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DUNE

Directed by Allen Smithee

CAST


感想

この映画はいくつかヴァージョンがあるらしく、ややこしい。 David Lynch監督のやつが1984年に映画館で上映されたヴァージョンらしい。 どうもおれが見たのは、Allan Smitheeという人が編集した「4時間ヴァージョン」 というやつのようだ(実質的には3時間とちょっと)。

話は、あまりよく覚えていないのだが、 まず、宇宙を支配しているのは、皇帝シャダム四世という人で、 その下でアトレイデス家とハルコーネン家という二大勢力が争っている、 という構図があるようだ。 そして、強力になりつつあるアトレイデス家を恐れて、 皇帝とハルコーネン家が手を組み、アトレイデス家を滅ぼそうと企む。 アトレイデス家のレト公爵はハルコーネン男爵の仕組んだ罠にかかって殺されるが、 その息子のポールは、超人的な力を獲得し、 皇帝とハルコーネン家を徹底的に痛めつけることによって、 見事に父の復讐を成し遂げる、ってな筋書き。

スターウォーズを十倍地味にしたような映画で、 製作費は相当使ったらしいが、 山場というべきものがなく、 終わり方もあっけなく、 ひどくつまらない出来になっている。 原作のデューンファン(ウェブで調べたところ、熱狂的ファンが相当いるらしい)も、 多くはこの映画に失望したようだ。 興業成績も良くなかったそうで、 娯楽映画としては完全に失敗だろう。

ただ、スティングを見たい、とか、 TOTOの音楽を聴きたい、とか、 スタートレックの艦長を見たい、とかいうのだったら見る価値があるかも。

フランク・ハーバートの原作の方は、 ネビュラ賞とヒューゴー賞を取ってるみたいだから、 おそらくおもしろいのだろう。そのうち読もう。

ところで、 映画の中で何度も使われる`The sleeper must awake.' (眠れる者は目覚めなければならない) というセリフは非常に印象的だった。かっこいい。


関連リンク


01/17-18/99

C


THE FIFTH ELEMENT

Directed by LUC BESSON

CAST


感想

ストーリーは単純。 地水火風の四元素に加えて、 第五の元素(フィフス・エレメント)に 善ないし愛が加わればめでたしめでたしなのだが、 善の代わり悪ないし憎が加われば、 宇宙中の生は死に絶えてしまう。 そこで、 悪玉であるゾーグが邪悪な野望を達成しようとするのを、 善玉であるブルース・ウィリスと 彼女自身がフィフス・エレメントであるリールーが 喰い止めようとする、という勧善懲悪な物語。

ストーリーはこのように徹底して単純なのだが、 展開は秀逸。 特に、キャラクターがみな面白い。 最後まで飽きずに見れる。 『スターウォーズ』に代表されるようなSF映画のパロディというか、 メタな視点というか、軽妙洒脱というか、アカ抜けているというか、 とにかくセンスの良い映画だと思う。

善悪が完全に二元化されていて、 その二つの葛藤がないのがもの足りない気がするが、 もともとそういう話にする気はないのだろう。 その意味では、 道徳よりも映像の美しさ、 内容よりも楽しさを優先した映画と言えそう。

娯楽映画が好きな人にお勧め。 第50回カンヌ映画祭(1997年)のオープニングの映画だったらしい。


関連リンク


01/13/99

B+


DAY OF THE DEAD

Directed by GEORGE A. ROMERO


あらすじ

近未来。米国のほとんど地域はゾンビに支配されている。 科学者のサラはわずかに生き残った人々の一人であり、 他の科学者や民間人、および軍隊の人間と地下シェルターで暮している。 科学者たちは、ゾンビを無害にする方法を模索しているが、 うまく行かないために、 仲間を失なっていらだっている軍隊の人間と何度も衝突する。 すでに全員がゾンビの恐怖によって少し正気を失なっているように見える。 そんなある日に起きた一つの事故によって、 仲間割れが起き、このシェルターもゾンビの支配するところとなる…。 「SFショックホラー大作」。
(日本語のタイトルは『死霊のえじき』という毒々しいものだが、 原語のタイトルは「死者の時代」ないし「死者の日」という意味である)


感想

恐い。この映画は一度、中一のときに兄に連れられて映画館で観たことがあったが、 改めて観てもやっぱり恐い。恐いよ〜。 去年か一昨年に第一作目の『ゾンビ』を見直したときは、 それほど恐くなかったのだが。

