■構造と機能

│脊髄後角/延髄後角│　→三叉神経脊髄路核/脊髄神経/硬膜外投与/脊髄前角

┏→1次ニューロン		脊髄後角は、1次ニューロンと2次ニューロンのシナプス伝達の場である。
┣→2次ニューロン		↓脊髄内の伝導路　⇒伝導路
┗→グリア




1次ニューロン HIS VR PAR PG BK AMPA NMDA mGluR P2 5HT (α) GABA glycine OR ORL CB VSCC TrkA （シナプス伝達） 　 　 　 PG ↑ 　 ↓ glu ↓ SP ↓ CGRP (↓) VIP (↓) PACAP ↓ SOM ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ANA ↑ Ca2+ ↑ NO ↑ ↓ BDNF 2次ニューロン 　 BK AMPA NMDA mGluR NK1 CGRP VIP PAC SOM P2 5HT α GABA glycine OR ORL CB TrkB （←→ニューロン） 　 　 　 ↑ ↑ 　 　 　 　 　 　 　 ↑ ↑ ↑ 5HT ↑ NA ↑ GABA ↑ glycine ↑ ENK ↑ NOC 　 　 　 　 　 （←→グリア） 　 　 　 PG 　 　 　 　 　 　 　 ATP

●1次求心性線維→後根　←→侵害受容線維

• 脊髄神経の一部は、前根を経て脊髄に入るが、大多数は後根を経て脊髄に進入する。
• 脊髄後根に含まれる求心性線維のほとんどは体性神経であり、内臓線維の割合は少なく、総数の10%以下である。
• 体性神経におけるA線維とC線維の比は1:2であり、内臓神経では1:8〜1:10で、内臓に含まれるC線維の割合が多い。
• 後根侵入部では各後根は、多数の細根に別れ、太い線維（触覚などを伝えるAβ線維）が細根 rootletの内側、細い線維（痛みなどを伝えるAδおよびC線維）がその外側から脊髄に入る。
• Aδ線維とC線維は、脊髄後根の外側部を経て、脊髄内のLissauer路に入り、脊髄後角の2次侵害受容ニューロンとシナプス接続する。

  Lissauer路 Lissauer's tract 後外側路 posterolateral tract, 後外側索 dorsolateral fasciculus Aδ線維とC線維が進入する。 Heinrich Lissauer（P 1861/9/12〜1891/9/21, ブレスラウ大学の神経学者）が1908年にLissauer路を発見した。 Stephen Walter Ranson（P 1880〜1942, アメリカの解剖学者）は、Lissauer路を経て入ってくる細い軸索が、入ってきたその分節に近い表層で終始することを明らかにした。（Ranson SW (1914) The tract of Lissauer and the substantia gelatinosa rolandi. Am J Anat 16: 97-126.）

• 皮膚からの神経線維は枝分かれが少ないが、内臓からの神経線維は後根から脊髄に入って、前後の分節の脊髄後角にも終止する。
• Aδ線維は神経伝達物質としてグルタミン酸を放出する。C線維は　グルタミン酸とP物質やCGRPなどのペプチドを放出する。
• 終末にインパルスが到達し、電位依存性N型およびP/Q型Ca²⁺チャネルが活性化されて、Ca²⁺が流入すると、神経伝達物質が放出される。Ca²⁺の流入は、NOにより促進され、オピオイドにより抑制される。
• 皮膚からの神経線維と内臓からの求心性線維が同じ侵害受容ニューロンに収束する。---関連痛の説明となる。
• 内臓からの求心性線維は、第X層のニューロンとシナプス接続し、シナプスを変えた後、後索を上行する。

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• 顔面、口腔領域を支配する三叉神経は、橋の高さで脳幹に入り、三叉神経主感覚核に終わる枝と三叉神経脊髄路を下行する枝に分かれる。
• 三叉神経脊髄路が投射する三叉神経脊髄路核は、吻側亜核、中間亜核、尾側亜核の３部に分けられる。痛みを中継するニューロンは、尾側亜核のレベルに存在する。

