関節包 joint capsule、capsula articularis
- 関節周囲を覆っている結合組織性の滑膜組織
- 関節包と関節の間には滑液が存在し、この滑液は骨同士の摩擦を軽減したり、関節を滑らかに動かすのに役立っている。
- 関節包内の空間を関節腔という。
- 関節包は、外側の線維膜と内側の滑膜とからできている。
- 線維膜は骨膜の続きで丈夫で神経に富んでいて、関節の安定化と脱臼防止に働いている。
- 内層の滑膜では滑液を分泌している。
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関節腔 articular cavity、cavitas articularis
- 関節腔は関節軟骨と関節包の滑膜層によって囲まれる閉鎖された腔である。
- 正常状態では腔内に少量の滑液ある。
- 関節腔内は陰圧で関節を強める作用がある。
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滑液、関節液 synovial fluid、joint fluid
- 関節腔の中に存在する無色透明の液体
- 滑膜で産生されている。
- 滑液の粘度は温度によって変化する。温度が上がればその粘度は少なくなり関節自体の動きもスムーズになる。
- 関節軟骨自体には血管が通っていないので、滑液を通して栄養分を補給したり、老廃物を排出したりしている。
- ヒアルロン酸やタンパク質などを含み、粘り気があり、ヒアルロン酸とタンパク質の複合体が関節表面を覆って潤滑油の働きをし、関節の動きを滑らかにしている。
- 滑液内に糖タンパク質が存在していることは古くから知られていたが、1980年代になってその分子構造が明らかになり、潤滑性に寄与していることがわかった。この糖タンパク質は「ルブリシン」と呼ばれ、その後、軟骨表面に存在するSuperficial Zone Protein(SZP)やMegakaryocyte Stimulating Factor (MSF)と同一の、ムチン性糖タンパク質であることが見いだされた。これらムチンは、滑液内から軟骨の表面に移動し、自己組織化によって膜(プロテオグリカン層)を形成すると考えられていて、2000年以降さらに詳しく構造解析され、現在ではこれらを集約してProteoglycan 4(PRG4)と呼ばれている。その成分は、ヒアルロン酸と相補的に関節の摩擦を軽減し、潤滑を促進する働きを持つと考えられている。
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滑膜 synovial membrane、synovium
- 正常な滑膜は厚さ約25μm
- 膜といっても基底膜のように細胞が隙間なく並んでいるわけではなく、結合組織の中に、様々な滑膜細胞と少数のリンパ球が存在する。
- 滑膜細胞は関節液を産生し、軟骨へ栄養を供給している。
- 滑膜そのものがひだを形成し、関節を滑らかに動くようにしている。
- 軟骨には神経や血管がなく、軟骨細胞への栄養は関節液に依存している。そのため滑膜には血管が豊富に分布している。
- 関節リウマチでは滑膜微小血管に障害が起こり、滑膜組織に好中球、マクロファージ、T細胞、B細胞が集積する。
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滑膜細胞 synoviocytes
- 滑膜には、マクロファージ様の滑膜A細胞、線維芽細胞様の滑膜B細胞などと少数のリンパ球が存在する。
- 滑膜細胞は関節液を産生し、軟骨へ栄養を供給している。
- 関節に炎症が続くと、滑膜細胞が異常に増殖し、関節の軟骨や骨だけでなく、周囲の靭帯や筋肉にまで損傷を与えていく。
- 変形性関節症では病期の進行につれ、遊離した変性軟骨片が滑膜A細胞にとりこまれ、増殖した滑膜B細胞が淡色透明な粘度の高い液を分泌し、これが多量の非炎症性関節液の貯留となると想定されている。
- 関節リウマチは、滑膜に持続性の炎症が起こる:新生血管が増加し、リンパ球(T細胞が優位)が浸潤し、滑膜を構成する滑膜細胞が増殖する。
滑膜A細胞 type A synoviocytes macrophage-like synoviocytes, macrophage-like synovial cells
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滑膜B細胞 type B synoviocytes fibroblast-like synoviocytes (FLS) cell, fibroblast-like synovial cells
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滑膜C細胞
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滑膜D(M)細胞
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