11月下旬号 / 12月中旬号 / 最新号

こだまの世界

2001年12月上旬号

「ぼくみたいなやつを会員にするようなクラブには絶対入りたくない。 これが大人になってからのぼくの人生で一番の冗談さ。 女性との関係についてのね」

---Woody Allen, in Annie Hall

事実と意見は明確な境界線によって区別されるわけではない。 それはスペクトル(連続体)である。 その一端には「二足す二は四」があり、 他端には「社会保障制度は民営化されるべきだ」がある。 メディアの偏向をめぐる論争にかかわる問題は、 たいていその間にある。(中略) 「飛行機を乗っ取りペンタゴンに突っ込ませるのは悪いことだ」というのは、 意見というよりは事実に近い。

`There's no pleasing conservatives in search of media bias'
(The Washington Post Opinion), in The Guardian Weekly,
November 15-21 2001, p. 36.

George Harrison, guitarist, singer, songwriter, born February 25, 1943; died November 29, 2001

`Obituary: George Harrison',
in The Guardian Weekly (December 6-12 2001).

「あなたさまは熱心に天のことを知ろうとなさいますが、 ご自分の面前のことや足元のことにはお気づきにならないのですね」

---プラトン『テアイテトス』より
(田中美知太郎訳、岩波文庫、109頁)


主な話題


01/Dec/2001 (Saturday/samedi/Sonnabend)

真夜中 (午前)

ドロのように眠る。

あ、研究室の連中もウイルスにやられた模様。 某師匠も書かれていたように先日からやたらとウイルスメイルがやってくるが、 Al-mailを使っているので大丈夫。Al-mail万歳。

夜明け前

ひさしぶりにUNIXをいじり、メイリングリストを作ってみる。 使い方をすっかり忘れていたのでやたらと時間がかかった。

うどん。

寒くてキーボードを打つ手がかじかむ。

夜明け

寒い。

そういえば、昨日某育英会に就職免除届を書留で送っておいた。

早朝

ある27才男性の独り言: 「ジョージ・ハリソンがビートルズを脱退したとき、27才。 一郎、27才。 おれ、27才。 …。……。………。 いいんだ、おれ、大器晩成型だから」

お昼前

少し寝る。 起きてからニュースやビデオクリップを見ていると、 ジョージ・ハリソンの死が徐々に身に染みて感じられてくる。 再度合掌。

ポール・マッカートニーは一緒に曲を作ったジョン・レノンを失くし、 愛妻のリンダ・マッカートニーも亡くなり、 さらに親友のジョージ・ハリソンまで失なってしまった。 まあ60年も生きていればそういうことになるんだろうけど、 悲しいだろうなあ。 ハリエット・テイラーを失ったミルも晩年は辛かったにちがいない。 「好きな人が生きているというのはすばらしいことだ」 という言葉をしみじみと理解。え、誰がそんなこと言ったんだって? いや、今作ってみたんだけど…。

夕方

第二回自由主義読書会。『自由論』第四章、第五章。 現行の反感・共感の原理ではなく、 危害という基準で個人が自由にやっていいことと悪いことの境界線を定めるべきだ、 という話と、その適用例として、酒や毒の販売、 結婚や親の子に対する教育義務などについての議論。 次からはしばらく『ミル「自由論」再読』を読み進める予定。

死ぬ者あれば生まれる者あり。 どこかで女子が生まれたらしい。

真夜中

読書会後、爆睡。買物に行けず。

危うく銭湯にも行きそこねるが、 なんとか間に合う。 今回は水風呂にも足を入れてみた(ヒザまで)。

風邪気味。やばい。


02/Dec/2001 (Sunday/dimanche/Sonntag)

真夜中 (午前)

起きる。もうすこししたら夜明け。 深夜テレビでやっていたジョン・クリーズの映画を見逃す。 そういえば昨日からハリー・ポッターが日本でも上映開始したのだった。

夜明け

こないだ生命倫理学勉強会で発表したシャム双生児についての ハンドアウトを公開。 論点を煮詰めてないし、英語の引用だらけなので、 あまり役に立たないだろう。 これを元に論文を書く予定(たぶん)。 ちょっともう時期はずれなんだけど。

翻訳の推敲。今週末に仕上げてしまいたかったが、 時間切れ。先にD論の計画書を書くべし。 今週の半ばにメタ倫理読書会もあるから準備が大変だ。

お昼

ちょっとしばらく「〜しまう」を使うことにし、 その語感について研究してしまう。

某スーパーに買い出しに出かけてしまう。 思ったよりいろいろ買い込んでしまう(主に冷凍食品)。

洗濯してしまう。

日記の整理してしまう。

昼下がり

玉子を加えるだけで作れるカニ玉を作って食べてしまう。 これがなかなかイケてしまう。

ある27才男性の独り言: 「17才で作家になる人もいてしまう。 …。……。 いいんだ、おれ、大器晩成型だから」

夕方

天気が良いので自転車に乗って少し散歩してしまう。

曼殊院まで行ってしまう。入口まで行ったが、 金を払ってまで入る気はしなかったので今回はパスしてしまう。 そのうちまた行こう。

この写真は曼殊院の近所で撮ったもの。 左京区が田舎であることに気付いてしまう。

ジョージ・ハリソンの遺体はすでに火葬されて灰になっていて、 近くインドの聖なる川(ガンジス川?)に流されるとのこと。 本人がひそかに用意していた遺作アルバムが来年はじめに出るそうだ。 ロン・ウッドのソロアルバムも出たようだ。


03/Dec/2001 (Monday/lundi/Montag)

真夜中 (午前)

起きてしまう。かなり寝てしまう。

米国南部のアラバマ州では1996年から生物学の教科書に 「進化論は疑義のある理論である」 というステッカーが貼ってあるそうだ (The Guardian (The Editor), 17/Nov/2001, p. 14)。

