dependent DNA polymerase
- DNA を鋳型としてDNA を合成する DNA 依存性 DNA ポリメラーゼ
- DNA複製やDNA修復において中核的な役割を担う酵素である。
DNAプライマーゼ DNA primase
- DNA依存性RNAポリメラーゼの一種
- DNA複製においてRNA断片(プライマー)を合成する酵素
- DNAポリメラーゼは合成中のDNA鎖の3'末端の水酸基に新たなヌクレオチドを付加する活性を持ち、これによってDNA鎖は5'→3'の方向に伸長する。一からDNA合成を開始できるDNAポリメラーゼは知られておらず、ヌクレオチドを付加するためのプライマーが必要である。
- 通常のDNA複製の際には、DNAプライマーゼが短いRNA鎖を合成し、これがプライマーとして用いられる。
- DNAプライマーゼは複製フォークにおいてDNAヘリカーゼに結合し、ラギング鎖に対して11塩基ほどのプライマーを合成し、岡崎フラグメント合成の足がかりとなる。DNAを合成するのはDNAポリメラーゼであるが、この酵素は既にある核酸断片を延長することしかできないことから、DNAプライマーゼによるプライマーの生成はDNA複製において必須である。
- DNAプライマーゼによって合成されたRNAプライマーは複製の進行とともに除去される。直鎖状染色体の最も末端部分(テロメア)では、プライマーが除去されたのち複製ができない。このため複製の度に染色体が短くなっていくという「末端複製問題」が提起されたが、テロメアを合成する酵素テロメラーゼが発見されたことで一部解決した。
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RNA依存性DNAポリメラーゼpolymerase
- RNAを鋳型としてDNAを合成する。
- セントラルドグマの範疇から逸脱する位置にある酵素で、逆転写酵素やテロメラーゼを含む。
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- DNAポリメラーゼは配列の類似性に基づき以下の7つのファミリーに分類されている。
Family A
- DNA複製やDNA修復に関わる酵素が含まれる。
- 複製系の酵素としては、非常によく研究されたT7 DNAポリメラーゼや、ミトコンドリアのDNAポリメラーゼ γ がある。
- 修復系の酵素としては、大腸菌のDNAポリメラーゼIや、Thermus aquaticusやBacillus stearothermophilusのpol Iなどがあり、除去修復や岡崎フラグメントの処理に関わっている。
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Family B
- ほとんどが複製系の酵素で、真核生物のDNAポリメラーゼα, δ, εや、DNAポリメラーゼζなどを含む。
- 原核生物ではDNA複製に必須なDNAポリメラーゼが1つであるのに対して、真核生物では3つのDNAポリメラーゼ (α、δ、ε) が必要がある。 参考1/2
- それ以外にT4・Phi29・RB69などのファージのDNAポリメラーゼも含む。
- リーディング鎖とラギング鎖の両方の合成に関わる。
- このファミリーの酵素は強い3'-5'エキソヌクレアーゼ活性があり、複製が正確なことが特徴であるが、αとζに関しては例外で校正活性を持たない。
Polα
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Polδ
- ラギング鎖を合成している。
- DNAヘリカーゼに結合
- PCNAはPolδのコファクターとして機能し、リーディング鎖のDNA複製に関与するホモ三量体タンパク質(261アミノ酸;29kDa)、S期のマーカー
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Polε
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T4 DNAポリメラーゼ ←→平滑末端クローニング/blunt end ligation/T4 DNAリガーゼ
- T4ファージ由来のDNAポリメラーゼ
- 鋳型ssDNAとプライマーssDNAの存在下、プライマーの3'ヒドロキシル基に相補鎖を合成する(5'→3'合成活性)ポリメラーゼ
- 同時にssDNA特異的な3'→5'エキソヌクレアーゼ活性を持っている。
- DNAフラグメントの末端の平滑化に用いられる。
T4ファージ T4phage
- 大腸菌を宿主とするT偶数系ファージの代表で、糖で修飾された環状の二本鎖DNAをゲノムにもつ。
- 分子生物学の初期から研究材料として用いられていてT4ファージ由来のT4 DNAリガーゼ、T4 DNAポリメラーゼやマーカーなどの遺伝子組換実験用の酵素が組み換え体から作られる。
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Family C
- 基本的には細菌の染色体複製に関わる酵素である。
- 大腸菌のDNAポリメラーゼIIIのαサブユニットはヌクレアーゼ活性がなく、別のαサブユニットが3'-5'エキソヌクレアーゼ活性を提供している。
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Family D
- まだよく研究されていないが、全てが古細菌のEuryarchaeotaから見出されており、複製系の酵素だと考えられる。
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Family X
- 真核生物のpol β、pol σ、pol λ、pol μなど、また末端デオキシヌクレオチド転移酵素(TdT)を含む。
- pol βは塩基が欠落した箇所を修復するのに必要である。
- pol λとpol μはDNA二重鎖切断を修復する非相同末端結合に関わる。TdTはリンパ組織におけるVDJ組換の際に数塩基を追加して免疫学的多様性を増大させるのに関わっている。
