■反応	│体温調節 Thermoregulation│　←→視床下部 /頭痛

→体温調節　→ 異常体温　→発汗　→シバリング

●体温調節

皮膚の温度受容器 皮膚にある暑さ寒さを感じる受容器。 TRPV family 体の表面の温熱を感じて温熱中枢に伝える。 深部の温度受容器 体温を感知する深部の温度受容器。

温熱中枢 前視床下部・脳幹・脊髄などにある 熱放散の中枢---暑い、暖かい情報を入力し、熱放散指令。 冷中枢 後視床下部 熱産生の中枢---寒い、冷たい情報を入力し、産熱指令。

交感神経節前ニューロン 体温調節を司る交感神経プレモーターニューロンは延髄縫線核に分布する小胞性グルタミン酸トランスポーターVGLUT3を発現するニューロンである。1/2 β受容体 ふるえの起こらない産熱反応に関与する。 褐色脂肪組織に働いて、脂肪の分解を促進する。 グリコーゲンを分解して糖の新生を促す。 α受容体 血管運動機構に作用して熱を遮断する。 皮膚・粘膜・静脈などの血管収縮に関与する。

副交感神経系 アセチルコリンを伝達物質として効果器に作用する。

体性運動神経系 骨格筋に作用して「ふるえ」を起して、熱を産生する。 体を動かして、熱を産生するような行動をとる。

●異常体温

低体温 hypothermia

高体温（熱射病） hyperthermia

悪性高熱症 malignant hyperthermia：MH　←→参考1/2/3/3 全身麻酔の偶発症の一つ。 1960年にMichael A. DenboroughとRoger R. H. Lovell（Melbourneの内科医）が報告した。 常染色体優性遺伝の潜在的な筋疾患 リアノジン受容体をコードするRYR1の遺伝子変異 CICRの異常亢進による筋細胞質Ca2+濃度の異常な上昇によって引き起こされると考えられている。 　[症状] 体温上昇以前に認められる症状 筋肉の強直 頻脈、不整脈、不安定な血圧 自発呼吸の出現 チアノーゼ、発汗など 体温上昇 体温上昇は多くの場合、麻酔開始から30〜60分経過した頃から上昇する。場合によっては数時間後、急激に体温が上昇する症例もある。 体温上昇速度は典型的な場合、15分に1.0 ℃前後と急峻である。あるいは、気付いたときに40℃以上であったとの報告もある。 体温上昇以降に認められる症状 ミオグロビン尿（赤褐色尿）：多くの症例では骨格筋の崩壊が起こるので、時間を経って尿中にミオグロビンが出現する。 後遺症 筋肉痛、筋力低下、歩行障害：崩壊した骨格筋の量により程度が異なる。 その他 いわゆるショック症状：異常な代謝亢進が起こっているため、ショック状態になる。 　[原因となりやすい薬剤] 人工的に製造した薬物（特にハロゲン加化合物など）が悪性高熱症を引き起こす強い力を持っている。 筋弛緩剤の塩化スキサメトニウムなど 吸入麻酔薬のイソフルレン、セボフルレンなど これらの薬物はCICRを亢進することが知られている。また悪性高熱症患者では低濃度のCa2+でCICRが活性化する。 　[治療法] 全身冷却 ダントロレンナトリウムの静注など。

●発汗 perspire, sweating　←→皮膚/交感神経

• 人間は気温が高い時に体温調整のために発汗をするが、精神的緊張（不安・恐怖）が高まって交感神経が優位になった時にも発汗量が多くなる。
• 汗腺は2重支配の例外で、交感神経節後線維のみに支配されている。
• 交感神経節後線維終末から放出される伝達物質は通常ノルアドレナリンであるが、発汗運動神経 sudomotor nerveからはアセチルコリンが分泌される。
• 交感神経線維に支配されているにもかかわらず、汗腺にはアセチルコリン受容体がある。
• ムスカリン受容体のアゴニストであるムスカリン、ピロカルピンで発汗が促進される。
• アトロピンによって分泌が抑制される。
  
  
• 発汗中枢は脊髄にあり、上位中枢は視床下部である。視床下部において他の自律機能と連絡し、体温調節が行なわれる。
• 発汗中枢は運動中、睡眠中、解熱後に興奮性が高まる。
• 運動中発汗量が増すのは中枢の興奮のほかに、血流量増大によって汗の分泌量が増加することにもよる。
  
