さる9月29日30日にパシフィコ横浜にて第29回脳神経外科手術と機器学会(CNTT2020)および第13回日本整容脳神経外科学会(JSAN2020)を開催させていただきました。当初3月開催の予定でしたが、新型コロナ感染症の蔓延で延期を余儀なくされ、また現在でも流行が完全に制御できていませんので、Webを併用しオンラインでの発表も可能としたハイブリッド型の学会開催といたしました。Webだけの開催にしている学会も多い中でも、この学会は実際に機器を触ったり使ったりしてみることができる学会というのが価値を思いましたので、現地での開催は維持させていただきました。
それでも会場にお越しいただけたのは150名強であり、そのほか200名超の先生方はwebでの参加となってしまいました。
今回はCNTT2020(http://cnttjsan2020.umin.jp/cntt/)はテーマを「脳神経外科の心技知」として脳神経外科医療における心や知識の伝え方そして技術の伝承に力を入れた講演を組ませていただきました。その中でも特別企画に力を入れて 手術感染症、当科で年2回開催している5min championshipの全国版、海外での手術経験、道具の使い方(1:硬性小物と2:パワーインスツルメント)という企画を計画しました。5min championshipでは当初3月では18名の参加予定でしたが、コロナで6名に減ってしまいました。大勢の聴衆と強面の5名の審査委員(谷川、水成、滝澤、吉村、反町先生)がじっと見つめる中で、「1mmの模擬血管に縦に線を引き、切り、針いとで閉鎖する」という手技を5分間してもらい評価するというものです。物凄い張り詰めた空気感の漂う学会場でした。当教室の築山先生が本番では優勝し高山医療機器のハサミやセッシなどの賞品を含めて受賞しました。ただ日本医大の候補はもともとこの手技を日頃人前でしていて慣れているというホーム感覚があり、少し不公平があったかもしれません。当然水成先生は採点には加わっていません。それでもあの緊張の中で、申し分のない手技を披露できた肝の座り方は圧巻であり誇らしく感じました。海外での手術経験は様々な未開発国で手術を現地でliveで見せている5名の先生方に講演をお願いしましたが、海外での手術環境や道具、衛生管理、出入国の際の機器の問題、そして最後は責任の問題など、考えさせられる講演が続きました。特に海外でたくさんの手術経験を積める機会もあるが、実際には現地でも日本人患者に対するのと同じ感情と責任感で患者さんを想い手術をすべきこと。また現地の若手医師を教育することが本来の目的であることを忘れてはいけないことが強調されました。最後の道具の使い方は私がこれまで見聞きしてきた学会での「この先生のこの手技」の粋を集めたものです。非常にためになる講演であり、ぜひビデオジャーナルにしてみなさんに見てもらいたいセッションでした。その他にも「robotic surgeryの今」というセッションでは私の脳外科における現状のイントロの後に、各領域のロボット手術の現状を紹介してもらい、今後ますます広まっていく領域であるあることを再認識しました。ただ脳神経外科用途ではサイズを格段に小さくする必要があること。そして手術数自体が少ないので、versatileなシステムを構築することが課題となることがわかりました。特別講演では古くからの私の知古であるイスタンブールのUgur Ture先生及び上海の花山大学のBin Xu先生にwebライブでご講演をいただきました。Ture先生はYasargil先生の弟子でWFNS2017の会長をされた先生ですが、3年前に私が訪問した際に感銘した脳幹の手術についてお話ししてもらいました。脳幹の手術を体系的にまとめた大変素晴らしい講演でした。Xu先生は年間1000件のバイパスをしている先生です。そのバイパスの極意を様々伝授するこちらも素晴らしい講演でした。術野が綺麗、バイパスが最短5分と超速であるのに感銘しました。
本学会では機器展示が極めて充実し、また機器展示ブースの脇のスペースを利用して5つの模擬手術室を作り泉佐野の天神先生とWetLabo社岡野氏、あと私が監修している手術シミュレーション用TOMモデルを用いてハンズオンを行いました。実際に頭部固定、皮膚切開、開頭、マイクロ下の操作が可能で、動脈瘤クリッピング モデル、頭蓋底髄膜腫摘出モデルがあり、どちらをされた先生方もそのリアル感に感動されていました。機器メーカーもそのような場で道具を使ってもらえるので、大変喜ばれました。また今回は機器メーカースタンプラーを行い、スタンプを20個以上受けると景品がもらえるようにしました。景品はちなみに木屋の爪切りです。国産の刃物がいかに切れるか!がよくわかる景品として準備しました。
JSAN2020(http://cnttjsan2020.umin.jp/jsan)では本学会のfounding memberでもある千葉北総病院形成外科の秋元教授に副会長になっていただき、色々相談して内容や演者を決めさせていただきました。まずはメインのテーマを「整容と再建のコツとピットフォール」として顔面神経麻痺再建とその整容、禿げ、術後の頭蓋変形などにフォーカスを当て、日本医大からも多くの先生にご講演をお願いし素晴らしい講演をいただきました。
演題数はCNTTが特別講演3,シンポジウム66, 特別企画22,スポンサードシンポジウムやセミナー24を含む190演題、JSANがシンポジウム13を含めて33演題でした。参加者はwebでの参加を含めてスタッフを除いて384名で、現地で参加されたのは150名ほどでした。このような状況でも例年以上の参加者が参加してくださり活発な意見を交わしていただいたことに大変満足しております。Championshipもhands-onも大変な好評を博しており、今後も継続して欲しいという要望が多数寄せられています。
現地で参加されたみなさんは、約半年ぶりに実会場での学会で学ぶこと、実際に機器に触れ講演を画面越しではなく聴けるという喜びに満ちていたように思います。
感染対策にも十分な配慮をして、換気をよくして椅子はいつもと異なり千鳥格子様に1席ずつを離し、またマイクは一回ごとにカバーを架け替えたり、机はアルコール消毒など徹底いたしました。
本学会は現地とともにWebでも参加可能しており事後でもオンデマンドで全ての講演を見ることができます。教室員の先生方はみなさん色々手伝っていただき学会内容をよく視聴できていないと思いますが、私から言うの何ですが、大変素晴らしい講演が多数集まった珠玉の学会ですので、オンデマンドでは顔面神経関連の講演を除けば全て見ることができる様になりますので、ぜひ時間を作って視聴してくれればと思います。もし教室の諸先輩の先生方で視聴してみたいと言う先生がおいでであれば、10月12日以降オンデマンドを開始しますので、教室に言っていただければログイン情報をお渡しできます。また一般の先生方はまだオンデマンド学会は継続していますので、会費をお支払いいただければ参加可能です。
本学会はいつもご支援いただいている教室関連の施設・先生方のご支援がなければ成り立ちません。また機器会社の方々に多くの支援をいただきました。本当にありがとうございます。また事務局を務めてくれた佐藤俊医局長、秘書の相澤さん、企画や座長に御助力いただいた水成、足立、玉置、山口、村井、田原、金先生始めスタッフの先生方、また会場では例年よりも大変な消毒作業もあるなかテキパキと業務をきちっとこなしてくれた教室員の皆さんには深く感謝しております。本当にありがとうございました。