来年のいつごろかには最初のヒト・クローンが誕生する可能性が高い。 赤ん坊の誕生を祝いに病院に来た訪問者たちは、 ベッドに集まってきてこう言うだろう。
「わあー。この子、お父さんにそっくり」
「そりゃそうよ。だってこの子はお父さんなんだもの」
そして夫の赤ん坊バージョンを生み落としたばかりの女性は、 哀れにも次のように尋ねるだろう。
「目はどうかしら? わたしの目にちょっと似てるんじゃない?」
「う〜ん、それはどうかなあ。 目も、耳も、鼻も、 まあ実際のところあらゆる点においてお父さん似だと思うけど」---John O'Farrell, `Don't send in the clones',
in The Guardian, 11/Aug/2001.
昨日はミルの『自由論』についての勉強など。はかどらず。大丈夫か。
昨夜、レスタースクウェアで某イタリア人と会う。 夕方に某香港人から受けとった写真を渡す。
今日はフェミニズム。 お昼すぎ、散歩がてら本屋をまわる。 Ross Harrisonによるベンタムの選集がWordsworth社から出ているのを発見。 お金がなかったので購入せず。
「月曜日の試験のあと、しばらく更新されないかもしれませんが、ご心配なく」
「今度はどこに行くんだ」
「いや、それは秘密です」
BBC1でやっていたトータル・リコールをついつい観てしまう。 派手なアクション映画なのでとても哲学的思索に浸ることはできないが (この点はEND OF DAYSと同様。 いや、あれはもっと単純な善悪二元論だったが)、 映像がすごくて楽しめる。 しかし、 映像にしても哲学的思索にしてもMATRIXの方が一枚上手のようだ。B-。
昨夜はたっぷり寝てしまう。 どうも心の奥底では「まあどうにかなるだろう」と思っているらしい。 ほんとに大丈夫なんだろうか。
一日、民主主義の正当化とバーリンの勉強。
これでようやく、ハート、ドゥウォーキン、 民主主義の正当化(内在的価値と道具的価値)、 自由(ミル、バーリン、ルソー)、功利主義、 (フェミニズム)は一応守備範囲に入ったことになる。 これからもう一度過去問を見直して、すこし書いてみるつもり。
試験終わり。「法理論はvalue-freeか」という問題と、 「ベンタムが功利原理を外的基準と主張したのはなぜか」という問題と、 「ルソーにおける法と自由」という問題に答えた。
ハートもバーリンもミルも出ていたが、 ハートのソフト実証主義はラズがからんでおり、 バーリンはコンスタンがからんでおり、 ミルは質問がやっかいなので避けた。
ちょっと表層的な答になってしまったので不安だが、 まあそこそこ書けたと思う。あとはディサテーション。
というわけでニューヨークに行ってきた。以下は簡単な旅行記。 写真はここ。
法哲学の試験が終わったあと、急いで荷物をまとめ、 某シンガポール人と一緒にヒースローへ。 空港に着いてしばらくしてから、 姉夫妻のためにイタリアで買っておいたキアンティを忘れて来たことに気付き、 地団駄を踏む。 しかたがないので空港の売店でワインを買う。
飛行機はヴァージン・アトランティック。 ロンドンからニューヨークは約8時間。 夏の時差はロンドンが5時間早い。 疲れていたが機内ではなぜか眠れず、 新聞を読んだりShrekを見たりする。
夜9時すぎにJFKに無事到着。空港まで姉夫妻が迎えに来てくれる。 マンハッタンまでタクシーで行き、姉夫妻のフラットに到着。 フラットでは姉が飼っている二匹の猫に挨拶する。 疲れていたので、近くの喫茶店でコーヒーを飲んだあと、そそくさと就寝。
英国にいるあいだにあらかじめインターネットで注文し、 姉夫婦のところで預かっておいてもらった本を受けとる。
翌朝は早起きして、マンハッタンの中心部を散策。 ユニオン・スクウェアのあたりから北進して、 マディソン・スクウェア・ガーデン、 グランドセントラル駅、 ブライアンパーク、 ロックフェラーセンター、 タイムズスクエア(有益なインフォがある)などの名所を訪ずれる。