  
• 汗の成分：汗の大部分は水。NaClが約0.65%、尿素0.08%、乳酸0.03%です。

○3種類の発汗

温熱性発汗 thermal sweating 体温調節に関与して、エクリン腺から放出される発汗。 中枢は視床下部の体温調節中枢にある。 体温調節中枢の神経細胞からの神経線維は、脳幹、脊髄、交感神経節を経由して、全身の皮膚の汗腺・血管に分布する。 体温が上昇すると、視床下部がこれを感知し、これらの神経系を介して、汗腺から汗を出し、また血管を拡張させて熱を放出する。

味覚性発汗 gustatory sweating 辛いものを食べたり飲んだ時などに、主に顔面のエクリン腺から放出される発汗。 カプサイシン刺激によって生じる発汗であれば、「口腔内痛覚性発汗」というのが正確だろう。 これらの過剰な発汗も、味覚性多汗症と呼ばれる。 味覚性多汗症は糖尿病性神経障害、顔面帯状疱疹、頸部交感神経節への浸潤、CNSの損傷または疾患、耳下腺への浸潤、CNSの損傷または疾患、耳下腺の損傷で増加することがある。 耳下腺の例では、手術、感染症、外傷によって耳下腺の神経支配が破壊され、その結果、耳下腺の副交感神経線維が再生して、損傷が生じた局所皮膚の汗腺を支配する交感神経線維に入り込む。この現象が通常耳下腺の上で生じて、フライ症候群（味覚性多汗症）となる。

精神性発汗 mental sweating, emotional sweating 体温調節のためではなく、ストレスや緊張、不安などの精神的・心理的な問題が原因で、交感神経緊張時に、エクリン腺から放出される発汗。 精神性発汗は交感神経系の緊張や覚醒水準の高さを反映する。 いわゆる「冷や汗」「手に汗を握る」。 精神性発汗はポリグラフに用いられる。 一般には「嘘発見器」として知られている。 皮膚電流反射 galvanic skin reflex：GSR 精神性発汗による皮膚の電気抵抗の変化。 ポリグラフでも用いられる。 1879年にRomain Vigorouxが発見した現象 1927年にChester William Darrow（1893〜1967, アメリカの心理生理学者）が、galvanic skin reflexの研究をした。 皮膚電気活動 Electro-Dermal Activity：EDA　参考1 精神性発汗を電気的に測定する指標を総称して皮膚電気活動：EDA と言う。 EDAには、1) 皮膚電位活動：SPAと　2) 皮膚コンダクタンス：SCAがある。 皮膚電位活動 Skin Potential Activity：SPA 皮膚電位水準 Skin Potential Level 　：SPL SPAの直流成分。 SPLは陰性に高いほど、覚醒水準が高いことを示す。 皮膚電位反応 Skin Potential Response 　：SPR SPAの反応成分。 日中の活動時の緊張が高い時には、SPRが頻発するが、入眠すると減少する。 皮膚コンダクタンス　Skin Conductance Activity：SCA 　発汗によるコンダクタンス（抵抗の逆数）の増加を測定する Skin Conductance Response 　：SCR＝GSR SCAの反応成分。

○汗腺

• エクリン腺とアポクリン腺の２種類の汗腺がある。
• 外分泌腺のうち、腺細胞自体が内部に分泌物を蓄えた後に全体が崩壊して外部に排出される様式を全分泌腺（ホロクリン腺）、細胞体は壊れずに腺細胞の生成した分泌物のみ細胞から浸出する様式を漏出分泌腺（エクリン腺）と呼び、この両者の中間的な様式を離出分泌腺（アポクリン腺）と呼ぶ。

  エクリン腺 Eccrine sweat glands コリン作動性 口唇、外陰部の一部を除く全身に分布する。 全身に分布するエクリン腺は、温熱性発汗に関与する。 足底の発汗のエクリン腺は、精神性発汗に関与する。手足の滑り止め効果を有する． 真皮層の網状層に存在する。 多い人は約500万個、少ない人で約200万個、平均すると約350万個ある。 手掌・足底で分布密度が最も高く、400〜600個/cm2。 能動汗腺 active sweat glands：実際に汗を分泌する能力のある汗腺（←→不能汗腺） 日本人では平均230万個、フィリピン人では平均280万個、ロシア人では平均190万個ほどである｡ 生後２年半にどれだけの暑さにさらされるかによって能動汗腺の数が決まる。暑い地方で生まれた人は寒冷地で生まれた人より能動汗腺の数が多くなる。 冷房が普及した1970年代生まれ以降の世代では、能動汗腺が増えず、あまり汗をかけないと言われている。

