阿膠 あきょう Donkey Glue
- ロバ(ウマ科)の毛を去った皮、骨、腱又は靱帯を水で加熱抽出し、脂肪を去り、濃縮乾燥したもの
- 2500年ほど前、日本の縄文時代から東洋医学の世界で服用されてきた生薬
- 主な成分:コラーゲン、タンパク質、アミノ酸など
- 滋陰薬、補血薬
- 薬効:強壮作用、止血作用、滋陰作用、補血作用、滋養・鎮静作用 滋陰潤肺作用
- 月経過多・肺虚による喀血。止血薬として、血管壁弛緩と血液凝固減退のために起る血液の浸透性亢進による出血に応用する。また、包摂薬として化膿、疼痛、利尿減少または頻数にも用いる。
→猪苓湯(清熱剤)/温経湯(温裏剤)
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益宝 イーパオ
- 食用蟻製剤 「イーパオ」は食用蟻に加え、ハトムギ、マメ科植物の甘葛藤(シナノクズの根)を配合したもの
- 蟻は紀元前から中国で活用されてきた食品素材である。中国では、小さな蟻がからだよりはるかに大きな物を運んでしまう力強さが注目されてきた。
- 蟻は免疫を高め、経絡を通し、痛みやしびれを楽にする。
- 血を巡らせ、湿をとり、経絡の通りをよくする。
- 辛い肩こりに、他の漢方薬と組み合わせてよく用いられる。
→潟火補腎丸
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威霊仙 いれいせん clematis root
- サキシマボタンヅル(キンポウゲ科)の根及び根茎を乾燥させたもの
- 成分:アネモニン、オレイン酸、ヘデラゲニンなど
- 薬効:抗菌、血糖下降、血圧下降作用
→疎経活血湯(利水剤)、二朮湯(利水剤)
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淫羊藿 いんようかく
- メギ科のイカリソウの地上部
- 『本草綱目』に「西川(現在の中国の四川省)北部に淫した羊あり。この(インヨウカクの花の蕾)を食べたために、一日百遍合す」と記されていたのが由来
- 淫羊と呼ばれた1日に100回交合する動物がその「藿」を食べていたことから淫羊藿と名づけられたと陶弘景は述べている。
- 花の形が船の四爪錨(よつめいかり;4本のツメを持つイカリ)に似ていることに由来している。
- 成分:フラボノール配糖体(イカリイン、エピメジンなど)、アルカロイドのマグノフロリンなど
- 補陽薬
- 性:温、味:辛・甘、帰経:肝・腎
- 強壮、強精などの作用
- 一般用漢方製剤には配合されていないが、主に滋養強壮のドリンク剤や薬用酒に配合されている。
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茴香 ういきょう FOENICULI FRUCTUS
- ウイキョウ Foeniculum vulgare Miller(Umbelliferae)の果実
- 地中海やアジア西方の原産で、フェンネルというスパイスとして古来より肉や魚料理のくさみ消しとして使われてきた。インドではカレーのスパイスとして、さらに中華料理でもお料理に加える香りづけの調味料として重宝されている。
- 主要成分:モノテルペン(limonene, γ-terpinene)、フェニルプロパノイド(anethole, methyl chavicol)、安息香酸誘導体(p-anisaldehyde)
- 性:温、味:辛、帰経:肝・腎・脾・胃
- 香りの刺激が胃や喉などの滞っているものを動かして散らす働きがあるとされている。そのため芳香性健胃薬や、駆風薬(胃腸などのガスを排出する)、去痰薬などに使われる。また冷えた胃腸を温める働きがあるため、冷えによる腹痛にもよく使われる。
→安中散(温裏剤)
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鬱金 うこん Curcuma longa L. =秋ウコン ←→ウコン
- Curcuma longa L. ショウガ科(Zingiberaceae) 根茎を乾燥して砕き、繊維を除いたものには香味もあり、カレー粉や沢庵漬の色付けに利用される。若い根茎や葉鞘は矯味料として利用される。
- ウコンはインド伝統医学のアーユルヴェーダで、黄疸の特効薬とされている。
- 生薬「ウコン」は本種の根茎で、クルクミンなどの成分を含み、利胆、肝保護などの作用がある。
- 日本のウコンと異なる。日本のウコンは姜黄である。
- 成分:ジアリルヘプタノイド(curcumin)。セスキテルペン(α-, β-turmerone, (+)-ar-turmerone)
- 性:涼、味:辛・苦、帰経:心・肝・胆
- 一般的には芳香性健胃薬、利胆薬として知られる。漢方では体の気を巡らせる、瘀血を解消するなどを目的として、胸腹部の痛み、月経痛などに用いられる。
- 気を巡らせる「行気作用」や、血の流れを良くする「活血作用」に優れた生薬
- 痛みを和らげる効能があるとされ、生理痛や、むねやおなかが張って痛むとき、打撲などに、漢方処方の中の一生薬として用いられてきた。
姜黄 きょうおう =春ウコン C.aromatica Salisb.
- ウコンはショウガ科で亜熱帯地域にかけて広く自生していて、日本では「秋・春・紫」の3種類のウコンがある。秋ウコンは生薬の鬱金で、クルクミンを豊富に含む。春ウコンが姜黄で、紫ウコンは莪朮
- 日本の「ウコン」は中国では「姜黄」、塊根を「鬱金」といい、生薬の認識に違いがある。
- 花期は春。葉の裏面は軟毛がありビロードの手触り。根茎の切断面は鮮黄色
- 春ウコンはミネラルや食物繊維が豊富
- 春ウコンの精油成分は秋ウコンに比べると約6倍、ミネラルも同様に約6倍と言われている。
莪朮 がじゅつ C.zedoaria Rosc
- 別名紫ウコン
- 花期は春~夏。葉表面の主脈に沿って赤紫色の筋がある。根茎の切断面は灰白色~淡褐色
- 紫ウコンは冷え対策やデトック
- 日局収載品
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烏薬 うやく Lindera strychnifolia Lindera
- クスノキ科のテンダイウヤクの根を乾燥したもの
- 名前の由来:中国の天台山に産するものが効き目がよいというので「天台烏薬」名が付けられ、現在中国では単に「烏薬」と呼ばれている。
- 漢方では、根を烏薬又は天台烏薬と称し、芳香性健胃薬、強壮薬として使用する。
- 性:温、味:辛、帰経:脾・肺・腎・膀胱
- 温中散寒、理気、止痛などの効能があり、消化不良、腹痛、月経痛などに用いられる。
→香烏散、天台烏薬散、烏薬順気散、芎帰調血飲、芎帰調血飲第一加減
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延胡索 えんごさく
- ケマンソウ科エンゴサクの塊茎の外皮を除き、湯通しして乾燥したもの
- 成分:プロトベルベリン系アルカロイドのコリダリン、デヒドロコリダリン、コプチシン、イソキノリン系アルカロイドのブルボカプニン、グラウシンなど
- 活血行気薬@駆瘀血剤
- 性:温、味:辛・苦、帰経:肝・脾
- 薬理作用:活血・理気・止痛
- 鎮痛作用があり、頭痛、胃痛、胸焼け、腹痛などに効く。
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黄耆 おうぎ astragali radix
- マメ科キバナオウギ又はナイモウオウギの根
- 成分:トリテルペノイド(アストラガロシドI、II及びIV)、イソフラボノイド(フォルモノネチン)、アミノ酸(γ-アミノ酪酸)など
- 人参とともに元気をつける代表的な補気薬の一つである。人参は「不足した気を補充する」のに対し、黄耆は「補充した気を巡らす」という効果である。
- 性:微温、味:甘、帰経:脾・肺
- 薬理作用:補気升陽・固表止汗・利水消腫・托毒排膿
- 利尿・強壮・血圧降下・末梢血管拡張・抗アレルギー作用などがあり、疲労倦怠・胃腸虚弱・内臓下垂・皮膚化膿症などに用いられる。
- 黄耆は肌表の水をさばいて、汗の異常や浮腫をとる。
- 薬効:主として体表の水のうっ滞(発汗異常や浮腫)を治す。したがって、黄汗、盗汗、浮腫を治す。
→当帰飲子(補血剤)、補中益気湯(補気剤)、十全大補湯(気血双補剤)、人参養栄湯(気血双補剤)、防已黄耆湯(利水剤)
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黄芩 おうごん Scutellaria root
- シソ科コガネバナの根の周皮を除き、乾燥したもの
- 一般にコガネバナ Scutellaria baicalensis Georgの和名が用いられ、漢字で「黄金花」とするところから、黄金のような黄色の花が咲くように思われやすいが、実際は紫紅色の花である。享保年間に朝鮮半島より渡来,その後,奈良県や群馬県に広がった。コガネバナ(黄金花)の名は根が黄色であることに基づいたものである。
- 主成分としてフラボン誘導体のバイカリンが約10%含まれているほか、オウゴニン、フラバノンのカルタミジン、ステロイドのカンペステロールなど、多数の類縁物質が含まれている。
- 性:寒、味:苦、帰経:心・肺・胆・大腸・小腸
- 薬理作用:清熱燥湿・瀉火解毒・安胎
- 消炎、解熱薬として、炎症、充血、発熱を伴う疾病で、心下痞、胸脇苦満、煩熱、下痢など
- 清熱薬:黄芩は上焦の熱の熱をさまし、炎症をとる作用がある。
- 冷えと熱が関係している消化器症状 ←→脾胃の機能低下による症状(3)
→温清飲(清熱剤)、黄連解毒湯(清熱剤)、柴苓湯(和解剤)、柴胡桂枝乾姜湯(和解剤)、半夏瀉心湯(和解剤)、柴胡加竜骨牡蛎湯(安神剤)、二朮湯(利水剤)
柴胡剤:「柴胡」と「黄芩」を中心とした処方 |
芩連剤(ごんれんざい):「黄連」と「黄芩」を中心とした処方
・裏熱を冷ます作用がある。
→黄連解毒湯(清熱剤)、半夏瀉心湯(和解剤) |
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黄柏 おうばく Phellodendron bark
- 黄柏は1578年、李時珍の著した偉大な本草書、本草綱則に初めて登場した。
- 黄柏は黄色いモミという意味で、ミカン科の高木、キハダ(フェロデンドロン アムレンス)の樹皮を乾燥させたもの
- 成分:アルカロイド(ベルベリン、パルマチン)、トリテルペノイド(オバクノン)など
- 性:寒、味:苦、帰経:腎・膀胱・大腸
- 薬理作用:清熱燥湿・瀉火解毒・清虚熱
- 苦味健胃生薬:非常に苦く、古くから胃腸薬として使用
- 清熱剤:黄柏は下焦の熱をさまし、炎症をとる作用がある。
- 寒/涼 全身の「実熱」による諸症状を改善する。
→温清飲(清熱剤)、黄連解毒湯(清熱剤)
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桜皮 おうひ Cherry Bark
- バラ科のヤマザクラなど、サクラ類の樹皮を乾燥したもの
- 日本由来の生薬であり、中国ではあまり使用されることがなく、江戸時代に「毒消しの薬」として、解毒、鎮咳去痰剤などさまざまな用途に利用されていた。
- 桜皮は桜筎と呼ばれていて、青洲が開発した十味敗毒湯(「瘍科方筌」)に用いられていたのを、浅田宗伯は勿誤薬室方函の中で、十味敗毒湯の桜筎を樸樕に入れ替えた。
- 成分:桜皮中の成分には、多くのフラボノイド類(ポリフェノール)を含有していることがわかっている。このうちサクラネチン Sakuranetinには、糖尿病患者のインスリン分泌を改善する働きをもつタンパク質のアディポネクチンの分泌を増加させる働きがあり、大豆イソフラボンの一種として知られるゲニステイン Genisteinを含有し、女性ホルモンの一種のエストロゲン様作用を持つ。
→治打撲一方(駆瘀血剤)、十味敗毒湯(清熱剤)
桜筎 おうじゅ
- バラ科ヤマザクラPrunus jamasakura Siebold ex Koidz.などの周皮をのぞいた樹皮
- 現在では「桜皮」の名で用いられている。
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黄連 おうれん Coptis Rhizome
- キンポウゲ科のセリバオウレン
- 日本古来の和薬
- 主成分のベルベリンのほか、微量のパルマチン、コプチシン、オーレニンなどの苦味アルカロイドが3~7%含まれている。
- 性:寒、味:苦、帰経:心・肝・胆・胃・大腸
- 薬理作用 清熱燥湿・瀉火解毒
- 苦味健胃生薬
- 服用後、寒涼感を覚え、熱を冷ます作用をもつ寒薬
- 黄柏は下焦の熱をさまし、炎症をとる。
- 薬効:主として胸苦しく、煩悶し、動悸がするものを治す。みぞおちの痞え、嘔吐や下痢、腹部の疼痛も治す。
- 冷えと熱が関係している消化器症状 ←→脾胃の機能低下による症状(3)
→温清飲(清熱剤)、黄連解毒湯(清熱剤)、半夏瀉心湯(和解剤)
ベルベリン berberine
- キンポウゲ科オウレン(Coptis japonica)やミカン科キハダ(Phellodendron amurense)ほか、メギ科、ツヅラフジ科などに広く分布するベンジルイソキノリンアルカロイドの一種
- 黄色ブドウ球菌に対して強力な抗菌活性があり、細菌性下痢や腸内異常発酵時に止瀉薬として用いられる。強い苦味がある。
- 薬理作用:血圧降下、心臓抑制、カエル腹直筋のアセチルコリンによる収縮の増強、子宮収縮作用があり、更にラットで胃液分泌抑制、ストレス性胃出血の抑制、胃粘膜抵抗の増大が報告されている。