- 出芽酵母の唯一のfamily XポリメラーゼであるPol4もまた、非相同末端結合に関わっている。
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Family Y
- 無損傷のDNAに対する忠実度が低く、逆に損傷を受けたDNAでも複製できる点にある。損傷乗り越え複製(translesion sythesis; TLS)によってエラー無しに、もしくはエラーを無視して無視して複製できるようになるが、後者の場合変異率は上昇する。
- 色素性乾皮症のバリアント型(XPV)の患者は、UV損傷をエラー無しに修復できるPol ηに変異があり、変わりにエラーを無視するPolζ(これはfamily Bのポリメラーゼである)が働くため、発がんしやすい傾向がある。
- ヒトには他にPol ι・Pol κ・Rev1というメンバーが知られている。大腸菌ではPol IV (DinB)とPol V (UmuDC)が知られている。
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Family RT
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耐熱性DNAポリメラーゼ Taq DNA polymerase ←→PCR
- 好熱菌 Thermus aquaticus が産生するDNAポリメラーゼ(EC.2.7.7.7)
- 熱水噴出孔に生息しているThermus aquaticusに因んでTaqと名づけられた。
- 90°C以上の高温でも比較的安定な耐熱性DNAポリメラーゼの発見により、PCR法はとても簡単になった。
- タンパク質は熱に弱いので、高温でタンパク質の変性する。DNAを「2本鎖→1本鎖」にする過程で、従来のDNAポリメラーゼが失活してしまうので、サイクル毎にDNAポリメラーゼを補充しなければならなかった。
- 耐熱性DNAポリメラーゼは約94°Cの高温でも活性を失わないため、DNAポリメラーゼを一回入れるだけで済むようになった。
- polI型ポリメラーゼ
- 3’→5’エキソヌクレアーゼ活性(Proof reading活性)を有さない
Thermus aquaticus由来一本鎖 DNA結合タンパク
Thermus aquaticus single-stranded DNA binding protein :SSB
- DNA結合タンパク
- SSBは、耐熱性タンパク質で、単鎖DNAに結合し二本鎖DNAにはほとんど結合しない。DNA複製やDNA組換えに重要な役割を果たす。
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テルムス・アクウァーティクス Thermus aquaticus 参考1
- グラム陰性桿菌好気好熱性の真正細菌
- 学名はラテン語とラテン化されたギリシャ語で、「水中に棲む、熱を好む菌」といったほどの意味がある。
- 1969年にイエローストーン国立公園から発見された。増殖温度は40-79℃で、当時としては非常に高かった。至適増殖温度70-72°Cは、それまで知られていたGeobacillus stearothermophilus(55-60°C)よりも10°C以上高いものであった。
- 形態は0.5-0.8μm×5-10μmの細長い桿菌で、鞭毛を持たず、運動性はない。トリプトンや酵母粉末などを主体とする、中性からややアルカリ性の培地でよく増殖する。糖類、アミノ酸、有機酸などを吸収して好気・従属栄養的に増殖する化学合成従属栄養生物である。
- 分布域は非常に広く、世界中のかなり広範囲の熱水系から分離されており、陸地海洋双方の熱水噴出孔、温泉、人工熱水環境など広い熱水環境に及んでいる。
- 高い好熱性から産生するタンパク質の耐久性も高く、多くの酵素類が実用化されている。特に、DNAポリメラーゼのTaqポリメラーゼ、制限酵素のTaqIは広く知られている。
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ブレンドTaq® Blend Taq®
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クレノウ断片 Klenow fragment ←→サンガー法 参考1/2
- 大腸菌のDNAポリメラーゼIをタンパク質分解酵素スブチリシンで部分分解して得られる断片のうち、大きな方の断片である。
- DNAポリメラーゼIが持つ3種の活性(DNAポリメラーゼ、5'→3'エキソヌクレアーゼ、3'→5'エキソヌクレアーゼ)のうち、5'→3'エキソヌクレアーゼ活性が失われている。
- Hans Klenow(デンマークの生化学者)とHenning Jacobsenが1970年に報告したことに因んで名づけられた。
- 大腸菌からDNAポリメラーゼIを精製する手法は1969年にJovinらが確立していたが、クレノウがこれを追試したところポリメラーゼ活性を持つ2種類のタンパク質が得られた。1つはJovinのポリメラーゼと同じだと思われたが、もう1つは分子量約7万と小さかった。この小さなタンパク質にもDNAポリメラーゼ活性があったが、5'→3'エキソヌクレアーゼ活性はなかった。そこで大きな方のポリメラーゼをスブチリシンで処理したところ、同じく分子量約7万で5'→3'エキソヌクレアーゼ活性のない断片が得られた。
- クレノウ断片はPCRが開発された当初に使われたポリメラーゼでもあったが 、その後はTaqポリメラーゼなどの耐熱性酵素に取って代わられた。
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RNAポリメラーゼ RNA polymerase
- リボヌクレオチドを重合させてRNAを合成する酵素
