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こだまの世界

2002年1月中旬号

彼は批判をそれ自体として好みました。 彼は追従を嫌い、自分の著作が褒められることすら嫌いました。 彼は他人の内にある独断的思想を攻撃し、 自分自身は本当に独断から自由でした。…。 彼は虚栄心を持たず、名声を気にせず、 それゆえ一貫性のために一貫性に執着することなく、 人間の問題が問われているときには自分自身の名誉に執着することもありませんでした。…。 理解できないなら(しばしば理解できないことはあったに違いありません)、 彼は理解したふりをしませんでした。

---アイザイア・バーリン、「J.S.ミルと生活の諸目的」
ジョン・グレイ/G・W・スミス編著、『ミル『自由論』再読』
泉谷周三郎・大久保正健訳、木鐸社、2000年、62-3頁

「二匹の死んだハト、水槽の中、取り出せ。 そんなに難しいこと言ってるわけじゃないんだ、マニュエル。 ウィトゲンシュタインから引用した命題じゃないんだから。 いいか、よく聞けよ。二匹の死んだハト、水槽」

---Basil Fawlty, in Fawlty Towers (`Basil the Rat')


主な話題


11/Jan/2002 (Friday/vendredi/Freitag)

真夜中 (午前)

「しばらくコタツでうたた寝する」

「うたた寝って、転寝と書くのか」

「ごろ寝とも読むな、その漢字は。また、ころび寝と読めば、 最近のコハビテーションみたいな意味にもなるな」

「コハビテーションをころび寝と訳すのはちょっと含意が違うと思いますが…」

「読むべき本が多すぎ。しかも一冊一冊が長いと来ている。 もっと短く書いてくれないかな。 卒論だって原稿用紙一枚だったら書く方も採点する方も楽なのに。 修論は二枚、博論は奮発して四枚。 これだったらおれにも出せる。試問で落とされるだろうけど」

「出版社の陰謀じゃないの、本が長いのは。 しかも最近はどの本もやたらと行間が大きくとマージンが広いし」

「その方が読みやすくていいじゃん」

「いや、環境のためにも、本はすべて新書か文庫サイズ、 行間は1行で8ptぐらいにすべきだ。それで紙が節約できる。 しかも、哲学者は10頁以上書いてはダメということにする」

「今年の抱負その三、明晰判明な文章を書くこと」

「集中して本や論文を読む、という抱負も加えた方がいいんじゃないの」

真夜中2 (午前)

「おれが二人いると、いつも議論ができてありがたいんだけど」

「…友達作れよ」

夜明け前

オープン・ユア・アイズ (Abre Los Ojos, 1997)

「『ヴァニラ・スカイ』 のオリジナルにあたるスペイン映画『オープン・ユア・アイズ』を観た。 この映画はすごい」

「『ヴァニラ・スカイ』に比べると、 さすがに主役はトム・クルーズには見劣りする他、 キャメロン・ディアズがやってた役と、 主役の友人役は『ヴァニラ・スカイ』の方が味があった」

「ペネロペ・クルスは、オリジナルの方が冷たい女性を演じてたね。 やっぱりハリウッドの方が役柄が単純でわかりやすくなってるのかな」

「しかし、味のあるセリフとか、伏線の張り方では、 オリジナルの方が圧倒的に良かった。 たとえば、ハリウッドでは省略されていたパントマイムの要素は、 顔と似顔絵-マスクと素顔-外面と内面という繋がりをより容易に理解するのに 役立っている」

「誕生日パーティと酒場のシーンの対比もより際立ってたよね。 誕生日パーティでは女性をストーカー扱いしていたのが、 酒場では自分がストーカー扱いされている。 それに、あのヤヌスのように仮面を後頭部にかぶるシーン。 美と醜、内面と外面の対比が鮮かに象徴されてたと思う」

「夢と現実の交錯というのはオリジナルもハリウッド版も同じくらいうまく 表現してたと思うので、この『顔』というテーマを目立たなくしてしまった点で、 ハリウッド版はオリジナルに劣ってる。 なんでパントマイムの要素を削っちゃったのかな」

「ホントにハリウッドの方が劣ってる? オリジナルを後でみたから、いろいろよく分かったっていうだけじゃないの? たしかに内容はすごいけど、オリジナルは暗くって、B級っぽい雰囲気じゃん。」

「もう少し宗教のテーマを掘り下げて欲しかった気がする」

「え、けっこう宗教的な伏線もあったじゃん。 主人公は宗教ではなく科学を選んで夢を見るということなんでしょ」

「なんで『オープン・ユア・アイズ』じゃなくて『ヴァニラ・スカイ』にしたのかな」

「『アイズ・ワイド・シャット』の続編と思われると思ったんじゃない、 トム・クルーズが」

「とにかくおもしろい映画。ぜひ両方見ることをおすすめする。B+」

「ついでに言うと、この監督(アレハンドロ・アメナーバル)、 この映画を作ったとき26歳だったそうだよ。脚本も手がけてる」

「…いいんだおれ、大器晩成型だから」

関連サイト

お昼すぎ

「勧誘の電話で起こされる」

「わ、『ほんまもん』、しばらく見てなかったらたいへんなことになってる」

昼下がり

「国際的な反テロリズムの潮流に乗っかる形で、 ジンバブエで治安維持法が可決されたようだ」

「3月中旬に大統領選があるので、 野党や反対勢力を完全に弾圧してかかる気だ。 ムガベおそるべし」

「よくわからないのは、ここまで人権侵害を続けているのに、 なぜ国連なり英米なりが介入しないかってことだよな。 ここまでむちゃくちゃしても、内政干渉はしないっていう気か」