この措置については科学者による批判が大きいそうだが、 真理がドグマ化しないためには、 かえってこちらの方がいいんじゃないかと思ってしまう。 日本でもどんどんやってしまうべきだ。 「地動説は疑義のある理論である」とか 「なんとか遺跡の真偽は疑義がある」とか 「なんとか家が万世一系だというのは疑義のある説である」とか。

そういえば、ジョナサン・ウルフが『政治哲学入門』で、 ダーウィンの進化論論争を例にとってミルの表現の自由の擁護を説明していたな。 (原著122-3頁)

夜明け前

玉ネギを入れるとできるエビチリを作って食べてしまう。 しかも三人前いっぺんにできてしまうので、 一人で食べるには大量すぎて気持ち悪くなってしまった。 カニ玉は二人前ずつ作れるが、 玉子を4つも使うのでちょっとこわい。

あれ、便覧を読むと、 予定では12月に課程博士論文を提出することになっている。

「2. 博士論文指導: 博士論文指導の時間を定期的に設けるので、 必ず出席すること」。 ふ〜む…。 あっ、そうかっ。 定期的といっても、76年に一回とかなのかも知れないなっ。

便覧にある「課程博士論文執筆要綱」は修論や卒論執筆者も参考になるので 読んだ方がいいと思う。論文の体裁や、引用の仕方のガイドラインがある。

資格申請書を書くためのアイディア(観念)を模索中。 一人ブレインストーミング。

英国に行くまでは、ベンタムの功利主義を思想史的に解明する、 すなわちベンタムの思想のどの部分は誰から引き継がれてきたのか、 あるいは誰の思想を発展させたものなのかなんてことが気になってたけど、 今はあまり差し迫って重要でない気がする。 また、 スコフィールドの講演がきっかけになって法実証主義と功利主義の関係なんかも気になっていたけど、 これもまああんまりモノになりそうにないので、 置いといてもいいかなと思う。 (ただ、やはりまだ人権論、自然権論については気になるが)

そうするとやっぱりこないだディサテーションでも書いた民主主義論を 功利主義の検討も兼ねて議論する、ということになるのかな。 前半で基礎づけとしての功利主義の検討をしっかりやり、 後半でその功利主義の一部としての民主主義を現代的問題(メディア、選挙、 官僚制の腐敗など) までを視野にいれて論じたら立派な論文になるだろうか。 あ、あと子ミルとの比較対照もしながら。

最終的に何が言いたいのかを考えないとな。ちょっと寝てから考えるか。

お昼すぎ

起きてしまう。トースト、パンプキンスープ。

ステレオフォニックスのHandbags and Gladragsかっこいいな。 CD買うか。あ、まだシングルしか出てないようだ。 この歌はロッド・スチュワートのカヴァーらしい。

う。『フォールティ・タワーズ』のコンプリート版がDVDで出ている。 つい注文してしまった。

昼下がり

「女の子のせいか、あまりお祭りさわぎになりませんね。 男の子だったら国民の祝日になっただろうにというウワサもあります (BBC Radio 2で耳にしました)」

「そ、そそそんなに男が欲しいなら性転換してしまえっ」

昼下がり2

ぼーっとネットで新聞を読む。イスラエル自爆テロ、エンロン破産など。 社説は台湾総選挙で民進党が国民党に大勝した意義についてのものが多い。

ぼーっとしてないで資格申請書を書こう。

と思いつつも、ついつい『怒りの鉄拳』を観てしまう。名作。

やばい、眠くなってきた。

夕食。エビシューマイその他。

BBC Radio 5 Live。 イスラエルの自爆テロについて真剣に討論しているが、 英国対インドのクリケットの試合が進行中のため、 討論の途中で何度もクリケットの様子が報道される。 なんか変だ。

真夜中

すこし早目に銭湯に行くと混んでいた。刺青の男が3人ほどいた。 ここは巣窟らしい。水風呂、太ももまでつかる。

おれが某ユニクロのフリースだけは買うまいと思っているのは、 いたるところで見るという理由からだ。 が、今日風呂から出て服を着ていたら、 近くにいた中学生がおれのとそっくりのパンツをはいていた (しかも相手にも気付かれた)。なんてことだ。もう死のう。


04/Dec/2001 (Tuesday/mardi/Dienstag)

真夜中 (午前)

うわっ。寝てた。

「逃避行動としての睡眠だな」

「彼、ちゃんと書けるんでしょうか」

「だめなんじゃないの」

「いやいやいやいやいや」

「なんかおもしろい夢を見てたんだけど忘れた」

「多様な思考を抑圧することによって人格の統一性を保とうとすることはやめた方が いいと思うんですよね。人格の複数性を認めるべきというか」

「アニマ、アニムス、アニムスメ」

「そうね、自分のなかの女性を解放しないとね」

「気持ち悪いなあ」

「そういえば、某先輩の『シジウィックと現代功利主義』 はおもしろい本だよなあ」

「きみは『ベンタムと現代民主主義』ってな題にしたら。ぷっ」

「『ベンタムはとっくに乗り超えられた』とか。ぷぷっ」

「不謹慎だ」

「不謹慎だ」

「言論の自由です」

「自由の濫用だ」

「はきちがえだ」

「ミルの表現の自由で問題なのは、 ヘイトスピーチ(差別的言論)をどうするかってことだよな」

「『ホロコーストはなかった』とか 『南京大虐殺はなかった』というのはいいんでしょう? 『ダーウィン進化論は間違ってる』というのと同様に?」

「真理はつねに挑戦されないとね。 いつ挑戦されても常にチャンピオンの座に立ちつづけているものが 暫定的に真理と認められる」

「関西弁でしゃべる自分ちゅうのも抑圧されてんなあ」

「抑圧ハンターイ。抑圧ハンターイ。自己を解放せよ。自己を解放せよ」

「最近自分の人格が安定していたのは、このこだま日記における人格、 つまり日記人格が安定していたからだと思うんですよね。 この日記人格に自分をアイデンティファイしていたというか。 こここの日記人格をだだだ打倒しないとしないとしないとととととと」