- ベルベリンの抗炎症作用はNF-κB遺伝子の不活性化等に基づくとされる。
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遠志 おんじ
- イトヒメハギ Polygala tenuifolia Willdenow(Polygalaceae)の根又は根皮
- 主要成分:サポニン(オンジサポニンB、テヌイフォリン)、キサントン類(ポリガラキサントン)、フェニルプロパノイド配糖体(3,6’-ジ-O-シナポイルスクロース)など
- 性:温、味:苦・辛、帰経:肝・心・腎
- 薬理作用 安神・祛痰・消癰
- 「中年期以降の物忘れの改善」を効能・効果とする第3類医薬品
- 薬効:物忘れ・肉体疲労・貧血・不眠・去痰
→人参養栄湯(気血双補剤)、加味帰脾湯(気血双補剤)
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何首烏 かしゅう polygoni multiflori radix
- タデ科のツルドクダミの塊根を乾燥したもの
- 何首烏の原産は中国で、1720年(享保5年)に長崎に渡来。八代将軍 徳川吉宗が国内での栽培を命じたが、日本の風土が非常に適していたため、今では日本の丘陵地や平地の道ばた、都会の石垣など、いたるところに野生化している。
- 成分:アントラキノン誘導体、スチルベン配糖体、フラボノイド、タンニン、レシチン、エモジンなど
- 性:温、味:苦・甘・渋、帰経:肝・腎
- 薬理作用:滋陰・強壮・益精補血
- 薬理作用として血中コレステロール低下、血糖降下や感染症予防などが知られていることから、現代人の生活習慣病に最適な生薬
- 薬効:強心作用、血糖下降作用、抗菌作用、抗高脂血症作用、育毛作用、腸蠕動促進作用、肝障害抑制作用
- 漢方処方では至宝三鞭丸のほか、当帰飲子(補血剤)など
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葛根 かっこん kakkon(Pueraria Root)
- マメ科クズの周皮を除いた根葛の根
- 和名の「くず」は昔、大和の国栖(くず)地方の人が、この植物の根から精製した澱粉を売り歩いていたことから名付けられたと言われ、その後漢名の葛が当てられるようになったものと考えられる。
- 万葉集に詠まれている秋の七草(萩・尾花・葛・撫子・女郎花・藤袴・桔梗)の1つ 春の七草が食用の野草や野菜であるのに対し、秋の七草は薬用植物である。
- 主な成分:イソフラボノイド類:ダイゼイン、ダイジン、プエラリン、ゲニステイン、ホルモノネナンなど サポニン類:ソヤサポゲノール配糖体、クズサポゲノール配糖体 その他:でんぷん、プエロシドA、B、D、マンニトール など
- 性:平、味:甘・辛、帰経:脾・胃
- 実証用薬
- 薬理作用:解肌退熱・透疹・生津-止瀉・滋潤筋脈
- 効能:発汗作用、止瀉作用
- 漢方で葛は、頭痛や肩こりなどの感冒症状、麻疹、筋肉の緊張、口渇、下痢などに用いられる。
- 感冒の初期に首筋から背中にかけての違和感がおこる。漢方では「項背の強ばり」と表現される。発熱や頭痛に対する反応で筋肉が緊張し血液の流れが少なくなるので痛みやこりなどを感じる。漢方医療ではこれを「縦のこり」と表現し、いわゆる肩こりを「横のこり」と言って区別している。このような感冒の初期の「縦のこり」には、葛根湯(解表剤)が用いられる。筋肉の緊張をゆるめる芍薬と甘草を含む処方である。
- 葛根は甘潤・辛散で偏涼であり、軽揚昇散の性質をもち、脾胃二経に入って主に陽明に作用し、陽明は肌肉を主るので解肌退熱・透発斑疹に働き、さらに胃中の清気を鼓舞上行して津液を上承させ、筋脈を濡潤して量急を解除し、生津止渇・止瀉の効能をもたらす。
- 葛根には後頸部から後背部の筋肉を弛緩させる作用があり、温めると改善する自発痛があるPHNを緩和する。
→葛根湯(解表剤)、葛根加朮附湯(利水剤)、葛根湯加川芎辛夷、升麻葛根湯
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滑石 かっせき
- 天然の粘土鉱物、軟滑石。主成分は含水ケイ酸アルミニウム
- 滑石は『神農本草経』上品に、「味甘寒。身熱,洩_,女子の乳癰,小便の_閉利を主治し、胃中の積聚、寒熱を除き、精気を益す。久服すると身を軽くし飢えに耐え年をのばす。」と収載されている。
- 性:寒、味:甘・酸、帰経:胃・膀胱・肺
- 効能:利水・通淋・清熱
- 体内の水分代謝を調整し利尿する働きや消炎作用があり、膀胱炎や膀胱結石などに効果的である。また、日射病や熱射病など、体内の水分を整える。
- 排尿障害や浮腫、夏期の口渇、下痢、皮膚潰瘍などに用いる。とくに膀胱の熱を瀉して排尿を促進するので膀胱炎に適し、また暑熱を解して利湿するので熱射病などによる口渇や煩躁、下痢などにも応用される。さらに外用薬として湿疹や皮膚潰瘍に用いる。
→猪苓湯(清熱剤)
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栝楼根 かろこん
- ウリ科科のトウカラスウリやキカラスウリなどの根を乾燥したもの
- 主要成分:ステロール(α-スピナステロール)、でんぷん、蛋白質、アミノ酸など
- 性:寒、味:甘・酸、帰経:肺・胃
- 薬理作用:清熱潤燥・排膿消腫・生津止渇
- 薬能:潤肺、化痰、通便、排膿 主として口渇を治す。
- 薬効:咳嗽や痰、便秘、腫れ物、授乳不足
→柴胡桂枝乾姜湯(和解剤)、柴胡清肝湯(さいこせいかんとう)
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乾姜 かんきょう processed ginger
- ショウガ科ショウガの根茎。生のショウガを「生姜」、蒸して乾燥したものを「乾姜」という。
- 性:大熱、味:大辛、帰経:心・肺・脾・胃・腎
- 薬理作用 温中・回腸・温肺化痰、鎮吐作用、鎮静作用、鎮痙作用、抗潰瘍作用、腸管内輸送促進作用、利胆作用、血圧下降作用、強心作用、抗炎症作用
- 服用後、温熱感を覚え、温める作用がある熱薬
- 熱薬 、温める(熱)ための処方
- 乾姜も、そのまま乾燥させた生姜とも、身体を温める作用があるが、生姜は体表面を温め、発汗作用を示すのに対し、乾姜は身体の中(裏)から温め、元気をつける(補気)作用が強い。
- 乾姜含有成分である6-shogaol:強い止瀉作用とともに、5-HT誘発体温低下に対する拮抗作用があり、強心作用とともに、熱薬としての作用機序と考えられる。
- 乾姜は脾胃を温める。お腹を温めて、冷えをとる。
- 芳香性の精油を含み、血液の循環促進、健胃、解熱、鎮痛などの作用がある。
- 急性胃炎、消化不良に効く黄連湯(おうれんとう)、更年期障害、貧血に効く柴胡桂枝乾姜湯、気管支炎、気管支喘息に効く苓甘姜味辛夏仁湯(りょうかんきょうみしんげにんとう)などに含まれる。
→大建中湯(温裏剤)、人参湯(温裏剤)、小青竜湯(解表剤)、柴胡桂枝乾姜湯(和解剤)、半夏瀉心湯(和解剤)
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甘草 かんぞう glycyrrhiza
- マメ科の多年草。中国大陸原産で,まれに日本でも栽培される。
- 根を干したものを「甘草」と呼び、咳止め、鎮痛剤などに使い、また甘味料にも用いられる。
- 成分であるグリチルリチン酸およびその加水分解物には、ショ糖の150倍の甘さがある。
- 補気薬、平性の生薬
- 性:平、味:甘、帰経:十二
- 漢方処方で最も多く配合される薬物である。鎮静、滋養強壮、鎮咳、去痰など多くの作用があり、四肢や腹部の筋肉の痛み、胃腸機能や体力の低下、咽喉部の炎症や痰、咳など様々な症状に用いる。「百薬の毒を解す」と言われ、他の生薬の刺激性を緩和し、調和する。
- 薬理作用:補脾益気・清熱解毒・潤肺止咳
- 緩和、抗炎症、鎮痛作用
- 緊張を緩和させる作用がある。
生甘草 しょうかんぞう
- 甘草を乾燥したもの
- 生甘草は清熱解毒(抗炎症)作用が強い。
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炙甘草 しゃかんぞう Licorice
- 甘草を炙ったもの
- 炙甘草は補気作用が強い。
- 甘草よりも少し香ばしい。
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- 1946年に、甘草に副腎皮質ホルモン様作用のあることが明らかになった。
- 甘草は硬質コルチコイド、グルココルチコイドとしての抗炎症作用、抗アレルギー作用を持ち、ステロイド受容体に対して直接作用により受容体の結合数や親和性を増強すると言われている。
- 中枢抑制的に働き、体温降下作用、鎮静作用を示し、鎮痙作用、抗ウイルス作用、抗菌活性鎮咳作用も報告されています。甘草の役割は これらの薬理作用を背景に急迫症状を治すとされている。
- 多くの漢方薬に甘草が含まれ、これは他の生薬の副作用軽減が主目的である。
- 甘草は多くの漢方薬に含まれているが、他の生薬との組み合わせで、適応疾患が変わる。 ←→複合薬理
- 補気作用、解毒作用、止痛作用、消化器系の保護作用など、多彩な作用を併せ持つ。
- 甘草の副作用:偽アルドステロン症が有名。血圧上昇、むくみ、低カリウム血症による筋力低下・歩行困難などを呈すが、徐々に進行することで発見が遅れるケースもあるので注意が必要
- 甘草に対する感受性、偽アルドステロン症の併発率は、個人差がかなり大きいが、一般的には高齢者ほど、甘草の副作用が出やすいとされている。
- かぜ薬(葛根湯(解表剤))、筋痛(芍薬甘草湯(和解剤))、アレルギー(小青竜湯(解表剤))、高血圧(防風通聖散(表裏双解剤))など
→白虎湯(清熱剤)/白虎加人参湯(清熱剤)、四逆散(和解剤)、芍薬甘草湯(和解剤)、加味逍遙散(和解剤)、半夏瀉心湯(和解剤)、葛根湯(解表剤)、柴胡桂枝乾姜湯(和解剤)、柴苓湯(和解剤)、麻黄湯(解表剤)、桂枝湯(解表剤)、小青竜湯(解表剤)、当帰四逆加呉茱萸生姜湯(温裏剤)、小建中湯(温裏剤)、人参湯(温裏剤)、桂枝加芍薬湯(温裏剤)、桂枝加竜骨牡蛎湯(安神剤)、五積散(表裏双解剤)、香蘇散(理気剤)、抑肝散(理気剤)、補中益気湯(補気剤)、四君子湯(補気剤)/六君子湯(補気剤)/十全大補湯(気血双補剤)、人参養栄湯(気血双補剤)、当帰飲子(補血剤)、当帰飲子(補血剤)、桃核承気湯(駆瘀血剤)、桂枝茯苓丸(駆瘀血剤)、葛根加朮附湯(利水剤)、防已黄耆湯(利水剤)、苓桂朮甘湯(利水剤)、越婢加朮湯(利水剤)、薏苡仁湯(利水剤)、桂枝加朮附湯(利水剤)、桂枝加苓朮附湯(利水剤)、疎経活血湯(利水剤)、二朮湯(利水剤)、麦門冬湯(滋陰剤)
グリチルリチン酸 glycyrrhizin, glycyrrhizic acid
- 甘草に含まれるオレアナン系トリテルペンの一種。ショ糖の140倍といわれる甘味があり、天然甘味料として用いられる。漢方薬だけでなく、目薬・化粧品・シャンプー・入浴剤・その他 医薬部外品にも入っていることがある。
- グルクロン酸が2つ結合した配糖体であり、特有の甘味がある。グルクロン酸が1つだけの場合はさらに6倍の甘味がある。
- グリチルリチン酸の作用には、抗炎症作用(抗アレルギー作用、炎症を伝える伝達物質の阻害作用などによる)、免疫調節作用(免疫細胞の調節作用による)、肝細胞への作用(肝細胞の障害を抑える作用や肝細胞増殖促進作用があるとされる)、ウイルス増殖抑制作用などがあるとされる。
- グリチルリチン酸にはステロイドホルモン様作用があるとされ、また体内のステロイドホルモン代謝を撹乱、抑制するため、副作用として浮腫や低カリウム血症が出現することがある。
- グリチルリチン製剤はグリチルリチン酸を含む製剤であり、皮膚炎、口内炎など多くの病態に対して使われている。また、肝臓への作用からグリチルリチン酸は肝庇護薬のひとつにもなっていて、慢性肝炎などの肝疾患の治療に使われることもある。
- グリチルリチン製剤の特徴的な副作用として(甘草と同様に)偽アルドステロン症(高血圧、低カリウム血症などがおこる)があり注意が必要となる。
- グリチルリチンはコルチゾールをコルチゾンに変化させる酵素、11-β-ヒドロキシステロイド脱水素酵素 (11-β-hydroxysteroid dehydrogenase) の効果を抑制し、その結果コルチゾールが集合管で増加する。コルチゾールは元来、糖質コルチコイドとしての特性を持ち、タンパク質の分解を促進して血中グルコース濃度を上昇させるので、高血圧の原因となる。
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桔梗 ききょう platycordi radix
- 秋の七草のキキョウの根を薬用として用いる。生薬には皮付き品と皮去り品がある。
- 成分:サポニン(プラチコジンD)、多糖類(イヌリン)など
- 性:平、味:苦・辛、帰経:肺
- 薬理作用:清肺提気・祛痰排膿
- 薬効:祛痰作用、排膿作用 主として膿の混じた喀痰や化膿性の腫れものを治す。また、咽喉の痛みも治す。
- 肺・気管支の熱を解く力、排膿の作用、去痰作用がある。
- 肺の宣発機能を高め(開宣肺気)、痰を切って咳を止める(止咳祛痰)。排膿作用もある。
→川芎茶調散(解表剤)、清上防風湯(解表剤)、十味敗毒湯(清熱剤)、五積散(表裏双解剤)、防風通聖散(表裏双解剤)
