■基礎の基礎 | │神経幹細胞 neural stem cell│ | ■新研究 |
幹細胞 stem cell →神経幹細胞/多能性幹細胞/間葉系幹細胞/小腸上皮幹細胞
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前駆細胞 progenitor cell →神経前駆細胞
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1928年 | Santiago Ramón y Cajal(P スペイン)が論文の中で「成体哺乳類の中枢神経系は損傷を受けると二度と再生しない」と結論した。 |
1962年 1963年 1965年 | Joseph Altman(1925 〜 2016, ハンガリー生まれ、米国の生物学者 参考 1/2/3/4)とGoapl Dasは成体脳でもニューロン新生が起こっていることを発見した。成体ラットの脳にRI標識したチミジン(3H-thymidine)を投与すると海馬と脳室周囲の細胞にチミジンが集積した。Altmanの研究あまり注目されなかったが、2012年に「成体脳のニューロン新生の発見」により第28回国際生物学賞を受賞した。 参考1/2 |
1965年 1969年 | Joseph Altmanは成体脳のニューロン新生成体の嗅球でも新生ニューロンの存在することを示し、rostral migratory streamも発見・命名した。 * |
1977年 | Michael Kaplan(米国の解剖学者)とJames Hindsは電子顕微鏡を用いて、3歳のラットの3H-thymidineでラベルされた新生ニューロンが上衣下層に存在ことを報告した。 |
1974年 1984年 1988年 | Pasko Rakic(ユーゴスラビア生まれ、 Yale大学の神経科学者 1/2/3)は霊長類の成体脳では神経は新生されないことを報告した。 参考1 |
1983年 | Michael Kaplanは5歳のアカゲザルでも3H-thymidineラベル実験を行い、上衣下層に分裂細胞が存在することを報告した。 |
1985年 | Fernand Nottebohm(Rockefeller University)がカナリアの海馬での神経再生を発見した。 |
1989年 | Sally Templeがマウスの脳室下帯にある幹細胞の多分化能について論文を発表した。 |
1992年 | カナダのBrent ReynoldsとSamuel Weissがneurosphere assayを開発した。成体マウスの線条体から取り出した細胞にEGFを添加して、分裂増殖しながら神経細胞やグリア細胞を生み出す細胞塊を分離することに成功した。つまり、神経やグリアを産み出す神経幹細胞の発見とも言える! * |
1993年 | 石 龍徳(現東京医大解剖学)がPSA-NCAM(神経前駆細胞・未成熟ニューロンのマーカー)のモノクローナル抗体を用いて、成体海馬歯状回の顆粒細胞に新生するニューロンを同定した。 参考1 |
1993年 | Frank Corotto*/*とJoel Marunik(コロンビアのミズリー大学)が1993年に初めて放射線同位元素を使わないBrdU法で成体のニューロン新生の研究をした。BrdUと共焦点顕微鏡を使ってSEZのニューロンが嗅球に移動し、それらのニューロンは神経特異エノラーゼ:NSEとカルレチニンを発現していた。 |
1997年 1999年 | Gerd Kempermann(Dresdenの神経科学者 1/2)らはFred H. Gage(ソーク研究所の遺伝学研究室の教授, 第13回慶應医学賞受賞)のlabで、刺激豊かな環境ではマウスの海馬歯状回の神経新生ニューロンが増加することを発見した。 参考1/2 1999年のHenriette van Praagの研究では、BrdU陽性細胞は刺激豊かな環境よりも自発走運動の方が多かった。 参考1 |
1997年 1998年 1999年 | Elizabeth Gould(Princeton University心理学科の神経科学者 1/2)の研究グループはげっ歯類だけでなく、霊長類でも成体で神経が新生することを発見した。1997年にはツバイの歯状回で神経新生は心理社会的ストレスやNMDA受容体活性化によって制御されることを報告した。1998年には成体マーモセットや成体アカゲザルの海馬で神経新生を発見した。1999年には成体カニクイザルの新皮質(前頭葉前部、下側頭皮質、後頭頂葉)で神経新生を発見、海馬で生まれた神経細胞が白質を経て新皮質に移動することを発表した。 |
1998年 | Peter S. Eriksson(1959/6/5〜2007/8/2, Sahlgrenska University Hospital in Gothenburg, Sweden)とFred H. Gage↑らは、、抗がん剤(BrdU)を服用したがん患者の協力を得て、その患者が死亡した後に、脳組織標本を詳しく調べることにより、大人の脳の中でも、少なくとも、海馬の歯状回で、ニューロンが新生していることを見出した。 参考1/2 |
1999年 | Arturo Alvarez-Buylla(Fernand Nottebohm↑のラボ出身で、初めはトリのニューロン新生を研究していた。)らはラットの側脳室下帯の神経幹細胞がGFAP陽性であることを発表した。GFAPはアストロサイトのマーカーなので、その当時GFAPが神経幹細胞に発現していることは受け入れられなかった。 |
2001年 | 玉巻伸章(京大→熊本大・解剖学)、宮田卓樹(現名古屋大・細胞生物学)、Stephen C. Noctor(コロンビア大学)のグループがほぼ同時に、放射状グリア細胞が神経幹細胞であることを示す論文を発表した。 |
2006年 | Jonas Frisén(スウェーデンKarolinska Institute)のグループは1960年代の水爆実験で放出された大気中14Cをトレーサーとして使用した研究により、大脳新皮質のニューロン新生は、仮に起こっていたとしてもその数は非常に限定的であるとするデータを示した。 参考 |
2011年 | 等誠司(生理研→滋賀医大)らはGcm遺伝子がDNAを脱メチル化させることによって、Hes5遺伝子が動きだし、Notchシグナルを活性化させて、神経幹細胞が生成されることを発見した。 ←参考1/2 |
2017年 | 今吉格先生1/2/3/4/5が第1回ジョセフ・アルトマン記念発達神経科学賞を受賞 |
神経幹細胞の未分化性 undifferentiatedの維持 ←→自己複製能/ニューロンへの分化/グリアへの分化/分化制御因子 |