「暫定的な対応策として、今後はすべての発言を引用符つき、 カッコつきで行ないたいと思います」

「賛成」

「サンセーイ」

「さんせい」

いやだ。

夜明け前

「ツメを切ってる場合じゃないでしょっ」

「なんか書く気にならないのよね? ライターズブロックっていうか?」

「アップトークでしゃべってないで、とりあえず書き出せってば」

「ちょっとここに来て書いてみなさい」

「はいはい」

(1) 論文の進行状況と今後の作業の見通し

「ぜんぜん書けてません。いくつかネタになる論文は書いたけど。 今後の見通しは暗いです」

「そういう風に書くんじゃなくて、
『これまでD論執筆を念頭に置いていくつかの論文を学会で発表してきた』
とか
『今後は海外渡航して資料を集め、学会や研究会を通して研究をすすめ、 二年をめどにD論を完成させる予定である』
とかさ、そういう風に書かないと」

「そもそもなんで先輩たちの資格申請書をコピーさせてもらわないのっ。 先達はあらまほしきでしょうが」

「すいません。ぐうたらで」

「あやまってどうするの。この役立たず」

「あああ、も、もっと言ってくださいっ」

「はいはい、次、次」

(2) 論文全体の章・節および見出しを含む詳細な目次

「こんなのできてたらもう和辻賞取ってるがな」

「ぐずぐず言ってないでとにかくなんでもいいからデッチあげなさい」

「了解。デッチあげます。デッチあげるのは得意なんですよね」

早朝

「MSNホームページによると、 昨日流行語年間大賞の授賞式があったそうな。 授賞式には6つの流行語を生みだして受賞した小泉首相も来てたそうだけど、

[流行語に選ばれた]「抵抗勢力」は、 候補者に挙げられた政治家が皆辞退したため、受賞者はいなかった。

んだそうな」

「あんたっ、何やってんのっ」

「い、今書いてます、今書いてます。ほら、下を見てくださいっ」

「何もないじゃないのっ」

「え。あれっ、さっきまであったのにっ」

「(こちらに移動しました)」

「朝食。パンとパンプキンスープ」

「京都市内のフレッツADSL 8Mの申込がNTT西日本のサイトで始まってるけど、 某生協がまだ1.5Mしか対応してないので変更できない。くそ、某生協め」

お昼

「下宿でキムチ雑炊を作って食べたあと、 大学に来て申請書を書こうと思い、 さっき来たんですが、LANカードを忘れてしまいました」

「ネットで遊ばなくていいんじゃないの、その方が」

昼下がり

「まじで、(1) 論文の進行状況と今後の作業の見通し、って何を書くんだろう? 第二章と第三章は草稿があり、これから第四章と第五章を書く予定ですとか? そんなこと書いても意味ないよね」

「いつ書けそうかとかじゃないの、きっと」

夕方

とりあえず書けたので事務に出しといた」

「某授業料免除は可否保留と言われる。う〜ん。 博士課程修了祝いで免除してくれないかなあ」

「甘い甘い」

「それにしても、あとから気付いたが、 民主主義の功利主義的基礎づけっていうタイトルは却下されるだろうなあ。 一般的すぎるというか、功利主義って誰の?っていうことになるだろうから。 しかし、ベンタムだけじゃなくてミルの議論もしたいし、 ベンタムにおける民主主義の功利主義的基礎づけとか、 民主主義の古典功利主義的基礎づけなんていうタイトルも今ひとつサエないし」

「ちゃんと事前に某助教授や某先輩とか某君とかと 相談しないからそういうことになるのよ。いつまで経っても成長しないわね」

「おっしゃる通りです。耳が痛いやら情ないやら」

「某所で履歴書作成してた。これがまたたいへんで。辛気くさいし」

「某先輩にお世話になりました。ありがとうございます」

夜2

「下宿戻ってきた。やっぱあれやな」

「なんやアレて」

「下宿の方が落ちつくわ。コタツ入って」

「もう中年のオヤジやなあんた」

「やかまし。あれや、あれなんや」

「だからなんやアレて」

「もう大学には居場所ないちゅうこっちゃ。 おれはもうお客さんなんや。エイリアンや」

「ここでボケなアカンねやろけどしんどいからもうやめようや、 下手な関西弁は」

「そうですね。ツッコミするのとか疲れるもんね」

「とにかくしんどいし、あれ、しんどいは関西弁か。 まあなんでもええわ、もう寝よ。ほんで寝てから勉強しよ」


05/Dec/2001 (Wednesday/mercredi/Mittwoch)

真夜中 (午前)

「4時間ほど爆睡。ちょっと体調悪し。 コタツで寝るのはよくないのかもと実感しはじめる。まる、と」

「こ、ここここの産経の社説

別姓論はフェミニズムや個人主義を重視し、家族のきずなを軽視する傾向があ る。今、日本は家庭内暴力や幼児虐待が深刻化している。そんな時期に、民法 改正を急ぐのは家庭崩壊を助長するようなものではないか。

「主張 法案提出急ぐ必要はない (夫婦別姓)」(12月4日)

夫婦別姓→家庭崩壊という根も葉もない因果関係をでっちあげやがって。 フェフェフェフェフェミニズムをばばば馬鹿にしやがって。 こっここ個人主義の何が悪い。人がなんて名乗ろうが個人の自由だ。 そんなに家庭崩壊がこわけりゃ離婚も禁止しろ。 尊属殺人を廃止したら家庭が崩壊したか? してないっ」

「まあまあまあ。社会のきずなも家族のきずなも大事ですからね。 やっぱり倫理ですよ、倫理。これからは。個人主義はいけません。 人の間と書いて人間と読みますからね」

真夜中2 (午前)

「部屋寒すぎ。上半身がこごえる。悪寒。 毛布にくるまるべきだろうか。まる、と」

「The Editor (Nov. 24. 2001)に載ってた、 ある米国の大学生が歴史の試験に書いたとされる誤り。

Anarchism is a system of government headed by an anarch. Canada, for example, became an anarchy in 1867.