- DNAの塩基配列を読み取って、相補的なRNAを合成する酵素で、遺伝子発現(セントラルドグマ)の第一段階をつかさどる生命活動に必須の酵素
- 複数のタンパク質(サブユニット)が集合してできた巨大な複合体で、細菌からヒトまで共通した“カニのはさみ”のような形をしている。
- 中央にできた溝にDNAを挟み込み、約10塩基対のDNAをほどいて「転写バブル」を形成し、一方の鎖を鋳型にしてRNAを合成する。
- RNAポリメラーゼによってDNAから合成されるRNAの方向は5´→3´である。転写はDNAのプロモーターにRNAポリメラーゼが結合することで開始する。
DNA依存性RNAポリメラーゼ
- DNAの鋳型鎖(一本鎖)の塩基配列を読み取って相補的なRNAを合成する反応(転写)を触媒する中心となる酵素
- 真核生物の場合、RNAポリメラーゼはPolI、PolII、PolIIIの3種類存在し、3つのクラスのプロモーターが存在している。
- PolIが働くクラスIプロモーターからはrRNA、PolIIが働くクラスIIプロモーターからはmRNA、PolIIIが働くクラスIIIのプロモーターからはtRNAを中心とする低分子RNAが転写される。
RNAポリメラーゼI Pol I
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RNAポリメラーゼII Pol II
- 真核生物で、DNAを鋳型にしてmRNAやsnRNA遺伝子の多くを転写するRNAポリメラーゼ
- 細胞内局在:核質
- 真核生物の核内でメッセンジャーRNA(mRNA)の転写を担う酵素
- 多数のサブユニットからなる巨大なタンパク質複合体
- 転写の過程においてPol IIは、さまざまなタンパク質と結合することでさらに巨大な複合体となって機能している。
- Pol IIが働くクラスIIプロモーターからはmRNAが転写される。
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RNAポリメラーゼIII Pol III
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- RNAを鋳型にRNA を合成するRNA依存性RNAポリメラーゼもあり、多くのRNAウイルスで重要な機能を果たす以外に、microRNAの増幅過程にも利用される。
ポリA合成酵素 ポリAポリメラーゼ ポリアデニル酸ポリメラーゼ polyA polymerase
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DNAリガーゼ、DNAライゲース DNA ligase ←→DNA ligase I
=ポリデオキシリボヌクレオチドシンターゼ、ポリヌクレオチドリガーゼ
- DNA鎖の末端同士をリン酸ジエステル結合でつなぐ酵素
- 生体内では主としてDNA複製とDNA修復に寄与している。
- 遺伝子工学で組換えDNAを作るために頻繁に利用されている。
- 一般的なDNAリガーゼは、二重らせん構造の中で隣り合う3'-水酸基と5'-リン酸基の間をリン酸ジエステル結合でつなぐ。
- DNAの3'末端(アクセプター)と、DNAの5'末端(ドナー)との間にリン酸ジエステル結合をつくる。よく知られている真核生物やファージの酵素では反応にATPを必要とする。
- ATPが酵素の活性中心のリジン残基に結合してAMPとなり、ピロリン酸が放出される。
- AMPがDNA5'末端のリン酸基に転移され、ピロリン酸結合を生じる。
- 5'末端のリン酸基と3'末端の水酸基との間にリン酸ジエステル結合を生じ、AMPが放出される。
DNA ligase I:LIG1
- DNA複製に関わる因子の一つ。DNAの複製のときに、岡崎フラグメントという短いDNA断片をつなげる酵素としての重要な役割を持つ。この酵素が岡崎フラグメントをつなげることでDNAの複製が完了する。
- S期後期からG2期初期に発現し複製されたDNAの結合に関与する。
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T4 DNAリガーゼ T4 DNA Ligase ←→T4 DNAポリメラーゼ
- T4ファージのDNAリガーゼ
- 効率は低いもののDNA/RNAハイブリッドに対して作用することもでき、このときDNAリガーゼだけでなくRNAリガーゼとしても機能することができる。
- T4 DNAリガーゼはミスマッチ塩基を含むようなDNAに対して作用することができ、また相補部位のない独立したDNA分子2つを結合することが出来るなど、二重らせん構造という観点で許容度が高い。
- 非常に効率は低いが、一本鎖DNAも結合することができる。
- T4 DNAリガーゼは、隣接したDNAの5'端のリン酸基と3'端の水酸基をのホスホジエステル結合によって連結する酵素で、Mg2+とATPを要求する。
- T4 DNAリガーゼ平滑末端及び突出末端の2本鎖DNA、またはニックの入った2本鎖DNAに作用するが、RNAとRNAや、RNAとDNAにはほとんど作用しない。
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末端デオキシヌクレチドトランスフェラーゼ、terminal deoxynucleotidyl transferase :TdT
- 一本鎖または二本鎖DNAの3’-OH末端にデオキシヌクレオチドを重合する反応を触媒する酵素
- プライマーとなるには最低3塩基以上のオリゴデオキシヌクレオチドが必要である。
- 通常TdTは多数のデオキシヌクレオチドをDNA鎖3 '末端に付加するが、1〜3ヌクレオチドの取り込みしか起こらないように反応を最適化することができる。
- TdTは鋳型を必要とせずDNA配列による影響も受けないが、DNA構造は重要な要素となる。
- TdTは一本鎖DNAの3'末端に対して最も高い活性を示すが、二本鎖DNAの3'オーバーハングに対しても低い効率で修飾することが可能
- TdTは平滑末端または5 'オーバーハングを有する二本鎖DNAに対しても低い活性を示す。
