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こだまの世界

2000年12月上旬号

`Kill him twice, you boys. You go on kill that rape-and-baby-killer twice. That'd be fair.'

from The Green Mile

`Get it while you can; coz he ain't gonna be there when you wake up, man.'

Janis Joplin, `Get it while you can (live)',
Anthology, Columbia, 1980.


01/Dec/2000 (Friday/vendredi/Freitag)

今日の勉強

西洋の民主主義理論の展開について半日勉強。

民主主義を正当化する理論はいろいろあるようだが、 まあ今のところ、 「なんで民主主義が他の政体より望ましいんですか」 と訊かれたら、 「布施院みたいなバカ殿に支配されるのはかなわんから」 と答えると思う。

けど、日本も今バカ殿に支配されているではないか、 と反論する人があるかもしれない。 ほんとかどうか知らないが、たとえそうだとしても、 日本はすばらしい民主主義国家なので、 そのうちちゃんと交代してくれるだろう。 とはいえ、次の殿様がより賢明だという保証はどこにもないが。


02/Dec/2000 (Saturday/samedi/Sonnabend)

日記の整理

死なされる

「死なされる」というのは笑いをさそう表現だと思うが、 英語にもこれに当たる表現がある(というか近年造語された)ようだ。 これは、`suicide'を他動詞として使用するもので、 次のように使われる。

"Many old people in Holland are now afraid to go to their doctor in case they are `suicided'".
(最近、オランダのお年寄りの多くは、 病院に行くと「死なされる」のではないかと心配している)


03/Dec/2000 (Sunday/dimanche/Sonntag)

『雨に唄えば』と『イングリッシュ・ペイシェント』

昨夜、某英国映画劇場(National Film Theatre) でSingin' in the Rainを観た。

この映画を観るのははじめてで、 あまり期待していなかったのだが、 想像をはるかに超えて良かった。 ジョークもおもしろいし、ストーリーもおもしろい。 話の流れとは無関係なダンスや、 あまりにステレオタイプな(あるいは「わかりやすい」) 登場人物など少し鼻につくところもあるが、 全体としてものすごく完成度が高い作品だと思う。B++。

さらに今日の午後、 友人に借りていた『イングリッシュ・ペイシェント』を観た。 第二次戦争中に起きた悲恋の話。 映像は美しいし、最後までおもしろく見ることができたが、 どこにストーリーの焦点があるのかわからなかった。 山場がはっきりしない映画は苦手だ。C+

[X'mas tree on Store Street (near Senate House)]


04/Dec/2000 (Monday/lundi/Montag)

今日の勉強

今日も図書館で民主主義の基礎付けについて勉強。 ロス・ハリソンもジョナサン・ウルフも結論として 「等しい尊敬」(equal respect) というカント主義的な基礎付けを勧めているので、 怒り狂ってバンバンと本を踏みつける。

おれはどうもミルの「政治参加による人間性の発展」 という基礎付けが気に入っているようだ。 しかし一番の問題は、日本の現状を考えてみると、 どうもこの基礎付けは経験的に反証されているように見えることだよな。 あるいは、「日本の民主主義は真の民主主義ではない」 と主張すべきなのか。

政治哲学入門の授業に出る。プラトンの正義概念について。 得るところなし。

太平洋戦争

夜、日本のアジア侵略の映像がBBC2で放映されていたので、 コモンルームで見た。

日本軍が意気揚々とアジア諸国で行進し、 村を焼き払い、都市を爆撃する映像や、 日本軍が現地の女性を手当たりしだいにレイプしたという証言を、 中国人、台湾人、シンガポール人の友人と一緒に見た。 なんとも居心地が悪く、顔がひきつるのを覚えたが、 明日の夜に続編があるので、それも一緒に見ることになりそうだ。

CD

またamazon.co.ukに注文してしまった。

`California Dreamin''は`Hotel California' と同じくらい嫌いだが、`Dedicated to the One I Love'、 `Do You Wanna Dance'などのカバーが秀逸。 `Dancin' in the Street'が収録されていないのが残念。


05/Dec/2000 (Tuesday/mardi/Dienstag)

今日の勉強

今日は授業がなかったので、うかつにも昼まで寝てしまう。 図書館でベンタムとミルの民主主義理論の勉強を少しやる。

明日の授業の予習でフーコーの『監獄の誕生』を少し読んだが、 途中で失神してしまう。この手の本はとても読めそうにない。

マドンナ、ポンド、コンドーム

図書館のLANを利用してマドンナの先週のライブを観る。 小さな会場でのライブという感じが出ていてよかったが、 歌が超絶うまいわけでもないし、 ダンスも目を見はるものではなかったので、今いち。

ポンドがまた高くなってしまった。160円前後。困った。

メモ。日本人のコンドーム(prophylactics)消費量は年間2億5千万個で、 インドと中国につぐ最大消費国。 金額では年間2億7千万ポンド消費しており、もっとも貴重なコンドーム市場。 近く英国企業のデュレックス(Durex)が日本市場に進出するとのこと。 (The Guardianより)


