米国CNS報告
先日米国サンフランシスコで開催された脳神経外科コングレスに参加してまいりました。ドイツSchramm先生とバッファローNil Hopkins, オーストラリアAndrew Kaye先生をHonored Guestとして4日間開催されました。今回は日曜日から正式プログラムが始まりました。その前日にはいつもどおり非常に高額(5〜13万円)の臨床実技プログラム(カダバーなどを用います)がありました。プログラムを見ますと、学術報告としてはRCTが重用視され、また信念のありかたや、発想の仕方をひもとくような発表が目立ちます。手術手技としては日本に習って3次元プロジェクションによる発表が毎日中心的に行われていました。ポスターは電子ポスターと、それを印刷した物を学会が張っておいてくれ、その前で質問を受けるという形式です。おなしセッションの物同士が質問し合うのが多いのですが、かなり突っ込みが入れられますのでこれも面白いです。当医局からは吉田大蔵准教授と白銀君が参加しましたが、他日本人の姿はせいぜい10名で日本からの参加は極めて少ない印象でした。
今回特に印象に残ったのはItzhak Perlman(イスラエル出身のViolinist、シンドラーのリストの演奏者、Wikiで引いてください生い立ちが出ています)と、会長のAli Rezai先生、Hopikins先生との会談でした。後者2名の脳神経外科医が形式ばった質問(たとえば、いかに若者を育成するか?いかに手中力を高めるか?どのように発想するのか?など)をしていましたが、逆に突っ込まれるシーンがたくさんありました。脳外科医は何を習うのか?(糸結びからと返答された)それがどういう役にたつのか?糸結びが脳外科のすべてか?糸結びが非常に上手くなると脳外科医として一人前か?
その他彼の返事で印象に残った言葉は:
まず自分の弟子に何を求めるか(どうやってStudentを選ぶ)? 出来上がった技術ではなく 意欲で。 Passion
どのように上達するのか? ゆっくり学べ。一朝一夕で覚えた技術や知識は根付かない。時間をかけて学べば、スポンジに十分水がしみ込むように深く学べる。Learn SLOW.
あせった時にどうするか? 自分がそれまでやってきたこと、練習してきたことを信じる。Believe in what you have done(learned).
心揺さぶられる発言がそこかしこにちりばめられ、持ち前の機転と総合的な視野が印象的でした。
目の前にすぐに出来てくる成果ではなく、長い年月をかけて育てる気概が重要と感じました。
医局の先生がたにも、ぜひ広い目をもって、自分のなかにコアとなる自信をもてるよう、前向きな機会を作ってあげたいと思います。
(森田明夫)