■ヒトの検査法

│脳のイメージング│ →microneurography

	時間分解能	空間分解能
MEG	0.005〜0.1秒程度	2〜10mm
fMRI	数10msec〜数100msec	1〜3mm
PET	数秒程度	5〜10mm程度
NIRS-OT	数10msec	8mm以上
MRS	10〜1,000mm	5mm
脳波	0.001sec	20〜30mm


　→マンガン造影
　→事象関連電位ーP300

●脳磁図 Magnetoencephalography：MEG

• MEGは、脳の神経活動に伴って頭皮上で観察される微弱な磁界である。
• 頭蓋の外から非接触、非侵襲的に、脳の神経細胞活動を直接観察できる。磁界を検出するので、脳波のように電極を貼る必要がなく、基準電極も必要がない。
• 信号の起源は神経細胞の興奮であるから、脳波と同等の意義を持つ。
• MEGでは脳波と同様に，神経細胞の電気活動をミリ秒単位で観察できる。：時間分解能＝0.005〜0.1秒程度
• 刺激に反応する脳神経の位置とそこに流れる電流の向きや強さを、脳の形態的情報を画像化するMRIの画像と重ね合わせることで、刺激に反応した脳神経の位置を推定する。
• 脳波では、脳内の電気活動は脳脊髄液、頭蓋骨、頭皮という伝導率が大きく異なる三つの層を通過するためかなりのひずみが生じてしまい、頭皮上の脳波電極で記録する場合誤差がかなり大きくなるが、磁場は伝導率の影響を全くうけないため、脳磁図は脳波に比べて空間分解能が高い。：MEGの空間分解能＝2〜10mm程度
  
  
• 神経細胞から発生される磁場は、10-15 Tesla(fT)程度（地磁気の10億分の1）程度で、非常に微弱な磁場である。
• 微弱を検出するために、通常液体ヘリウムなどの低温液体冷却された超伝導量子干渉素子（SQUID：Superconducting Quantum Interference Device)を脳の周りに配置すると、超伝導状態になり、脳内の電気活動に伴って発生する磁場の変化が検知できる。
• SQUIDでは、超伝導リングが超伝導に保たれるように、ジョセフソン接合に遮蔽電流を加え、その遮蔽電流から磁場を計測する。脳磁場の主な起源は、大脳皮質の、特に脳溝壁に存在する錘体細胞への興奮性シナプス入力によって引き起こされる尖樹状突起内電流と考えられている。

  1962年	Brian D. Josephson（イギリスの物理学者、1973年に江崎玲於奈らと共にノーベル物理学賞を受賞）が超伝導体同士のトンネル効果（ジョセフソン効果）の計算式を導き出した。
  1963年	G.BauleとR.McFeeが200万回も巻いた誘導コイルを2個用いて、 世界で最初に心磁図を計測した。
  1964年	Robert Jaklevic、John L ambe、Arnold Silver、そしてJames MercereauらがdcSQUIDを開発した。
  1967年	David Cohen（マサチューセッツエ科大学）が磁気シールドルームを用いて、心臓や脳などから発生する磁界を計測した。
  1969年	James Edward ZimmermanとArnold Silverがrf-SQUIDを開発し、Cohenとともに、生体磁気計測を発展させた。

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●磁気共鳴イメージング Magnetic Resonance Imaging：MRI　←→fMRI　参考1/2/3/4/5/6/7/8/9

• 核磁気共鳴：NMRを用いて物質の空間的構造を計測する手法↓

  核磁気共鳴　Nuclear Magnetic Resonance：NMR　←→MRI NMR法とは、核スピンのエネルギー吸収・放出現象を観測する。 外部静磁場に置かれた原子核が、固有の周波数の電磁波と相互作用する現象 原子核を構成要素とする原子や結晶に外部磁場をかけた状態、あるいはかけない状態で、高周波磁場（ラジオ波、マイクロ波）と核スピンとの相互作用によって、核のエネルギー・レベル間の転移が起こる共鳴現象を核磁気共鳴と呼んでいる。 原子番号と質量数がともに偶数でない原子核は0でない核スピンは量子数 I と磁気双極子モーメントを持ち、その原子は小さな磁石と見なすことができる。磁石に対して静磁場をかけると磁石は磁化ベクトルの周りを一定の周波数で歳差運動する。原子核も同様に磁気双極子モーメントが歳差運動を行なう。この原子核の磁気双極子モーメントの歳差運動の周波数はラーモア周波数と呼ばれる。この原子核に対してラーモア周波数と同じ周波数で回転する回転磁場をかけると、磁場と原子核の間に共鳴が起こる。この共鳴現象が核磁気共鳴と呼ばれる。 共鳴現象　resonance　←→励起/緩和 マイクで話している時に、キーンと音が鳴る現象（ハウリング）など 共鳴とは気体、液体、あるいは物体がある周期で振動している時、『そこに外部から同じ周期で力が加わると、力を受けた物体の振幅が大きくなる』という現象 波動特有の物理現象で、特定の周波数の波動エネルギーが、同じ共鳴周波数で振動する物体に吸収される現象 物理的な系がある特定の周期で働きかけを受けた場合に、その系がある特徴的な振る舞いを見せる現象をいう。特定の周期は対象とする系ごとに異なり、その逆数を固有振動数とよぶ。 物理学では「共鳴」、電気を始め工学的分野では「共振」ということが多い。 磁場中に置かれた原子核はゼーマン効果によって磁場の強度に比例する。一定のエネルギー差を持った 2I + 1 個のエネルギー状態をとる。このエネルギー差はちょうどラーモア周波数の光子の持つエネルギーと一致する。そのため、共鳴時において電磁波の「共鳴吸収」あるいは「放出」が起こるので、共鳴現象を検知することができる。 共鳴吸収　resonance absorption ある物質系が、それを取り巻く振動エネルギーを吸収して、励起する現象 共鳴時に生じる電磁波の吸収 原子核を構成する陽子、中性子が外部から入射したγ線によって集団的に共鳴する条件が満たされた場合、原子核がγ線のエネルギーを吸収して生じる励起現象である。 照射するラジオ波のエネルギーがゼーマンエネルギーと一致した時にエネルギーの吸収が起こる。 原子が持つそれぞれ特異的な周波数の回転磁場を与えた時に、原子は共鳴を起こして電磁波を吸収する。吸収と吸収後の放出を核磁気共鳴と呼ぶ。 共鳴周波数　resonance frequency ＝ラーモア周波数 共鳴現象を引き起こす周波数 共鳴現象は波動特有の物理現象で、特定の周波数の波動エネルギーが同じ共鳴周波数で振動する物体に吸収される現象である。 磁場にさらされた水素原子核に共鳴周波数の電磁波（radiofrequency：RF)を照射すると共鳴周波数で回転している回転座標系で見た場合一定方向にRFによる磁場があるようにみえる。 共鳴周波数は核種とその原子核が存在している場の磁場強度によって決定されるという特徴がある、さらに共鳴の強度は磁場強度と原子核数が増加するにしたがって強くなる。 1.OT（テスラ）の磁場で水素原子核（1H）を共鳴させる周波数は42.58MHz（メガヘルツ） 水素原子核（1H）は磁場強度が11.74T（テスラ）では、500MHzで共鳴する。 核種 スピン量子数 共鳴周波数（MHz/T） 天然存在比（%） 1H 1/2 42.58 99.985 送信コイル：共鳴周波数を与え、吸収エネルギーを検出するプローブ （コイル） MRIの原理：高磁場内に被験体を置き、共鳴周波数のラジオ波を送信する。その後人体内の磁気モーメントの動きをコイルで検出し画像に変換する。 座標系　coordinate system 座標とは、点の位置を指定するために与えられる数の組、あるいはその各数 のことであり、その組から点の位置を定める方法を与えるものが座標系である。 座標系と座標が与えられれば、点はただ一つに定まる。 地球上の位置を表す地理座標や、天体に対して天球上の位置を表す天球座標がある。 →回転座標系/実験室座標系/MRIの座標系 一般に共鳴した物質は、波動エネルギーを吸収して励起状態になる。 実験室座標系　laboratory system 2つの粒子の衝突や散乱を記述する時、標的になる粒子が最初は止っているようにとった座標系 実験では普通は標的粒子 （実際は金属膜など）を固定して、これに他の粒子を当てるので、この名がある。 実験結果は普通は実験室系で表わされるので、重心系でなされた計算の結果はこの系に換算して実験値と比較される。 回転座標系　rotating reference frame, rotatory coordinate system 運動座標系の一種で、慣性系から見るとある軸に対して回転している非慣性系の座標系をいう。 慣性座標系に対してある軸のまわりに回転している座標系 たとえば地球表面は地軸に対して回転する座標系である。 