森田明夫のやってきたこと 1982〜2023

External capsule, anterior commissure, uncinated fasciculus, 上・中・下小脳脚:Fiber dissection course 参加の勧め

今回4回目のトルコ、3回目のイスタンブールである。今回はTure, Yasargil先生の開催されるFiber dissection courseおよびlive surgery courseにFaculty兼Active Participantsとして参加させていただいた。

昨年3月にIstanbulを訪ねた時の感動は本ブログにも書いたと思うが、今回は「60の手習い」ではないが、改めて脳の奥深さを知り、本当に感動した。上記の構造はこれまで実際名前は知っていて大体把握していたが、どこをどう走行しどのような意味を持つのかをはっきりとは認識していなかったと思う。

Fiber dissectionはこれまで杏林大学での解剖コースで一度経験させてもらったのだが、コーチが違うと全く異なる。今回のDissectionは3日のコースで所々に講義が入る。Yasargil先生やZurichの脳血管放射線科のValvanis名誉教授の講義もあった。こちらも筆舌につくし難いくらいすごかったのであるが(お二人ともそれぞれ80-90歳前後なのに2時間を超える講義を綿密に行った)、これは別の機会があればお話するとして、fiber dissection のことを紹介したい。

1日目:大脳外側面のfiber dissection

2日目:大脳内側面のfiber dissection

3日目:脳幹・小脳のfiber dissection

に分かれている。

脳標本は特殊な冷凍処理技術で灰白質はボソボソ木ベラ(舌圧子を自分でメスで削って作ります)で剥がれるようになっており、白質だけがしっかりと連続性を持って繊維状にしっかりしている。

先ずは詳細な表面のAnatomy(脳回、脳溝、裂)を同定し、さらに段階をおって灰白質を除去して白質を出してゆく。

人工のモデルではわからない距離感と感触を知ることができる。

まず外側のdissectionであるが、Sylvius裂外のsuperior temporal gyrus下面, margical sulcus, subcenteal sulcusなどの灰白質を除き白質を出してゆく。U-fiberなんてこんなふうに剥けるんだとわかる。さらにsylvius外の剥離を進める。中心溝の両面の灰白質は他の部位よりも白質と固く固着しており剥離しにくい。その後superior longitudinal fissure を露出する。Sylvius周辺のanatomyはもっと詳しく検証し、部分的に順番に切り取ってゆくとInsulaが露出される。Central insular sulcusという深い脳溝があり、いくつかれっきとした名前のついたinsular gyrusがある。お恥ずかしながらInsularのgyrusの名前なんて知らなかった。これまで何年脳外科やってきたんだろうと思う。

Insulaを剥離してゆくとExtreme capsuleがあり、その下にClaustrumという薄い灰白質がありその下でExternal capsuleに達する。そのfiberは前方と後方に分かれており、前方はUncinate fasciculusの一部を含め前頭葉下面と側頭葉前方から後方にProjectする。後方のfiberも前頭葉と側頭葉—後頭葉を薄くconnectする。External capsuleを剥いてゆくと出てくるのは線条体である。そのちょっと前にprominentな白質が見える。これがanterior commisureである。これは3つのpartsに分かれており、側頭葉Amygdalaの表面から後方にSpray overしている。

その他ここでは筆記し尽くせないが内側解剖ではParieto-occipital sulcusが極めて深いことを知る。Corpus callosumのfiberを一部剥がしてゆくとそれぞれの部位に応じて大脳の様々なところに広くSprayしてゆくのを確認できる。また脳幹では小脳Foliaの解剖、これを白質ごと剥離してゆきDentate nucleusをだす。DentateからでるFiberを橋を横断するまで辿り、その背側にCortico-spinal tract、中脳の大脳脚との関連などをみる。脳室のEpendymeを剥がしてその下に走っている繊維を確認したりする。脳室にたどりつく前の数cmの脳の実質にとても奥深く複雑な脳のconnectionがあることを知った。36年間学ぶことをできなかった脳の解剖をやっとここで学ぶことができた。

特殊処理した脳は米国から1つ800ドルくらいで輸入できるそうである。コーチの存在も重要なので、標本だけあってもなんの意味もないかもしれない。このコースは参加費2,000ドルだそうである。わたしは出れなかったが、前半はAnastoのコースがあり、DissectionのあとはLive surgeryで脳幹や脳実質の腫瘍などの手術を4K 3Dで見ることができる。もちろん手術場に行っても良い。

特に若手の先生には、夏休みとかを利用してトルコ旅行などを兼ねてこのコースに参加されることを強く推奨します。台湾とかでもコースをしているようなので、その情報が入ったらまた連絡します。

脳神経外科医になる前に必ずやっておくべきコースのように思いました。

脳室穿刺をするときの心構えが変わるはずです。

 

皆さんは “トルコ”と聞くと野蛮な低開発国かと思われるかもしれません。しかしいまトルコは(優良な)移民(だけ)を積極的受けいれつつ(シリアは隣国で、シリアは数学発祥の地であり、賢いRichな人たちも多い。良い人たちを残して残りはギリシャに送り出しているそうです。)、発展を遂げている。歴史に詳しければわかると思うが、東ローマ帝国(ビザンチン帝国)を崩壊に導き、かなりの期間世界の覇権を握った国です。日本なんて、この数十年間先進国とみられているだけで、トルコの方がよほど多くの歴史的sceneに出てくるのです。

男性はがっしり系が多いですが、女性はものすごく美人が多いです。

食事は非常に豊かで、オリーブは10数種類、野菜もフルーツも豊富。またワインそのものもトルコが発祥とのことです。美味しさは格別。値段も安い。地下鉄も船も公共交通機関も発達しており、夜間も安全です。ただし観光客目当てのイ客引きとタクシーには注意です

なかなか遠方で時間が取りにくいかと思いますし、いつも外務省の危険情報では黄色くなっている地域ですが、エキゾチックという言葉の通りの国で、かつものすごく勉強にもなるというところです。

Instabulにて

Fiber dissection1
大脳のFiber dissection
fiberdissection2
脳幹のFiber dissection