森田明夫のやってきたこと 1982〜2023

森田明夫教授の御退任によせて

東京大学医科学研究所附属病院 脳腫瘍外科 

伊藤博崇先生

森田明夫先生、この度はご退任、おめでとうございます。先生は日本医科大学脳神経外科主任教授だけでなく、大学院医学研究科長も務められ、臨床・研究・教育及び日本医科大学の発展にご尽力され、多大な功績を残されたことと存じます。先生のご活躍・ご功績はこれからも長く受け継がれていくことと思います。

森田先生に私が初めてお会いしたのは、先生がNTT東日本関東病院脳神経外科の部長を務められていた2007年7月でした。初期研修の脳外科ローテーションを経て、2008年4月からは同院脳神経外科後期研修医として雇っていただき、3人チームのネーベンとして脳神経外科生活をスタートさせていただきました。当時は、脳血管障害や腫瘍に加え、毎週のように頭蓋底手術があり、年間約400件の手術を2チーム体制で、月火木金の定時と夜間・休日に、まさに一家総出でこなしていました(人手が足りず、森田先生と二人で慢性硬膜下血腫の穿頭血腫ドレナージ術をさせて頂いたこともあり、本当に貴重な経験だったと思っています)。臨床の場で森田先生によく言われたのは、入院患者さんのベッドサイドに足繁く通って、よく話を聞いて、診察することの大切さでした。特に術後状態の良くない患者さんついては、神通力を信じ、ベッドサイドで良くなる方法を考え、そして祈るように言われ、ICUに泊まり込む(ように言われる)ことも多々ありました。そんな病棟管理が落ち着いた暁には、森田先生のお誘いで、医局員皆で五反田の激辛中華料理店に食事に行き、gut-brain axisを介したデトックス効果で、翌日には頭もスッキリした状態で診療に当たることができました。年1回のホームパーティーではプロ顔負けの手料理を振る舞って下さったり、大学に動物実験に行った帰りには、手作りのピータン豆腐とポトフをごちそうして下さったりと、寝まではともにしませんでしたが、onだけでなくoffのときにも面倒を見てくださり、職も食も一緒にする家内工業の一社員のような生活は本当に夢のような時間でした。また、NTT在職中には脳神経外科医として幅広い疾患経験を積むことが大切と考え、臨床では網走や都立神経病院など一流の先生の元で研修する機会を、学術面では日々の論文指導や大学院への道を用意してくださっただけでなく、日本医科大学教授に就任された後も、日々の臨床に関することから研究、留学などの岐路に至るまで、いつも親身に相談に乗って温かくアドバイス下さり、本当に感謝しかございません。

森田先生は私にとって、医師として、また人としての礎であり、羅針盤です。これからもご健康でますますご活躍されることを祈っております。

森田先生による論文指導(2009年)


年始恒例の写真撮影(2010年)