アメナメビル amenamevir:AMNV(アメナリーフ®)
- アステラス製薬株式会社が創製し、マルホ株式会社が開発した新規作用機序の経口抗ヘルペスウイルス薬 2017年7月3日に帯状疱疹に対する効能・効果で医薬品製造販売承認を取得し、2017年8月30日に薬価収載、2017年9月7日から販売を開始
- ヘリカーゼ・プライマーゼ阻害:ヘルペスウイルス増殖の初期段階に働くヘリカーゼ・プライマーゼ複合体 アメナメビルはヘリカーゼ・プライマーゼ活性を直接阻害することで、二本鎖DNAの開裂及びRNAプライマーの合成を抑制し、ヘルペスウイルスの増殖を初期段階で阻害する。
- 新規作⽤機序で早期からの効果発現が期待され、既存薬よりも⾼い抗ウイルス活性を⽰す。
- 腎機能の程度に応じた投与量設定の必要がない
- 肝代謝:腎機能低下時の減量は必要ないが、CYP3A,2B6誘導作用があり、
CYP関連の相互作用に注意必要
|
アシクロビル acyclovir:ACV(ゾビラックス Zovirax®)
- ウイルス感染症の治療薬である。ヘルペスウイルスなどに対して有効。
- DNAポリメラーゼ阻害
- 単純ヘルペスウイルス感染症(単純疱疹)の治療や骨髄移植時における発症抑制、水痘、帯状疱疹の治療などに使われる。
- 皮膚病変が出始めてから72時間までに投与すれば、症状を緩和できる。
- Gertrude Belle Elion(P 1918/1/23〜1999/2/22, 米国の生化学者、薬理学者、ノーベル生理学・医学賞受賞)
がバローズ・ウェルカム研究所で開発した。
- 核酸塩基のグアニンのアナログで、デオキシグアノシンの9位Nのデオキシリボースの代わりの非環状のヒドロキシエトキシメチル基を側鎖としたもの。
- ヘルペス群ウイルスが感染細胞に入ると、ウイルス由来のチミジンキナーゼによってリン酸化されてSCV-1リン酸となり、さらに細胞のリン酸化酵素により2リン酸、3リン酸になり、ウイルスDNAポリメラーゼの阻害物質としてまたはdGTPと競合して、ウイルスDNA合成を特異的に阻害する。
- 選択毒性が高く、正常細胞内ではほとんどリン酸化されず、不活性のままなので、細胞毒性はきわめて低い。
- 1型単純疱疹ウイルス (HSV-1)、2型単純疱疹ウイルス (HSV-2)、帯状疱疹ウイルス (varicella-zoster virus: VZV)の順に活性が強い。
- ヘルペス科の中でもサイトメガロウイルスは thimidine kinase を持たないため無効である。
- 核酸のプリン体のグアニンの類似物質でDNA合成に使われると、そこでDNA合成がストップし、抗ウイルス効果を発揮する。
- もっとも一般的な副作用
- 血液及び尿検査における腎機能の増加
- 悪心
- 嘔吐
- 下痢
- 注射した部位の痛みと炎症
|
|
- まれな副作用
- 皮膚の発疹
- 震え
- じんましん
- かゆみ
- めまい
- 錯乱
- 発作
- 疲労
|
|
- 免疫不全のない患者に発生した帯状疱疹にアシクロビルを経口投与すると、皮疹の治療は促進され、急性期の激しい痛みは早期に軽減する。
- 疱疹痛が完全に消失するまでに要する期間も短縮する。
免疫不全患者に発症した帯状疱疹は、アシクロビルの静脈内投与により、内臓播種などの合併症の発生を減少させる。
|
バラシクロビル valacyclovir:VACV(バルトレックス® Valtrex®)
- アシクロビルのプロドラッグ:投与後に体内でアシクロビルに変化して作用を発揮する。
- 経口で十分な濃度になるので点滴注射の必要がなくなった。
- バラシクロビルはバリンとアシクロビルがエステル結合したもので、エステラーゼによって抗ウイルス作用を持つアシクロビルに変換される。
- バリンとの結合によって体内への吸収率が高まることにより、経口アシクロビルより生体利用率が高くなっている。
- バラシクロビルは初回通過代謝によりアシクロビルに変換されるため、生体内利用率はアシクロビルの3〜5倍となる。
- 適応:1型および2型単純ヘルペスおよび水痘・帯状疱疹ウイルスに対して活性を有する。口唇ヘルペスや性器ヘルペスに代表される単純疱疹、あるいは帯状疱疹の発症時の他、再発を繰り返す性器ヘルペス患者に対して、症状の再発をあらかじめ抑制するための投与法の他、水痘に対しても承認されている。
|
ファムシクロビル famciclovir(ファムビル® Famvir®)
- 2008年6月13日付で旭化成ファーマが製造販売承認を取得し、マルホ株式会社が7月1日から発売を開始した。
