メフェナム酸 mefenamic acid(ポンタール®)
- フェナム酸の酸性NSAIDs---COX-1/COX-2阻害作用
- 解熱作用は強力で、アスピリンの4倍あり、常用量でも低体温、虚脱を起すことがあるので注意が必要である。
- わが国では解熱剤のシロップ剤が少ないことから、本剤が比較的多く使用されている。
- アメリカ,ドイツ,カナダでは下痢、喘息の増悪、顆粒球減少症、血小板減少症などの副作用のため、小児への使用は安全性に疑問があることから認可されていない。
|
ジクロフェナックナトリウム Diclofenac Sodium(ボルタレン®など)
- 化学名:{2-[(2,6-Dichlorophenyl)amino]benzeneacetic Acid, Na}, 分子量:318.1
- アリール酢酸系-フェニル酸系の酸性NSAIDs
- 選択的COX-2阻害剤ではないが、比較的COX-2阻害効果が強い。(COX-1/COX-2 = 0.3)
- Ciba-Geigy (現在 Novartis) が1973年に開発し、1979年に英国で発売された。
- スイスのガイギー社は、フェニルブタゾン(ピラゾリジン誘導体のピリン系薬剤)、メフェナム酸およびインドメタシンの立体構造と物理的化学的性質とを比較し、これらの化合物に一定の構造があることを見いだした。それらは酸解離定数が4〜5の弱酸性であること、分配係数が約10であること、その立体構造上二つの方向感の間にねじれがあることであった。これらの評価基準としてジクロフェナック(酸解離定数4、分配係数13.4、2つの方向環のねじれ69度)が選び出された。
- 1974年にボルタレン錠、1982年に坐薬、1990年にボルタレンSRカプセル(徐放性製剤)、2000年に経皮吸収型製剤(ボルタレンゲル)が発売されている。
- 2021年に本邦初のがん疼痛治療剤として、経皮吸収型非ステロイド性疼痛治療剤のジクトルテープが発売され、2022年には「腰痛症、肩関節周囲炎、頸肩腕症候群および腱鞘炎における鎮痛・消炎」の適応が追加された。
- 解熱,鎮痛,消炎作用が強力で即効性があり,しばしば坐剤は解熱目的で使用されている。
- 肝臓のフェノールスルホトランスフェラーゼ活性を阻害する(IC50 = 約9.5 μM)。
- リウマチ患者の鎮痛目的でしばしば使用される薬剤である。
- ジクロフェナクナトリウム製剤を投与後に、ライ症候群を発症したとの報告があり、小児のウイルス性疾患の患者に投与しない。 →参考インフルエンザ脳症・脳炎
- ジクロフェナクナトリウム製剤を、妊婦に投与すると、胎児に動脈管収縮・閉鎖、徐脈、羊水過少が起き、胎児の死亡例も報告されている。
|
スリンダク sulindac(クリニリン®、マルコ®)
- アリール酢酸系-フェニル酸系の酸性NSAIDsのプロドラッグ
- がんの治療薬として研究中
- スリンダクと試験的化合物ジフルオロメチルオルニチン(DFMO)を用いた臨床試験(第3相試験)の結果、しばしば大腸がんの前駆病変となる病変の再発を高い率で防ぐことが示された。
|
インドメタシン Indomethacin(インダシン®、インテバン®)
- 化学名:1-(4-chlorobenzoyl)-5-methoxy-2-methylindol-3-ylacetic acid, 化学式:C19H16ClNO4, 分子量:357.79
- アリール酢酸系-インドール酸系NSAIDs
- インドール誘導体(セロトニンなどもインドール核を有する。)であることから、インドメタシンと命名された?