●脊髄後角の層構造

• 1952年にBror Rexed（P 1914〜2002, スウェーデンの解剖学者）が、ネコの脊髄の細胞構築 cytoarchitecture を研究して、脊髄後角を6層に区分した。
  (1. Rexed, B. (1952）: The cytoarchitectonic organisation of the spinal cord of cat. Journal of Comparative Neurology. 96 pp. 415-495.
  2. Rexed, B (1954) : A cytoarchitectonic atlas of the spinal cord of cat. Journal of Comparative Neurology. 100 : pp. 297-379.)
  
  
• 脊髄後角と三叉神経脊髄路核尾側亜核は、同じような層構造を持つ。

  lamina I	浅層部 superficial layer	辺縁層 marginal layer
  lamina II		膠様質 substantia 　gelatinosa 　Rolandi	外層部 lamina IIo
  			内層部 lamina IIi
  lamina III	固有核　nucleus proprius
  lamina IV
  lamina V
  lamina VI
  lamina VII〜Ⅸ層	前角
  lamina X	中心管周囲

  
  
  

  Aβ線維	後根内の内側を走る神経線維は、後根先端に沿って、内側に走行して、後索を上行し、脊髄後索核に入る長上行線維（↑）と、脊髄灰白質に終止するものとに分かれる。後者は、後角内側線から、後角固有核（III, IV層）、後角基部（V, VI層）、中間灰白質層（VII層）や前角に終止する。しかしこれらのニューロンは触覚情報を伝える投射ニューロンではない。
  皮膚からの Aδ侵害受容線維	Lissauer路（後外側路 posterolateral tract, 後外側索 dorsolateral fasciculus）から、主に第I層に終止し、一部はIIo層と中心管周辺(X層)へも入る。
  皮膚からの C侵害受容線維	主に第IIo層に入るが、一部はI層、X層へ入る。？ ？←→C侵害受容線維に含まれるSPは、免疫組織化学では、第I -IIo層にみられる。 IIi層にも、有髄、無髄の細径線維が終止する。
  筋、関節の 無髄侵害受容線維	I、V層だけではなく、VI層へも入る。
  内臓求心性線維	IV層だけではなく、X層へも入る。膀胱，直腸など管腔臓器の過剰拡張のような内臓痛感覚情報を伝える。↓脊髄内の伝導路→後索路

  
  
  