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枳殻 きこく
- ミカン科のダイダイまたはナツミカンなどの成熟直前の果実を乾燥したもの
- 枳殻よりも若い未熟果実を乾燥したものを枳実と呼んで、枳殻と区別することもある。
- 理気、健胃、通便、化痰などの効能があり、胸腹部のつかえ、腹痛、膨満感、便秘などに用いられる。
枳実 きじつ Immature OrangeB, Kijitsu, kijitsu
- ミカン科ダイダイの未熟な果実を乾燥したもの。ミカン、ナツミカンといった類似植物も用いる
- 理気薬。
- 性:微寒、味:苦・酸、帰経:脾・胃
- 薬理作用 行気消積
- 特異なにおいがあり、味は苦い。
- 自律神経を整える、健胃、祛痰、心機能促進などの作用がある。
- 不眠症、自律神経失調症に効く温胆湯、胃炎、更年期障害に効く五積散(表裏双解剤)、便秘、便秘にともなう痔に効く麻子仁丸などに含まれる。
→五積散(表裏双解剤)、四逆散(和解剤)、茯苓飲(利水剤)、通導散(駆瘀血剤)、竹茹温胆湯(和解剤)、清上防風湯(解表剤)、小承気湯、大承気湯
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羌活 きょうかつ Notopterygium
- セリ科のNotopterygium incisum Ting ex H. T. Chang又はNotopterygium forbesii Boissieu の根茎及び根を乾燥させたもの
- 成分:ノトプテロール、ベルガプテン、クニジリン、ノトプトール、ベルガプトール、ノダケネナン、ノダケニンなど
- 漢方処方用薬:発汗、鎮痛作用があり、筋肉痛、神経痛、関節痛などの痛みや皮膚病を改善する薬方に配合される。
→疎経活血湯(利水剤)
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杏仁 きょうにん apricot kernel
- ホンアンズ又はアンズ(バラ科 Prunus armeniaca)の種子 果実が熟してから核を割って種子を取り出し、乾燥させたもの
- 医薬として使われるアミグダリン含量の多い杏仁を苦杏仁(くきょうにん)と呼ぶのに対して、食品には杏仁(あんにん)、甜杏仁(てんきょうにん)または甘杏仁(かんきょうにん)と呼ばれるアミグダリン含量の少ないものを用いられる。
- 成分:青酸配糖体(アミグダリン)、ステロイド、酵素(エムルシン)など
- 性:温・小毒、味:苦、帰経:肺・大腸
- 下げる(降)ための処方:鎮咳薬@降性薬、排出する(瀉)ための処方:祛痰@瀉性薬
- 薬理作用 潤肺止咳・潤腸通便
- 薬効:胸にたまった水分、痰などを治す。したがって、呼吸困難、咳嗽を治す。
→麻黄湯(解表剤)
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荊芥 けいがい schizonepeta spike
- Schizonepeta tenuifolia Briq. シソ科(Labiatae)の花穂
- 成分:精油((+)-メントン、(+)-リモネン、(-)-プレゴンなど)、モノテルペン配糖体: シゾネペトシドA~Eなど、フラボノイド配糖体:アピゲニン-7-O-β-グルコシド、ルテオリン-1-O-β-グルコシド、ヘスペリジン
- 性:微温、味:辛、帰経:肺・肝
- 実証用薬
- 薬理作用 祛風解表・止血
- 薬効:発熱、解熱、鎮痛、抗炎症、抗菌
→当帰飲子(補血剤)、十味敗毒湯(清熱剤)
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桂皮↓ けいひ cinnamon bark、桂枝↓ けいし cinnamon cortex ←→シンナムアルデヒド
- 一般にシナモンとして知られる。シナニッケイ(肉桂)の樹皮からとれる生薬
- 桂枝と桂皮は、いずれもクスノキ科の常緑高木で、基原植物は同じ
「桂枝」:若い細枝またはその樹皮(直径1cm以下の枝を切断したもの)
「桂皮」:木の幹の皮(を一定の幅で剥ぎ取ったもの)
- 紀元前4000年頃にはミイラの防腐剤として使われた。古代エジプト以来の香辛料
- 古代バビロニアに楔形文字で書かれた粘土版や、古代ギリシアの詩人サッフォーの書いた詩にも、その名が記されている。
- 傷寒論の最初にみられる生薬で、多くの漢方処方中に配合されている。
- 日本には、飛鳥時代に遣唐使によって持ち込まれた。奈良の正倉院の宝物の中には、「桂心」としてケイの樹皮が所蔵されている。以来、多くの漢方薬に欠かせない生薬として重宝されてきた。
- 温薬-温裏薬
- 性:大熱、味:甘・辛、帰経:肝・腎・脾
- 薬理作用:温中補陽・散寒止痛
- 中国では「桂皮」と「桂枝」は別の生薬とされるが、日本漢方では区別しないことも多く、局方品は「桂皮」にまとめられれているが、・・・・
桂皮 けいひ cinnamon bark @桂皮
- クスノキ科常緑高樹のケイ(肉桂)の木の幹の皮を、一定の幅で剥ぎ取ったもの
- 元々は肉桂の枝を指したが、現在では木の樹皮を「桂皮」と称して用いる。
- 桂皮はシナモンとして食品でよく使われるが、漢方薬として使うためには、製油成分をたっぷり含み、噛んで舌をピリッと刺戟する辛さを有するものでなければならない。価格は3~4倍高い。
- 温薬-温裏薬
- 桂皮は甘・辛、大熱、肝・腎・脾経、温中補陽、散寒止痛の性質をもつ。
- 芳香性健胃薬、温薬
- 薬効の幅が広く、免疫力を回復させたり、胃腸の機能を整えたり、血液循環を改善する作用がある。
- 附子や乾姜などと同じ、温裏薬に分類される。
- 桂皮は身体を温め発汗させて経絡の気血の流れを良くするので、身体を温める。
- 桂皮は血分(身体の実体側面である血がつかさどる領域)を温める。
- 桂皮は桂枝よりもはるかに熱の性質が強いと考えられ、体の中心部に作用する。
- 桂枝が使われている方剤であっても、冷えが強い場合、桂枝を桂皮に代えてみるのもいいかもしれない。
- 桂皮と麻黄は関節痛の基本方剤で、桂皮は痛くて縮こまっている状態に対して、気を巡らせる作用がある。
- 八味地黄丸(補陽剤)・十全大補湯(気血双補剤)・人参養栄湯(気血双補剤)など
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桂枝 cinnamon cortex
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- TRPA1(ANKTM1)のアゴニスト
→葛根湯(解表剤)、葛根加朮附湯(利水剤)、加味逍遙散(和解剤)、桂枝湯(解表剤)/桂枝加朮附湯(利水剤)/桂枝加苓朮附湯(利水剤)/桂枝加竜骨牡蛎湯(安神剤)/桂枝加芍薬湯(温裏剤)/桂枝茯苓丸(駆瘀血剤)、八味地黄丸(補陽剤)/牛車腎気丸(補陽剤)、五積散(表裏双解剤)、五苓散(利水剤)、小建中湯(温裏剤)、桃核承気湯(駆瘀血剤)、当帰四逆加呉茱萸生姜湯(温裏剤)、麻黄湯(解表剤)、薏苡仁湯(利水剤)、柴苓湯(和解剤)、小青竜湯(解表剤)、人参養栄湯(気血双補剤)、柴胡桂枝乾姜湯(和解剤)
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膠飴 こうい Koi, xiáo yí
- 小麦、粟などの粉に麦芽を混ぜて糖化させ、それを煮詰めた水飴状のもの。とくに糯(もち)米が適するとされる。
- 粳米を蒸し麦芽で糖化したもの
- 成分:マルトース(麦芽糖)やデキストリンなど
- 性:微温、味:甘、帰経:脾・胃・肺
- 補脾薬
- 滋養強壮、健胃、鎮痛、鎮咳などの作用がある。
- 2000年以上前より、膠飴は小建中湯(温裏剤)、大建中湯(温裏剤)の主要な構成生薬として記された。
- 膠飴には消化管の攣急による疼痛を緩和する力や、虚弱体質の非炎症性の咳嗽に対する止咳作用もある。
→小建中湯(温裏剤)、大建中湯(温裏剤)
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紅花 こうか
- ベニバナの花弁を乾燥させたもの
- 紅花は、紀元前から栽培されている女性のための薬草といわれている。
- 成分:紅色素(カルタミン)、黄色素(サフロールイエロー、サフロミンA、B)、フラボノイド(カルタミジン、ネオカルタミン、カルタモン)、脂肪油(リノール酸(主)、オレイン酸等)、ステロール類
- 破血薬@駆瘀血剤 ←→活血化瘀作用
- 血行を促進し、鬱血を除く漢方薬として用いられている。また、婦人病特有の血行障害による生理痛や、産後の腹痛などに効果があるといわれている。
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香附子 こうぶし Cyperus rotundus
- カヤツリグサ科ハマスゲの根茎を乾燥したもの
- カヤツリグサ属の Cyperus は、ギリシャ語のキュペイロス(キュペイロンとも綴られる)「スゲ」から。和名のカヤツリグサ属のカヤツリグサ(Cyperus microiria)は漢字では「蚊帳吊草」。カヤツリグサの茎を引き裂いて蚊帳を吊ったような形を作る子供の遊びに由来する。
- 生薬名の香附子とは、塊茎の形が生薬の附子に似て、香気があることに由来するとされる。
- 主な成分:精油0.6~1.0%が含有されている。精油の主成分としてセスキテルペノイド系のα-キペロンが含まれるほか、キペロール、キペレン、スゲオノールなども含まれている。
- 理気薬
- 性:平、味:辛・微苦、帰経:肝・三焦
- 薬理作用:疏肝理気・調経-止痛
- 漢方医学書「本草綱目」では、香附子は「気病之総司、女科之主師」といわれ、気滞や婦人科系の疾患に広く用いられる。
- 香附子は「気病の総司、女科の主帥」と言われ、気の流れの滞り(気滞)や婦人科系の疾患に広く用いられる。
主帥 しゅすい
- 軍隊の主将
- 律令制で、軍団の部隊長
- 律令制で、衛府(えふ)の下級職員
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- 疏肝理気し、さらに月経を調えて痛みを和らげる(調経-止痛)。
- 香附子と当帰と組みあわせで月経を調え(調経)、月経痛を治療する。
- 香附子と川芎との組みあわせで気鬱による頭痛を解消する。川芎と香附子は、気を巡らして血の運行を推進するので、「血中の気薬」と呼ばれる。
→香蘇散(理気剤)、二朮湯(利水剤)
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粳米 こうべい nonglutinous rice
- イネ Oryza sativa Linné(Gramineae)の果実
- 生薬名:コウベイ(粳米) 薬用部位:えい果
- 日本では一年草として栽培されているが、本来はインドおよび東南アジア原産の多年草です。日本には縄文時代晩期に渡来したといわれている。草丈は50~100cmで6~7月の開花時には直立しているが、9月以降にえい果と呼ばれる果実が充実してくると垂れた稲穂となる。生薬「コウベイ」は本種のえい果で、でんぷん、デキストリンなどの成分を含み、健胃、滋養強壮などの作用がある。
- 主要成分:でんぷん、ステロール(γ-オリザノール)など
- 性:平、味:甘・苦、帰経:脾・胃
- 補脾薬
- 薬能:体臭の喪失を防ぎ、口渇を止める。恒に食して元気を持続する。
→麦門冬湯(滋陰剤)、白虎湯(清熱剤)/白虎加人参湯(清熱剤)
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厚朴 こうぼく Japanese bigleaf magnolia bark
- モクレン科カラホオノキや凹葉ホオノキ、ホオノキの樹皮や根皮を乾燥したもの
- オイデスモール、ピネン、カンフェンなどの精油、結晶性フェノールのマグノロールやホオノキオールのほか、マグノクラリンやマグノフロリンなどのアルカロイドが含まれている。
- 性:温、味:苦・辛、帰経:脾・胃・肺・大腸
- 理気薬/芳香性健胃薬
- 行気化湿、下気降逆の作用を補助する。
- 厚朴と半夏で、神経緊張が原因となって起こる梅核気現象を治す。
- 薬理作用 燥湿除満・行気・降逆
- 理気剤 ストレスに関連する痛みに処方
- 薬効:鎮痛、鎮痙
→五積散(表裏双解剤)、半夏厚朴湯(理気剤)
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牛膝 ごしつ achyranthes root
- ヒナタイノコズチAchyranthes fauriei Leveille et Vaniot 又はAchyranthes bidentata Blume(Amaranthaceae ヒユ科)の根
- トリテルペノイド、サポニン、ステロイド(イノコステロン、エクダイステロン)、ステロール類が含有される。
- 活血涼血薬@駆瘀血薬
- 性:涼、味:苦・小毒、帰経:心・肝
- 薬理作用:開竅化痰・清熱解毒・定
- 通経、利尿、筋骨を強める作用があり、婦人科疾患、関節痛、神経痛、足腰の筋肉の萎弱や疼痛、化膿性のはれものなどを治療する薬方に配合される。
- 排尿困難、頻尿に効く牛車腎気丸(補陽剤)、腰痛、神経痛、筋肉痛に効く疎経活血湯(利水剤)、関節リウマチ、慢性関節炎に効く大防風湯(利水剤)などに含まれる。
- 牛膝は杜仲と共に筋骨を強壮し、牛膝は膝痛を治療する薬として優先的に用いられる。
→大防風湯(利水剤)、疎経活血湯(利水剤)、牛車腎気丸(補陽剤)
