森田明夫のやってきたこと 1982〜2023

北米脳神経外科学会AANS2018報告

先月末(2018年4月)に米国New OrleansでAANS2018が開催された。内容は一般脳神経外科医が知るべき一般的脳神経外科一般知識として重要なものが午前中のplenaryセッションで発表され、午後は各部門(脳血管障害や腫瘍、機能、外傷、社会的事項)などに別れたセッションが組まれる。

今回私はUCAS Japanの治療成績からリスクの予測モデル(まだ論文発表未)の内容を演題登録したのだが、プレナリーの演題に選択され、人生で二度目(1回目は2012年のUCAS Japanの未破裂脳動脈瘤の破裂リスクの発表)のAANSプレナリーでの発表となった。とそこまで言うとほぼ自慢になるのだが、内情は大変で、演題はUCASのモデルをUCAS IIのデータで検証して証明する。と出したのだが、その最終解析は演題を出してから出てきて、実際は証明はできなかったのである。。。要はNegative dataだったのである。当たり前なのであるが、実際は治療のリスクの予測モデルの構築は非常に難しくて、国や施設によって治療成績は異なるので、一様に治療成績の予測をするなどと言うことはまず不可能なのである。なぜ治療成績が異なるかに関しては様々な要素がある。例えば対象症例の相違(ただこれはモデルに内包されている)、時代による技術の進歩、リスク因子に出てこない技術や経験則による重要な相違。例えば米国の手術予後と日本の手術予後の相違は色々な疾患で取り上げられる(脳動脈瘤や腫瘍の治療成績など)。ただここには科学はなくて、いくら日本から日本人の手術成績は良いと言っても、米国やヨーロッパ主体の論文科学に当てはまる根拠がない。ただ日本人の脳が手術しやすかったり、合併症の記録方が違うのではないかと思われてしまう訳である。その発表の後に2名のあらかじめ割り当てられてたコメントがあったのであるが、米国でも日本のように前向きデータを集めるべきである、、と言うことと、治療成績の大きな相違が指摘されていた。理由は??である。絶対米国人は手術が下手とは言わない。

是非。なぜ日本人の手術成績が良いのかを、客観視的指標にのっとり科学的に証明し、それが世界に根拠をもって広められるようにしたいものである。合併症を減らすためにローカルルール、常識としてやっていることが、欧米では非常識かもしれない。5min選手権で磨いているような小手先(?)の技術は大事だが、その定量化、科学としての実証が重要なのである。

 

その他にもさざまな興味深い発表もあった。慢性硬膜下血腫の意識障害にCortical Spreading Depolarizationが関連するのではないかなどの発表もあった。

その他恒例の人生の意識改革系の講演がある。テロの縦横無尽な活動に対抗するために生まれた垣根を除いた軍の構築を作ったGeneral S. McChrystalの講演や、今回特に印象に残ったのはGRITの概念を提唱した中国系心理学者のAngela Lee Duckworthの発表である。TEDでももっとも視聴されているビデオなので見た人も多いかもしれない。 ”GRIT”という本も世界中でベストセラーとなっている。https://www.ted.com/speakers/angela_lee_duckworth

 

GRITというのはやり抜く力(英語では Power of Passion & Perseverance)のことで、世界の超一流を極めた人はほぼこの力が強い。何かというと「スキルとたゆまぬ努力の掛け合わせ」である。

当然世の中で何かを成し遂げた人はどんな人かと問われると 「才能」のある人という答えられることが多いだろうが、

実際には才能だけでは何も完遂されることはなく、その上に努力を積み重ねることでスキルが生まれ、スキルを用いてさらに執拗に努力を重ねることで達成へと到達する。

才能がもし半分でも努力を2倍3倍すれば、才能を凌駕することができる。しかし努力をすることもその人の持って生まれた粘り強さに影響されるわけである。

GRIT Scaleというのがあって、それを見ると自分の一つの目標への執着(perseverance)がわかる。

リンクを見て見るとスコアをつけてくれる。誰も見ないので正直にやって見ましょう。下記の10の項目である。

Grit Scale

フォームの始まり

1. New ideas and projects sometimes distract(注意を外らせるです) me from previous ones.

2. Setbacks(挫折) don’t discourage me. I don’t give up easily.

3. I often set a goal but later choose to pursue a different one.

4. I am a hard worker.

5. I have difficulty maintaining my focus on projects that take more than a few months to complete.

6. I finish whatever I begin.

7. My interests change from year to year.

8. I am diligent(勤勉). I never give up.

9. I have been obsessed with a certain idea or project for a short time but later lost interest.

10. I have overcome setbacks to conquer an important challenge.

今の自分に満足していない人、さらに向上したいと思っている方々には是非、彼女の本を一読されることをお勧めします。(繰り返しが多いのですが、なにか元気が出ます。)AANS2018写真集