ゾンビはなぜこんなに恐いのだろうか。 メーキャップも結構ちゃちい感じがするし、 ゾンビの振舞い方にも、 最初はいかにも演技くさいものを感じるのだが、 見終わってみると非常に恐い気になる。 一体ゾンビのどの要素が恐いのだろうか。

背後から襲われる恐怖というのは一点だろう。 身体を引き裂かれる生々しい映像というのも恐い。 大勢によってじわじわとしかし確実に追いつめられる恐怖というのも一点。 ゾンビが理性を持たない=われわれには理解しがたい、 それゆえに不気味な存在であるというのも一点。 ゾンビが人間同様に賢かったり、足が速かったりしたらそれほど恐くなかろう。 人肉を食べるという本能的欲求だけを剥き出しにして 手を伸ばして追いかけてくるところに、 恐怖を感じるのではないだろうか。

そもそもわれわれは、なにものかによって「食べられる」 ということに何か根源的な恐怖を抱くのかもしれない。 なにものかによって「殺される」というのもかなり恐いが、 「生きたまま=意識を保ったまま喰われる」というのも同程度か、それ以上に恐い。

ま、とにかくよく出来た映画。 落ちはうまく行きすぎの気もするが、 こんなもんでしょう。 ホラー好きな人はきっとみな観てるだろうから、 SF好きな人にお勧め。 (といってもおれはいくら勧められても二度と観ないだろうが)


09/19/98

B


TRAINSPOTTING

Directed by DANNY BOYLE

Written by IRVINE WELSH (novel), JOHN HODGE (adaptation)

CAST


あらすじ

「人生を選べ。仕事を選べ。キャリアを選べ。家族を選べ。 ばかでかいテレビを選べ、洗濯機、車、CDプレーヤー、 そして電気缶切りを選べ」

主人公のマーク・レントンは、スコットランドの街に住む青年。 仕事もなく他にやることもなく、 友人たちとヘロインを打ってトリップする毎日。 マークはそんな人生にどこか物足りなさを感じている。

麻薬を止める試み、ダイアンとのセックス、 友人の赤子の死、窃盗で懲役をくらう友人、エイズになる友人、 麻薬中毒による幻覚…。

マークはそんな生活が嫌になってロンドンに出て働く。 しかし、友人たちが彼のフラットに住みついて、また生活が逆戻り。 マークたちは、友人のトミーがエイズで死んだために元の街に戻る。 そこで偶然2キロものヘロインを手に入れ、 ロンドンで元手の何倍かの値段で売りさばき、大儲けをする。 儲けは友人たち4人で山分けということになっていたのだが、 最後にマークはある行動を取る…。


感想

スピード感がすごい。最後まで一気に突き進む感じ。退屈しない。 マークの人生は、はたから見るとかなり悲惨なものに思えるのだが、 エンディングも含めて、全体的には前向きな内容となっている。 ウンコねたには爆笑。

ライフスタイル、服装、音楽、いろいろかっこいい映画。 こういうのが現代の若者なのか:-) 元気が出る映画なので、特に気持ちが沈んだ人にお勧め。

マーク役の人は『ブラス!』にも出ていたが、なかなかかっこいい。 ベグビー役の人は『フル・モンティ』では主人公をやってた。 この映画では喧嘩好きのかなり危ない奴だが、 そっちの映画ではちょっと頼りなさげなおじさんを演じていて好感がもてた。


関連リンク


09/13/98

B+


SCREAM 2

Directed by Wes Craven

Written by Kevin Williamson

CAST


あらすじ

大学生になったシドニーの周りで再び連続殺人が起こる。 犯人は彼女の身近な人間らしい。 一体誰が…?