回転座標系からみた運動を決める運動方程式はニュートンの運動方程式の力の項に3種の見かけの力（遠心力、コリオリの力、横慣性力）を加えたものとなる。これらの見かけの力は座標系の回転に起因する。 実験室座標系の座標系 X,Yに対して、回転座標系にはプライム(')を付けたX',Y'として区別する。 ラーモアの歳差運動の周波数で回転する座標系で横磁化を観察すると、z’軸からy’軸の方へ倒れていく単純な運動となる。これは、回転座標系で静止した回転磁場の周りの歳差運動である。 ラーモア周波数でZ軸の周りを回転する回転座標系では、ラーモア周波数の磁化ベクトルは静止している。回転座標系では磁化MZの平衡状態への回復は実験室系の場合と同様に見える。 回転座標系と同じ速度でZ軸の周りに回転する横磁化ベクトルは回転座標系では静止して見える。 回転座標系よりも速く進んでいる磁化ベクトルはZ軸の時計周りの方向に回転する。 回転座標系よりも遅く進んでいる磁化ベクトルはZ軸の反時計周りの方向に回転する。 磁気共鳴信号　 核スピンが横磁化から減衰する際に発生する（高周波領域の）電磁気 スピンが横磁化から縦磁化へ移動する際に、コイル内に電圧を生じる。この電圧が受信機によって増幅される。 スペクトル、スペクトラム　spectrum 複雑な情報や信号をその成分に分解し、成分ごとの大小に従って配列したもののことである。2次元以上で図示されることが多く、その図自体のことをスペクトルと呼ぶこともある。 可視光および紫外線・赤外線などを分光器で分解して波長の順に並べたもの 複雑な組成をもつものを成分に分解し、量や強度の順に規則的に並べたもの NMRスペクトル　NMR spectrum 有機化合物の化学構造を決定するのに必須のスペクトル 有機化合物のNMRスペクトルを測定すると化合物の化学構造が決定できる。 最も多く用いられているのが一次元 1H-NMRスペクトルで、分子中のプロトン（H）について、次のことがわかる。 ピークの位置（ケミカルシフト；ppm）：プロトンの置かれている環境 積分値：プロトンの数 ピークの分裂（スピン－スピン結合、カップリング）：隣接するプロトンの影響 周波数スペクトル　frequency spectrum 周波数、色、音声や電磁波の信号などと関係の深い概念 光源は様々な色の混合であり、それぞれの色の強さは異なる。プリズムを使うと、光が周波数によって別々の方向に屈折し、虹のような色の帯が現れる。 周波数を横軸として、それぞれの成分の強さをグラフに示したものが周波数スペクトルである。 関数のフーリエ変換によってスペクトルが生成され、逆変換によって元の関数が合成される。 周波数領域　frequency domain spectrum 関数や信号を周波数に関して解析することを意味する用語 大まかに言えば、時間領域のグラフは信号が時間と共にどう変化するかを表すが、周波数領域のグラフは、その信号にどれだけの周波数成分が含まれているかを示す。また、周波数領域には、各周波数成分の位相情報も含まれ、それによって各周波数の正弦波を合成することで元の信号が得られる。 周波数領域の解析では、フーリエ変換やフーリエ級数を使って関数を周波数成分に分解する。これは、任意の波形が正弦波の合成によって得られるというフーリエ級数の概念に基づいている。 吸収スペクトル　absorption spectrum　←→パルス・フーリエ変換法/共鳴吸収/励起 光やその他の放射線が物質中を通過するとき，その物質に特有な波長領域で吸収される。このため連続光を物質に当てて通過した光のスペクトルを調べてみると、連続スペクトルの中で黒い帯状か線状に光が弱められているのがわかる。これを吸収スペクトルという。 光線など、連続したスペクトルをもつ電磁波が物質に当たったときに、その物質特有の波長範囲の部分が選択的に吸収されて暗黒となったスペクトル 物質の構造決定や分析に利用される。 パルス・フーリエ変換法は静磁場中の被験体にパルス磁場を与え、その後観察されるインパルス応答である自由誘導減衰：FIDをフーリエ変換することでNMRの吸収スペクトルを得る手法である。 連続スペクトル　continuous spectrum　 ある波長範囲で，どのような波長の光もすべて含むスペクトル このような光を分光器でみると、分光器の分解能をいくら大きくしても、個々の線スペクトルには分離せず、波長に関して連続的に広がったスペクトルが生じる。固体や液体の熱放射の場合や、気体の原子や分子の場合でもイオン化や分子解離が関係しているようなときには連続スペクトル光が発生する。広い意味では粒子線のエネルギースペクトルや、雑音などの周波数スペクトルについても連続スペクトルということがある。 励起　excitation　←→磁気緩和　 量子力学において、原子や分子などの粒子があるエネルギーをもった定常状態に、外部からエネルギーを与えて、より高いエネルギーをもつ定常状態に移すこと 一般に共鳴した物質は、波動エネルギーを吸収して励起状態になる。 励起現象では、静磁場中に置かれたNMR核種に共鳴周波数の電波が照射された場合を考えると、概念的に以下のような状況が生じている。 　電波が照射された瞬間に次の２つの現象が同時に生じる。 （1）原子核スピンの位相がそろう。 （2）原子核スピンが電波のエネルギーを吸収する。 この様な状況がNMRでいう励起現象である。 励起された状態で電波の照射を止めると、上記の２つの現象の逆現象（緩和現象）が起こる。 磁場　magnetic field　←→磁気/磁化 電気的現象・磁気的現象を記述するための物理的概念である。 工学分野では、磁界ということもある。 水素原子核（陽子）には、スピンが存在していて、それが小さな磁場を形成している。通常その磁場は、様々な方向を向いているので、全体としてその磁場は打ち消し合っている。 MRIには3種類の磁場：強い静磁場、高周波磁場、傾斜磁場が必要。強い静磁場と高周波磁場は共鳴現象を起こすため、傾斜磁場は共鳴現象シグナルを発したプロトンの位置を知るために必要。強い静磁場はスキャナ内部全域に常に存在し、高周波磁場は撮影中のみ発生、傾斜磁場は撮影中のみ、断続的に発生する。 内部磁場　internal magnetic field 物質中の磁場 磁性イオンの原子核がみる磁場 この内部磁場の原因として、電子スピンと核スピンの間のフェルミ相互作用、双極子相互作用、内殻電子の磁気分極による相互作用などがある。希土類金属イオン、遷移金属イオンでは 100〜1000kOeという大きな内部磁場が観測されていて、その場合，内殻電子の磁気分極からの寄与が大きいことがわかっている。内部磁場は核磁気共鳴、メスバウアー効果、γ線の偏極、低温比熱などにより観測される。 外部磁場、外部磁界　external magnetic field 内部磁場に対して、物質の外から与える磁場 外部から電子顕微鏡などに影響を与える磁界などについても用いられる用語 静磁場　static magnetic field　←→静磁場均一性/傾斜磁場 時間的に変動しない磁場 電荷や電流が時間的に変化しない場合、電場、磁場も時間にはよらず、互いに独立に存在する。このような電場および磁場はそれぞれ静電場、静磁場と呼ぶ。 核スピンはランダムな方向を向いているが、静磁場では、磁場方向と反対方向にきれいに分かれる。 静磁場中のスピンは一定の方向を向き、コマが回転する時のように歳差運動をする。 水素原子核を静磁場中に置くと、個々のスピンは一定の方向を向き、磁場強度に比例して歳差運動を始める。全体としては、歳差運動の周期に合わせて回転する一つの磁場を持っているように見える。これを巨視的磁場といい、その磁場を 巨視的磁化ベクトルとして表すことができる。 MRIでは静磁場と高周波磁場は共鳴現象を起こすために必要。強い静磁場はスキャナ内部全域に常に存在する。 静磁場の中で電流が流れるので、フレミングの法則に従い電磁力に力がかかるのでコイルが振動し、ガンガン音がする。傾斜磁場の掛け方によってコイルの振動の仕方が異なり、音が変わる。 フレミングの法則　Fleming's rule 磁場中の電流に働く力の向きと、磁場中を導線が運動した場合の誘導電流の向きを簡便に表わした2つの法則 Sir John Ambrose Fleming(1849/11/29〜1945/4/18）イギリスの電気技術者、物理学者 フレミングの左手の法則　Fleming's left-hand rule ローレンツ力の方向を覚えやすくするために考案されたものである。 磁場内において電流が流れる導体に力が発生する現象（ローレンツ力）の、それぞれの向きの関係を示す方法 左手の中指を電流，人差指を磁場の方向に向けると、それらに垂直に立てた親指の方向に力が作用する。 