痛みと鎮痛の基礎知識 - Pain Relief　ー評価法

■ヒトの検査法

│評価法・診断法？│

　　←→鎮痛法/研究法

EBM

痛みの治療のためには、適切な診断が必要である。スタートレックのトリコーダー↓では、痛みの診断もできるようである。
最近非侵襲的な脳の画像診断などは発達してきたが、ほとんどは主観的な評価で、客観的評価法は確立されていない。

痛みは共有できる感覚ではないので、それぞれの被検者の痛みは同じなのか違うのかはわからない。

　1. 過去における疼痛体験が異なる。
　2. 年齢、性別、性格、文化的背景などの違いにより、痛みに対する閾値や表現が異なる。
　3. 同一人物でも、身体的・精神的状況が変化すると、疼痛閾値が変化する。

痛みを評価することも、被検者間の痛みを比較することも、極めて困難である。評価する側の問題点もある。
臨床上、患者の痛みの程度を数値化して評価することには、無理があるが、必要なことである。

患者の痛みは、主観的評価と客観的検査により、痛みの程度と質を評価する必要がある。

現在感じている自発痛を評価する。
特定の条件下に、外部から一定の刺激を与えて、本来の痛みの量と質とを比較する。
種々の薬物の鎮痛効果を知るために、痛みの強さを比較する。

■EBMとNBM

近年の医学は、EBMが全盛である。様々な領域において大規模な無作為化比較試験が積極的に行われ、その中で統計学的な有効性を見いだせない診断法や治療法は、「エビデンスがない、または乏しいもの」として扱われる。
EBMの概念を導入することによって、患者は科学的根拠に基づいた医療を受けられるようになった。
しかし、EBMだけで医療が遂行できるわけではなく、症状が典型的でない場合には、医療も患者も苦悩するとの批判がある。最近ではEBMとNBMを統合した医療を行うべきとする声も大きくなっている。
NBMにおいて、人間はそれぞれ自分の「物語」を生きており、「病気」もまた、その物語の一部であるとされ、治療的な対話が重要な柱となっている。
患者中心の医療を行うため、二つの医療概念は「車の両輪」の関係でなければならない。現況では、「NBM」と「EBM」が補完しあうことによりより良い医療が形成されると考えられている。「医師、個人の医学的知識と経験でのみ行われる父権的医療」から「証拠に基づく医療」、さらに「二つの概念が補完しあう医療」へと変遷しつつある。

　□エビデンスに基づく医療 Evidence-based Medicine: EBM　参考1/2/3/4/5/6

エビデンス　Evidence	医学的介入の有用性を証明する科学的根拠。主に臨床試験のデータを指す。
医学的介入　Intervension	患者に影響を及ぼす全ての医療行為。投薬、外科手術、検査、看護、教育、サービスなど。

曖昧な経験や主観、直感に頼る医療ではなく、科学的なエビデンスに基づいて実践する医療。
1990年代から、治療法の選択などについては、正当性は厳格にコントロールされた実験結果で示すべきであるという議論が高まり、米国で始まり世界に広がった。
カナダのMcMaster大学のDavid Sackettらが提唱していたが、同じくMcMaster大学のGordon Guyattが1990年に書いた論文の中で、「Evidence-based Medicine」という用語が使われた。
このような概念は目新しいものではなく、1970年代から一般内科領域において診療・研究のバックボーンと考えられていた「臨床疫学」（Clinical Epidemiology）とほぼ同じものであった。
"the conscientious, explicit and judgicious use of current best evidence in masking decisious about the care of individual patient"　「入手可能で裁量の科学的根拠を把握した上で、ここの患者に特有の臨床状況と価値観に配慮した医療を行うための一連の行動指針」
医療に科学的手法を取り入れようとする運動のひとつである。医療行為における治療法の選択などにあたっては、理論や経験や権威者の判断ではなく、確固とした疫学的証拠に基づき、科学的に最良の判断をすべきであるという考え方を最大の特徴とする。

EBMを中心とした全体の流れは，エビデンスを「つくる」「つたえる」「つかう」の三つの局面に分けられる。

つくる	臨床試験を中心とした臨床研究
つたえる	1990年代　システマティック・レビューを行うコクラン共同計画 →Cochrane Reviews Pain システマティック・レビュー＝メタアナリシス
つかう	医師、薬剤師など臨床現場での医療従事者行政官や診療ガイドライン作成者、製薬企業や医療機器の企業で開発に携わる人々などの、集団を対象とする医療従事者。患者

エビデンスのレベル　Level of evidence
　科学的根拠の水準を示し、通常、メタアナリシス＞ランダム化比較試験＞比較臨床試験＞コホート研究＞ケースコントロール研究＞ケースシリーズ＞ケースレポートの順番にレベルが高い。（EBMでは通常、ランダム化比較試験以上のレベルの臨床情報をエビデンスとする。）

I	システマティックレビュー、メタアナリシス
II	1つ以上の無作為比較試験
III	非無作為比較試験による
IV	分析疫学的研究（コホート研究や症例対照研究による）
V	記述研究（症例報告やケース・シリーズ）による
VI	患者データに基づかない、専門委員会や専門家個人の意見

推奨度

Grade	内容	エビデンスレベル
A	行うよう強く勧められる	I　II
B	行うよう勧められる	III　IV
C	行うよう勧めるだけの根拠が明確でない	V　VI
D	行わないよう勧められる	否定できるエビデンスあり
I	複数のエビデンスがあるが結論が一様でない

メタアナリシス、メタ解析　Meta-analysis

複数の臨床試験データを統合して評価する統計学的手法
過去に行われた複数の臨床試験の結果を、統計学の手法を用いてまとめ、全体としてどのような傾向が見られるかを解析する研究手法
一つ一つの試験では、はっきりとした結果が得られない場合でも、複数の試験の結果を統合すると、一定の傾向が見えてくることがある。信頼性が高いランダム化比較試験を選んでメタ解析を行うことで、信頼性の高い結果を得ることができます。

ネットワークメタアナリシス　network metaanalysis：NMA

従来のメタアナリシスは 2者の比較に限定されていたのに対して、ネットワークメタアナリシスは 3 者以上の比較を行うことができる。
ネットワークメタアナリシスにおいては、通常のメタアナリシスで求められる前提に加えて，さらにいくつかの条件が加わってくる。
さらに「一致性（consistency）」という新たな概念が必要になる。

無作為臨床試験　ランダム化比較試験　Randomized controlled trial　:ＲCT

無作為割付：対象者を、乱数表やくじ引きなどの手段を使って、群をランダムに二つに分ける。
介入群：一方の群には、評価しようとする治療や予防を行う。
対照群：他方の群には、評価しようとする治療や予防は行わず、従来の治療を行ったり、評価しようとする薬と見かけは同じだが薬効のないプラセボ投与する。
その後の疾病の死亡率や罹患率を、二群で比較する。介入群の痛みの程度や疼痛行動が、対照群よりも小さくなった場合には、鎮痛効果の有効性が示されたことになる。