「3月に何か起きるのは目に見えてるじゃん。 人が大量に死なないと何にもしない気なのかな」

「某スタバに行き、明日の読書会の勉強。 バーリンの論文は読みものとしてはおもしろいが、 まとめるのは大変そうだ」

「やっぱり喫茶店で勉強するとはかどるなあ。 お金をケチらず、毎日喫茶店に行くようにしよう」

「大学の図書館に来たら? 無料じゃん」

「遠いんだよね。時間がもったいない」

「それから大学に来る。 今夜は修論と卒論を出した人の慰労会があるので、 それに出席する」

「慰労って、まだ試問も終わってないのに…」

「いや、新年会も兼ねてるみたいだから」


12/Jan/2002 (Saturday/samedi/Sonnabend)

真夜中 (午前)

「昨夜は慰労会の一次会と二次会に出る。 6時間以上みなで飲んでいたことになる」

「たまには懇親のためにはいいんじゃないの。楽しかったんでしょ」

「いや、ひさしぶりに人里に降りていったので、 人恋しさにいろいろ対話しようとしたのだが、 相手の気分をいたずらに害してしまったようだ」

「そもそも、人の話をフンフンと聞いているのは楽なものだが、 人と意見をやりとりするのは本当に難しいもの。 ソクラテスを見習ってうまく議論できるようになりたまえ」

「明日の勉強会の予習が残っているのでまだ眠れない。勉強勉強」

「あ、そういえばうわばみの某さんからハリポタ第2巻と萩尾望都のマンガを 数冊お借りした。かたじけない」

「うわばみって、人聞き悪いわねあんたー」

「あ、すいません。じゃあ、価値中立的に 『どれだけ飲んでも酔っ払ってるようには見えない某さん』 に変更しておきます」

夜明け前

「ああ、バーリンの論文はまとめにくい。 途中だがとりあえず寝よう」

「朝起きてバーリンの要約を作ってから、 近くのコンビニで新聞を買い、原稿のコピー」

「読書会は4時間続く。みな根気強い」

「バーリンのミル『自由論』は寛容を説くすばらしい論文だが、 功利原理と自由原理は整合的でないという論文と、 いやそうではない、 自由原理は功利主義の大きな体系の一部なのだというライアンの論文」

「某谷大から新たにミル研究者が参加してくれてましたね」

「下から読んでも大谷大」

「カレーを食べ終わる」

「アマゾンから本が届く」

「眠いのでちょっと寝よう」

「ぜんぜん関係ないが、明日掃除器をかけること。 部屋にほこりがつもっている」

「3時間ほど泥のように寝た」

「そういえば、今朝ひさしぶりに洗濯をした」

「人間は自律的に洗濯をする生き物である」

「実存主義ですな」

夜2

日記の整理


13/Jan/2002 (Sunday/dimanche/Sonntag)

真夜中 (午前)

「台湾で、日本の出版社が台湾の風俗業を紹介した本が問題になっているようだ (「台湾の性風俗紹介の日本の雑誌、現地で問題化」)」

「こないだ関空に行ったときに、 本屋でこの手の本がたくさんあることを知ったんだけど、 たしか韓国版とかもあったでしょ。タイ版とか。 これは大きな問題に発展する可能性があるんじゃないの」

「しかし、 『台湾女性を侮辱する売春奨励雑誌が堂々と販売されている』って言うけど、 風俗業を営業してるからそれについての情報を提供してるだけでしょ。 なんで非難されないといけないの。台湾にはその手の雑誌はないわけ?」

「『堂々と』というのが問題なんでしょ。 日系書店ももうちょっと配慮すべきだったんじゃないのかな。 関空でも堂々と販売されてるからね」

「また、そんなことばっかりチェックして」

「いやいやいや。これも社会勉強です」

「追記です。 関心のある方は朝日のこの記事 (「「極楽台湾」買春日本人には地獄?」) も参照してください」

真夜中2 (午前)

「ダメです」

「何がダメなの」

「どうしても環境倫理学に興味が持てなくて。 これでは当分論文など書けそうにありません」

「こないだの米国が京都議定書から離脱した話とか、 倫理学的におもしろいじゃん。 みなが協力しないと道徳的営みが成り立たない例としてさ。 ホッブズならなんて言うか考えてみたら? Why be environmental?とかさ」

「ホッブズの自然状態と違うのは、 国家は人々と違ってかなり不平等だってことだよね」

「そんなことないんじゃない? 小国が力を合わせれば大国だって無視できないわけだし」

「環境問題は環境悪化についての正確な長期的予測と、 かなりの自愛の思慮と国際協力を必要とするから難しいんでしょ」

「環境倫理が共同体主義的だって議論も検討する必要があると思うよ。 すでに環境倫理と自由主義についての論文もたくさんあるみたいだしさ」

「たしかにその手のテーマには関心がありますが、 しかし、どこから手をつけたらいいかわからなくて」

「某先輩なんかに訊いてみたらいいじゃん。あきらめないでやってみたら」

「まあ、じゃあもう少しがんばってみます」

真夜中3 (午前)