  浅層第(第I-IIo層) (Lamina I 　= marginal zone of Waldeyer)	後角白質の最外層を覆っている薄い層である。 大小様々な大きさの細胞（5x8〜25x50µm）がある。少数であるが、特徴的な大細胞が存在する。この細胞は、Waldeyer細胞、またはlarge margincal cellと呼ばれており、この細胞の樹状突起の分岐は比較的少なく、第I層内を水平に走行しているが、中には第II層まで侵入しているものがある(Waldeyer, 1888)。 Christensenらは、これらの細胞が侵害刺激や温熱刺激に興奮することを示した---侵害受容ニューロン（主に特異的侵害受容ニューロン）がある。 P物質を含有し、trk Aやc-RETを発現し、IB4陰性のDRG小型ニューロンが投射する。 P物質の受容体であるNK1が発現する細胞が局在し、リガンドと受容体の局在が合致する。 Hachisuka, Junichi（蜂須賀淳一先生）; Koerber, H. Richard; Ross, Sarah E.　Selective-cold output through a distinct subset of lamina I spinoparabrachial neurons. PAIN 161(1):p 185-194, January 2020. | DOI: 10.1097/j.pain.0000000000001710 免疫組織化学的研究では、侵害受容線維に含まれる伝達物質は、脊髄後角浅層に分布するが、深層にはあまりみられない。
  膠様質 substantia gelatinosa:SG　* 1809年にLuigi Rolando（P 1773〜1831, イタリアの解剖学者）が、膠様質について記載した。 Janos Szentagothai（P 1912〜1994, ハンガリーの神経解剖学者）（1964）はlamina II を IIIをSGとした。 Henry J. Ralston III (1968）はRexed↑を指示し、lamina IIををSGとした。 lamina IIはouter layer (IIo）とinner layer（IIi）に分けられる。
  膠様質(第IIi層) substantia gelatinosa 　Rolandi substantia gelatinosa 　 of Rolando 　： SG	小型細胞とその突起により構成されていて、ミエリンが少ないので、透き通って見える。 ほとんどが、上位中枢に直接上行性の軸索を送らない介在ニューロン interneuronsである。 Lorne Mendellらはシナプス前抑制性介在ニューロン　→ゲートコントロール　←→Kerrはシナプス後抑制性介在ニューロン）と考えた。 Denny-Brownらは、後角の伝達ニューロンに対する作用には促通効果と抑制効果の両方があって、膠様質ニューロンが全般的な変調機能を持つと提唱した。 Gobelが三叉神経脊髄路核尾側亜核の膠様質のニューロンを分類した。[Pubmed1 /2] 　stalked cell　islet cell　spiny cel　arboreal cell　II-III border cell GDNF依存性依存性で、c-RETを発現する、IB4陰性のDRG小型の非ペプチダージックニューロンが投射する。
  固有層(第III-IV層)	非侵害受容ニューロンが局在するが、これらは投射ニューロンではない。 第III-IV層には、後索線維のcollateralが入力しているが、投射ニューロンではない。機能は？？？
  深層(第V層)	大型の侵害受容ニューロンがある。 広作動域ニューロンが多い。 第V層の侵害受容ニューロンも直接1次求心性神経の終末とシナプス接続する可能性はある。 第V層の侵害受容ニューロンの樹状突起は、浅層部で1次侵害受容ニューロンとシナプス接続する可能性はある。

●2次侵害受容ニューロンの種類

特異的侵害受容ニューロン 　Nociceptive specific 　　Neuron (NS)	脊髄後角第I層とII層の浅層部に分布する。 三叉神経脊髄路核尾側亜核辺縁層に分布する。 同側の体表に限局した末梢受容野を持つ。 受容野に侵害刺激が加えられたときにだけ興奮する。 すべてのNSニューロンは、内臓からの侵害性入力も収束しているので、内臓からの求心性神経にも反応する。 大内臓神経、下心臓神経、迷走神経などの刺激に反応する。 　→関連痛のメカニズム
広作動域ニューロン 　Wide Dynamic Range 　　Neuron (WDR)	第I層とII層の浅層部と第IV-VI（特に第V層）に分布する。 延髄外側網様体の背側網様亜核の外側部に分布する。 同側の皮膚に末梢受容野を持つが、興奮性受容野の大きさは、NSニューロンの受容野より広い。 受容野中心部に加わった触刺激から侵害刺激にいたる種々の強さの機械刺激に段階的に興奮し、侵害刺激で最大に興奮する。 　それを取り巻く皮膚では、興奮の閾値が次第に高まる。 　興奮性受容野の辺縁部では、侵害刺激のみが有効である。 すべてのWDRニューロンは、内臓からの侵害性入力も収束しているので、内臓からの求心性神経の刺激にも反応する。 大内臓神経、下心臓神経、迷走神経などの刺激に反応する。 　→関連痛のメカニズム
SRVタイプニューロン	主に脊髄中間質第VII層や前角第VIII層に分布する。 延髄外側網様体の腹側網様亜核の背外側部に分布する。 末梢受容野は広く、しばしば両側性である。 場所特異性はみられない。 すべてのSRVタイプニューロンは、内臓からの侵害性入力も収束しているので、内臓からの求心性神経にも反応する。 大内臓神経、過信増進系、迷走神経などの刺激に反応する。
内臓特異的侵害受容ニューロン	内臓からの侵害受容線維は、X層へ終止する。 交叉して、対側の後索を上行する。→後索路