二重盲検 double blind

無作為割付臨床試験で薬剤の効果を評価する時に、対象者の服用する薬剤が、薬効成分が含まれたものか、薬効成分が含まれないプラセボなのかを、研究者（医師）も対象者（患者）もわからないようにする。　参考

単盲検 single blind<

　薬剤の内容を研究者には知らせるが、対象者にはわからないようにする。

非盲検 open-label

研究者（医師）も対象者（患者）もプラセボなのかどうかを知っている試験
どんな治療を受けているかを患者さんや医療スタッフ全員が知った状態で行う試験
盲検化された試験に比べて結果の信頼性は低い。
　←→オープンラベル・プラセボ

比較臨床試験
　Controlled clinical trial
　:CCT<

　医学的介入群と対照群を割りつける際、コイン、曜日、カルテ番号などの準ランダム化 quasi-randomizationを用いるもの

コホート研究
　Cohort study （コホート研究) <

　疫学研究の代表的な方法。疾病の発生と、疾病の原因となる可能性のある要因について比較分析を行い、その間の因果関係を調べるもの。
前向きコホート研究（prospective cohort study）と後ろ向きコホート研究（retrospective cohort study）の2種類がある。

コクラン共同計画 The Cochrane Collaboration：CC　参考1/2

医療行為の利点と危険性について、レベルの高いエビデンスを系統的に評価して提供する国際プロジェクトで、Archibald Leman Cochrane（P 1909〜1988 イギリスの医師・疫学者）を記念して命名された活動。
1992年にイギリスの国民保健サービス National Health Service: NHSの一環として始まり、現在世界的に急速に展開している医療テクノロジーアセスメントのプロジェクト。
1970年代に、Cochraneは、「すべての医学的介入についRCT、あらゆる先入観、バイアスを排除するために考えられた統計学的手法）が必要で、その情報が要約され、最新化され必要な人に伝えられるべき」と力説した。
RCTを中心に、世界中のclinical trialのシステマティック・レビューを行い、その結果を、医療関係者や医療政策決定者、さらには消費者に届け、合理的な意思決定に供することを目的としている。
EBMの情報インフラストラクチャーと位置付けられる。
現在世界に15のコクランセンターがあり、活動している。
→JANCOC ：コクラン共同計画を日本で実践・推進する非公式なネットワーク。1994年11月5日に発足した。
→Cochrane Reviews Pain

Systematic review

対象となる医療行為に関する論文を、予め定められた基準により系統的・網羅的に収集し、批判的な吟味を行い、要約すること。

治療必要数 number needed to treat：NNT 　参考1

ある医学的な介入を患者に行った場合、一人に効果が現れるまでに何人に介入する必要があるのかを表す数字で、臨床試験の結果を用いて計算する。
リスク差の逆数（1÷リスク差）で示される。
ある薬物を3名に投与すると1名に治療効果が見られるのであれば、NNTが3
値が1.0に近いほど、有効性の高い治療法である。

有害必要数 number needed to harm：NNH

危険因子の影響を表す。
何人治療することで１人に害（副作用）が生じるか？という指標。

1970〜80年代以前にパターナリズムが主流だった背景には根拠となる臨床研究の数が限られ、権威的な医師の経験に頼るしかない事情もあった。日本では大学を中心とした医局制度の中で教授を核に医療の方針が決められてきた。その後、根拠となる臨床研究が次々と行われるようになるにつれて状況に変化がみられた。1990年代に、臨床研究の結果によって医療の方針を決めるEBMが注目されるようになり、ビデンスをまとめたガイドラインも作成され、医師ばかりではなく患者も医療情報を得やすくなり、患者参加の土台が築かれていった。こうしてインフォームド・コンセントやシェアード・ディシジョン・メイキングといった考え方が広く受け入れられるようになった。

パターナリズム・モデル（父権主義モデル）　paternalism model

従来型の父権主義的な方法。これは、父親が小さな子供のためによかれと思って子供の意向をあまり聞かずに意思決定することから来ている。
医師が提供する情報は少なく、医師が意思決定の中心となる。例え複数の選択肢が想定されても、医師が望ましいと判断した結果を話すだけで、患者に選択肢を選ぶ能力がないという想定で、患者にはその機会を与えないもの。
古典的なパターナリズム・モデルにおいては、医師から患者に伝えられるのは「医学情報」で、検討するのは「医師」、最終決定は「医師」となってきた。患者には、検討や最終決定の余地はなく、ほとんど受け身の状態になった。
この場合、検討や最終決定に患者やその家族が関与せず、医師に言われるがままに医療を行い、患者らの価値観や生活があまり踏まえられないため結果に対して患者や家族には不満が残ったり、治療後の生活に支障を来したりしやすい側面があった。

インフォームド・ディシジョン・モデル　informed decision model

医師と患者で一緒に決めるのではなく、患者は幅広く医師以外からも積極的に情報を収集し、自分で意思決定を行うというもの。
インフォームド・ディシジョン・モデルが登場して、検討の場に患者や家族が加えられ医師から情報が与えられた上で、最終決定を患者を行うという形が取られるようになった。
患者は主体的に医療の選択に関わることになったが、専門的な情報を患者が理解するのは困難であることもあり、実際は無理であるにもかかわらず、最終決定が患者に丸投げされてしまっている側面もあった。

シェアード・ディシジョン・メイキング　shared decision making

医療者と患者さんがエビデンスを共有して一緒に治療方針を決定するというもので、「共有意思決定」と呼ばれる。近年の医療の場では、それが必要とされる場面が多くなりつつある。
医療者は医学的情報と助言を伝え、患者は価値観や生活などの個人的、社会的な情報を伝え、双方向的な話し合いを行う。その上で、検討は医師だけ、患者だけで行うのではなく、医師と患者や家族が一緒に行う。さらに、最終決定も双方が参加して行う形に発展した。
どの治療法がよいのかが分からないときほど、シェアード・ディシジョン・メイキングが重要になってくる。
シェアード・ディシジョン・メイキングは、不確実性の高低と命のリスクの2つの軸から4タイプに分けられる。

□物語に基づく医療 Narrative-Based Medicine: NBM
　「Narrative」＝「語り」あるいは「物語」。

1990年代後半からは、医師の治療にかかわる意思決定の場面で「根拠」、「統計手法」、「科学性」を強調しすぎることの反省から、その補完的な意味をもつ考えとしてNBMの重要性が提起された。