- COX-1阻害が比較的強い。(COX-1/COX-2 = 0.2)
1963年 | Tsung-Ying Shen がアメリカで開発した(Br Med J 5363: 965-70)。 |
1965年 | FDAが認可した。 |
1966年 | 日本に導入された。 |
- 承認されている効能・効果:1 次の疾患の消炎、鎮痛:慢性リウマチ、変形性関節症 2 手術後の炎症および腫脹の緩解
- 厚生労働省は平成21年9月15日に、「原則として、「インドメタシン【坐剤】」を「癌性疼痛」に対し処方した場合、当該使用事例を審査上認める。」という通達を出した。*
- 捻挫、打撲、筋肉痛、肩こり、腰痛、関節リウマチ、関節炎、痛風のための外用消炎鎮痛剤(湿布薬・塗り薬)として利用されている。
- 開発された当初は、皮膚から吸収されない成分とされていた。1976年、興和の研究開発陣がインドメタシンを皮膚から直接吸収させる方法を発見し、その後の試行錯誤によって1980年3月、皮膚に塗って使う経皮吸収型の外用鎮痛消炎薬が発売された(イドメシンコーワゲル、バンテリンなど)。 ←→外用薬
- 比較的作用が強いが,半減期が短く作用持続時間の短い。
- 消化性潰瘍、肝臓・腎臓障害、心不全、膵炎、アスピリン喘息の患者は使用を避ける。
- 特異的副作用:ふらつき感、目眩、頭痛、パーキンソン悪化、痙攣
- インドメタシンにのみ特異的に反応する頭痛がある。
インドメタシン反応性頭痛 Indomethacin-responsive headache syndrome
- ICDH-IIの診断基準に書かれているもの
3.2 発作性片側頭痛
4.7 持続性片側頭痛(HC)
- 診断基準にはないが、インドメタシンの有効性が報告されているもの
4.1 一次性穿刺様頭痛(アイスピック頭痛)
4.2 一次性咳嗽性頭痛(咳頭痛)
4.3 一次性労作性頭痛
4.5睡眠時頭痛
|
インドメタシンファルネシル Indometacin farnesil:INN(インフリー®)
- 副作用の低減のためにデザインされた非ステロイド性抗炎症薬インドメタシンのプロドラッグ
- 本邦では1991年に認可された。
|
フェルビナク felbinac
|
イブプロフェン ibuprofen
- プロピオン酸系の酸性NSAIDs、COX-1/COX-2選択制は中間
- Boots Group(イギリス最大級の国際的薬品小売企業)の研究部門が開発した。 Stewart Adams、John Nicholson、Colin Burrows(英国)らがアスピリンよりも安全な薬として1950代に合成し、1961年にパテントを取った。
- 関節リウマチ治療薬として、英国では1969年から処方薬として許可され、米国では1974年から使用可能となった。
- WHOのエッセンシャルドラッグ
- アセトアミノフェンに次いで広く使用され,特にアメリカではOTCで扱う解熱剤の中心となっている。
- 消炎、鎮痛、解熱作用を比較的バランスよく持っている。アセトアミノフェンより解熱効果の持続が長い。
- 市販されているイブプロフェンはラセミ体である。試験管内および生体内の実験から(S)-(+)体 (dexibuprofen)が有効成分であることがわかっているが、生体内試験では(R)体を有効な(S)体に変換する異性化酵素の存在が明らかになっているので、単独の鏡像体で販売するのはコストに対して無意味である。
- 常用量でも低体温,虚脱を起すことがあるので注意が必要である。
- 副作用:低体温・胃腸障害・肝障害・視覚障害・代謝性アシドーシスなど
- アスピリン服用の後にイブプロフェンを服用すると、アスピリンの血小板凝集抑制作用が抑制される。(New England Journal of Medicine 2001/12/20 Pennsylvania大学のFrancesca Catella-Lawson、Garret A. FitzGeraldら)。
- エクストラ・ヴァージン・オリーブ・オイルに含まれるオレオカンタールはイブプロフェンと似た構造であり、毎日50gのオリーブ・オイルを摂取すると、イブプロフェンの成人の服用量の1/10の服用と同様の効果があると考えられている。
- イブプロフェンもオレオカンタールもTRPA1受容体チャネルを活性化する。 参考1
|
フルルビプロフェン flurbiprofen(ファルケン®、アドフィード®、ステイバン®、ゼポラス®、フロベン®、ロピオン注®)
- プロピオン酸系の酸性NSAIDs、フェニルアルカン酸誘導体
- 貼付薬、内服薬
- フルルビプロフェンアキセチル flurbiprofen axetil(ロピオン注®):プロドラッグ、静脈用、術後痛、がん性疼痛
- 比較的副作用の少ないが、スティーブンス・ジョンソン症候群:SJSも報告されている。
|