フレミングの右手の法則、右ねじの法則Fleming's righ-hand rule 電流と磁場（磁束）の向きに関する法則 電流を右ねじが進む方向に直進させると、磁場が右ねじの回転方向に生じること。 右手の親指を導線の運動方向、人差指を磁場の方向に向けると、それらに垂直に立てた中指の方向に起電力が生じ，誘導電流が流れる。 ローレンツ力　Lorentz force 電磁場中で運動する荷電粒子が受ける力 電流が磁場から受ける力 Hendrik Antoon Lorentz（1853/7/18〜1928/2/4オランダの物理学者）はゼーマン効果の発見とその理論的解釈により、Pieter Zeemanとともに1902年のノーベル物理学賞を受賞した。 回転磁場、回転磁界　rotating magnetic field S極とN極の対が中点もしくはある軸を中心に、回転しているかのように極性が変化する磁界 理想的には、極性は一定の回転速度で回転する。交流電動機の動作の鍵となる原理である。 回転磁界は誘導電動機や発電機などの電気機械装置に広く応用される。他方、誘導電圧調整器などの純粋に電気的な応用もある。 高周波磁場　high frequency magnetic field RF磁場、ラジオ波磁場　RF magnetic field　←→MR信号 静磁場に垂直な方向に照射する電磁波（振動磁場）である。 実際には、静磁場は非常に強くRF磁場は非常に弱いために、RF磁場で磁化を横向きに倒すことは難しい。そこでRF磁場を静磁場に垂直な一定方向から与えるのではなく、回転させる。するとRF磁場を追いかけるように磁化は倒れていく。 MRIでは静磁場と高周波磁場は共鳴現象を起こすために必要。高周波磁場は撮像中のみ発生させる。 電磁波　electromagnetic wave 空間の電場と磁場の変化によって形成される波（波動）である。 いわゆる光（赤外線、可視光線、紫外線）や電波は電磁波の一種である。 電磁波は波と粒子の性質を持つとされ、波長の違いにより様々な呼称や性質を持つ。 通信から医療に至るまで数多くの分野で用いられている。 電磁波は波であるので、散乱や屈折、反射、また回折や干渉などの現象を起こし、 波長によって様々な性質を示す。 波長 γ線 10pm よりも短い波長 Ｘ線 0pm〜10nm 紫外線 10nm〜400nm 可視光線 400nm〜700nm 赤外線 700nm〜1mm マイクロ波 1mm〜1m 程度 ラジオ波 1m〜100km 程度 高周波　high frequency　＝ラジオ波　radio frequency 電波、音波など、波形を構成するスペクトルのうち比較的周波数の高いものを指すのうち比較的周波数の高いものを指す。 音波の場合は、超音波と呼ばれることが多い。 テレビや携帯電話などで使われている「電波」である。 医療分野では高周波とは呼ばず、ラジオ波と呼ばれる。 電磁波の一種であるラジオ波↑の信号（Pulse） 周波数30〜300MHz（波長1m〜100km）の電磁波 一般的な電気メスでは、300kHzから5MHzが使用されている。 MRIで使用する電磁波は、FMラジオで使用する帯域程度で、2〜20m程度の波長をもつ電磁波 RFパルス　pulsed radio frequency パルス　pulse 短時間に急峻な変化をする信号の総称 持続時間（パルス幅）の短い変調された電波 短時間与えられるラジオ波の信号（Pulse） MRI装置から被験者に与えるエネルギー NMRで使うパルス幅は特殊な場合を除いてμsecのオーダーである。 自由誘導減衰：FID 1つのRFパルス グラジエントエコー：GE 1つのRFパルス+傾斜磁場反転 スピンエコー：SE 2つのRFパルス スティミュレーテッド・エコー：STE 3つ以上のRFパルス 励起パルス、励起RFパルス　excitation RF pulse 基底状態にあるプロトンを励起状態にもっていくRFパルス 安定している状態（Z軸方向にのみ存在するベクトル）から安定していない状態にもっていくRFパルス スピンエコー法で90°パルスや180°パルスは励起RFパルスである。 選択励起パルス　selective-excitation RF pulse 均一静磁場内に置いた被験体に対して、ｚ軸方向に線形傾斜磁場をかけた状態で周波数にある特定の幅を持たせたRFパルス 断層面に垂直な方向（ｚ軸方向）に傾斜磁場を加えた状態で、選択励起パルスを印加すると、そのスペクトルに対応した部分の核スピンが選択的に励起される。 励起されるスライスの厚さは傾斜磁場強度とRFパルスの周波数の幅により決まり、実際には周波数領域に関してフーリエ逆変換により求められるsinc関数で振幅変調した特殊な形状をしたRFパルスが印加される。 矩形状のスペクトル分布を持つRFパルス フーリエ変換によりsinc関数で与えた波形の周波数は矩形となることから、ある一定の範囲（スライス厚）に連続した周波数を照射するかわりに、時間的に sinc関数となる電磁波を照射すると、それに対応した周波数帯のスライス面だけが共鳴されることになる。 選択励起パルスの印加が終了した時点では、横磁化の位相は分散しているため、逆の極性の傾斜磁場で、核磁化を再収束（リフォーカス）させる必要がある。 これに対して、傾斜磁場を用いずに、静磁場強度に応じた単一周波数のRFパルスを印加すると、均一静磁場中の被験体全体の核スピンが励起される（非選択励起）。 磁場不均一性 field inhomogeneity　←→ケミカルシフト/自由誘導減衰：FID/位相 90°パルスによって直交面に倒された磁化は静磁場の不均一により個々のスピンの回転速度にズレが生じ、横磁化が時間とともに減衰する。 解剖学的に磁化率の大きく異なる組織が接している部位では、静磁場内で磁力線の曲がりによって磁場が不均一となる。その結果、信号位置の誤りやスピンの位相分散による信号低下を起こし、画像のひずみや信号の不均一が生じることが知られている。 グラジエントエコー法では、磁場の不均一性による影響が大（T2*で画像化）ただし、TEを短くすることで、影響を抑えることができる。 静磁場不均一性は3Dフーリエ変換・イメージングで問題となるが、選択励起パルスとスピンエコー法を用いた2Dフーリエ変換・イメージングでは解消される。 体幹部領域の不均一性は磁化率、誘電率、導電率および浮遊容量と複数の因子が存在する。 原因 磁場種類 強さ 時間 対応 装置側 静磁場不均一性 外部 1ppm/視野 恒常的 SE 傾斜磁場の印加 外部 10mT/m〜 一時的 修正傾斜磁場 生体側 対象の磁化率 内部/外部 様々 恒常的 SE ケミカルシフト 内部 3.5ppm/B0（水-脂肪） 恒常的 SE 静磁場均一性　homogeneity of static magnetic field　←→磁場不均一性 静磁場強度の空間的な均一の程度 一般には、一定容積内（直径20cm球体など）の静磁場強度の最大値と最小値の差、あるいは標準偏差値を基準磁場強度で割ってppm単位で表す（ppm on 20cm DSV：半径20cmの球体内）。 均一度が低いと共鳴周波数に幅ができ、分解能が低下したり、画像に歪みを生じる原因となる。特にグラジエントエコー法の場合は撮像領域内の広い範囲にわたって高い均一性が求められる。 主マグネットのタイプ別に静磁場均一性をみると、超電導磁石が最も優れていて数ppm以下、永久磁石と常電導磁石は数10ppm程度である。 静磁場均一性は画像の均一性だけでなく、脂肪抑制の均一性など装置全般のベースとして働く。 磁化率に関しては装置の静磁場均一性（B0）が重要である。 MRI画像処理では、水素原子核を整列させるために被験体を強磁場の中に置く必要がある。この磁場を生み出す方式としては、固定磁石、常伝導磁石（従来の導線コイルに通電）、および超電導磁石などがある。 常伝導磁石 resistive electromagnet Lauterburの最初の実験、Mansfieldの実験、Ernstの実験など、MRIの歴史的実験においては、鉄芯（常伝導）電磁石が使われていた。 常温下で、電線を何重にも輪状に巻いたコイルに電流を流すことで磁場を発生させる磁石 常電導磁石では、電線の抵抗が0でないため、電流が流れているときにだけ磁場が生じ、電流を切ると磁場は消滅する。大量の熱を発生するため冷却装置が必要である。 導電磁石では銅線に大きな電流を流すので、電気代がかかるばかりでなく、銅線の発熱を冷却する必要がある。 あまり強い磁場強度が実現できないこと（全身用で0.2T程度）、短期的（ハム）、長期的な電流の変動による磁場のドリフトが大きい。 常電導磁石を利用するメリットは現在ではほとんどないため、超電導磁石や永久磁石が主流になっている。 超伝導電磁石 uperconducting magnet、SC magnet　←→超伝導コイル 超伝導体を用いた電磁石 超伝導体は電気抵抗がなく発熱の問題もないので、通常の電磁石よりも強力な磁力を発生させることができる。 