NBMは1980年代後半、家族療法の内部から生まれたnarrative theoryを基礎として発展した医学

narrative theory

ヒトは出来事を解釈し意味づけ、それに基づいて行為をすることにより、自らからの体験世界を構築する。
それはすでに重要な他者との相互作用（会話）や社会的言説からの影響を含んだものでもある。
語りはその人の望むものとは必ずしも一致しないものとなる可能性がある。
narrative theoryの治療社は独自の会話法を用いて、その人が語り直せるように援助する。

NBMは英国のGP（General Practitioner；総合診療医）達から生まれた考えであるが、EBMと相対立するものではなく、車の両輪のように相補うものとされている。エビデンスを一人ひとりに適切に利用するためには、患者との対話を基本にし、病を患者が語る物語と捉え、患者を物語の語り手・主体として尊重する。
1998年にTrisha Greenhalgh（UCLのPrimary Health Careの教授、北ロンドンのGP）が「Narrative Based Medicine-Dialogue and discourse in clinical practice」(BMJ Books)を出版した。
一人一人の患者には自らの人生とともに、それぞれの疾患に対する物語がある。その物語を患者と治療側が共有することで、科学としての医学と個々の人間に対する医療との間に横たわる溝を埋めていこうとする。
患者の語る物語を全面的に尊重し、患者と医療者の対話の中から、新しい物語が生まれてくることを期待する、という基本姿勢を堅持する医療である。
1. 患者の語る「病の体験の物語」をまるごと傾聴し、尊重する。
2. 医療でのあらゆる理論や仮説や病態説明を「構築した物語」として相対的に理解する。したがって、科学的な説明を唯一の真実であるとはみなさない。
3. 異なった複数の物語の共存や併存を許容し、対話の中から新しい物語が創造されていることを重視する。

□痛みの検査法？？？　←→刺激/動物のテスト法

⇒Pain Vision
⇒Current Perception Threshold　Neuromete

⇒ドラッグチャレンジテスト
⇒capsaisin test
⇒カンタリジン発泡膏 cantharidin blister base 試験
　化学刺激を使ったテスト法ではなく、痛みを引き起こす化学物質の検査法

機械刺激のための刺激装置

von Frey test(Semmes Weinstein1/2/3)
Keel KDは、市販の圧力ゲージstrain gageを改良して圧疼痛計 pressure algometerを試作し、骨を覆う皮膚を垂直に圧迫して痛覚検査を測定した (Lancet 1954;1:636-639)。
Ulf Lindblomらは、strain gageを張ったピンセットで皮膚をつまむ方法でpressure-pain threshold (PPT)を測定していた。
表在知覚計アルゲジオメーター
servo-controlled mechanical stimulator　[PubMed]
はけや電動歯ブラシを使った疼痛テスト

熱刺激のための刺激装置

　[痛みの評価の対象]

痛みの原因（帯状疱疹、交通事故、など）
痛みがある期間（1ヶ月間、3年間、など）
痛みの頻度（1日数回、持続的、など）
痛みの強さ
痛みの強さの変化（次第に増強している、など）
痛みの部位（腰、肩、など）
痛みの性質（ズキンズキン、ビリビリ、など）
痛みに影響を与えるもの（天気、疲労、など）
活動に対する影響（仕事や家事ができない、など）
障害補償や法律問題の有無（訴訟中である、など）
これまでの治療（神経ブロック、手術、など）
現在及び過去の薬物療法（抗うつ薬、など）

■ヒトの痛みの数値化
（ヒトの痛みの客観的評価 Object measurement of pain）

客観的評価法は確立されていない。

痛覚閾値の測定
痛覚閾値の測定法の諸条件

侵害刺激であるが、被検者に実質的損傷を与えない安全な刺激。
刺激強度は変えることができ、被検者はいつでも刺激を回避できる。
刺激のパラメーターは痛覚と無関係でない。
定量化が容易であるばかりでなく、再現性がある。
刺激強度を痛覚弁別閾よりも高い精度で測定できる。
簡便で、実用性のある方法。
刺激によって生じる痛覚の認知がはっきりしている。

知覚・痛覚定量装置 Pain Vision PS-2100　→参考1/2

開発者：杏林大学保健学部教授　嶋嶋津秀昭先生
製品化：株式会社オサチ
販　売：ニプロが平成19年3月22日販　売
NHKのサイエンスZEROで紹介された。
客観的にみられなかった痛みの数値化
患者が持つ痛みを、痛みを伴わない異種感覚に置き換えて定量評価する。
徐々に上昇する電流値から各被検者の電流知覚閾値を把握することができる。

痛みに対応する電流を測定して、痛みの大きさを数値化することができる。

本体	小型軽量（290ｘ250ｘ80mm 2.5kg） 3つのモードがある。
ディスポ電極 EL-BAND	双極電極：基板上に、直径 27mmの導電性プラスチックの表面に、厚さ 1.5mmの導電ゲルシートを貼ったもの
刺激電流	矩形波ではなく、先端のとがった微分波状のパルス状電流（50Hz、0〜120µA、パルス幅 0.3msec）であり、Aβ線維およびAδ線維を刺激する。

前腕内側などに専用モードに対応する電極EL-BANDを貼付する。
知覚閾値測定↓：電気刺激が感覚として認識された電流値を、「最小関知電流」と定義する。

痛み測定↓：痛みの程度に相当する感覚を誘発させた電流値を、「痛み対応電流」と定義する。

痛み指数 pain ratio＝痛み対応電流／最小関知電流
痛み度 pain degree＝100 X （痛み対応電流ー最小関知電流）／最小関知電流

知覚閾値測定	徐々に上昇する電流により最小関知電流値を評価するモード被検者が付属ハンドスイッチを的確に操作できることを確認した後、電流出力を開始する。測定の前に刺激電流の限界値及び上昇時間は設定画面上より操作可能。上昇する電流値を感じたら、ハンドスイッチを押下し電流出力を停止する。→最小関知電流（知覚閾値電流）
痛み測定	慢性的な痛みを計測するためのモード知覚閾値を計測した後、同様の方法で痛みに等しくなる電流値を計測する。被検者が付属ハンドスイッチを的確に操作できることを確認した後、電流出力を開始する。測定の前に刺激電流の限界値及び上昇時間は設定可能。上昇する電流値が痛みと等しいと感じたら、ハンドスイッチを押下し電流出力を停止する。→痛み対応電流値知覚閾値を基に痛み対応電流を評価し、痛み指数あるいは痛み度を表示する。
痛みレベル測定	瞬間的な痛みを計測するためのモード知覚閾値を計測後、知覚閾値を基準にした電流を設定値に合わせ出力する。電流が出力されている間に瞬間的に発生する痛みとの比較を行う。測定結果は設定倍率の区間で表示される。

