■基礎の基礎

│脳の基礎の基礎-大脳│

　←→大脳皮質/終脳/発生/脳神経/脳血管/血液脳関門

→分類/6層構造/皮質板形成/脳室/脳脊髄液/ブロードマン


• 脳脊髄を包む硬膜・くも膜・軟膜を合わせて髄膜と呼ぶ。

  髄膜　meninges 脳および脊髄の保護のための膜の総称。外側から硬膜・くも膜・軟膜という3層から成る。 脳および脊髄は、他の組織と異なり、膠原線維を組織内部にわずかしか持たないために、その外部には結合組織より成る特有の保護構造を持っている。 髄膜炎 meningitis、脳膜炎、脳脊髄膜炎 髄膜に炎症が生じた状態である。脳膜炎、脳脊髄膜炎ともいう。炎症はウイルスや細菌をはじめとする微生物感染に起因し、薬品が原因となることもある。髄膜炎は炎症部位と脳や脊髄との近接度合いによっては生命の危険があるため、救急疾患に分類される。 最もよくみられる髄膜炎の症状は頭痛、項部硬直であり、発熱や錯乱、変性意識状態、嘔吐、光を嫌がる（羞明）、騒音に耐えられなくなる（音恐怖）などといった症状を伴う。 ビオー呼吸と呼ばれる、間欠的に無呼吸の時間が現れる特殊な呼吸の状態が一時的にみられる場合もある。 小児例では不機嫌や傾眠などの非特異的症状が目立つものの、大泉門が閉鎖していない場合は膨らむことがある。 項部硬直　nuchal rigidity、neck stiffness 髄膜刺激症状の一つ。髄膜炎やくも膜下出血の際には、髄膜、頸部神経、神経根部に浮腫が生じ、疼痛閾値が低下するとともに，後頭部，項部の筋肉に持続的な収縮がおこる。 この状態の患者の頭頸部を他動的に前屈させると，髄膜や神経根部が緊張し疼痛が誘発されるため、同部にかかる緊張を最小限にしようと、後頭部および項部の筋肉が反射的に緊張して抵抗が生じる。この一種の防御反応を項部硬直という。 実際，生理学的に脊柱や硬膜は，頭頸部を前屈させることにより，頸部で5mm，脊髄円錐部で1mm程度頭側に偏位し，硬膜内神経根や硬膜外脊髄神経の緊張が増すことが知られている。

  硬膜　dura mater　←→硬膜外ブロック/硬膜外麻酔/硬膜外腔 脳脊髄を包んでいる硬い膜で、脳や脊髄を外傷や感染から守る。 脳を包んでいるのが脳硬膜、脊髄を包んでいるのが脊髄硬膜である。 硬膜静脈洞　dural venous sinuses　←→脳の動脈 2葉の脳硬膜の間に生じた間隙で、内面は血管内膜の続きによっておおわれている。 脳の静脈血が集まり、内頸静脈に送り出される。脳硬膜を構成する外層と内層は、ほとんどの部分で密着しているが、正中部など一定の部位では分離し、硬膜静脈洞を形成している。 横静脈洞、上矢状静脈洞、下矢状静脈洞、直静脈洞、海綿静脈洞などがある。ここには頭蓋内の静脈血のほとんどが集められ，内頸静脈に注ぐ。 横静脈洞　Transverse sinus、Sinus transversus 二つの横静脈洞は静脈洞交会から起こり後頭骨の横洞溝の中を、外側に向かってから前方に走る。 そして左右のそれぞれの横静脈洞は、後頭骨と側頭骨の岩様部との縫合部でＳ状静脈洞となって下方に曲がり後方に向かう。 横静脈洞には上錐体静脈洞、下大脳静脈、下小脳静脈、板間静脈などが注ぐ。 Ｓ状静脈洞　Sinus sigmoideus Ｓ状静脈洞は横静脈洞に引き続いて側頭骨乳突部内面を下内側に屈曲して走り、頚静脈孔で内頚静脈につづく。 上矢状静脈洞　Superior sagittal sinus、Sinus sagittalis superior 大脳鎌の上縁に沿って、盲孔から静脈洞交会まで縦走する。 この上矢状静脈洞は尾側にいくに従い大きさを増す。 この縦走する静脈洞の中央部には、数や大きさがさまざまな裂孔すなわち静脈裂孔がある。 下矢状静脈洞　Inferior sagittal sinus、Sinus sagittalis inferior 大脳鎌の下縁に沿って走り、尾方で大大脳静脈と合流して直静脈洞になる。 下矢状静脈洞には大脳半球内側面からの静脈を少数のものが注ぐ。 直静脈洞　straight sinus 大脳鎌と小脳テントが融合する部位に存在し、静脈洞交会に注ぎ込む。 海綿静脈洞　Intercavernous sinus、Sinus intercavernosi 左右の海綿静脈洞を前方および後方で吻合させる静脈洞で、下垂体の後ろを前方に進み海綿静脈洞とともに輪状静脈洞を形成する。 メッケル腔（三叉神経腔）は海綿静脈洞内にある。 静脈洞交会　Confluens sinuum 上方や後方から注ぎ込んできた硬膜静脈洞は、内後頭隆起の近くで合流する。この合流部分を静脈洞交会とよぶ。 静脈洞交会は非対称的である場合が多い。

  くも膜　arachnoid mater 脳脊髄を覆う3層の髄膜のうち、外から2層目にあたる膜 名前の由来は、小柱の入り組んだ様子がクモ（ラテン語でarachnoid）の巣を思わせることから 硬膜には密着しているが、内の軟膜との間には脳脊髄液で満たされているくも膜下腔があり、小柱という線維の束がくも膜と軟膜をつなぐ。 くも膜下腔内に存在する動脈瘤が破れるとくも膜下出血をおこし、空間が限られる頭蓋内では重症化しやすい。 脳内脈絡叢から産生された髄液が、脳表のくも膜顆粒、軟膜を介して吸収される。くも膜下出血などでくも膜下腔の髄液吸収路が障害されると、髄液貯留がおこり水頭症となる。 くも膜顆粒　arachnoid granulation　＝パッキオーニ小体　Pacchioni's granulations 静脈洞に突出する桑の実のような中皮の塊である。 上矢状洞など主要な静脈洞の内壁にあるイチゴ状の小体 発見者のイタリアの医師Antonio Pacchioni（1665〜1726）の名を冠してパッキオーニ小体またはパッキオニ腺とも呼ばれる。 脳のくも膜のある部分ではその外面が硬膜に向かって桑の実のような膨隆をつくり、硬膜と融合して硬膜静脈洞に突出しくも膜顆粒を形成している。 くも膜顆粒はくも膜の外面に並ぶ中皮が集まり、結節状に盛り上がったもので中皮由来の細胞が単層または重層になって果粒の表面をおおい、内部には結合組織のふくらみがみられる。

  軟膜　pia mater 脳および脊髄を包む髄膜のうち、もっとも内部にある膜。ラテン語の「pia mater」は「優しい母」の意味であり、これはアラビア語の軟膜にあたる語の意味に由来する。 軟膜は発生学的には神経堤に由来する。薄く網状の膜で、脳の表面を隙間なく覆っており、皮質の溝の中にまで入り込んでいる。 軟膜はさらに外側の上軟膜層 (epipial layer) と内側の内軟膜 (intima pia) の2層に分けられる。 脳内軟膜は隙間のない膜で、脳および脊髄の神経組織と癒着している。血管が脳内に入り込むところでは、内軟膜も折れ曲がって血管を包み込むように脳内に入り込んでいる。内軟膜の細胞は血管からではなく、神経組織内を拡散する脳脊髄液に栄養を依存する。上軟膜層は膠原線維状の組織が網の目のようにはりめぐらされた膜で、軟膜の外側を包むくも膜の小柱とつながっている。大脳皮質には上軟膜がなく、脳に栄養する血管は内軟膜の上を走り、くも膜の小柱によって固定されている。 脳内部の空間である脳室内のうち、側脳室下角の内側面、第3脳室と第4脳室下部の天井には脈絡叢があり、ここで軟膜は脳室上衣細胞と癒着して脈絡組織を形成している。これは脳室内に浮かんだ脈絡叢をつなぎとめる役割を果たしている。 脊髄では、両外側の軟膜は膜状の組織となってクモ膜を突き破り、硬膜に付着して脊髄をつなぎとめている。鋸歯状に分布するこの組織を歯状靱帯という。

  
  
  

  灰白質 gray matter　←→6層構造 大脳の灰白質は脊髄とは違い、大脳の表面を覆う。 大脳皮質の表面では、細かく曲がった脳溝がいくつも存在する。 溝と溝との間には、脳回がある。大脳皮質の表面積は、溝と回によって大きくなっている。 大脳皮質は、前頭葉、側頭葉、頭頂葉、後頭葉の4つの脳葉に分けられている。 前頭葉と側頭葉との境目には、外側溝がある。 前頭葉と頭頂葉との境目には、中心溝がある。 頭頂葉と後頭葉との境目には、頭長後頭溝がある。 外側溝の深い部分には、皮質領域である島（島皮質）が存在する。 灰白質を、ニッスル染色やHE染色などで染めて光学顕微鏡で観察すると、ニューロンやグリアの細胞体や核が染色される。染色される構造体の間の領域は淡明な網状組織として観察され、これをニューロピルとよぶ。

