吻側亜核 subnucleus oralis:Vo | - 吻側亜核は、多くの哺乳動物で顔面神経核の吻側端から下オリーブ核の吻側3分の1レベルにまたがっている。三叉神経毛体に入った対側視床後内側腹側核に終わるものが主要な投射線維である。
- 吻側亜核のニューロンは、主感覚核の場合と同様その多くが触覚ニューロンで、三叉神経支配領域に限局した末梢受容野を持ち、毛の動きや軽い接触ないし圧迫に反応する。主感覚核とともに触覚弁別に役立つ情報を視床後内側腹側核に中継するとみられている。ただし、吻側亜核から後内側腹側核へ向かう線維は全て交叉性で同側投射はない。
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中間亜核 subnucleus interpolalis:Vi | - 中間亜核は吻側亜核の尾側端から閂の高さまで伸びている。中間亜核のニューロンも触覚ニューロンで体性機能の局在機構があり、対側視床後内側腹側核への投射もある。ただし、下小脳脚(索状体)を経由する同側小脳への投射があって、吻側亜核と異なる機能分担が予想されている。
- 中間亜核は副交感性血管拡張反応に関与する。 ←→三叉神経-自律神経反射
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閂 obex- 脊髄から延髄の尾側レベルまでは、背側面の正中線上の溝がある。第四脳室の尾側部がobexで、横走する有髄神経線維を含む薄板によって閉じられていて、obexには第四脳室脈絡組織が付着している。
- 牛海綿状脳症(BSE)では、obexは異常プリオンが最も多く蓄積される部位であるらしい。延髄に特徴的なスポンジ状の空胞の有無などを確認し、免疫組織化学でBSEプリオンを調べるらしい。
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尾側亜核 subnucleus caudalis:Vc | - Jerzy Olszewski↑は1950年に、人やサルの三叉神経脊髄路核を細胞構築学的に研究し、3部に区分した。この区分は、かつて布施↑が髄鞘構築学的な研究に基づいて行った区分とほとんど同じであった。
- Olszewskiは三叉神経脊髄路核を複合体(spinal trigeminal complex)として、nucleus oralis、nucleus interpolaris、nucleus caudalisのという名称を使ったが、三叉神経脊髄路核の亜核をsubnucleus oralis、subnucleus interpolaris、subnucleus caudalisのように、亜核 subnucleusを使用する研究者のほうが多い。
- 尾側亜核は閂の高さから頸髄との境界部まで伸びて脊髄後柱に移行する。三叉神経脊髄路を閂の高さで切断すると、三叉神経支配領域の痛覚と温・冷覚が消失するので、この切断によって末梢からの入力が断たれる尾側亜核が三叉神経系の痛覚と温冷覚を視床後内側腹側核へ中継する。
- 尾側亜核は脊髄後角に似た層構造を持ち、辺縁層・膠様質および大細胞層の3部に分けられる。さらに腹側に、延髄背側網様亜核と延髄腹側網様亜核がある。
辺縁層 |
- 脊髄後角の第Io層に相当し、両者を併せて浅層部という。
- 辺縁層に特有なのが投射ニューロンで、Waldeverの辺縁細胞がその代表である。
- 辺縁層に特異的侵害受容 NSニューロンと温冷覚ニューロンが分布している。
- 特異的侵害受容ニューロンは同側の三叉神経支配領域に限局した末梢受容野を持ち、そこに強い機械刺激、例えば有効ピンセットによる刺激を加えたとき興奮する。
- 辺縁層の特異的侵害受容ニューロンは、三叉神経支配領域の痛み情報を視床後内側腹側核 VPM properへ中継する2次痛覚ニューロンとみられている。
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膠様質 |
- 脊髄後角の第Ii層と第II層に相当し、両者を併せて浅層部という。
- 膠様質のニューロンは全て介在細胞で、5種類のものが記載されている。
- 膠様質の外層部にもNSニューロンが分布するが、すべて介在ニューロンである。
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大細胞層 |
- 大細胞は馬蹄形を有する膠様質の内部を充たしていて、脊髄後角の第III、IV層に相当する。
- 大細胞層には低閾値機械受容ニューロン(触覚ニューロン)が分布していて、体性機能の局在機構がみられるが、これらのニューロンは投射ニューロンではない。
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延髄背側網様亜核 |
- 脊髄後角の第V層に相当する。
- 尾側亜核大細胞層の腹内側部に隣接する延髄背側網様亜核の外側部に広作動域WDRニューロンが分布する。
- 同側三叉神経支配領域にやや広い末梢受容野を持ち、その中心部に加えられた触刺激から侵害刺激にいたる種々の強さの機械刺激に段階的に応じ、侵害刺激が加わったとき最大に興奮する。それを取り囲む部位では興奮の閾値が高く、触刺激が加わっても興奮しないが、圧刺激と侵害刺激に対して段階的応答を示す。さらにそれを取り巻く末梢受容野の辺縁部では侵害刺激のみが興奮作用を持つ。
- ニューロンも体性機能局在機構を示し、対側視床後内側腹側核へ投射する。
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延髄腹側網様亜核 :SRV |
- 延髄背側網様亜核の背内側部に三叉神経領域に広い受容屋を持つ侵害受容ニューロンがある。
- 脊髄後角の第VII層も、広い受容屋を持つSRVタイプニューロンがある。
- 対側視床髄板内核群へ投射する。
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- 特異的侵害受容ニューロン、広作動域ニューロン、および低閾値機械受容ニューロンの延髄前後軸についての体性機能の局在機構はタマネギ状分節支配に対応している。
- 角膜からの一次求心性入力は尾側亜核の第一頸髄脊髄の移行部(VCC1)と、三尾側亜核と中間亜核の移行部(ViVc)に投射される。(参考1)
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