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呉茱萸 ごしゅゆ goshuyu, wu zhu yu 参考1/
- ミカン科ゴシュユ(呉茱萸)、中国原産の落葉小高木。江戸時代に中国から雌株だけが渡来し、各地で栽培されてきた。
- 語源は、「茱萸」が赤い実をもつ植物を表している。特に、中国の「呉」由来のものが高品質とされたことから、「呉茱萸」が一般的になった。
- 呉茱萸の味はとても辛く、同じミカン科の山椒に似ていることから、日本では唐椒「カラハジカミ」とも呼ばれる。
- 呉茱萸は成分としてエボジアミン、ルテカルピン、エボカルピン (アルカロイド)を含み、体を温める、鎮痛などの作用を有す。
- 性:大熱・小毒、味:辛・苦、帰経:肝・胃・脾・腎
- 適応:温補の健胃鎮痛利尿作用があり、胃内停水、胸満、嘔吐、冷え性、頭痛を改善する薬方に配合される。
- 薬理作用:温中散寒・下気止痛
- エボジアミンにはTRPV1の活性化、セロトニントランスポーター増強作用がある。
→呉茱萸湯(温裏剤)、当帰四逆加呉茱萸生姜湯(温裏剤)、左金丸(さきんがん)など7処方に配合されている。
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牛房子 ごぼうし
- キク科CompositaeのゴボウArctium lappa L.の成熟した果実
- 性:寒、味:辛・苦、帰経:肺・胃
- 薬理作用:疏散風熱・祛痰止咳・清熱解毒
- 辛涼解表薬
- 解熱、解毒、去痰薬として感冒、咳、咽喉腫痛、麻疹、風疹、などの症に応用する。
→柴胡清肝湯・消風散・天津感冒片
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五味子 ごみし
- モクレン科チョウセンゴミシの実
- 五味子の名前の由来には以下のような説がある。
①甘味、酸味、辛味、塩味、苦味の5つの味がする ②果皮および果肉は甘酸っぱく、核は辛くて苦く、全体的に塩味がある、つまり五味子の果実の部分によって味が異なる ③口にしてからの時間差で味が変わる、もしくは飲む人によって、また飲む日によって違う味に感じられる。
- 主な成分:リグナン(シザンドリン、ゴミシンA〜H)、精油(シトラール)、脂肪油、有機酸など
- 性:温、味:酸、帰経:肺・腎
- 薬理作用:斂肺滋腎・生津斂汗・渋精止瀉
- 収める(収)ための処方:収性薬:止汗・鎮咳薬
- 下げる(降)ための処方:降性薬:止汗薬
- 薬能:主として咳嗽があって、頭が帽子をかぶったように重いものを治す。(薬徴)
→小青竜湯(解表剤)、清肺湯(せいはいとう)、人参養栄湯(気血双補剤)、苓甘姜味辛夏仁湯(りょうかんきょうみしんげにんとう)など
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柴胡 さいこ upleurum Root, saiko, siho
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細辛 さいしん
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山梔子 さんしし gardenia fruit
- クチナシ Gardenia jasminoides Ellis(アカネ科 Rubiaceae)の果実を乾燥したもの
- 梔子(クチナシ)の果実 果実が熟しても開裂せず口を開かないので「口無し」になった等の説
- 成分:ゲニポシド(イリドイド配糖体)、クロシン(カロチノイド色素)
- 性:寒、味:苦、帰経:心・肝・肺・胃
- 薬理作用:清熱瀉火・涼血解毒、固渋
- 清熱作用:柴胡は「肝」、山梔子は「心」の熱を冷ます。
黄連は中焦(心や脾胃)の熱、黄芩は上焦(肺)の熱、黄柏は下焦(腎・膀胱)の熱を、山梔子は三焦の熱をさまし、炎症をとる作用がある。
- 主として胸苦しいものを治す。また、黄疸も治す。
- 漢方処方用薬として、消炎排膿薬、皮膚疾患用薬、尿路疾患用薬、精神神経用薬とみなされる処方及びその他の処方に配合されている。
→六味丸(滋陰剤)/八味地黄丸(補陽剤)/牛車腎気丸(補陽剤)、温清飲(清熱剤)、黄連解毒湯(清熱剤)、加味逍遙散(和解剤)、四逆散(和解剤)、加味帰脾湯(気血双補剤)
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山茱萸 さんしゅゆ =山萸肉(さんゆにく)、萸肉(ゆにく)
asiatic dogwood, Cornus officinalis, Japanese cornel, cornus fruit
- ミズキ科サンシュユの果肉を乾燥したもの
- 性:微温、味:酸・渋、帰経:肝・腎
- 薬理作用:補益肝腎・渋精・斂汗、補腎益精、固渋
- 内部にある種子を取り除き 、乾燥させた果肉(正確には偽果)が生薬に利用される。
- 疲労回復、滋養、強壮、止血などの作用がある。
- 強精薬、止血、解熱作用がある。
→六味丸(滋陰剤)、八味地黄丸(補陽剤)、牛車腎気丸(補陽剤)
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山椒 さんしょう Japanese zanthoxylum peel
- サンショウ Zanthoxylum piperitum De Candolle (Rutaceae ミカン科)の成熟した果皮で、果皮から分離した種子をできるだけ除いたもの
- 腹の中の冷えや痛み、間歇熱を治す。回虫を殺し、脾胃を温めて寒を散ずる。
→大建中湯(温裏剤)
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酸棗仁 さんそうにん
- さねぶとなつめは、クロウメモドキ科実部とナツメの成熟種子
- 性:平、味:甘・酸、帰経:心・脾・肝・胆
- 補血薬
- 薬理作用:養肝・寧心・安神・斂汗
- 薬効:鎮静作用、催眠作用、鎮痛作用、血圧降下作用、体温降下作用
- 神経強壮、鎮静、催眠薬として、心因性神経性の不眠症、健忘症、口渇、虚弱体質者の多汗症などに応用
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山薬 さんやく Dioscoreae rhizoma, Japanese yam
- 薯蕷(しょよ)とも呼ばれる。
- ヤマノイモ科ヤマノイモの皮を薄く剥いて乾燥したもの
- 性:微温、味:甘、帰経:脾・肺
- 補脾薬、補気薬、補腎益精薬
- 薬理作用:補脾胃・益肺
- 滋養強壮、止瀉、鎮咳などに効果がある。
- 強壮及び滋養作用と緊張を緩和させる作用を持っている。
- アミラーゼを大根の約3倍量含むほか、活性酸素を除去するカタラーゼも豊富に含んでいる。
- ステロイド:ジオスゲニン,β-シトステロールも成分として含む。
→六味丸(滋陰剤)/八味地黄丸(補陽剤)/牛車腎気丸(補陽剤)
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地黄 じおう rehmannia root
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地骨皮 じこっぴ LYCII CORTEX ←→土骨皮(樸樕)
- クコ Lycium chinense Miller 又はLycium barbarum Linné(Solanaceae)の根皮
- 主要成分:スペルミン誘導体(クコアミンB)、カロテノイド、その他(ベタイン)
- 清熱剤
- 性:寒、味:甘、帰経:肺・腎
- 解熱、強壮薬として虚証の潮熱、咳、吐血、消渇、盗汗に応用
→清心蓮子飲(清熱剤)、滋陰至宝湯(滋陰剤)
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蒺藜子 しつりし Tribulus fruit
- 暖かい海辺の砂地に自生するハマビシ科(Zygophyllaceae)のハマビシ Tribulus terrestris L. の未成熟果実未成熟果実を乾燥したもの
- 成分:テレストリアミド、ケンフェロール、トリブロシド、アストラガリン、ハルミン、ハルマン、精油、サポニン、ケンペロール、タンニン、脂肪油
- 脂肪油やサポニンを含み、強壮、利尿、消炎、かゆみ止め、鎮静などの作用がある。
- 性:微温、味:辛・苦、帰経:肝
- 薬理作用:疏肝-熄風・行瘀祛滞・解欝・明目・止痒
- 蒺藜子はしばしばアトピー性皮膚炎の治療薬として選択される漢方処方「当帰飲子(補血剤)」に配合される生薬
- 虚弱体質者や高齢者で、血虚により皮膚が枯燥し掻痒のあるものに用いられる。処方の中で蒺藜子は掻痒の改善薬として重要で、中医学では平肝熄風薬に分類され、肝経に入り、内風を平熄し肝陽を平定する薬物とされる。
→当帰飲子(補血剤)
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芍薬 しゃくやく peony root
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縮砂 しゅくしゃ AMOMI SEMEN
- ショウガ科(Zingiberaceae)の Amomum xanthioides Wall. の種子の塊
- 主要成分:モノテルペノイド(酢酸ボルニル、(+)-カンファー)など
- 性:温、味:辛
- 『本草綱目』には『医通』の引用として「腎は燥を悪むものでこれを潤すには辛を用いる。縮砂仁の辛を用いれば腎の燥を潤すものだ」とあり、さらに続けて「縮砂は土に属するもので、主として脾を醒し、胃を調え、諸薬を導いて丹田に落付き宿らせる。香わしくてよく薫じ籠り、五臓それぞれの機能を徹底し調和する気を和合し、あたかも天地が土によってその機能発揮の徹底と調和を実現するようなものである」と記載されている。
- 適応:健胃、整腸作用があり、上腹部痛や消化不良を改善する薬方に配合される。
芳香性健胃薬として生薬製剤に用いられる。
→安中散(温裏剤)
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車前子 しゃぜんし platago seed
- 原植物はオオバコ科のオオバコの種子
- 非サポニン性の去痰薬
- 成分としてアウクビンおよび多量の粘液を含む。
- 性:寒、味:甘、帰経:肝・腎・小腸・肺
- 薬理作用:利水・通淋・止瀉・明目・祛痰止咳
- 鎮咳、去痰、止瀉、利尿作用を有する。
→牛車腎気丸(補陽剤)
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朮 じゅつ、jutsu
- 蒼朮と白朮は、共に水分代謝不全の改善を目的とする生薬
蒼朮 そうじゅつ atractylodes rhizome, sojutsu, cangzhu
- キク科ホソバオケラとシナオケラ又はそれらの雑種の茎を乾燥したもの
- ホソバオケラは中国原産の多年生草本で、中国から江戸時代の享保年間に種苗が渡来し、特に佐渡島で盛んに栽培されたことから、一名「サドオケラ」の名称があるが、現在,日本での生産はほとんどない。
- 性:温、味:苦・辛、帰経:脾・胃
- 薬理作用:燥湿健脾・祛風湿
- 健胃、発散、利水、利尿、発汗、抗炎症、鎮痛などの作用がある。
- 主成分はヒネソールやアトラクチロール、アトラクチロジン、アトラクチロンなど
→越婢加朮湯(利水剤)、疎経活血湯(利水剤)、当帰芍薬散(利水剤)、防已黄耆湯(利水剤)、薏苡仁湯(利水剤)、真武湯(利水剤)、葛根加朮附湯(利水剤)、桂枝加朮附湯(利水剤)、五苓散(利水剤)、二朮湯(利水剤)、柴苓湯(和解剤)、加味逍遙散(和解剤)、五積散(表裏双解剤)、四君子湯(補気剤)/十全大補湯(気血双補剤)、抑肝散(理気剤)、補中益気湯(補気剤)、人参湯(温裏剤)
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白朮 びゃくじゅつ atractylodes rhizome, byakujutsu, baizhu
- キク科のAtractylodes macrocephala KOLDZ.オオバナオケラの根茎
- ニワトリのモモのからあげのような姿をしている。本来、オケラの仲間は白い花が咲き、根茎は独特な精油成分による芳香を持っているが、白朮だけは赤い花が咲き、根茎は油分が少なく、ほとんど芳香性がないので蒼朮とは異なる。
- 補気薬
- 性:温・微香、味:甘・微苦、帰経:脾・胃
- 薬理作用:補脾益気・燥湿利水
- 白朮は余分な水分を取り去る「健脾燥湿」の作用により、気虚から発展する痰湿の病態を正す。
- 漢方で健胃・利尿薬などに用い、屠蘇散・蚊やりなどの材料ともする。
→人参養栄湯(気血双補剤)、加味帰脾湯(気血双補剤)、二朮湯(利水剤)
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生姜 しょうきょう ginger ←→ジンゲロン・ショーガオール・ジンジャオール
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升麻 しょうま GYPSUM FIBROSUM
- キンポウゲ科(Ranunculaceae)のサラシナショウマ Cimicifuga simplex Wormskjord又はその他同属植物の根茎を乾燥させたもの
