■反応

│痛みの感受性│

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• カテコール-O-メチルトランスフェラーゼ ：COMTの活性と遺伝子の変異の違い
  
  • COMT val¹⁵⁸met Genotype Affects μ-Opioid Neurotransmitter Responses to a Pain Stressor (Jon-Kar Zubieta et. al, Science, 299(5610) 1240-1243, 2003 [Science]関連1/2)
    
    
  • COMT活性が高いと痛みを感じにくい。
  • COMTの遺伝的多型性(val158met)---アミノ酸配列の158番目がバリンからメチオニンに変化している人は、COMT活性は1/3-1/4になる。

    met/met homozygotes型のCOMT遺伝子を持つ人は"wimpy" ：痛がり、 val/val homozygotes型のCOMT遺伝子を持つ人は"stoic"：痛みの感受性が弱く、 heterozygotes型のCOMT遺伝子を持つ人はその中間である。

    
    
  • 健康被検者(11 met/val, 4 met/met, 3 val/val)の咬筋 masseter muscleに5% 高張食塩水を注入して、positron emission tomography (PET) with the aid of [11C] carfentanil, a u-opioid receptor-selective radioactive markerで評価した。　←→TMJ
  • val/val homozygotes型のCOMT遺伝子を持つ人は、COMT活性が強いので、ドーパミンが代謝され、エンドルフィンが放出され、痛みの感受性が下がる。
  • met/met homozygotes型のCOMT遺伝子を持つ人は、ドーパミンが代謝されにくいので、エンドルフィンの放出量が減少し、「痛がり」となる。
  • met/met homozygotes型のCOMT遺伝子を持つ人は、μ-opioid系の機能低下が生じ、痛みに過敏になり、陰性感情になることが予想される。
  
  
• COMT遺伝子には、感受性の違いがある。
  • Genetic basis for individual variations in pain perception and the development of a chronic pain condition. (Diatchenko L et al, Hum Mol Genet. 2005 Jan 1;14(1):135-43. Epub 2004 Nov 10. [PubMed]
    
    
  • COMT遺伝子には、低痛覚感受性（low pain sensitivity、LPS）、平均的痛覚感受性（average pain sensitivity、APS）、高痛覚感受性（high pain sensitivity、HPS）に対応した3つの遺伝子変化がある。
  • 健常人202人を3年間追跡調査したところ、LPSが一つでもある人は、myogenous temporomandibular joint disorder（TMD）などの筋骨格系の痛みを引き起こすしにくい。
  • LPSのハプロタイプは、APS、HPSのハプロタイプに比べてCOMT酵素活性が高まっている。ラットでCOMTを阻害すると、痛覚が増強された。

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• κオピオイド受容体に対する感受性の性差---女性が敏感！
  
  • Gender difference in analgesic response to the kappa-opioid pentazocine.(Gear et. al, Neurosci Lett. 1996 Mar 1;205(3):207-9.[Science Direct]
  • 他に何らの薬物も投与されていない、10人の女性と8人の男性に対して、第3臼歯(親知らず)を抜歯した後に、鎮痛剤として pentazocine (κオピオイド)を投与した。
  • 女性群では男性群よりも有意に高い鎮痛効果を得た。女性群の中で比較すると、月経周期のどの時期にあるかの違いによる鎮痛効果の差は認められなかった。
    
    
  • Kappa-opioids produce significantly greater analgesia in women than in men.(Gear et. al, Nat Med. 1996 Nov;2(11):1248-50.[Science Direct]
  • 鎮痛効果の性差は、κオピオイド受容体に対する感受性の性差によるものと示唆された。
  • 2種類のκ受容体作動性鎮痛剤であるnalbuphineと butorphanolを、男女被験者に投与した。
  • nalbuphineとbutorphanolの両方で、女性群がより強い鎮痛効果を得た。
    
    
  • The kappa opioid nalbuphine produces gender- and dose-dependent analgesia and antianalgesia in patients with postoperative pain.(Gear et. al, Pain. 1999 Nov;83(2):339-45. [Science Direct]
  • 62人の男性と69人の女性を対象に、プラセボとnalbuphine(κオピオイド、5, 10, 20 mgの3種の用量)を使って二重盲検実験を行った。
  • 偽薬では鎮痛効果に性差は認められなかったが、3種の容量の全てで、女性群が有意に強い鎮痛効果を示した。(過去の研究結果を裏付けた。)
  • 男性群では20mgでははっきりした鎮痛効果を得たが、10mgでは偽薬と差がなく、5mgでは逆に鎮痛効果が出た。
  • 女性群では10mgではっきりした鎮痛効果が示され、5mgと20mgでは偽薬と差がなかった。
  • 男性群のような鎮痛「阻害」効果は認められなかった。
  • 至適投与容量があるらしいこと、女性の至適投与用量は男性より低いらしいことが示唆された。

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• 男性のほうが痛みに鈍感である！　
  
  
• Testosterone reduces responsiveness to nociceptive stimuli in a wild bird.Hau et. al, Horm Behav. 2004 Aug;46(2):165-70. [Science Direct]関連1
  