06/Dec/2000 (Wednesday/mercredi/Mittwoch)

ベンタムの授業

パノプティコンについて。 フーコーによれば、ベンタムが発案した監獄のあり方は、 現代の政府権力による個人の抑圧(逸脱者の矯正)を象徴している。

しかし、ベンタムのこの計画はそもそもフーコーが取り上げるまで 忘れさられていたものだとか、 ベンタムは私営の監獄を意図しており極力権力を排除しようとしていたので 文脈を無視しているだとか、 そもそもフーコーはIPMLすら読んでいないのでけしからんとか。

まあ、まじめに歴史研究している学者にとっては、 ろくにテキストを読んでない人間が、 思想家のあるアイディアを抜きとってきて、 「文脈を無視した」おもしろおかしいストーリーを 作ったりするのは許せないのだろう。

「それも方法論だ」と反論されるかもしれないが、 地道に時代背景を踏まえた正確な解釈をしようとしている 研究者にとってはいい迷惑で、 我田引水で不正確な引用をするくらいならそもそも引用しないでくれ、 と言うだろう。

「それは有名になれない研究者のひがみだ」とさらに反論されたら、 「お、おまえのようなけけけ軽薄な学者は学界から追放だっ」 と泡を吹きながら答えるのかもしれない。

寿司と散髪

ちかくのスーパーマーケットで売っている寿司をためしに買ってみる。 4ポンドもするのでサンドイッチと比べるとちょっと高い。 外見は日本のスーパーで売ってるものとほとんど変わらないが、 食べてみると米が固くなっており、 日本のそれと比べると格段に質が落ちる。 こんなものが流行っているのか。 二度と買うまい。

いいかげんに髪がうっとうしくなってきたので散髪に行く。 ためしに大英博物館の近くの5ポンドの散髪屋に行ってみる。

髪はまともに切ってくれたと思うが、サービスはひどいし、 衛生状態がすこし気になる。

店に入ると、床一面が髪の毛で覆われている。 さっそく散髪用の椅子に座るように言われるが、 椅子にも大量の髪の毛が付いたままである。 しかたないので自分で適当に払って席に着くと、 無愛想な店員が清潔なのかどうかわからないバリカンで無造作に散髪を始める。 それから、 これまた清潔なのかどうかわからないハサミで髪を切ってもらったが、 目に水が入っても無頓着だし、カミソリを使って仕上げをしないので、 あとでもみあげの部分を自分で整えなければならない。

まあ、そのぐらいかまわないかと思ったが、 寮に戻って上着を脱ぐと背中一面に髪の毛がついている。 逆上して呪いの言葉を吐きながらガムテープできれいにした。 に、二度と行くまい。

キャピタリズム (capitalism)

大文字主義。すべて大文字のアルファベットで文章を書くこと。

っていう冗談はきっとすでに使われてるだろうな…。

君臨もせず統治もせず: 君主制から共和制へ?

ガーディアンが英国の君主制の廃止を公式に支持する記事を数日に渡って 大々的に掲載するようだ。

We declare our hand: we hope that in time we will move -- by democratic consensus -- to become a republic. We are gradualists: we accept that it will not happen tomorrow. Let the Queen remain Queen for as long as she lives, or she wishes, or she remains able. But in the meantime there should be a long, vigorous and grown-up debate -- both inside and outside parliament -- as to who, or what, should succeed her.

from The Guardian (07/Dec/2000)

現在の女王が退位したあとにこの話が大きな問題になると聞いていたが、 どうも今回は、 1701年に制定された「カソリック教徒は王位を継げない」とかいう法律が 英国で2ヶ月前から有効になったヨーロッパ人権規約にひっかかるという 理由が発端になっているらしい。

1701年の法律がいまだに有効だというのも英国らしいが、 ガーディアンの編集者が自虐的に引用している1848年以来有効の大逆罪によれば、 国王の没落につながる事柄を想像したり出版したりすると国外追放になるらしい。 (これも人権規約にひっかかる可能性があるとか)

しかし、ガーディアンの「われわれ(国民)が国家の元首を選ぶべきか」 という問いに答えた英国の有名人たちは平気なもので、 リチャード・ドーキンズなどは軽妙にこう答えている。 「原則から言えば、民主的に決めることに本気で反対できる人はいないはず。 だけど、あんまり民主的にやりすぎると、 ジョージ・W・ブッシュが選ばれてしまうかも」

また、ガーディアンは成文憲法の必要性も論じている。 ようやくベンタムの夢がかなうときが来るのかな?