電流知覚閾値（神経選択的知覚神経伝導閾値）試験　 Current Perception Threshold：CPT　

Neurometer　Neurotron, Inc. 関連→1/2/3

感覚神経の感受性を、経皮的に特定周波数による電気刺激によって、異なる神経線維に対し、選択的に電流知覚閾値CPTとして定量評価を行う。
Jefferson J. Katims （Department of Rehabilitation Medicine, New York University）ら　が1987年に末梢神経ニューロパシーのための新しい検査法として、Neurometerを開発した。 1/2
本邦においても痛みに関する基礎的あるいは臨床的研究に応用されている。ペインクリニック領域において、PHNや CRPSなどの神経障害性疼痛をはじめ種々の慢性疼痛の評価として利用されている。1/2
臨床用*と動物実験用*のNeurometerが発売されている。
神経機能の評価だけではなく、特定の神経線維の刺激によって、中枢の伝導路のイメージングとしても使われる可能性が出てきた。
通常の電気刺激を利用した検査法では、刺激を強くしても伝導速度の速い有髄神経も刺激されるので、無髄神経の機能を調べることができないが、CPT検査ではそれぞれの神経の機能や閾値を検査できる。
通常の電気刺激装置は矩形波の刺激であるが、Neurometerは正弦波（サイン波）の刺激。
CPT検査には電気抵抗に影響されない定電流刺激が用いられる。（皮膚の電気抵抗は、角質の厚さ、発汗、体温などの生理的要因の影響を受けて絶えず変化するので、振動覚閾値検査や温度覚閾値検査は、皮膚厚や体温などに影響を受けやすい。）
神経線維の太さによって、不応期の持続時間が異なるという性質を利用して、周波数の異なる刺激を加えることによって、Aβ, Aδ, C線維を選択的に刺激を行うことができることになっている。
無髄C線維の不応期が最も長いので、高頻度刺激には追従しない。活動電位の発生のためにも最も長い脱分極が必要である。

3種類の周波数の電気刺激を経皮的に与え、得られたCPTから各神経線維の障害を診断する。

2000Hz	大径有髄線維	Aβ線維	振動覚、圧覚、神経伝導速度や腱反射に対応
250Hz	小径有髄線維	Aβ線維	触覚
5Hz	無髄線維	C線維	痛覚、温冷覚、自律神経
刺激電極：１対の直径10mmの円盤状金メッキ電極刺激強度：０〜9.99mA Current Perception Threshold：CPT：それぞれの周波数刺激において、刺激を徐々に強めて、感覚が生じた電流値が、それぞれの神経線維の閾値となる。 CPTの高値は知覚鈍麻を、低値は知覚過敏を示唆する。疼痛耐性閾値 Pain Tolerance Threshold (PTT)

　[Neurometerの限界]

被検者に意識があることが必要である。
運動機能は評価できない。
障害の有無や障害線維の判定は可能であるが、末梢から中枢に至る経路内の障害部位の同定はできない。

→画像診断
神経性炎症の評価
　痛み刺激が加わったかどうかの判定。痛みの認識の評価ではない。

■診断

感度 sensitivityと特異度 specificity　←→CRPS/カットオフ値/ROC曲線

感度 sensitivity：陽性と判定されるべきものを正しく陽性と判定する割合
特異度 specificity：陰性と判定されるべきものを正しく陰性と判定する割合

	疾患あり	疾患なし	合計
検査陽性（異常値）	真陽性（a）	擬陽性（b）	a+b
陰性（正常値）	偽陰性（c）	真陰性（d）	c+d
合計	a+c	b+d	a+b+c+d

■ヒトの痛みの主観的評価

痛みの質の評価

マギル疼痛質問表　McGill Pain Questionnaire : MPQ *　→→→→形容詞

マクギル大学のDr Melzackが1975年痛みに関連した多数の単語を分類した質問表。
簡易型McGill Pain Questionnaire　1991年 Dr MacCaffery　(15語）。
MPQ日本語改変法---感覚、情動、評価の3側面について合計16項目からなり、それぞれ5段階の痛みの強度を示す言葉が含まれる。
日本語短縮版マギル痛み質問紙（ＳＦ‐ＭＰＱ‐ＪＶ）の妥当性の検討—Ｊ‐ＭＰＱとの相関　1/1/2

痛みの強さの評価---自己申告

視覚的アナログスケール　visual analogue scale : VAS

長さ100mmの線を引いた細長い紙（など）を被検者に見せる。
　左端は、無痛"no pain"、右端はこれまで感じた最悪の痛み"the worst pain I ever felt"と説明して、
　現在感じる痛みの程度を被検者に鉛筆（など）で示してもらう。
- 被検者に示したポイントの長さを測定する。（裏に目盛りがあり、読みとる。）---xxmm（100段階評価）
- 100mmを10等分し、痛みがどの領域にあるかを判定する。---11段階評価
7,8歳以上の被検者が対象
誰がVASを最初に使ったが不明であるが、・・・・・・
Aitken RCV. Measurement of feelings using visual analogue scales. Proc R Soc Med. 1969;62:989–993.[PubMed]

数値的評価スケール　numerical rating scale : NRS

痛みの強さを0から10までの11段階として、現在感じているペインスコアを口頭で伝える。
NRSは、順序尺度の整数データ。

口頭式評価スケール　verbal rating scale : VRS, verbal description scale : VDS

あらかじめ決めてある痛みの強さのスコアで口頭で伝える。
　4段階：　０：痛みがない　１：少し痛い　２：かなり痛い　３：耐えられないほど痛い　など

フェイス・スケール　The Faces Pain Scale: FRS
Wong-Baker Faces Pain Rating Scale　参考1
　←→Grimace scale（げっ歯類のしかめっ面スコア）/情動の表出・顔の表情

Donna Lee Wong（P 1968〜2008, アメリカの小児看護学者）とConnie Morain Bakerによる。
視覚的アナログスケールをイラスト化したもの。このフレームと上フレームの背景画像のような。）
感じている痛みの強さを、痛みを表している顔の絵で選ぶ。
　フェース0: 痛みが全くなく、とても幸せである。
　フェース1: わずかな痛みがある。
　フェース2: 軽度の痛みがあり、少し痛い。
　フェース3: 中等度痛みがあり、辛い。
　フェース4: かなり痛みがあり、とても辛い。
　フェース5: 耐えられないほど痛みがある。
3歳以上の被検者が対象
高齢者の痛みにもしばしば使われる。

駆血帯疼痛試験 submaximal effort tourniquet test: SETT　*

エスマルヒの駆血帯(Esmarch's bandage) で駆血した前腕を血圧計のマンシェット圧を最大血圧の2分の1に高めて血流を遮断した後、握力計を反復して握ると痛みが起こる。
このときの痛みを実際の痛みと比較して評価する方法。