「無理に訳すとすれば、 『無政府主義とは、ある無政府によって率いられる政体のこと。 たとえばカナダは1867年に無政府政体になった』。 『大学生による世界史』という本からの引用だそうだ」

「『大学生による哲学史』とかも作れそうだよね、この調子で」

夜明け前

「キムチ雑炊を食べてコタツの温度を上げたら、ちょっと寒くなくなる。まる、と」

「しかしこの調子だと1月2月が思いやられるな。 コタツに足を入れっぱなしなのでもうヒカらびてしまって歩けなくなったし」

早朝

「後輩の某さんの卒論草稿を読ませてもらう。 ロックの所有論がテーマなのでいろいろと腹が立ち、 ときどき全部燃やしてやりたい気持ちにもなったが、 卒論としてはよく書けている。 とくに日本語の達者さは今のおれでもかなわんと思われるほどだ。 おれも負けないように修業に励もう。まる、と」

「またまた。心にもないことを。ほんとに女性には甘いんだから」

「ホンネを言わないとこがあれだよな。偽善者。似非フェミニスト」

「卒論って恥ずかしいよね、話は変わるけど」

「議題変更ハンターイ」

「議題変更ハンターイ。こだまの偽善を追求せよ」

「ごめん、もう寝るんでまた今度」

「あ、逃げた。夢の中まで追えっ。徹底追及せよっ」

「あ、そういえば、 某氏の論文も読ませてもらいます。 なるべく今週中に」

早朝2

「昨日の朝刊を今ごろ読んでる。 ミル的には犬を食おうがブタを食おうが鯨を食おうが個人の勝手だよな。 西洋人が反感と共感の原理に従って批判するのはおかど違いだろう」

「いや、犬と鯨はブタや牛や羊と違って圧倒的に知性的だ とかいう基準を用いるんじゃないの、きっと。人格があるとか」

「夫婦別姓法案、今期国会見送り。 『性が変わると仕事に不便だとか、 アイデンティティが損なわれるとか言うが、それが結婚というものです』だって。 てってって、手前の勝手な結婚観を人に押しつけるんじゃあねえっってばっ。 今どきそんなことを言ってる国が他にどれだけあるんだっ」

「誤謬論的に言えば恣意的な定義というやつですな」

「もしもし、そこのあなた、漢字が間違ってますよ。 『性が変わると』じゃなくて、 『姓が変わると』でしょう」

「まる、と」

お昼

「わ。某雑誌の原稿の依頼がまわりまわってきた」

「え、何それ」

「ちょっと詳しくここに書くとさしさわりがあるかもしれないので控えるけど、 とにかく現代哲学のウェブサイトを100個ほど短かい紹介文付きで紹介しないと いけないらしい。5日後が〆切とかいうむちゃくちゃな話だけど、 そこは無名貧乏学生、乗らないわけにはいかない」

「現代哲学? おれ1はちょっと不適任なんじゃないの」

「不適任も不適任。 だいたいそんなのアリアドネ とか哲学・倫理学・宗教学関係国内リンク集を見れば済むことじゃん。 あ、おれ1、そこから剽窃する気だろう」

「ぎくり」

「そんな音しないって、ふつう」

「というわけで、 急いでこれから5日間で現代思想リンク集を作るつもり」

「しかし、それをウェブで公開するとやばいんじゃない。 本になるわけだし」

「そもそも現代思想って何かわかってんの、おれ1」

「まあなんとかなるんちゃうの、おれ1でも。 研究室の人にいろいろ教えてもらったりしてさ」

「これも修業なり」

「遠方より旅人シュークリームを持って来たる。まる、と」

「何それ」

「いや、 某後輩がシュークリームと交換に論文草稿を取りに来たのでちょっとコメントを」

「引き続き付け届け募集中」

「けしからん、付け届けは狙ってもらうものではない」

「どうでもいいこと言ってないで、さっさと明日の勉強会の予習をしなさいよ」

「了解、了解」

「う。二段組であと34頁読まないといけない…」

「まだぜんぜん手つけてへんやん、それやったら」

「いや、さきに序論を読んで明日の準備してたんすよ」

夜2

「買物に行ってきた。米を買う。まる、と」

「カニ玉食べる。うまい。 しかし玉子を四つも食べて大丈夫なのかな」

「朝日新聞の今朝の朝刊読む。 大阪市のカップル喫茶を警官がガサ入れしたところ、 警官のカップルが客としていたのが見つかったという話。 訓戒処分にしたんだそうだ」

「カップル喫茶ってなに?」

「カップルが集まってお互いにいちゃつく姿を見せつけあうそうな」

「ふ〜ん。だけど、 そういう連中を警察が公然わいせつ罪で捕まえるというのはおかしいよね、 ミル的には。みんな同意して外から遮断された部屋でやってるんだから、 人の勝手じゃないの」

「そうそう。 それに、そういうのじゃないと楽しめない人もいるだろうし」


06/Dec/2001 (Thursday/jeudi/Donnerstag)

真夜中 (午前)

「すこし寝てから銭湯に行ってきた。 風呂から出たら雨が上がっていた。まる、と」

「さて、予習予習。責任があるからちゃんと読まないとな」

「またまた。どうせ途中で寝るくせに」

「いや、ちゃんとやるってば。やります。あ、それと、 ゲソダイ哲学ウェブサイト厳選100選も作らないと。 明日からさっそく」

「オールタイムベスト100じゃないの?」

「そろそろウェブでもなつかしのウェブサイトとかそんな特集ができてるのかな。 あ、そういえばこないだ某氏の日記でそんな話を読んだな」

「ところでフランスのゲソダイ哲学の代表者ってだれだろ? デカルト?」

真夜中 (午前)