「『地球を支えているものは何かという問いは、 たいていの[ギリシア]自然主義者が答えようとしたものだった』 (Anthony Gottlieb, The Dream of Reason: A History of Philosophy from the Greeks to the Renaissance, New York: W. W. Norton & Company, 2000, p. 7.)」

「たしかに素朴に考えれば、なぜ地球が落ちていかないかというのは不思議だよな」

「地中海に多くの孤島が浮んでいるように、 地球も大きな海に浮んでいるという発想は自然と出てきますよね」

「亀や象に支えられてるというのはちょっと不自然だと思うけどな」

「しかし、アリストテレスが指摘したように、 地球が海に支えられているとすると、その海は何によって支えられているのか、 という問いが出てきますね」

「で、実際は何に支えられてるんですか、地球は」

「太陽にひっぱられながら、ぐるぐる回ってるんでしょ。 落ちてるのか上がってるのかわからないけど、 まあ落ちてようが回ってようが、 慣性の力のおかげで無事に暮らせてるわけで」

「そんな説明で大丈夫なのかな」

「いや、自然科学は苦手なもので」

「社会科学もダメなくせに」

夜明け前

「寝ようと思っていたら、 BBC Radio 2でジミヘン物語が始まったので寝れなくなった」

「はじめてエリック・クラプトンがジミヘンの演奏をクラブで聴いたとき、 頭を抱えてジミヘンのマネージャーのチャス・チャンドラーに 『おい、なんであいつが超うまいって教えてくれなかったんだ。 あいつはあの曲しかできないってことはないんだろうな、やっぱり』 と言ったという話とか」

「すごいショックだったんだろうな、 クラプトンのクリームにしろ、ビートルズにしろ、 ジェフ・ベックにしろ、フーにしろ」

「そりゃ、まさに火星人が来たようなもんだったんだろう、 彼らにしてみれば」

「来週も続きがあるようだ」

昼下がり

「よく寝たと思ったら、寝過ぎた」

「今日こそ掃除器をかけよう」

「今すぐかけろってば」

「了解、了解」

(10分経過)

「かけました」

「さて、勉強勉強」

「ちょっとABBAの曲を訳してみました」

「またABBAか」

「いや、名曲なので」

「また失恋の曲だな。何かあったのか」

「いや、そういうわけではなく、ただ名曲なので…」

Knowing Me, Knowing You

気楽な笑い声はもう聞こえない
沈黙がいつまでも続く
空っぽの家の中を歩く
目には涙をためながら
これが物語の終わりなのね
これでさよならなのね

あたしのこと、あなたのこと、よくわかってるから
二人にできることは何もない
あたしのこと、あなたのこと、よくわかってるから
現実を受けいれるしかないわ
あたしたちはもう終わり
別れるのはいつでもつらいこと
だけどあたしは出ていくわ
あたしのこと、あなたのこと、よくわかってるから
これがあたしにできる精一杯のこと

思い出--楽しかった日々、喧嘩した日々
いつまでも忘れないわ
このなつかしい部屋で
子供たちが遊んでたことも
けど今はもうからっぽ
何も言うことはないわ

あたしのこと、あなたのこと、よくわかってるから
二人にできることは何もない
あたしのこと、あなたのこと、よくわかってるから
現実を受けいれるしかないわ
あたしたちはもう終わり
別れるのはいつでもつらいこと
だけどあたしは出ていくわ
あたしのこと、あなたのこと、よくわかってるから
これがあたしにできる精一杯のこと

By ABBA

「夕方、某MKさんと某スタバで会い、某署名をする。 ついでに市民活動についての情報提供をお願いする」

「それからタコ焼を食べながら新聞を読む。 回転焼をみやげに持って帰る」

「う。なぜかもう眠い」

「勉強しろ、勉強」

真夜中

「すこしうたた寝する。電話で起こされる」

「勉強勉強」

「年賀状、一つも当たりがなかった。い、陰謀だ」

「あんまりもらってないからでしょ。 もうちょっと人付き合いをよくすれば当たるわよ」


14/Jan/2002 (Monday/lundi/Montag)

真夜中 (午前)

「トマトとナスの豆板醤炒めという謎の料理を作ってしまった。C+」

「NHKでやっているカイロ、ニューヨーク、東京の若者の中継討論を見ていると、 米国白人男性が『米国の民主主義を世界に広めるべきだ』と主張し、 カイロのエジプト人男性は『その傲慢な考え方が嫌われるのだ』と言うが、 両者は理解しあわないというよくある風景が再現されている」

「そんな、マクドナルドじゃないんだから、民主主義は。 しかも、米国の民主主義っていうのが気になるよね。 まるで米国が民主主義を生み出したと言わんばかりじゃない?」

「いや、まあそうなんでしょ、ある程度は。 近代民主主義思想そのものは英国やフランスで誕生したわけだけど、 米国が独立する以前はフランスに民主主義は存在しなかったし、 英国も非常に不完全な民主主義だったんだから」