  白質 white matter 大脳半球の内側には、有髄線維の集合体となっている白質が存在する。 白質の有髄線維を大きく分けると、交連線維、連合線維、投射線維に分類される。 交連線維 commissural fiber　←→交連ニューロン 左右の脳を結ぶ線維群 　→脳梁 大脳皮質間を結ぶ最大の交連線維で、左右の皮質領野の対称的な部位を相互に連絡する。 前交連 anterior commissure 左右の辺縁皮質および側頭葉皮質を結ぶ交連線維束 てんかん発作の半球間拡延を抑える外科的治療として脳梁と前交連の切断 commissurotomyが行われる。 後交連 posterior commissure 上丘と視蓋前域から他側の上丘・視蓋前域や動眼神経核への交連線維束 他の交連線維:脳弓交連、海馬交連、手綱交連などがある。 さらに，左右を結ぶものとして視床間橋や視床下部の前下部、さらにその前の終板などがある。 　→脊髄白前交連 commissura ventralis alba 脊髄後角の2次ニューロンあるいは3次ニューロンの軸索は、白前交連で交叉した後、対側の前側索を上行する。 　←→myelotomy 連合線維 association fiber 同側の大脳半球の異なる領域を繋ぐ線維で、以下の2種類が存在する。 隣接する脳回を繋ぐ、短い連合線維 異なる領域にまたがる、長い連合線維 名称 起点 終点 鉤状束 前頭葉 側頭葉 帯状束 帯状回 内嗅皮質 上縦束 前頭葉 後頭葉 垂直束 下頭頂小葉 紡錘状回 後頭前頭束 後頭葉 前頭葉 脳弓 海馬 乳頭体 投射線維 projection fiber 脊髄や脳幹などを大脳皮質につないでいる線維 尾状核とレンズ核の間にある白質である内包を通るものが多い。

○大脳皮質の発生学的な分類　←→発生過程の神経細胞増殖

同種皮質＝新皮質 neocortex ┏同型皮質 isocortex、homogenetic cortex ＝ 連合野 ┗異型皮質 heterotypic cortex ＝ 感覚野、運動野 系統発生的に比較的新しい 連合野はI〜VI層のどの層もほぼ均等 運動野と感覚野も発生の途中に、６層全層が存在する時期があるが、 成体では皮質各層は不均等 　 第IV層 第V層 　 運動野 薄い 発達 出力細胞がある層が発達、無顆粒皮質 体性感覚野 発達 薄い 入力細胞がある層が発達

不等皮質 allocortex、異種皮質 heterogenic cortex ≒辺縁皮質　←→辺縁系 ┏中間皮質 mesocortex ：帯状回、海馬傍回、中間核 ┃６層を全部は区別できない ┣原皮質 archicortex ：海馬、歯状回 ┗古皮質 paleocortex ：梨状葉、嗅球

大脳新皮質　Cerebral neocortex, isocortex 大脳の部位のうち、表面を占める皮質構造のうち進化的に新しい部分である。 合理的で分析的な思考や、言語機能をつかさどる。 いわゆる下等生物では小さく、高等生物は大きい傾向がある。 人類では、中脳、間脳などを覆うほどの大きさを占めている。 厚さおよそ2mmの皮質状組織で、灰白色を呈し、6層構造をもつ。

○6層構造　←→皮質板形成/嗅球/網膜

• 哺乳類の大脳新皮質は形態と機能の異なったニューロンが6層に配列している。
• 大脳皮質は胎生期に神経前駆細胞から作られる神経細胞によって構成されている。
• 大脳新皮質の6層の構造は，その深部で生まれた多数の興奮性ニューロンが表層にむかい、順に移動をくり返すことにより形成される。
• 大脳新皮質の興奮性ニューロンは、脳室帯に存在する神経幹細胞である放射状グリアが分裂して生まれる。大脳新皮質の6層の構造は、このようにして生まれた多数の興奮性ニューロンが順に移動をくり返すことにより形成される。

  第I層	表在層 　zonal layer =分子層 　molecular layer	ニューロンに乏しい。 主として、接線方向に走る線維網によって構成されている。 第2層、第3層、第5層の錐体細胞と紡錘形細胞の頂上樹状突起は第1層まで広がる。 星状細胞とマルチノッチ細胞の軸索が入る視床からの求心性線維、連合線維および交連線維もこの層に入る。 これらの神経線維の間に、カハールの水平細胞が散在する。 多数のシナプス結合が形成されている。
  第II層	外顆粒層 　external granular layer	多数の小錐体細胞と星状細胞で構成されている。 樹状突起は分子層に達し、軸索は深層に達してここで終止するか、または白質に入る。 同側および対側の大脳皮質へ出力する。
  第III層	外錐体細胞層 　external pyramidal layer	主として錐体細胞によって構成されている。 この層の浅い所から深い所に行くにしたがって、細胞体の大きさが増す。 錐体細胞の頂上樹状突起は分子層まで達し、軸索は投射線維、連合線維および交連線維となって白質に入る。
  → 第IV層	内顆粒層 　internal granular layer	密につまった星状細胞で構成されている。 視床の特殊核からの入力（視床皮質投射線維） この層には多数の水平に走る線維が見られる。 これらの線維は外バイラルジア線条と呼ばれる。
  第V層 　→	内錐体細胞層 　internal pyramidal layer	大型ないしは中等大の錐体細胞がある。 錐体細胞の中には、星状細胞とマルチノッチ細胞がみられる。 この層には内バイラルジア線条を形成する多数の線維が水平に走っている。 中心前回の運動野では、この層の錐体細胞はきわめて大きく、ベッツ細胞と呼ばれる。 皮質下核（線条体、赤核、橋核、オリーブ核）や脊髄への投射線維を出力
  第VI層	多形細胞層 　multiform layer	大多数は紡錘形細胞であるが、細胞体が三角形または卵形に変形した錐体細胞も多数みられる。 マルチノッチ細胞もこの層にみられる。 この層の下にある白質から皮質に入る線維および皮質から白質に入る線維がこの層を通っている。 視床へ出力（皮質視床投射線維）
  →白質 white matter

  
  
  

  入力 線維	特殊投射線維 specific projection fiber 対応する視床中継核から入力する。 第IV層へ投射し、多数枝分かれして終止する。
  	非特殊投射線維 視床中や他の皮質領域から入力する。 全層にわたって上行し、全層に終末枝を出す。
  構成 細胞	出力ニューロン 第V層の巨大錐体細胞 pyramidal cell（Betz細胞）や第VI層の紡錘細胞 皮質を出て脳幹や脊髄に終止する。 錐体細胞は1本の先端樹状突起 apical dendritesがあり、第１層まで伸びている。 短い多数の基底樹状突起basal dendritesがある。 線維投射は第V層の錐体細胞に由来し、交連線維および連合線維は３層錐体細胞に由来する。
  	介在ニューロン 軸索が皮質内にとどまる細胞 星状細胞、顆粒細胞---最も多い、第IV層に豊富 水平細胞---第I層 マルチノッチ細胞---深層、浅層に軸索を送る。 小型錐体細胞---第II,III層、深層に軸索を送る。
  	連合ニューロン 軸索を白質を通して他の皮質領域に送る細胞 小型錐体細胞---第III層深部、第IV層浅部

  
  

  錐体細胞 pyramidal cell　←→錐体路 Santiago Ramón y Cajalが発見・研究した：細胞体がいくらか長く伸びた錐形をしているためこの名がある。 網膜視細胞の錐体細胞 cone cellは別物 錐形、ピラミッド型の大型細胞 細胞体は直径20〜70 μm程であり、グルタミン酸を神経伝達物質として持つ興奮性ニューロン 大脳皮質や海馬（CA1、CA3）、扁桃体に存在する主要な興奮性ニューロン 大脳皮質の神経細胞のうち約80%が錐体細胞である。 皮質でも海馬でも錐形の頂点方向が表面方向を向いている。 外顆粒層、外錐体細胞層、内錐体細胞層 長い軸索を持ち、処理した情報を脳のほかの部分へと伝達している。 典型的な錐体細胞では、錐体形をした細胞体の頂点からから尖端樹状突起 apical dendritesが延び、大脳皮質では主として I 層に比較的長い枝を広げる。 樹状突起は斜め方向に房状分枝を出しながら、数百μmに渡って一方向に直線的に伸びる。 錐形の裾野の部分からはいくつかの基底樹状突起 basal dendrite が延び、主として周囲の他の神経細胞とのネットワークを構成している。 円錐の頂点の反対側から軸索が延び、大脳ではこれは皮質を抜け出し白質を通じミエリン鞘をまとって他の領野や深層の核へ向かう。

  顆粒細胞 granule cell　→歯状回・顆粒細胞/嗅球・顆粒細胞 小さな丸い細胞 局所的な情報処理に関わる。

  バスケット細胞 basket cell　→歯状回・バスケット細胞　参考1 脳領域の海馬や大脳皮質、小脳の分子層にあるGABA作動性介在細胞 元々はネコやサルの皮質細胞で、軸索が標的細胞の細胞体をバスケット状に囲むことからバスケット細胞と命名された。 同様な細胞はラットなどでは見出し難かったが、軸索のシナプスブトンの多くが（15-40％）標的細胞の細胞体と樹状突起基部に存在するものをバスケット細胞とした。 大脳皮質や海馬では錐体細胞、小脳においてはプルキンエ細胞にシナプスを主に形成する。 バスケット細胞の樹状突起は、多極で複雑に広がっている。大脳皮質や海馬では、カルシウム結合タンパク質であるパルブアルブミンや、コレシストキニンを発現している。 最も多くみられるのはfast-spiking型であるが、late-spiking型やnon-FS型の発火特性を示す細胞もある。 大型バスケット細胞のnon-FS型ではCCKを発現していることが多く、小型バスケット細胞はVIP/CCK/CRFなどを発現していることが多い。

