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こだまの世界

2000年10月下旬号

Throughout European history every aspect of the black anatomy and black facial features has been derided and ridiculed. Black bodies were once regarded as little better than animals. In the 19th century, African women such as Sara Baartman, the so-called Hottentot Venus, were stripped naked and put on display in cages like zoo animals. Black men were alleged to have monstrous penises so large as to be a danger to pregnant women. Simultaneously, the race-science of the 18th and 19th centuries stated that the facial characteristics of blacks denoted that they were natural-born criminals, rapists and murderers.

Ben Arogundade, `A darker shade of pale', in ES magazine (27 October 2000), p. 21


何か一言


21/Oct/2000 (Saturday/samedi/Sonnabend)

O my goodness! I can't believe I can use the Local Area Network at this library!!! Hallelujah! Now I'm def coming here every day!

UCLのコンピュータはすべて固定IPを与えられていたので、 自分のラップトップからDHCP接続ができなかった(と思う。忘れた)。 しかし、ここ(某法学研究所)の図書館ではDHCP接続ができるというウワサを聞き、 半信半疑でやってきて試してみた。 すると、おどろくべきことにすんなりインターネットにつながったので、 うれしさのあまり肺と心臓が口からこぼれでてしまった。 これからはここに住もう:-)


22/Oct/2000 (Sunday/dimanche/Sonntag)

一日無為に過ごしてしまう。 どうして日曜日を有効に利用できないのだろう。 いっそのこと日曜日は遊ぶ日と決めた方が精神的によいかもしれない。

昨日は中国人の友人たちに呼ばれ、某寮で中華料理をごちそうになる。 感謝。

日記の整理

ついでにこだま美術館を更新した。 LANが使えるようになったのをいいことに、 大きい写真を大量に使っているので注意。 説明も英語になっているので注意。


23/Oct/2000 (Monday/lundi/Montag)

あれだ、この、LANのソケットにケーブルを差しこんでネットにつながる感覚。 外国から母国に戻ってきたような、 任務を終えた戦闘機が無事空母に着陸するような、 ルー・リードのヘロインのような、強烈な高揚感と安堵感。 自我の拡大。

あれ、おれ何書いてるんだろう? そういえばウィリアム・ギブソンが新しい本を出したようだ。


一日図書館で勉強。といっても大半はコンピュータをいじっていた気がするが。

夜、寮の友人に頼まれて、コンピュータをネットにつなぐのを手伝う。 これで何人目だろう?

手伝うついでにDVDをいじっていたら、 以前某南国で買って不良品だと思っていたQueenのDVDが実は見れることに気づく。 というわけで夜は明りを暗くしてフレディ・マーキュリーを追悼する。 ジョージ・マイケルのSomebody to Loveに感動したり (以前に曲を聴いたことはあったが、ビデオで見るのは初めて)、 These are the Days of our Livesを歌う痩せたフレディ・マーキュリーに涙したり、 ロジャー・テイラーとブライアン・メイが歌うNo One but Youという曲も 名曲だなと思ったり。 フレディ・マーキュリーが死んでからの曲やビデオクリップは いささかお涙頂戴のきらいがあるが、 それでもやはり感動してしまう。 Quite honestly, I miss him very much!

夜、洗濯をする。 乾燥機を開けて洗濯物を袋に入れようとしたら、 手にブラジャーをにぎっていることに気づき仰天する。 汚物からハエやネズミが自然発生するという話を聞いたことがあるが、 まさかおれの洗濯物からブラジャーが自然発生するとは! 神さまありがとうございます。 どういう条件がそろえばブラジャーが自然発生するのか、 しばらく実験してみることにしよう。

(注: ちょっとこの冗談は人格を疑われる可能性があるな。 誓って部屋には持ちかえってません。ほんとです)


24/Oct/2000 (Tuesday/mardi/Dienstag)

授業で取ったノートを復習がてら電子テキストに書き直す(revise) 作業は中止することにした。 時間をやたらと食って予習に手がまわらないし、 自分の役に立つのか疑問だから。 どんどんたまるので胃にも悪い。 気がついたことや大切だと思ったことはここに書きとめておくことにしよう。

午前中から図書館で勉強。 しかしついコンピュータをいじってしまうためはかどらず。まずい。

午後、法哲学の授業に出る。


25/Oct/2000 (Wednesday/mercredi/Mittwoch)

