感覚種の感覚点 sensory spot
- Magnus Blix(P1832〜1904, ウプサラ)が1882-83年に、皮膚を電気刺激して、暖かく感じる部位や冷たく感じる部位を見つけた。さらに、冷刺激、温刺激、触刺激装置を作成し、冷点、温点,触点を見つけた。
- 皮膚表面の1つの種の刺激に対する感覚閾値の低いところ。
- 全身の感覚点の数は、触点50万、冷点25万、温点3万、痛点200万であるという。
痛点 pain spot
- Maximilian von Frey(P 1852/11/16〜1932/1/25, ビュルツブルグ、ライプニッツ)が1895年に、痛点を見つけた。尖端をとがらせた馬の尾1本(von Frey Hair)を使って皮膚をつつき、ちくりと痛みを感じた点と、痛くはないが触れられたことがわかる点と、何も感じない点があることを見つけ、痛みを感じる点を痛点と名づけた。それ以降「皮膚の痛みは、痛点を刺激したときにだけ起こる。」とされ、痛みは独立した感覚であることが認められた。 →Freyの特殊説
- 触圧覚に比べると、一般に痛点の密度は高い。
- 全身の皮膚のほか、口腔、咽頭、鼻腔などの粘膜にも散在し、その数は 200万〜400万に達する。
- 先のとがった硬い毛で刺激すれば痛みをひき起こす点として容易に検出できる。
- 痛点には痛みを伝える一次求心性神経の自由終末(侵害受容器)がある。
- サルの皮膚には,直径 2 〜 5μm,興奮の伝導速度が 12 〜 30m/sのΑδ侵害受容線維が分布していて, そのおのおのが1〜8cm2の領域に分布する3〜20個の点状領域の刺激に反応する。この点状の領域がおそらく痛点に相当すると思われる。
- 歯髄、鼓膜、角膜中心部などは多種の感覚に比して特に痛覚に敏感である。
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1 次 ニ ュ │ ロ ン |
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侵害受容器 | - 侵害受容器は、1次求心性神経の末梢軸索の、髄鞘がなくなった自由終末にある。
ここで、痛み刺激が電気信号に変換される。
- 侵害受容器には、侵害刺激を受容する受容体やチャネルがあり、侵害受容器として働く。
- 侵害性機械刺激を受容する高閾値機械受容器と数種の侵害刺激を受容するポリモーダル受容器とがある。
- 侵害刺激を受けると、受容器電位を発生する。閾膜電位以上になると、起動電位となり、活動電位(=インパルス、スパイク発射)を発生する。
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侵害受容線維 |
- 侵害受容線維は、1次求心性神経の軸索突起である。
- 侵害受容線維には、有髄でもっとも細いΑδ侵害受容線維と無髄のC線維とがある。
- 侵害受容器興奮すると、内向き電流が発生し、神経線維(軸索)上のNa+チャネルが次々開き、インパルスが伝導する。侵害受容線維のNa+チャネルには、TTX抵抗性のチャネルもある。
- 軸索の分岐部から、他の分枝にインパルスが逆行性に伝導する(---軸索反射)ので、侵害受容線維は遠心性神経的な機能もある。
- 細胞体で産生された伝達物質や受容体は、順行性軸索輸送により、脊髄内と末梢の終末に運ばれる。
- 終末で取り込まれたNGF-TrkA複合体などは、逆行性輸送により末梢から輸送される。
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脊髄後根神経節/ ガッセル神経節 | - DRGに、1次求心性神経の細胞体があり、核がある。1次求心性神経を維持するために、種々の物質を産生している。
- 興奮の伝達について考えると、インパルスは素通りする。
- 痛みに関連したDRGのニューロンは、主に小型ニューロンである。
- DRGにインパルスが到達したときなどには、種々の遺伝子を発現する。慢性痛では、発現する遺伝子が変化する。
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脊髄後角 |
- 脊髄後角は、1次求心性神経と2次ニューロンのシナプス伝達の場である。
- 痛みに関連した1次求心性神経は、後根からLissauer路に入る。
- 1次侵害受容ニューロンの脊髄内終末まで、インパルスは到達すると、神経伝達物質を放出する。
- Aδ線維はグルタミン酸を放出する。
- C線維はグルタミン酸とP物質やCGRPなどのペプチドを放出する。
- 一部の1次ニューロンは前角運動ニューロンとシナプス伝達し、脊髄反射に係わる。
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2 , 3 次 ニ ュ │ ロ ン |
- 浅層部と深層部に、侵害受容ニューロンが局在する。
(III-IV層には触刺激に反応する低閾値機械受容ニューロンが局在するが、投射ニューロンではない。触覚情報は後索を上行し、後索核で中継される。)
- 特異的侵害受容ニューロンと広作動域ニューロン、それらより末梢受容野の広いSRV typeの侵害受容ニューロンがある。
- 2次侵害受容ニューロンの軸索は交叉し、対側の前外側索を上行する。
- 2次侵害受容ニューロンの受容体に伝達物質が作用すると、興奮する。グルタミン酸によりAMPA受容体が活性化する。C線維からのグルタミン酸とP物質が放出されると、NMDA受容体に対するMg2+による抑制が解除され、NMDA受容体も活性化される。
- 2次侵害受容ニューロンは、下行性疼痛抑制系の修飾を受ける。
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脊髄視床路 脊髄網様体路 脊髄腕傍核路 脊髄中脳路 | - 脊髄視床路は外側と内側に分かれる。
(一部の軸索は、脳幹に枝を出す。)
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外側系 | 内側系 |
3 │ 4 │ 次 |
橋/中脳/ 視床 |
腹側基底核群 |
腕傍核、中脳中心灰白質、腹側被蓋野 |
髄板内核群、内側下核 |
大脳皮質/ 大脳辺縁系 |
体性感覚野 |
島 |
前帯状回
扁桃体 |
| 痛みの感覚的側面 | 痛みの情動・認知的側面 |