「内在主義と外在主義。道徳的に行為するのは合理的かどうか、 という議論」

「それ自体で合理的か、でしょ、正確には。だって、 自己利益になる行為だけが合理的だと仮定して、 さらに道徳的に行為することはつねに自己利益になるということが言えたら、 道徳的に行為することは合理的だということになるけど、 それは外在主義なんでしょ」

「いちいちこまかいな」

「しかも、内在主義にはいろいろあるわけで。 合理的であることは人を動機づけるかという問いにイエスと答えるのも 内在主義なんでしょ」

「BBC Radio 2で聴いたジョーク。 男が女に言う。『ねえ、きみは胸がぜんぜんないのにどうしてブラ着けてるの?』。 女はこう答える。 『え、だってあなたもパンツ履いてるでしょ?』」

夜明け前

「わからんとこ多かったけど、とりあえずダーウォルの論文読んだ。 次はフット。少し寝てから。まる、と」

お昼前

「フットの「仮言命法としての道徳」読んだ。 わからんとこあるけどめちゃおもろい。 次はねいぐる。まる、と」

「あんたっ。哲学ばっかりやってへんで、 ちゃんと燃えるゴミ捨てたんやろなっ」

「捨てました捨てました。アウトオブ義務から捨てました」

「よろしい」

お昼

「洗濯物を干す。眠い」

お昼すぎ

「昼食を食べた。粗食」

「新聞を読む。埼玉県の高校生のカップルが、 先生にも両親にも別れろと言われたのを苦にし、 二人で飛び降り自殺を計ったが、二人とも死にそこねたという話。 なかなかロマンチック。 今後の展開もできれば知りたいところ」

「片方だけ死んでたりするともっと劇的なんだろうけど」

「いや、片方だけ顔が変形してたりした方がおもしろいんじゃない。 愛が試されてさ」

「けっ、けっ、けしからん。人の不幸を楽しみよって」

「人の不幸を楽しめない人もやっぱり不幸だよね」

昼下がり

「あ〜。ネイグルの文章、抽象的でたまらん。つかれる」

「抽象と具体のあいだを行ったりきたりする文章、これ名文なり」

「抽象的な議論に付いていける人間、これ哲学者なり」

「いや、そりゃ物理学者でも数学者でも同じで。 問題は抽象度の高さじゃなくて、難解さじゃないの。 「女は自分勝手である」は「あの女性は自分勝手である」よりも 抽象度が高いけど、理解するのに難しいわけじゃないし」

「おれ1は単に論理について行けないだけでさ。 もうちょっとじっくり読む訓練を積む必要があるよね、 事実を知るために読むんじゃなくて、 論理の流れを理解するために読む訓練」

「ほんと、もうちょっと頭良くなってもらわないと困るよ」

「ウ、ウルセーッ」

夕方

「ネイグル読んだけどぜんぜんわからん。 そもそもなんで他人のリアルさを理解したらaltruisticになれるんやろ。 おれが利己的なんは自己理解が間違ってるのか。 ジョン・レノンが言うように、 I am he as you are he as you are me and we are all togetherなんやろか」

「んなわけないやん。おれとおまえのあいだには乗りこえられない壁があるわけで。 そっちに行けるなんてのはまったくの幻想で、 おまえがほんまに人間でロボットとちゃうというのもぜんぜん確かじゃないし」

「とりあえず某君に教えてもらおう」

「メタ倫理学研究会、終わり。ダーウォルとフット。以下メモ。

「ダーウォルは道徳/理由の内在主義と外在主義の区別 (道徳に従う内在的理由はあるかどうか)と、 理由/動機の内在主義と外在主義の区別 (理由はなんらかの仕方で内在的な動機づけを持つか)について。 これじゃなんのことだかまったくわからんな。

「フットによれば、 カントの定言命法には内在的な動機づけはなく、 道徳に従うべきだという感情はエチケットを守るべきだという感情と同様に 教育などによって習慣化したものにすぎない。 だから、道徳に従うことは絶対的な義務ではなく、 各人の選択に任されている。

「フットは道徳/理由の外在主義者、 すなわち道徳に従わないことはかならずしも不合理ではないと考えている (最近正式にこの立場を放棄したことを表明したようだが)」

「反省。もっときちんと予習すること。 人の話をもっとよく聞くこと。まる、と」

「難解なテーマだと、意思疎通するのが一苦労だよな」

「自分の意見には真理が3、虚偽が7の割合で混ざっていて、 他人の意見には真理が7、虚偽が3の割合で混ざっていると考えるといいらしい」

「ミルは言論の自由を論じるさいに、質問の自由について強調するのを忘れた。 質問はそれが(1)正しくても(2)間違っていても(3)半分正しくて半分間違っていても 有用であるから、社会的・心理的に抑圧すべきではない」

「けど、意味不明の質問とか、 しゃべりだしたら止まらない質問とかは抑圧してもいいんじゃないかな。 時間もないし」

「抑圧ハンターイ」

「抑圧ハンターイ」

「とにかくもっと勉強しろ」

「うどん食べた。ちょっと寝ないと死ぬ」


07/Dec/2001 (Friday/vendredi/Freitag)

真夜中 (午前)

「爆睡。4時間ほど死んだように寝てたようだ」

真夜中2 (午前)