歴史的な読みと対話的な読み

ベンタムの授業。オースティンとベンタムの法実証主義の違いについて。

「歴史的な読み」と「対話的な読み」の区別の話もあった。 歴史的な読みにおいて問われるのは、 「ベンタムは何を考えていたか」という問いで、 他方、対話的な読みにおいて問われるのは、 「君はベンタムに同意するか、しないか」という問い。 対話的な読みをやるには、 あるていどきちんと歴史的な読みができていないといけない。

もっと一般化していうと、 批判する前に相手を理解する必要がある。 (誤解にもとづく批判から新しいものが生まれる場合もあるだろうけど、 だからといって積極的に誤解を勧めるのも変な話だろう)。

しかし、理解しようとばかりしていて、批判できないのも情けない。 というわけで今後は「理解したら反対せよ(understand and disagree)」 をモットーにして生きていこう。

忠誠心についてのセミナー

夜、セミナー。Loyaltyについて。 オクスフォードから呼ばれた先生だったが、 あまりに穏当な内容でつまらなかった。 しかし、 どんな内容でもそれなりの質問ができる人間にならなくてはならない。 (「つまらないです」と質問できる人間にはなれそうにないが…)

利益追求に走るこだま美術館

日本の某週刊誌からメイルが来る。 テムズ川や国会議事堂の写真があれば使わせてほしいとのこと。 ポジかネガを送ってほしいと書いてあるが、 デジカメで撮ったものだからそんなものはない。 かといって友人にカメラを借りて取りに行くのもたいへんなので、 たぶんお流れになると思うが、 しかし採用されたら謝礼が出るというので:-) 一応サンプルを載せておいた。 あ、今回も大きい写真なので気をつけるように。

デジカメを買ってまだ3ヶ月ぐらいだと思うが、 すでに1300枚以上撮っているようだ。 最近はめっきり使わなくなってしまったが。 しかし、135万画素であるせいか、空や雲がきれいに取れないんだよな。


26/Oct/2000 (Thursday/jeudi/Donnerstag)

政治哲学

午前中、政治哲学の授業に出る。 徹底的な平等主義に対しては、 年収1000万の人々と年収500万の人々の住む社会よりも みんな等しく年収100万の状態の方がいいのかという「みんなで貧乏」 (レベリングダウン)の批判が出る。 経済学者なら、「そういう『みんなで貧乏』状態はパレート最適じゃないからだめ」 という風に批判するようだ。

あと、ロールズとパーフィットのプライオリティ論と、 フランクファートの「足れるを知れ」(sufficiency)議論と彼による平等主義批判。 彼によれば、 世の中に平等主義がはびこっているから、 みんなが他人と自分を比べることに夢中になり、 その結果つまらない社会になっているんだそうだ。

某図書館の勉強机

[pict]

最近はこういうところで勉強しています。 ときどきコンピュータを使ったり、ときどき本を読んだり、 ときどき寝たりしています。

現代政治理論

今日はハートと初期ロールズによって展開されたフェアプレイ理論。 「なぜ法に従うべきか」「なぜただ乗り(free-ride)してはいけないか」 という問いに対し、 「世の中みんなの協力で成り立ってるんだから、 恩恵だけ受けて自分の分担をやらないのは不公平でしょ」 と答える理論。 この理論は、 「恩は返さないといけないでしょ」という恩恵理論とも、 「恩恵を受けたってことは暗黙に同意したってことでしょ」 という暗黙の同意理論とも区別されるらしいが、 ほんとに区別できるのか今いちはっきりしない。 公平ってなんなんだろう。

クロスコ(Klosko)という学者の論文を読んでみよう。

脱線事故

また脱線事故があったそうだ。これで三つ目。 これを受けて英国内の150以上の地域で時速20マイル(約32キロ) の速度制限が課せられているらしい。

英国の鉄道は5年ほど前に民営化し、 現在は25の会社が英国内の鉄道を運営しているらしい。 しかし、民営化でサービスや安全は悪化したというのが もっぱらの評判で(国鉄時代のつけが回ってきているという話もある)、 先日の新聞にも通勤者たちの呪いの言葉があふれていた。 「ヨーロッパの鉄道はすばらしいのに、 なぜ英国の鉄道は同じことができないんだ」 とか、「上司に『電車が遅れたので遅刻した』 という言い訳をするのに自分でももうあきあきしている」 とか。

クルスク

やっぱり潜水艦の乗員の一部は沈没のあとも生きていたらしい。 海の底で明りもなく来ないかもしれない救助を待つ、 というのは想像を絶するおそろしい体験だったろう (もともと想像力が貧困なので想像できない)。