ケトブロフェン ketoprofen(メナミン座薬®、エパテック座剤®、モーラス®、セクター®)
- プロピオン酸系の酸性NSAIDs
- 1967年にフランスのローヌ・プーラン社(現 サノフィ・アベンティス社)が合成した。
- 内服薬の他、軟膏剤、ゲル剤、クリーム剤、液剤、パップ剤、テープ剤等の様々な剤形で発売され、一般用医薬品としても販売されている。
- ケトプロフェンは光線過敏症を起こす副作用があるため、貼付部を紫外線に晒してはならない。
|
ナプロキセン naproxen(ナイキサン®)
|
ロキソプロフェン loxoprofen(ナトリウム塩:ロキソニン®)
- プロピオン酸系の酸性NSAIDs
- 三共が開発したNSAIDs 1986年に経口剤(錠剤と細粒剤)が発売され、2006年にはパップ剤、2008年にテープ剤(商品名:ロキソニンテープ)が発売された。
- プロドラッグであるため、体内ですみやかに活性型に変換される。
- ロキソプロフェンNaは肝臓でカルボニル還元酵素(Carbonyl reductase:CBR)により、trans-OH体(活性代謝物)とcis-OH体に変換され、COXを阻害する。
- カルボニル還元酵素は皮膚や筋肉にもあることが確認され、外用薬への応用が可能となった。
- trans-OH体に変換された後に効果を発揮するので(?)、胃腸障害が比較的少ない。
- ロキソプロフェンNaは肝臓でグルクロン酸抱合を受ける。
- 承認されている効能・効果:1. 関節リウマチ、変形性関節症、腰痛症、肩関節周囲炎、頸肩腕症候群、歯痛などの疾患ならびに症状の消炎・鎮痛 2. 手術後、外傷後ならびに抜歯後の鎮痛・消炎 3次の疾患の解熱・鎮痛:急性気道炎(急性気管支炎を伴う急性上気道炎を含む。)
- 平成21年9月15日に厚生労働省は、「原則として、「ロキソプロフェンナトリウム水和物【内服薬】」を「片頭痛」、「緊張型頭痛」に対し処方した場合、当該使用事例を審査上認める。」という通達を出した。*
- 平成22年1月22日に厚生労働省の薬事・食品衛生審議会一般用医薬品部会はスイッチOTC薬としてロキソニンなど3成分を承認した(ロキソニンS、ロキソ、リファイン)。
- ロキソプロフェンナトリウム水和物はヒト肝ミクロソームを用いたin vitro代謝阻害試験において、最高血漿中濃度の約10倍の濃度(200μM)でもチトクロームP450各分子種(CYP1A1/2、2A6、2B6、2C8/9、 2C19、2D6、2E1及び3A4)の基質となる種々薬物の代謝に対して影響を与えなかった。
|
ピロキシカム piroxicam(フェルデン feldene®、バキソ®)
- オキシカム系のNSAIDs、ベンゾサイアジン系
- 化 学 名:4-Hydroxy-2-methyl-N-(pyridin-2-yl)-2H-1,2-benzothiazine-3-carboxamide 1,1-dioxide
- 1967年に米国ファイザー社が開発した。
- 日本では1982年に経口剤として承認され、慢性関節リウマチ、変形性関節炎、腰痛症などの鎮痛・炎症に適応を有し、その後局所適応を目的とした軟膏剤を開発し、1986年に承認を受けている。
- プロスタグランジン生合成酵素阻害作用のほか、リソソーム系酵素の遊離を抑制すると考えられている。
- 効能・効果は消炎・鎮痛のみで、解熱目的の適応はない。かぜへの適応が削除された。
- 小児に対する安全性も確立されていない。
- ピロキシカムは、「1日1回投与」ですむ強力で作用持続時間の長い薬剤として開発され、106カ国で臨床使用され、高い市場占有率を有する抗炎症薬であった。
- 抗炎症鎮痛薬による重篤な消化管出血、潰瘍、穿孔(死亡例を含む)が増加しているが、ピロキシカムによる発生率が最も高いとする調査結果が報告された。
- 「高齢者には慎重投与」などの添付文書の使用上の注意が改訂された。
- ピロキシカムが特に危険な理由は、主に、1. ジゴキシン以上に長い血中濃度半減期(約50時間)のため、老年者では蓄積により血中濃度が高くなりやすく、毒性が発現しやすくなる点。2. 肝・腎障害、年齢や体重に応じてどの程度に投与量を調節すべきかについて、ほとんどわかっていない。
- EMEA(欧州医薬品審査庁)は、ピロキシカムの胃腸障害および重篤な皮膚障害の発現率が高いため使用制限した。(2007.07.13 海外規制機関 医薬品安全性情報(国立医薬品食品衛生研究所))1/2
|
アンピロキシカム ampiroxicam(フルカム®、ルコルナート®)
|
ロルノキシカム lornoxicam(ロルカム®)
|
テノキシカム tenoxicam(チルコチル®)
- オキシカム系のNSAIDs
- 非経口も可能である。
- オピオイド節約効果:オピオイドと併用するとオピオイド使用量を15〜60%減らすことができる。
|