ゲソダイ哲学リンク集を作り出した。 ちょっと分類がむずかしい。助けてアリストテレス先生」

「まだ情けないくらいできてへんけど、笑わんとってね。情報募集中」

「まだこんなんじゃ、先が思いやられるな。まともなリンク集作れんの?」

「ま、これも修業だ。いい機会なので現代哲学の大枠を把握してやろう」

「けど、現代哲学ってなんなのかしら。21世紀の思想?」

「フッサールやフロイトも現代哲学らしいよ、どうも。 要するに現代の日本思想に大きな影響力を持ってる哲学思想のことじゃないの」

「エヴァソゲリオソとか?」

「電気屋が工事に来る。 風呂の修理が済むまであと一週間ぐらいかかるようだ」

「こないだのB-52による誤爆についてのAnorakの記事、 Enemy within。 笑える」

お昼

「東京の某氏に時計台ネットを 教えてもらう。自分がずいぶん遅れていることを改めて自覚」

「ネットサーフしないもんね。いつも同じサイトに行って」

「それを言うなら、いつも同じ本を読んで、同じ新聞を読んで、 同じ食事食べて、もうこの保守性と努力の足りなさと言ったら」

「保守的な生き方ってエネルギー使わなくて楽だよね」

「相対的にいえば、児玉は、今日、同じものを読み、 同じものをきき、同じものを見、同じ場所に行き、 同じ対象に希望と不安とを向け…」

「とにかく、もっと情報網を広げる工夫と努力をしないと」

「新しいものに挑戦しないと。 ソロモンの境地に至るには100年早い」

昼下がり

「大学に来て、明日から文学部で開かれる某学会の準備の手伝い。 立て看を用意したり、みかんを食べたり」

「ちょっと熱があるんじゃないの」

「あ、オーストラリアの古本屋から本が届いた。

「学会の準備を済ませて下宿に戻ってきた。眠い」

「宣伝宣伝。 FINE NEWSLETTERの第9号が出た模様。 ES細胞研究の動向、コンピュータ倫理学、オンラインリサーチ倫理についての 論文が掲載されている」

「ところで、なぜ人を殺してはいけないんでしょう」

「ん、突然だな」

「いや、明日の某研究会の発表テーマの一つがこれなんですよね」

「しかし、それはどういう問いなわけ? いったい何が訊きたいの?」

「たとえば、なぜ駅前に自転車を置いてはいけないのかと訊くと、 通行人に迷惑になるからだ、とか、自転車を撤去されるからだとか 答えがあるわけでしょう。その答は、 わたしが駅前に自転車を置くのをやめようと思うもっともな理由になるわけで。 もちろん、日曜日だとか、緊急の用事があるとかいう事情があれば、 人の迷惑になろうと自転車が撤去されようと自転車を置くでしょうが」

「なるほど。じゃあ人を殺してはいけないいくつか理由を挙げようか。 まず、法律によって禁止されている。 また、罪のない人を殺すことは道徳的に悪いことだと思われており、 村八分にあう。 それに、被害者の遺族から復讐されるかもしれない」

「なるほど、しかし、たとえば最愛の妻を殺された夫が、 自分の命と引き換えにでも殺人者を殺そうと思っていたら、 法的にどうあろうが、まわりの人がどう思っていようが、 殺人者の遺族がどうしようが、あんまり関係ないですよね。 死ぬ気だったらしてもいいんじゃないでしょうか」

「いや、死ぬ気だろうと、死ぬ気じゃなくても、 違法なことは違法なこと、不道徳なことは不道徳なことでさ。 腐っても鯛、破られても法、守られなくても道徳なわけで」

「なるほど。ちょっと比喩があれですが、 処女は破られたら処女じゃないですが、 法は破られても法ですもんね」

「わーわーわーっ。ちょっとちょっと、あなた、生放送なんですから そういう発言はやめてください。サイト閉鎖されちゃうでしょう」

「いや、法も大勢の人に破られたら、それが法と言えるかどうか わからんけどね。すくなくとも有効な法ではないよな」

「しかし、腐っても鯛、有効でなくても法は法なんでしょう」

「いや、有効というのは拘束力があるという意味だから、 有効でない法は拘束力を持たず、そんな法になぜ従わないといけないのか、 ということになる。道徳だって同じで、だれも守ってないような 道徳に何で義理立てする必要があるの、ということになる」

「なるほど、拘束力ですか。 じゃあ元に戻って、なぜ人を殺したらいけないの、 という問いに対して、法や道徳の拘束力を指摘しても、 そんな拘束力を無視してでも人を殺したいという人には、 やっぱり意味ないんじゃないですかね」

「意味がないというのは?」

「ええと、たとえばある人が殺人者を殺したいという目的と、 刑務所に入りたくないという目的と他人に嫌われたくないという目的の 三つを持っている場合は、 人を殺して法を破ることによって後の二つの目的がダメになっちゃうわけで、 あんまり合理的な選択とは言えないですが、 殺人者を殺したいという目的以外はどうでもいいと思ってたら、 人を殺すことは違法であっても不道徳であっても、 とにかく合理的なんじゃないですかね」

「たしかに手段と目的が合致しているという意味で合理的とは言えるかもしれない」

「じゃあ、そういう人がなぜ人を殺してはいけないのかを説得的に説明することは できないんでしょうか」

「いや、そうは簡単には言えないわけで。 法的なもの道徳的なものは合理的なものに優先するとか、 あるいはカントみたいに合理的の意味をみなが 普遍的に受けいれられるという風に定義することもできるわけで」

「う〜ん、なんだかよくわかりませんね。その説明は」

「まあ、この件については明日の某研究会で教わってきたら」

「ええ、そうします。あ、そういえば、合理的と言えば、 大学院に入るという目的を持つにもかかわらず、 院試の勉強もせずに毎日バイトに明けくれているというのは合理的なんでしょうか」

「う〜ん、まあ人間はつねに合理的とも限らないからな。 わかっててもできないときも多いし、 忙しいとその日その月をなんとか生き延びる という小目的にかかりっきりになって人生の大目的を忘れる場合もあるしな。 きみも小さな目的にかまけて、 大きな目的を忘れつつあるんじゃないのか」