  星状細胞 stellate cell 尖端樹状突起の発達の乏しい興奮性神経細胞 有棘星状細胞 spiny stellate cell 樹状突起が四方八方に伸び、トゲトゲの球形に見える細胞 先端突起がなく、細胞体から放射状に樹状突起を出している。 細胞の近傍の入力しか受けず、サルなどでは第VI層にあると言われるが、ヒトではあまりない。 グルタミン酸作動性興奮性の投射ニューロン 星状錐体細胞 star pyramid cell 尖端樹状突起の発達の乏しい興奮性神経細胞 周囲に放射状に繊維を伸ばす。

  マルチノッチ Martinoti's cell 小型の多極神経細胞で、分枝した短い樹状突起があり大脳皮質の種々の層に散在する。 軸索は皮質表面に伸びる。 抑制性（GABA作動性）の介在ニューロン

○発火特性による皮質抑制性ニューロンの分類

• 抑制性介在ニューロンは電気生理学的に3つのタイプにわけられる
  　：Regular-spiking ニューロン、Intrinsic bursting ニューロン、Fast-spiking ニューロン

  Regular-spiking ニューロン：RSNP 皮質ニューロンで最も多くみられる電気的特性 多くの錐体ニューロンと一部の介在ニューロンがこの発火特性

  Intrinsic bursting ニューロン：IS 皮質第V層の錐体ニューロンの一部に特徴的な発火特性

  Fast-spiking ニューロン：FS　参考1 電気生理学的には非常に早い発火特性 鋭い活動電位が高頻度に持続する。 non-accommodating：NAC：発火率は電流に対して急峻に増大してほとんど順応しない。 onsetとsteady-state firingで分類 bursting NAC：FS onsetで>3AP late-spiking型：delay NAC：LS Kawaguchi&Kubota,1998 脱分極させたとき、発火が遅れる。 classical NAC（FS）onset burstingやdelayない 5層介在細胞のFS細胞と錐体細胞間では両方向性のシナプス結合が多くの細胞ペアで見られるのに対して、non-FS細胞と錐体細胞間では双方向結合は殆ど見られない。　参考1 パルブアルブミン陽性、Kv3.1b カリウムチャネル陽性の介在ニューロングループに限定してみられる発火特性

  non-FS型 大型バスケット細胞のnon-FS型のでは、CCKを発現していることが多。

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○大脳皮質の発生
○胎生期の皮質板形成　←→6層構造/神経新生/発生/移動/マーカー/層特異的マーカー　参考1/2

• 大脳皮質（大脳灰白質）においては神経細胞が整然と配置し、大脳新皮質と呼ばれる部位では6層からなる層構造を形成する。
• 皮質神経細胞はマウスでは胎生11(or 12)〜16日目に産生される。
• 興奮性神経細胞は主に終脳背側部の大脳皮質原基（=外套　広義の大脳皮質）と呼ばれる部位の脳室面にある脳室帯及び脳室下帯から産生される。
• 抑制性神経細胞は主に終脳腹側部の基底核原基と呼ばれる部位の脳室面から産生される。

  胎生初期	胎生中期	胎生中期〜胎生後期		成体脳
  神経上皮	プレプレート 中間帯 脳室帯	辺縁帯 皮質板 サブプレート 中間帯 脳室帯	辺縁帯 皮質板 サブプレート 中間帯 脳室下帯 脳室帯	第I層 第II層↓ 第III層 第IV層↓ 第V層↓ 第VI層↓ 白質 上衣層

  
  
• 成体の大脳新皮質の6層構造の元は神経管から形成される。
• 胎生期の脳では領域特異的な遺伝子が発現し、脳を正しく領域化する。　→マーカー/層特異的マーカー
• 胎生初期（神経幹細胞の自己増殖期）の側脳室が拡大する時期には、脳室帯に存在する神経上皮細胞（神経幹細胞）が対称分裂を繰り返して、自己増殖している。やがて神経上皮細胞は対称性分裂による自己増殖と非対称性分裂による神経細胞産生の両方を行うようになる。
• 脳壁が厚くなる胎生中期（ニューロン分化期）以後、放射状グリア（神経上皮細胞）は非対称分裂を行って、神経幹細胞と神経細胞を産生する。娘細胞の一方は神経幹細胞として脳室帯に留まり、もう一方の細胞は分裂を停止して神経細胞に分化するか、神経細胞に運命決定された2次的な増殖細胞（basal progenitor）となって脳室下帯へと移動する。
• 生まれた直後のニューロンは多数の突起を激しく伸縮させていて、多極性ニューロンと呼ばれている。多極性ニューロンは明確な方向性がない「多極性移動」という移動様式で脳室下帯から中間帯へとゆっくりと移動する。その後多極性ニューロンは突然、先導突起および軸索を伸ばした双極性の形態に変化し（多極性-双極性変換）、「ロコモーション」と呼ばれるすばやい移動様式で脳表に向かって、移動するようになる。この際、移動ニューロンは形態だけでなく、接着性も変化させ、放射状グリアの突起である放射状グリア線維に接着しこれを足場として移動する。
• 神経上皮細胞層で最終分裂を終えたニューロブラスト（最初に誕生した神経細胞）は脳室帯から中間帯を通って皮質の表面に向かって放射状に移動（radial migration）し、プレプレートを形成する。
• その後産生された神経細胞も同様に法線方向に移動（放射状移動）してプレプレートに侵入すると、プレプレートは上層の辺縁帯と下層のサブプレートに分かれ、移動してきた神経細胞はこれら2層の間で皮質板を形成する。
• その後も神経細胞の産生は続くが、皮質板内では早く産生された神経細胞がより下層（深層）を占め、後から産生された神経細胞はすでに皮質板内に存在する神経細胞を追い抜いてより上層（浅層）に分布する（inside-outパターン）。
• ここで特徴的なのは、分化した神経細胞は最初は将来第IV層になる細胞であり、次第により浅層の神経細胞が加わって厚みを増していく。このように、後に移動したニューロンほど表層に定着するような組織構築過程をinside-outパターンという。

  早生まれのニューロン、初期に産まれた皮質神経細胞　early born neurons, early formed neurons, early-produced neurons 　←→rapidly exiting population 胎生期の大脳皮質形成の初期に誕生した神経細胞は皮質板の深い場所に位置し、後から誕生した細胞ほど、表層に定着する。 脳室帯から中間帯を通って皮質の表面に向かって放射状に移動（radial migration）し、プレプレートを形成する。

  遅生まれのニューロン群　late born neurons 皮質の再上昇に移動する。 交連ニューロンはより遅生まれのニューロン群である。

  
  
• 大脳皮質層形成はリーリンシグナルによって制御されている。

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• 大脳皮質に発現がみられる転写因子の連続的な発現による制御：Pax6、Tbr2、Tbr1　参考1
• Pax6は主にVZに発現し、Tbr2は主にSVZに発現し、Tbr1はintermediate zone（IZ）からmarginal zone（MZ）にかけて発現する。
• Tbr2は分裂中のIPC細胞において発現がみられる。また、Pax6とTbr2の共局在はなく、Tbr2を発現する細胞においてPax6の発現が抑制されている。
• Pax6、Tbr2、Tbr1はそれぞれ、放射状グリアマーカー、IPC、分裂後のニューロンにおいて連続的に発現される。
• 転写因子の発現がPax6→Tbr2→Tbr1と移行するに従い、放射状グリア→IPC→分裂後ニューロンへと分化が進むと考えられる。

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• 1970 年にBoulder Committeeは、発生初期の中枢神経系を4つの区域に分けた。
  　軟膜（最外層）から脳室側（最内層）までの領域を、辺縁帯 marginal zone MZ→中間帯 intermediate zone IZ→脳室下帯 subventricular zone SVZ→脳室帯 VZと命名した。
  
  

  軟膜（最外層）---basal（基底膜）　←→apical（頂点）⇩/basal@V-SVZ

  辺縁帯 marginal zone: MZ 胎生中期に、神経細胞あるいは神経前駆細胞は放射状グリア細胞の突起にガイドされ、基底面側に移動していくことで辺縁帯を形成する。 遅生まれの神経細胞がプレプレートに分け入ると、プレプレートは辺縁帯とサブプレートに2分される。 辺縁帯はカハール・レチウス細胞を含み、将来の大脳皮質6層構造のうち第I層になる。

  皮質板 cortical plate: CP 大脳皮質の発生期に脳室帯および脳室下帯の前駆細胞から分化した神経細胞が法線方向に移動（放射状移動）して辺縁帯とサブプレートの間に皮質板を形成する。 E13日頃から辺縁帯とサブプレートの間に皮質板と呼ばれる神経細胞層が同定できるようになる。 皮質板は生後には灰白質（狭義の大脳皮質に相当）となる。 皮質板は生後には大脳皮質6層構造のうち第II層から第VI層になる部位である。 成体の大脳皮質では皮質板という言葉は使われないが、いつの時期までを皮質板と呼ぶのかは不明である。