気温は30度ちょっと(華氏84-8度)と蒸し暑い。
お昼すぎに地下鉄に乗り、チャイナタウンで姉に会って昼食。 そのあとリトルイタリー、ソーホーなどをすこし歩いたあと、 姉のフラットに戻って昼寝。
夜は近くの日本食料品店で材料を買い、
フラットで夕食。
買物をして店を出たとたんに大雨が降りだしたので、
一時間ほどそばの本屋で時間をつぶした。
エンパイア・ステート・ビルディングに上るために、 この日も早起きする。 9時にチケットを売り出すので、 8時すぎから並べば最初に上ることができる。 ちなみにエンパイア・ステートとはニューヨーク州の異名のようだ。
96階からの見晴らしはすばらしく、思った以上に楽しめた。
ただし、スカイライドという体感フィルムは、
ユニヴァーサルスタジオに代表される悪趣味なアメリカ文化を具現化した
ひどい見せ物だった。
そのあとてくてくと歩いてセントラルパークに行き、サラダを食べる。
ニューヨークもロンドンと同様、公園にリスが住んでいる。
しかし、ニューヨークのリスはロンドンのリスに比べると、若干人間嫌いのようだ。
それからきつい日差しの中、公園内をえんえんと歩き、メトロポリタン美術館に到着。 二階のヨーロッパ絵画を中心に見学。ダヴィドの「ソクラテスの死」の他、 ドガやドラクロワ、アングル、レンブラントなどの作品が見れる。
そういえば、館内の作品を説明するオーディオCDを借りたが、
説明されている作品の数が少ないのであまり役に立たなかった。
夜は姉の作った短編映画が近くの映画館で上映されるというので、 それを見に行く。なかなか好評だったようだ。
そのあと姉夫妻と一緒に某日本料理屋で食事をする。
ロンドンにいたときは日本料理はほとんど食べなかったが、
ロンドンに比べるとニューヨークの日本料理屋は(すくなくとも外見は)
本物っぽいし、値段もロンドンほど高くないようなので、食指が動く。
デザートには近くの台湾喫茶店でタロー(タロ芋)入りの泡泡茶を飲む。おいしい。
四日目はいろいろ本屋を回る。 まず5th通りにあるバーンズ・アンド・ノーブル(新本と古本)に行き、 次にブロードウェイにある巨大な古本屋ストランドで一冊本を買う。
お昼はタコベルでブリトーを買い、マディソン・スクウェア・ガーデンで食事。
タコベルで食べるのは高校のときの留学以来だったが、
いかんせんベジタリアン料理しか食べられないので、
タコスを買うことができなかった。無念。
それからグリニッジヴィレッジをすこし歩いたあと、NYU近辺を散策。 NYUの本屋を見かけたので、 どんな哲学の教科書を使っているのかを調べたりする。
強い日差しの中、えんえんと歩いたので、 近くのワシントン・スクウェアでしばし休憩。 それから姉のスタジオを見学にチェルシーへ。 姉の作品を見せてもらう。
それから姉夫婦と一緒にアメリカンダイナーで 夕食をとったあと、 近くの映画館でPlanet of the Apesを見る。 ティム・バートン監督による同名の映画のリメイク。 役者の演技は今ひとつだったが、 話はまとまっており、 全体的にはまあよくできていた。 ただ、いかんせんネタが古く、 こじんまりしている観がある。C+。
映画のあと、チェルシーにある大きな食料品店を見学してから地下鉄に乗って帰宅。
洗濯をしてから寝る。
五日目はマンハッタン南部を見学に行く。 ニューヨーク証券取引所や連邦準備銀行のあるウォール街を歩いたあと、 ワールド・トレード・センターやワールド・フィナンシャル・センターを訪れる。 お昼は「大吉」という寿司チェーン店で。
ウォール街は完全な観光地で、
ひょっとしてここはディズニーランドの一部で、
ここで仕事している人はみな役者なのではないか、と思わせるほどだった。
それから市役所前を通ってブルックリン橋へ。暑いなか、
橋の真ん中までえんえんと歩く。
ここからもビジネス街を一望できる。
夕方は地下鉄に乗って中心部に戻り、 Macy'sで涼んだあと、ストランド古本屋でさらに本を買う。