- サラシナ(晒菜)とは、若菜を茹でて晒して山菜としたことからであり、根の部分が「升麻」
- サラシナショウマは伊吹山の山頂付近でも群生している。
- 性:微寒、味:甘・辛、帰経:肺・脾・大腸・胃
- 薬理作用:発表-透疹・清熱解毒・升拳陽気
- 上げる(↑・升・↓)ために処方
- 解熱、発汗、解毒作用があり、じんましんの初期症状などに効果的。また、気のめぐりが悪くなることで起こる、脱肛や下痢、倦怠感にも有効
- 升麻は諸処の炎症疼痛に適応される乙字湯、升麻葛根湯、立効散、補剤の補中益気湯(補気剤)に配合される生薬である。
- 升麻単独では、消炎、鎮痛、鎮静作用などが報告されている。
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小麦 しょうばく
- イネ科(Gramineae)のコムギ Triticum aestivum Linnéの果実
- 性:涼、薬:甘、帰経:心・脾・腎
- 主要成分:でんぷん、蛋白質、糖脂質、その他(5-ヘンイコシルレゾルシノール)など
- 薬効:鎮静作用、安眠作用、養心安神(精神安定)作用
- 薬能:煩わしい不快な熱感を除き、のどの渇きや口内の乾燥を止め、小便の排出をよくする。(古方薬議)
→甘麦大棗湯(安神剤)
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辛夷 しんい
- タムシバ、コブシ、モクレンなどの花のつぼみを乾燥させたもの
- 主要成分:アルカロイド(マグノフロリン)、リグナン類(マグノサリン)、モノテルペノイド(シネオール)など
- 性:平?、味:辛、帰経:肺・胃
- 薬理作用:散風通竅
- 薬効:鎮静、鎮痛
- 辛夷には独特の香りがあり、芳香性の強いもの、中身が充実して大きいものが良品であるとされる。
- 辛夷の薬味・薬性は辛・温であり、籔を通じ、風を散じ、鼻淵を治す専門薬として用いられる。
- 散らす(散)ために処方
- 鼻の通りをよくする作用があり、さらに、鼻水・くしゃみなどにも効果的。また、発汗作用もあり、風邪による頭痛を改善する。
- 葛根湯加辛夷川苛の適応となる鼻水は、粘りは小さく白っぽく熱感のないもの。
- 辛夷清肺湯は、鼻づまりの中でも鼻水の粘りが強いような熱性のものに有効であり、構成生薬においても、知母、黄芩、山梔子、石膏などの清熱薬が配合されている。
→葛根湯加川芎辛夷(かっこんとうかせんきゅうしんい)、辛夷清肺湯(しんいせいはいとう)
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沈香 じんこう
- ジンチョウゲ科(Thymelaeaceae)のジンコウ Aquilaria agallocha Roxb. などの材で、黒い樹脂が沈着した部分
- 原木は軽いが、樹脂が沈着した部分は重く、水に沈むため、これが名の由来となっている。 樹齢30年を経過しないと樹脂の沈着が起こらず、さらに100年以上を経過して良質の沈香素材となる。東大寺正倉院にある蘭奢侍(らんじゃたい)として著名である。
- 香道で用いられる香木の一つでもある。最近ではアロマテラピーの普及にともない、沈香を配合したお線香などが、気持ちを落ち着かせるものとして注目されている。
- ベンジルアセトン、高級アルコール、テルペンなどからなる樹脂が約 50%含まれている。
- 降気、止痛、止嘔などの効能があり、体内を温めて痛みや吐き気を止めるのに用いられる。
- 丁香柿蒂湯(ちょうこうしていとう)、喘四君子湯(ぜんしくんしとう)
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青皮 せいひ
- ミカン科の Citrus reticulata などの未成熟果皮:成熟する前の果皮を乾燥したもの
- 疏肝、理気、消積化滞などの効能があり、張ったような痛み、下腹部痛などに用いられる。
- 成熟した果皮は、陳皮と呼ばれ、漢方処方では症状により使い分けて用いられる。
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石膏 せっこう GYPSUM FIBROSUM
- 天然の含水硫酸カルシウム(石膏)をくだいて粉にしたもの
- 組成は硫酸カルシウム(CaSO4・2H2O)
- 性:大寒、味:甘・辛、帰経:肺・胃
- 薬理作用:清熱瀉火・下渇・除煩
- 服用後、寒涼感を覚え、熱を冷ます作用をもつ寒薬
- 冷やす・寒性生薬 の代表 石膏があれば冷やす方剤
- 局所に熱感のある痛みに処方/清熱剤
- 主として激しい口渇を治す。また、うわごと、苦しみもだえるもの、体全体に熱感のあるものを治す。
- 肺の熱や炎症を鎮める働きと利尿作用がある。咽喉炎、口内炎、肌のほてりなどの熱や炎症をしずめるのに有効
- 麻黄を石膏に組み合わせると趣が変わる。麻黄は発汗作用が強く体を温めるが、体を冷やす石膏と組み合わせると寒熱に対する作用がなくなり、浮腫を取る、即ち水滞を取る薬になる。
- 白虎湯(清熱剤)/白虎加人参湯(清熱剤)、小柴胡湯加桔梗石膏、越婢加朮湯(利水剤)など
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川芎 せんきゅう Cnidium officinale Makino
- セリ科センキュウのひげ根を除いた根茎を、湯通しした後、乾燥したもの
- 中国四川省が原産と推定されるが、わが国でも江戸時代の寛永年代以後、栽培される。本格的には明治の中期、北海道に始まり現在も大量に栽培されている。
中国の古典(「神農本草経」など)には,芎藭(きゅうきゅう)と書かれているが、四川省産のものが良品とされたため、川芎という呼び名が生じたといわれている。この川芎に使われている「藭」や「芎」の字は、葉柄が弓状に曲がった様を表すものと考えられている。
- 料理用ハーブとして主に使われるヨーロッパのラビジや、北米で人気のあるハーブ、オシャ(学名L.porteri)の仲間
- 中国では、月経異常や心臓疾患の際に血を活気づける治療薬として14世紀から使用されている。
- 活血薬@駆瘀血薬
- 性:温、味:辛、帰経:肝・胆・心包
- 薬理作用:活血-行気・祛風止痛
- 頭痛や腹痛、筋肉痛、生理痛などに用いる。
- 当帰とともに婦人科・産科の要薬として有名で、活血作用と行気作用とがあり、「血中の気薬」といわれている。
- 「血中の気薬」とも呼ばれ、血液の機能を賦活し、血行を促進するとともに、血を散じ、月経を調える。
- 服用後、温熱感を覚え、温める作用がある温薬
- 腹痛に関連する肝臓の気の停滞を緩和し、頭痛にも有効な生薬 身体のバランスをとる薬
- 胃部振水音が陽性で、腹診で瘀血の圧痛点が確認される場合に処方される。
- 熱感よりも寒けが強い風邪による頭痛、片頭痛、肩こりによく効く。
→温清飲(清熱剤)、五積散(表裏双解剤)、十全大補湯(気血双補剤)抑肝散(理気剤)、治打撲一方(駆瘀血剤)、四物湯(補血剤)、当帰飲子(補血剤)、疎経活血湯(利水剤)、当帰芍薬散(利水剤)
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川骨 せんこつ NUPHARIS RHIZOMA
- コウホネ Nuphar japonica De Candolle、ネムロコウホネ Nuphar pumila De Candolle 又はそれらの種間雑種(Nymphaeaceae)の根茎を縦割したもの
- 主要成分:アルカロイド(ヌファリジン)、タンニン類など
- 性:寒、味:甘
- 補、収
- 薬能:血液の停滞を取除き、新鮮な血液を導く。打撲、外傷、産後の血液停滞による諸疾患を治す。
→治打撲一方(駆瘀血剤)
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蘇木 そぼく SAPPAN LIGNUM
- マメ科LeguminosaeのスホウCaesalpiniasappanL.の心材を乾燥したもの
- 成分:色素(ブラジレイン、ブラジリン)、フラボノイドなど
- 性:平、味:甘・鹹・辛、帰経:心・肝・脾
- 効能:活血祛瘀・消腫止痛
- 月経不順、月経困難、月経痛、腰痛に効く通導散などに含まれる
→通導散(駆瘀血剤)
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蘇葉 そよう =紫蘇葉 Perilla Herb
- シソ科シソの葉を乾燥したもの
- 主成分は精油で、約50%を占めるシソアルデヒドや約30%を占めるリモネンのほか、ピネンなどが見出されている。その他成分として、カロテンやシソニン、シアニンなどが含まれている。
- 理気薬、実証用薬
- 性:温、味:辛、帰経:肺・脾
- 薬理作用:発汗解表・発表散寒・行気寛中・解魚蟹毒
- 薬効:鎮咳、去痰作用
- 腠理を開き、発汗を促し、外感-風寒を発散させる(解表)。
- 鬱結した肝気の流れを良くし(疏肝理気)、気分を軽くする。
- 自律神経系の緊張が緩和され、平滑筋の痙攣が緩み、精神的な閉塞感が解消される。胃液の分泌を促進して胃腸の蠕動を強める働きもある。
- 肺においては気管支の分泌物を減少し(去痰)、気管支の痙攣を緩和する。魚介類による中毒で嘔吐、下痢、腹痛があるときにも使う。
- 妊娠中の嘔吐や悪心(妊娠悪阻)にも効果がある。
→香蘇散(理気剤)、半夏厚朴湯(理気剤)
解魚蟹毒
- カニや魚介類の中毒を解消する治療法
- 魚介類を食べるときに一緒に摂ると消化不良や食中毒の予防になる。お刺身を食べるときに紫蘇が付いていたら積極的に食べると良い。
- 蘇葉の薬効
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蘇梗 そこう
- 紫蘇の茎の部分で、花が咲く前の大体9月上旬に採収する。
- 主に嘔吐、食欲不振に用いる。
紫蘇子 しそし =蘇子 そし
- 紫蘇の花穂を9月下旬から10月中旬に採取した後、種子を乾燥して生薬としたもの
- 咳や喘鳴(のどのぜろぜろ音)を鎮め、痰を出しやすくするほか、便秘やむくみの解消に良いとされている。気管支炎や喘息に使う蘇子降気湯に配合されている。
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大黄 だいおう rhubarb ←→瀉下薬/ダイオウ@大腸刺激性便秘薬@便秘薬 参考1
- 初夏に黄緑色の小花を咲かせるタデ科の多年草で、ハート型の大きな葉をしている。江戸時代の薬種商や、今でも生薬を扱う人々の間では、「将軍」という別称で名が通っている。
- 成分:アントラキノン誘導体のセンノサイドA~F、アロエエモジン、レイン、クリソファノールなど。その他、フェノールのトラクリゾン、カテコールタンニンのカテコールなども含まれている。
- 性:寒、味:苦、帰経:脾・胃・大腸・心包・肝
- 薬理作用:攻積導滞・瀉下涼血・祛瘀痛経
- 薬効:瀉下作用 利胆作用 消炎作用 健胃作用
- 補脾薬
- 排出する(瀉)ための処方、下げる(降)ための処方:降性薬:瀉下薬
代表的な瀉下剤で、下剤として多用される。「芒硝」にも同様の作用があるが、「大黄」は「乾かす」作用があるのに対して、「芒硝」は「潤す」作用がある。センノシド(「大黄」に含まれる成分)は大腸を刺激して下剤の効果を発揮するのに対し、酸化マグネシウムは腸管内での水の再吸収を抑えることで、便に水分を与え、作用を発揮する。漢方薬で便秘を改善する場合には、通常は「大黄」「芒硝」といった生薬が選択されるケースが多いが、「便が硬くて出ない」場合には「芒硝」の併用するが、
あまり強力に瀉下したくない場合には「芒硝」を「麻子仁」などにしてマイルドな作用に変える。
- 下剤としての作用だけでなく、気の鬱屈(気滞=気鬱)や血の鬱滞(瘀血ー駆瘀血剤)、熱のこもりなどを軽減する目的で使用されることもあり、むしろこちらの方が重要である。
- 大黄、芒硝が配合される承気湯類は便通の異常と精神症状が共にあり、桃核承気湯は便秘が主体で、「うつうつとした気分」がすぐれない場合に選択される。
→防風通聖散(表裏双解剤)、桃核承気湯(駆瘀血剤)
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大棗 たいそう jujube
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沢瀉 たくしゃ alismatis rhizoma, alisma tuber
- オモダカ科サジオモダカの根茎を乾燥したもの
- 性:寒、味:甘、帰経:腎・膀胱
- 薬理作用:利水・滲湿・清熱
- 水分代謝を調整し不要な水分を排泄する作用を持つ。
- 利水、止渇などに効果がある。
- 止渇、鎮痛、コレステロール降下のほか、強い利尿作用があり、とくに腎炎に有効とされる。
- 四環性トリテルペノイドのアリソールA、B、Cとそれらのアセチル化合物などを成分として含む。
- 腎炎、むくみ、下痢に効く五苓散(利水剤)、前立腺肥大、頻尿、排尿困難に効く八味地黄丸(補陽剤)、排尿痛、残尿感、膀胱炎、尿道炎に効く竜胆瀉肝湯(清熱剤)などに含まれる。
→猪苓湯(清熱剤)、六味丸(滋陰剤)/八味地黄丸(補陽剤)/牛車腎気丸(補陽剤)、当帰芍薬散(利水剤)、柴苓湯(和解剤)
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竹筎 ちくじょ Bamboo Culm