  サブプレート subplate 皮質板と中間帯とにはさまれた領域 サブプレートは大脳皮質で最も早期に分化する神経細胞であるサブプレートニューロンが分布し、その後に誕生する大脳皮質ニューロンからなる皮質板の基礎となる。 サブプレートに位置するニューロンから成長する軸索は、初期の暫定的な神経回路を作り出し、大脳皮質における入出力回路が完成するまでの足場として機能すると考えられている。 将来の皮質VI層下部と白質になる。 主としてコンドロイチン硫酸プロテオグリカンなどの細胞外マトリックスの成分、軸索束、サブプレートニューロンから構成される。 サブプレートニューロン　subplate neuron 大脳新皮質においてもっとも早く生まれて成熟するニューロン 生後は消失する一過的な細胞群　参考1/2 脳ができる際に、大脳新皮質と間脳の間の神経連絡の形成に寄与する。 多極性移動において脳表に向かい、ゆっくりと移動する多極性ニューロンは、サブプレート層の直下に到達すると、いったん移動を停止し、そこに約12時間とどまる。 胎生16日の時点において、サブプレートニューロンが移動ニューロンにシナプスを形成する。 サブプレートニューロンは移動ニューロンに一過的にグルタミン酸作動性シナプスを形成し、NMDA受容体を介したシナプス伝達により双極性の形態への変換をひき起こす。

  （プレプレート preplate, 原子網状層 primordial plexiform zone） 胎生中期↑に脳室帯に重層する皮質表面の層（その時期の皮質板） 最初期に誕生したニューロン（早生まれのニューロン）が形成する層 マウスでは胎生11日頃からプレプレートは出現する。その後に脳室帯で誕生する神経細胞は脳表層側に放射状に移動してプレプレート内に進入する。 ニューロブラスト（= 幼若なニューロン）は脳室壁から皮質表面に向かって中間帯内を遊走し、プレプレートで移動を停止してニューロンに分化する。 プレプレートを形成するニューロンが最も古い（早生まれの）皮質ニューロンで、カハール・レチウス細胞とサブプレートニューロンからなる。 脳室帯で新しく生まれたニューロブラスト（遅生まれのニューロン）がプレプレート進入すると、プレプレートは、上部の辺縁帯と下部のサブプレートに二分され、プレプレートと呼ばれる層はなくなる。

  中間帯 intermediate zone：IZ Tbr1は中間帯から辺縁帯にかけて発現している。 Fucciトランスジェニックマウスのスライス培養の研究　* 　中間帯にある赤色を呈する細胞（G1期）は、脳室面へ移動を開始すると同時に黄色（G1/S期移行）を経て、緑色（S/G2/M期）に変化した。

  脳室下帯、脳室下層、傍脳室領域　subventricular zone：SVZ　←→SEZ　参考1 germinal zone：脳室帯より脳表層側 発生中期？に神経上皮細胞／放射状グリア細胞の対称分裂および非対称分裂により脳室帯で生まれた細胞は分裂を停止して神経細胞に分化するか、神経細胞に運命決定された2次的な増殖細胞（Intermediate progenitor：IPC：Basal progenitor）となって脳室下帯へと移動する。 脳室帯、あるいは脳室下帯から産生された多極性細胞の多くは発生の時期に関わらず多極性細胞の形態をとり、多極性移動を示す。これらの細胞は、基本的にはその後、ロコモーションの移動様式に変化して皮質板内へと進入する。 Tbr2を発現し、Pax6の発現が抑制されている。 胎生期に形成された脳室帯と脳室下帯の構造は成体期でも維持され、成体脳でも脳室帯と脳室下帯と呼ばれることもあるが、成体脳では、上衣細胞の単層を上衣層、その内側の層（皮質側）を上衣下層 subependymal layer:SEZと呼ぶことが正しい。 皮質形成期を終えた脳室下帯には、放射状グリアから分化したアストロサイト様の神経幹細胞が定着し、成体脳内でニューロンを産生し続ける特殊な領域となる。 3層構造の大脳皮質を有する鳥類・爬虫類などではみられず、哺乳類に特異的な構造である。霊長類などの高次の動物種では、顕著に脳室下帯が拡大しており、進化の過程における大脳皮質の発達に寄与していると考えられている。 皮質形成後期（マウスの胎生15〜16日目）になると、脳室帯に直接由来する神経細胞と、脳室下帯でさらに分裂する集団での移動様式の違いが明確になってくる。 移動パターンの違いに注目した場合、脳室帯由来の神経細胞（SEP）は脳室下帯分裂細胞（REP）よりも脳室帯を離れるタイミングが遅い。 rapidly exiting population：REP 皮質形成後期に脳室帯で産生されて、脳室帯を早く離れる集団 脳室帯で産生されて、脳室下帯で再度分裂する細胞 脳室下帯分裂細胞は細胞体トランスロケーションにより脳室帯を離れ、脳室下帯で突起を失い、多極性細胞蓄積帯：MAZよりも上部で分裂して、多極性細胞となる。 マウスの場合、これらの細胞の多くは脳室下帯で突起を失い、分裂して2つの神経細胞となる、いわゆるbasal progenitorである。 slowly exiting population ：SEP 皮質形成後期に脳室帯で産生されて、脳室帯を遅く離れる集団 脳室帯から直接産生された神経細胞は脳室帯内でしばらく留まった後、多極性細胞の形態をとり、脳室帯直上に帯状に蓄積して細胞密度の高い領域を形成する。これを多極性細胞蓄積帯：MAZと呼ぶ。 これらの多極性細胞は約24時間MAZ内に留まった後、ロコモーションに変化して皮質板内へ移動する。 多極性細胞蓄積帯（multipolar cell accumulation zone: MAZ） 脳室帯内深部の帯状の領域、脳室帯直上の領域 MAZは脳室下帯の特に深部とオーバーラップするが、境界が比較的明瞭であるのが特徴である。 皮質発生後期に、脳室帯で産生された神経細胞（SEP）が多極性細胞となり、脳室帯直上で一時的に、密に蓄積するので、MAZが形成される。 霊長類の皮質形成における脳室下帯----外側脳室下帯 ourter SVZ：OSVZ　参考1 霊長類の脳発生には、脳室下帯が重要な役割を果たす。 脳室帯が主なニューロン産生領域であるげっ歯類とは異なり、霊長類脳では皮質形成の途中で脳室帯が縮小するとともに脳室下帯が拡大し、主なニューロン産生領域となる。 脳室下帯は薄い線維層によって内層と外層に分けられる。 内層　inner SVZ：iSVZ 分厚い外層（outer SVZ, oSVZ） oSVZには脳室帯の放射状グリアと同様の放射状の形態を保った前駆細胞（outer radial glia：oRG）が多数存在する。 これらの細胞は、自己複製しながら分裂を繰り返すことができる。 げっ歯類の脳室下帯にもoRGは少数存在する。例外はあるが、進化過程における大脳皮質の発達の程度はoSVZの細胞増殖活性と相関関係にあり、大脳皮質形成における脳室下帯の役割が注目されている。

  脳室帯、脳室層　ventricular zone: VZ germinal zone：発生期の脳室を取り囲む脳室周囲層の最も脳室面側（内側）の層 脳室帯を構成する細胞の中には、自己複製能と多分化能を併せ持つ神経幹細胞が存在する。 発生初期の脳室帯は神経上皮細胞と呼ばれる神経幹細胞によって構成され、大脳皮質を構成するための神経系細胞の供給源となっている。 脳の神経前駆細胞のほとんどは脳室面で誕生し、その後最終配置部位へ移動し分化する。 脳室帯、あるいは脳室下帯から産生された神経細胞の多くは発生の時期に関わらず多極性細胞の形態をとり、多極性移動を示す。これらの細胞は、基本的にはその後、ロコモーションの移動様式に変化して皮質板内へと進入する。 神経上皮細胞の対称分裂および非対称分裂で生まれた神経幹細胞は脳室帯に留まる。 Pax6が発現している。 脳室面で誕生した神経幹細胞／神経前駆細胞は細胞周期に同調して細胞核がエレベーター運動する。 Fucciトランスジェニックマウスのスライス培養の研究　* 　脳室帯の緑色を呈する細胞（S/G2/M期）は、移動して脳室面に到達すると分裂し、生じた2つの娘細胞は赤色（G1期）に変化して脳室面から中間帯へ移動する。 脳室面　apical（頂点）　←→basal（基底膜）⇧/apical-V-SVZ

  
  

  多極性細胞、多極性ニューロン　multipolar neuron　←→多極性細胞 胎生期に脳室帯、あるいは脳室下帯で生まれた直後のニューロン 多数の突起を持様々な方向に伸ばして、明確な方向性のない多極性移動という移動様式で、脳室下帯から中間帯へとゆっくりと移動する。 多極性移動において脳表にむかいゆっくりと移動する多極性ニューロンは、サブプレート層の直下に到達するといったん移動を停止し、そこに約12時間とどまる。 多極性ニューロンは多極性移動した後、双極性細胞に変化（多極性-双極性変換）する。

  多極性-双極性変換 脳室帯、あるいは脳室下帯から移動する多極性細胞は、サブプレート層直下で、サブプレートニューロンと一過性のシナプスを形成する。 多極性細胞はサブプレートニューロンからグルタミン酸を受け取ると、双極性ニューロンとなり、ロコモーションの切り替えが促進される。

  双極性細胞、双極性ニューロン　bipolar neuron　←→双極性細胞 進行方向側に比較的太い先導突起（leading process）、反対側には細いトレーリングプロセスを持つロコモーション細胞 双極性細胞はロコモーションの移動様式で、速やかに皮質板内へと進入する。