感想

『スクリーム』第一作目を見ていないので、 よくわからないところもあるのだが、 この作品に限っていうと、 どこが新しいのかわからない、 凡庸なホラー映画のように思えた。

『13日の金曜日』シリーズなどと比較して考えると (残念ながら、ホラー通ではないのでこういう作品しか知らない)、 「犯人は誰だ?」というミステリの要素が入っているらしいが、 話の流れを追っていく限りでは、誰が犯人だか推理のしようがない。 途中で誰が犯人か論理的にわかった人がいるとは思えない。 (犯人は複数の可能性があり、消去法でアリバイのある人間を一人ずつ消すことも 難しい)

「続編は一作目に比べてつまらない」とか、 「こういう話では、黒人が真っ先に殺されるものだ」とか、 登場人物たちの自己言及的な発言は楽しめた。 第一作目の話がこの映画の中で映画化されている、 というのも自己言及的だ。 おそらく、いろいろなホラー映画を知っていれば、 ほかにもさまざまなパロディに気づいたにちがいない。 こういうところがこの作品の見どころなんだろうか。

ただ、怖かったのはたしか。 エンディングは大したことはないが、 途中までは椅子から飛び上がりそうな恐いシーンもあった。 ホラー映画通の人におすすめ。


関連リンク


08/29/98

B


RESERVOIR DOGS

Written and Directed by Quentin Tarantino

CAST


あらすじ

宝石店に強盗に入ったギャングたちは、 仲間の中に「警察のイヌ」が入っていたために、 大ピンチに陥いる。 命からがら集合場所の倉庫に集まってきたギャングたちは、 だれが「警察のイヌ」なのかをめぐって、仲間割れを始めるが…。


感想

よくできている。まず、構成がよい。 いきなり物語のクライマックスを持ってきて、 それから過去の出来事を挿入していくやり方が小気味良い。

また、あの倉庫が主な舞台となって、登場人物が出たり入ったりするところも、 古典的な劇のようで見ていて面白い。 観客はあたかも倉庫の中で傍観しているような気にさせられる。

結末もどうなることやらとはらはらさせる。 構成がよいせいか、1時間半があっという間に過ぎてしまう。

いかにも現代風の、面白くてクールな作品。 ギャングもの、ヤクザものが好きな人におすすめ。 知的興奮は少ない。


08/17/98

B


ALIEN RESURRECTION

Directed by Jean-Pierre Jeunet

CAST

三条に『エイリアン4』を観に行った。 おっきなスクリーンでホラー物を見るのは久しぶりだったので、 こわい恐い怖い。途中2回もトイレに行ってしまいました:-)
(ひと気のない文学部の建物に入るときも恐かった--おれって小心)

ドンパチは少ないけど、 エイリアンはリアルだし、 とくに水中シーンはかっこよかったなあ。 「強い」リプリーがもっとはでに暴れてくれると面白かったんだけどね。

クローン技術や(マッドな)科学者に対する 一般のアメリカ人(というのは存在しないかもしれないが) の感情っていうのはあんな感じなのかな。

たぶんシリーズの中では『エイリアン2』が一番面白かったと思うが、 今回のも見て損はないでしょう。


05/19/98

B


Diva

Directed by Jean-Jacques Beineix

Cast

Frederic Andrei .... Jules

Richard Bohringer .... Gorodish

Wilhelmenia Fernandez .... Cynthia Hawkins

Jacques Fabbri .... Jean Saporta

Dominique Pinon .... Le Cure

Gerard Darmon .... L'Antillaes

Thuuy An Luu .... Alba

1980年代初期のフランス映画。かなり影響力の大きな作品だったらしい。

あらすじ。

郵便配達のバイトをしている美少年のジュールは、ソプラノ歌手のシンシ ア・ホーキンスの大ファン。彼は彼女のリサイタルに行った時、密かにテープ 録音をする。

しかし彼女が大のレコーディング嫌いで、これまでに公式なレコードが発 売されたことがないために、ジュールの録音テープは海賊版を作るレコード会 社の人間に付け狙われることに。

一方、ジュールは麻薬の密売組織の密告内容の入ったテープも偶然に手に してしまう。

そこで二つのテープをめぐって、ジュールは警察・麻薬組織・レコード会 社に追い回されることになる。ジュールはレコード屋で万引きしているベトナ ム人の少女や彼女と共に住むクールなゴロディッシュの助けを借りて、なんと かこの危機を切りぬけようとするが…


と、いいかげんなあらすじを書いてしまったが、サスペンスが効いていて 大変うまくまとまった作品。スキンヘッドのゴロツキを含め、キャラクターの 個性も十分に出ている。(結局ゴロディッシュは何者なのかわからんが…)