　→hanage

行動による痛みの評価（鎮静の評価も含む）

Prince Henry pain scale : PRS

術後痛の評価に用いられるスケール。
　０：咳をして痛まない
　１：咳をすると痛むが、深呼吸では痛まない。
　２：深呼吸をすると痛むが安静にしていれば痛まない。
　３：多少安静時痛はあるが鎮痛薬は必要でない。
　４：安静時痛があり、鎮痛薬が必要である。

Children's Hospital Eastern Ontario Pain Scale : CHEOPS *

カナダの心理学者と麻酔科医のチームが小児の術後痛の評価のために考案したスケール。
泣き方、表情、痛みの訴え、姿勢、傷を触れようとするか、脚位置の6つの行動項目を規定した段階的に点数をつけていく方法。

Behavioral Pain Scale : BPS

表情、上肢の動き、人工呼吸器との同調性という３項目について、それぞれ４点ずつスコアをつけて満点が12点になるスケール。 1

項　目	説　明	スコア
表　情	穏やかな	1
	一部硬い（例えば、まゆが下がっている）	2
	全く硬い（例えば、まぶたを閉じている）	3
	しかめ面	4
上肢	全く動かない	1
	一部曲げている	2
	指を曲げて完全に曲げている	3
	ずっと引っ込めている	4
呼吸抑制との同調性	同調している	1
	時に咳嗽	2
	呼吸器とファイティング	3
	呼吸器の調節がきかない	4

BPSを用いれば、人工呼吸中でコミュニケーションを十分にとれない患者でも、疼痛を評価できる。
日本呼吸療法医学会のガイドラインでは、鎮痛評価ツールとしてBPSを推奨している。

Richmond Agitation- Sedation Scale : RASS

日本呼吸療法医学会の人工呼吸中の鎮静のガイドラインで推奨している鎮静レベルの評価法。
簡便なRamsay scaleの信頼性と妥当性の検証して、様々なスケールが模索され、2002年にRASSが提案された。

鎮静スケールをつけられない時間が生じるので、その空白の時間帯を補って持続的にみる意味では、BISなどを用いる脳波モニタリングを推奨している。

ステップ１	30秒間、患者を観察する。これ（視診のみ）によりスコア0〜+4を判定する。
ステップ2：	１）大声で名前を呼ぶか、開眼するように言う。２）10秒以上アイ・コンタクトができなければ繰り返す。以上２項目（呼びかけ刺激）によりスコア -1〜-3を判定する。３）動きが見られなければ、肩を揺するか、胸骨を摩擦する。これ（身体刺激）によりスコア-4、 -5を判定する。

0を中心に10段階に分かれていて、プラスでは興奮、マイナスでは鎮静が強いと評価する。

スコア	用　語	説　明
+4	好戦的な	明らかに好戦的な、暴力的な、スタッフに対する差し迫った危険
+3	非常に興奮した	チューブ類またはカテーテル類を自己抜去；攻撃的な
+2	興奮した	頻繁な非意図的な運動、人工呼吸器ファイティング
+1	落ち着きのない	不安で絶えずそわそわしている、しかし動きは攻撃的でも活発でもない
0	意識清明な	落ち着いている
-1	傾眠状態	完全に清明ではないが、呼びかけに10秒以上の開眼及びアイ・コンタクトで応答する	呼びかけ刺激
-2	軽い鎮静状態	呼びかけに10秒未満のアイ・コンタクトで応答	呼びかけ刺激
-3	中等度鎮静	状態呼びかけに動きまたは開眼で応答するがアイ・コンタクトなし	呼びかけ刺激
-4	深い鎮静状態	呼びかけに無反応、しかし、身体刺激で動きまたは開眼	身体刺激
-5	昏睡	呼びかけにも身体刺激にも無反応	身体刺激

リッカー鎮静-興奮スケール Riker Sedation-Agitation Scale：SAS

1999年にRiker, Picard and Fraserが提唱した鎮静レベルのスケール

スコア		説明
7	危険な興奮	モニタリング装置およびデバイスを取り外そうとしたり，ベッドから降りようとする；物を投げたり，ひっくり返す；スタッフに攻撃する
6	非常に興奮している	頻繁な声かけにもかかわらず落ち着きがないままである；気管チューブを噛む；拘束が必要である
5	興奮している	不安な様子または落ち着きがない；動こうとする；声をかけると落ち着く
4	平静で協力的	落ち着いている；容易に覚醒する；指示に従うことができる
3	鎮静している	覚醒が難しい；声をかけるか，軽く揺さぶると反応するが，再び眠る
2	非常に鎮静している	意思の疎通ができない；身体的な刺激に反応するが，声による指示には反応しない；自発的に動くことがある
1	覚醒不能	意思の疎通ができない；痛覚刺激にわずかに反応するか全く反応しない

ラムゼイ鎮静スケール ramsay sedation scale/score

Michael A. E. Ramsay（BAYLOR研究所麻酔学）が1974年に提案した古典的なな鎮静深度を評価するスケール
鎮静する患者のために定められた最初のスケールで、覚醒性のテストとして設計された。

不穏・興奮を判定できないことが弱点である。

レベル1	不安が強い、興奮している、またはそわそわして落ち着きがない。
レベル2	患者は目覚めており、診療に協力的、オリエンテーション良好、落ち着きがある。自分のおかれている時間的、空間的、人間関係的状況の理解
レベル3	患者は一応目覚めているが、指示に対してのみ応答する程度である。
レベル4	患者は眠っているが、眉間を軽く大声での呼びかけに、すばやく反応する。
レベル5	患者は眠っており、眉間を軽く大声での呼びかけに、ゆっくりと反応する。
レベル6	患者は眠っており、眉間を軽く大声での呼びかけに反応しない。

confusion assessment method for the ICU：CAM-ICU

日本呼吸療法医学会はせん妄評価には、日本語版CAM-ICUを推奨している。

Intensive Care Delirium Screening Checklist：ICDSC

せん妄評価

quality of life（QOL）、行動による痛みの評価

疼痛生活障害評価尺度 Pain Disability Assessment Scale：PDAS

九州大学心療内科の有村達之らが考案した。　1

「買い物に行く」や「ベットに入る、ベットから起きあがる」など日常生活で行う20項目を4段階で評価するもので、点数が高ければ高いほど日常生活が疼痛により障害されていることを示す。

この質問票は、あなたの病気(痛み)が、あなたが日常生活のいろいろな場面で行っている活動にどのような影響を及ぼしているかを調べるためのものです。以下にいろいろな動作や活動が書かれています。それぞれの項目について、最近一週間のあなたの状態を最もよく言い表されている数字を○で囲んでください。それぞれの数字は次のような状態のことです。わからないことがあれば遠慮なく担当医におたずねください。

