塩酸クロニジン clonidine(カタプレス®)
- α2アドレナリン受容体 partial agonist、イミダゾール受容体刺激薬
- 1966年から高血圧治療薬として臨床使用されてきた(Boehringer Ingelheim)。
- 中枢性の降圧薬:延髄の血管運動中枢のα2受容体を刺激してノルアドレナリンの遊離を抑制して交感神経興奮伝達を抑制する。
- 経口で降圧剤として使用されている。循環系以外にも作用し、中枢神経系に働いて鎮静・鎮痛・抗不安作用を発揮する。
- そのためクロニジンは交感神経緊張を和らげ、循環系を安定させ心筋酸素需給
バランスを改善する目的で、心臓外科手術の麻酔に前投薬として、または術中投与されている。
- 前投薬として投与すると、鎮痛・鎮静・抗不安作用も得られ、術中の麻酔薬の必要量が減少する。硬膜外腔に投与しても循環系の安定化作用・鎮痛作用が認められる。
1987年 | Flacke JWらは冠動脈再建術の手術に際してクロニジンの前投薬と術中投与を行った。これにより、術中術後の循環動態が安定するとともに術中のイソフルランの使用量が少なくてすみ、術後管理も容易であったと報告した。[PubMed] |
- 鎮痛効果があるという報告と、鎮静効果の二次的効果であるという報告とがある。
- 鎮痛補助薬:ニューロパシックペインおよびがん性疼痛に有効
- 術後痛に対しては、クロニジンの静脈内投与は、モルヒネの静脈内投与と同様の鎮痛効果がみられるが、血圧低下も生じる。
- クロニジンの硬膜外投与も、モルヒネの硬膜外投与と同様の鎮痛効果が得られるが、やはり副作用として血圧低下が伴われる。
- クロニジンの投与を中止すると、反動で高血圧になる。
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塩酸デキサメデトミジン(塩酸デクスメデトミジン) dexmedetomidine:DEX(プレセデックス®)1- α2Aアドレナリン完全アゴニスト full agonist、イミダゾール受容体刺激薬
- 強力かつ選択性の高い中枢性α2アドレナリン受容体作動薬
- 集中治療における新規の鎮静薬として有用性が期待され、開発されたα2受容体作動薬
- クロニジンよりもα2アゴニストとしての特異性が高い。
- 神経保護作用:虚血後の脳内へのカテコールアミン遊離抑制作用
- デキサメデトミジン(右旋体(D体))は、すでに鎮静作用が確認されていたメデトミジン(左旋体(L体))のエナンチオマー
- クロニジンと同じく前投薬及び手術中の基礎麻酔薬として試みられたが、1回静注では循環系への影響が強く、徐脈・低血圧の発生が多かったために臨床応用は断念された。しかし、1990年代後半になって術後の鎮静薬としての応用が検討され、持続静脈内注入することにより副作用の徐脈・低血圧を克服し有効性・安全性が確認された。
1986年 | フィンランド(Orion Corporation, Orion Pharma, Turku, Finland) で合成された。 |
1991年 | Hoffmanらがデキサメデトミジンの不完全脳虚血に対する神経保護効果を報告した。 |
1993年 | Maierらがウサギ局所脳虚血モデルにおける保護効果を報告した |
1997年 | Kuhmonenらが一過性全脳虚血に対する神経保護効果を報告した。 |
1999年 | 12月 米国食品医薬品局FDAが認可した。 |
2004年 | アボット ジャパン株式会社は、輸入承認を2004年1月29日に取得し、同年、4月23日に薬価収載され、5月20日に発売した。 |
- 鎮静作用:青斑核ニューロンのα2A受容体に、オートレセプターとして働き、負のフィードバックをかける。ノルアドレナリンの放出が抑制されて、大脳皮質などの上位中枢の興奮・覚醒レベル上昇を抑制することにより鎮静作用を発現する。
- 静脈内にデキサメデトミジンをボーラス投与すると、一過性に血圧は上昇し、続いて血圧の低下と心拍数低下がみられる。
- 最初の血圧上昇は、末梢血管平滑筋のα2A受容体に対する作用による血管収縮
- 次の血圧低下は、神経性循環調節中枢である延髄網様体の腹外側部 or 弧束核の血管運動中枢のα2A受容体を介する血管拡張作用である。
- 鎮痛作用:脊髄侵害受容ニューロンのα2A受容体に作用
- 静脈内投与でも硬膜外投与でも、呼吸抑制を示すことなく鎮痛が得られるが、クロニジンよりも、除脈、血圧低下、鎮静などの副作用が強い。
- 日本ではまだ保険適応ではないが、がん性疼痛に対して、デキサメデトミジンの硬膜外投与と髄腔内投与は、モルヒネに抵抗性の疼痛や、モルヒネに対する耐性が発現した患者に有用である。