「エジプト人はエジプト人で、 イスラム知識人の同じセリフを繰り返すだけじゃ、 米国人はまたかと思うだけだよね。 上のような発言をする米国人にとっては、 エジプト人はアフガン人と同じで自由も民主主義も知らず、 女性差別をしている未開民族なんだから、 聞く耳は持たないわけでさ」

「まさかそこまでは考えてないでしょう」

「いや、偏った情報を与えられてマインドコントロールされてると 思ってるんじゃないのかな。 だからといって、彼らの議論に何も聞くべきことはない、 なんてことにはならないんだけどね」

「両者ともミルの半真理の教えを学んでほしいわよね。 どっちにも一理あるけど、 どっちにも非があるという謙虚な気持ちじゃないと、 対話なんてできないのに」

「さっきから聞いていたら、 どうしてこの日記の作者はそんなに米国を目の敵にするの? 米国を批判することがファッショナブルだと思ってるみたいだけど、 そういう態度、大きらい。 第一、米国人にもいろいろいるんだから、 早急な一般化はやめてほしいわ。 しかも、 なぜあたしのように女言葉でしゃべる登場人物は『大きらい』 なんていう価値判断の仕方をさせられるわけ? これって女性は感情で物を言うっていうステレオタイプ化、女性差別じゃないの。 ゆ、許せないわ。きい」

真夜中2 (午前)

某くろきさんのサイトを参考にさせてもらって、 Googleでこのサイトを簡単に検索できるようにした」

「そのうちナマズを導入しようかと思っていたけど、 どうもこっちの方が便利そうなので。 これで動くと思うけど、 ethicsの他のページがひっかかるかもしれない」

「これは便利ね。あなたの暗い過去がすべてわかるわね。うふふふ府」

夜明け前

「ぼーっとしてたらもうこんな時間。 昨夜はぜんぜん勉強しなかったので自己嫌悪。 起きたらがんばろう」

「ぼーっと新聞ばっかり読んでても賢くならないわよ。 集中して哲学書を読み、明晰な文章を書き、人と対話しなさい。 ほんとにぐうたらなんだから」

昼下がり

「起きたら起きたで、すでに昼下がり。自己嫌悪」

「そんなこと言ってないで、さっさと勉強にとりかかりなさい」

「今週は、メタ倫理、生命倫理、ミルの三つの読書会が立て続けにある」

「昼下がり、某スタバに行って新聞を読もうと思ったが、 いつも同じところに行くのもなんなので、他の喫茶店を探す旅に出る」

「多様性が重要だものね。安易な画一化は避けないと」

「某北大路の鴨川べりでしばらく新聞を読んだあと、 寒くなったので近くの喫茶店に入り、生命倫理の勉強を少しする」

「それにしても喫茶店って、本当に勉強がはかどるな」

「今夜10時からNHK教育でヌスバウムが出る番組があるようだ」

「プレッツェルってそんなに危険な食べ物だったのか」

「これも陰謀かも」

成人の日についての社説

「『主張 若者に媚びる必要はない』 という産経の社説 (平成 14年 (2002) 1月14日[月] 先勝)。 若者に迎合する成人式を批判する硬派な主張」

成人式は子供が親から自立し、社会のルールを守る大人になる儀式である。新 成人に媚(こ)びてまで、やり方を変える必要はない。

知事や市長らの祝辞がたとえ退屈であっても、静かに聞くべきだ。その程度の 我慢もできないようでは大人になる資格はない。社会人になるのはどういうこ となのか、改めてかみしめる機会とすべきだ。同時に、自分のことだけでなく、 家族や故郷、国の将来も考える日本人になってほしい。

「しかし、 集中力や敬意のない若者の問題だから市は何もすべきではないっていうのは 現実的ではないよな。学校の授業にせよ、成人式の催しにせよ、 退屈であるよりもおもしろいにこしたことはないわけだし。 大人も新成人もどっちも努力すべきだというのが穏当な意見じゃないのかな」

「日本の教育、失敗してるよな」

「いや、大人になったことを思い知らせるために、 成人式で暴れたやつは逮捕して刑務所に入れてやればいいんだよ。 それこそ大人になることの意味だろ」

「いやいやいや。成人になったら一年間自衛隊に入って、 根性を叩き直してもらえ」

「戦争ハンターイ」

「朝日の新成人に向けた社説は(「成人の日――「ことづけ」伝えて」2002年01月14日)、 まるで中学生に向けたような文章。バカにしてるんじゃないのか」

「いや、こんなもんなんでしょ、二十歳の人の大部分が読める文章の限界は」

「しかも、一体何が言いたいのかわからん。 『ことづけをだれかに手渡す』って、成人式とどういうつながりがあるんだ?」

「君にも十分な読解力がないってことだろう、それは」

「この社説は意味不明だ。若者に媚びるな、朝日っ」

夜2

「なぜか下宿にあった某ヤンジャンと某ヤンマガを読む」

「某ヤンジャンは読むとなぜか殺伐とした気分になった。 某ヤンマガはすこし笑える」

「某サラリーマン金太郎を読むと、 某お好み焼き屋の匂い(臭い?)がしますよね。 いつもあそこで読んでたから、記憶が結びついていて」

夜3

「かつては神が合理的かが問われていた。 今日では道徳が合理的かが問われている」

「何それ」

真夜中

「某先輩と長電話し、環境倫理学について教えてもらう。感謝」

「さて、勉強勉強。読書会の準備をせねば」


15/Jan/2002 (Tuesday/mardi/Dienstag)