　　　　　0：この活動を行うのに全く困難（苦痛）はない。
　　　　　1：この活動を行うのに少し困難（苦痛）を感じる。
　　　　　3：この活動を行うのにかなり困難（苦痛）を感じる。
　　　　　4：この活動はは苦痛が強くて、私には行えない。

1 掃除機をかけ、庭仕事など家の中の雑用をする	： 0 1 2 3
2 ゆっくり走る	： 0 1 2 3
3 腰を曲げて床の上のものを拾う	： 0 1 2 3
4 買い物に行く	： 0 1 2 3
5 階段を上がる、下がる	： 0 1 2 3
6 友人を訪れる	： 0 1 2 3
7 バスや電車に乗る	： 0 1 2 3
8 レストランや喫茶店に行く	： 0 1 2 3
9 思いものを持って運ぶ	： 0 1 2 3
10 料理を作る、食器洗いをする	： 0 1 2 3
11 腰を曲げたり、伸ばしたリスる	： 0 1 2 3
12 手を伸ばして棚から思いもの(砂糖袋など)を取る	： 0 1 2 3
13 体を洗ったり、ふいたりする	： 0 1 2 3
14 便座に座る、便座から立ち上がる	： 0 1 2 3
15 ベッド(床)にはいる、ベッド(床)から起き上がる	： 0 1 2 3
16 車のドアを開けたり閉めたりする	： 0 1 2 3
17 じっと立っている	： 0 1 2 3
18 平らな地面の上を歩く	： 0 1 2 3
19 趣味の活動を行う	： 0 1 2 3
20 洗髪する	： 0 1 2 3

神経障害性疼痛診断ツール　←→神経障害性疼痛

Pain DETECT

PubMed

Neuropathic Pain Scale：NPS

Bradley S. Galer & Mark P. Jensen, NEUROLOGY 1997;48:332-338 [PubMed/NEUROLOGY]
Development and preliminary validation of a pain measure specific to neuropathic pain
痛みの強さと痛みの不快感
ニューロパシックペインの8つの特異的な質："sharp," "hot," "dull," "cold," "sensitive," "itchy," "deep," and "surface" pain
線上0〜10にXをつける。

Leeds assessment of neuropathic symptoms and signs（LANSSスケール）

定量的感覚試験、網羅的感覚機能評価　Quantitative sensory testing：QST

体性感覚に関連して触覚、振動覚、温冷覚などそれぞれについて検知閾値、弁別閾値などについて網羅的に行う評価法
神経障害性疼痛患者の感覚表現型を明らかにするために作成された。
中枢神経感作の有無を評価するために用いられる。

Static QSTとDynamic QSTがある。

Static QST

標準化された刺激に対する反応性をみる感覚試験
単回刺激で痛み閾値や疼痛強度を評価
圧痛閾値　pressure pain threshold：PPT、カフ圧痛閾値　Cuff-PPT、電流知覚閾値　current perception threshold：CPT

Dynamic QST

痛みの加重効果や調節機能をみる感覚試験
被検者内でスコアを標準化できるので、グループ間比較に有用である。
元々の個人差を差し引いたスコアを算出できる。
時間的加重 Temporal summation・・・wind-up現象
オフセット鎮痛
conditioning pain modulationn：CPM・・・descending modulation
残感覚

泉仁先生＠高知大学整形外科は、QSTに使用するツールが特殊で、高額なので、クリニックやベッドサイドで使用可能な簡易 QSTツール（QuantiPain^TM）を開発している。

Central Sensitization Inventory（CSI）　←→中枢神経感作症候群

Tom G Mayer（Dallasの整形外科医）とRandy Neblett（リハビリ科）らが2012年に開発した。*
中枢神経感作の評価のスクリーニングツールとして開発された、自記式質問紙
CSIはCSSに共通する健康関連の25項目で構成されるPart A（0点〜100点）および、CSSに特徴的な疾患の診断歴の有無を問うPart Bから構成される。
評価される「推定の」中枢感作の症状には、睡眠障害、集中力低下、光やにおいへの過敏性、ストレスなどが含まれる。　←→痛覚変調性疼痛の診断基準
CSIは18の言語で利用可能（PRIDE（pridedallas.com））で、日本語版Central Sensitization Inventory（CSI-J）も開発された。

日本語版Central Sensitization Inventory（CSI-J）　参考1/2/3/4/

西上智彦先生のグループが開発したCentral Sensitization Inventory（CSI）の日本語版
言語的妥当性の担保を確認し、筋骨格系疼痛患者において、CSI scoreと疼痛や健康関連quality of life（QOL）との関連を報告されている。

重症度レベル（0〜29点：subclinical、30〜39点：mild、40〜49点：moderate、50〜59点：severe、60〜100点：extreme）に分けられる。

CENTRAL SENSITIZATION INVENTORY：PARTA（0点〜100点）
25項目に対して、それぞれ「まったくない・まれにある・ときどき・頻繁に・いつも」のどれかを選択する。

眠りから覚めた時に，疲れていてすっきりしない感じがする
筋肉に硬さや痛みを感じる
不安発作がある
歯を食いしばったり，または歯ぎしりをしたりする
下痢や便秘の問題を抱えている
普段の生活での動作を行う上で，助けが必要である
明るい光に過敏である
身体を動かすと，すぐに疲れる
全身のあらゆるところに痛みを感じる
頭痛がある
膀胱の不快感と排尿時の灼熱感の両方，またはいずれか一方を感じる
よく眠れない
集中することが難しい
乾燥肌や痒み，発疹などの皮膚の問題がある
ストレスで身体症状が悪化する
悲しんだり，または憂鬱な気分になる
元気が出ない
首と肩の筋肉が緊張している
顎に痛みがある
香水などのある特定の匂いでめまいや吐き気がする
頻繁に排尿しないといけない
夜に寝ようとする時，あしに不快感や落ち着かないじを感じる
物事を思い出すことが難しい
子供の頃に心的外傷（トラウマ）を経験した
骨盤周辺に痛みがある

CENTRAL SENSITIZATION INVENTORY：PART B 医師から診断を受けたことがある診断名の調査

むずむず脚症候群
慢性疲労症候群
線維筋痛症
過敏性大腸症候群
片頭痛もしくは緊張性頭痛
過敏性大腸症候群
化学物質過敏症
頭部外傷(鞭打ちを含む)
不安発作もしくはパニック発作

簡易版：CSI-9

CSIの原版は25項目であるが、短縮版（9項目）：CSI-9も開発されていて、臨床で用いやすい。

重症度レベル（0〜9点：no CS、10〜19点：mild、20〜36：moderate severe）

Central Sensitization Iventory short ver

眠りから覚めた時に，疲れていてすっきりしない感じがする
筋肉に硬さや痛みを感じる
全身のあらゆるところに痛みを感じる
頭痛がある
よく眠れない
集中することが難しい
ストレスで身体症状が悪化する
首と肩の筋肉が緊張している
物事を思い出すことが難しい