  
  

  germinal zone　←→幹細胞ニッチ/始原生殖細胞　 発生期前の脳において、盛んな分裂能を有する細胞が局在する領域 ventricular germinal zone　←→SVZ 脳室近傍 神経芽細胞を産出する。 subventricular germinal zone グリア芽細胞を産出する。 ventral germinal zone　←→大脳皮質抑制性ニューロンの発生 側脳室 GABA作動性介在神経細胞のサブタイプであるシャンデリア細胞が側脳室のventral germinal zoneに存在するNkx2.1陽性細胞から由来する。 germinal cell=原子細胞; 性細胞; 胚細胞; 生殖細胞; 胚芽細胞; 発芽細胞　←→始原生殖細胞　 germ cell=生殖細胞

  
  

  カハール・レチウス細胞 Cajal-Retzius Cells　参考1 Gustaf Retzius（1842/10/17〜1919/7/21 スウェーデンの内科医、解剖学者）とRamon y Cajal（1852/5/1〜1934/10/17 スペインの神経解剖学者）が同定したヒト胎児および新生児大脳皮質辺縁層を構成する神経細胞 胎生期大脳皮質原基において最も早く分化する神経細胞の1つであり、辺縁層に存在する。 軟膜面に対し放射状に広がった樹状突起と、水平方向に伸張した軸索を形態的特徴として持つ。 大脳皮質の発生初期において、カハールレチウス細胞は同時期に分化する他の神経細胞とともに、プレプレートを形成する。プレプレートは皮質板を構成する神経細胞が侵入することによって、カハールレチウス細胞を含む辺縁層とサブプレートの2つの層に分かれる。 発生期の神経系でカドヘリンやカテニンの機能を阻害すると、アドへレンスジャンクションが崩壊して大脳皮質の構造形成に障害が生じる。同様に、活性化型aPKCの強制発現マウスやアファディン欠損マウスにおいても、側脳室帯のアドヘレンスジャンクションの形成不全による異常が生じる。大脳皮質表層のカハール・レチウス細胞と神経細胞の接着はネクチン-1とネクチン-3、およびそれらを裏打ちするアファディンに依存しており、これらの異常もまた、大脳皮質形成に障害を来す。 なおカハールレチウス細胞もサブプレートニューロンも大脳皮質の発達時期に細胞移動や神経回路形成における役割を終えると、細胞死を起こし、大脳皮質から消えていく運命にある（パイオニアニューロン）。 大脳皮質神経細胞の移動と層形成に必須の分子であるリーリンを分泌する細胞であり、実験的にカハールレチウス細胞を除去したマウスでは、大脳皮質の一部の領域で層特異的神経細胞の配置に異常が生じる。 カハールレチウス細胞はグルタミン酸受容体とGABA受容体の両方を発現している。 視床および介在神経細胞からのGABAを介した線維入力は、カハールレチウス細胞と他の第I層の神経細胞の同期的発火に重要な役割を果たす。 カハールレチウス細胞にはリーリンの他、カルレチニン、カルビンディンといったカルシウム結合タンパク、細胞周期調節因子であるp73、転写因子をコードするTbr1、Emx1、Lhx6といった遺伝子が発現しており、これらの分子の発現と発生起源との相違から、カハールレチウス細胞は幾つかのサブタイプに分類されている。 ヒト胎児では、胎生期終脳原基の内側周辺部 (cortical hem)、腹側外套 (ventral pallium) および中隔野といった、大脳皮質原基以外の領域からカハールレチウス細胞が発生し、大脳皮質へと移動することが明らかとなっている。

  
  
  →神経細胞の移動
  
  

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　層特異的マーカー　←→ リーラーマウス/大脳皮質の発生/皮質板形成/6層構造/発生過程/発生/マーカー　参考1/2/3

• 大脳皮質各層に特異的に発現している遺伝子のマーカー　（P10）

  II/III層↑	mSorLA
  II/IV層	Cux1
  IV層↑	ROR-beta
  V層↑	Er81, Ctip2、TLE4、ER81、Sox5
  VI層↑	Tbr1, Nurr1, Latexin, CTGF
  II/III/IV層	Satb2

　層構造形成異常　←→大脳皮質の発生

リーラーマウス reeler mutant mouse　←→層特異的マーカー/マウス　参考DrKatsuyama 常染色体劣性遺伝性の神経奇形マウス 1951年に Douglas Scott Falconer（1913/3/10〜2004/2/23　スコットランドの遺伝学者）が発見した運動失調を呈する自然発症マウス 振戦、歩行失調などの小脳性運動失調を特徴とする。 千鳥足のような歩き方（reeling gait）をするため、reelerと名付けられた。 リーラーマウスの脳構造には、多くの異常が認められ、運動を司る小脳が非常に小さいこと、また大脳皮質の神経細胞の配置は概ね逆転する。 原因遺伝子のRELNは正常な脳の形成に必須な分子であることが推察された。 脳でタンパク質 Reelinの遺伝子（RELN）が突然変異し、ホモ接合している。 ・リーラーマウスの中枢神経系の異常 層構造を特徴とする領域（大脳皮質、海馬、小脳皮質など）に大きな異常がみつかる。 リーラーマウスの大脳皮質の層構造は、線維層である第１層を欠き、細胞層の2-6層が逆転する。 海馬の錐体細胞層の配列が乱れる。 小脳は外形的に極めて小さく、小脳溝が欠損するために小葉が認められない。さらにプルキンエ細胞が異所性に存在する。 ・リーラーの大脳皮質の発生 リーラーマウスではプレプレートの中に皮質板のニューロンが、進入できず、辺縁層とサブプレートの分離が起きない。この辺縁層とサブプレートからなる層をスーパープレート superplate という。したがってリーラーでは皮質板の細胞はサブプレートの直下に存在することになる。 リーラーの皮質板ニューロンは、プレプレートに進入できないことに加えて、遅れて発生し移動を開始したニューロン（遅生まれニューロン）が、既に移動を終えたニューロン（早生まれニューロン）を追い越すことができない。その結果、皮質の表層ほど発生的に古いニューロンで占められる（アウトサイド・インパターン outside-in pattern）。 リーリン Reelin 全長3461アミノ酸残基からなる巨大分泌タンパク質 約388 kDaからなる細胞外マトリックスの糖タンパク質として分泌される。 N末端領域、8回の繰り返し構造（リーリンリピート）、そして塩基性アミノ酸に富むC末端領域（CTR）からなる。 リポタンパク質受容体として知られるApoER2やVLDLRに結合し、細胞内タンパク質Dab1のリン酸化を誘導する。このシグナル経路の活性化により、胎生期では神経細胞の移動や形態形成が、成体期では記憶の形成やシナプス可塑性が制御される。 欠損はヒトでも報告されていて、てんかんや精神遅滞を呈する滑脳症を引き起こす。 近年、統合失調症やアルツハイマー病患者におけるリーリンの発現量低下や一塩基多型が多く報告され、精神神経疾患の発症との関連が示唆されている。 構造上の特徴から、酵素の役割を果たし、セリンプロテアーゼ活性を持つ。 神経細胞の移動と発達中の脳での中での位置の固定の過程の制御を補助するタンパク質 成体においても長期増強の誘導によるシナプスの柔軟性の調節等を行う等、働きを続けている。 樹状突起や樹状突起スパインの発達を促進し、脳室下帯等の成体の神経細胞新生部位からの移動を調整し続ける。 リーリンは脊髄や血液、その他の器官や組織でも見られる。 RELN遺伝子 65個のエクソンから構成され、約450 bpに及ぶ。 タンパク質のC末端側でたった2つのアミノ酸をコードするエクソンは、選択的スプライシングを起こすが、正確な機能は分かっていない。 遺伝子構造の中に2つの転写開始部位と2つのポリアデニル化部位が同定されている。

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○脳室 ventricle

• 脊椎動物の脳と脊髄の中に空いている空間
• 発生学的に神経管に由来する脳内の空洞
• 脳脊髄液で満たされている。
• 哺乳類では前脳に存在する2つの側脳室、間脳に存在する第3脳室、小脳と脳橋の間に位置する第4脳室で構成されている。
• 脳や脊髄の外側とつながっているのは、小脳の下部にある空間、マジャンディ孔、ルシュカ孔
• 脳室内の壁の一部には、脳脊髄液を産生する脈絡叢がある。
• 脳室系の壁を構成する上皮細胞に上衣細胞がある。
• 水頭症：脳室が拡大した病態
• MRIのT1強調画像では脳室は黒く写る。
  
  

  側脳室 lateral ventricle、procelia　←→脳室下帯/上衣下層 左右の大脳半球の内部にあり、1対ある。大脳の発達に合わせて広がった脳室 横から見ると、側脳室は大脳半球の形に沿って、Cの字型に広がっている。 前頭葉、後頭葉、側頭葉に対応するように出っ張った変な形をしている。 第3脳室とはモンロー孔を介してつながっている。 側脳室の脈絡叢で作られた脳脊髄液は第3脳室から第4脳室を通り、中心管の中で脊髄を下るほかはルシュカ孔とマジャンディ孔からクモ膜下腔に出る。 脳室の髄液の流れ：側脳室→モンロー孔→第3脳室→中脳水道→第4脳→ルシュカ孔・マジャンディ孔→脳槽→上矢状静脈洞 側脳室に面した上衣細胞の隙間からアストロサイトの形態を持つ神経幹細胞が一次繊毛を伸長している。