核磁気共鳴分光法、核磁気共鳴画像法ですでに実用化されていて、もっとも超伝導現象を一般的に用いている。 永久磁石 permanent magnet 外部から磁場や電流の供給を受けることなく磁石としての性質を比較的長期にわたって保持し続ける物体 強磁性ないしはフェリ磁性を示す物体であってヒステリシスが大きく常温での減磁が少ないものを磁化して用いる。 永久磁石材料に関するJIS規格としてJIS C2502、その試験法に関する規格としてJIS C2501が存在する。 実例としてはアルニコ磁石、フェライト磁石、ネオジム磁石などが永久磁石である。これに対して、電磁石や外部磁場による磁化を受けた時にしか磁石としての性質を持たない軟鉄などは一時磁石と呼ばれる。 スピン spin 自転・回転の物理的な運動 電子の自転 スピン角運動量：量子力学、量子化学上の粒子が持つ性質の一つで、磁性に深く関わる。 分子を構成する電子や原子核は電子スピンや核スピンと呼ばれる量子数で記 述される量子状態を持つ。 角運動量 angular momentum 物体の回転運動の大きさを表わす量 質点では、原点からの位置ベクトルと運動量ベクトルとの外積で、運動量のモーメントに相当する。 核スピン nuclear spin 核の持つスピンは核を構成する陽子や中性子のスピンが合成されたものである。 原子核がもつ全角運動量 電子だけではなく、陽子や中性子もスピンを持っているので、原子核はそれぞれ固有の核スピンを持っている。磁場とスピンの相互作用を利用して、MRシグナルが観測できる。 核スピンからなる磁石が核磁化である。 原子核を構成している陽子と中性子（核子と総称する）は、それぞれ自転による角運動量（スピン）1/2ħ（ħ＝h/2π, hはプランク定数）をもつが、核子は原子核内で回転しているので、さらに軌道運動による角運動量（軌道角運動量）をもち、このため核スピンは全核子のスピンと軌道角運動量の合計となる。 陽子数も中性子も偶数である核（偶々核）の基底状態の核スピンは必ず0，偶々核の励起状態や陽子、中性子とも奇数の奇々核の核スピンは0またはħの正の整数倍、陽子と中性子の合計が奇数となる奇偶または偶奇核の核スピンはħの正の半整数倍である。 核スピンはランダムな方向を向いているが、磁場中に入れると、磁場方向と反対方向にきれいに分かれる。核スピンの「磁石」には磁場に対して整列するものと、反対を向くものの2種類の性格があるから。 原子核は核スピンと固有の角運動量とそれによって生じる核磁気モーメントをもつ。 NMR法は核スピンのエネルギー吸収・放出現象を観測する。 励起状態では原子核スピンの位相がそろい、原子核スピンが電波のエネルギーを吸収し、傾斜磁場をかけるとスピンの位相が分散する。 核種 スピン 核磁気モーメント 磁気回転比(×107)* 共鳴周波数 相対強度 1H 1/2 2.792 26.7522 42.58 1.00 13C 1/2 0.7022 6.7283 10.70 0.016 14N 1 0.4035 0.4036 3.076 0.001 17O 5/2 -1.894 -3.6279 5.775 0.03 e 1/2 -1836 17608.5 28024 - *磁気回転比：角運動量に対する磁気双極子モーメントの割合 陽子、プロトン　proton 陽子は素粒子の一つで、記号 p で表される。正の電荷を持ち、その大きさは電子と等しい。 核スピン 1/2 を有し，質量約 1.673×10-27 kg で、電子の質量の約 1836 倍ある。 陽子は中性子とともに原子核を構成し，陽子の数は原子番号と一致し、陽子の数と中性子の数の合計は質量数に一致する。 「プロトン」は水素の原子核の意味で用いられる。水素原子核はNMRスペクトルの主要な測定対象であり，これを 1H-NMR（プロトン NMR）と呼ぶ。 水素　hydrogen、水素原子　hydrogen atom 水素原子核　hydrogen nucleus 水素原子のほとんどは、原子核が陽子１個の1Hだが、陽子１個と中性子１個の2H（重水素）、陽子１個と中性子２個の3H（トリチウム）も存在する。 3Hだけが放射線を出す。 MRIなどでは、「プロトン」は水素の原子核の意味で用いられる。 水素は、1個の陽子（プロトン）と1個の電子で構成されていて、陽子の周りを電子が回転（スピン）している。このスピンにより、個々の水素原子は、微少な磁化をおびている。 通常は、このスピンの方向がバラバラであるために全体としては、磁化がみられない。ここに、外部から強力な磁場がかかると、個々の水素原子のスピンの向きが強制的に同一方向に修正される。この状態に特定の周波数（例42.58MHz）の電波をあてると、水素原子核はその電波に共鳴して自ら電波を発信する。この現象が核磁気共鳴と呼ばれ、この現象に位置情報を加えて、信号の強度分布を示した地図が、核磁気共鳴画像すなわちMRIとなる。この特定の周波数の電波をパルス状に与え、その条件を変化させることにより、異なるタイプの画像が描出される（T1強調画像、T2強調画像など）。 化学シフト、ケミカルシフト　chemical shift　←→化学シフトアーチファクト 同じ原子核の共鳴周波数のずれ 核スピン周囲の電子の空間的分布の違いにより、核スピンに働く見かけ上の静磁場や共鳴周波数が変化すること MRIで観測している水素原子核は周りに存在している電子が作る磁場によって共鳴周波数が変化すること 化学シフトは観測している核の電子的環境を表している。一般に電子密度が高い核はより高磁場側に現れ、電子密度が低い核は低磁場側に現れる。 単位はppm 磁場の不均一性の原因の一つ ゼーマン効果　Zeeman effect 原子から放出される電磁波のスペクトルにおいて、磁場がないときには単一波長であったスペクトル線が、原子を磁場中においた場合には複数のスペクトル線に分裂する現象 Pieter Zeeman（1865/5/25〜1943/10/9, オランダの物理学者）が1896年にナトリウム原子を磁場の中で発光させた時にそのD線のスペクトルが数本に分かれることを発見した。 電子や原子核は外部磁場におかれると、その種類によりさらに異なるエネルジー準位をとる。 ゼーマン効果は電子スピン共鳴装置に利用されています。 ゼーマンエネルギー　Zeeman energy スピンに外部磁場を加えると、スピンの磁気モーメントと磁場の相互作用のために、スピン磁場方向の成分に合わせてエネルギーが分裂する（ゼーマン分裂）。 電子スピンの場合には、上向きスピン(SZ=1/2)と下向きのスピン(SZ=-1/2)でゼーマン分裂する。 ゼーマン分裂　Zeeman splitting 外部磁場によるエネルジー準位の分裂 2p状態になった水素原子はいずれ1s状態になるが、この基底状態への遷移時に放出されるスペクトルが三重線になることが知られています。 エネルギー準位　energy level 系のエネルギーの測定値としてあり得る値 その系のハミルトニアンの固有値 E1, E2, ⋯ を並べたものである。 それぞれのエネルギー準位は、量子数や項記号などで区別される。 低いエネルギー状態にある粒子は、光子からエネルギーを吸収して高いエネルギー状態になる。 2つのスピンの状態のエネルギー差と光子のエネルギーが一致する時、エネルギーの吸収が起こる。 NMRの原理より磁場内におかれた被験体に外部からプロトンのラーモア周波数をもつRFパルスを照射すると、そのエネルギーを吸収したプロトンはエネルギー準位が低い方から高い方へと遷移を起こす。 遷移　transition 光子を吸収することにより、粒子は2つのエネルギー状態の間を遷移する。 低いエネルギー状態にある粒子は、光子からエネルギーを吸収して高いエネルギー状態になる。この光子のエネルギーは2つの状態の間のエネルギーの差と等しくなければならない。光子のエネルギーEは以下の式のように周波数 とPlank定数(h = 6.626x10-34 J s)と関連している。 E = h 縮退　degeneracy 物理学において、2つ以上の異なったエネルギー固有状態が同じエネルギー準位をとること 量子力学で、n個の独立した状態が同じエネルギー固有値をもつとき，状態または固有値が n重に縮退または縮重しているという。縮退が起こるのは系になんらかの対称性があるためで、一般に対称性が高いほど縮退は大きく，対称性が破れると縮退がなくなる。 水素原子では，主量子数が nのとき、方位量子数 l は 0，1，2，…，n－1 であり，n個の状態は同じエネルギーをもち、角運動量に関する縮退も考慮すると n2 重に縮退している。 