- Bambusa textilis McClure, Bambusa pervariabilis McClure, Bambusa beecheyana Munro, Bambusa tuldoides Munro, ハチク Phyllostachys nigra Munro var. henonis Stapf ex Rendle 又はマダケ Phyllostachys bambusoides Siebold et Zuccarini (Gramineae イネ科) の稈の内層
- 主要成分:pentosan, lignin, cellulose その他トリテルペン類など
- 味:甘、性:寒、帰経:胃・胆
- 解熱作用、鎮静作用、鎮吐作用、止血作用
- 清熱、除煩、涼血、去痰、鎮吐作用
- 薬能:嘔吐や吐き気、悪寒、熱感、肺機能が低下する呼吸器疾患、唾液に血の混じるもの、感染性の疾患を治す。(古方薬議)
→主な配合漢方薬:清肺湯、竹茹温胆湯(和解剤)、加味温胆湯
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知母 ちも ANEMARRHENAE RHIZOMA
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釣藤鈎 ちょうとうこう
- アカネ科カギカズラまたはその他近縁植物の帯鈎茎枝
- 性:微寒、味:甘、帰経:肝・心包
- 薬理作用:平肝止痙
- 精神の興奮やストレスなどによるひきつけ、痙攣、高血圧の頭痛、めまい、四肢のしびれなどに用いられる。
- 血管を拡張し、高血圧に伴う頭痛、めまい、耳なり、焦り、イライラなどに用いられる。
- 釣藤鈎は中医学では頭痛、めまい、顔面紅潮、痙攣などを軽減する熄風薬と言われ、これは理気薬に類似する。
→抑肝散(理気剤)、釣藤散、七物降下湯
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茶葉 ちゃよう
- ツバキ科(Theaceae)のチャノキ Camellia sinensis Kuntzeの葉で、しばしば枝先を伴う
- 主要成分:カテキン類、タンニン類、アミノ酸(テアニン)、その他(カフェイン)
- 性:微寒、味:苦・微甘、帰経:心・肺・肝・腎・脾・胃
- 作用・効能効果;祛風・清爽頭目、清熱降火・解暑、解熱毒・止痢
→川芎茶調散(解表剤)
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丁子 ちょうじ、クローブ・Clove CARYOPHYLLI FLOS
- チョウジ Syzygium aromaticum Merrill et Perry(Eugenia caryophyllata Thunberg)(Myrtaceae)のつぼみ
- 特有の強いスパイシーな香り 肉の臭みを消すため肉料理に使われたり、ケーキやプティングなど、甘みや深みを出すためデザートなどにもスパイスとして用いられる。
- 理気薬
- 性:熱、味:辛、帰経:胃・脾・腎
- 主要成分:フェニルプロパノイド(オイゲノール)、フラボノイド、トリテルペノイドなど
- 薬能:しゃっくり、激しい嘔吐、頑固な嘔吐を治す。虫歯の痛みにこれを口の中に含む。
→治打撲一方(駆瘀血剤)、女神散
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猪苓 ちょれい Polypores Sclerotium
- サルノコシカケ科のチョレイマイタケの菌核を乾燥させたもの
- 主な成分:エルゴステロール、α-Hydroxytetracosanoic acid 、ビオチンなど
- 燥性薬、平性の生薬
- 性:平
、味:甘・淡、帰経:腎・膀胱
- 薬理作用:利水滲湿・清熱
- 薬能:利尿作用があり、膀胱炎やむくみ、下痢などに効果がある。
→猪苓湯(利水剤)、五苓散(利水剤)、柴苓湯(和解剤)など
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陳皮 ちんぴ Mandarin ←→青皮
- ミカン科ウンシュウミカンの果皮を乾燥したもの
- 陳皮は『神農本草経』の上品収載品で、「橘柚」(きつゆう)の原名で記されている。別名を「橘皮」(きっぴ)と言い、陳久品ほど薬効が優れているとされてきたことから、とくに長く保存されたものを「陳橘皮」といい、それが短縮されて「陳皮」と呼ばれるようになった。
- 果皮にはリモネン、リナロール、テルピネオールを主成分とする精油約0.2%や、配糖体のヘスペリジン、フラボノイドのノビレチンなどが含まれている。また果肉にはクエン酸を主とする有機酸を1~3%含有するほか、ビタミンCやカロテンも豊富に含まれている。
- 理気薬
- 性:温、味:辛・苦、帰経:肺・脾
- 薬理作用:理気健脾・燥湿化痰
- 陳皮は辛散苦降し、薬性が温和で芳香醒脾にも働き、理気健脾・和胃止嘔・燥湿化痰にすぐれ、脾肺二経の気分薬
- 脾胃気滞の胸腹脹満・食少吐瀉・消化不良、ならびに痰湿壅肺の喘満痰多に適す。
- 風邪の症状改善やリラックス効果
- 気の流れを調えて、胃の機能を立て直す(理気和胃)とともに、膨満感を緩和する(除満)。
- 嘔吐を制する作用もあり(止嘔)、蠕動も促す。
- 陳皮は補助薬として用いられることが多く、人参・白朮に配分すると健脾益気を助けて滋滞させず、半夏・茯苓に配合すると化痰を強め、蒼朮・厚朴と用いると燥湿を増強する。
→五積散(表裏双解剤)、香蘇散(理気剤)、六君子湯(補気剤)、補中益気湯(補気剤)、疎経活血湯(利水剤)、二朮湯(利水剤)、人参養栄湯(気血双補剤)
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天南星 てんなんしょう Arisaema
- サトイモ科の多年草、マムシグサ(Arisaemaserratum)やウラシマソウA.thunbergiissp.urashimaなどの同属植物の塊茎
- 性:温・味:苦・辛、帰経:肺・肝・脾
- 瀉、燥、降、散
- 漢方では燥湿化痰・止痙の効能があり、眩暈、麻痺、痙攣、ひきつけなどに用いる。
- 天南星は半夏と同様に燥湿化痰の代表薬だが、半夏が胃腸の湿痰を除くのに対し、天南星は経絡の風痰を治療するといわれている。この風痰とは脳卒中や癲癇の病態と考えられている。
→二朮湯(利水剤)
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天門冬 てんもんどう ASPARAGI TUBER
- ユリ科(Liliaceae)のクサスギカズラAsparagus cochinchinensis Merrillのコルク化した外層の大部分を除いた根を通例、蒸したもの
- 成分:サポニン(アスパラサポニンI、プロトジオスシン)、オリゴ糖(フルクトオリゴ糖)など
- 滋陰剤@潤性薬
- 性:大寒、味:甘、帰経:肺・腎
- 清熱、滋陰、潤燥の効能があり、排膿腫、発熱、吐血、口渇、咽喉の痛みなどに用いられる。
- 鎮咳・去痰
- 「麦門冬」と同じユリ科で名前が似ていて、麦門冬と天門冬の2つの生薬を併せ用いると作用が増強し合うということで、鎮咳、去痰効果を期待して「清肺湯」、「滋陰降火湯」に用いられる。
→滋陰降火湯、清肺湯
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当帰 とうき Angelica
- トウキ Angelica acutiloba Kitagawa
ホッカイトウキ Angelica acutiloba Kitagawa var. sugiyamae Hikino
- セリ科シシウド属の多年草 Umbelliferae
- 神農本草経の中品に収載され、漢方では婦人病の要薬である。日本では17世紀に大和・山城で多量に栽培生産された。
- 中国の民話では、妻の婦人病を機に家に寄りつかなくなった夫に、妻はこの薬草を飲んで病を癒し、「恋しい人よ、当(まさ)に我が家に帰るべし」と言ったのが、当帰の名前の由来とされている。あるいは里で出産後なかなか体調がすぐれない嫁が、当帰で体調を回復して夫の元へ帰る、などの意味があるといわれている。
- 当帰は西洋では「Angelica」と呼ばれ、西洋でも昔から使われていたハーブである。「Angelica」の語源は「Angel」、つまり天使のように婦人の諸病に効く聖薬という意味のほか、天使のような子宝に恵まれるという意味もある。当帰は、西洋でも東洋でも同じ効用を持つとして名付けられ、用いられてきた薬草である。
- 当帰は「婦人病の聖薬」と呼ばれ、漢方では多くの処方に使われている。補血薬の要薬であるが、活血作用も持ち合わせていることから、いわゆる「血の道症」の万能薬である。
- 当帰は婦人科領域の主薬であり、また「血中の気薬」ともいわれ、非常に多くの処方に配合されている。
- 駆瘀血薬/補血薬
- 中国医学では帰頭は補血、帰身は養血、帰尾は破血、全当帰には活血の効能があるといわれているが、日本では区別することは少ない。
- 性:温、味:甘・辛、帰経:辛・肝・脾
- 薬理作用:補血・行血・潤腸・調経
- 活血薬@駆瘀血剤、補剤
- 服用後、温熱感を覚え、温める作用がある温薬
- 冷え性、月経不順、貧血を主訴とする婦人病などに用いられる。根を薬用とする。
- 補血・保健強壮・鎮静・鎮痛・貧血・月経不順・冷え性・更年期障害などの婦人病に用いる。血流を促し、身体を温める。
- 普導丸では他の生薬との組み合わせにより、めまい・気分不快などを軽減する。
- 甘味があり、補性作用・降性作用がある。
→当帰四逆加呉茱萸生姜湯(温裏剤)、温経湯(温裏剤)、通導散(駆瘀血剤)、当帰飲子(補血剤)、四物湯(補血剤)、温清飲(清熱剤)、五積散(表裏双解剤)、十全大補湯(気血双補剤)、人参養栄湯(気血双補剤)、加味逍遙散(和解剤)、抑肝散(理気剤)、補中益気湯(補気剤)、加味帰脾湯(気血双補剤)、当帰芍薬散(利水剤)、疎経活血湯(利水剤)、薏苡仁湯(利水剤)
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桃仁 とうにん peach kernel
- モモの成熟した種子を乾燥させたもの
- 成分:青酸配糖体(アミグダリン)、酵素(エムルシン)、タンパク質、脂質類など
- 活血温経薬、破血薬@駆瘀血薬、平性の生薬
- 性:平、味:苦・甘、帰経:心・肝・大腸
- 薬理作用:破血祛瘀・潤燥滑腸
- 薬効:主として、血液の停滞、下腹部の膨満して痛むものを治す。(薬徴)
- 血のめぐりをよくして、腸をうるおす働きがある。月経不順、月経痛を治し、便通を整えるのに効果的
- 破血薬@駆瘀血剤
- 女性の血の道症に多く用いられる。
→桂枝茯苓丸(駆瘀血剤)/桃核承気湯(駆瘀血剤)/疎経活血湯(利水剤)
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杜仲 とちゅう
- トチュウ科(Eucommiaceae)のトチュウEucommia ulmoides Oliverの樹皮
- 補陽薬:陽気を補う中薬、暖肝薬
- 甘微辛、温、帰経:肝・腎
- 主要成分:リグナン類(ピノレジノール)、ゴム様物質(グッタペルカ)、その他(オイコンミオール)
グッタペルカ:トチュウの葉や樹皮を折り取ると、ゴム状の白い糸が伸びる。これを「グッタペルカ」と呼んでいるが、グッタペルカは本来、スマトラやボルネオといった熱帯に分布する、アカテツ科の常緑高木「グッタペルカノキ(Palaquium gutta)」を指す。トチュウの葉や樹皮から出る物質が、グッタペルカノキの出す乳液・樹脂と似ていたため、「グッタペルカ」と呼ばれるようになった。
- 薬理作用:降圧作用、滋養作用、強壮作用、鎮痛作用、補肝腎作用、強筋骨作用、安胎作用、利尿作用、抗ストレス作用
- 杜仲は牛膝と共に筋骨を強壮し、腰痛を治療する薬として優先的に用いられる。
→大防風湯(利水剤)
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独活 どくかつ、どっかつ Aralia Rhizome
- ウド Aralia cordata Thunberg(Araliaceae ウコギ科)の,通例,根茎
- 主要成分:クマリン類(オストール、アンゲリコン)、ジテルペノイド(ピマル酸、イソピマル酸、エントカウレン酸)など
- 辛苦微温
- 祛風勝湿・止痛:風湿(風邪+湿邪)が侵襲して起こる肢体の痛みに対して用いる。
- 解表作用、止痛作用、通経絡作用、
- 適応:発汗・駆風・解熱作用があり、頭痛・関節痛などの痛みや皮膚病を改善する薬方に配合される。
→十味敗毒湯(清熱剤)、清上蠲痛湯、独活葛根湯、独活湯
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肉蓯蓉 にくじゅよう CISTANCHIS HERBA
- ハマウツボ科のホンオニクの肉質茎を乾燥したもの
- 野馬の精液が地に落ちてそこから生えてくるとのいわれがある精力剤
- 成分:モノテルペノイド類(シスタニン、シスタクロリン)、リグナン及びネオリグナン類、アルカロイド、ステロイドなど
- 性:温、薬:甘・鹹、帰経:腎・大腸
- 補陽薬
- 薬効:滋腎益精作用、補陽潤腸作用、強精作用、強壮作用<
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人参 にんじん Ninjin, renshen, ginseng
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貝母 ばいも FRITILLARIAE BULBUS