  アポクリン腺 Apocrine sweat glands アドレナリン作動性 ヒトでは、腋窩、乳輪、会陰部などに限局する。毛包に開口する汗腺。 思春期になると活発となり、粘りけと臭いのある汗を出す。 アポクリン腺から出る汗には細胞成分の一部がちぎれたものが含まれる。 哺乳類の全身に分布する汗腺は、基本的にはアポクリン腺様式で、脂質やタンパク質などを多く含む乳白色の分泌物を皮膚上に分泌する。この分泌物は皮膚の常在細菌の作用で分解して臭いを発することにより、社会的、あるいは性的な個体間関係を取り結ぶ、フェロモンとして機能している。

○発汗機能検査　1/2

着色法 ミノール法 Minor's sweat test, ヨードデンプン法 starch-iodine test Minor液（alcoholic iodine solution :ヨード15g,ヒマシ油100ml,アルコ一ル900ml）を塗り、乾いた後、澱粉 potato starch powderをかけておくと、発汗部位は紫色に染まり、発汗部位が特定できる。 （Minor, V., 1928. Ein neues Verfahren zu der klinischen Untersuchung der Schweissabsonderung. Dtsch. Z. Nervenheilkd. 101, pp. 302–308） 和田・高垣法 Wada Takagaki method---Minor変法 試薬　A液:ヨード 3g を無水アルコール 100mlに溶かしたヨード･アルコール液 試薬　B液:可溶性デンプン50-100gをヒマシ油100mlとの混合液 発汗開始前に上半身皮膚面にA液を塗布し、十分乾燥させた後に、B液を薄く塗る。 発汗開始に、汗孔に一致してヨードデンプン反応が起こり、ごく微小な濃紫色の着色点が現われる。 B液に含まれるヒマシ油のために、排出された汗の蒸発が防げられるので、着色点は汗量の増加に伴って大きくなる。

発汗量の測定* 換気カプセル法

定量的軸索反射性発汗試験 quantitative sudomotor axon reflex test：QSART 汗腺を支配する交感神経線維のの定量的機能評価試験。 1930〜 1940年代 CoonとRothmanらが「軸索反射性発汗」の基礎研究を行った。 1950年代 Collimsや Wadaらによって詳細に検討が加えられた。 1983年 Phillip A. Low（Mayo Clinic）らが発汗系交感神経の定量的機能評価試験としてQSARTを考案した。 Lowらは、軸索反射性発汗を交感神経機能検査として応用した。二重構造のカプセルを作成し、外側に10%のアセチルコリン水溶液を充たした。イオンとフォレシスによってアセチルコリンを皮膚に浸潤させ、カプセルの内側に生じた軸索反射性発汗をカプセル換気法で定量的に測定して、交感神経節後機能を指標とした。この方法は非常に感度、再現性がよい。 軸索反射が生じる範囲は、Riedleらによって検討された。Lowらの方法でQSARTを行い、下腿、足蹠とも最小半径1cm、最大半径2〜3cmの範囲で発汗反応を観察している。Lowらの方法は、直径1cmほどのカプセルの外側でイオンとフォレシスし、その内側で発汗を測定しているので、軸索反射が充分生じると思われる。Lowらはスクリーニングとして前腕1カ所、下腿3カ所の測定を推奨している。

○発汗異常 sweating abnormalities

→多汗症　→乏汗症

　[多汗症 hyperhidrosis]

全身多汗症 全身発汗を起こす病的状態 発熱 全身衰弱 激痛（腎疝痛、胆疝痛） 甲状腺機能亢進症 妊娠 閉経期（皮膚の発赤を伴う） 末梢循環虚脱（心不全のある時期） 呼吸困難 手術、重篤疾患の回復期 悪性高熱症