音楽も良いし、映像もきれい。パリっていいなあと思わせる作品。いわゆ る佳作というやつではないだろうか。


いくつか関連するリンクを下に記す。


09/09/97

86/100


Crash

Produced and Directed by David Cronenberg

Cast

James Ballard...James Spader

Helen Remington...Holly Hunter

Vaughan...Elias Koteas

Catherine Ballard...Deborah Kara Unger

自動車事故に性的快感を感じる人々の話。原作はJ.G.Ballardというイギリ ス人の作家の本で、彼はスピルバーグの『太陽の帝国』の原作の作者でもある らしい。

バラード夫妻はありきたりのセックスに物足りなさを感じている。ある日 夫のジェイムズは交通事故に遭い、それがきっかけでヘレンとヴォーンに知り 合うことになる。

このヴォーンが一番危ない男で、彼はまるでポルノ写真を集めるかのよう に自動車事故現場の写真を集め、ジェームズ・ディーンの死んだ自動車事故の 再現をしたりして性的な喜びを感じている。そして彼を中心にして「自動車事 故フェチ」が集まっている。そこでそのサークルにバラード夫妻も参加するこ とになる。

しかしヴォーン達はビデオや写真などで自動車事故を観るだけでは満足せ ず、自分達で交通事故を起こして死んでいく。まさに彼らは「いって」しまう のだ。

中心人物であるヴォーンが死んだ後、バラード夫妻も故意に事故を起こす が、二人は死ぬことはできず、したがってまだ「いく」こともできない…。


自動車事故に恍惚としたものを感じる、という設定は面白いが、後半は単 調なので疲れた。エンディングも今一つ。

暗いエロティシズムが全編に漂っていた。こういう危ない雰囲気が好きな 人にはたまらない映画なのであろう。

(この映画を観たらなんとなく『セックスと嘘とビデオテープ』を思い出した)


いくつか関連するリンクを下に記す。


09/09/97

71/100


For the Boys

Directed by Mark Rydell

Cast

Dixie Leonard…Bette Midler

Eddie Sparks…James Caan

Danie…Christopher Rydell

第二次世界大戦、朝鮮戦争、ベトナム戦争を通じてアメリカ軍の基地を訪 れ、慰安のためのライブショーをやったディクシーとエディーという男女二人 組の愛憎を描いた映画。やはりアメリカの国策映画といえよう。

戦争が第二次世界大戦、朝鮮戦争、ベトナム戦争と変わって行くに連れ、 だんだんとアメリカ軍の状況も悲惨なものになり、若い兵士たちの心もすさん で行くのは痛々しい。ディクシーは第二次世界大戦で夫を失い、ベトナム戦争 では自分の目の前で唯一の息子が死ぬのを目撃する。

かなり反戦の調子が強い映画。ビデオには1991年と書いてあるから、湾岸 戦争の頃の作品だ。1992年の大統領選挙を控えての民主党よりの映画だったの だろうか?(湾岸戦争やったのって共和党のブッシュ政権の時だったよね?)

ベット・ミドラーは歌がうまいので好き。今回はどぎついジョークを飛ば す役柄で、それも面白かった。しかし『ローズ』にしろ今回の映画にしろ、何 かもう一つ冴えない気がする。映画そのものがいまいちなのかも知れない。

あと、彼女の歌うIn My Lifeは今一つだったが、字幕の歌詞の訳が映画の 内容に合うようにひどく意訳されていたのはやりすぎだと思った。

ずいぶん長い映画だったが、アメリカの歴史と文化史の勉強になる。『フォ レスト・ガンプ』が好きな人にはお勧めの映画。

09/07/97

80/100


Subway

Directed by Luc Besson

Cast

Helena…Isabelle Adjani

Fred…Christophe Lambert

Le Fleurist…Richard Bohringer

Le Roller…Jean-Hugues Anglade

Le Batteur…Jean Reno

リュック・ベッソン監督の1987年の映画。退屈はしなかったがほとんど意 味のない映画。イザベル・アジャーニが出ていなかったらほんとに退屈だった んじゃないだろうか(それほど好きなタイプではないが)。

ま、ジャン・ユーグ・アングラードやジャン・レノなどが出てて楽しいが、 パンク的な生き方をしてパンク的な死に方をする主人公(リチャード・ランバ ルトって読むのかな)に共感するわけでもなし、同情するわけでもなし、ほん とに何が言いたいんだかわからない映画。

とはいえ、退屈はしなかったけどね。

09/03/97

70/100


Mars Attacks!

