森田明夫のやってきたこと 1982〜2023

第27回日本脳腫瘍の外科学会を開催して

本年7月に頭蓋底外科学会を開催させて頂いたのに次いで2022年10月14日15日の2日間浅草ビューホテルで第27回日本脳腫瘍の外科学会を開催させて頂きました。事務局を担っていただいた田原先生、佐藤先生、相澤秘書及び色々と役割を持っていただいた教室の先生方には大変お世話になり感謝いたします。また同門の先生方、関連病院、関連企業の方々には資金援助を含めて大変お世話になりました。この場を借りて御礼申し上げます。

さて本会議ですが、コロナが少しずつおさまってきている時期に開催することができたので、オンラインのhybrid開催をさせていただいたが、現地参加が268名、オンライン参加が253名 合わせて521名の参加を得て盛会に会を催すことができた。今回はテーマを安全・有効な手術のためのTechnical & Non-technical skillsとさせていただき、222演題をいただき3つの特別企画、1つ特別講演、2日目の午後には若手医師のための教育セミナーを開催させていただいた。特別企画は、まず1日目午前中に脳腫瘍学会との合同企画で脳腫瘍診療ガイドラインを構築された先生方に講演をお願いし、各種の腫瘍に対するガイドラインの要点と課題、そして新しいWHO診断基準との関連を解説していただいた。次いで学会会員総会に引き続いて1日目午後には各種受賞講演なども終えたのち、今回の目玉でもあるMG Yasargil先生のビデオ講演を視聴していただいた。97歳とご高齢であるためあらかじめビデオ講演をお願いして送っていただいており、私は学会前に何度かみさせていただいたのであるが、腫瘍中心の講演ではなくYasargil先生が開発されたバイパス手術を中心のテーマに据えており、またやや理解が難しい内容も含んでいたので、私がまず解説をさせていただいたのちに参加者に講演を聞いていただいた。先生がいかに様々なことを考えて新しい領域の手術を開発されたかを知ることができ、またこの年齢で1時間半に及ぶ講演をしていただけたことに感銘しました。Yasargil先生との出会いについては、このコラムでも2回ほど書かせていただいているので省略するが、本当に脳神経外科のLegendである。特別企画3は脳腫瘍の手術に極めて重要な「剥離と止血」について、私がこの先生方の手術を見てほしいという先生方に講演をしていただいた。2日目午後には特別講演として私がワシントン留学時代から交友してきた現在東京大学医科学研究所の藤堂先生に先生が開発されたヘルペスウイルス治療薬(デリタクト)の開発の経緯、有用性さらに今後の展開などについて話をしていただいた。手術による治療ではないが、こちらも新しい治療法の開発という一大事業をなし遂げた経緯と意志を感じてもらえたかと思う。また教育セミナーは現在の脳腫瘍手術を考える上で重要な内容を集中して学べる内容とするため、タイトルを「脳腫瘍の手術の知識と技:UP date」として5名の先生方に講演をお願いした。虎の門病院 西岡先生に下垂体の新病名、分類と治療内容の変化について、次いで大阪公立大学の後藤先生には、新しい内視鏡と頭蓋底手術の今後の動向、旭川の木下先生には脳を透視し脳の解剖に基づいた手術(以前このコラムでも紹介した)を、埼玉医科大学の大宅先生には髄膜腫の分子遺伝学的背景と手術加療、金沢の中田先生にはAwake surgeryと術中の高次機能モニタリングの関連を含めて解説していただいた。司会総括は次回の本学会会長である長崎の松尾先生にお願いした。

その他にも7つのランチョンセミナー、1つのスポンサードシンポジウム、21のシンポジウム、一般演題を6セッション開催した。非常に充実し勉強になる学会であったと自負しますし、また他学の先生方からも賞賛をいただいている。

これからオンデマンド放送をするので、教室員の先生方にはぜひ自分の担当日・担当部署でなく聞き逃したセッションを視聴して欲しいと思う。

一方で学術的な面での充実も努力したが、せっかく浅草にきていただいた先生方を歓迎するため、十分感染拡大に配慮しつつ会員懇親会も開催させていただいた。みなさん久しぶりの旧知との直接の話あいや立食を楽しんでいただけたようである。 

あやふやな計算方法でも少しコロナが増えつつある世の中ではあるが、先月イスラエルの状況を見、また今月はセルビアのベオグラードにて開催されたEuropean Association of Neurosurgical Surgeons2022に出張させていただいたが、ヨーロッパや他のアジア諸国では「コロナはどこ?」へというくらい全く自由に行動しており、学術的活動も研究も自由に行っている。日本ではいまだに第8波がどうこうとか、日本医科大学では帰国後も3日も隔離されないといけないとか、こんなにビクビクしていると日本は本当に他国に追い抜かれてしまうと思う。Webでの会合は利便性はあるがやはり実際にあって直接話を聞き、余談をすることの意義がかなり重要だと感じる。だからと言って先日の梨泰院の事故のようなことが起こってしまうのは残念であるが、もっと早く自由に、この忘れ去られた3年を取り戻す活動を再開できるようにしたいと思う。セルビアの話は機会があれば後日します。

 

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