森田明夫のやってきたこと 1982〜2023

森田明夫教授のご退任に寄せて
―私から観たWorldwide Academic Neurosurgeonの側面―

広島大学名誉教授
(独)労働者健康安全機構 中国労災病院長

栗栖 薫先生

森田明夫 教授が令和5年3月末で、日本医科大学をご退任されるとのご連絡を頂きました。また、その退任記念誌への寄稿の依頼を頂きました。大変光栄に存じておりますと共に、「森田明夫 教授も退任される年齢になったのか」と思いを新たにしています。定年退任誠におめでとうございます。大変お世話になりありがとうございました。
ざっと振り返っただけでも、日本医科大学脳神経外科学教室の主任教授のみならず、同研究科長、日本脳神経外科学会JNS理事でその国際委員会委員長、世界脳神経外科学会連盟WFNSの執行部でassistant secretary, secretary、JNSからWFNSへのdelegate等を歴任されてこられました。一つだけでも大変なことだと思いますが、それらを非常に高いレベルでバランスよくこなされてきました。学術的には世界的に有名な論文となりましたUCAS Japan investigatorsの責任者として活躍され、新たなる知の創造と世界への発信をされました。まさにacademic neurosurgeonとしての本領を如何なく発揮されてこられました。
私が森田明夫 教授のことを知るに至った経緯を説明させて頂きます。先輩の沖 修一先生(昭和48年広島大学卒、現荒木脳神経外科名誉院長)が、文部省の長期在外研究から帰国された時に「Mayo Clinicですごい先生に会った。」と表現され、森田明夫先生のMayo Clinicでのご活躍の様子を教えて下さいました。それからしばらくして東京大学に帰学され、学会で森田明夫先生のご活躍を目のあたりにすることとなりました。具体的に先生を身近に感じるようになったのは、第1回WFNS 国際シンポジウムが2010年にスペインのマラガで開催された時でした。風光明媚な地中海沿いの海岸を、カメラを持って歩いておられた時に、お声がけしました。話題が韓国ドラマになり、先生もかなり集中的に観ておられるとのこと。当時の我々夫婦の共通の話題でもあり、急に打ち解けた感じがしました。
「情報発信が早い」という先生の特徴があります。お得意の料理やグルメ情報を積極的にfacebookに掲載されています。2013年ソウルで開催されたWFNS 学術総会では、私が担当したモーニングセミナーに出席して下さっていました。早朝でしたので、片手以下の出席者のお一人でした。直後に「栗栖先生が大変な内容の発表をした!」と私が講演中の写真と共に掲載されました。ある時には、ロシア関係の国際学会の時にПОДМОСКОВНЫЕ ВЕЧЕРА(モスクワ郊外の夕べ)をロシア語で歌った時のビデオを収録され、後で掲載されていました。とにかくpunctuality, accountability 共に非常に高いことがよくわかりました。料理人としての一面もすごいと思います。週末の夕刻、しっかり吟味した材料でhigh quality and high quantity cuisine を、これまた選りすぐりでこだわりのアルコールと共に堪能されておられました。
Academic neurosurgeonとしてのご活躍だけでなく、幅広くまた内容深く人生を謳歌されて理想的な人生を歩まれておられると存じます。WFNSにおきましても、JNSのプレゼンスを高められての持続的なご活躍と存じます。森田明夫 教授の今後の益々のご健勝とご発展を祈念し、長年賜りましたご指導に深甚なる感謝を込めて、ご退任に寄せてのご挨拶とさせて頂きます。誠におめでとうございます。そして、大変ありがとうございました。