1971〜1977 自然界のロドプシンたんぱくの発見 |
1971年 | バクテリオロドプシン(BP) |
1977年 | ハロロドプシン(NpHR) |
1995年 | ドイツの研究グループが緑藻類の走光性にかかわる新規の微生物型ロドプシンを発見 |
2001年 | かずさDNA研究所と米国デューク大学が公開したクラミドモナスのゲノム配列から、クラミドモナスがもつ光に対する反応性(走光性など)の起源としてChR1とChR2の構造が同定され、光応答性のイオンチャネルとして働くことが示された。 |
2002年 | Peter Hegemann(1954/12/11〜, ドイツフンボルト大学の生物物理学者)が光を受容しNaを通す新しいタイプの分子を発見し、チャネルロドプシン(channelrho-dopsin:ChR)と名付けた。 1 |
2002年 | Miesenbockらがショウジョウバエのロドプシンとその下流のGタンパク質αサブユニット、およびアレスチンを海馬培養神経細胞に発現させ、光照射による活動電位の誘導に成功した。 |
2003年 | チャネルロドプシン2(ChR2) |
2005年 | チャネルロドプシン2(ChR2)の青色光照射による神経細胞活動の高速制御が発表されて以来神経科学の分野で爆発的な進展と応用が始まっている。 |
2005年 | Miesenbockらが、ショウジョウバエの神経細胞にイオンチャネル型ATP受容体を導入し、光照射によりケージドATPをリリースするという手法を用いて行動を惹起することを報告した。 |
2005年 | Karl Deisseroth(1971年〜 スタンフォード大学の精神科教授)がレンチウイルスベクターを用いてチャネルロドプシン2(ChR2)を海馬の培養神経細胞に発現させ、光によってその神経活動をミリ秒オーダーで活性化することに成功した*。2006年のペーパーの中で、「optpgenetic」という用語を使った。 |
2006年 | 東北大学の八尾先生らの研究グループが、シンドビスウイルスベクターを用いて生きたマウスの海馬神経細胞にチャネルロドプシン2を発現させ、光強度依存的に活動電位を誘導することに成功した。 |
2007年 | 生きたマウスのニューロンにチャネルロドプシンを発現させ、光ファイバーを脳内に挿入することでこれを興奮させてマウスの行動を制御することに成功した。 1 |
2009年 | Klaus Hahnらがphototropinを使用したPA (photoactivatable)-Racを報告した (Wu et al 2009)。 Neuroscience 2009では、同じグループにより既にPA-RhoA, PA-Cdc42なども作られていることが報告された。 |
2009年 | Neuroscience 2009では、Karl Deisseroth↑により、チャネルロドプシン2にGPCRを融合させた型の光遺伝学ツールが発表された。これにより、光刺激でcAMP、IP3、DAGといったセカンドメッセンジャーの産生を局所で制御できる。 |
チャネルロドプシン
- 緑藻の一種・クラミドモナスに発現している光受容イオンチャネル
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チャネルロドプシン1 (ChR1)
- 緑藻類クラミドモナスの眼点から同定された、光活性化陽イオンチャネル
- 青〜緑色光に応答する
- 水素イオンを通す
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チャネルロドプシン2 Channelrhodopsin-2, ChR2
- 光活性化タンパク質
- 緑藻類クラミドモナスの眼点から同定された、唯一の光活性化非選択的陽イオンチャネル
- 7回膜貫通型Gタンパクの一種
- 陽イオン:水素イオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオンなどを通す。
- 470 nmの青色光照射によって最も強く活性化される。
- これによって電位依存性Na+チャネルが開口して活動電位を発生する。
- ChR2の発色団としてall-trans-retinal (1)がChR2のヘリックス7のリジン残基とプロトン化Schiff塩基を形成していて、青色光を吸収して13-cis体(2)に異性化することでタンパク質部分の構造変化を引き起こし、その結果イオンチャネルの開閉を誘発することができる。
- 青色光を受容すると非選択的陽イオンチャネルが開口し、その結果ChR2発現細胞は脱分極応答を示す。
- 青色光(400〜500nm)を照射する時、最も強く活性化される。青色光を受容すると、チャネルロドプシンが開口して、細胞内にイオンが流入、脱分極が引き起こされる。
- 青色光で活性化されると、細胞外から細胞内へNa+やCa2+などの陽イオンを透過する作用により膜電位が生じて、神経細胞が活性化する。
- 光照射からチャネルが開口するまでの反応時間 τon は非常に早く、30マイクロ秒以内である。
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ハロロドプシン Halorhodopsin:NpHR
- 抑制に用いられる光活性化タンパク質
- 古細菌高度好塩菌 Natronomas pharaonisから同定された光活性化クロライドイオンポンプ
- 590 nmの黄色光照射によって最も活性化される。
- 黄色光を受容すると内蔵ポンプが駆動し、細胞外から細胞内にクロライドイオンを流入させ、結果として過分極応答を示す。
- 細胞外側から細胞内側へCl-を輸送する "光駆動クロライドポンプ"
- 2007年にハロロドプシンが神経活動抑制分子として最初に光遺伝学に導入された。
- Deisserothのグループと、2005年のChR2論文の筆頭著者でその後Deisseorthラボから独立したBoydenのグループは、2007年にそれぞれ高度好塩古細菌Natronomonas pharaonis由来のハロロドプシン、NpHRを神経細胞に発現させ、黄色光を照射することで細胞を過分極できることを示した。
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アーキロドプシン3 archaerhodopsin-3
- 古細菌、真正細菌、植物、菌類のゲノムデータから、微生物型ロドプシンの相同性検索により同定された光活性化プロトンポンプ
- 古細菌高度好塩菌(Natronomas pharaonis)から同定された光活性化クロライドイオンポンプである。
- 古細菌高度好塩菌の一種であるHalorubrum sodomense由来であり、550 nmの緑色光照射によって最も強く活性化される。
- 緑色光を受容するとポンプが駆動し、細胞内から細胞外へプロトンイオンが排出される。その結果、細胞膜電位は過分極し、活動電位が生じにくくなり、神経細胞の活動が抑制される。
- ハロロドプシンと比較して、光感受性が高く、光応答電流が大きい。また脱感作しにくい性質を持つため、長時間刺激や繰り返し刺激に適している。
アーキロドプシンT archaerhodopsin-T:ArchT
- 光駆動プロトンポンプ 光刺激に同期して細胞外にプロトンを排出することで膜電位が過分極となり、活動電位の発生を抑制する。
- アーキロドプシン3の配列をもとに、Halorubrum属のゲノムデータから相同性検索によりHalorubrum TP009系統から同定された。アーキロドプシンTもプロトンポンプを形成していて、緑色光を受容するとポンプが駆動し、細胞膜電位は過分極を示す。
- アーキロドプシン3と比較して、20 mW/mm2以下の光強度での光応答電流が大きく、光感受性も3倍程度良い。570 nmの緑色光照射によって最も強く活性化される。
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