「え、大きな目的って、そもそもあんまりありませんけど。 立派な倫理学者になるとかですかね」

「なんでもいいが、合理的に生きるためには、 常に小さな目的と大きな目的、 あるいは短期的な目的と長期的な目的が一貫しているかどうかを 気にしないといけない。 そして毎日無理をせず小さな目的を実現していくことだな」

「コツコツですか」

「コツコツじゃよ」

夜2

「ふ〜ん、WIKIっておもしろそうだな。 某氏と相談して立ち上げれないかな」

夜3

「銭湯に行ったら休業日だった。三回目」

「某新聞社から付け届けが来る。


08/Dec/2001 (Saturday/samedi/Sonnabend)

真夜中 (午前)

『ノッティングヒルの恋人』 (Notting Hill)

「テレビでやってたので観た。おもしろい。 ヒュー・グラントはブリジット・ジョーンズと違って 朴訥な青年を演じていて驚いた。味があってよい。 ジュリアロバーツは超美人だが、 今回の演技は今いち。ミスキャストなのかもしれない。B」

「去年のオスカー受賞者にミスキャストとはよく言うね」

「なんて言うのかな、今いち共感できないんだよね、 アンナ・スコット役に。かわいらしくないというか」

「共感できないのは、君が女になったこともなければ、 有名人になったこともないからじゃないの」

「いや、やっぱり今ひとつ演技が…」

「映画を観てから急いで別の銭湯に行った。 こないだ某氏に教えてもらった11時半までやっている銭湯。 湯がぬるくてなかなかよかった」

Taro and the Unconditionalsっていうのはどうかな」

夜明け前

「寒くて目覚める。このままでは凍死するかも」

「某氏と某秘書さんに褞袍(どてら)の着用を勧められたでしょう。 あれ買えば」

「それで、現代哲学わかったの」

「いや、現代哲学、これから…」

早朝

哲学の学び方

「『哲学がわかる』から学ぶ哲学の学び方。

ちょっと休憩」

「日本で政治家になる方法の一つは、 漫才師→テレビタレント→ニュースの司会者→知事、国会議員というものか。 ひとつ漫才の練習でも始めるか」

「いや、きみの才能の限界を考えた場合、 その方法はあんまり合理的ではないかと」

「上の続き。

だそうだ。 以上を無理やり総合すると、

  1. 生きているといやおうなく生じてくるいろいろな疑問を大切にし、
  2. 哲学科の友人と議論するか古典を対話的に読むことによって その疑問を明確にし
  3. (そのためには日本語と外国語のセンスを磨く必要がある)、
  4. 哲学だけでなく経験科学や文学にも足をつっこみ(そして失望し)、
  5. 日本人であることを忘れず
  6. 学生時代に日記を書く。
こうすれば、哲学者になれる(かもしれない)そうだ」

「お、『シュレック2』が作られるのか」

お昼すぎ

「某日本現象学・社会科学会の手伝いに大学へ」

「自己保存のために労働力を売るというわけだ」

「疎外ですね」

「疎外です」

「会場から発表の様子を逐次お知らせいたします(たぶん)」

昼下がり

「社会学の発表が二本。ルーマンとシュッツ。ぜんぜんわからん」

「死んだら?」

「え、おれが?」

昼下がり2

「親しらずがあるあたりの奥歯が痛い。まいったなあ。 早く歯医者の予約をしよう」

「学会を途中抜け出して、某イギリス哲学会関西部会へ。 『なんで人を殺したらいけないのか』という某先生の発表を聞く。 ヒュームのコンベンションを使って説明していたが、 そうすると共同体と共同体の間での合理的な批判が不可能に なるんじゃないかと質問したり」

「やっぱりいいんじゃないの、たまには人を殺しても」

「なにをまた物騒な」

「それから学会に戻り、終了後某所での懇親会に付き合う。 あまり他大学の人とは懇親せずに、 もっぱら研究室の人としゃべりながら食事」

「だめじゃん、それじゃ。ちゃんと顔を広めないと」

「だって、おれ人見知りするから」

「なにを小学生みたいなことを。 甘えたことを言ってないでちゃんと社交性を身につけろってば」

「それにしても眠い。また明日も朝から仕事か」

「『ゲソダイ』は、なぜ『ゲンダイ』じゃないのかとある人に尋ねられましたが」

「なんでなんでしょうね。サーチエンジンで検索されたくないとか」

「きっと2ch文化に着いて行こうと必死なんじゃないの」


09/Dec/2001 (Sunday/dimanche/Sonntag)

「朝まで爆睡。9時間近く寝ていたようだ」

「うう、勉強が…」

「昨日のごはんが残っていたので、例によってキムチ雑炊」

「さっさと用意してバイトに行かねば。 しかし着ていけるまともな服がない…」

「そもそも服ないでしょう、あなた。買いなさいってば」

「なかなか一人では買えなくて。きみも付いてきてくれません?」

朝2

「昨日に引き続き、某学会の手伝い。ビデオ係なのでちょっと緊張する。 先にトイレに行っておこう」

中河伸俊氏の発表。 ブラックミュージックについてではなく、天皇制について」

お昼すぎ

「休憩。弁当が支給される」

昼下がり

「弁当では足りなかったので、 某氏に某マクドのバリューセットを買ってきてもらう。感謝」

「午後は八木公生氏、井上達夫氏、佐藤康邦氏などによるシンポジウム」

「井上達夫氏はじめて見たよ」

「なかなか立派にしゃべるお方だ」

「ちょっと話が長いがな」

「こんなサイトがある。 井上達夫『現代の貧困』(岩波書店、2001年)書評。 ちなみにこのサイトには、センとウォルツァーの本の書評もある」

「もうそろそろ学会が終了する。 某氏に百万遍周辺の飲み屋をネットで検索するように命じられたが、 電話番号や地図の付いたものがなかなか見つからない。困った」


10/Dec/2001 (Monday/lundi/Montag)