- 抗ウイルス薬:適応は「帯状疱疹」のみ
- ペンシクロビルのプロドラッグ
- 経口吸収性を改善したプリン骨格を有する新規の抗ヘルペスウイルス剤
- 服用後速やかにペンシクロビルに代謝された後、ヘルペスウイルス感染細胞内において特異的にリン酸化され、ペンシクロビル三リン酸となり、ウイルスの DNA合成を阻害することにより、ヘルペスウイルスの増殖を抑制する。
- ファムシクロビルは生体内利用率が75〜77%で、バラシクロビルやアシクロビルに比べて高いこと、体内吸収後の活性体ペンシクロビルがヘルペスウイルス感染細胞内において特異的にリン酸化され、ペンシクロビル三リン酸となりウイルスのDNA合成を阻害することにより、ヘルペスウイルスの増殖を抑制する。
|
ガンシクロビル ganciclovir:GCV(デノシン®、バリキサ®) ←→HSV-TK遺伝子/ターゲッティングベクター
- ウイルス感染症の治療薬
- バルガンシクロビル塩酸塩はガンシクロビルのプロドラッグであり、吸収率は60.9%に上昇している。
- アシクロビルの構造と薬物動態が類似しているが、インビトロではサイトメガロウイルス:CMBに対して大きな活性をもっている。
- ヌクレオシドのひとつ、グアノシンのアナログ(類似物質)である(9-[(1,3,-dihydroxy-2-propoxy)methyl] guanine)
- 効果・効能:ヘルペスウイルスの一つであるサイトメガロウイルスに対して効果がある。その他、単純ヘルペスウイルス1型・2型、EBウイルス、ヒトヘルペスウイルス6型に対する効果も確認されている。エイズ患者、臓器移植患者、悪性腫瘍患者などのサイトメガロウイルス感染症の治療もしくは予防目的で投与する。
- 作用機序:細胞内に入ると、サイトメガロウイルスのORF UL97の産物であるキナーゼもしくは単純ヘルペスウイルス・水痘帯状疱疹ウイルスのチミジンキナーゼの作用によりガンシクロビル5'-三リン酸までリン酸化され、これはDNAポリメラーゼによるdGTPの使用を完全に阻害する。このガンシクロビル三リン酸は、宿主よりもウイルスのDNAポリメラーゼにより高い親和性を有している。また、ウイルスDNAに直接結合することによりDNA鎖の伸長を阻害する。
|
ペンシクロビル penciclovir
- リン酸化されたグアノシン類似物質であり、ウイルスDNAポリメラーゼを競合的に阻害する。
- ペンシクロビルのクリームは、成人の再発性口唇ヘルペスに塗布される。
|
ビダラビン vidarabine(アラセナ®)
- 抗ウイルス薬:帯状疱疹や単純疱疹の治療に用いられる。
- 皮膚から吸収されて、水痘、帯状疱疹ウイルスの増殖を抑える作用がある。
- 発病して5日以内に使用を開始すると効果がる。
- ウイルスのDNA合成を阻害し,単純ヘルペスウイルス感染症に有効である。
- イドクスウリジンに比べ薬剤耐性の出現に感受性が低く、イドクスウリジン耐性の感染症はしばしばビダラビンに反応する。
- ビダラビンの眼用製剤は、HSV-1およびHSV-2によって引き起こされる急性角結膜炎および再発性表在角膜炎に対して有効である。
- 可能性のある有害作用としては,流涙、刺激、痛み、および羞明を伴う表在性点状角膜炎がある。
|
イドクスウリジン idoxuridine:IDU
- 1962年に角膜ヘルペスの治療にイドクスウリジンが登場した。
- ヘルペスウイルスを死滅させる抗ウイルス薬
- 新合成されるDNAにおいて、イドクスウリジンは非可逆的にチミジンに置き換わり、ウイルスおよび宿主細胞の中でDNAの立体構造を本質的に非機能性とする。
- 適応症:単純ヘルペスウイルスによる角膜症
全身毒性が強いため、局所治療に限られている。
- 副作用:眼瞼の刺激、痛み、羞明、かゆみ、および炎症または浮腫。まれにアレルギー反応が起きる。
|
トリフルリジン trifluridine(トリフルオロチミジン)
- チミジンの類似物質であるが、DNA合成を阻害し、HSV-1およびHSV-2によって引き起こされる原発性角結膜炎および再発性角膜炎または潰瘍形成の治療に有効である。
- トリフルリジンはビダラビンと同様の効果があるが、イドクスウリジンやビダラビンに対して反応しない患者において効果がありうる。
- トリフルリジンは骨髄抑制作用をもつため全身的使用はできない。
- 有害作用には、眼の刺痛、眼瞼浮腫があり、ならびに頻度は低いが点状角膜炎およびアレルギー反応がある。
|