さらに、ロシアの軍用機が山に激突して82名全員死亡したらしい。 そのうちミールも資金難で太平洋に落ちてくる予定だそうだ。 赤い羽募金でもしてロシアにお金を送った方がいいのではないか。


27/Oct/2000 (Friday/vendredi/Freitag)

授業料

授業料を収めた。一年間分で約10000ポンドだから160万円。 EU加盟国から来た学生はその3分の1で済む。 異常に高いので、多くの学生は不平をもらしている。 まあ、払った分だけちゃんと大学を利用しないと損だから、 しっかり勉強しよう。 というか、使える設備をちゃんと利用しよう。 寮なんかで勉強していてはいけない。 元を取らねば:-)

不公平と恩知らず

クロスコの論文(PPA, 1987)を途中まで読む。 フェアネスで政治的義務を説明しようとするもの。 彼の主張は、「国家が提供するプライマリーグッズ (どんな人生であろうと必要なもの、たとえば安全、衛生的環境、衣食住など) に関しては、たとえ受けとることに同意してなくても、 いったん受けとったならば、国家に協力する義務が生じる」 という議論。 プライマリーグッズに関しては同意がなくても義務が生じるというのが要点。

同意なしに義務が生じるというのは魅力的(?)だが、 しかしこれが言えたら親に対する子供の義務や、 環境倫理の世代間倫理の問題も簡単に説明できる気がするな。

まだちょっとフェアネスの議論と恩(感謝)の議論が区別できない。 「不公平だ」という非難と、 「恩知らず」という非難はどう区別されるのだろうか。 「不公平だ」は対等な関係を前提していて、 「恩知らず」は上下関係を前提している?

「感謝」の概念についてもう少し勉強しよう。


28/Oct/2000 (Saturday/samedi/Sonnabend)

通行税と不公平

ロンドン市長ケン・リヴィングストンの公約の一つは、 「ロンドン市内を走る私用の車には通行税をかけ交通渋滞を減らす。 また、 その税収を使ってバスや地下鉄などの公共輸送機関をより使いやすいものにする」 というもの。 地下鉄の再生も大きな問題だが、 通行税もかなり論争の多い話題のようである。

ロンドン市民の大半はある程度税金を払うことに同意しているようだが、 問題はどのように税金をかければ公平か、ということ。 一律一日5ポンドにした場合、 市内に住む住民から 「なんで車を持ってるだけで毎日そんなに払わないといけないんだ。不公平だ」 と不平が出るし、 かといって市内の住民を優遇しすぎると、 「なんで市内から100メートルしか離れていない住民には優遇措置がないんだ。 不公平だ」などと市外の住民から文句が出る。 また、商用車には一日15ポンド払わせるという計画は、 「そんなことをしたら経済状態が悪化する」 という商業側からの声によって撤回されたようだ。

今回のような問題はあきらかに「恩返し」「恩知らず」の問題じゃなくて、 「公平」「不公平」の問題だな。

しかしこのシステムに同意しない人に対して税金を払う義務を どうやって説明するんだろう。 いやおうでも巻き込まれるロンドン市民の場合は「投票して決めたんだから、 すくなくとも暗に同意したってことでしょ」 と同意理論を適用できるのかもしれない(投票に行かなかった人は問題だが)。 ロンドンの外に住む人(たとえばパリから車で来た人)の場合は、 「ロンドン市内で渋滞もなく快適に運転するためには、 税金を払うことで協力してもらわないといけない。 協力するのがいやならロンドンには来ないでください」 という風に言えばいいのだろうか。

もうちょっと考えてみよう。友人と議論すべし。

`I've been mugged'

昨夜、寮の同じフロアに住む住人が、寮のすぐそばの通りで辻強盗に遭ったらしい。 真夜中に寮に戻ってくるときに、ナイフを持った5人組に襲われたそうだ。 さいわい金銭的にも身体的にもほとんど被害はなかったようだが。

ロンドンは先進国の中でもっともカッパライ(theft)と辻強盗(mugging) が多いと言われている。物騒な話である。 警察が人不足なのも問題で、 こないだも市内のある地域で24時間営業の交番が半分になった、 という記事が新聞に出ていた。 おれの寮のそばには交番がある気がしないが、 ちゃんとどこにあるか確認しておこう。