Directed by Tim Burton

Cast

President Dale / Art Land…Jack Nicholson

Donald Kessler…Pierce Brosnan

Jason Stone…Michael J. Fox

Taffy Dale…Natalie Portman

コメディ映画としては、今一つだった。おそらくいろいろな映画やSF小説 などのパロディがあったのだろうが、いかんせん知識不足のためほとんどわか らなかった。

マイケル・J・フォックスが死ぬのには驚いたが、大統領役のジャック・ニ コルソン(一人二役してたのね)が殺される辺りは筋が見え見えで、ちょっと疲 れてしまった。(火星人が「われわれはあなたと友達になりたい」と言いなが ら人間を殺しまくるシーンは面白かったけど)

この映画には何かモラル(教訓)があるのだろうか。

異文化に対する警戒心を忘れてあまりにも博愛的、平和的になっている人 間への警鐘?

それともあの火星人は、言うこととやることが裏腹で理解不可能な日本人 のカリカチュア?

あるいは監督のティム・バートンがただ単にカントリー音楽が嫌いだっただけ?

(ディテールへのこだわりもそれほど見られないし)単なるアメリカの子供 向けの映画のような気がするが、どうであろうか。

09/02/97

73/100


The Name of the Rose

Directed by Jean-Jacques Annaud

Produced by Bernd Eichinger

A Palimpsest of the Novel by Umberto Eco

Cast

William of Baskerville…Sean Connery

Bernardo Gui…F. Murray Abraham

Adso of Melk…Christian Slater

The Girl…Valentina Vargas

邦題は『薔薇の名前』。イタリアの記号論学者ウンベルト・エーコの小説 が原作(エーコが発見した本を彼が写本した、という設定か)。原作は世界で 500万部以上売れているらしい。『ソフィーの世界』の先駆というべきか。

内容は中世のベネディクト会修道院で起きる怪奇的な殺人事件の謎解きを、 フランチェスコ会修道士のウィリアムが鋭敏な合理的知性を持って挑む、とい うインテリが泣いて喜ぶホラー推理映画である。ただし原作は単なるサスペン スものではなく、もっと複雑でウンチクのある奥深い内容なのだとか。そのう ち読もう。

謎解きは今一つひねりが欲しいところだが、映像は迫力満点である。中世 哲学史の勉強の参考のために最適な映画かも知れない。

また、意味深なタイトルが気になるところだが、これは映画の最後に出て くる次の一節(ラテン語)から取られているようだ。

stat rosa pristina nomine, nomina nuda tenemus

ものの本によると、これは12世紀クリュニー派のフィリップ・モーレーの 詩の一節であるそうだ。堀越孝一という人の訳では「きのうの薔薇はただその 名のみ、むなしきその名をわれらは持つ」となっていて、女性への愛の虚しさ を歌った説教詩の一節らしい。映画のラストもこの句のこの理解に沿って作ら れていると言える。

しかし、どうやらウンベルト・エーコはこの一節に新たな解釈をほどこし、 おそらくは中世哲学の「普遍論争」と関わりを持つような意味を与えているよ うである。が、それは原作を読まなければ分からないであろう。

なかなかおもしろい映画であった。ショーン・コネリーもカッコ良いし。 何より勉強になった。

(参考: Cinema square Magazine No. 56, 1987)

08/04/97

88/100


Independence Day

Produced by Dean Devlin

Directed by Roland Emmerich

Cast

Capt. Steven Hiller…Will Smith

President Thomas J. Whitmore…Bill Pullman

David…Jeff Goldbaum

Connie…Margaret Colin

Jasmine…Vivica A. Fox

Russell Casse…Randy Quaid

けなす前に言いたいが、とてもおもしろかった。一度は観る価値あり。『グーニーズ』を観て以来の圧倒的な興奮を味わった。

しかし良く考えると、いろいろ思うところがある。

まず、エヴァンゲリオンはいろいろなアニメの良い部分を取ってきて貼り 合わせた、というところがあるそうだが、この映画もそんなところが多分にあ る。スターウォーズとか、エイリアンとか、トップガンとか、インターネット とか。(最後のは違うか)

また、撮影が迫力感に溢れているので観ている間は気付かなかったが、地球侵略SFとしては展開がやたらと陳腐。エイリアンの設定も安易すぎる気がする。もっといろいろな形の交流があっても良かったのではないか。エンディングもかなり強引。二時間半で大団円を迎えるにはちょっと内容を詰め込みすぎの感がある。

