マイクロ選手権—5minutes championship
森田明夫
先日の火曜日(11月24日)に何名か都合で出席できない人(再チャレンジを準備しています)を除き 当教室関連の若手(卒後8年目以下)に集まってもらい、水成、玉置、村井各先生と私の4名の審査委員で、「人工血管の切開と縫合」という操作を5分間してもらい評価するという企画で、マイクロ下操作の評価をおこないました。手術室の顕微鏡を用いるというより実践的な場をもうけ、また衆目が観察しているという緊張感の中でどのような操作ができるか?姿勢はどうか?顕微鏡のコントロールはどうか?マイクロの操作(今回はマイクロ操作の代表として血管の操作を行ってもらいました)はどうか?という評価を行いました。
今後は各人にその評価を元に、練習してもらい数ヶ月後にどのように上達できるかを見たいと思っています。
今回は若くても非常に上手くできる人もいれば、緊張でなかなか手が動かずまっすぐ血管に切開をおくのも難しい人もいました。ただ概して、皆さん姿勢がよく、マイクロ下に手がすっとはいってきていて、我々の若い頃にくらべればずっと練習をしていると思われました。斜め後ろからですが、添付写真を見ていただければ皆の姿勢がわかると思います。私にとっては、若手のマイクロ下の操作をしっかりと見る機会というのがすくなく、今回はだれがどれくらいの技量と精神の持ち方を持っているのかを把握し今後の教育や指導に生かすためにとても良い基盤にできると思います。
今回の試みはまずは、1) マイクロを目標も無く練習するのではなく、何らかの目標をもたせるということ。2) 知識や診療態度のみではなく、脳神経外科におけるArt(技)の重要性とそれをどのような環境でも使いこなせる気構えを大切にしてほしいということ。 を目標にしました。
今回の結果については、教室忘年会にて順位5傑を発表し表彰したいと思います。ただ今後については今回の点数をハンデとして“向上度”を評価したいと思います。またこの場をかりて色々な手配や準備をしてくださった田原医局長、森本副医局長および村井先生、評価にきてくださった水成先生、玉置先生に感謝いたします。
脳神経外科は現在様々なSpecialtyに細分され、研究や論文作成に打ち込む人、血管内治療を極める人、Stereotacticな操作で新しい医療を作る人、様々な分野があります。いろいろな分野で活躍する先生がでてきて欲しいと思います。でも迷った時など、基本に立ち返り、マイクロの操作を練習したという “Backbone”をもち、自信をもって欲しいのです。そのためにはある程度のマイクロの操作は「空気を吸うよう」に 自然に日常の生きるための動作と同じようにできるようになってほしいというのが私の夢であります。でもそれでも手術操作などには向き・不向きがあると思います。またすべての人がマイクロの高度な技術を持っても豊富な症例に恵まれる訳ではありません。最終的な達成度がどのようであれ、あるものを目指して努力をするということが大事なのだと思います。それは今回のような技術の面もありますが、知識の積み重ねや論文や研究など科学への貢献、そして最も大切な患者のためになる医療を実践するということにも通じてゆくのだと思います。
技術馬鹿にはなってほしくはありません。ただ一つの事を極める努力の癖をつけることを本選手権の目的としたいと思っています。
皆さんこれからもぜひ頑張って、脳神経外科および各専門領域の知識と技と心を積み重ねていくようにしてください。