  
• 男性ホルモンのテストステロンが痛みを鈍らせることを発見した。男性が闘いにのぞんでいるときなど、テストステロンのレベルが高いとき、痛みを鈍らせる効果が気力の維持に役立っているのかもしれない。
• オスのスズメの片方の脚を湯を入れたビーカーにつけ、湯の温度を変えて通常の痛みの閾値を決定した。
• テストステロンが入ったシリコンゴム容器をスズメの背中に移植してテストステロンを与えた。52℃の湯では、テストステロンを投与されたスズメは、投与されていないスズメよりも3倍長い時間、脚を湯の中につけたままにしていた。こうして、テストステロンを投与されたスズメは痛みに対する耐性が高まったことが示された。
• テストステロンの効果を妨げる薬の効果を試した。この薬を与えられたスズメは、48℃の湯に脚をつけている時間が半分足らずになった。薬を投与されていないスズメは、48℃ではほとんど痛みを示さなかった。

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■反応	│他者の傷み、痛みの共感│

• 痛みは主観的な体験であるために、他人の「痛み」を理解することは困難である。
• 人が他人の気持ちを「共感」できることの背景には「ミラーニューロン」の存在が関与している可能性がある。

  Ludwig Wittgenstein　参考1/2 われわれは他者の痛みがわかるだろうか？　自分の痛みはわかる。ちょうど子供が小さいときから学んできたように、どういう状態のときにそれが痛いのかわかり、痛い時にどのように振る舞うのか教えられてきたから、そうなのだろうか。そして実際に他者に的確に表現することもできるようだ。 ところが他者の痛みとなると、話はややこしくなる。他者が痛みに苦しむ時、われわれはたぶん「この人は痛いのだろう」と自分じしんの経験に照らして推測する。しかし「この人は痛いのだろう」という推測によって、他者の痛みがわかったということになるのだろうか。自分は同じ痛みを感じないため——もし感じたらそれは他者の痛みではなく自己の痛みにほかならない。 私はある孤島にいるんだけど，なにかの痛みがはしる．そこでその痛みを「s」と呼ぶことにする．さて，私には知られていないけれど実はその痛みが狭心症なのだと仮定します．心臓の状態によって起こる痛みです．これには特有の感覚がともなう．そこで，以後，その痛みがはしるたびに必ず日記に「s」を記してその感覚を表すことにする．そうすれば，救助がきたとき、どんな痛みがしたのか医者に言えるからね． 私的言語の想定１　表出なき「痛み」の言語ゲーム(天才児の例)§257 　「仮に人間が痛みを表出しない（うめかない、顔を歪めないなど）としたならば、どうであろうか。その場合には、「歯痛」という言葉の用法を子供に教えることはでき名だろう。」　――それでは、その子供が天才児で、自分でその感覚に対する名前を発明すると、仮定してみよう　――しかしその場合、もちろんその子は、その言葉を使うとき、相手に理解してもらうことはできない。 「私は痛い」という発話は状態の記述ではなく、痛みの「表出」であるからだ。（ちなみに｢痛かった｣は過去の記述であり表出ではない。）我々は他人の感情をその「表出」から知るのであり、また感情は表出を伴うことを言語の前提としている。つまり我々は自己の状態を他人に知らせるために、（赤ん坊がするように）泣いたり、叫んだりする自然的表出が備わっている（またそれが偽りではないということを言語の基礎としている「乳飲み子は微笑を偽装しない」(§249)）。

  
  
  

  Nicolas Danziger, et al. Is pain the price of empathy? The perseption of other's pain in patients with congenital insensitivity to pain. Brain, 2006; 129: 2494-2507.* 先天性無痛症 CIP患者を対象としたfMRI研究 12人ものCIPの患者に、他人が怪我をして痛い思いをするビデオを見せたり、痛みに表情をゆがめる画像を見せた。 CIPの患者達は、健常者に比較して、「痛がっている人」がはっきり見えないと、どの程度の痛みがあるのかはよくわからない。 人が痛がっている様子（表情など）の手がかりを与えると、ほぼ「実感」として他人の「痛み」がわかる。 他人の痛みがわかる正確さは、その人の全般的な共感性と有意に相関していました。 CIPの患者達も、いわゆる体性感覚の「痛み」を感じることはなくても、別の「痛み」や「辛さ」は感じる脳を持っている。

  ミラーニューロン Mirror neuron　参考1 ジャコモ・リゾラッティ（イタリア、パルマ大学の生理学者）がチンパンジーの脳の機能を調べる実験から発見した。サルの前頭葉にＦ５ サルが運動するときに活動するだけでなく、サルがヒトが行う同じ運動を見ているときにも活動しました。 運動前野のF5領域の他、頭頂連合野の７ｂ野の一部であるPF野や側頭連合野の上側頭溝領域前方（STSa）でも記録されています。これらの領域が構成するネットワークが、この特徴ある活動をつくりだしていると考えられています。 霊長類などの動物が自ら行動する時と、その行動と同じ行動を他の同種の個体が行っているのを観察している時の両方で活動電位を発生させる神経細胞である。したがって、他の個体の行動に対して、まるで自身が同じ行動をしているかのように"鏡"のような活動をする。 ヒトにおいては、前運動野と下頭頂葉においてミラーニューロンと一致した脳活動が観測されている。

  
  
  
  
  
  
  

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