森田明夫のやってきたこと 1982〜2023

森田教授との思い出

北村山公立病院 院長

國本 健太先生

既に東京を離れ山形に赴任していた私は、10年前の大学の教授選の情報がほとんど無く、森田先生に決まったことを、 週末に当直に来ていただいていた医局の先生から聞いたことを思い出します。私が森田先生を最も印象に感じていたのはUCAS Japanの調査でした。
当院も本当にわずかではありましたが症例登録に協力していたため、日本でおそらく初めての悉皆調査を先生がとりまとめていらっしゃったため印象に残っていました。
まさに日本医科大学の教授に就任する直前の日本脳神経外科学会総会で、
UCAS Japanのシンポジウムでの先生の発表を思い出します。京都大学教授の宮本先生との印象深いやりとりもありました。

さて日本医科大学の第三代目の脳神経外科学教授に就任された後、山形にお招きし、それをきっかけに、東京で手術をお受けになられた山形県出身の患者さんをご紹介して頂いたり、当院での難しい症例の手術を御指導して頂いたり、毎年先生には山形に来ていただきました。
皆さんもご存じの通り、森田先生は大変食通、ワイン通でいらっしゃいます。先生との思い出は山形の食を通してお伝えしたいと思います。
果物王国山形ですが、果物以外にも美味しいものがあります。
もちろん山形にはハイカラなお店はございませんが、地味な隠れ家的な名店はいくつか当地にもございます。その一つがそばです。当院からほど近い、村山市大久保にあります「あらきそば」という名の知れたそば屋があります。茅葺きの屋根の古民家で、麺の太い昔ながらの手打ちそばを、板にのせて出してくれます。ざるそばならず板そばです。板のうえにまばらにそばがのっているため量が少ないと思いきや、実はその量は侮れずお腹いっぱいになりますが、先生はそれを大変好まれていらっしゃいました。
また6月には、外来診後にさくらんぼ狩りにもお誘いし、果物の王様を堪能していただきました。

おそらく、最も気に入っていただいたのは、自家飼育しているサフォーク種の羊のお店です。
その名も「ひつじ舎(ひつじや)」です。息子さんが先代より引き継ぎ、ワインも多く置いてあります。手術の後に何度かご一緒したのですが、臭みの無い、肉厚の羊肉を堪能していただきました。大学教育のあり方や、脳神経外科のこれからについて語り合いましたことは、昨日の事の様です。

大学から遠く離れた山形にあります当院に対して、日直、当直、ならびに平日の外来診療に大切な医局員を継続して派遣していただきましたこと、大変感謝申し上げます。本当にありがとうございました。
これからもお身体に気をつけて、日本国民の健康維持のために、先生ご自身のご活躍を御祈念申し上げますとともに、後輩育成へのご尽力を引き続きお願いさせていただき、筆を置きます。