マウス ES細胞未分化状態の維持 参考1 |
Common progenitor説
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Fate−restricted progenitor説 ←→神経デフォルト説/His' dualistic theory 参考1
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休眠期、静止期、quiescent ←→自己複製能/ニューロンへの分化/label retaining法
dormant 休眠中 参考 1/1
ラベル保持細胞 label-retaining cell:LRC, BrdU+ LRCslabel ←→retaining法
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→神経上皮細胞・・・胎生初期の神経幹細胞 |
→放射状グリア細胞・・・胎生中期の神経幹細胞 |
(Pluripotent cell) ←→pluripotency ↓ LIF-dependent primitive NSC LIF 反応性の未分化神経幹細胞:epiblast期 ↓ FGF2-dependent definitive NSC:E8.5 ↓ EGF-dependent definitive NSC ↓ (Differential progenitor cells) |
Schaper の一元説 Schaper's unitary theory ←→多分化能/細胞系譜
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Wilhelm Hisの二元説 His' dualistic theory ←→Fate−restricted progenitor説
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Rakicの二元説:新二元説
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幹細胞ニッチ Stem-cell niche, germinal niche ←→germinal zone/SEZのニッチ
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ニューロンの新生の活性化因子 | ニューロンの新生の不活性化因子 |
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海馬の神経新生 hippocampal neurogenesis:AHN →海馬歯状回のSGZ ←→ADP@神経新生の研究法 参考1/2
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SEZ→嗅球 olfactory bulb:OB 参考1/2
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細胞増殖の解析法:DNA合成量を指標として間接的に細胞
増殖を測定する方法
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Nestin-CreERT2-Creマウス | ||||||||||||||||
neurosphere assay ←→接着性単層培養/3次元培養
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接着性単層培養 adherent monolayer culture ←→neurosphere assay/単層培養 参考1 | ||||||||||||||||
海馬歯状回由来神経前駆細胞、adult dentate gyrus-derived precurser cells:ADPの培養 ←→海馬歯状回@細胞増殖
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ラベル保持法、label retaining法 ←→細胞周期/quiescent/ラベル保持細胞
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→網膜神経幹細胞 retinal stem cell 参考1 | |||||||||||||
傷害誘導性神経幹細胞 Injury-induced Neural Stem/Progenitor Cell:iNSPC 参考1 | |||||||||||||
神経膠芽腫幹細胞様細胞 グリオブラストーマ幹細胞 glioblastoma stem-like cells:GSC
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neurosphere↓ | |||||||||||||
奇形腫 テラトーマ teratoma |
神経前駆細胞 neural progenitor cell ←→前駆細胞/マーカー/グリア前駆細胞/神経の発生/皮質板形成/
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神経前駆細胞 neural precursor cell:NPC? ↓ | ||||
神経芽細胞 neuroblast ←→グリア芽細胞
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↓ 未熟な神経細胞 immature neuron ←→マーカー ↓ | ||||
成熟した神経細胞 cell ←→マーカー |
グリア芽細胞 glioblast(神経膠芽細胞) ←→神経芽細胞
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海綿芽細胞 spongioblast ←→Wilhelm Hisの二元説
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アストロサイト前駆細胞 astrocyte progenitor cells ←→分化制御因子
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オリゴデンドロサイト前駆細胞 olygodendrocyte progenitor cells, OLG progenitor cell :OPC oligodendrocyte precursor cells ←→分化制御因子/NG2グリア 参考1