クリスマスカード

あれ、郵便局によるクリスマスカードの国際配送の〆切は明日らしい。 えらく早いな。国内は一種が21日、二種が18日らしい。


08/Dec/2000 (Friday/vendredi/Freitag)

一昨日買った本

政治哲学

昨日の授業。「参加型民主主義(participatory democracy)」と 「討議型民主主義(deliberative democracy)」について。 だいたいJonathan Wolff, An Introduction to Political Philosophy の民主主義の章の後半に書いてあることをしゃべっていた。

政治哲学理論

これも昨日の授業。 民主主義以外の政体についての検討。

「ロスハリソンの、道徳的平等による民主主義の基礎付けの検討」 というような題で5分ほど発表する。OHPを使う。 発表のさいに、まだまだ精神に余裕がない。 もっと余裕をもってにこやかに発表せねば。

アルメール、ユードラ、シュリケン

おろかなことに、pdfファイルを6つも添付した巨大なファイルを (圧縮もせずに!)UCLのアカウントからethicsのアカウントに送ったために、 ひどい目にあう。

UCLのソフトウェアはユードラで、 どんな大きさのファイルでも送れる様子だが、 アルメールでは一定以上の大きさのファイルは受け取れない様子。 しかたないのでvectorから新しいフリーのユードラ(広告料でかせぐやつ) をダウンロードしてインストールしたが、 まだメイルを受けとることができない。

授業に出るまえに問題を解決できなかったので、 授業に出たあとふたたびUCLのコンピュータルームに行って、 とりあえずそこのユードラでethics宛のメイルを受信する。 それから今度はpdfファイルを個々に添付してもう一度 ethics宛に送信。

なんてことをやってると、よくわからないが とにかくmewで一度受信したあとも同じ(巨大な)メイルがふたたび送られてくる というおそろしいことになってしまった。 どうしようかと頭を痛めていたのだが、 今朝、一太郎に付いてきたシュリケンというメイルソフトを使ったら解決できた。

このソフトは先にsubjectを閲覧してからメイルをサーバから受信することができ、 また、サーバにある不要なメイルを受信することなく削除することもできるので、 読みたくない巨大なメイルがサーバにある場合にはたいへん役に立つ。 ひょっとしてユードラにも同じ機能があるのかもしれないが、 一見したところではなかった。アルメイルには同様の機能はないようだ。


09/Dec/2000 (Saturday/samedi/Sonnabend)

昨日はまったく勉強しなかった。反省。 人生は短かいのだから(〆切も近いのだから)毎日コツコツ勉強せねば。

クリスマスパーティ

昨夜、寮でクリスマスパーティがあった。 8日にクリスマスパーティなどというとやたらと早い気がするが、 来週には多くの学生が帰国するため、早目に行なわれる。

寮内のパーティなので、 とくに期待してなかったのだが(とりわけ寮生の出し物はひどかった)、 夜中にバーに行くと、外から呼んだセミプロバンドが演奏しており、 ひさしぶりに楽しむことができた。

哲学も文学も映画も絵画も重要だけど、やっぱり最後には音楽なんだよな。

と、そのときは思ったが、一時の気の迷いかもしれない。

しかし、とにかくギターが欲しいので(健康で文化的な最低限度の生活を営むのに 必要だと思う)なんとか手に入れよう。

今日の勉強

ジェレミー・ウォルドロンのNonsense upon Stiltsを また読み出す。彼は先日ロンドンでセミナーをしていたので、 聴講しに行きたかったのだが、つい行きそびれてしまう。反省。

Billie Elliot

夜、寮の連中と一緒にBillie Elliotという映画を観に行く。 この映画は今年の英国映画の中でもっとも成功したものなので、 そのうち日本でも上映されると思う。

イングランド北部の炭坑町でバレーに目覚めた少年が、 保守的な家族の反対に負けることなく、 立派なダンサーになるという話。

『フル・モンティ』や『ブラス』と同様、 おかしさと哀れさ(ペーソス)がいりまじった作品。 とくに親子間、友人間の素朴な愛情表現は胸に迫る。 BGMがほとんどT. REXなのもよい。B。


10/Dec/2000 (Sunday/dimanche/Sonntag)

O MY ...!!

驚きを表わす表現は`O my God!'以外にもいろいろあるが、 中国人の友人に聞いたところ、旧ソ連では`O my Lenin!'あるいは `O my Stalin!'と言い、中国では今日でも`O my Mao!'と言うらしい。

例文:
`Do you know Madonna is going to have her wedding ceremony somewhere in Scotland?'
`O my Mao! I have to go up there and see her wearing a wedding dress and a cowboy hat!!'

(冗談です。念のため)

Monty Python's Holy Grail

夜、BBC2でモンティパイソンの『ホーリーグレイル』 がやっていたので観たが、それほどおもしろくなかった (英語が聞きとれなかったせいかもしれないが)。 来週はthe meaning of lifeを放映するようだ。

今日の勉強

ウォルドロンを読みながら道徳的権利について考える。 もっといろいろ論文や本を読まないといけない。


何か一言

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KODAMA Satoshi <kodama@ethics.bun.kyoto-u.ac.jp>
Last modified: Fri Jul 28 07:37:42 2000