さらに、日本人のぼくが見ると、アメリカの愛国根性のあからさまなところが非常に鼻に付く。大統領の美化。国のため、家族のために死んでいく兵士たちを「勇敢だった」と誉める一方で、あまりにも無批判な戦争肯定。冷戦が無くなったのでわれわれの次の敵はエイリアンだ、といわんばかりの内容(ロシア人に代わってエイリアンが冷酷残忍な悪役にされる)。不仲になっている夫婦が事件を通してよりを戻す、というお決まりの副旋律。日本人にとっては無意味な7月4日。これではまるで国策映画である。

ところで、この映画を観ながらふと、ハーディンの救命ボート倫理や、ギリシアにおける市民的価値と個人的価値の葛藤(これって現代のアメリカの状況でもあるじゃん、と思った)、という最近勉強していたことを思い出した。これは完全に余談。

ま、とにかくいろいろとけちをつけてみたが、撮影はやはり圧巻である。UFOが都市の上空に来てパニックになり、都市が破壊され、残った人々が反抗のために立ち上がり、見事ににっくきエイリアンを退治する…。単純なストーリーを迫力で見せている。

(一応エンターテイメント映画にはあまり高い点数を出さないようにしているので以下の点にしておくが、見て損はしない映画だと思う)

08/01/97

88/100


Brazil

Directed by Terry Gilliam

Produced by Arnon Milchan

Cast

Sam Lowry…Jonathan Pryce

Harry Tuttle…Robert De Nilo

Jill Layton…Kim Greist

邦題『未来世紀ブラジル』(1985)。監督は『マーズアタック』の人。(そい えばこれもそろそろビデオで出るな…)(その後、5級に間違いを指摘されまし た。『マーズアタック』はティム・バートン監督でした)

前評判が高かっただけに、また、ブレイドランナーを先に観ていただけに、 今一つという感じがした。

つまらないと思った原因は、ストーリーに現実味がないせいだと思う。あ まりにとっぴすぎて、わざとらしく、説得力に欠け、素直に映画にのめり込む ことが出来ない。現代批判だとしてもほとんど意味不明である。

また、主人公の性格も良く分からないし、なぜジルが彼に恋するようにな るのかもわからない。エンディングも、雰囲気は決して嫌いではないが、だか ら何なの、という終わり方である。

とにかく、ダックスープ以来の、久しぶりに「不可」をつけたくなるよう な映画だった。あれ、書き出しよりもちょっと厳しいな。

(ところで、タトルがロバート・デ・ニーロだとは、最後まで気付かなかった)

07/22/97

65/100


Money Train

Produced by Jon Peters, Neil Canton

Directed by Joseph Ruben

Cast

John…Wesley Snipes

Charlie…Woody Harrelson

Grace…Jennifer Lopez

Patterson…Robert Blake

痛快アクション物。ジョークが冴える冴える(残念ながら最高におもしろい ジョークのいくつかは、日本語訳が間違っていたが)。音楽も良い。この手の ハリウッド・アクション・ジョーク物では相当良い作品ではないだろうか。日 頃のフラストレーションが吹っ飛びます。まだの人はぜひ観て下さい。

が、感想をこれで終わるとつまらないので、蛇足になるが、素朴な疑問を書く。

果たしてこれと同じ内容の映画を日本で作ることが倫理的に許されるだろ うか。おそらく無理なのではないか。

というのもこの話は基本的に、警察をクビになったばかりの兄弟ジョンと チャーリーが、地下鉄の現金輸送用列車を襲う、という話だからである。しか も犯罪は一応成功裡に終わってしまうのである。

とはいえ、そこはいかにもアメリカらしく、もっとも不正な人間は彼らで はなく、乗客のことなど顧みずひたすら金のことしか考えない地下鉄所長なの であり、全体の筋書きは、彼ら兄弟が列車強盗をすることを通じて所長を懲ら しめる、という典型的な勧善懲悪物なのである。(他に、マフィアっぽい人た ちも登場する。彼らもやはり「悪役」であり、成敗される)

しかしそれでもこの兄弟のしたことがかなり重い犯罪行為であることは変 わらない。しかもそれが成功しているのである。果たしてこのような映画を日 本で作ることが出来るであろうか。