  室間孔 interventricular foramen ＝モンロー孔 Monro foramen 第4脳室と第3脳室を繋ぐ連絡孔 脳弓と視床前端の間を通過する。 この周辺を、漠然と大脳辺縁系と言う。 1797年にAlexander Monro II（1733/5/22〜1817/10/2, スコットランドの内科医、解剖学者）が発見した。

  第3脳室 third ventricle 間脳の内腔：左右の間脳に挟まれた空間、正中面上にある。 左右の視床を隔てる幅の狭い空間である。 両外側ではモンロー孔を通じて側脳室に、尾側では中脳水道を通じて第4脳室につながり、脳脊髄液の通り道になっている。

  中脳水道 cerebral aqueduct　←→中脳中心灰白質 ＝Sylvius水道 aqueduct of Sylvius 中脳の中を貫通する細い管状の脳室 第3脳室と第4脳室を繋ぐ連絡孔 横断面は円形または底辺を背側に向けた角のとれた三角形をなし、中心灰白質によって囲まれる。 中脳水道の存在については古くから知られていたが、Jacobus Sylvius（＝Jacques Dubois　1478〜1555, パリ大学の解剖学者、ベサリウスの師）が1555年に著書の中で初めて説明した。

  第4脳室 fourth ventricle 菱脳の内腔：脳幹と小脳に挟まれた空間：橋の背側、小脳の腹側にあり、これらにはさまれるように存在する脳室 吻側では中脳水道を介して第3脳室に、尾側では脊髄の中心管につながり、脳脊髄液の通り道になっている。 第4脳室は平らな菱形窩と、菱形窩の周りから小脳に延びる上髄帆・下髄帆の間でテントのような形になっている。その壁になっているものは以下のとおり。 上方では中脳水道と、下方では延髄の中心管につながる。 第4脳室は左右の第4脳室陥凹に開く第4脳室外側口：ルシュカ孔と尾方の第4脳正中口：マジャンディ孔とによりクモ膜下腔と交通する。

  第4脳室外側口 lateral aperture of fourth ventricle ＝ルシュカ孔 foramina of Luschka 左右に広がった第4脳室の左右端付近で、第4脳室が脳の外側につながっている穴 Hubert von Luschka（1820/7/27〜1875/3/1, ドイツチュービンゲン大の解剖学者）が1855年に記載した。

  第4脳室正中口 median aperture of fourth ventricle ＝マジャンディ孔 foramen of Magendie 第4脳室の中央（正中）の背側にあり、第4脳室が脳の外側につながっている穴 François Magendie（P 1783〜1855, フランスの実験生理学のパイオニア）が記載した。

  脈絡叢 choroid plexus 脳室壁にみられる毛細血管を巻き込み突出した部分 脳室内に突出していて、波うった脈絡叢上皮 choroid plexus epitheliumとその直下を走る毛細血管網からなる。 脈絡叢上皮、血管内皮ともに固有の基底膜をもち、両者が密接した部分では2重の基底膜が両者を隔てる。脈絡叢上皮以外の上衣は固有の基底膜を持たない。 血管に富む構造で、脳脊髄液を産生・分泌する部位 脈絡叢の大部分は左右の側脳室にあり、第3脳室、第4脳室の天井側にも少量存在する。 血液脳脊髄液関門を形成する。 血管に富んだ組織であり、脳腫瘍の好発部位でもある：脈絡叢腫瘍

  中心管 central canal 脊髄を縦走する脳脊髄液に満ちた領域 中心管は脳室系に隣接する。中心管は神経管の遺残物である。 一般的に中心管は加齢により閉鎖する。 閂は中心管と第4脳室を接続する。

  
  

  上衣層 ependymal layer: EZ　←→脳室帯/上衣下層/上衣細胞 側脳室前方の周囲、脳室壁の表面の単層上皮 lateral ventricle ependymaは脳実質と脳脊髄液を含む脳室内腔の境界を形成する多繊毛上皮の層である。 成体脳における上衣細胞が局在 胎生期に形成された神経上皮細胞が構成する脳室帯は成体脳でも維持される。 毛細血管から上衣細胞に向けて伸びたフラクトン構造が神経幹細胞のニッチとして機能する可能性がFrederic Mercier *らにより提唱されている。基底膜の主要構成分子であるラミニンやバーシカンによる斑点状のフラクトン構造が上衣細胞層に沿って観察される。 ependymal cell markers ：S100β、CD133

