研究法 │刺激│ ←→侵害刺激/テスト法
 痛みの研究を行うためには、被検者・患者や動物に痛み刺激を行う必要があるが、実験の目的をよく考え、実験の倫理に沿う研究をしなければならない。
●組織に対する刺激




機械刺激 ←→機械受容チャネル/テスト方法
  • 機械刺激の定量化は容易ではない。
  • 触刺激---絵筆、エアパフによる機械刺激を与える。
     圧刺激---無鉤ピンセットによる機械刺激を与える。
     侵害刺激---有鉤ピンセットなどを使って、機械刺激を与える。
      触刺激では順応が起こるが、侵害刺激では順応が起こらない。
  • von Frey Hair →von Frey Test/→Freyの特種説/Maximilian Ruppert Franz von FreyP 1852/11/16〜1932/1/25, Leipzig)
      オリジナルは、木片に2インチの馬の尻尾の毛をつけたもの。最近は、太さの異なるナイロンフィラメントがついていて、機械刺激による触覚閾値を測定する。

  • mechanical allodyniaをテストするための機械刺激
    static allodynia
    • static: Pressure (von Frey Hair)
    • high-threshold-fibre inputs
    dynamic allodynia
    ‘brush-evoked’ allodynia
    • dynamic: Stroking (soft brushes and cotton buds)
    • low-threshold-fibre inputs

  • 侵害受容線維を選択的に刺激するには、神経線維を圧迫し、Aβ線維の伝導をブロックする。
熱刺激
    接触型熱刺激
    • 行動学的研究で使われている熱刺激---tail flick test、tail dip test、paw flick test -plantar test、hot plate test
    非接触型熱刺激
    • 触覚を誘発しない。
    • Hardyらの輻射熱疼痛計を改良した熱刺激装置(ハロゲン光を集光させ、皮膚表面をモニターして、光量にフィードバックさせる。)や、赤外線レーザー熱刺激装置。  (ダイヤメディカル社製 DPS-705)
    • CO2レーザー光による熱刺激
    冷刺激 Aceton test

    柿木LabCO2レーザー光による熱刺激
    • Tm:YAGレーザー
    • 波長:1960mm duration:1msec 照射直径:3mm
      C線維刺激レーザープローブの先端部分に、直径0.4mmの小さな穴を121個穿った薄いアルミ板(厚さ0.1mm)を貼る。
      Aδ線維刺激アルミ板を貼らない場合には、AδおよびC線維の両方が刺激されるが、C線維を上行する信号は完全に抑制されるので、Aδが刺激される。
      皮膚のC侵害受容器は、Aδ侵害受容器よりもはるかに数が多く、しかも興奮温度域値が低いという性質に基づく刺激。

  • 評価に関して2つの方法*
    the method of limits
    • a subject is required to indicate as soon as an increasingly strong stimulus is detected (ascending ramp) or when a decreasing stimulus is no longer detected (descending ramp).
    • using a constant-power stimulator, e.g. radiant lamp
    the method of levels
    • stimuli of defined intensity levels are tested with the subject signaling whether a specific level is detected.
    • the subject is forced to choose whether or not a stimulus is felt; hence, it is also referred to as a "forced choice" algorithm.
    • using a temperature-controlled heat stimulator, e.g. peltier device
化学刺激
発痛物質刺激

起炎物質 inflammatory agent ←→起痒物質
  • カラゲナン(カラゲニン)carrageenan
     →モデル/カラゲニンテスト/→リンク藻類講座
    • 紅藻類のスギノリ科やミリン科の海藻の細胞間多糖類。
    • アイルランド南海岸のカラギ−ン地方に自生する紅藻 Chondrus crispus(ヤハズツノマタ、英語で Irish moss または carrageen moss、アイルランド語で carraigín)から1844年に初めて抽出され、命名された。
    • 硫酸基を有するポリ-D-ガラクトース
    • 直鎖含硫黄多糖類の一種で、D-ガラクトース(もしくは 3,6-アンヒドロ-D-ガラクトース)と硫酸から構成される陰イオン性高分子化合物である。
    • ふつう紅藻類からアルカリ抽出により得られる。組成は同じく紅藻類から得られるアガロース(寒天の主成分)に似るが硫酸を多く含む点で異なる。
    • ラット足蹠に注入すると浮腫を引き起こす。

