ホスファチジルコリン phosphatidyl choline:PtC、PC =レシチン Lecithin
- グリセロリン脂質の塩基がコリンのもの。2分子の脂肪酸の部分は、疎水性で、グリセロールと、リン酸と、塩基(極性基)の部分は、親水性なので、脂質二重層を形成する。
- コリン神経系でのアセチルコリン生合成経路におけるコリンの供給源となる。
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ホスファチジルセリンphosphatidyl perine:PS
- ホスファチジルセリンはホスファチジルエタノールアミンのメチル化によっても生じる。
- 脳や神経組織の細胞膜に多く含まれているリン脂質です。
- 細胞膜の情報伝達を担うホスファチジルイノシトールの代謝にかかわっている。
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リゾリン脂質 lysophospholipid:LPC
- リン脂質(ジアシルリン脂質)の2本のアシル基のうち一本を失ったものをリゾリン酸という。
- リゾリン脂質の「lyso」とは、lysis(溶解)から派生した用語で、もともとはリゾリン脂質が膜を可溶化して細胞を溶かし、赤血球などを溶血させる作用を持つことから名づけられた。
- リゾリン脂質のうちあるものは、アセチル基の転移(付加)によって血小板活性化因子(PAF)という脂質メディエーターを生じる。
- エイコサノイドを第一世代の脂質メディエーターとすれば、リゾリン脂質およびPAFは第二世代 脂質メディエーターととらえられている。
- ホスファチジルコリンをホスホリパーゼで加水分解して得られる脂質
- リゾリン脂質は、界面活性作用があり、細胞膜を壊し、細胞を溶かす。
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イノシトールリン脂質 inositol phospholipids ←→イノシトール/IP3/PIP2/PI3K/IMPase
- 真核生物の細胞膜を構成する成分
- リン酸化されたイノシトールが脂肪酸と結合している。
- 細胞内信号伝達経路で信号伝達物質として機能する。
- イノシトールリン脂質は生体膜を構成するリン脂質の一種であり、イノシトール環がリン酸化、あるいは脱リン酸化されることにより7種類の異なるイノシトールリン脂質が産生される。
- これらイノシトールリン脂質は細胞膜やオルガネラ膜に独自の特異性にて局在し、シグナル伝達、細胞骨格、メンブレントラフィックなどさまざまな細胞機
能に密接に関与する。
ホスファチジルイノシトール ←→グリコシルホスファチジルイノシトール
- ホスファチジルイノシトールは細胞性粘菌から哺乳類にいたるまで広く存在するリン脂質である。
- ホスファチジルイノシトールは正確には1,2-ジアシル-sn-グリセロ-3-ホスホリル-1-myo-イノシトールという名称の脂質であり、脂肪酸部分とイノシトール環部分からなる。
- ホスファチジルイノシトールは7種類のイノシトール環を持つリン脂質の総称であり、細胞膜、ゴルジ体膜、エンドソームなど細胞膜の構成成分である。
- シグナル伝達のセカンドメッセンジャー産生を介してシグナル伝達を行うのに加えて、多くのタンパク質と結合して、これらのタンパク質を膜に局在させる働きを持つ。
- ホスファチジルイノシトールはキナーゼやホスファターゼによって精巧な代謝制御を受けていて、これは細胞増殖、細胞内物質輸送、細胞骨格制御に必須である。また、この代謝異常はがんや糖尿病など多くの疾患の原因となる。
- ほ乳類の含有するホスホイノシタイドは、リン酸機の個数によって、PI(ホスファチジルイノシトール)、PIP(ホスファチジルイノシトール一リン酸)、PIP2(ホスファチジルイノシトール二リン酸)とPIP3(ホスファチジルイノシトール三リン酸)から成り、このうちPIP、PIP2とPIP3のことを総称して(ポリ)ホスホイノシチドと呼ぶ。ホスファチジルイノシトールというと狭義にはリン酸化されていないPIのみを指すが、広義にはリン酸化されたホスホイノシタイドも含めることがある。
ホスファチジルイノシトール二リン酸、ホスファチジルイノシトール 4,5-二リン酸 Phosphatidylinositol 4,5-bisphosphate:PIP2
- グリセロリン脂質
- 多くのシグナリングタンパク質の基質である細胞膜構成微量リン脂質
PI代謝回転、イノシトールリン脂質代謝回転 phosphatidylinositol turnover:PI turnover
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ジアシルグリセロール diacylglycerol:DAG、またはdiglyceride:DG
- グリセリンに2つの脂肪酸がエステル結合を介して結合した分子である。
- 油や水などの原料とともによく食品添加物としても用いられている。