  上衣下層 subependymal layer: SEZ　←→脳室下帯 脳室-脳室下帯 ventricular-subventricular zone：V-SVZ　参考1 上衣層の周囲 成体期で神経新生が起こる部位であり、嗅球に新生ニューロンを供給する。 胎生期にEr81を発現する背側外側基底核原基が生後に上衣下層となり、吻側移動経路：RMSへ抑制性神経細胞を供給する。 胎生期に形成された脳室帯と脳室下帯の構造は、その後成体期でも維持される。 成体期の脳でも「脳室帯」と「脳室下帯」と呼ばれることもあるが、これらは元々発生期の脳内の層を表す言葉として命名された用語であり、「上衣層」と「上衣下層」と呼ぶのが正しい。 近年の研究によって脳室下帯の細胞構築が更に詳細に解析され、神経幹細胞の一部が脳室面に接していて、その細胞体が上衣細胞層から脳室下帯にまたがって存在することが明らかになった。このような状況を考慮して、Arturo Alvarez-Buyllaは「脳室-脳室下帯　ventricular-subventricular zone：V-SVZ」という新しい呼称を用いることを提唱した。　参考1 V-SVZは３つの領域に分けられる。 Domain I (apical)　←→脳室面@胎生期 上衣層 B1型細胞の先端突起が局在 V-SVZの脳室面にはセロトニン含有樹状突起が豊富 domain II (intermediate) B1型細胞の細胞体があり、C型細胞やA型細胞と接している。 domain III (basal)　←→基底膜@胎生期 B1型細胞の基底突起が局在し、血管壁に終足を形成している。 基底部側にはCholine acetyltransferase（ChAT）陽性ニューロンやDopaminergic terminalsが存在する。 成体の脳内ではペリサイトやアストロサイトによって血液脳関門が形成され、血管成分の脳実質への流出は制限されているが、V-SVZの血管は脳実質に比べてペリサイトやアストロサイトの被覆が少なく、物質の透過性が高い特殊な構造になっているので、血中の増殖因子やサイトカインの影響を受ける。 マウスやラットの成体脳では１日あたり、SEZでは約８万個、SGZでは約９千個のニューロンが生まれるが、多くは１週間以内に細胞死を起こす。 上衣層には上衣細胞（E型細胞）、SEZにはB型細胞、C型細胞、A型細胞が存在する。 Eは上衣細胞の英語表記のependymal cellから、A・B・CはSEZ内に占める細胞数の多い順（約3：2：1の割合で存在）に名付けられたものである。 B型細胞は神経幹細胞と考えられていて、GFAP陽性細胞である。B型細胞からC型細胞は産生され、C型細胞が自己複製を繰返して集団を増幅させた後、神経前駆細胞であるA型細胞へと分化する。 げっ歯類の中大脳動脈を閉塞して作製する脳梗塞モデルでは、線条体の外側と隣接する大脳皮質のニューロンが脱落し、梗塞巣が形成される。傷害から1週間ほど経つとSEZのニューロン産生が増加する。B型細胞（神経幹細胞）の数や活性化状態の細胞の割合が増加し、C型細胞（一過性増殖細胞）・A型細胞（神経芽細胞）の産生が促進される。 ニューロン産生の増加には、虚血による低酸素誘導因子-1α：HIF-1α)の活性化や炎症によって誘導される線維芽細胞増殖因子-2：FGF2、上皮成長因子：EGF、グリア細胞由来神経栄養因子：GDNF、脳由来神経栄養因子：BDNF、血管内皮細胞増殖因子：VEGF、毛様体神経栄養因子：CNTF、インスリン様成長因子-1：IGF-1-1など様々な栄養因子・増殖因子やサイトカインなどが関連している。また、Wnt・Notch・SHHなど生理的条件下で神経幹細胞・一過性増殖細胞の機能制御に深く関わっている分子も、傷害後に発現が上昇し、SEZにおけるニューロン産生に促進的に働く。 この反応は、ハンチントン病やパーキンソン病などの神経変性疾患モデルでも、SEZにおけるニューロン産生が亢進する。 SEZのニッチ　←→幹細胞ニッチ 細胞内シグナルだけでなく、外因性シグナルや様々な増殖因子も、V-SVZのニッチ因子として関与している。 細胞内シグナル V-SVZ の神経幹細胞はソニックヘッジホッグ遺伝子：SHH、Wingless：Wnt、Notch、骨形成因子：BMP、エフリンを含む複数のニッチシグナルに制御されている。 ケモカインストロマ細胞由来因子-1：SDF1や色素上皮由来因子：PEDFも重要な重要なニッチ因子である。 外因性シグナル 局所の脈管叢もV-SVZを制御する外因性の因子として重要なニッチシグナルとなっている。 V-SVZには血管が豊富に存在する。血管内皮細胞は血管内皮細胞増殖因子：VEGF、線維芽細胞増殖因子-2：FGF2、インスリン様成長因子-1：IGF-1、脳由来神経栄養因子：BDNFなど、細胞の生存・増殖・分化に関与する拡散性の分子を産生し、様々な器官の幹細胞を維持するニッチの構築に重要な役割を果たしている。 血管内皮細胞が産生するSDF1による誘引作用や血管基底膜に豊富に存在する細胞外基質であるラミニンとその受容体であるインテグリンがこの構造の形成に関与していて、血管との接着がB型細胞（神経幹細胞）の増殖を活性化する。また、C型細胞（一過性増殖細胞）は細胞体自体が血管のごく近傍に位置し、A型細胞（神経芽細胞）は移動過程でしばしば血管に沿っている。従って、V-SVZニューロン新生過程において、多段階にわたって血管内皮細胞や血液からの制御を受けていると考えられている。 上皮細胞から分泌されるEGF様の成長因子であるBetacellulin：BTCもV-SVZの細胞増殖やA型細胞（神経芽細胞）の産生に必要である。 末梢血流にトレーサーを注入すると、一過性増殖細胞であるC型細胞のクラスターが見出される部位に漏出が生じるということは興味深く、若い動物の血中の特定の因子を老齢動物に輸血すると神経新生を促進させるということとも結びつく。 B型細胞 Type B cell, Slow Proliferating Cells, GFAP-positive progenitors　←→SGZ-1型/神経幹細胞のマーカー B型細胞は上衣下層を構成するアストロサイト様の神経幹細胞 発生期の脳室帯の放射状グリアは、出生後約1週間までに主に脳実質のアストロサイトに分化するが、一部は脳室周囲に留まり、上衣細胞や神経幹細胞としての能力を維持した特殊なアストロサイトに分化する。 豊富な中間径フィラメント・グリコーゲン顆粒を含む明るい細胞質と細胞間隙に入り込むような複雑な形状の突起を有する細胞として、微細形態学的に同定される。 アストロサイト特異的なグルタミン酸トランスポータータンパク質GLASTや 中間径フィラメントタンパク質のGFAPを発現すると同時に、放射状グリアや神経上皮細胞に発現するFABP7/BLBPなども発現している。 Type B1 cell 脳室帯に接する場所に存在するアストロサイト 神経幹細胞を含む細胞集団である。 神経幹細胞として自己複製を行いながらゆっくり増殖を続けていて、増殖力の高いニューロンの前駆細胞である一過性増殖細胞C型細胞を産生する。 グリアのマーカーであるグリア線維性酸性タンパク質：GFAP、グルタミン酸トランスポーター：EAAT、 脂肪酸結合タンパク質：FABP7/BLBPは発現している。 B1型細胞は放射状グリアの特徴を受け継いでいてる。 B1型細胞には極性がある。 B1型細胞は脳実質側に向かって伸長して、上衣層に入り込んでいて、上衣細胞間に細い先端突起を伸ばして脳室に直接接している。 脳室面から観察すると、上衣細胞はB1型細胞の先端突起を取り囲み、風車（pinwheel）のように配列している。この風車状の配列はニューロンの産生が行われている部位に特異的であり、側脳室の尾側内側壁や第3脳室などニューロンが産生されていない領域では観察されないことから、周囲を囲む上衣細胞と神経幹細胞の何らかの相互作用が幹細胞機能の調節に関与していると考えられている。 上衣細胞層の表面に縫線核からのセロトニン作動性神経線維が網の目のように走行していて、上衣細胞やB1型細胞に直接入力して神経幹細胞の増殖を促進的に制御している。 B1型細胞は基底突起で、血管上に終足を形成している。 上衣下層には少数のコリン作動性ニューロンが存在し、活動依存的にアセチルコリンを分泌して、神経幹細胞の増殖を促進している。 B1型細胞にはquiescentとactivated stateとがある。quiescent B1型細胞はネスチンは発現していないが、activated B1型細胞はネスチンを発現していて、C型細胞を生み出す。 FGF、PDGF、IGF、Shh、Wnt、BMP、Notchなど発生を制御するシグナル分子が、神経幹細胞の増殖の制御にも関与している。 Type B2 cell 上衣下層と線条体の境界に存在するアストロサイト C型細胞 Type C cell, actively proliferating cells, transit amplifying progenitors　←→SGZ-2型 一過性増殖細胞 C型細胞はDlx2やMash1を発現する。 神経幹細胞B型細胞から産生され、ニューロンを産生する中間的な前駆細胞である。 C型細胞は自己複製を繰返して集団を増幅させた後、A型細胞へと分化する。 C型細胞はA型細胞になる前に、約3回対称分裂を繰りかえす。 増殖能が高く、短いサイクルで分裂するが、数回の分裂の後には神経芽細胞へと分化する。 微細形態学的には細胞質中に中間径フィラメントがないことや、複雑な突起も持たないシンプルな形状を持つなどの特徴から、アストロサイトと区別される。 細胞体は上衣下層の血管の近傍に分布していて、血管から様々なシグナルを受けていると考えられている。 C型細胞は黒質からのドーパミン作動性入力を受けて増殖が促進される。 転写因子であるMash1（Ascl1）、Dlx2やEGFの受容体が細胞マーカーとして用いられている。 A型細胞 Type A cell, 神経芽細胞, proliferating neuroblasts, migrating neuroblast　←→SGZ-3型 B型細胞から分化したA型細胞はDoublecortin：DCXやPSA-NCAMを発現するニューロブラスト：幼若な新生ニューロン ニューロブラストであるが発生期のニューロブラストとは異なり、A細胞は、分裂能を有する。RMSを移動中のA細胞の増殖能は嗅球に近づくに従い低下する。 A細胞はRMSでの移動過程で分化が進行するため、同一名称の細胞でありながら遺伝子発現プロファイルが大きく異なることがわかっている。 微小管関連タンパク質βIII-チューブリンやDCX、細胞表面に発現するPSA-NCAMなどが細胞特異的なマーカーとして用いられている。 A型細胞はGABAを分泌して神経幹細胞の増殖を抑制していて、SEZ内の局所的なネガティブフィードバック機構として機能している可能性がある。 A型細胞は吻側遊走経路：RMSのルート上で1回か２回以上分裂して、嗅球に到達する。 A型細胞はRMSを移動し、約4週間かけて最終的に嗅球の顆粒細胞および糸球体周辺細胞に分化、匂いの識別や記憶の形成に関与する。 進行方向に先導突起を伸ばし、脳内を吻側へと長距離にわたって移動するが、その間も増殖を続けている。 遊走する新生ニューロン自身に軸索反発性因子であるSlitが発現し、細長いチェーンのような細胞塊を形成し、グリアチューブを高速で移動し、嗅球へ至る。 嗅球介在ニューロンの起源となるV-SVZの神経幹細胞は、領域毎に産生するニューロンの種類が異なっている。 V-SVZの背側の神経幹細胞 嗅球の表層顆粒細胞とTH陽性糸球体周辺細胞を生み出す。 カルビンディン陽性細胞糸球体周辺細胞は少ない。 V-SVZの腹側の神経幹細胞 嗅球の深層顆粒細胞、カルレチニン陽性顆粒細胞、カルレチニン陽性糸球体周辺細胞、カルビンディン陽性糸球体周辺細胞とtype1〜4を生み出す。 神経幹細胞をV-SVZから取り出し、培養したのちV-SVZの別の領域に移植しても、性質が保たれることから、環境に依らない内在性の性質であると示唆される。 Pax6、Dlx2、Neurogenin2、Tbr2などの転写因子が領域によって異なる発現パターンを示し、その一部はすでに特定の種類のニューロンの産生に寄与していることが示されている。

○脳脊髄液 cerebrospinal fluid：CSF

• 脳室系とクモ膜下腔を満たす無色透明な液体
• 髄液は脳を外部の衝撃から保護し、脳圧をコントロール、脳の老廃物の排泄、栄養因子やホルモンの運搬などの様々な役割があると考えられている。
• 弱アルカリ性であり、細胞成分はほとんど含まれない。
• 脳の水分含有量を緩衝したり、形を保つ役に立っている。
• 正常脳脊髄液の総タンパク量：10〜40mg/dl　＝血清中のタンパク量の1/200以下と微量である。 血漿タンパク濃度よりも約200倍薄いことになる。
• 糖濃度：50〜80 mg/dl　髄液圧：100〜180 mmH2O　比重：1.003〜1.009 程度
• 髄液の大部分、約70%近くは脳室内にある脈絡叢で血液から産生される。
• 側脳室の脈絡叢で1日約500mℓほど産生される。
• 全髄液腔の容積は約150mℓであり、そのうちクモ膜下腔には20%の30mℓ程度存在する。
• 脳脊髄液はクモ膜下腔だけでなく、脳室系にも入っている。クモ膜下腔と脳室系は脳の実質で隔てられているが、第4脳室に開いたルシュカ孔・マジャンディ孔は互いに交通している。圧力の違いから、脳脊髄液は通常、第4脳室からクモ膜下腔へ流れ出す。クモ膜下腔の脳脊髄液は、クモ膜が硬膜静脈洞に突出したクモ膜顆粒から静脈血に吸収される。
• 脳室の髄液の流れ：側脳室→モンロー孔→第3脳室→中脳水道→第4脳室→ルシュカ孔・マジャンディ孔→脳槽→上矢状静脈洞
• 主に側脳室で作られた髄液は最終的には上矢状静脈洞のあたりで吸収される。
• この経路のどこかで流れが詰まってしまうと水頭症になる。
• 脳脊髄液は腰椎穿刺により採取できる。腰椎の高さで脊柱管に注射針を刺し、そこから10 mℓほどの脳脊髄液を採取する。
  
  