電子スピン　electron spin　←→核スピン 電子などの素粒子は大きさの概念を持たない点であると考えられていて、慣性モーメントを持つ物質が回転して生ずる古典的な意味での角運動量は持てないにもかかわらず、電子などの持つスピンは角運動量と大変よく似た性質を示す。 電子スピンは直感的には電子の自転としてとらえられるが、2つの方向しか取ることができないなど，古典的な自転からは理解不可能な性質を持っている。 電子が有する角運動量を表現する内部自由度の１つであり、自転運動として説明された歴史からスピン（角運動量）と呼ばれるようになった。 スピンの状態には上向きと下向きの２つの状態が存在する。このスピン角運動量により電子は小さな永久磁石となっていると考えることができる。このスピンを配列させることによって永久磁石が作られ、その配列を制御することで磁気記録が行われている。 電子スピン共鳴　Electron Paramagnetic Resonance：EPR Electron Spin Resonance：ESR 不対電子を検出する分光法の一種 不対電子が、外部から磁界を作用させると、そのスピンの磁気モーメントによって特定の周波数の電磁波、主にマイクロ波を吸収する現象 電子スピンによる共鳴で、対象とする試料の磁性によって、常磁性共鳴、強磁性共鳴、反強磁性共鳴、フェリ磁性共鳴などに分けられる。 遷移金属イオンもしくは有機化合物中のフリーラジカルの検出に用いられる。 磁気　magnetism　←→磁場/磁化 磁力の根源と考えられるもの。一般には磁石どうし、または磁石と電流との相互作用に関する現象 古代ギリシアにおいて、小アジアのマグネシア地方に産する鉱石が鉄片をひきつけるという奇妙な性質をもっていたので、これをマグネット（磁石）と呼び、その性質を磁気といった。 電気の場合の真電荷に相当するものは磁気には存在せず，磁気現象は基本的には磁気モーメントに起因する。 MRIでは強力な磁場を外から与えながら、高周波のラジオ波でエネルギーを与えて、これに共鳴する体内のプロトン（水）からの共鳴した結果の磁気を測定する。 磁気双極子 magnetic dipole 正負の磁極の対のことを言う。 単独の磁極（磁気単極子）の存在は現在に至るまで確認されていないので、磁気についての基本的な要素はこの磁気双極子となる。 モーメント ある点を中心として運動を起こす能力の大きさを表す物理量 定点から任意の点までの位置ベクトルと、その点におけるベクトル量との積で表される。 力のモーメント、磁気モーメントなど。能率。 磁気双極子モーメント magnetic dipole moment  =磁気モーメント、磁気能率 磁石の強さ（磁力の大きさ）とその向きを表すベクトル量である。外部にある磁場からもたらされる磁石にかかるねじる方向に働く力のベクトル量を指す。ループ状の電流や磁石、電子、分子、惑星などもそれぞれ磁気モーメントを持っている。 磁気モーメントは強さと方向を持ったベクトルと考えることができる。磁気モーメントの方向は磁石のS極からN極へ向いている。磁石がつくる磁場は磁気モーメントに比例する。正確には「磁気モーメント」とは一般的な磁場を多重極展開したときの1次項が生成する磁気双極子モーメントの系を言う。物体の磁場の双極子成分は磁気双極子モーメントの方向について対称であり、物体からの距離の −3 乗に比例して減少していく。 磁気モーメントは周囲に磁束を作る。 双極子モーメントmは電流Iと円の面積Sの積ISに比例する大きさと、円に垂直な向きとをもつ。 磁力は電荷が移動することで発生する。回転する電荷は中心に位置する磁気モーメントと等価であり、その磁気モーメントは電荷のもつ角運動量と比例関係にある。 原子番号と質量数がともに偶数でない原子核は0でない核スピンは量子数 I と磁気双極子モーメントを持ち、その原子は小さな磁石と見なすことができる 磁石に対して静磁場をかけると磁石は磁化ベクトルの周りを一定の周波数で歳差運動する。原子核も同様に、磁気双極子モーメントが歳差運動する。この原子核の磁気双極子モーメントの歳差運動の周波数はラーモア周波数と呼ばれる。 磁場中に粒子を入れ、スピンの向きを磁場と平行にした時と反平行（逆向きで平行）にした時のエネルギーレベルの差から測定できる。また、スピンが磁場の向きに対して平行でないときは、スピンの軸の向きが回転する「歳差運動」が起こるが、この周期からも測定できる。また、素粒子反応で、光子との反応や光子を媒介する反応の強さを精密に測定することによっても求められる。 磁化、帯磁　magnetization　←→磁場/磁気 磁界内に置かれた物体が磁気を帯びた状態になること。また、その強さ 磁場により磁性体内に生じた分極、磁気分極ともいう。 磁化された磁性体の中の点Aのまわりに微小な部分をとり、その部分における一定に分極した双極子の密度を N、磁気モーメントを m としたとき、点Aにおける磁化 M は M＝Nm で与えられる。 核磁化　nuclear magnetization 核スピンからなる磁石（核磁化） 1Ｈや13Ｃなどの原子核は「核スピン」と呼ばれる量子数をもっている。これらの原子核は小さな磁石のような性質を持っていて、このような磁石の集団（のベクトル和）を核磁化と呼ぶ。 ラジオ波パルスで核磁化はあやつられる。 RFコイルは核磁化を励起するためのコイル 平衡磁化　equilibrium magnetization 平衡状態では磁化ベクトルは与えられた磁場Boの方向に向く。この磁化は平衡磁化 Moと呼ばれる。 巨視的磁化 M　macroscopic magnetization 水素原子核を静磁場中に置くと個々のスピンは一定の方向を向き、磁場強度に比例して歳差運動を始める。全体としては歳差運動の周期に合わせて回転する1つの磁場を持っているように見え、これを巨視的磁化といい、その磁化を巨視的磁化ベクトルとして表す。 巨視的磁化のエネルギーの吸収 パルスによってラーモア周波数に一致する電磁エネルギーhνを与えると、Mはくるくると回り出し、傾いて行く。 巨視的磁化のエネルギーの放出 パルスを止めると、Mはくるくる静磁場の方向へ戻って行く。 エネルギーの「吸収（＝励起））」と「放出（＝緩和））」という２つの共鳴現象が核磁気共鳴である。 巨視的磁場Mは、静磁場の方向を中心に回転しているため、周辺の磁場が変化しているので、付近にコイルをおけば誘導電流が発生する。 巨視的磁化ベクトル　macroscopic magnetization vector 静磁場中のスピンは一定の方向を向いているので全体として磁場が発生する。これを巨視的磁化ベクトルとしてベクトルで表すことができる。 微視的な各核スピンにより発生する磁気モーメントベクトルの、ある空間内での総和（ベクトル的加算）。 実際のMRIにおいては単位ボクセル内の巨視的磁化ベクトルによって生じる信号を観測の対象としている。 磁化ベクトル　magnetization vector 磁石のS極からN極に向かうベクトル 物質中の磁気モーメントを平均化したもの MRI装置で観測される信号は実際には受信コイルに流れる電流であるが、この電気信号を受信機で処理することによって磁化ベクトルの向きと大きさを知ることができる。 磁化ベクトルは、XY平面を共鳴周波数（1.5Tでは約64MHz）で回転しているが、受信機での処理で中心周波数で回転しているものを基準として、それより速いものを正の向きの回転、遅いものを負の向きの回転としてみることができる。 磁化ベクトルはZ軸成分（縦磁化）と、X軸およびY軸成分（横磁化）をもつ。 縦磁化　 longitudinal magnetization　←→縦緩和 磁化ベクトルのZ成分 巨視的磁化ベクトルMの、静磁場B0に対して平行方向であるz軸への投影成分 平衡状態では縦磁化は平衡磁化に等しくなる。 横磁化　 transverse magnetization　←→横緩和 磁化ベクトルのX軸およびY軸成分 静磁場に対し直交した磁化 巨視的磁化ベクトルMの、静磁場Ｂoに直交するx-y平面上への投影成分 横磁化がラーモア周波数で歳差すると、検知可能なMR信号が発生する。 ラーモア歳差運動をしているそれぞれのプロトンは縦磁化と横磁化を併せ持っているが、それぞれのプロトンの歳差運動は周期がバラバラなので、これらを足しあわせても全体としての横磁化は発生しない。 静磁場に置かれたプロトンに、歳差運動に同期したラジオ波を照射すると回転周期が同期するため、全体としての横磁化が発生する。 パルスシーケンス静磁場中に置かれた被験体の関心領域の核スピンにRF励起パルスを印加して横磁化を生じさせた後、励起された組織を構成する一つの成分と他の成分における横磁化の位相が直交する時点で、RF回復パルスを印加して一方の成分の横磁化を縦磁化にさせる。 