The Next Best Thing

近くの映画館に行って映画を見ようと思ったら、 かなり混雑するようなのでやめる。 そのかわりに部屋で以前に某南国で買ったVideoCDを見る。

同性愛の男性とヨガインストラクターの女性のあいだに子供ができ、 結婚しないまま家族を形成するが、 母親が新しい男を作ってしまったので子供のみにくい取り合いになる、 という米国らしい複雑な親子関係を描いた作品。 前半は子供ができて幸せな家族を築くまでのユーモアを交えた話で、 後半は新しい男が入ってきて子供の取り合いになる深刻な訴訟の話。 コミカルな前半とシンコクな後半のつながりが悪い。 終わりもありきたりであっけない。山場はどこにあるのか。 退屈はしないが、感動も少ない映画。C。

『緑色奇蹟』

さらにもう一本観る。The Green Mile。 スティーヴン・キング原作のファンタジー(SF?)作品。 冤罪で死刑宣告された巨大な黒人(ジョン)が、 さまざまな奇蹟を起こしたのち、 ソクラテスのように自ら死刑になることを選んで死んでいくという話。 時代を反映してか、死刑制度に対する批判にもなっているようだ。

長い映画だが、いくつかのエピソードがうまく織込まれていて、 最後まであきさせない。主役も脇役も個性的でよい。 悪が裁かれ善が報われるというような簡単な結末でないのも味わいがあってよい。 全体的によくできた映画。とくにケチをつけるところはないのだが、 大興奮したわけでもないので、B。


29/Oct/2000 (Sunday/dimanche/Sonntag)

夏時間の終わり

今日から時計を一時間戻して通常の時間になった。 日本との時差はこれまでは7時間だったが、これからは8時間。

ロンドン散策

[pict]

[セントジェームズ公園のリス]

午前中は天気が良かったので、オックスフォード通りをえんえんと歩いて ハイドパークに行き、さらにえんえんと歩いてバッキンガム宮殿に行き、 さらに道に迷いつつえんえんと歩いてチャイナタウンで昼ごはんを食べ、 ヴァージンメガストアでCDを5枚買って戻ってきた。 4時間歩いて撮った写真は104枚:-)

寝不足だったので、途中道に迷ったときは死ぬかと思った。 不案内なところではむやみに小道に入ってはいけない。

そういえば、リスではないが、 今年の冬の最新の流行は、 イタリアのデザイナーが作ったハムスターの毛皮のコートなんだそうだ。 なんでも1着4000ポンドのコートを作るのに、 100数匹のハムスターが必要だとのこと。 まだ動物愛護団体が暴れたという話は聞かないが、 そのうち暴れるんじゃないだろうか。


30/Oct/2000 (Monday/lundi/Montag)

暴風雨

昨夜から英国全土に渡って強烈な暴風雨が暴れまわっているようで、 (「暴風雨が暴れまわる」という表現はまずいかな) すでに死者3名、電車や地下鉄などは麻痺状態が続いているようだ。 以前から洪水で被害にあっているイングランド南東部はたいへんだろう。

風速100mph(時速160キロ程度)というのはどのぐらいかよくわからないが、 外はときどきものすごい風が吹いていて、日本の台風を思わせる。 今日はこの図書館ももうすぐ閉まってしまうらしい。

政治哲学入門講義

「暗黙の同意」理論について。 半分寝てしまったので何も書くことがない。 そういえば、途中で生徒が「先生は直観的な答えばかり与えていて、 証明を与えようとしない」と厳しい質問をしたところ、 「いや、最初の講義で言ったように、 わたしは方法論として反省的均衡を用いているから」 と答えていた。


31/Oct/2000 (Tuesday/mardi/Dienstag)

某英国人との昼食

某研究室に所属している某英国人とチャイナタウンで食事をする。 台風が直撃しているらしい(飛行機も空港で爆発炎上したらしい)某国によったあと、 某国に戻るらしい。

法哲学

ドゥオーキンのlaw as integrityの話。 が、予習不足でまったくわからなかった。 週末必ずドゥオーキンの勉強をすべし。

火災報知器

[pict]

[寮の入口にたむろする学生ども]

夜、この寮に入ってはじめて火災報知器が鳴る。 発狂しそうなほどやかましいので外に出ざるを得ない。 念のため財布とデジカメとラップトップを持って部屋を出た。 靴下もはかないままスリッパで外に出たので寒かった。

追記: 消防車が一台も来ないと思ったら、 今回は火災報知器の誤作動ではなく火災訓練だったようだ。


何か一言

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KODAMA Satoshi <kodama@ethics.bun.kyoto-u.ac.jp>
Last modified: Fri Jul 28 07:37:42 2000