チャーリー役の人は『ナチュラル・ボーン・キラーズ』の主人公だった人。 思えばあの映画もかなり危ない内容だったので、ショックを受けた記憶がある。 「えええ、こんな非道徳的な映画を一般に公開していいのか」って。あれ、お れ最近プラトンの読みすぎかなぁ。

07/19/97

86/100


Blade Runner

Produced by Michael Deeley

Directed by Ridley Scott

Cast

Deckard…Harrison Ford

Batty…Rutger Hauer

Rachael…Sean Young

Pris…Daryl Hannah

原作はフィリップ・K・ディックというSF作家の『アンドロイドは電気羊の夢を見るか』。

近未来SF。アクションとスリラーの要素を抜きにすれば、感情を持ち、死を恐れる人造人間についての哲学的あるいは文学的な考察と言えようか。手塚治虫の『火の鳥』にありそうなテーマである。

自分が人造人間であるということを自覚し、ただいつ死ぬかだけが分からないで悩む人造人間は、ほとんど人間の生きている状況と変わらない。

しかし、これまで自分が普通の人間であると思っていた人造人間が、実は自分が人間でなかったということに気付き、苦悩するのは人間にはない悩みだと言える。(が、自分の育ての親が実は生みの親ではなかった、とかいうのもあるから、人造人間の方が必ずしも悲惨だとは言えないかも知れない…)

人造人間という言葉にはなんとなく悲哀の響きがあるが、実際に作られた場合にもそういう悲しさは生じるのであろうか。人造人間キャシャーンとか。クローンも人造人間の状況に近いか。ま、悩むなら悩め、何もおまえだけが辛いんじゃあないっ、という気もするが。

なかなかSFというのは考えさせられますな。倫理学者も想像力を働かせて、未来を予想して考えなくっちゃいけません。

ま、アクションは今一つおとなしいが、未来の(異常な)風景も良く描かれているし、オチも付いているしで、全体的に良く出来た映画 (この映画は結構カルト的な人気があるらしい)。

07/14/97

87/100


Monsieur Hire

Directed by Patrice Leconte

Cast

Hire...Michel Blanc

Alice...Sandrine Bonnaire

邦題『仕立て屋の恋』。『髪結いの亭主』と同じ監督の作品。

(内容)殺人を犯した婚約者(エミール)を持つアリス。エミールはアリスを 愛していて結婚したいと言っているが、どうもそれは口先だけの様子である。

一方、アリスのアパルトマンを毎日覗く変人イールは、エミールがやった 殺人の犯人ではないかと警察に疑われている。イールはエミールが犯人である 証拠をつかんでいながら、アリスが共犯で逮捕されることを恐れて警察には通 報せず、以前と変わらずにアリスの部屋を覗いている。無口で大の人間嫌いの 彼にとっては彼女を眺めることだけが唯一の喜びであり、幸せなのである。

自分が知らない男に覗かれていることを知ったアリスは、イールがエミー ルの犯罪の目撃者であるかもしれないと思い、さぐりを入れるために彼に気の あるふりをして近づいて行く。しかし、どうやらイールは初めから彼女の下心 を見抜いていたようである――彼はしばらくしてアリスに、自分がエミールの 犯行の目撃者であることを告げる。

明らかにアリスはイールを愛してはいない。不実な恋人でありながら、そ れでもなお彼女はエミールを真剣に愛しているのだ。けれどもイールは、殺人 者であり不実な婚約者でもあるエミールからアリスを救うために、二人でフラ ンス国外へ逃亡する計画を立て、駅で待ち合わせることにする。

だがエミールが警察に追われ雲隠れする身となり、せっぱ詰まったアリス は、約束の当日に駅へは行かずに、イールのアパルトマンに行き、殺人の被害 者のハンドバックを置いてきて彼にぬれぎぬを着せようとする。(ひどいっ)

約束の時間にアリスが現れなかったため、落胆して家に帰ってきたイール は、自分の部屋に刑事とアリスがいることに驚くが、直ちにすべてを悟る。そ して彼はアリスに、自分が彼女を少しも怨んでいないこと、むしろ彼女が自分 にこれまでに与えてくれた喜びに対して感謝していることを告げる。

つまりイールは、彼が誠実に愛を告白した女性によって、考えうる限り最 低の仕打ちをされながらも、彼は彼女のことを怨まないといい、むしろ感謝し ている、と言ったのだ。出来ません、これは普通出来ません。

