森田明夫のやってきたこと 1982〜2023

ものの見方、考え方

先日朝のNHKラジオで三好春樹さんという理学療法士の人が「介護での虐待を防ぐには」といいう対談コーナーで話をしていた。特に認知症患者の異常行動について; 認知症の人たちは、我々と別の基準のある世界に住んでいる人たちと考えて、その上でなぜその様な行動を取るのか、頭から否定しないで、相手の気持ちになって考えてみる。ということを勧めていた。他の介護の人たちと研修旅行も企画するそうだが、介護先進国の北欧に行くことが通常の慣習の中で、インド旅行を企画するそうである。オールドデリーとかに行くと、異次元の世界を体験できて、考え方が変わるそうである。ホテルの周りを歩くと、人と犬が寄り添って毛布にくるまって寝ている人が、そこらじゅうにたくさんいるそうである。以前の不忍の池や新宿ガード下の都市版というところであろうか?

その様な情景を目の当たりにすると、介護をしていて、患者さんが廊下で寝だしても、これが人間の原点か?とも思える様になる。とのことである。

認知症の人たちは、赤ちゃんに帰るという人もいるし、記憶や理性が失われてゆく中で、人間としての本能、それまで覆っていた知識や記憶が剥がれて、本当の願望や、本来の人間の祖先の、または動物の習性が表に出てくるのかもしれません。

 

もうひとつ衝撃的な違いを知った。以前から自閉症の人は、映画のレインマンの様に特殊な能力を有していることがあることを知ってはいたが、目の当たりにするのは、びっくりする。

昨日(3/29,2021)であるが、ビートたけしと国分太一さんのやっていた「日本のみかた」という番組が終わって、新しく「レベチな人たち」という、レベルの違う人等への密着取材をする番組が始まった。滋賀県甲賀にあるやまなみ工房という障害者に芸術?活動を好きにさせる施設を訪れ、そこで作られている芸術作品や、その作成工程を取材していた。

割り箸一本で寝ながら隅で絵を描く人、特殊なアルファベットを手書きでデザイン的に書いて造語を作っている人、細かい自由な発想の絵をどんどん書いてゆくが、それが上下左右ぴったりと次の画幅になる絵、細かくちぎった粘土でいろいろな頭部モデルを作ってゆく人、奇声を発しながら10年以上粘土で自分の名をつけた地蔵像(?)を数万体作っている人。一見パターンの絵だが、その点は全て人型の細く描かれた模様といった絵を描く人。

多分抑制のない、自由な発想で、子供、赤ちゃん その頃のものの見え方、考え方が、そのままで大人になることで、技術をつけた持続力でものを仕上げてゆくということなのかな とも思う。一応常識人と思っている自分にはとても想像ができない範疇でものを見て考えているのだろうと思う。こういう素人が全くの教育を受けず自分の発想で作る芸術をアールブリュットというらしい。ビートたけしさんもかなり特異な発想力を持った人だと思うが、添付した割り箸墨絵を見て、こういう絵を描きたいんだよね。でも書けない。理性・常識、だかなんだかが邪魔してしまう。と言われていた。

 

歴史上も、科学を変えた人たちの中にも、どう見てもその様な執拗な情念と発想を持った人たちはいた。多分ニュートンもエジソンも、野口英世も、アインシュタインも多分少しはそういった要素を持った人たちなのかな。と思う。

 

医療の世界では、今や莫大な教科書的な知識や実技としての患者対応、接遇まで教育され医学生に余裕がない。心と相手を思う余裕をどこかで磨いて欲しい。大学院も四角四面のコンピテンスなどというものに縛られて、なかなか新しい医療の発想・研究というところまで到達できない。どうしたらちょっと余裕を持って、または別の視角でものを見つめ直すことができるのかな。と考える。

私も発想の多い方ではないが、以下の様なことが重要なのかなと思う。

「単純な疑問」をスルーしない。こだわって明らかに納得するまで調べたり聞いたり、それでもわからなかったら、それを解決できる方策を考える。

執拗さ、執念、粘り強さ 単純な作業も一生の中の継続した時間の中の一部と考えてやり続ける心の強さを持つ。

ちょっと気分転換。違う世界に没頭してみる。旅行や学会出張(最近はめっきり減ったが)、衝撃的なレストラン(美味しい、高い、安い、不味い、汚いなど)に行ったり、自分の発想で料理を試して見たり、お茶の世界とか、骨董の世界、ドラマや漫画、書物、そして目から汗が迸るほどの強制的筋トレとか。その様な中から実は発想のヒントがあったりする。(私はそちらばかりしている様な気もするが)先ほど話題になったインドもそうですが、中国も韓国も衝撃的なトイレ事情を含め、なかなか年齢が行くと億劫うになる異次元の世界はあります。コロナが開けたら、ぜひ若いうちにいろいろな経験を積んで発想力を磨いてください。コロナ下でもできることもたくさんあると思います。

 

継続力と発想力をつけましょう。

 

やまなみ工房

2021年の桜