●脊髄後角ニューロンの種々の分類

	Price & Browe (1975)	Manetrey et al. (1977)	Cereverro et al. (1976)	Price et al. (1979)	Chung et al. (1977)	Somatosensory Commision(1980)
touch	class I	class 1A	class 1	LTM neuron	LT cell	mechanoreceptive neuron
touch-pressure	class II	class 1B
touch-pressure -pinch	class III	class 2A	class 2	WDR neuron	WDR cell	mechano-noci -multireceptive neuron
touch-pinch	class IV	class 2B	class 3	NS neuron	HT cell	mechanoreceptive neuron
pinch	class V	class 3




○2次侵害受容ニューロンの興奮 1次ニューロン 2次ニューロン Aδ線維 → グルタミン酸 ┓ non-NMDA受容体 NMDA受容体 →→速いEPSP＋活動電位 ┣→ C線維   → グルタミン酸 ┛ ┓ ┣→遅いEPSP＋活動電位 → サブスタンスP →→ NK1受容体 ┛ Aδ線維とC線維の脊髄内終末から放出されるグルタミン酸は、2次侵害受容ニューロンの細胞膜にあるAMPA受容体およびNMDA受容体に作用する。 グルタミン酸がAMPA（non-NMDA)受容体に結合すると、Na+およびK+透過性が高まり、Na+が流入して、速いEPSP(興奮性シナプス後電位)を発生させる。 通常NMDA受容体は、Mg2+によって阻害されていて、不活性状態であるので、グルタミン酸だけでは、活性化されない。 AMPA受容体によるEPSPだけでも、活動電位が発生し、2次侵害受容ニューロンが興奮する。 C線維終末からは、グルタミン酸だけではなく、P物質が放出される。 P物質は、2次侵害受容ニューロンのNK1受容体と結合する。     ↓ NK受容体は、Gタンパクを介して、ホスホリパーゼC (PLC)を活性化する。     ↓ PLCは、PIP2をDGとIP3に分解する。     ↓ DGは、プロテインキナーゼC (PKC)の活性化する。 PKCは、セリン・スレオニンキナーゼであり、NMDA受容体タンパクのセリン・スレオニンあるいはチロシン残基をリン酸化する。その結果、Mg2+の遮断作用が取り除かれて、NMDA受容体のイオンチャネルの開放が促進される。 グルタミン酸とP物質によってNMDA受容体が活性化されると、Na+、K+、Ca2+の透過性が高まると、VSCCから、Ca2+が流入する。 細胞内のCa2+濃度が上昇して、遅いEPSPが発生する。 IP3ができると、小胞体から細胞質にCa2+が放出される。 Aδ線維とC線維が持続的に興奮すると、wind upが起こる。 wind-upの成因には、NMDA受容体、NK1受容体、PKCγが関与している。 