- TdTで修飾するDNAテンプレートとしては、未標識の一本鎖PCRプライマーや、3 'オーバーハングを有する二本鎖の制限エンドヌクレアーゼフラグメントなどが一般的
- TdT活性とは2本鎖DNAの平滑末端の3'末端にヌクレオチドを1つだけ付加する活性
- PCR反応で用いられるTaqなどがTdT活性をもっている。
- 平滑末端の3'-OHにヌクレオチドを1つだけ付加するため、PCR産物も3'突出となる。基質としてdNTPを用いてもアデニンが選択的に付加される。
- 平滑末端同士をつなぐブラントライゲーションの場合は、TdT活性による突出末端がライゲーション効率を落としてしまうため、T4 DNAポリメラーゼなどで末端の平滑化を行うと良い。
- 一方、Tベクターを用いたTAクローニングは、この突出したAを活用してライゲーションする方法である。
オーバーハング
- 上部が下部よりせり出した構造のこと
- 分子生物学では、dsDNAやdsRNAの突出している部分、あるいは突出している部分の配列をオーバーハングと呼ぶ。
- ベクターとインサートをリガーゼでライゲーションする場合、相補的なオーバーハングを持つ2つの末端はライゲーションの特異性と効率が高い。インサートの向きを決めたい場合などには末端を異なる2種類の制限酵素で消化する。
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チミンDNAグリコシラーゼ Thymine DNA glycosylase:TDG ←→DNA脱メチル化/APOBEC
- T/Gミスマッチ部位を認識し、N-グリコシド結合を切断してチミンを除去する酵素
- 脱塩基部位は塩基除去修復系により修復される。
- 5caCや5hmUを除く活性も報告されている。
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ヘリカーゼ、ヘリケース helicase
- 核酸のリン酸エステル骨格に沿って動きながら絡み合う核酸をほどく酵素の総称
- すべての生物に必須な酵素
- DNA複製、DNA修復、DNA組換え、転写、翻訳、スプライシングなど、遺伝情報を扱う様々な過程で対合している核酸をほどく必要がある。
- ATPの結合と加水分解によって起こるコンホメーション変化により、二本鎖DNAを巻き戻すモータータンパク質
- ATPやGTPを加水分解して得られるエネルギーを使って塩基間の水素結合を解消し、DNAの二重らせんや二次構造を取ったRNAなどをほどく働きをしている。
- ヘリカーゼは、片方の鎖に沿って種類毎に決まった方向に動きながら働く。
- ヘリカーゼは1976年に初めて報告され、大腸菌のtraI遺伝子の産物である。1978年にはユリから真核生物で初のヘリカーゼが報告されている。1967年には大腸菌のRepタンパク質が見つかっているが、これがヘリカーゼだと明らかになるのは1979年になってからのことである。
DNAヘリカーゼ ←→DNA helicase B
- DNAの2本鎖をほどく酵素
- DNA複製フォークの進行に伴う超らせんを解消する酵素
- DNA複製ヘリカーゼは一般に、DNAの二重らせんの一方の鎖を囲むように1個の六量体を形成し、その鎖に沿って動きながら相補鎖を剥がすように外して、DNAらせんをほどく(立体排除と呼ばれる)。
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必須複製開始タンパク質 replication initiator protein:Rep
- 大腸菌を宿主とするColE2プラスミドの複製開始因子
- 分子量が小さいにも関わらず、たった一分子でDNAの2本鎖をほどき、RNAプライマーを合成し、DNA合成酵素を呼び込むというユニークなタンパク質
- ColE2プラスミドの複製系では、Repが複製開始点に特異的に結合してプライマーRNAを合成し、宿主大腸菌のDNA合成酵素Iがこれを利用してDNA合成を開始する。
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RNAヘリカーゼ
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DNAトランスロケース
- 構造上ヘリカーゼに類似しているがDNA上を動くだけで核酸をほどかない酵素
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T抗原 T antigen:T-ag
- がん抑制経路にかかわるp53やRBを妨害する。
ラージT抗原:LTag 参考1
SV40 large T antigen、Simian Vacuolating Virus 40 TAg
- サルSV40のDNA複製ヘリカーゼ
- DNA型腫瘍ウイルスであるシミアンウイルス40(SV40)がコードするタンパク質
- LTagは、腫瘍抑制因子(pRBやp53など)やその他の重要な細胞タンパク質の機能を変化させることによって細胞を悪性転換し、動物に腫瘍を発生させる。
- LTagは、ウイルスゲノムの複製起点をゆがめ、融解してDNA二本鎖をほどく分子装置でもある。したがってLTagは、真核生物のMCM(ミニ染色体維持)複合体の機能的相同体といえる。
- DNAヘリカーゼ活性をもつ。
- X線構造解析からp53結合表面が同定でき、六量体形成の構造基盤が明らかになる。六量体の中央には、並はずれて大きな空洞を持つ正電荷を帯びた長いチャネルがあり、これが一本鎖DNA、二本鎖DNA両方に結合する。この六量体は二層になっており、層と層をつなぐαヘリックスを介してそれぞれが相対的に回転することでチャネルが伸び縮みできる。この動きが「絞り」のような働きをして、複製フォークで複製起点をゆがめて融解し、DNAをほどくのに使われるらしい。
- 2個の六量体が重なり合った形で機能し、中央の穴を通る二本鎖DNAを少しずつ押し動かして、一本鎖DNAを横方向へはみ出させると報告されている。*