どのようにあるかを回答　5段階（０：まったくない、１：まれにある、２：ときどき、３：頻繁に、４：いつも）

痛みへの反応の指標　

疾病行動質問表　Illness Behavior Questionnire: IBQ

恐怖ー回避信念質問表　Fear-Avoidance Beliefs Questionnaire

コーピング方略質問表　Coping Strategies Questionnnaire　←→コーピング

痛み自己効力感質問表　Pain Self-Efficacy Questionnaire：PSEQ　←→自己効力感

痛みに対する自己効力感を表す尺度で、痛みがある中でどれだけ課題をこなせるかを「主観的に判断する」尺度
痛みがある状況でも「家事や買い物、趣味を行うことができる」という判断をする方もいれば、痛みがあることで「動けない、買い物にも行けない、趣味もやめている」という判断をする方もいる。このような痛みに対する対処をどのようにしているかを、10項目の質問から識別する。
どれだけ治療によって一時的に痛みの改善が得られたとしても、その後「動く」という選択を対象者自身がしない限り、活動性が十分に上がっていかない。そういう意味では、早い段階から「この人は痛みの対処をどのようにしてるんだろう？」ということを明確にしておくと、その後の行動変容を促しやすい。

痛み破局化スケール　Pain Catastrophizing Scale：PCS　←→痛みの破局化

Michael JLSullivan（McGill大学心理学科）が1995年に考案し、2007年に松岡紘史ら（北海道医療大学）によって日本語版が作成された。
痛みによる破局化を評価する、13項からなる自己記入式の質問紙で、高値になるほど破局化傾向が強いことを示す。
反芻、無力感、拡大視の3つの下位尺度からなる。
fear avoidance modelにおける痛みの負のループの入り口になるものとされている。
　痛みを経験した後に、その痛みをどのように捉えるかが岐路になり、痛みをネガティブに捉える傾向であると、痛みの負のループに陥りやすいことがわかっている。
PCSが30点以上であると、痛みそのものの問題よりも、痛みをネガティブに捉える傾向が痛みを慢性化させている要因であることが示唆されている。

心理的・精神的側面関連指標
心理社会的要因の中にも情動的側面、認知的側面、社会的側面の要因に分けられる。
　←→Bio-psycho-social medical mode/neuromatrix theory
　┏情動的側面の評価：Hospital Anxiety and Depression Scale（HADS）、Tampa Scale for Kinesiophobia（TSK）
　┗認知的側面の評価：Pain Catastrophizing Scale（PCS）

Brief Scale Psychiatric Problem in Orthopaedic Patients: BS-POP

Hospital Anxiety and Depression scale：HADS（日本語版）　←→うつ

（身体的疾患を有する患者の）抑うつと不安に関する精神的状況を計測する尺度　自己記入式質問票式方法
Zigmond AS, Snaith RP. (St. James' University Hospital)らが1983年に身体症状を持つ患者の不安と抑うつ状態を評価するために開発した。（The hospital anxiety and depression scale. Acta Psychiatrica Scandinavica. 1983; 67(6): 361-70.）
北村俊則（国立精神・神経センター）
14項目の別々のスコアで不安と抑うつを評価
不安７項目（HADS-A）、抑うつ７項目（HADS-D）、４件法（0-3点）
トータルは0〜21点。高得点の方が心理学的苦悩が高い。

7点以下は問題なし、8〜10点は臨床的に苦悩の可能性あり、11点以上は臨床的に明確な苦悩を示す。

1. 緊張したり気持ちが張りつめたりすることが；

しょっちゅうあった
たびたびあった
ときどきあった
まったくなかった

	3
	2
	1
	0

2.昔楽しんだことを今でも楽しいと思うことが；

まったく同じだけあった
かなりあった
すこしだけあった
めったになかった

	0
	1
	2
	3

3. 何か恐ろしいことが起ころうとしているという恐怖感を持ちことが；

しょっちゅうあって、非常に気になった
たびたびあるが、あまり気にならなかった
少しあるが気にならなかった
まったくなかった

	3
	2
	1
	0

4. 物事の面白い面を笑ったり、理解したりすることが；

いつも同じだけできた
かなりできた
すこしだけできた
まったくできなかった

	0
	1
	2
	3

5. 心配事が心に浮かぶことが；

しょっちゅうあった
たびたびあった
それほど多くはないが、時々あった
ごくたまにあった

	3
	2
	1
	0

6. きげんの良いことが；

まったくなかった
たまにあった
ときどきあった
しょっちゅうあった

	3
	2
	1
	0

7. 楽に座って、くつろぐことが；

かならずできた
たいていできた
たまにできた
まったくできなかった

	0
	1
	2
	3

8. 仕事を怠けているように感じることが；

ほとんどいつもあった
たびたびあった
ときどきあった
まったくなかった

	3
	2
	1
	0

9. 不安で落ち着かないような恐怖感を持つことが；

まったくなかった
ときどきあった
たびたびあった
しょっちゅうあった

	0
	1
	2
	3

10. 自分の顔、髪型、服装に関して；

関心がなかった
以前よりも気を配っていなかった
以前ほど気を配っていなかった
いつもと同じように気を配っていた

	3
	2
	1
	0

11. じっとしていられないほど落ち着かないことが；

しょっちゅうあった
たびたびあった
すこしだけあった
まったくなかった

	3
	2
	1
	0

12. 物事を楽しみにして待つことが；

いつも同じだけあった
以前ほどはなかった
以前よりも明らかに少なかった
めったになかった

	0
	1
	2
	3

13.突然、理由のない恐怖感（パニック）におそわれることが；

しょっちゅうあった
たびたびあった
少しだけあった
まったくなかった

	3
	2
	1
	0

14. おもしろい本や、ラジオまたはテレビ番組を楽しむことが；

たびたびできた
ときどきできた
たまにできた
ほとんどめったにできなかった

	0
	1
	2
	3

痛みの認知の評価　
Pain Quality Assessment Scale：PQAS
痛みの質を評価する因子分析

パーソナリティの検査　←→慢性痛のパーソナリティ

ミネソタ多面性性格テスト　Minnesota Multiphasic Personality Inventory : MMPI

1943年にS.R.HathawayとJ.C.Mckinley（アメリカのミネソタ大学の研究者）によって開発された網羅性と客観性の高い心理テスト。
550 項目の質問紙（Questionnaire）からなるテスト：ミネソタ州の市民を母集団とする実験群からサンプリングして作成された質問紙法の人格検査で、550問の質問項目から構成されている。
『はい・いいえ・どちらでもない』の三件法で回答するようになっている。
精神分析が勢力を誇っていた時代の疾病概念に強く影響されているので、エビデンス・ベースドな最新の科学的精神医学の知見と折り合わない部分もある。