真夜中 (午前)

「昨夜、学会の後片付けが終わったあと、 某飲み屋に行き打ち上げ。 早大社会学の方々とすこし話す」

「バイト代いただく。某氏にキャロルキングの二枚組のCDを売りつけ、 金を巻き上げる」

「某氏、今度スタジオ入って遊びましょうね」

「そのあと、『なぜ人を殺してはいけないのか』という話になり、 某氏や某氏に『こだまはぜんぜんわかってない』 『こだまは浅薄すぎる』と糾弾される」

「その通りだろ」

「いや、君はわかってるつもりやろけど、やっぱりわかってへんねん。 そこが君の偽善的なところや」

「君は、人を殺したらあかんことを説得できへんかったら、 もうあかんと考えるやろ。そうじゃなくて、 人を説得できへんというどうしようもなく現実的な事実を踏まえたうえで、 どうするかということを考えへんとあかんねや」

「君はいつも自分が正しいと思てるやろ。 君のいう合理性だけが合理性とはちゃうで」

「『なんで人を殺したらあかんのか』 という問いをもっと切実なものとして考えんと」

「という非難を受ける一方で、 自称ハラグロの某氏には『こだまさんはわかりやすくしゃべりはる』 と誉められた」

「けっきょく、きみは抽象的な話ができんというのが結論なのかもな。 ま、それはそれで長所として伸ばしていくことができるかもしれん」

「一次会会場に5時間以上居座っていた。 そのあと二次会に行く連中もいたが、つきあわず」

「あいかわらずつきあい悪いな」

「急いで風呂屋へと向かったが、ギリギリアウト。 非常にまずい」

「しんどい。もう寝よ」

真夜中2 (午前)

「トーストとコーンポタージュを飲む。食べすぎ」

「寒いよう」

お昼前

「さっき起きる。9時間ぐらい寝た模様。 健康な生活になりつつある」

お昼

「スコットランドで風力発電と波力発電をフルに使えば、 原子力や火力よりも低コストでしかも現在の英国全体の電気使用量の 10倍の電力を供給できるという意見が出ているらしい」

「一つ問題なのは美観の問題で、 いたるところに風力発電塔が立っていたらカッコ悪いんじゃないかとのこと。 上の電力供給をするためには、 地上に4000基、海上に8000基の風力発電塔(と波力発電のシステム) を作らないといけないようだ」

「日本はあんまり風が吹かないから、やるとしたら波力だよな」

お昼すぎ

「う。トイレで新聞を読んでいたらもうこんな時間。行かねば」

「トイレで新聞読むなよ」

「某越智先生の集中講義に出てくる。徳倫理について」

「徳倫理の特徴は、 カントの義務論やベンタム・ミルの功利主義が行為の善し悪しを主たる問題にする のとは対照に、行為する人、つまり行為者の善し悪しを主たる問題にすること。 いいかえると、ヘクシス(性向)とかハビトゥスといった言葉で表わされる、 行為者に身についた性質が問題とされる、ということ。とかそんな話」

「えらい初歩的な話だな」

「そりゃまだ最初だからでしょう」

「『モラル(道徳・倫理)とは何か』とか『道徳的によい人とはどのような人か』 なんて問いについて筆記で回答を書かされたが、 これがけっこうおもしろかった。やっぱり授業は対話的でないとね」

「まあ、小規模だったら対話できるだろうけど。 大規模でもできるのかな」

「帰り途は雨。某所で買物をしてから帰宅」

「さて、新聞読まんとな」

夜2

「クローズアップ現代、勉強になるなあ」

「国谷裕子が見たいだけだろ」

「いや、しかしちゃんと7時のニュースぐらいは見んとな」

夜3

「ひさしぶりに海親子丼。明日は某氏推薦の水炊きにしてみようか」

「え、某氏を水炊きにする?」

「『哲学とは何か』の某阪大鷲田先生のエッセイを読み、 『言語が思考の衣服ではなく身体そのものであるように、 衣服は自己の外側にあるものではなく、まさに自己の一部である』 というような記述に首肯する。 いや、はっきりこのようなことを言ってるわけじゃないけど」

「じゃあ明日はちょっとホントの自分を探しに服を買いに出かけるか」

「ホントの自分見つかるかな、某ユニクロなんかで」

「ぎくり」

「だからそんな音しないって」

「きみもホントの自分を探すために、 茶髪にしてみたりピアスしてみたりしたら? ミルも言うようにいろいろ実験してみないと」

「そうっすね、ちょっと考えてみます」

「あ、また出た『そうっすね、ちょっと考えてみます』。 きみがそう言ったときは絶対考えないんだよね」

「いやいやいやいや」

夜4

「ダンコンダンコン」

「ん? 弾痕?」

「いや、男根男根」

「わ、なんだきみは。このヘ、ヘンタイ。警察を呼ぶぞ」

「いや、某川本先生の教えどおり、 専門語を会話に使ってみようと思って」

「なんでそれが専門語なんだ」

「いや、フェミニズムでは重要な専門語なんです」

「勝手にやってろ」

「では御言葉に甘えて。発情発情。ロゴス男根ロゴス男根…」

真夜中

「風呂に行ってきました。すこし水浴びしました。 ガス代と電話代も払いました。 年賀状も30枚ほど購入しました」

「了解了解」

真夜中2

「BBCが英国におけるもっとも偉大な人物という投票を やっているようだ。 現時点での一位はなんとジョンレノン。シェイクスピアやニュートンや チャーチルが彼の後を追っているらしい」

「ああ、もう眠い」


KODAMA Satoshi <kodama@ethics.bun.kyoto-u.ac.jp>
Last modified: Sat May 14 12:06:04 JST 2011