- 六量体2つが重なった構造を形成し、その中央にDNAの二重らせんが通って、ほどけた一本鎖DNAが横に押し出されると考えられていた。 *
シミアンウイルス40 simian Virus 40:SV40 ←→COS細胞
- アカゲザルなどから分離された腫瘍ウイルス:アカゲザルのポリオーマウイルス
- ポリオワクチンを産生していたアカゲザル腎臓細胞に感染しているウイルスとして発見された。
- 高等動物細胞用のベクターや発がん機構の研究に利用される。
- SV40は霊長類の細胞に感染してウイルスを取り込ませ、細胞内にDNAの環を放出する。
- SV40は環状のゲノムであり、細胞内において一握りのヌクレオソームを傷つける「小型染色体」として見出される。
- カプシドに収まるために、たった数種の機能に関する遺伝情報しかコードできない。T抗原と3種類のカプシドタンパク質 VP1、VP2、VP3をコードする領域がある。
- SV40の研究から、最初にエンハンサーが発見された。
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ミニ染色体維持タンパク質 minichromosome maintenance protein
ミニ染色体維持ヘリカーゼ minichromosome maintenance replicative helicase
ミニ染色体維持複合体 minichromosome maintenance comple:MCM複合体
ミニ染色体 mini chromosome
- 突然変異や遺伝子組み換えを利用し、本来の染色体のかなりの部分を欠失して小型化した(させた)染色体
- 生育に最低限必要な遺伝子領域を決定するなどの目的で作られる。
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- ゲノムDNA複製に必須のDNAヘリカーゼ
- 真核生物MCMは、ヘテロヘキサマーを形成する6つの遺伝子産物、MCM2〜7からなる。
- MCMヘリカーゼはDNA複製において中心的な役割を果たし、複製フォークで種々のタンパク質と相互作用しつつ、巨大な複製フォーク複合体を形成し、複製フォークの進行と安定な維持を担っている。
- 細胞分裂の重要なタンパク質として、S期開始およびS期停止チェックポイントなどの様々なチェックポイント経路の標的でもある。
- MCMヘリカーゼの負荷および活性化の両方が厳密に調節され、細胞増殖サイクルに結合される。
- MCM機能の調節緩和は、ゲノム不安定性および様々ながん腫に関連している。
- 真核細胞では染色体の恒常性を保つため、MCM複合体が1細胞周期につき1度だけクロマチン上に結合することにより、複製開始点がライセンス化される。
- 真核細胞ではゲノムを安定に維持するために、細胞が有糸分裂を完了したあとにのみDNA複製が許可され、DNA合成(S期)は細胞周期ごとに1回だけ行われるようになっている。このDNA複製を許可する分子機構(ライセンス化)の制御には、MCMタンパク質のクロマチンへの結合を仲介するタンパク質Cdc6(分裂酵母ではCdc18)が必要だと考えられている。
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逆転写酵素 reverse transcriptase ←→RT-PCR/CAGE法
- RNAを鋳型して、その遺伝情報をDNAに転写する酵素
- RNA依存性DNAポリメラーゼ
- マイクロアレイ解析や遺伝子の機能解析に必須である。
- 逆転写反応 reverse transcriptionを触媒する酵素
- レトロウイルスは逆転写酵素を持っていて、自身のRNA遺伝子をDNAへと変換して宿主ゲノムへと侵入する。
- 1970年、Howard Martin Temin(1934年〜1994年 米国の遺伝学者、ウィスコンシン大学マディソン校、Renato Dulbeccoの弟子)とDavid Baltimore(1938年3月7日〜 米国分子生物学者、マサチューセッツ工科大学、ソーク研究所でRenato Dulbeccoの指導を受けた。)がそれぞれ別の研究から逆転写酵素を発見し、1975年にノーベル生理学医学賞を受賞した。
- 逆転写酵素は一本鎖RNAを鋳型としてDNAを合成(逆転写)するもので、レトロウイルスの増殖に必須の因子として発見された。
- それまで、DNAはDNA自身の複製によって合成され、遺伝情報はDNAからRNAへの転写によって一方向にのみなされると考えられていた(セントラルドグマ)が、この酵素の発見により遺伝情報はRNAからDNAへも伝達されうることが明らかとなった。
インテグラーゼ、インテグレース integrase
- 部位特異的組換え酵素:細菌に感染するウイルス(バクテリオファージ)がコードしている遺伝子組換え酵素
- 逆転写酵素
- レトロウイルス(HIVを含む)により産生される酵素であり、感染細胞のDNAにレトロウイルスの遺伝物質を取り込ませることを可能にする。
- インテグラーゼは二本鎖DNAに組み込まれたウイルス(プロウイルス)によっても同じ目的のために産生される。
- インテグラーゼはプレインテグレーション複合体(PIC)の重要な要素の1つである。
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モロニーマウス白血病ウイルス 逆転写酵素:MMLV RT ←→モロニーマウス白血病ウイルス |
トリ骨髄芽球症ウイルス 逆転写酵素:AMV RT ←→ |
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ヌクレアーゼ nuclease
- 核酸分解酵素の総称
- デオキシリボ核酸ないしリボ核酸の糖とリン酸の間ののホスホジエステル結合を加水分解する。
エキソヌクレアーゼ exonuclease
- 核酸の切断される位置の塩基配列に高い特異性がない酵素