磁化率、帯磁率 magnetic susceptibility 磁界内に置かれた物体の磁化の強さMと磁界の強さHの比 物質の磁化の強さと磁場の強さの比 常磁性体では正、反磁性体では負の値で、磁場の強さにほとんど関係せず、物質によって決まる定数 強磁性体では磁化曲線上の位置によって異なり、また温度によって変化する。 帯磁率、磁気感受率などとも言う。 常磁性　paramagnetism　←→反磁性 外部磁場がないときには磁化を持たず、磁場を印加するとその方向に弱く磁化する磁性を指す。 熱ゆらぎによるスピンの乱れが強く、自発的な配向が無い状態である。 常磁性の物質の磁化率χは温度Tに反比例する。これをキュリーの法則と呼ぶ。 常磁性を持つ分子や原子は、外部磁場がなくても永久磁石となる双極子モーメントを持っている。このモーメントはその分子・原子における電子軌道での不対電子のスピンから生まれている。外部磁場がない場合、双極子どうしは互いに作用せず、熱ゆらぎのためそれぞれバラバラな方向を向いている。それでこのとき、この物質は磁性を持たない。しかし外部磁場が加えられると、双極子も加えられた磁場と同じ方向を向き、外部磁場と同じ方向に磁化されることになる。 反磁性　diamagnetic 磁場がかけられた時に、その磁場とは反対方向に小さな磁気モーメントが生じる性質 外部磁場がかけられると電子はフレミングの左手の法則より、その磁場と垂直方向に等速円運動している。そうすると、右ねじの法則より、電子の円運動をしている平面と垂直に外部磁場とは逆向きの磁場が発生する。これが、反磁性の原因である。 歳差、歳差運動 precession 自転している物体の回転軸が、円を描くように振れる現象である。 こまの軸を傾けて回転させると、こまは回転しながらその回転軸は鉛直線のまわりを回転する。このように回転体の回転軸が変化する運動を歳差運動という。 首振り運動、みそすり運動、すりこぎ運動などとも呼ばれる。 歳差運動は巨視的なこまとか地球の運動だけでなく、微視的な電子の運動にもみられ、特に磁場中の電子の歳差運動を、ラーモアの歳差運動と呼ぶ。 歳差運動の周波数と同じ周波数の回転磁場を加えると、トルクを受けて核磁化が倒れる。回転磁場を切ると、核磁化は、自由に歳差運動して、周囲に変動する磁場を生成し、コイルにMR信号を誘起する。 ラーモアの歳差運動 磁場中の電子の歳差運動 磁場強度に比例して磁気双極子モーメントは歳差運動をする。 ラーモア周波数　Larmor frequency ＝共鳴周波数 原子核に対してラーモア周波数と同じ周波数で回転する回転磁場をかけると、磁場と原子核の間に共鳴がが起こる。 原子が外部磁場を受ける時、その軸周囲で歳差運動をする時の周波数をラーモア周波数という。 原子によって特異的な周波数をもち、同じ周波数の回転磁場を与えた時に共鳴を起こして電磁波を吸収、放出する。この現象を核磁気共鳴と呼ぶ。 1.OT（テスラ）の磁場で水素原子核（1H）を共鳴させる周波数は42.58MHz（メガヘルツ） Joseph Larmor（1857/7/11〜1942/5/19）：アイルランド出身、ケンブリッジ大学の物理学者、数学者 ラーモアの式　Larmor eduation 静磁場強度Ｂoの環境下にある核スピンの歳差運動の周波数ω と静磁場強度Ｂoの関係を表す式 ω＝γxＢo 　ω：ラーモア角周波数、　γ：磁気回転比、　Ｂo：磁場強度 Arterial Spin Labeling：ASL-MRI MRIシーケンスの一つであり、放射性トレーサーの代わりに頚部へラジオ波磁場照射を行い、磁場スピンを逆転させた血液を内因性トレーサーとすることで、脳灌流画像を得る方法 　磁気共鳴イメージング Magnetic Resonance Imaging：MRI↑ ↑ 共鳴/励起/磁場/磁気/磁化/ラジオ波-90°パルス/歳差運動/核スピン/共鳴周波数/lスペクトル ↓ 撮像条件（TR/TE/FOV/マトリクス）/緩和（T1/T2）/MR信号（FID/SE/GE/SRE）/コイル/傾斜磁場（Gz→スライス選択/Gy→位相エンコード/Gx→周波数エンコード/読み出し）/フーリエ変換（スペクトル/実空間/k空間/再構成画像）/パルスシーケンス/アーチファクト 強い磁場がかかった状態では、原子核の陽子の縮退が解けて､2つの異なったエネルギー状態を持つ。このエネルギーの大きさと同じ大きさのエネルギーを外から与えると、陽子が共鳴を起こす。 通常のMRI装置で計測の対象となるのは静磁場中に置かれた水素原子核である。人の身体の2/3は水で構成されていて、各種脂肪酸やアミノ酸などの構造式にも水素（H）が含まれているために、現行の医療用MRIでは、この水素原子（1H）の信号で画像が描出されている。 MRIはプロトンからの信号を画像化するため、組織の含水量や組織内の脂肪の量は、MR信号の基本となる。 RFパルスを照射することによって水素原子核を励起させ、励起された水素原子核は、電磁波を発生しながら元の状態に戻る。 MRIでは強力な磁場を外から与えながら、高周波のラジオ波でエネルギーを与えて、これに共鳴する体内のプロトン（水）からの共鳴した結果の磁気を測定する。 MRIは画像化法であり、様々な物理化学現象（水分子密度、緩和現象、分子拡散など）が間接的に画像強度として現れる。 NMRにおいて共鳴の緩和時間はその原子核の属する分子の運動状態を反映する。生体を構成している主な分子は水であるが、水分子の運動はその水分子が体液内のものか臓器内のものかによって異なる。これを利用して体内の臓器の形状を知ることが可能である。これをコンピューター断層撮影法に応用した方法がMRI である。 特定のボクセル内にパルス状の電磁波でエネルギーを与え（共鳴）、電磁波の照射を停止してからのエネルギーの放出状態（緩和状態）を主として画像化する。 物理学における緩和　relaxation 定常状態や平衡状態、基底状態など安定な状態へと系の状態が変化すること 応力緩和、位相緩和、核磁気共鳴、緩和時間、応答関数など 磁気緩和　magnetic relaxation　←→励起 物質の磁気モーメント系が磁気共鳴時に、ある熱平衡状態に到達するまでに時間的な遅れが現れる現象 励起とは逆の現象であり、励起された状態で電波の照射を止めると、瞬間に次の2つの現象がに生じる。 （1）原子核スピンの位相の不均一化 （2）原子核スピンのエネルギー放出 この過程で、励起された原子核は基底の安定な状態：緩和状態になる。 常磁性物質では外部磁場に平行な方向の磁化の緩和を縦緩和と呼び、外部磁場に垂直な方向の緩和を横緩和と呼ぶ。 単純な場合にはこの緩和は磁化のそれぞれの成分について時間の関数として指数関数的で、それを特徴づける特性時間があり、これを緩和時間と呼ぶ。 緩和時間　relaxation time 外的条件の変化に対して系の状態が新しい外的条件の下での平衡状態に達するまでには遅れが存在する。このような遅れの存在する現象を緩和現象といい、遅れの目安となる時間を緩和時間と呼ぶ。 多くの場合、緩和時間は、ある時刻での非平衡状態における値と平衡状態における値の差を時間に対する変化率で割った値と定義される。 緩和過程の時定数を緩和時間と呼び、縦緩和時間をT1、横緩和時間をT2で表す。 時定数　time constant 線型時不変系（LTIシステム）における1次の周波数応答を示す値 電気回路などで、入力の変化に対する出力の応答時間の目安を与える定数 ある物理量が、初期値から最終値までの変化量のうち一定の値にまで変化するのに要する時間 ギリシャ文字の τ で表される。 時不変系　time-invariant system その出力が時間に明示的に依存していない系である。 入力信号 x によって出力 y が生成されるとき、時間をシフトさせた入力 t ↦ x ( t + δ )では出力も t ↦ y ( t + δ ) となり、同じだけ時間をシフトしたものとなる。 縦緩和時間　longitudinal relaxation time ：T1　←→T1強調画像 T1緩和　＝縦緩和　longitudinal relaxation　＝スピン-格子緩和　spin–lattice relaxation 縦緩和とは常磁性物質では外部磁場に平行な方向の磁化の緩和 縦緩和とは90°パルスによって直交面に倒された磁化が徐々に静磁場の方向に戻る過程 90°パルスによって励起された磁化のx成分が緩和で初期値になる過程 外部磁場のかかった状態で熱平衡状態にあるスピン系に対し、磁場の向きを変えずに大きさを突然変えた場合に磁化に起こる緩和過程である。 最初０だった縦磁化が上昇し平衡値に達することで、平衡値はスピンの数や温度、磁場強度によって決まる量である。 縦緩和では外部磁場の外部磁場方向の成分が変化するので、スピン系のゼーマンエネルギーの変化を伴う。従ってこのエネルギー変化は他の自由度すなわち格子系あるいはスピン系内部の他の形のエネルギーに変換されなければならない。この意味から「スピン格子緩和」と呼ばれ、スピン系と格子系との相互作用によって起こる。 