逮捕されるのを嫌がったイールは警察の追手を振り切って屋上に登り、無 残にもそこから墜落死する。

しかしこれで話は終わらない。

数日後、刑事のところへイールが死ぬ直前に出した手紙が届く。その手紙 には、エミールが殺人犯である証拠となる物品が駅のコインロッカーに入って いること、そして自分はアリスが共犯で逮捕されないように二人で国外へ旅立 つことが記されてあった…。

結局、賢明なるアリスは貧乏くじを引いてしまったのだ。彼女は婚約者の エミールも失い、同時に彼女を絶対に裏切らないと誓ったイールをも失ってし まった。イールはこの結果を予想していたのだろうか。神のみぞ知る。

(感想)最後の方の展開にはどきどきさせられる。アリスに裏切られたこと を知ったときのイールの態度と、そこに現れた彼の愛の大きさには感動させら れた。また、(『髪結いの亭主』にもあったが)遺書となる手紙の内容と、その 手紙によるどんでん返しの効果にも感心した。うまく出来た話だ。

原作の題名は『イール氏の婚約』というのだそうだ。なんとも皮肉な題名である。

暗くて最後に死人が出るフランス映画は嫌いだ、という人には勧められな いが、フランス流悲恋物語が好きな人にはお勧めの一本。個人的には『髪結い の亭主』の方が良かったと思う。

07/06/97

87/100


Dead Man Walking

Produced by Jon Kilik, Tim Robbins, Rudd Simmons

Directed by Tim Robbins

Cast

Sister Helen Prejean…Susan Sarandon

Matthew Poncelet…Sean Penn

Hellen's Mother…Lois Smith(Twisterに出てた)

この映画を観て深く反省。「死刑廃止論を冗談で語ってはいけない」

いや、今まで冗談で語ってたわけじゃないけど、これを観てしまった後で は、もういいかげんなことは書けない。これまでに書いたことも消そうかと思 うくらい、反省しました。これからは一層真剣に死刑廃止論を考えます。

けれども、いいかげんなことを言えないといっても、倫理学を学ぶ者とし て(あるいは人はどう生きるべきかを考える者として)何も言わないわけには行 かない。このトピックを語るのは、人の死がかかっているのだから(ぼくは基 本的に全く無力とはいえ)非常に責任がいるし、難しい問題だから簡単には答 えを出せないかもしれないが、それでも何らかの答えを出さないわけには行か ない。

さてこの映画は、死刑廃止論の人も、死刑存置論の人も、等しく考えさせ られる作品。どちらかに偏っていることはあまりない。もちろん、時間的に言っ て後に殺される死刑囚の方により大きな同情が集まるかもしれないが。(しか しフラッシュバックっていうのかな、あの方法が効果的に使われていて、死刑 囚が実際に殺人を犯した悪人であることを観ている者に何度も思い出させる仕 掛けになっている)

とにかく、しっかり考えて、過去の人々にも将来の人々にも恥ずかしくな いような死刑廃止論をしたいと思う。あれ、なんかいやに真面目になっちゃっ た。

というわけで、死刑制度に賛成の人にも、反対の人にも、お勧めの作品です。

07/04/97

92/100


Mission: Impossible

Produced by Tom Cruise and Paula Wagner

Directed by Brian De Palma

Cast

Ethan Hunt…Tom Cruise

Jim Phelps…Jon Voight

Claire…Emmanuelle Beart

Kittridge…Henry Czerny

Krieger…Jean Reno

Luther…Ving Rhames

Max…Vanessa Redgrave

映画を観た次の日に、お○だくんから、これが「スパイ大作戦」シリーズ の映画版であることを聞いて知る。もっとも、そんなのテレビ観たことないけ ど。

最後の方の内容が良く分からなかったが(アクション性は高いが、サスペン ス性は低いと思う――あまり感情移入できない映画)、ひまつぶし程度には楽 しめた。トム・クルーズは嫌いではない。パート2が出ればつい観るのではな いだろうか。

ところで、ジャン・レノが田中邦衛に似ていると思うのはぼく だけだろうか。それに良く考えれば、田中邦衛はシルヴェスタ・スタローンに も似ているではないかっ。

という発見をした映画でした。

07/03/97

77/100


Satoshi Kodama
kodama@socio.kyoto-u.ac.jp
Last modified on 07/19/97
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