神経因性疼痛における熱痛覚過敏などにも、PKCγと活性型Ca2+依存性PKCが関与している。 NK1受容体 →PLC→PIP2┳ →DG→ PKC→NMDA受容体活性化→VSCCからCa2+が流入 ┓ 　 ┃ 　 ┣→細胞内Ca2+ 　 ┗ →IP3→ 小胞体から細胞質にCa2+が流出 ┛      の増加→ ┳→ Ca2+とカルモジュリンの結合 → NO 産生 ┗→ PLA2の活性化 → PG 合成 細胞内濃度が高まったCa2+が、カルモジュリンと結合すると、一酸化窒素合成酵素 NOSが活性化されて、L-アルギニンからNOが産生される。 NOは2次ニューロン内で、グアニル酸シクラーゼ GCの活性化を介して、cGMPの合成を促進する。cGMPは、それに続くタンパクキナーゼの活性化や遺伝子発現などの反応に関与し、痛覚過敏が起こる。 NOの一部は、２次ニューロンの細胞膜を通過し、細胞外に出て侵害受容線維の終末に働き、末梢から送られてきたインパルスによる伝達物質の放出を増加させる。 NOの一部は、グリアにも作用し、グルタミン酸の取り込みを阻害する。 細胞内のCa2+が高まると、PLA2が活性化され、細胞膜中のアラキドン酸からCOXによるPGの合成が引き起こされる。 PGsも、脊髄後角ニューロンの過敏化を引き起こす。 ホルマリン刺激直後に、NMDA受容体が発現しているニューロンに、ERKの活性化し、ERKリン酸化阻害薬により、ホルマリン反応の2相が抑制される。 2次侵害受容ニューロンに、皮膚からの侵害受容線維と内臓からの侵害受容線維が収束している。←痛覚過敏を伴う関連痛も説明できる。 　内臓器官に原因がある時、内臓からの求心性神経からニューロペプチドが放出されて、痛みを中継するニューロンの興奮性が高まっている。ここで皮膚からの触覚入力が伝えられると、反応性が高まっていたWDRニューロンは、触覚入力に対する反応が高まり、皮膚に加わった触刺激が痛覚過敏を生じさせることになる。 　←→中枢性の過敏化/関連痛 ○脊髄後角侵害受容ニューロンに対する抑制　←→神経損傷時のグリアの変化 2次侵害受容ニューロンは、抑制を受けているので、末梢受容野の周辺には閾下縁が存在する。 2次侵害受容ニューロンは、グリシンによるシナプス後抑制性入力を受けている。 →グリシン受容体の拮抗薬であるストリキニンを全身投与すると、WDRニューロンの末梢受容野が拡大する。 GABAは、Aβ線維の脊髄内終末にシナプス前抑制をかけ、PAG/NRDにおける下行性疼痛抑制系に抑制をかける。　　[Pubmed] →GABAa受容体の拮抗薬であるピクロトキシンを全身投与すると、Aβ線維に対するシナプス前抑制が解かれ、WDRニューロンの触刺激に対する反応が亢進し、受容野が拡大する。 →GABAa受容体の拮抗薬であるピクロトキシンを全身投与すると、脱抑制により下行性疼痛抑制系が活性化され、WDRニューロンの侵害刺激に対する反応が抑制される。 2次侵害受容ニューロンは、下行性疼痛抑制系による抑制を受ける。セロトニンによる抑制系とノルアドレナリンによる抑制系がある。 2次侵害受容ニューロンに対する抑制には、アセチルコリンやエンケファリンも関与している。