- 核酸分子の末端から順々に切断を行う酵素
- ポリヌクレオチドを5′末端もしくは3′末端から順次加水分解していくヌクレアーゼ
- DNAのリン酸化エステル結合の加水分解を触媒することにより、一本鎖DNAの3’-OH末端から5’-モノヌクレオチドを遊離させる3’→5’エキソヌクレアーゼである。
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エンドヌクレアーゼ endonuclease
- 核酸の切断される位置の塩基配列に高い特異性がない酵素
- 核酸分子の中間を切断する酵素
- ニッキングエンドヌクレアーゼ
- 核酸鎖を両端ではなく内部のリン酸ジエステル結合を加水分解することで切断する酵素
- 配列特異性のある制限酵素や、特異性のないDNaseIなどが含まれる。
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デオキシリボヌクレアーゼ deoxyribonuclease:DNase →Cas9
- ヌクレオチド結合を切る酵素
- デオキシリボ核酸ののホスホジエステル結合を切断して、オリゴヌクレオチドないしモノヌクレオチドに分解する一群の酵素の総称
エキソデオキシリボヌクレアーゼ exodeoxyribonuclease
- DNA鎖の末端からヌクレオチドを削っていく酵素
デオキシリボヌクレアーゼI DNase I、EC 3.1.21.1
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エンドデオキシリボヌクレアーゼ endodeoxyribonuclease
- DNA鎖の内部で切断したり、ニックを入れる酵素
- DNAの分解・除去を目的として使われる。
デオキシリボヌクレアーゼII, EC 3.1.22.1 |
3'側ののホスホジエステル結合を分解するものと5'側から分解する酵素 |
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リボヌクレアーゼ ribonuclease:RNase
- リボ核酸を分解してオリゴヌクレオチドあるいはモノヌクレオチドにする反応を触媒する酵素
- あらゆる生物に遍く存在する酵素で、内部からRNAを分解するエンドリボヌクレアーゼ、外側から分解していくエキソリボヌクレアーゼの2種に分類される。
- 塩基を識別して分解を行う基質特異性の高いものもあり、種類は多様である。主なものとして塩基の種類を問わないリボヌクレアーゼT2やピリミジン塩基のある部分だけ切断するリボヌクレアーゼA、グアニンの部分のみを分解するリボヌクレアーゼT1などがあげられる。
- mRNAなどの必要なRNAはリボヌクレアーゼインヒビターによってリボヌクレアーゼによる分解をまぬがれている。
- 小さく安定で結晶化しやすいため、生化学研究において重要な酵素とされてきた。
- リボヌクレアーゼは一次構造が最初に特定された酵素として歴史に残っていて、これを決定した三人の化学者はノーベル化学賞を受賞している。
- Christian Anfinsen(1916/3/26〜1995/5/14, アメリカの生化学者)、Stanford Moore(1913/9/4〜1982/8/23, アメリカ人の生化学者)とWilliam Howard Stein(1911/6/25〜1980/2/2, アメリカ人の生化学者)「リボヌクレアーゼの研究、特にアミノ酸配列と生物学的な活性構造の関係に関する研究」によって、1972年にノーベル化学賞を受賞した。
Christian Anfinsenはアミノ酸配列が折りたたまれたタンパク質の構造を決めていることを示した。
Stanford MooreとWilliam Howard Steinは特有のアミノ酸配置が酵素の触媒中心に使われていることを示した。
- Robert Bruce Merrifield(1921/7/15日〜2006/5/14 アメリカの化学者)初めて合成した。1984年にノーベル化学賞を受賞した。
- Sidney Altman(1939/5/7〜 カナダ生まれの分子生物学者)とThomas Robert Cech(1947/12/8〜 アメリカの分子生物学者、生化学者)はRNAの触媒機能の発見により1989年にノーベル化学賞を受賞した。RNA分子が触媒活性を持つことが、AltmanとCechによって独立に相次いで発見された。Altmanは、RNase PのRNA成分が活性を担っていることを明らかにし、一方、CechはテトラヒメナのグループIイントロンが自己切断を起こすことを発見した。
RNase A
- EC 3.1.27.5
- エンドリボヌクレアーゼ
- 研究に広く使用されるRNaseである。
- RNase A (たとえばbovine pancreatic ribonuclease A: PDB 2AAS)は研究室で一般に用いられる酵素の中で最も丈夫なもののひとつであり、RNase Aを精製する方法の一つに、細胞の抽出物を煮沸しRNase A以外のすべての酵素を変性させるというものもあるほどである。
- RNase Aは一本鎖RNAの配列に特異的であり、一本鎖のC残基またはU残基(ピリミジン残基)の3'末端を切断して、3'末端リン酸化物を生じる。
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RNase H
- EC 3.1.26.4
- DNA/RNAハイブリッド二本鎖を形成しているRNAを切断し、一本鎖DNAを生じるリボヌクレアーゼである。
- RNase Hは非特異的なエンドヌクレアーゼであり、加水分解によってRNA切断を触媒する。酵素に結合した二価金属イオンはその活性を助ける。RNase Hは5'末端リン酸化物を生じる。
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RNase I
- EC number 3.1.??