真夜中 (午前)

「すこしゴティエの勉強。続きは明日、喫茶店でやろう」

「ちゃんと勉強しろよ。せめて毎日6時間くらいはさ」

「では、これからちょっと勉強時間を計るようにしましょう」

昼下がり

「やっぱり起きると2時。なんてことだ」

「環境で文献紹介を書くことになった。〆切は来週」

夕方

Journal of Environmental Ethicsを借り出しに大学に来たら、 哲閲が閉まっていた。陰謀だ」

「しかたないので某所で新聞を読む。これから喫茶店で勉強しよう。 中央食道でもいいけど」

「中央食堂でしょ」

「出町柳駅の近くに新しくブルーズ喫茶ができていたので、入ってみる」

「なぜかジミヘンがかかっていたけど」

「2000年の秋ごろにできたらしいよ」

「なかなか居心地が良いが、 勉強するには今ひとつかもしれない。 真夜中までやっているのでそのうちまた行こう」

「買物をしてから下宿に戻ってきた。 明日歯を抜かれるので、スープを買ってきておいた」

夜2

「BBC WORLD SERVICEがやっているLearning English。 なかなかおもしろいが、 ダウンロードに少し時間がかかるのが難」

「BBCはホントに立派に仕事してるよなあ」

夜3

「中絶された胎児の写真を見て気分が悪くなる(Pro-Life Japan-Machida参照)」

「う。おれも気持ち悪くなった。 食事中、食事前、食事直後の人は見ないことを勧めます。 寝る前に見るとトイレに行けなくなります」

「しかし、そんなことを言うと、 牛を殺したり鶏を殺したりするのもエグいわけでさ。 人間の形をしてるからという理由だけで胎児を特別視する理由はないわけでしょ。 やっぱり中絶はダメだけど動物は食べていいっていうのは種差別だよ」

夜4

「昨日と同様、海親子丼を作る。ちまたで人気のプロジェクトXを見ながら、 ごはん1合半、一気に食べてしまう。うえ」

吉野ヶ里遺跡の発掘には、 あんなドラマがあったのか。涙したよ、おれは」

「うそばっかり」

「そういえば、先週のあさま山荘事件の回も見たな。 最近NHKばっかり見てるな」

「ちゃんとNHKにお金払ってるんでしょうね」

「うっ」

真夜中

「すこしこたつでうたた寝」

「まだ二時間半しか勉強してないじゃないの」

「なに、これからです」

今日の勉強時間…2.5hr


16/Jan/2002 (Wednesday/mercredi/Mittwoch)

真夜中 (午前)

「ゴティエの勉強中。ホッブズの説明には関心したが、 それ以降は難しい。勉強会までに二回読めるかな」

「わかるまで読め。百回読め」

真夜中2 (午前)

「気晴らしにビデオを借りに行きたいが、 今週はどうもビデオを見る時間はほとんどなさそうだ」

「お金もないしね。禁欲して勉強しなさい」

真夜中3 (午前)

「と、とっとにかくゴティエを読んだ」

「何どもってんの」

「ようわからんとこも多いけど、とりあえず読んだ。 外部性、minimax relative concession、transparencyについては 要勉強。最後のは特に注目すべきだ」

「はあ。今日はよく勉強したな」

「まだ3時間じゃないの。寝ないで勉強しなさい」

真夜中4 (午前)

「風呂。明日(というか今日)は歯医者に顔を見られるので、 気合いを入れてヒゲを剃ったら、顔が血だらけになる。 なんてことだ」

夜明け前

「なぜか哲学史の勉強。ピタゴラス」

「そんなことやってないで、シンガーでも読んだら?」

「数学好きのピタゴラスによれば、心は1で男は2、女は3で正義は4、 結婚は5で機会は7らしい。意味不明だが」

「とにかくひたすら一つの原理によって説明しようとするところが カッコいいんじゃないかしら」

昼下がり

「大学に来る。新しい学生証をついにもらう」

「哲閲にひさしぶりに入る。 やっぱり最低月に一度は入って、雑誌などに目を通さなければならない」

「月に一度などと言わず、毎週入りなさい」

「環境関係の本を借り出したり、 広島大の倫理学研究を借り出したり」

「広大は論文のオンライン化してほしいよね。 とくにJ.P.DeMarcoの『道徳理論の現在』の要約とかさ」

「あれはよく出来てるのに知られてなくてもったいないね。 うちもあのくらいの仕事しなきゃね」

夕方

「歯、抜いてきました」

「大丈夫だった?」

「それが、わりと簡単に済みました。 麻酔をしてから30分ぐらいで終わりました」

「痛かった?」

「いえ、麻酔をだいぶ打ってもらったので、 歯の根を引っこ抜くときはちょっとにぶい痛みがありましたが、 知らないうちに抜けていたのでびっくりしました」

「何をまた。手術中はずっとハレ・クリシュナって唱えてたくせに」

「ずっと唱えてなんていませんよ。ほんの数回だけです」

「これから痛くなるよ、きっと」

「そうですね。薬をもらってますが、 この麻酔が切れないうちにちょっと寝ます」

「右下の親知らずは、 左に比べてさらに下向きに生えているので、 歯茎から顔を出してないし、 抜くとなったら歯茎を切ったりして大変らしい。 他の歯を押す可能性があるが、 とりあえず痛くなるまでほっとけとのこと」