  François Magendie（P 1783〜1855, フランスの実験生理学のパイオニア）の髄液循環説は現代の考え方とは逆で、くも膜顆粒で髄液が産生され、脳室に流れ込んで吸収されると考えていた。
  1705年	Antonio Pacchioni（1665〜1726, イタリア）が著作の中でくも膜下の顆粒を発見し、ここで髄液が産生されると書いた。
  1876年	von Axel Key（ストックホルム）とGustav Magnus Retzius（1842〜1919）が色素の脳槽への注入実験を行い、くも膜顆粒は髄液を吸収する組織であると神経解剖の著書に発表し、マジャンディーの説を修正した。
  1891年	Heinrich Irenaeus Quincke（P 1842〜1922、キール大内学科教授）が結核性髄膜炎の患者に対して、頭蓋内圧を下げるために、はじめて腰椎穿刺をしてはじめて髄液を採取した（現在も「Quincke needle」の名が残っている。）。
  1898年	Karl Gustav August Bier（P 1861〜1949, キール大学の外科医）が、0.5％のコカイン溶液3mlを患者の脊髄腔に注入し、脊椎麻酔を立証した。James Leonard Corning↑（P 1855〜1923）の時とは違い、CSFが噴き出すことが確認された。患者は術後2時間後から翌日まで激しい頭痛（硬膜穿刺後頭痛）と吐き気の発作におそわれた。それでBier自身を被検者として、コカインによる腰椎脊椎麻酔の臨床実験を行った。注射器は使わず、標準化された針と Luer locksを使用した。Bier自身も術後の頭痛に悩まされ、CSFの減少のために起因すると考え、細いゲージの針を使うことを推奨した。

○脳脊髄液や間質液の排泄経路

• 脳はその恒常性維持のために様々な排泄機構を備えていて、血液脳関門を介した排泄、酵素による分解、ミクログリアやアストロサイトによる貪食・分解のほか、脳脊髄液や間質液の排泄を介したクリアランスシステムが報告されている。
• 血管周囲腔排出経路とグリンパティック系排出路が報告されている。

  血管周囲腔排出経路　perivascular drainage pathway 血管周囲腔　perivascular space 血管壁とアストロサイトから伸びた足突起から形成される壁構造に囲まれた空間を血管周囲腔と呼ぶ。 穿孔血管perforating vesselsを囲む、脳内の軟膜で裏打ちされたスペースで、間質液で満たされている。くも膜下腔と直接繋がっておらず、血管周囲腔中の液体（細胞間質液：ISF）の組成は脳脊髄液とわずかに異っている。 血管周囲腔の拡大は、髄質動脈の血管拍動の影響により生じる。 血管周囲腔の拡大は大脳白質（前頭葉、頭頂葉）、基底核、海馬、中脳に好発する。 血管周囲腔の拡大は正常変異であり、脳梗塞との鑑別が問題になることがある。 最近の頭部fMRI検査を用いた研究では、血管周囲腔の拡大は加齢に伴う生理的変化ではなく、アルツハイマー型認知症や脳アミロイドアンギオパチーと関連している可能性が報告されている。これは細胞間液の排泄停滞を反映した所見と考えられ、glymphatic systemの機能不全を示す画像的所見として注目されている。 血管周囲排出経路は、近年ではintramural periarterial drainage pathway（IPAD）とも呼ばれる。 血管壁を組織間液が血流と逆流する形で移動する。

  グリンパティック系排出路　glymphatic pathway　←→glymphatic system グリンパティック系排出路は動脈周囲から間質液が静脈周囲へ流れ、最終的に頸部リンパ節や静脈洞という形で脳外へ排出される。 アルツハイマー型認知症の病態との関連が示唆されている。 グリア依存性の排泄経路である。動脈周囲を髄液が通過し、アストロサイトのエンドフィートに存在するアクアポリン4（AQP4）から吸収される。間質液と混合され静脈周囲腔へ流れ、その後リンパ管へと排泄される。

○水頭症 Hydrocephalus

• 何らかの原因によって脳脊髄液の循環・吸収障害が起こり、その結果、脳室の異常拡大が生じたもので、小児、成人を問わずに発生し得る病態
• 髄液の流れ道の閉塞（閉塞性水頭症）や髄液の産生過多などで発症原因が説明されることもあるが、多くの原因は未だ解明されていない。

  髄液の生産過剰

  髄液の吸収障害

  閉塞性水頭症　Obstructive hydrocephalus 髄液循環路の閉鎖 中枢神経系の先天異常、頭蓋縫合早期癒着症 頭蓋内出血、髄膜・脳室炎、脳腫瘍など

  
  

  非交通性水頭症 脳室の経路で髄液の流れが悪い場合 出生直後の新生児や乳児で問題となる先天性水頭症のうち頻度の高いものも中脳水道狭窄症による水頭症と脊髄披裂や脊髄髄膜瘤にともなう水頭症がある。 中脳水道狭窄症による水頭症は非交通性水頭症の代表的なもの 脊髄髄膜瘤にともなう水頭症は交通性と非交通性両方の要素を有する。

  交通性水頭症　Traffic hydrocephalus 髄液の流れ道の閉塞がない。 脳表のくも膜下腔での髄液の停滞や生産、吸収に問題がある場合 脊髄髄膜瘤にともなう水頭症は交通性と非交通性両方の要素を有する。 脳室を覆う上衣細胞の運動性繊毛の構造異常・機能異常で発症することが明らかとなってきた。運動性繊毛や脳脊髄液の流れは神経系前駆細胞の正常な発生に必要である。

  
  

○頭蓋内圧 intracranial pressure：ICP　＝脳圧

• 成人の正常の脳圧：臥位で10〜15cmH2O、側臥位で150ｍｍH2O〜180ｍｍH2O
• 頭蓋内の脳脊髄液にかかった圧力（脳実質にも同じ圧力がかかる)を頭蓋内圧または脳圧と言い、脳圧が上がることを脳圧亢進などと言う。
• 中枢神経系は、頭蓋骨はもちろん、脊椎によっても（正確にはそれらを内張りする硬膜によって）ほぼ密閉された状態が保たれている。その内容物は大きく分けて脳実質・脳脊髄液・血管であるが、どれかの容積が増えればそれ以外の容積を減らすことによって、その内圧は一定に保たれる。
• 頭蓋内圧はホメオスタシスによって極めて一定に保たれており、その大きな変動は、重大な疾患の表徴であると共に、それ自体が死或いは致死的な合併症をもたらす。
• 決まった体積しか入らない頭蓋内に、ないはずのものが新たに加わると、脳脊髄液に高い圧力がかかり、同時に脳の実質も圧迫されて、頭痛、嘔吐、痙攣、徐脈、精神症状、視神経乳頭の浮腫・鬱血、外転神経麻痺などの所見を呈する。
  
  何らかの病変によって頭蓋内容量が限度を超えて増加することにより、通常は代償作用で一定に保たれている頭蓋内圧が（ICP）が高まった状態です。

  頭蓋内圧亢進　←→低髄液圧症候群 200ｍｍH2O以上

  モンロー・ケリーの法則 Monro-Kellie doctrine 頭蓋内の容積は一定であり、脳そのものと髄液、血液の和は一定に保たれる。 Alexander Monro II（1733/5/22〜1817/10/2, スコットランドの内科医、解剖学者、室間孔：モンロー孔の発見者）

  
  
  

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○ブロードマンの脳地図　参考　1/ 2/

• Korbinian Brodmann（P 1868〜1937, ドイツの神経学者）による大脳新皮質の解剖学・細胞構築学的区分
• Franz Nissl（P 1860/09/09〜1919/08/11, ドイツの組織学者）によって開発された脳の異なる種類の細胞を染色する組織染色法（ニッスル染色）に注目し、1909年にヒトの脳を52の異なる領域に分けた。

  3、1、2野	一次体性感覚野
  4野	一次運動野
  5野	体性感覚連合野（三次体性感覚野）
  6野	運動前野、補足運動野
  7野	体性感覚連合野
  8野	前頭眼野
  9野	背外側前頭前野
  10野	前頭極
  11野	前頭眼窩野
  12野	前頭眼窩野
  13野、14野*	島皮質
  15野*	側頭葉前部
  17野	一次視覚野
  18野	二次視覚野
  19野	視覚連合野
  20野	下側頭回
  21野	中側頭回
  22野	上側頭回
  23野	腹側後帯状回
  24野	腹側前帯状回
  25野	膝下野、infralimbic
  26野	脳梁膨大後部の膨大外部
  27野	梨状葉皮質
  28野	後嗅内皮質
  29野	脳梁膨大後部帯状皮質
  30野	帯状皮質の一部
  31野	背側後帯状回
  32野	背側前帯状回、prelimbic
  33野	前帯状回の一部
  34野	海馬傍回のうち前嗅内皮質
  35野	海馬傍回のうち嗅周皮質
  36野	海馬傍回のうち海馬傍皮質
  37野	紡錘状回
  38野	側頭極
  39野	角回
  40野	縁上回（二次体性感覚野？）
  41、42野	一次聴覚野
  43野	一次味覚皮質
  44野	下前頭回弁蓋部
  45野	下前頭回 三角部
  46野	前頭前野背外側部
  47野	下前頭前野
  48野	側頭葉の内側表面の小領域：海馬後支脚野
  49野	齧歯類の海馬傍支脚野
  52野	島傍野（側頭葉と島の結合部）

  (*) ヒト以外の霊長類でのみ。

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