- エンドリボヌクレアーゼ
- RNase I は1本鎖RNAの3'末端で全てのジヌクレオチド結合を切断し5'-ヒドロキシル末端, 3'-リン酸末端を作る。このとき中間産物として2',3'環状モノリン酸が生じる。
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リボヌクレアーゼインヒビター Ribonuclease inhibitor:RI
- 450残基、49kDa、等電点4.7のタンパク質
- ロイシンリッチリピートを持ち、特定のリボヌクレアーゼと非常に強固な複合体を形成する。細胞内に0.1%程存在する主要細胞内タンパクであり、RNAの寿命の制御に重要な役割を果たす。
- リボヌクレアーゼは特にがん細胞に対して毒性、増殖抑制効果を示すため、がん治療薬としての研究が続けられているが、RIはどこにでも存在し、RIと結合したリボヌクレアーゼは効果がないことから、これを回避する手段が不可欠となる。
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→ジンクフィンガーヌクレアーゼ/TALEN/Cas9ヌクレアーゼ
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制限酵素 restriction enzyme, restriction endonuclease
- 2本鎖のDNAを切断する酵素
- 原核生物や、一部の真核細胞が持つ防御系の一つで、DNAの特定配列を認識する酵素
- 制限酵素はDNA中にあるそのパターンを認識し、その付近あるいはその配列の内部で切断する。
- DNAの特異的な塩基配列を認識して切断するエンドヌクレアーゼ
- 制限酵素の「制限」とは:感染したファージの外来DNAは切断するが、自身のゲノムDNAにはメチル化などの修飾が起こっていて、自身のゲノムDNAの切断が制限されているという意味。制限酵素はバクテリアがファージから自らの身を守る、防御機構を司る分子である。
- 様々なDNA配列に対する制限酵素が知られていて、遺伝子組換え技術の中核となる酵素
- 必須因子や切断様式により3種類に大別されるが、そのうちのII型酵素が遺伝子組み換えに多用される。
- 切断された切り口には2種類あり、その形状により平滑末端と粘着末端と呼ばれる。
- 制限酵素に関するこの先駆的な業績に対し、Daniel Nathans、Hamilton Smith、Werner Arberは1978年にノーベル生理学・医学賞を受賞した。
I型制限酵素
- 特定の配列を認識して、そこから400〜7000bp離れた適当な場所を切るヌクレアーゼ
- R・M・Sの3種のサブユニットから成っていて、Rが切断活性、Mがメチル化活性、Sが配列特異性を担っている。
- 特異的な認識部位でDNAに結合し、メチル化されていないDNAに対してはATP要求性のヌクレアーゼとして、片鎖がメチル化されているDNAに対してはS-アデノシルメチオニンを要求するメチラーゼとして働く。認識部位が特異的であるのに対し、二本鎖DNAの切断部位は認識部位から様々な距離(400〜7000bp)で起こる。
- 切断部位に再現性が乏しく、またDNAのメチル化を引き起こすため、遺伝子工学には使えない。
- 遺伝的相補性によりAからDのサブタイプが定義されている。
メチラーゼ Methylase, Methyltransferase, MTase ←→DNMT
- 大腸菌などのバクテリアにおける制限修飾系として知られる酵素のうち、メチル化修飾を行う酵素
- 遺伝子工学実験で用いられるのは、核酸の特定の塩基配列を認識し、特定部位をメチル化するTypeIIの制限修飾系メチラーゼである。
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制限修飾系、R-M系 restriction-modification system
- 生体防御系の一つで下等生物にみられる修飾系
- 自身のDNAをメチル化などで修飾する修飾酵素と、DNAの特定配列を認識切断するが、修飾を受けた部位は切断しない制限酵素の組み合わせから成り、外部から侵入したDNAを選択的に切断分解する。
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II型制限酵素 Type II restriction endonucleases
- 遺伝子工学の実験に広く利用されている制限酵素
- 特定の配列を認識して特定の位置で切断するヌクレアーゼ
- 通常はメチラーゼとは独立している。 酵素反応には、Mg2+が必須で、切断点は認識部位内かそのごく近傍に限定されている。
- II型制限酵素によって認識される塩基配列のパターンの多くはパリンドローム(回文)になっていて、5'端側から読んでも、その相補鎖の5'端から読んでも同じ配列になっている。この酵素の発見によりDNAの加工ができるようになり、遺伝子組み換え実験が可能となった。
IIS型 Type IIS
- 2本鎖のうち、少なくとも片方が認識部位より外側で切断する酵素
FokI ←→TALEN
- 非回文配列を認識して、認識配列から離れたところを特異的に切断する酵素
- 海洋性細菌Flavobacterium okeanokoitesからクローニングされた、FokI遺伝子を有するE. coli株由来の制限酵素
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EcoRI (pronounced "eco R one")
- 最も代表的なII型制限酵素
- Paul Delos Boyer(1928〜 カリフォルニア大学の生化学者、「アデノシン三リン酸 (ATP) の合成の基礎となる酵素機構の解明」により1997年にノーベル化学賞受賞)の研究室で、1972年に大腸菌から単離された制限酵素
- 大腸菌(Escherichia coli)のR株から見つかった1番目の制限酵素ということで、「EcoRI」と命名された。
認識部位 | 切断様式 |
5'GAATTC 3'CTTAAG |
5'---G ---- AATTC---3'
3'---CTTAA ---- G---5' |
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Hind III ヒンディースリー ←→DNA分子量マーカー
- II型制限酵素の一種で、EcoRIと並び、制限酵素としては最も代表的なものの一つ
- ヘモフィルス-インフルエンザ菌のd株(Haemophilus influenzae d)から単離され、この菌株名より命名された。
- 遺伝子中の 5'-AAGCTT-3' という6塩基配列を認識し、AとAの間に切れ目を入れ、切り口に粘着末端を作り出す。
認識部位 | 切断様式 |
5'-AAGCTT-3' 3'-TTCGAA-5' |
5'-A ---- AGCTT-3'
3'-TTCGA ---- A-5' |
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MmeI
- Methylophilus methylotrophus (W.J. Brammar)からクローニングされたMmeI遺伝子を有する大腸菌由来
- エンドヌクレアーゼ認識部位
- TCCRAC(20/18)
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XmajI
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TaqI ←→Taqポリメラーゼ