「なんで神さまは人間を作るときにもう少しうまく作ってくれなかったんだろう。 親知らずとか盲腸とか、設計ミスじゃないのかな」

「あ、もう麻酔が切れてきた。まずい」

「そういえば、抜いた歯の一部をもらってきました。 なんだか麻雀パイみたいですね」

「某君のお供で北海道に行くかもしれないので、 航空券を探しているが、なんでこんなに高いんだろう。 はやく全部一万円以下にならないかな」

「温泉。カニ。カ、カニカニ。ラーメン」

「違うでしょ、勉強に行くんでしょうが」

「カ、カニカニ」

「お、 .emacsに(if window-system (require 'hilit19))を足すとタグがカラーになった」

「まだそんなこと言ってるのか」

夜2

「わ、やっぱり穴が空いている」

「ガムを入れておく袋にでもしたら便利なんじゃない」

真夜中

「う。ちょっとうたた寝。歯というか歯茎が少し痛くなってきた」

「何か食べて薬を飲んだ方がいいんじゃないの」

「う。痛たたたた田」

真夜中2

「というわけで、北大に研究会の冷やかしに行けそうだ。 北大にも学生用の研究室はあるよな、きっと」

「何を考えてるんですか、あなたは。 もう立派な大人なんだからちゃんとホテルに泊まりなさい」

「か、観光は? カ、カニカニ。カニカニ」

今日の勉強時間…4hr


17/Jan/2002 (Thursday/jeudi/Donnerstag)

真夜中 (午前)

「ふ〜ん、某メルマガ情報によると、 NTTの子会社が電子政府と民主主義に関するアンケートをやってるそうだ」

「そりゃ、NTTはオンライン選挙などのインフラ作りで一儲けできるだろうからな」

「ま、夢のない発言」

「ここらへんちゃんとフォローしとかないとな。 民主主義をもっと真剣に勉強しなくちゃ」

「メイルを書いていたら日付が変わってしまった」

真夜中2 (午前)

「そういえば、洗濯物を外に干してからもう三日経つ」

「だめでしょう、それは」

「だって、雨のせいでいつまで経っても乾かないんだもの」

「そういう場合は部屋で干すんですよ」

「なるほど、勉強になりました」

真夜中3 (午前)

「参考になるかと思い、ネーゲルの『コウモリ云々』 に入っている「主観的と客観的」を読む」

「自由意志や自己同一性の論争や功利主義と反功利主義の議論を 主観と客観という観点から切っていてなかなかおもしろい。 解決は着いているわけではないが」

「翻訳が若干読みにくい。許容範囲だと思うけど」

「原著持ってたでしょ。文句があるなら原著で読みなさい」

「そもそもどこにあるのか探すのがめんどうで…。あ、あった。 あれ、この論文やっぱり以前に読んでるな」

「原文と参照したついでに書いておくと、 翻訳308頁に誤訳があり、正しくは 『次のステップはしかし、 自由意志による行為は、決定論の存在によって脅かされるように見えるとしても、 決定論の不在によって含意されるわけではないという発見である』 となるはず。翻訳のように『決定論の不在を含意している』だと意味が通じない」

「君の訳でも普通の人には理解できんよ」

「そうでしょうね。要するに、決定論が成立していないからといって、 それだけでは自由意志による行為が存在することにはならない、という論旨です」

「う。ネーゲルの論文を読み返すつもりが、もうこんな時間。 起きてから勉強しよう」

「間に合うのかしら、そんなことで」

昼下がり

「午前中に歯医者に行って簡単に診察してもらったあと、 某スタバで3時間近く勉強」

「寝てたくせに」

「寝てたのはちょっとだけですよ。ほんの30分くらい」

「しかしネーゲルの文章も抽象的でわからんなあ。 読んでてもぜんぜん頭に入ってこないぞ」

「ネーゲルを責める前に自分を責めなさい」

「メタ倫理勉強会。ネーゲルとゴーティエ。 某先輩と某先輩に参加していただく」

「とくにネーゲルに苦しむ。 最近簡単なものばかり読んでいたせいか、 これほど理解に苦しむのはひさしぶり」

「修業が足りんよ。君は異質なものを理解する努力を怠っとるからな」

「恥ずかしながらおっしゃる通りです。 もっと修業を積みます」

「そのあと某君とお好み焼き屋で食事」

「今日はたくさん勉強したなあ」

「何を寝ぼけたことを。今夜は生命倫理の読書会の予習でしょう。 自由主義読書会の予習もしなさい。さあ、さっさとしなさい。 今すぐしなさい」

今日の勉強時間…7hr


18/Jan/2002 (Friday/vendredi/Freitag)

真夜中 (午前)