- イノシトール3リン酸:IP3とともにホスホリパーゼC:PLCによるシグナルのセカンドメッセンジャーとして働く。
- Gタンパク(Gq/G11)を介して、PLCが活性化されると、ホスファチジルイノシトール2リン酸(PIP2)を分解し、IP3と、DAGとが生成される。
- IP3が原形質中に拡散してしまうのに対して、IP3は疎水性のために細胞膜上にとどまることができる。
- IP3は滑面小胞体からカルシウムイオンを放出するのに対して、IP3は膜上でプロテインキナーゼC:PKCを活性化させる。しかしDAGがPKCを活性化させるためにはIP3によって原形質中のカルシウムイオンの濃度が上昇しなければならない。
- フォルボールエステルはDAGと同様の作用を示す。
- 1-oleoyl-2-acetyl-sn-glycerol(1-オレイル-2-アセチルグリセロール):OAGは、細胞膜を透過しやすいDAGアナログ、PKCの活性化剤
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ホスファチジルイノシトール三リン酸 phosphatidylinositol triphosphate:PIP3 ←→PI3K
ホスファチジルイノシトール3,4,5-三リン酸 :PtdIns(3,4,5)P3
- 細胞膜を通して増殖のシグナルが伝わると、細胞膜表面にあるイノシトールリン脂質「PIP2」が「PIP3」に変換される。
- イノシトールリン脂質は、PI3Kなどのキナーゼの触媒作用を受けPIP3となる。
- AktのPHドメインはPIP3と結合する性質があり、不活性な状態にあったAktはPIP3に結合後、活性化する。
- がん抑制遺伝子のPTENはPIP3を脱リン酸化することで、PI3Kの機能を抑制する。
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ホスファチジルイノシトール四リン酸 phosphatidylinositol tetraphosphate:PIP3
- 細胞膜やゴルジ体に豊富に存在し、種々のエフェクタータンパク質をリクルートすることにより膜ダイナミクスを制御したり,ホスファチジルイノシトール4,5-ビスリン酸の前駆体として機能したりする。
- 小胞体と細胞膜との接触部位あるいは小胞体とゴルジ体との接触部位を介した脂質輸送において、必須の役割を担う。
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ホスファチジン酸 phosophatidic acid:PA
- グリセロリン脂質
- グリセリンのC1、C2位に脂肪酸が、C3位にリン酸がそれぞれエステル結合した分子
リゾホスファチジン酸 Lysophosphatidic acid:LPA
- リゾリン脂質メディエーター
- LPAとは、グリセロール骨格の1,2位に脂肪酸を持ち、3位にリン酸基を持つホスファチジン酸から脂肪酸が一つ解離したもの。
- LPAは形態形成、細胞増殖、細胞生存、細胞接着、細胞移動などの重要な一連の反応を媒介する。
- LPAは7回膜貫通領域を有するGタンパク質共役型受容体のLPA1、LPA2、およびLPA3ファミリーに結合することで、その下流へのシグナル伝達を行なう。
- LPAは、LPA2,3によるGαqの活性化、ホスホリパーゼCβの活性化、従来型プロテインキナーゼCの活性化、およびグリコーゲンシンターゼキナーゼ3-βのリン酸化と阻害に依存してβ-カテニンの核への蓄積を促進する。
- シグナリング分子の働きをするリン脂質誘導体であり、ホスファチジン酸合成の中間生成物でもある。
- 生体膜を構成するリン脂質は、通常2本の脂肪酸を有し、1分子の形がほぼ円柱形となるため、二重膜構造を作る。これに対し、脂肪酸鎖が1つだけの場合、親水基が小さくなるため分子の形が円錐形となり、ミセルを形成して、界面活性剤としての作用を持つ。
- LPAの生合成にはいくつかの潜在的ルートがある。その一つは、オートタキシン(autotaxin:ATX)と呼ばれるリゾホスホリパーゼD(lysophospholipase D:LPLD)によるものであり、リゾホスファチジルコリンからコリンを除去する。
参考1 <植田研
- 感覚神経が傷害が生されるとDRGにおいてオートタキシン(ATX/LPLD)活性によりリゾホスファチジルコリン(lysophosphatidylcholine:LPC)からLPAが産生される。
- 産生されたLPAはLPA1受容体に作用し、脱髄並びにそれに伴う有髄A線維の電気的混線(エファプス)及び神経発芽(スプラウティング)を形成させる。→Aβ線維を介する触覚情報がC線維およびAδ線維を介する侵害情報に変換する。→アロディニア
- これと並行して、神経傷害によって有髄A線維における電位依存性Caチャネルα2δ-1(Cavα2δ1)タンパク質の発現上昇を生じることで、疼痛性脊髄伝達が促進され、痛覚過敏応答につながる。
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