夜は姉のフラットで素麺を作って食べる。
真夜中、姉夫婦と一緒にゴシックを聴きにライムライトへ。
ライムライトは教会をライブハウスに改装した建物。
ゴシックといってもクラシック音楽ではなく、
黒ずくめの衣装を着て演奏する毒々しい音楽のこと(メタルでもないようだ)。
建物もオーディエンスも異様な雰囲気のライブハウスだったが、
見聞を広げるいい経験になった。と思う。
ニューヨーク最終日。早起きして再びマンハッタン最南端に行き、 自由の女神像とエリス島を見学するためにフェリーに乗る。
すでに長蛇の列ができていたので、自由の女神像の頭部には昇らず。
売店で買ったフレンチフライがうまい。アメリカにいることを実感する。
同じフェリーに乗ってエリス島にも行く。 ここは19世紀終わりから20世紀初頭にかけて移民の入国管理をしていたところ。 戦後朽ちるままになっていたが、1990年に博物館が開館したらしい。
当時の様子を写真から構成した映像や、 個々人の移民の歴史に照明を当てた展示、 またエリス島から入国した移民の名前を記した記念碑など、 興味ぶかい展示が数多くあり、 予想外に楽しめた。
自由の女神像を見に行くときには、
ここも省略せずに行くことを勧める。
それから地下鉄に乗ってチェルシーに行き、姉夫妻と合流、 地下鉄で北上してハーレムへ。
Sylvia'sという超有名らしいレストランに予約を入れたあと、 しばらく町を散歩する。ハーレムは危険な地域として有名だが、 クリントンがオフィスをここに置くことを選んだことに象徴されるように、 最近は町の再生化が進んでいて以前ほど危険ではなくなったそうだ。
ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの`Up to Lexington, 125 (one-two-five)'
にも行ってみたかったが、
あいにくハーレム東部ではなく西部に来たので訪ずれることはかなわず。
アポロ・シアターの前で写真を撮ったあと、
上記のレストランで食事。
メニューにはガンボとかキャットフィッシュとか南部な料理が並んでいる。
バンドによるライブ演奏を聴きながらおいしい食事を楽しむ。
それからまたチェルシーに戻り、フリーマーケットに少しだけ顔を出す。
姉のために本を買うときに、ちょっとまけてもらう。
バーゲンが成立し、両者が満足する。自由市場の原理だ。
夜はインド南部の料理を食べる。 ここもおいしい。姉夫婦におごってもらう。感謝。
そのあと姉の友人の誕生日だというのでみなでバーに行きすこしだけ飲む。
明日の帰国準備があるので早々に退散させてもらう。
夜明け前に起き、タクシーに乗ってJFKヘ。 空港内の店が7時すぎから開きはじめたので、 残りのドルを使ってしまおうとしたが、 搭乗のアナウンスがかかったので何も買えず。
機内では最初の30分ほど寝ただけで、 あとはずっと映画を見ていた。
Spy Kidsはスパイ夫婦の子供がスパイとして活躍する話。 金を出して映画館に見に行かなくてよかった。C。
Blowはジョニー・デップ主演の70年代の麻薬ディーラーの話。 暗くてなかなか良いが、盛り上がりに欠ける。 同種の映画ではBoogie Nightsの方がよいと思う。C+。
機内販売ですこしおみやげを購入。 値段はドルで書かれているものと思っていたら、 ポンドだったので高い買物になってしまう。
ロンドンには夕暮れに到着する。帰りは6時間ぐらいで済んだようだ。
お腹がへっていたので、帰る前にチャイナタウンに寄り、夜食を食べる。
ひさしぶりのロンドンはニューヨークに比べて静かでひんやりとしていた。 旅行中に某シンガポール人と二つの都市の長短について議論をしていたが、 やはり長く住んでいるロンドンの方が落ち着く。 しかし、 もしニューヨーク大学に留学していたらきっと逆のことを言っていただろう。
(あ、今思いだしたが、コロンビア大学を見学するのを忘れていた)
今回、宿を提供し観光に付き合ってくれた姉夫婦に感謝。