先日トルコのイスタンブルでWFNS2017が開催されました。テロを恐れて日本人をはじめとするアジア人また米国人の参加は極めて乏しく、特に日本人はいつもはこの学会は100名程度参加しているのですが、今回は20名くらいでした。当教室からは私と山口文雄先生、樋口直司先生が参加いたしました。学会の内容は欧米人ではSpetzler先生、Ruthka先生やSamii先生や以前ご紹介したYasargil先生など大御所の話も聞け、一方では数10年くらい前のレベルかと思われるアフリカなどの国の手術の話も聞くことができます。実際問題として、アフリカでは脳動脈瘤など見つけること、診断することすら難しく、以前伺ったエチオピアではマイクロスコープは国に1台しかなく、脳動脈瘤の手術は過去1件あったのみと言われたことがあります。その国に行って未破裂脳動脈瘤の講演をした自分はずごく恥ずかしく、ものを知らないというのは恐ろしいことだと思いました。今アフリカではクリップやコイル(極めて高価)よりも、シャントの方が重要なのです。
アフリカには現在安倍首相などが率先してプロジェクトや売り込みをスポットでしていますが、中国がインフラや工事を全て請負、いくら今更日本が頑張っても難しい状況であるのは誰の目からみても一目瞭然です。脳外科の世界では、日本の役割として、藤田保健の加藤先生が率先してeducation courseなどをしていましたが、実際困難な症例は中国やインドに送られていることが多いようです。
私は今回日本脳神経外科学会のback-upを受け世界各国のdelegateの支持のもとで、本学会のACメンバー(5名の意思決定機関みたいなもの)の一員(Assistant secretary)に選挙で選ばれました。この役はほぼ議事録の作成に明け暮れると言われたのですが、一度会議に出てみて思ったのは、議事録そのものはその場で殴り書きで、あとで清書すれば良いくらいなので重荷ではないのですが、それよりも何よりも日本のプレゼンスのなさでした。上記の5名の他に13名の委員(発言権はあるが、議決権はない)がいましたが、日本人は私一人で 何やかや米国人4名 ヨーロッパの代表がほとんどでアジア1(私)、インド1、アフリカ1、南米2と意見はほとんど欧米で決められるということです。実は本学会の会費として日本脳外科学会員から自動的に数百円こちらに振り込まれており、会費は日本がもっとも多く支払っているのです。意見を強くいう人が勝つ。正論と認められる人が勝つという風潮ですが、基本本当にここではご紹介したくないような小さなことを話しあっています。
もっと大事なこと。もっとしなければならないことがあるように思います。
現在下記の表にあるように人口100万人対の脳外科医の数は日本が断トツ、アフリカは1−2名しかいない国もあります。一方で日本をはじめとした西欧では老人比率が高くなり、fertilityはほぼ2以下で小児がすごく減っています。アフリカには若い人が溢れ西欧日本アジアでは老人が溢れる社会へ向かっています。人口分布の急激な変化と医療資源の不均等分布。どうすれば良いでしょうか?このようななかで優れた日本の脳神経外科医が島国でのほほんとしていて良いのでしょうか?確かに日本の技術は世界一かもしれません。でもそれは一方ではマダカスカル化し始めているかもしれません。広めなければ何も意味を持ちません。ぜひ皆さんにも世界的視野と感覚、問題意識を持って活動してもらいたいと思います。今回の任務は1期2年で何期務めるかわかりません。短期間に私の発言力を発揮することができるようになるかわかりませんが、できるだけ世界の脳神経外科をターゲットにしてゆきたいと考えています。今後のeducation courseの講師の日本医大からの派遣、また(短期)留学生の受け入れなど積極的に行ってゆこうと思いますので、ぜひご協力ください。
最後にイスタンブルは極めてセキュリティーの高い都市です。夜中に女性が歩いても大丈夫な街としても有名です。警官や軍人がいたる所におりますし、ホテルや空港、学会場、地下鉄、全てセキュリティーチェックがあります。多様な人種、文化の入り混じった所で、安全を保つにはどうしたら良いかというのが実践されています。未だ色々な所にコンスタンチノーブルだった頃のビザンチン文化が残り、うまくイスラム文化と融合した美しい絵本のような街です。ぜひ一度訪れると良いでしょう。
Neurosurgical Work force/1,000,000population
2030年の高齢者分布
Fertility of the world
以下Istanbulのイメージ:
Blue Mosque from Bosphorus
Galata Tower