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メデトミジン medetomidine(ドミトール®)
- イミダゾール系α2作動薬
- フィンランドのオリオン社が開発した。
- デキサメデトミジンの光学異性体。
- α2受容体を活性化することにより鎮静作用、鎮痛作用、筋弛緩作用を示す。
- 副作用として心臓の刺激伝導系の遮断による徐脈、一過性の血圧上昇に続発する心拍出量と血圧の低下を引き起こす。
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塩酸チザニジン tizanidine(テルネリン®)
- サブタイプ特異性のない中枢性α2アドレナリン受容体作動薬、イミダゾール受容体刺激薬
- Sandoz(スイス、現Novartisファーマ社)が開発した筋緊張緩和薬、中枢性鎮痛薬
- 緊張性頭痛の治療薬
- 筋緊張緩和作用:脊髄γ-運動ニューロンおよび上位中枢を抑制して、固縮緩解作用、脊髄反射抑制作用等の筋緊張緩和作用を有する。その結果痛みの悪循環が改善される。
- 鎮痛作用:脊髄後角ニューロンの侵害刺激に対する反応を抑制する。
- 神経因性疼痛に対して鎮痛効果
- 医薬品医療機器情報(Clinical Pharmacology Therapeutics 2004/4)
チザニジンとフルボキサミン(SSRI)の併用で高度に血圧を低下させる。
チザニジン:主にチトクロームP450のCYP1A2で代謝される。
フルボキサミン:CYP1A2を強く阻害する。 チザニジンの代謝が阻害(=チザニジンの血中濃度が上昇)されて、著しい血圧低下、傾眠、めまい及び精神運動能力の低下させる可能性がある。
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メチルドーパ methyldopa(α-メチルドーパ:アルドメット®)
- α2アドレナリン受容体作用薬、イミダゾール受容体刺激薬
- 中枢性の降圧薬(中等度高血圧に適用)、交感神経抑制薬
- 胎児に移行しないので、妊婦の高血圧の治療薬として使われる。
- メチルドーパは血液脳関門を通過し、中枢のα2受容体に作用して、血管を拡張させて血圧を下げる。
- 脳内でα-メチルノルアドレナリンに代謝され、これが中枢神経系でα2受容体を刺激して交感神経緊張を低下させることで降圧に働く。
- α-メチルドーパは生体内でα-メチルドーパミン→α-メチルノルアドレナリンと変換され、α2アゴニストとなる。これがノルアドレナリンと置換して偽伝達物質false transmitter として神経終末内の顆粒に貯蔵される。(←→ L-DOPA→ドーパミン→ノルアドレナリン)
- 下位脳幹部のα2受容体に結合し、胸髄側角内交感神経節前神経の興奮を抑制する。
- ノルアドレナリンよりもα1受容体での作用が弱いα-メチルノルアドレナリンがα1受と結合する。
- シナプス前α2に結合してノルアドレナリン遊離を抑制する。
- メチルドーパはドーパミン産生を低下させることによりパーキンソニズムを引き起こす。(←→レセルピンは、シナプス終末のドーパミンを枯渇させる。)
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リルメニジン rilmenidine
- α2アドレナリン受容体作用薬、イミダゾール受容体刺激薬
- 国内未承認の中枢性の降圧薬(中等度高血圧に適用)、交感神経抑制薬
- 降圧効果のほかにインスリン感受性を改善する効果がある。
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キシラジン xylazine
- α2受容体作動薬:中枢神経系のα2アドレナリン受容体を介して作用することにより、鎮静、鎮痛、筋弛緩を引き起こすため、麻酔前投与薬として使用される。
- 動物用麻酔薬:牛、馬では鎮静薬や鎮痛薬としても用いられる。
- 犬や猫ではケタミンと併用されることが多い。
- 副作用としてほとんどの動物において徐脈、一過性の血圧上昇に続く持続的な血圧低下、ウシでは第一胃運動抑制が認められる。
- キシラジンの薬理作用は4-アミノピリジン、ヨヒンビン、アチパメゾールにより拮抗される。
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グアンファシン guanfacine (塩酸グアンファシン:エスタリック®)
- α2アドレナリン受容体作用薬
- 交感神経中枢抑制剤/作用持続型血圧降下剤
- 妊婦禁忌薬
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