局所多汗症 手掌多汗症 CRPS フライ症候群（味覚性多汗症）




手掌多汗症、掌蹠（しょうせき）多汗症 palmar hyperhidrosis 手のひらや足の裏に異常に汗をかく状態 多汗症は、発汗恐怖や緊張型多汗症とも呼ばれ、人前で緊張し、汗が異常に出てしまうということで悩んでいる状態。 多汗症の治療 　→外用剤（塩化アルミニウムなど）、イオントフォレーシス、ボツリヌス毒素皮内注射 　→交感神経遮断術/胸腔鏡下交感神経遮断術：ETS ETSの副作用として代償性発汗が生じることがある。

足底多汗症 plantar hyperhidrosis 手掌多汗症と同様に出現 多汗症の治療 　→外用剤（塩化アルミニウムなど）、イオントフォレーシス、ボツリヌス毒素皮内注射 　→腰部交感神経節ブロック ETSの副作用として代償性発汗が生じることがある。

代償性発汗 compensatory sweating ETSの副作用：胸部交感神経幹の働きを障害することによって、今までほとんど汗をかかなかった、または気にならなかった胸より下（背中・腹・太もも・お尻・ひざの後ろなど）に増加する発汗。 手掌多汗症に対する胸腔鏡下交感神経遮断術は少ない手術侵襲で確実性の高い効果が得られる一方で、術後に生じる代償性発汗は比較的高い頻度で認められ、術後のQOLを考える上で大きな問題の1つとなっている。 ETSを受けると必ず代償性発汗が起こるわけではなく、起こったとしても症状の現れ方や強さには個人差がある。 通常、皮膚の温熱受容器から求心性に視床下部前部に温度情報が入力され、遠心性信号が交感神経節後線維からアセチルコリンが放出されると汗腺からの発汗が誘発されるが、節後線維は視床下部に negative feedback をかけるので、ETSを行うことで negative feedback として働かなくなり、温熱性発汗の抑制が減少し、大量の発汗を生じる。

　[乏汗症 hypohidorosisと無汗症 anidroosis]

乏汗症 hypohidorosis （全身発汗を減少する病的状態） アジソン病 尿崩症 悪液質 糸球体腎炎 粘液水腫 脳循環障害 糖尿病 嘔吐を頻回に繰り返す 下痢 アトロピン系薬物の使用 強皮症 砒素中毒 起立性低血圧症 未熟児 老人性汗腺萎縮 シェーグレン症候群 多発性骨髄腫 色素性乾皮症 尋常性乾癬 アトピー性皮膚炎など皮膚疾患

（全身）無汗症 anidroosis 視床下部の体温調節中枢の障害 先天性無汗性外胚葉形成不全症 先天性無痛無汗症 Fabry病 特発性後天性全身性無汗症

局所発汗の減少 CRPS

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○シバリング Shivering

発熱時のシバリング 体温が下がった時に筋肉を動かすことで熱を発生させ体温を保とうとする生理現象。 視床下部で調整されており、骨格筋をランダムに収縮させることにより熱産生を増加させる。 術後のシバリング（この場合のシバリングは悪寒戦慄？） レミフェンタニルは優れた麻酔薬であるが、術後シバリングと術後疼痛が問題となっている。時として嘔吐を伴うほどの激しい疼痛が術直後から出現し、麻酔中の体温低下による悪寒やシバリングが強く表れるという不利な面もある。* シバリングは術後の患者にとって「痛み」と共に非常に不快な悪い経験とされているばかりでなく、酸素消費量を増大させたり，創部への影響など生体そのものにとっ ても速やかに治療されるべきものとして認識されている。すなわち「麻酔覚醒の質」にとって極めて大きな問題である。 持続的な震えによって、体が熱を産生させ、このとき莫大な酸素を消費することは問題である。心臓に問題がある患者さんでは、ときに狂心発作を誘発することもある。 多くの麻酔薬はシバリングの閾値を低下させる。特に、メペリジンはシバリングの閾値を大幅に低下させることが知られている。

○悪寒戦慄 shaking, shivering chillness 悪寒戦慄とは発熱初期に起こる悪寒に加えて身震いもしくは震えも起こるもので、骨格筋が等尺性の収縮をすることで生じる。 体温が下がった時に筋肉を震えさせることで熱を発生させ、体温を保とうとする生理現象。 これは筋肉の運動が全て熱転換されるため、体内の自律的熱生産としては効率のよいものである。

Pain Relief