「日付が変わるまですこし寝る」

「真夜中に来客あり。院試の英語を見てくれと某君が訪ねてくる」

「一緒にうどんを食べる」

「まだまだ修業が足りんが、がんばってほしいものである」

「人のことを心配してないで、自分が修業しなさい」

「それにしても、また寒くなってきましたな。 お互い風邪を引かないように気をつけましょう」

昼下がり

「やっと起きた」

「すこし頭痛が」

「風邪かな」

「昼下がり、郵便局で某ブツを発送したあと、 某スタバで生命倫理学読書会の予習」

「それから大学に行き、哲閲から雑誌を借り出してコピー」

「さらに某所で某助教授から翻訳指南を受ける。まだまだ修業の余地あり」

「翻訳と読者に気付かせないような訳を目指しなさい」

「実はこの日記も火星語か何かからの翻訳だったりして」

「それから生命倫理学読書会。母体と胎児の利益の対立について。 勉強になった」

「某先生から仕事をもらう。あれ、今月末が〆切と言われたが、 今月末にはすでにいろいろ〆切があるな。大丈夫か」

「買物をしてから下宿へ。 腹が減っていたのでとりあえずうどんを作って食べる」

「さて、明日の読書会の準備をせねば。 今夜中に論文を三つ読まないと」

「そういえば、 ジョージ・ハリソンの`My Sweet Lord'が英国で先週シングルで再発されたそうだが (追悼兼チャリティ)、 今週末のチャート1位は確実だそうだ。やるな、ジョージ」

夜2

「う、テレビで『ミッション・インポッシブル』がやっている。 いかんいかん、勉強勉強」

夜3

「勉強中」

「(if window-system (require 'hilit19))を使うと、 大きいファイルを使うときにやたらと遅くなって不便。モノクロでいいや」

「interestってあいまいな言葉だよなあ。関心なのか、利害なのか。 ファインバーグはHarm to Othersで 『interestsとは人が関心(stake)を持っている事物である』 って言ってるみたいだし。interestsって事物だったのか?」

「そもそもinterestsとは人がstakeを持っている事物って、 ほとんど言い換えじゃないの? have an interest inとhave a stake inって ほぼ同義語でしょ?」

「『二つのinterest概念』って論文を書いてみたら? 言語分析の手法を使って」

真夜中

「やっと論文一本(リーズの「ミル『自由論』再読」)読んだ。 翻訳なのに二時間もかかってるな。いかんいかん」

「いや、そりゃ速く正確に読めればそれに越したことはないけど、 読み飛ばすよりはちゃんと精読した方がいいんじゃないの」

今日の勉強時間…4.5hr


19/Jan/2002 (Saturday/samedi/Sonnabend)

真夜中 (午前)

「鍋。サケ、エビシューマイ、その他」

「眠くなってきたが、勉強せねば」

「その『せねば』というのは道徳的義務ですか、それとも自愛の思慮ですか」

「今勉強しないと、明日の朝勉強しないといけなくなるという意味では 自愛の思慮です。 また、勉強しないで読書会に臨むと、 内容がわからなくて困るという意味でも自愛の思慮です。 他方、勉強しないで読書会に臨んだことがばれると道徳的非難を受ける という意味では、道徳的義務とも言えるでしょう」

真夜中2 (午前)

「グレイの論文(「ミルの幸福概念と個性の理論」)も読んだ。 よくわからんが、ミルは実存主義的な完成主義者だったらしい」

「何それ」

「ミル的には、人間は本質(本性)を持たないが、 幸福になるためには自律的選択を通じて自分らしさ(本来性、個性) を見つけていかないといけないそうだ。 快楽の質の議論も、自分探しの一環として理解できるんだそうだ」

「また自分探しか」

「しかし、幸福ってなんでしょうね」

「うむ、それは今日の倫理学で議論されてないトピックの一つだな」

「あれ、今ここに、広大の何とか先生が来なかった?」

「それはともかく、もうすこし本を読んだら寝よう。 明日は早起きして喫茶店で某論文を読むべし」

真夜中3 (午前)

「なんとなくギコナビを入れてみた。 あんまり2ch読んでないんだけど」

「だめですよ、ちゃんと読まないと。あそこにすべての情報があるんだから。 日本人の集団的思考の最高峰ですよ」

夜明け前

「ちょっと哲学史の勉強。まだピタゴラス、ヘラクレイトス」

お昼前

「早起き」

「10時半は早起きとは言わんよ」

「じゃあ、相対的に早起き」

人民日報って、 日本語でも読めるのか。さすが中国、広報活動が立派。 朝日もイスラム語やフランス語でも出せ」

「いや、朝日はBBCや人民日報と違って私企業だから…」

「すごい、法輪功真相のページを読むと、反邪教パネル展とか書いてある」

「まあ、いろいろなニュース源から情報を得るために、ここも参考に読みなさい」

「お昼に某スタバで論文を途中まで読んだあと、自由主義読書会」

「あそこのエスプレッソはまずい。タバコの灰にお湯をかけたような味だった」

「そんなの飲んだら死ぬって」

「他者危害原則を『他人の利益に影響を与えない限り』 と解釈するリーズの論文と、 自律と幸福の関係を論じるグレイの論文(途中まで)」

「利益の概念については論文を書くべきかもしれません。 『価値判断の入らない利益の定義はできるか』というテーマで」

「夕方に勉強会が終わったあと、某ディスカウントストアに行き米を買う」

「ようやくamazon.co.ukからFawlty Towers Series 1&2の DVDが届いたので、気晴らしに見る。 ドイツ人ネタは何回見てもおもしろい」

