Gタンパク拮抗阻害剤---GDP-β-S |
コレラ毒素 cholera toxin*
- コレラ毒素は、毒素産生型コレラ菌が産生して菌体外に分泌するタンパク質性の外毒素である。毒素としての活性を持つAサブユニット(Activeサブユニット)1個と、細胞との結合活性を持つBサブユニット(Bindingサブユニット)5個から構成される、A1B5型と呼ばれる毒素タンパク質である。Aサブユニットは、細胞内でA1とA2という2つのサブユニットにさらに分解され、実際に毒素活性を示すのはA1サブユニットの方である。
- A1サブユニットは、細胞内のNADをニコチンアミドとADPリボースに分解し、そのADPリボースをGタンパク質の一種である、受容体活性化Gsタンパク質に結合させる働きを持つ。
- Gタンパク質GsのαサブユニットをADP-リボシル化し、GTPaseを不活性化することにより、非可逆的な活性化を起こし、常に活性化された状態になり、その結果、このGsタンパク質と結合しているアデニル酸シクラーゼがいつまでも活性化されつづけ、この酵素の働きによって細胞内のcAMPの濃度が上昇したままの状態になる。
- 脳には、コレラ毒素に似た活性化のある酵素が存在することが知られていて、ある種のGタンパクあるいは他のタンパク質は、コレラの毒素の反応機構と同様な方法で生理的な調節を受けている可能性がある。
- 細胞膜上の酸性スフィンゴ糖脂質であるガングリオシドをレセプターとして細胞に結合し、感染する。
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百日咳毒素 pertussis toxin:PTX
- Gタンパク質GiのαサブユニットをsADP-リボシル化し、受容体と相互作用できなくする。
- 現在知られているGαのサブタイプ全18種類のうち、Giファミリーに属する8種類のみを基質とする。
- GiαのC末端から4番目のアミノ酸がシステインなら百日咳毒素の基質となる。
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ジフテリア毒素 diphtheria toxin
- ジフテリア菌が菌体外へ産生するタンパク質性の細菌毒素である。ジフテリア毒素は約100年前から知られ、E.von ベーリングと北里柴三郎によるジフテリア抗毒素の発見を端緒として多くの研究がなされ、細菌学や免疫学の発展の基礎となった毒素である。一方、細菌毒素としても、また、細菌のタンパク質としても、初めて純粋に精製・結晶化され、他の細菌毒素の研究のモデルとして、歴史的にも重要な毒素である。
- ジフテリア毒素はアデノシン・二リン酸(ADP)-リボースをニコチンアミド・アデニンジヌクレオチド(NAD)から、タンパク質が合成される過程に働くポリペプチド鎖伸長因子(アミノ酸を順次結合させてタンパク質にする酵素:EF-2)へ転移させて、この酵素を不活性化させることでタンパク質の合成を阻害する。
- ヘテロ3量体Gタンパクではなく、低分子量Gタンパク質であり、リボソームの機能制御に関与する真核生物の拡張因子elongation factor2: eEF-2をADP-リボシル化して不活性化する。
- この毒素は1本鎖のポリペプチドで、毒素(酵素)活性を担うAフラグメント(構成部分)と、感受性細胞へ結合してAフラグメントを細胞内へ運ぶ役目をするBフラグメントから成っている。どちらのフラグメントも単独では毒性を示さない。この毒素の性状や機能が詳しく研究され、全構造も決定された。
- 緑膿菌も同様の酵素を産生することが判っている。なお、ジフテリア毒素の構造はジフテリア菌のファージの遺伝子DNAが発現することによって決定されるので、このようなファージをもつ溶原菌(テンペレート・ファージが溶原化して、プロファージをもつ細菌)のみがこの毒素を産生する。
- 胚盤胞補完法(neural blastocyst complementation;NBC)では、発生期にジフテリア毒素サブユニットAを使い、宿主由来背側終脳前駆細胞を標的として除去する。
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フォルスコリン Forskolin
- 1968年に、インド原産のシソ科植物コレウス・フォルスコリンの根からから単離された。←→アルカロイド
- コレウス・フォルスコリンは、インドでは伝統的に滋養強壮を目的として食用に用いられてきた。
- 受容体およびGタンパク質と無関係にアデニル酸シクラーゼを活性化する。
- GiαとGoαサブユニットをADP-リボシル化し、βγサブユニットの結合を安定化させることにより不活性化させる毒素
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フォルボールエステル Phorbol Ester
- トウダイグサ科(Euphorbiaceae)植物の殺魚成分
- 1934年にトウダイグサ科のクロトンオイル(ハズ油 Croton tiglium oil=ハズ:Croton tiglium Linneの種子からとった油)の加水分解物から単離された。(Flaschenträger B, v. Wolffersdorff R (1934). "Über den Giftstoff des Crotonöles. 1. Die Säuren des Crotonöles". Helvetica Chimica Acta 17 (1): 1444–1452. )
- ほとんどの極性有機溶媒および水によく溶解する。
- PKC活性化物質
- 細胞のがん化を促進するプロモーター
- フォルボールエステルなどの刺激によってMAPキナーゼを介して転写誘導される。
- PMA(Phorbol-12-myristate-13-acetate);フォルボールエステルの一つ。ハズ科植物に含まれる物質で、クロトンオイルの有効成分。アフリカの一部の現地人はこの植物をガムの代わりに利用していて、舌がんが多く発生していた。
- TPA(テトラデカノイルフォルボールエステル):構造はDAGに似ている。
- 4α-PDD(4α-phorbo1,4β-phorbol,4α-phorbol-12,13-didecanoate)
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→マストパラン---スズメバチのvenom
- 活性の一つにGタンパク質との直接結合と、その活性化がある。
- サブユニットのGTPaseを活性化することにより、GTPの結合した活性型αサブユニットの持続時間を短縮する作用がある。
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