  • カオリン kaolin
    • 白陶土、長石を含む岩石の風化によってできた粘土の1種、陶磁器の原料
    • 中国江西省の景徳鎮付近の山、高陵Kaoling山から産出されていたためにこの名前がある。高嶺で産出する粘土は、景徳鎮で作られる磁器の材料として有名である。日本では岡山県備前市三石、広島県庄原市勝光山が産地として有名。
    • カオリナイト kaoliniteなどが主成分。カオリナイトはアルミニウムの含水珪酸塩鉱物で粘土鉱物の一種。
    • アート紙のコーティング、化粧品、薬の賦形剤などの原料にする。
    • 関節腔にカオリンとカラゲナンの混合溶液を注入して急性関節炎を発症させる。

  • Mustard oil (allyl-isothiocyanate)←→TRPA1受容体
    • マスタード(洋からし、クロガラシ black mustardとシロガラシ white mustard)はアブラナ科の植物で、mustard seed oil(からし油)は、からしの種子から搾油した油。
    • マスタードの辛み成分
    • マスタードオイルやわさびなどは、TRPA1を活性化する。

  • 完全フロインドアジュバント Complete Freund's adjuvant : CFA →モデル
    • 本来は抗体作成に使われた。
    • 流動パラフィンにウシ型結核死菌(Mycobacterium.Butyricum, DIFCO)を懸濁したもので、抗原に加えるとその抗原性が著しく高まる。
    • 抗原とアジュバントをいれた 2本のロックタイプのシリンジを三方活栓でつなぎ、ピストンを交互にて混和し、油中水型エマルジョンを作る。混和液が固くなれば完成である。
    • 全身炎症および、炎症性疼痛モデル(アジュバント関節炎ラット)

化学刺激によるテスト法
  • ホルマリンテスト: →行動/モデル
  • bee venom test / melittin test

○歯髄を刺激
歯髄を電気刺激する。
  • 歯の感覚は基本的には痛みのみであるので、歯髄刺激は侵害刺激となる。
  • 持続時間 0.3msec、3発/sec (400Hz)
○筋肉を刺激
高張食塩水。
○内臓を刺激
Colorectal distension (CRD) ---Dr Gebhartの研究でよく使われている。


胆石モデル

発痛物質
○関節を刺激 ←→関節
完全フロインドアジュバント Complete Freund's adjuvant : CFA
 CFAを関節内に入れて、炎症性疼痛モデル(アジュバント関節炎ラット

●侵害受容神経や侵害受容ニューロンの刺激
○侵害受容線維の刺激
末梢神経や 後根などを電気刺激する。
  • 神経線維の電気刺激では、順行性伝導と逆行性伝導が起こる。
  • 神経線維の太さの違いから、ある程度Aβ,Aδ,C線維の反応を閾値と伝導速度によって、分けることができる。
  • 白金双極電極 Aδ線維は持続時間0.1msec、C線維は持続時間1msecなどで刺激する。
     神経と刺激電極の間に組織液が入ると、電極間がショートするので注意。
  • 侵害受容線維を選択的に刺激するには、神経線維を圧迫し、A線維の伝導をブロックする。
電流知覚閾値試験 CPT →CPT
○侵害受容ニューロンを刺激
ニューロンを電気刺激する。
  • 電気刺激は、細胞体だけではなく、通過線維も刺激してしまう。
ニューロンをグルタミン酸で刺激すると、細胞体だけが興奮する。
  • bipolar simulating electrode で、薬液も注入できる電極がある。


Pain Relief