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→オリゴデンドロサイトのマーカー MAG、CNPase、GSTπ |
神経 幹細胞 | 前期 神経前駆細胞 | 後期 神経前駆細胞 | 未成熟 ニューロン | 成熟 ニューロン | |
nestin/Sox2/ Pax6 | + | + | △ | ー | ー |
Ki67/PCNA/PH3 | 途中から | + | + | ー | ー |
GFAP | + | △ | ー | ー | ー |
FABP7/BLBP | + | + | 途中まで | ー | ー |
Mash1 | 途中から | 途中まで | ー | ー | ー |
Tbr2 | ー | 途中から | 途中まで | ー | ー |
Hu | ー | + | + | + | + |
PSA/DCX/NeuroD | ー | ー | + | + | ー |
NeuN | ー | ー | ー | 途中から | + |
βIIItubulin =TuJ-1 | + | ||||
MAP2 | + | ||||
calbindin | ー | ー | ー | ー | + |
細胞増殖 proliferationのマーカー ←→成体脳の細胞増殖
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神経幹細胞のマーカー ←→神経幹細胞/神経上皮細胞マーカー/放射状グリアマーカー
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神経幹細胞からニューロンへの分化 ←→未分化性の維持/分化制御因子
=プロニューラル因子、プロニューラル遺伝子 |
神経前駆細胞のマーカー |
未成熟ニューロンのマーカー ←→PSA-NCAM、SEZのType A/SGZ-3型/ 参考 1
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成熟ニューロン
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神経幹細胞からグリアへの分化 ←→分化制御因子 |
ニューロン分化 | 細胞外促進因子 | Wnt |
細胞外抑制因子 | Notch, BMP2, BMP4 | |
転写因子 | Mash1, Ngn, Math1, NeuroD, Hes1, Hes5, Id1, Id3 | |
アストロサイト分化 | 細胞外促進因子 | BMP2, BMP4, レチノイン酸, LIF |
転写促進因子 | Smads, STAT3, p300/CBP, Hes5, ID4 | |
転写抑制因子 | Ngn | |
オリゴデンドロサイト分化 | 細胞外促進因子 | Shh |
細胞外抑制因子 | Notch, BMP2, BMP4 | |
転写促進因子 | Olig1, Olig2, YY1, HDAC | |
転写抑制因子 | Hes5, ID2, ID4, Tef4 |
胎生7.5〜8.5日:神経幹細胞:誘導 |
胎生11日:ニューロン産生 |
胎生17日:オリゴデンドロサイト産生 |
胎生後期から生後:アストロサイト産生 |
マウスの胚体外胚葉 epiblast:E6.25 | |||
expansion phase:神経幹細胞の自己増殖期:自己複製能 E8.5〜、胎生初期 extended reproductive period 拡大再生産期 ←→胎生期の皮質板形成 | |||
neurogenic phase:ニューロン分化期〜 E11? 胎生中期?
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gliogenic phase:グリア形成期、E17? 胎生後期?
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神経上皮細胞 neuroepithelial cell (マトリックス細胞) ←→成体脳における上衣細胞/上皮細胞
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放射状グリア細胞 radial glia ←→放射状移動
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→神経芽細胞 neuroblast↑@神経前駆細胞 →カハール・レチウス細胞、サブプレートニューロン
成体脳では →海馬歯状回DGのSGZの3型細胞 →上衣下層:SEZのA型細胞 |
エレベーター運動 elevator movement ←→皮質板形成/発生過程/Fucci interkinetic nuclear migration:INM、interkinetic nuclear movement:IKNM 参考1
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基底核原基 ganglionic eminence:GE ←→大脳基底核/大脳皮質原基(=外套)
参考1/2
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多極性移動 multipolar migration | |||||
細胞体トランスロケーション somal translocation | |||||
ロコモーション
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●胎生期の大脳皮質形成における神経の遊走
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○成体脳における抑制性神経の移動 上衣下層→吻側遊走経路:RMS→嗅球 |
放射状移動(法線方向移動)radial migration
inside-out様式
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接線方向移動 tangential migration、水平移動
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尾側移動経路 caudal migratory stream :CMS
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吻側遊走経路、吻側細胞移動経路 rostral migratory stream:RMS
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Pain Relief |