●グリアglial cell 神経膠細胞
　⇒グリアglial cell　　⇒神経損傷時のグリアの変化

┏アストロサイト
┣オリゴデンドロサイ
┗ミクログリア

●脊髄内の痛覚の伝導路　←→脊髄上行路↓/伝導路/切断術

同側の後側索 DLF 下行性疼痛抑制系

正 中 線 付 近 背側 ↑ ↓ 腹側 後索 DC↓/→ 触覚の伝導路 位置覚 内臓痛の伝導路 中心管 周囲灰白質 ＝lamina X 多シナプス性の 痛みの上行路 脊髄視床路 の白前交連 温痛覚の伝導路 →対側の前索、前側索

対側の前索 VF(AF) 前脊髄視床路 脊髄網様体路 脊髄（結合）腕傍核路

対側の前側索 VLF(ALF)↓ 外側脊髄視床路 脊髄（結合）腕傍核路 脊髄中脳 脊髄視床下部路

• 白前交連 commissura ventralis alba：中心管の腹側部にある交差線維の束 　←→交連線維/myelotomy
• 脊髄後角の2次ニューロンあるいは3次ニューロンの軸索は、白前交連で正中線を超えた後、対側の前索・前側索を上行する。
  
  
• 1858年にMoritz Schiff（P 1823〜1896、ドイツの生理学者、Magendie の弟子）は、温痛覚は、脊髄に入ってすぐ交叉するのに対し、触圧覚は同側の後索を上行すると記載した。
• 1876年にSir William Richard Gowers（P 1845〜1915, イギリスの神経学者、病理学者、ロンドン大学の教授）が脊髄前側索が痛みの伝導路であることを確認した。片側腰椎部の脊髄銃創を受けた患者を研究、痛覚路は脊髄の前側索にあるとし、それを外側網様核付近まで追跡した（Trans Clin Soc London）。
  　（しかし、「ガワーズ束」は、前脊髄小脳路を示す。）
• Gowersが途中まで追跡していた伝導路を1889年にLudwig Edinger（P 1855/4/13〜1918/1/26, フランクフルト大学の解剖学者、神経学者）が視床に達することを発見し、温痛覚の経路であると報告した（Anat Anz）。「交叉性求心路」と命名したが、厳密に言えば、非識別性触覚の伝導路である前脊髄視床路？？？
• 1897年にVon Solderは外側脊髄視床路（温痛覚の伝導路）と前脊髄視床路を区別した（Neurol Centralbl）。
• 1899年にVladimir Mikhailovich Bechterev（P 1857-1927、ロシアの神経学者） が前側索を上行する伝導路を「脊髄視床路」と命名した。

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○脊髄上行路---上位中枢と連絡するための伝導路　1/2/3

視 床 ↓ 大 脳 皮 質 へ	後索 dorsal column：DC↑/↓　→　dorsal tract　→　内側毛帯：ML 弁別的触圧覚、位置感覚・自己受容性感覚を伝える伝導路 ┏薄束（後索の内側）---下半身（T7〜）からの後根線維から）→薄束核 ┗楔状束（後索の外側）---上半身（〜T6）からの後根線維から→楔状核延髄の後索核でシナプスを変えた後、内側毛帯（中脳・橋）を上行し、視床に至る。
	前 側 索 系 ↑	外側脊髄視床路： LSTT 　Lateral spinothalamic tract ＝新脊髄視床路 　neospinothalamic tract 　→伝導路	白前交連を通って、対側の前側索（前脊髄小脳路の内側）を上行。 皮膚の温熱覚、痛覚
		前脊髄視床路： ASTT 　anterior spinothalamic tract ＝旧脊髄視床路 　paleospinothalamic tract 　→伝導路	白前交連を通って、対側の前索に入り、脊髄、延髄、中脳を上行し、視床に至る。 粗大触圧覚を伝える。 痛覚、温度覚の一部
		脊髄延髄網様路 　spinoreticular tract	白前交連を通って、対側の前側索（前脊髄小脳路の内側）を上行。 皮膚の温熱覚、痛覚を導く。
		脊髄中脳路 　spinomesencephalic tract： SMT	白前交連を通って、対側の前側索を上行。 spinoannular bundle→lateralPAGとventrolateral PAG spinotectal bundle→the deep layers of the superior colliculus
		脊髄視床下部路 　spinohypothalamic tract：SHT	白前交連を通って、対側の前側索を上行し、視床下部へ。
小 脳 へ	脊髄オリーブ路		後角の内側から生じ交叉して上行。 下オリーブ核から下小脳脚を介して小脳へ入る。（登上線維） 触圧覚、位置感覚を伝える経路である。
	前脊髄小脳路 VSCT		側索の周辺で後脊髄小脳路の腹側にある。 線維は後柱の索細胞から起こり、主として白前交連で交叉し、対側の側索を上行して上小脳脚を経て小脳虫部に行く。（苔状線維） 下肢からの深部知覚を導き、小脳へ伝えるが、意識に上らない。
	後脊髄小脳路 DSCT		側索の表層の背側部を占め錐体側索束の外側に接する。 起始は同側のクラーク核。上行して下小脳脚を経て小脳の虫部に達する。 体幹、下肢の筋、関節、腱などの深部感覚を伝えるが、意識に上らない。

Pain Relief