- アミガサユリ Fritillaria verticillata Willdenow var. thunbergii Baker(Liliaceae)の鱗茎
- 成分:アルカロイド(ペイミン、ペイミノン)、ジテルペノイド、など
- 性:寒、味:甘・苦、帰経:心・肺
- 止咳平喘薬、消化熱痰薬
- 鬱結を改善し、利水作用をもつ。また当帰と組みあわせて、妊婦のリンパ節炎による小便が出にくい状態を治す。
- 薬能:主として水分の停滞、水分代謝障害による症状のあるものを治す。(薬徴)
→滋陰至宝湯(滋陰剤)
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麦門冬 ばくもんとう ophiopogonis radix, ophiopogonis root
- ジャノヒゲ Ophiopogon japonicus (Thunb.) Ker-Gawl. キジカクシ科(Asparagaceae)
(局方)Ophiopogon japonicus Ker-Gael. ユリ科(Liliaceae)根の膨大部
- オフィオポゴニン(ステロイド配糖体)などの成分を含む。
- 性:微寒、味:甘・微苦、帰経:心・肺・胃
- 薬理作用:潤燥生津・化痰止咳
- 潤す(潤)ための処方:
滋陰薬@潤性薬
- 鎮咳、止渇、去痰などの作用がある。
→温経湯(温裏剤)、麦門冬湯(滋陰剤)、竹茹温胆湯(和解剤)
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薄荷 はっか mint
- シソ科のハッカ Mentha arvensis Linné var. piperascens Malinvaud(Labiatae)の地上部
- ハッカはヨーロッパで、全草が所謂ハーブ療法に利用されてきた薬用植物で、わが国ではその清涼感と芳香ある精油のみが、ハップ剤をはじめとする肩こりや捻挫の外用薬に配合されたり、また歯磨きのペースト、キャンディ、ガムなどに添加されてきた。
- 主要成分:モノテルペノイド((-)-メントール)、フェニルプロパノイド(ロスマリン酸) TRP
- 性:涼、味:辛、帰経:肺・肝
- 理気薬、実証用薬、辛涼解表薬、芳香性健胃薬
- 薬理作用:疏散風熱・清利咽喉・透疹
- メントールはTRPM8(CMR1)受容体アゴニスト
- 気虚・津虚、津、辛、涼
- 薄荷は辛涼性で肝・肺経に入り、疏散風熱するとともに、肝の鬱熱も発散し、頭や目の熱を冷ましてすっきりさせる(清利頭目)。
- 疏肝解鬱のほかに、清頭目(せいとうもく)(頭と目をスッキリさせる)、利咽喉(りいんこう)(のどの状態を整える)、透疹止痒(とうしんしよう)(かゆみを抑えようとする) などの働きがある。
- 薬能:軽い感染性の疾病、寒による疾病を治す。口中を爽快にし、うるしかぶれに外用として洗滌する。
→加味逍遙散(和解剤)、荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)、柴胡清肝湯(さいこせいかんとう)、川芎茶調散(解表剤)、防風通聖散(表裏双解剤)など
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半夏 はんげ PINELLIAE TUBER
- サトイモ科カラスビシャクの球茎の外皮を除いて乾燥したもの
- 多年生の雑草で、4~5月頃に長さ10~20cmほどの3枚の小葉からなる葉を1~3枚出す。花はサトイモ科特有の変わった形で5~7月に開花する。種はわずかで、1つの花に平均で20粒前後なる。
- 性:温・有毒、味:辛、帰経:脾・胃
- 薬理作用:和胃止嘔・燥湿祛痰・散結-消腫
- 効能:燥湿化痰、降逆止嘔、消痞散結
- 半夏は燥性で、化痰散結と降逆和胃の作用があり、咳を鎮め、痰を切り、嘔吐を抑える。
- 半夏は水湿を行らせ、逆気を下すと同時に、脾の健運によって痰涎が消失し、逆気を下降させ、胃気を和することにより痞満嘔吐を止める。
- 生の半夏には催吐・咽喉刺激・失声・嗄声などの弱い毒性があるが、煎じるとこれらは消失し、制吐作用が残る。
- 悪心・嘔吐によく使われる生薬であるが、生姜と組み合わせるとその作用は強力に発揮される。
- 理気薬、鎮吐薬@降性薬
- 厚朴と半夏で、神経緊張が原因となって起こる梅核気現象を治す。
→半夏厚朴湯(理気剤)、五積散(表裏双解剤)、六君子湯(補気剤)、柴苓湯(和解剤)、小青竜湯(解表剤)、二朮湯(利水剤)、柴胡加竜骨牡蛎湯(安神剤)
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白芷 びゃくし Angelica Dahurica Root
- ヨロイグサ Angelica dahurica Bentham et Hooker filius ex Franchet et Savatier(Umbelliferae)の根
- 華岡青洲Pが用いた全身麻酔薬の通仙散にも配合されている生薬
- 成分:ビャクアンゲリコール、ビャクアンゲリシン、フェロプテリン、インペラトリン、クマリンなど
- 性:温、味:辛、帰経:肺・胃
- 薬理作用:祛風解表・止痛・消腫排膿・燥湿止帯
- 風寒・寒湿に適す
- 薬効:解熱、鎮痛、解毒、排膿作用
→川芎茶調散(解表剤)、清上防風湯(解表剤)、五積散(表裏双解剤)、疎経活血湯(利水剤)、麦門冬湯(滋陰剤)
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茯苓 ぶくりょう Poria Sclerotium
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附子 ぶし Busu, root of the aconite ←→アコニチン
- キンポウゲ科、トリカブト(ハナトリカブト(Aconitum carmichaeri)またはオクトリカブト(Aconitum japonicum))の塊茎を基原とする生薬で、毒性が強いため通常は高圧蒸気処理などの加工を施したものを用いる(加工附子)。
- 主要成分:アルカロイド(ベンゾイルメサコニン、メサコニチン)、多糖類など
- 華岡青洲Pの麻酔薬、通仙散にも含まれていた。
- 性:大熱・有毒、味:大辛、帰経:心・脾・腎
- 薬理作用:回陽救逆・温脾腎・散寒止痛
- 附子は気分(身体の機能側面である気がつかさどる領域)を温める。
- 附子は鎮痛、強壮、興奮、新陳代謝亢進を目的としている。
- 熱薬、温裏剤(散寒薬):体内の冷えを除去する中薬 ←→温めて冷えを改善する生薬
- 腎の陽を温め、補う
- 新陳代謝亢進作用、鎮痛作用、強心作用などを目的として漢方薬に配合され、陰病で寒の症状が甚だしい状態に用いる温熱薬として位置づけられている。
- 薬能:主として水分の代謝を盛んにし、水分の偏在を除く。したがって、悪寒、身体および四肢の関節痛などを治す。
→八味地黄丸(補陽剤)/牛車腎気丸(補陽剤)、桂枝加朮附湯(利水剤)、桂枝加苓朮附湯(利水剤)、麻黄附子細辛湯(解表剤)、四逆湯(温裏剤)、真武湯(利水剤)、天雄散などの薬に配合
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防已 ぼうい Sinomenium Stem and Rhizome
- オオツヅラフジ(ツヅラフジ科)のつる性の茎及び根茎を乾燥させ、通例、横切したも性
- 性:寒、味:苦・辛、帰経:膀胱・肺
- 薬理作用:袪風利湿・清熱
- 薬効:主として水分の偏在・代謝障害を治す。
- 漢方では下半身の浮腫、関節水腫、腹水に対する利尿、また関節痛、リウマチに対して鎮痛を目標に用いられる。
→防已黄耆湯(利水剤)、疎経活血湯(利水剤)、柴苓湯(和解剤)
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防風 ぼうふう
- セリ科(Umbelliferae)のボウフウSaposhnikovia divaricata Schischkinの根及び根茎(関防風、東防風)、川防風、雲防風などの根
- 風邪を防ぐ重要な生薬として、お屠蘇にも古くから用いられてきた。
- 神農本草経上品に収載されている。
- 古書に「風邪を治療する最要のものだから」と名前の由来が説明されている通り、ボウフウには発汗・解熱作用があり、四季を通じて感冒による頭痛、悪寒、発熱や予防薬として使われる。
- 性:微温、味:辛・甘、帰経:膀胱・肝・脾
- 薬理作用:祛風解表・祛湿解痙・止瀉止血
- 痛みを止める作用もあり、関節炎・筋肉痛・身体疼痛・リウマチなどに用いられるほか、消炎・排膿作用があるので、湿疹や皮膚のかゆみ、皮膚が化膿する病気の場合には、薄荷や荊芥などの生薬と合わせて使われる。
- 有効成分:抗ウイルス作用、解熱作用、消炎鎮痛作用、血圧降下作用、胃粘膜を守る作用、関節炎を抑制する作用などがあることも薬理実験で報告されている。薬酒に合う生薬で、独特な香りの精油成分がアルコールによって効果的に引き出される。
→疎経活血湯(利水剤)、大防風湯(利水剤)
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芒硝 ぼうしょう salt cake; Glauber’s salt; mirabilite
- 硫曹石 Mirabiteを再結晶精製したもの(NaSO4・10H2O)
- 主として硬くなっているものを軟らかくする。したがって、宿便のあるもの、大便の硬いものを治す。(薬徴)
- 排出する(瀉)ための処方:瀉性薬、下げる(降)ための処方:降性薬:瀉下薬
- 薬能:大黄と同様に瀉下作用、清熱作用
- 大黄とはことなって、「潤」作用があり、酸化マグネシウムのように、腸管内での水の再吸収を抑えることで、便に水分を与え、瀉下作用を発揮する。
→防風通聖散(表裏双解剤)、桃核承気湯(駆瘀血剤)、大黄牡丹皮湯(だいおうぼたんぴとう)、大承気湯(だいじょうきとう)、通導散(駆瘀血剤)など
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樸樕 ぼくそく QUERCUS CORTEX
- クヌギ、ナラ、カシワなどQuercus属の樹皮
- 別名を土骨皮(どこっぴ)という。 ←→地骨皮
- 樸樕の別名として土骨皮があるが、これは日本独自の名称と考えられている。一方、現在の中国の「土骨皮」はクマツヅラ科(最新の分類ではシソ科)白花灯籠Clerodendrumfortunatum L.の根あるいは根皮であり、清熱解毒薬として用いられる。この植物はクサギC.trichotomum Thunb.
- 大伴家持は「紅はうつろふものそ橡のなれにし衣になほ及かめやも」と歌い、退色しやすい紅の衣を遊行女婦、橡の慣れ親しんだ衣を妻に例え、部下の浮気を戒めた。この橡(つるばみ)はクヌギと考えられている。
- 性味も薬能もはっきりわかっていない。
- クヌギ科というと外皮はザラザラした手触りなので、あるいは形象薬理学的に似た状態の皮膚を治するということかもしれない。
- 主要成分:タンニン類、クマリン類(スポコリン)、フラボノイドなど
- ボクソクは多量のタンニンを含み、収斂・解毒の効能がある。また浅田宗伯は治打撲一方の主薬は萍蓬(川骨)と樸樕であるとし、樸樕は骨が疼くような痛みを解消する効能があるとしている。
- 活血、解毒作用がある。
- 薬能:血液の停滞、循環障害、皮膚の化膿性疾患、打撲損傷による血液のうっ滞に効がある。
→治打撲一方、十味敗毒湯(清熱剤)
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牡丹皮 ぼたんぴ moutan bark
- ボタン科ボタンの根の皮を乾燥したもの
- 成分のペオニフロリンは腸内細菌でペオニメタボリンに代謝されて効果を発揮する。腸内細菌には個人差があるため、効果に個人差が生じるといわれている。
- 性:微寒、味:苦・辛、帰経:心・肝・腎
- 化瘀薬@駆瘀血薬
- 薬理作用:清熱涼血・活血祛瘀
- 特異な芳香と微かに苦味と辛味がある。
- 服用後、寒涼感を覚え、熱を冷ます作用をもつ涼薬
- 消炎、止血、鎮痛などに効果がある。
- 牡丹皮と芍薬はボタン科で、共に婦人病の漢方には欠かせない重要な生薬
- 婦人病や下腹部、下肢、腰部の化膿症に用いられる薬方に配合される。
- 駆瘀血剤:瘀血は牡丹皮によって改善される。
- 成分として、モノテルペノイドのペオニフロリン、ペオノール、ペオノサイド、ペオノライド、安息香酸、ベンゾイルオキシペオニフロリン、ステロイドのカンペステロールなどが含まれている。
→加味逍遙散(和解剤)、桂枝茯苓丸(駆瘀血剤)、六味丸(滋陰剤)/八味地黄丸(補陽剤)/牛車腎気丸(補陽剤)
ペオニフロリン paeoniflorin
- シャクヤク(Paeonia lactiflora)の根、ボタンの根の皮やサツマイモに含まれるモノテルペン配糖体
- 止血や血小板の生成に有効
- 鎮痛作用、記憶障害改善(空間認知障害に対する作用)
- 薬理作用としてラット生体位胃運動と子宮運動を軽度に抑制し、また甘草成分グリチルリチンとの併用によりマウス横隔膜神経標本において相乗的に作用し、筋弛緩作用を示すことが報告されている。
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ペオノール paeonol
- 牡丹皮に含まれているフェノール類
- 加味逍遙散の精油成分?