生体組織ではT1＝500〜5000 ms、T2＝10〜200 msと、一般にT1はT2に比べオーダーが1桁大きい。 格子 lattice lattice：空間において等間隔の平行線群の交わりによって生じる図形を一般に格子という。一定の構造単位の格子状配列から成る固体物質を結晶という。 grid　グリッドともいう。電子管の陰極と陽極の間に置かれた平面格子状または網状の電極。格子に信号電圧をかけて陰極から陽極へ流れる電流 （陽極電流）を制御するものを制御格子といい、増幅用電子管、放電管などで重要な働きをする。 横緩和時間　transverse relaxation time：T2　←→T2強調画像 T2緩和　＝横緩和　transverse relaxation　＝スピン-スピン緩和　spin-spin relaxation　←→横磁化 横緩和とは90°パルスによって励起された磁化のy成分が緩和で0になる過程 横緩和とはFID信号のことで、時間とともに横磁化（静磁場に対し直交した磁化）が減衰する。 磁化ベクトルの横軸成分 Mxy が指数関数的に減衰して平衡値である0になっていく過程のことである。この過程はスピン-スピン緩和時間または横緩和時間と呼ばれる時定数 T2 によって特徴づけられる。 プロトンの緩和を縦（垂直）方向と横（水平）方向のベクトルに分けて考える。 縦：T1緩和：縦（垂直）方向；z軸（静磁場方向） ：　時間が経過すると長くなる 横：T2緩和：横（水平）方向；xy平面：　時間が経過すると短くなる 　 T1強調画像 T2強調画像 水↓自由水 低信号（黒） 高信号（白） タンパクを含む液 中等度 中等度 脂肪↓ 高信号（白） 低信号＊ 金属イオン・造影剤（Gd）・鉄（Fe）等 高信号 中等度 ＊脂肪については、SE系列での高速撮像法にて、高信号になるので注意！！ 水は低分子なので、分子の他の原子にてエネルギーを吸収しにくい。分子運動によって相互に近づいたときにはエネルギーを失いやすい。 縦方向のベクトル（T1）は短く、横方向のベクトル（T2）は長い。 脂肪は高分子なので、分子の他の原子がエネルギーを吸収しやすい。 縦方向のベクトル（T1）は長く、横方向のベクトル（T2）は短い。 CTでは、骨は白く、水は黒く、脳はその中間のいろいろな濃さの灰色に見える。 T1強調画像　T1-weighted image ←→縦緩和 T1強調画像では、身体の解剖学的な構造が見やすい特徴がある。 T1強調画像は大脳皮質や骨など解剖的な構造を見るときに使用され、一般的に脳梗塞などの病変の検出には使用しない。 T1強調画像では、水→脳灰白質→脳白質→筋肉→脂肪の順に白く写っていく。 水や液性成分・嚢胞は黒く見え、脂肪組織が白く見える。腫瘍はやや黒く見える。 水は黒く低信号で検出されるので、脳室は黒く写る。 脳細胞は黒、神経線維は脂肪で覆われているので白く描出されやすい。 T2強調画像　T2-weighted image ←→横緩和 T1強調画像とは逆に、水は白く高信号で描出される。 T2では、水⇒脂肪⇒脳灰白質⇒脳白質⇒筋肉の順に白く写っていきます。 脂肪組織だけでなく、水や液性成分・嚢胞も白く見える。 腫瘍はやや白く見える。 T2強調画像では、T1強調画像に比べて病変も白く見えるため、病変の存在を知ることができる。 脳梗塞などの検出に有用だが、T2強調画像特徴的なのは、血管や神経が描出される。 脳梗塞　超急性期の検出不可。急性期、陳旧性病変とも高信号域として検出される。 急性期出血では低信号を示し、出血周囲の浮腫は高信号を呈す。 T2強調画像では、TEもTRもT1強調画像よりも長く設定 FLAIR画像、フレアー画像、水抑制画像　Fluid Attenuated Inversion Recovery 基本的には水の信号を抑制したT2強調画像（脳室が黒く見えるT2WI風の画像）であり、脳室と隣接した病巣が明瞭に描出される。ラクナ梗塞に代表されるかくれ脳梗塞や血管性認知症にみられるビンスワンガー型白質脳症などの慢性期の脳梗塞部位（白色に描出される）確認に有用である。 一般的に新しい脳梗塞や脳浮腫は、T1強調画像では黒っぽく、そのほかの撮り方では白く見える。 脳梗塞の病巣は時間が経つと脳軟化症になり、脳組織が溶けた状態になる。脳軟化層に「水」が入っていると考えると、T1強調画像では黒く、T2強調画像では白く、「フレアー画像」では黒く見えるようになる。 所定の磁場内におかれた、単位体積あたりに含まれるプロトン（水素原子核）の密度（PD）と、その状態（縦緩和：T1、横緩和：T2、流れ：v）を、繰り返し時間（TR）、エコー時間（TE）等の値を調整して画像化する。 繰り返し時間　Repetition Time：TR MRIにおけるRFパルスを与える間隔 MRIでは、何度も何度もRFパルスを発生・照射しては計測することを繰り返し、そこで得られた複数のデータを繋ぎ合わせる（再構成する）ことで1枚の画像を得る。 一般的にTRの単位はミリ秒である。「TR=300」と書いてある場合は300ミリ秒間隔で高周波パルスを照射するという意味である。 参考　マウスのT2強調画像 　TR/TE 1800 /42 ms with 0.8 mm interval エコー時間　Time to Echo：TE 90°パルスからスピンエコー信号、あるいはグラジエントエコー信号が生じるまでの時間 原理的には、90°パルスから180°パルス、あるいは磁場勾配の反転時間の2倍に等しい。 スピンエコー法の場合、1/2TE時に180°パルスを印加すると、1TE時にスピンエコー信号が出る。 スライス厚　slice thickness CTやMRIなど二次元断層像を得る画像診断法における断層像の厚さ スライス厚を薄くすると、スライス方向の空間分解能は向上するが、S／N比が下がるので一般的に画質は劣化する。 観察視野、撮影視野、有効視野　field of view：FOV　←→k-space/FOVz 撮像するスライスの大きさ（幅または高さを通常cmで表した値） 収集マトリックスとピクセルサイズの積の関数になる。 FOV/マトリクス=ピクセルサイズ アーチファクトはFOVが撮影対象よりも小さい場合やFOV外にも身体の一部がある場合に、撮像領域外の像が画像内に入り込み、あたかも画像上折り返ったような像として現れる。 画素数、マトリクス、マトリックス　matrix 周波数位相エンコーディング－位相エンコーディング方向の収集データポイント 256×256、128 x96のように表示する。 FOV/マトリクス=ピクセルサイズ Data matrix (RO x PE) = 128 x96 FOV Read（ = 20mm） x FOV Phase（ = 15mm） 1ピクセル = 20/128 x 15/98 =0.15625 x 0.15625 FOVサイズが同じであれば、マトリクスが大きい方ほど空間分解能が向上するが、撮影時間は長くなる。 スラブ　slab, FOVz　←→3DFT 3Ｄ撮影におけるスライス選択傾斜磁場領域の長さ（厚さ） シミング　shimming MR装置の主マグネットにより発生する静磁場の空間的な不均一を補正し、均一度を向上させるための調整操作をシミングという。 一般にはシムコイルに流す電流値操作により補正適時場を変化させて、静磁場均一度を調整する。 [コイル] MRIでは体内にある水素原子核から発生するごく弱い電波を受信して画像化するためにコイルを利用する。 MRIでは強い静磁場と傾斜磁場のもとで送信コイルから生体へのRF波の照射により水素原子核（プロトン）が励起され、その後の緩和過程で発生したMR信号を検出コイルで受け、AD変換されたデータを計算機で再構成することにより画像化される。 RF波の照射によって被験体はエネルギーを吸収し、その後の緩和時のエネルギー放出をコイルが検出し、信号が画像化される。 送信コイル RF transmit coil MRIの信号は静磁場中に置かれた原子核スピンにその共鳴周波数に等しいRF帯域の電磁波を送信コイルから照射することにより生じる。 送信および受信コイルは、水素原子核の励起と、水素原子核の緩和に伴って発生する信号の受信に使用する。 送信コイルから発生される高周波磁場は、静磁場と直交関係であることが必要である。 均一な画像を得るために撮像領域にわたって均一な高周波磁場を発生することが要求される。 シムコイル　shim coil　←→シミング 静磁場の空間的な不均一を改善するために補正磁場を発生させる調整用コイル このコイルに流す電流値の調整によりシミングを行う。 通常、主磁石本体に独立した10〜20数個の多チャンネルシムコイルが配置されている。たいていのMRSの測定ではデータの採取に先立ち、さらに注意深いシミングがなされ、この処理は手動または自動で行われ、完了するのに3〜10分程度を要する。 