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III型制限酵素
- 認識配列から2〜30bp離れた、これも適当な部位を切断するヌクレアーゼ
- ModとResと呼ばれる2つのサブユニットから構成されており、Modが配列の認識とS-アデノシルメチオニンを用いたメチル化を行う。
- ResはDNA切断に必要なサブユニットだが、単独ではヌクレアーゼ活性を持っていない。
- 認識配列は逆位反復になっている必要があり、その両方がメチル化されていない場合のみ片方から約25bp離れた位置をATP要求的に切断する。
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ニッカーゼ nickase ←→ニック/Cas9 Nickase
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Dicer
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DNAトポイソメラーゼ DNA topoisomerases ←→トポイソメラーゼ阻害薬
- 2本鎖DNAの一方または両方を切断し再結合する酵素の総称
- 環状の2重鎖DNAでは、2本の鎖は位相幾何学(トポロジー)的には結び目があるのと等価であり、ねじれ数(リンキング数)の異なるDNA、つまりトポアイソマー(トポロジーの異なる異性体)は、DNA鎖を切らない限り互いに変換できない。
- トポイソメラーゼはこの変換(topoisomerization)を触媒する異性化酵素という意味で命名された。
- 抗がん剤や抗生物質のターゲットとしても知られる。
Ⅰ型トポイソメラーゼ type I topoisomerase
- DNAの二重らせん構造のうち1本を切断し、再結合に関与する。
- Ⅰ型トポイソメラーゼの反応では、DNAの2本鎖のうち一方が切断されその切れ目の間をもう一方の鎖が通過する。
- 切れ目が再結合すると、リンキング数は一つ変化する。反応はATPを要求しない。
- I 型トポイソメラーゼは、主に複製や転写の際に生じるDNA超らせんを緩和する働きをもつ。
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ⅠI型トポイソメラーゼ type II topoisomerase:topo II ←→II型トポイソメラーゼ阻害薬
- DNAの二重らせん構造の両方を切断し再結合に関与する。
- II型トポイソメラーゼの反応では、2本鎖が同時に切断されその切れ目の間を別の2本鎖が通過する。切れ目が再結合すると、リンキング数は二つ変化する。反応は ATPを要求する。
- II 型トポイソメラーゼは、DNA超らせんの緩和に加えて、複製後に生じる娘2重鎖DNA間の絡まりカテナンの解消も担う。
- 真核生物のtopo II は、抗がん剤のエトポシドやテニポシドのターゲットとなる。
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DNAジャイレース、DNAギラーゼ DNA gyrase
- 細菌が持つDNAトポイソメラーゼII型の1種である。
- II型なのでDNA二本鎖の両鎖を切断することにより鎖を回転させねじれをとる働きをする。細菌のDNA複製には欠かせない酵素の1つである。
- 大腸菌を含む多くの細菌はDNAジャイレースを有する。
- DNAジャイレースは負のDNA超らせんを導入する活性をもち、キノロン系抗生物質のターゲットとなる。
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DNA組換え酵素 DNA recombinant enzyme
→DNA組換え酵素 Creリコンビナーゼ
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遺伝子再構成活性化遺伝子 recombination activating gene:RAG ←→RAGマウス
- 責任遺伝子は第11染色体上にあり、 常染色体劣性遺伝
- リンパ球前駆細胞に特異的に発現するDNA組換え酵素で、RAG1とRAG2の2種類が存在する。
- 1988年から1990年にかけ遺伝子再編成に関与する2つの遺伝子がDavid Baltimore博士(1938年3月7日〜 米国分子生物学者、マサチューセッツ工科大学、1975年にノーベル生理学医学賞受賞)のラボの二人の医学部学生により同定され、Recombination activation gene(RAG)1、2と命名された。
- この2つの遺伝子は種の系統樹的には硬骨魚類以降に突然出現すること、イントロンを持たないこと、さらに極めて近接した染色体上に存在していること(約18kbしか離れていない。)、トランスポゼースの活性を有していることから、進化の過程で我々の細胞の中に入り込んだトランスポゾン由来の遺伝子ではないかと考えられている。
- Immunoglobulin:IgとTCR(T細胞受容体)の発現には、これらをコードする遺伝子の再構成が必須であり、RAG1とRAG2はこの過程で分子複合体として重要な役割を果たす。RAG2はリンパ細胞にだけ存在する。
RAG1/RAG2完全欠損
- 完全欠損では抗原受容体遺伝子の再構成が行われないため、B細胞、T細胞がともに欠如し、NK細胞のみが検出される重症複合免疫不全症(B- T- NK+ SCID)を発症する。
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RAG1/RAG2の活性が残存するタイプの遺伝子変異(hypomorphic mutation)
- 部分的に残存するRAG活性により、クローンサイズの小さい、多様性が著しく制限されたB細胞とT細胞の分化が起こる。
- その結果、限られたT細胞クローンの著しい活性化と増殖、Th2に偏ったサイトカイン産生、さらにB細胞クローンによるIgE産生の亢進などが起こり、Omenn症候群と呼ばれる特徴的な臨床像を呈する免疫不全症が発症する。
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- TCR遺伝子、および免疫グロブリン遺伝子のV, D, Jの各遺伝子セグメントに隣接する特異的な塩基配列を認識して切断する。 ←→V(D)J遺伝子再構成
- これらの遺伝子の再構成に必須であり、その変異、欠損はT細胞、B細胞を欠損する免疫不全症を引き起こす。
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DNA依存性プロテインキナーゼ DNA-dependent protein kinase:DNA-PKcs ←→PK 参考1
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ペプチジル転移酵素、ペプチジルトランスフェラーゼ peptidyl transferase
- mRNAからタンパク質への翻訳において、リボソーム上でペプチドが結合したペプチジルtRNAから次のアミノアシルtRNAへとペプチドを転移させ、タンパク合成を進行させる酵素
- リボソームの大サブユニットにペプチジル基転移酵素活性がある。
- アニソマイシンやクロラムフェニコールはペプチジルトランスフェラーゼなどを阻害することによって、タンパク質およびDNA合成を阻害する。
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