9つの尺度から構成されていて、被験者が病的傾向をもつ場合に、一応の精神医学的診断がくだせるようになっている。

第1尺度 Hs　心気症尺度	精神面を無視する傾向や疾病への懸念
第2尺度 D　抑うつ性尺度	現状への不満、抑うつ傾向
第3尺度 Hy　ヒステリー性尺度	ストレス対処の仕方、自分の感情の洞察
第4尺度 Pd　精神病質的偏奇性尺度	人、体制、権威に逆らう傾向
第5尺度 Mf　男子性・女子性尺度	ステレオタイプの性役割を取得している程度と性役割感
第6尺度 Pa　パラノイア尺度	対人関係上の敏感さ、猜疑傾向
第7尺度 Pt　精神衰弱性尺度	不安感などの神経症的傾向
第8尺度 Se　精神分裂性尺度	統制と疎外感
第9尺度 Ma　軽躁性尺度	活動性
第0尺度 Si　社会的向性尺度	社会参加や対人接触を避ける傾向

MMPIと並んで、統計学的な信頼性と妥当性が高い性格検査には、アイゼンクが作成したMPI（モーズレイ性格検査）やY-G性格検査（矢田部・ギルフォード性格検査）、EPPS(Edwards Personal Preference Schedule)などがある。

Survey of Pain Attitude：SOPA
　＝痛みに対する態度や信念を測定する質問紙

米ワシントン大学

Chronic Pain Coping Inventory：CPCI
　＝痛みに対する対処法を測定する質問紙

米ワシントン大学

Pictorial Representation of Illness & Self Measure：PRISM
　＝投影法（九大版）

九州大学心療内科は、慢性疼痛の難治化の因子として「医療不信」に注目し、PRISMを応用した新しい評価法を開発した。
A4の紙の左下に7cmの円を描き、それは「自己」を示す。
家族や医療などの要素が自己とどれぐらいの距離を置いて存在するかを書いてもらう。
要素には順位づけした色でも示してもらう。

アレキシサイミアの自己式質問紙：TAS-20　
Toronto Alexithymia Scale: TAS-20の改訂版　
20項目からなるの改訂版、因子分析

Factor1「感情の同定」

Factor2「感情の表出困難」

Factor3「外的思考」

労働状況を評価する指標　

疾病就業プレゼンティズム　presenteeism　←→アブセンティズム

出勤しているにも関わらず、心身の健康上の問題により、充分にパフォーマンス（職務遂行能力）が低下している状態
近年、生産性向上や産業衛生の分野で話題となっています。
頭痛や胃腸の不調、軽度のうつ、花粉症のアレルギー症といった、つらくても無理をすれば出社できる程度の疾病が原因で発生するプレゼンティイズムによって、全米では年間約1500億ドルの損失が出ているといわれている。

アブセンティズム　absenteeism　←→プレゼンティズム

欠勤や休職、あるいは遅刻早退など、職場にいることができず、業務に就けない状態

使用する評価ツール

WHO-HPQ（WHO Health and Work Performance Questionnaire, short form）　*

職場での精神面を含め健康上の理由で仕事のパフォーマンスが低下している状態（プレゼンティズム）を評価するために開発された質問票

日本語版

RIOMH 産業精神保健研究機構の宮木幸一先生が日本語版を作成
逆翻訳による妥当性検証を行っており、WHOから正式な日本語版として採用された。　*

東大1項目版プレゼンティイズム

東京大学政策ビジョン研究センター健康経営研究ユニット作成
アンケートの設問数を減らしたいなどの理由により、プレゼンティイズムの意味をそのまま反映したアンケート1項目にて測定する。

EQ-5D-5L

欧州で開発された、医療従事者でなくとも簡易に測定できる健康関連 QOL（HRQOL）の尺度として幅広く用いられている調査表で、わが国では翻訳された日本語版EQ-5Dがある。

日本語版PRO-CTCAE™ Patient-Reported Outcome (PRO) Common Terminology Criteria for Adverse Events (CTCAE)

PRO-CTCAEは、医療者による評価だけではなく患者自身による主観的評価をがん臨床試験の有害事象評価に適用し、より正確度と精度の高いグレーディングを行う評価システムを構築することを目的として、米国NCI の研究班によって開発

トリコーダー tricorder in Star Trek　　　参考1/2/

tricorderには２種類あって、そのうちの１つは汎用で例えば元素分析、素粒子分析、生命反応、距離等を調べることが可能。
Medical tricorderには取り外しが可能なプローブが付属する。このプローブを患部に近づけて異常を探知する。もちろんプローブを装着したままでも使うことが出来る。Medical tricorderは、生化学的分析はもちろん脳内の神経伝達物質の定量を含めた神経活動に至るまでモニターすることができ、ほとんどの体の状態を把握することが可能である。
エンタープライズは、時代的には一番古くて、その時代のMedical tricorderは機能がやはり劣るので、痛みの検査はできないらしいです。オリジナルでもあまり使っていない。
最新のDeep Space 9やボイジャー時代のMedical tricorderは、ある程度は痛みの測定は可能。しかし、艦長が頭痛で困っていた時には使わなかった。
humanには使えるが、バルカンはコントロールできるから、必要ない。

心理テスト psychological test
　←→記憶のテスト（ウィスコンシンカード分類テスト/ストループ課題/ゴー・ノーゴー課題/リーディングスパンテスト）

サイバーボール課題　Cyberball paradigm

サイバーボール

アメリカンフットボールをベースにしたサイバーボールというロボット競技のゲーム

実験的な排斥研究 Social Exclusion
実験参加者が仮想の他者２人とコンピュータの画面上でボールトスゲームを行うものであり、参加者へのトスを操作することにより他者による排斥の影響を検討できる。
参加者は他の2名のプレイヤーと一緒にキャッチボールを行ったが、他の2名のプレイヤーはコンピュータープログラムであると伝えられる。ゲーム内でボールが自分に回ってくる回数が、排斥条件と受容条件で変わっていて、排斥条件ではゲームの序盤には少しボールが回ってきたが、それ以降回ってこなかった。他方で、受容条件では、ほぼ均等な割合でボールが回ってきた。このゲームを行うことで、排斥条件の参加者は、受容条件の参加者と比較して、社会的排斥を受けているように感じる。
この課題は性質上、排斥による効果と同時に予測との不一致による効果を生じる可能性がある。
サイバーボール課題で自分のところにボールが来なくなると、身体的痛みを感じるのと同じ部位：前部帯状回背側部 dACCと右前頭前野腹側部RVPFCが活性化　＠pain matrix

Pain Relief