「これを見たら次は環境の勉強をせねば」

真夜中

「う〜ん、Fawlty Towers、おもしろい。 ストーリーがうまくできているし、登場人物も良い」

「おまけで付いてるジョン・クリーズのインタビューもなかなか含蓄があっていい。 ポリティカル・コレクトネスについてのコメントとか」

「もっとおもしろいのあるでしょ、フレンズとか。 最近のコメディも見てちゃんと研究しなさいよ」

「いや、別に研究しなくていいんだけど」

「何を言ってるの。 あんたの文章はいつも無内容な上に無味乾燥であくびが出るものばっかりなんだから、 せめてユーモアの一つでも入れられるように努力しなさい」

「いや、ユーモアよりもむしろ論文の構成力でしょう。 プロットをよく考えて、 どこを盛り上げてどこで一息付かせてとか、ちゃんと考えるべきでさ。 もっと読む人の身になって書く訓練をしないと、 ろくな研究者にはなれないよ」

「このコメディも1分の場面を編集するのに1時間はかかったって言ってたからね。 君もそのぐらいの努力をすべきだよ」

今日の勉強時間…7hr


20/Jan/2002 (Sunday/dimanche/Sonntag)

真夜中 (午前)

「U2ファンはここ(BBC Radio 2)をチェック。 二時間弱のドキュメンタリー、その他が聴ける」

「昨日に引き続き鍋」

「独りで食べる鍋は寂しかった?」

「いや、世の中には同じ境遇の人がたくさんいるようだから。がんばるよ、おれ」

「精神分裂病が、統合失調症という名称に変更されるようだ (毎日新聞参照)」

「精神分裂病は否定的な響きがあるからね。 こういう言葉はときどき名称を変えることが賢明だと言えるね」

真夜中2 (午前)

「某君と雑談したり」

「え、猥談?」

「いや、雑談です。人聞きの悪い」

「雑談も議論のうち。もっと雑談しないといけないよ。 本なんか読んでないでさ」

「そうそう、君は本や論文を読むことだけを勉強と考えて『今日の勉強時間』 を記してるだろう。その考えがダメなんだな。 人生24時間これ勉強、っていう気じゃないと」

「いや、しかしそれでは毎日『今日の勉強時間…24hr』になってしまって 意味がないので…」

夕方

「げ、起きたら昼下がりだった。朝まで萩尾望都を読んでたせいだ」

「萩尾望都のSFを読むのも勉強のうち」

「いや、それじゃ勉強の定義が広すぎるってば」

「萩尾望都の『マージナル』を読了。よくできている。 あまり感想はないが」

「感想がないのはなんでなの」

「なんでしょうね。倫理学的な問題が見い出されないからでしょうか。 話はよくできてるんですけどね。 この人の物語にあるSF的な時代と場面の設定は魅力的なんですけど、 雰囲気でぐいぐい最後まで読ませるだけで、 登場人物の倫理的な決断について読者に考えこませるような手のものでは ないのかもしれません」

「ホモな雰囲気に引いてしまうのかも」

「少年マンガが女性についての妄想で満ちているように、 少女マンガは男性についての妄想で満ちているんでしょうかね」

「うむ、しかし男性誌における女性は女性らしさを 異常なまでに強調したものであるのに比べ、 女性誌における男性は、 むしろ中性的あるいは女性的な側面を強調していると言えるかもしれんな」

「あんまり女性誌読んだことないくせに。 それは早急な一般化というやつです」

「さあさあさあ、勉強しろ」

「上のような陳腐でやる気のない文章を書いているのは、 こう、更新脅迫症みたいなのに駆られているからだな」

「環境倫理の論文を読みに某スタバに行ったが、 あまり集中できなかったので一時間ほどで撤退」

「同じ建物の中にある本屋さんを歩き回って情報収集する。 すると突如、創造力の発作に駆られ、何かを書きたい気になったが、 食料品売り場に降りていく頃には収まってしまっていた。もったいない」

「ときどき本屋を一周すると、日本人の関心のありかがわかっていいね」

「ある衣服店に書いてある`We sell a tasty life.' って変な英語だなあと思ってたけど、 tastyにはtastefulと同じ意味もあるみたいなので、 別に変でもないのかな」

「しかし、やっぱり『われわれはおいしい生活を売ります』 って思うよな、これじゃ。lifeもlifestyleの方がいいんじゃないの」

夜2

「勉強してる?」

「いや、つい『ジョー・ブラックをよろしく』を途中から見たり、 『007 ゴールデン・アイ』を途中から見たり」

「アンソニー・ホプキンスは味がありますね」

「ブラッド・ピットもなかなかいけてます」

今日の勉強時間…1hr


何か一言

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KODAMA Satoshi <kodama@ethics.bun.kyoto-u.ac.jp>
Last modified: Sat Feb 02 00:30:27 2002