森田明夫のやってきたこと 1982〜2023

医師としての心はNTTで

獨協医科大学 脳神経外科

深谷春介先生

私が森田明夫先生に直接従事したのは初期研修終了後2008年から2年半、「森田部長」であったNTT東日本関東病院時代でした。

当時は長く、いま考えると一瞬の関わりでしたが、脳神経外科医としてはもちろんのこと、医師として進むべき道・姿勢、さらには人としてどう生きるかまで示してくれました。今この文章を執筆しているがこういう方を「恩師」というのであろうとしみじみ感じます。

とはいえ私のNTT東日本関東病院での研修は非常に辛いものでした。上司、同僚、部下などの人間関係は至って良好でしたが、ひとたび脳神経外科という領域に入ると手術で叱られ、カンファレンスで叱られ、散々たるものでした。しかしその中でも楽しく研修できたのはその厳しさの中に人間味を森田先生から感じたからだと思います。

それを感じさせるNTT時代の思い出はたくさんあります。朝カンファレンスに森田先生が遅刻してきて「すまん。ドラマの見過ぎで遅刻した。」と言い放ったこと、(全員が言わなくてもいいのに・・・と思っていました。)深夜に医局に来て風の谷のナウシカの単行本にハマり朝方まで帰れなくなっていたこと、雑誌の取材の写真で本棚から本を取り出すシーンがあり、よく見ると学術書の横にゴルゴ13が陳列されていたことなど今でも同期で話をする笑い話があります。またみんなで食事をするのが好きでホームパーティーを開催していただいたり、飲みに行ったり。激辛四川料理をメンバーで食べに行った翌日、みんな下痢で遅刻者多数であったのも良い思い出です。このようなホッと気を緩める空気を作り出せることが森田先生の魅力でもあり、下のものにとって厳しい研修の救いになるのではと思います。

2年半の研修後、森田先生のはからいで日本の名だたる脳神経外科の施設で研修させてもらいました。NTT専攻位の研修先はそれぞれの能力、適正などによりオーダーメイドで組まれます。一人一人をしっかり見ていてくださり、いま振り返っても感謝しかありません。

森田先生から叱咤された言葉の中に今までも、これからも大切にしたい言葉があります。「自分の家族がされて納得がいく治療をしろ」この言葉を胸にこれからも脳神経外科医を続けていきたいと思います。

改めましてご退任おめでとうございます。心から敬意とお祝い申し上げます。