- 薬理作用として鎮静、運動量抑制、体温下降、解熱、抗痙攣作用が知られ、他に血小板凝集抑制、止血など駆瘀血作用に関連すると思われる作用も報告されている。
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ペオニメタボリン paeonimetabolin
- シャクヤクの成分であるペオニフロリン及びペオニフロリン代謝物
- ペオニフロリンは、有効成分と糖が結合した形で漢方薬の中に存在し、人の腸内の腸内細菌が作る酵素によって糖が切り離され有効成分ペオニメタボリンとなり吸収され、本来の効果を発揮する。こういった働きをしてくれる腸内細菌を資化菌と言う。漢方薬に用いられる生薬を資化できる腸内細菌は、少数派なので人によって個人差がある。今まで芍薬の成分を服用していなかった人は、ペオニフロリンを分解できる資化菌は少ないが、服用回数が増すごとに資化菌も徐々に増え、効率的に吸収できるようになる。
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牡蛎=牡蠣 ぼれい oyster shell
牡蛎の『蛎』の字は『蠣』の略字
- イタボガキ科のオウミガキ、イタボガキ、コケゴロモ、マガキ、イワガキ、オハグロガキ、ケガキ、カキツバタガキなどの左殻
- 日本ではカキ全体を通して「牡蠣」と書くが、本来牡蠣とはカキの貝殻のことを指す。中国ではカキ肉のことを「蠔」と書き、生薬としては「牡蠣肉」という。
- 神農本草経の上品に収載されている漢薬
- 主成分:炭酸カルシウム、種々のミネラル分を含んでいる。
- 性:微寒、味:鹹・渋、帰経:肝・胆・腎
- 薬理作用:重鎮安神・平肝潜陽、収斂固渋、軟堅-散結・制酸止痛
- 鎮静、制酸、収斂、利尿、止渇、止汗などに効果がある。
- 精神を安定させて鎮静する安神作用がある。驚きやすい、動悸、不眠にも効果がある(鎮心寧神)。止汗作用もある。
- 胸腹の動悸に有効である。
→柴胡桂枝乾姜湯(和解剤)、柴胡加竜骨牡蛎湯(安神剤)、桂枝加竜骨牡蛎湯(安神剤)
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麻黄 まおう Ephedra Herb, ma huang ←→エフェドリン
- Ephedra sinica Stapf, Ephedra intermedia Schrenk et C.A.Meyer 又は Ephedra equisetina Bunge (Ephedraceae マオウ科)の地上茎
- 成分:アルカロイド:(l)-ephedrine、(d)-pseudoephedrin、ephedroxane
(l)-norephedrine、(l)-N-methylephedrine、(d)-N-methylpseudoephedrine
その他:オキサゾリジン誘導体、フラボノイド、タンニンなど
- 性:温、味:辛・微苦、帰経:肺・膀胱
- 薬理作用:発汗解表・宣肺平喘・利水
- 乾かす(乾)ための処方
- 薬能:主として喘息様の呼吸困難、咳嗽、浮腫を治す。また、悪寒の弱いものや強いもの、汗が出ないものも治す。(薬徴)
- 麻黄は「水をさばく」生薬であるが、組む相手によって、さばく方向が変わる。
→麻黄湯(解表剤)、小青竜湯(解表剤)、麻黄附子細辛湯(解表剤)、葛根湯(解表剤)、越婢加朮湯(利水剤)、薏苡仁湯(利水剤)、葛根加朮附湯(利水剤)、五積散(表裏双解剤)、防風通聖散(表裏双解剤)
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木通 もくつう
- アケビ Akebia quinata Decne. 又はミツバアケビ A. trifoliata Koidz.(アケビ科 Lardizabalaceae)のつる性の茎
- 「木通」は『神農本草経』の中品に「通草」の原名で「悪蟲を去り、脾胃の寒熱を除き、九竅、血脈、関節を通利し、人をして忘れざらしめる」と記載された生薬で、竜胆瀉肝湯(清熱剤)や当帰四逆湯などの処方に配合されている。
- 主要成分:サポニン類(アケボシド)など
- 性:寒、味:苦、帰経:心・肺・小腸・膀胱
- 薬理作用:降火利水・通乳
- 薬効:利尿、通経、消炎
→竜胆瀉肝湯(清熱剤)、当帰四逆加呉茱萸生姜湯(温裏剤)、当帰四逆湯
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木香 もっこう SAUSSUREAE RADIX
- キク科の雲木香、越西木香、川木香などの根を乾燥させたもの
- 主要成分:セスキテルペノイド(コスツノリド、デヒドロコスツスラクトン)など
気分を落ち着け、痛みを止める。
- 性:温、味:辛・苦、帰経:肺・肝・脾
- 理気薬
- 鎮痙作用、降圧作用、抗菌作用、木香整腸作用
- 薬能:行気止痛、温中和胃、健脾、疏肝解鬱 飲食の不摂生による激しい嘔吐、下痢、感染性下痢などを治す。(一本堂薬選)
→帰脾湯、加味帰脾湯(気血双補剤)、女神散
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薏苡仁 よくいにん yokuinin
- ハトムギは外から「殻→薄皮→渋皮→子実」となっていて、渋皮を取り除いたもの
(ハトムギの殻は固く食用には向かないため、脱穀前のハトムギは煎って、ハトムギ茶として飲用されている。)
- 性:微寒、味:甘・淡、帰経:脾・胃・肺
- 薬理作用:利水滲湿・清熱・排膿・除痺・健脾止瀉
- 体にたまった水分をさばき、痛みを取る作用があり、腫れて熱をもっているような関節痛や筋肉痛、神経痛などに用いられる。関節リウマチの関節痛、筋肉痛などにも使われる。体力は中くらいの人に向くとされる。
→薏苡仁湯(利水剤)、桂枝茯苓丸加薏苡仁(駆瘀血剤)
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竜眼肉 りゅうがんにく LONGAN ARILLUS
- ムクロジ科リュウガンの果肉(仮種皮:直径2㎝ほど)を乾燥させたもの
- ライチをひとまわり小さくしたようなコロンとした丸い果物。果皮は茶褐色で、果肉部は中央に大きな種子があり、半透明の果肉から種子が少し透けて見える様子を竜の目に見立てて「竜眼」の名が付けられたといわれている。「肉」とは、果肉・実のことをあらわしている。
- 性:温、味:甘、帰経:心・脾
- 補血薬
- ショ糖、ブドウ糖、有機酸、サポニン等が含まれ、鎮静・健胃・滋養強壮の作用があるとされる。
- 気血両虚、安神作用
→加味帰脾湯(気血双補剤)
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竜骨 りゅうこつ dragon bone herb powder, long gu
- 竜骨の基原となるのはゾウ、サイ、馬、鹿、猪、牛などの仲間である。ナウマンゾウのように絶滅してしまった動物も多い。
- 煮た牛骨等を粉砕し、石灰水に浸けてザラザラした感じにした偽物の竜骨もある。本物は舐めると舌に吸い付く感じがするという。本物は化石であり、化石は多孔質なため水分を吸着しやすいからである。
- 亀甲獣骨文字(甲骨文字)は、竜骨を持病の治療薬として求めた王懿栄が、文字の書かれた骨から発見したといわれる。また、北京原人の化石は竜骨の産地である周口店竜骨山で発見された。
- 成分は、炭酸カルシウム(50〜80%)、リン酸カルシウムなどである。
- 性:平、味:甘・渋、帰経:心・肝・腎
- 下げる(降)ための処方:降性薬:鎮静薬、止汗薬
- 薬理作用:鎮静安神・固精・平肝潜陽
- 精神を安定させて鎮静する安神作用がある。驚きやすい、動悸、不眠にも効果がある(鎮心寧神)。止汗作用もある。
- 臍下の動悸に有効である。
- 収斂作用がある。
→桂枝加竜骨牡蛎湯(安神剤)、柴胡加竜骨牡蛎湯(安神剤)
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竜胆 りゅうたん japanese gentian
- トウリンドウ(リンドウ科)の根及び根茎を乾燥させたもの
- 成分:セコイリドイド配糖体(gentiopicroside、trifloraside、swertiamarin、gentianine)、キサントン誘導体(gentisin)
- 糖類:gentianose、sucrose
- 性:寒、味:苦、帰経:肝・胆
- 薬理作用:清熱燥湿・瀉火定驚(瀉肝)
- 瀉肝は肝気が停滞して熱化した肝火上炎を瀉して(移動させて)、熱を冷ます薬能
- 薬効:苦味健胃、胃液分泌促進作用、鎮痛作用、抗アレルギー作用
→竜胆瀉肝湯(清熱剤)、疎経活血湯(利水剤)、加味解毒湯(かみげどくとう)など
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良姜 りょうきょう =高良姜 こうりょうきょう
- ショウガ科のコウリョウキョウの根茎を乾燥したもの
- 姜の字が示すとおり,原植物はショウガ科植物に由来する。ショウガ科植物由来の生薬には他に、生姜、鬱金、莪朮、しょうずく、縮砂などがあり、それらは一般に根茎や種子に芳香と辛味を有す。その中で、良姜とショウガを加熱後乾燥した乾姜は、中医学ではともに散寒薬に分類され、散寒止痛、温中止嘔に働くよく似た薬物とされる。両者はともに脾胃に作用するが、作用する臓腑に違いがあり、良姜は胃寒による浣腹冷痛、噫気嘔逆に適するのに対し、乾姜は脾寒による腹痛瀉泄に適するとされる。
- 成分:モノテルペノイド(シネオール)、フラボノイド(ガランギン)、その他(ガランゴール
- 性:熱、味:辛、帰経:脾・胃
- 薬能:胃が冷えて、腹痛があるものを治す。停滞した食物を消化する
→安中散(温裏剤)
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連翹 れんぎょう
- レンギョウ Forsythia suspensa Vahl(Oleaceae)の果実
- 主要成分:トリテルペノイド、リグナン類(フォルチシアシド)、フラボノイド(ルチン)、その他(レンギョール)など
- 性:微寒、味:苦、帰経:心・胆
- 薬理作用:清熱解毒
- 服用後、寒涼感を覚え、熱を冷ます作用をもつ涼薬
- 薬効:清熱解毒作用、消炎作用、排膿作用、利尿作用、解熱作用
- 薬理作用:抗菌作用、抗アレルギー作用
- 外感風熱による感冒の初期症状である発熱、頭痛、口渇の治療に使用される。
→防風通聖散(表裏双解剤)、荊芥連翹湯、柴胡清肝湯、銀翹散、治頭瘡一方
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蓮肉 れんにく
- ハス Nelumbo nucifera Gaertner(Nymphaeaceae)の通例、内果皮の付いた種子でときに胚を除いたもの
- 主要成分:アルカロイド(ロツシン)、タンパク質、でんぷん、脂質類など
- 性:平、味:甘・渋、帰経:脾・腎・心
- 補脾薬
- 薬能:下痢が長くつづいてしまりのないものを治す。
- 健脾止瀉:参苓白朮散・啓脾湯、養心安神:清心蓮子飲(清熱剤)
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鹿茸 ろくじょう
- シベリアジカ、マンシュウアカジカ、マンシュウジカ、ワピチの雄の幼角
- 鹿の袋角:毎年春に脱落後の再生したての時期のもの
- 鹿の牡の幼角を酒に蒸して薄く輪切りにしたもの
- 成分:ニカワ、たんぱく質、カルシウム、リン、マグネシウムを含む灰分、極少量の男性ホルモン
- 性:温、味:甘鹹、帰経:肝・腎
- 補陽薬@温裏補陽薬
- 心機能活性、頭痛、腰膝の衰弱、慢性病や易疲労感、脱力感に、また低血圧症、更年期障害、精神安定にも効果がある。鹿茸大補湯
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和羌活 わきょうかつ ARALIAE CORDATAE RADIX
- ウコギ科(Araliaceae)のウド Aralia cordata Thunbergの根
- 主要成分:ジテルペノイドなど
- 薬能:風、寒、湿による疼痛、感覚麻痺、冷えなどの痺症を治す。
→二朮湯(利水剤)
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