シムコイルには常電導コイルと超電導コイルあるいは両者が用いられる。 受信コイル、検出コイル、RFコイル　receiving coil, RF coil 磁気共鳴によって生じた電磁波を受信するコイル 変換され得られたデジタル信号をコンピュータで画像再構成を行うことにより画像を得る。 RFレシーバー、受信機 RF-receiver 受信コイルからの信号を処理するために使用する。 MRI装置で観測される信号は実際には受信コイルに流れる電流であるが、この電気信号を受信機で処理することによって磁化ベクトルの向きと大きさを知ることができる。 傾斜磁場コイル、勾配磁場コイル　gradient coil　←→傾斜磁場 MRIにおいて重要な勾配磁場を生成するためのコイル MRI装置では、x、y、zの傾斜磁場コイルが必要。それらによって3つの次元で勾配を生み出し、被験体の身体内の任意の平面上で画像スライスを作成する。 画像を生成する際、MRI装置ではまず人体内の特定の2D画像面内の水素原子核を励起し、次にそれらの原子核が歳差運動をしながら定常状態に戻っていく際に、その面内で各水素原子核の位置を特定する。これら2つの作業は、局所領域内の磁場を空間的位置の関数として線形に変化させる傾斜磁場コイルを使用して行う。その結果、水素原子核の共鳴周波数は、その勾配内で空間的位置に依存するようになる。励起パルスの周波数を変えることで、励起する人体内部位を制御することができる。 また、放射した共鳴RF周波数と位相の情報を使用することによって、歳差運動をしながら定常状態に戻っていく励起原子核の位置を特定することができる。 超伝導コイル　superconducting coil　←→超伝導電磁石 超伝導体である導体（線材）を使って作ったコイル エネルギーのロスが無く、一定の磁場を効率よく作ることができる。 ただし超伝導状態を保つために液体ヘリウムなどで冷却する必要がある。 リニアモーターカーなどでも超伝導コイルを用いて磁場をつくる。 MRIではMR信号読みとりの間に傾斜磁場を印加し、位置のエンコードを行い、時間軸をk軸に対応させていて、raw data（画像生データ）の集合がk空間を構成する。 3次元的な位置を特定する方法はCT撮影とは異なっている。MRIでは電磁波を利用するので、受信や送信のためにコイルが使われている。また組織から発生するNMR信号の位置と強度を特定するために、3次元的な方向にそれぞれ独立した3種類の傾斜磁場を発生するコイルが設置されている。 イメージングでは静磁場中に磁場勾配を持たせることで空間的な位置情報を得る、線形磁場勾配を用いた画像再構成が用いられている。 MR信号、MRシグナル　MR signal 1946年 Felix Bloch（スタンフォード大）とEdward Purcell（ハーバード大）がNMR信号検出に成功した。1952年にノーベル物理学賞受賞 1950年 電気通信大学の藤原鎮男と林昭一が日本初のNMR信号を検出した。 MRの受信コイルで測定する信号、アナログ波 静磁場H0の中で何らかの方法で核磁化を静磁場方向から傾けると、核磁化は静磁場の周りに、静磁場強度に比例した周波数で歳差運動する。核磁化は周囲に振動する磁場を生み出すので、コイルで誘導電流を検出することができる。 MRI装置で観測される信号は実際には受信コイルに流れる電流であるが、この電気信号を受信機で処理することによって磁化ベクトルの向きと大きさを知ることができる。 MR信号はxy面での回転磁場B1変動を受信コイルで検出するため、z方向に向いて回転している縦磁化を、xy面内に倒して横磁化（Mxyの状態）にして検出する。 z方向を静磁場方向にとり、縦磁化Mzと横磁化Mxyとする。静磁場強度B0内で回転する磁化Mの角周波数ωは、原子核の種類で決まる比例定数である磁気回転比をγとして、Larmorの式ω＝2πγB0で表され、プロトンの場合γ＝42.58 MHz/Teslaである。 MRにはMzを決める縦緩和：T1とMxyを決める横緩和：T2の2種類の緩和があり、おのおのT1,T2という時定数 で表す。おのおの繰り返し時間：TRとecho時間：TEの長さの組み合わせで決定される。生体組織ではT1＝500〜5000 ms、T2＝10〜200 msと、一般にT1はT2に比べオーダーが1桁大きい。 臨床的に用いられているNMR信号には自由誘導減衰：FID信号、グラジエントエコー：GE、スピンエコー：SE、スティミュレーテッド・エコー：STEがあり、RFパルスの回数とタイミングから分類される。 自由誘導減衰　free induction decay： FID 1948年にRussell H. Varian（1898/4/24〜1959/7/26　米国の物理学者）が自由誘導減衰信号の検出に関して記述した"Method and means for correlating nuclear properties of atoms and magnetic fields"を出願した。 核磁化から検出されるMR信号 励起電波パルスの照射直後に原子核が放出する電磁誘導 RFパルスによってある角度まで倒された巨視的磁化ベクトル：Mは静磁場の方向を中心に回転する。付近にコイルをおけば交流電流が発生する。その最大振幅が得られるのは90°パルスを加えた直後であり、観測される信号の振幅は時間とともに減衰する。この現象を自由誘導減衰：FIDと呼ぶ。 パルスによりエネルギーを吸収した核磁気モーメントは、ラジオ波を放出しながら最初の状態に戻る。これを横軸に時間をとった信号として観測すると、振動しながら減衰するようなシグナルがとれる。 外部静磁場方向（ｚ方向）を向いている磁化ベクトルを90°パルスによりｘ－ｙ平面上へ倒した後、この磁化ベクトルのｘ－ｙ平面上への投影成分（横磁化）が受信コイルに誘起するMR信号を測定すると、急速に減衰していく。これがFIDsである。 平衡状態（定常状態）では 核スピンは静磁場と同じ方向を向いてたままで、何の信号も出さないが、エネルギーを与えて励起状態にすると、核磁化は静磁場方向を回転の中心軸として回転を始める。磁石が回ると電磁波を発生するので、それをコイルで検出した信号がFIDである。 90°倒れた核磁化は静磁場の不均一性のため、歳差運動の周波数が異なり、位相がばらばらになっていく。 FIDは磁場の不均一性による、回転位相のばらつきによって生じる。 FIDは外部静磁場の不均一、各核スピンの微視的な磁場環境の違いにより各核スピンの位相がずれるために起こると考えられている。 FIDにおいては、横磁化が減衰すると同時に、縦磁化は静磁場方向に緩和していく。この時の時定数 をT1という。 パルス・フーリエ変換法はFIDをフーリエ変換することでNMRの吸収スペクトルを得る手法である。FIDは周波数スペクトルやスピン系の緩和の時定数を情報として含むため、FIDをフーリエ変換するとスペクトルが得られる。 エコー信号　echo signal 複数のRFパルスを印加することによってrephasingを起こして、FIDのように振幅の減衰が生じないようにして観測されるMR信号 スピンエコー信号　spin echo signal　←→スピンエコー法/スピンエコーシーケンス 2回のRFパルスの印加によって収集するエコー信号 最初に開発されたスピンエコーはハーンエコー：2回の90°パルスによって観測されるエコー信号 1949年 Erwin Louis Hahn（1921/5/9〜2016/9/20, 米国の物理学者）がスピンエコーを始めて検出した。90°パルス-90°パルスによるスピンエコーは「ハーンエコー」と呼ばれることがある。 1954年 Herman CarrとPurcellは90°パルス-180°パルスによるスピンエコーを提案した。「不均一性磁場中での分子拡散によるスピンエコー信号の減衰」 1972年 Ferenc Mezei が中性子スピンエコー（neutron spin echo; NSE）法を考案した。 90°パルスを与えたTE/2後に180°パルスを加え、180°パルスを与えたTE/2後に発生するMR信号 スライス選択傾斜磁場と同時に90°パルスを印可すると、プロトンは XY 平面に倒れるが同時に位相分散が始まり、180°パルスはプロトンを反転させる。エコー信号が最大となるエコータイム（TE）はTE/2 である。 スピンエコー法では90°パルス-180°パルスによりスピンエコー信号を収集する。 グラジエントエコー信号　gradient echo signal：GE signal, GRE signal　←→グラジエントエコー法 1つのRFパルス+傾斜磁場反転の印加によって収集するエコー信号 スピンエコー法では180°パルスの効果により磁場不均一性がキャンセルされるが、GREではされないので横緩和：T2時間はおのおのT2，T2＊とするとT2＞T2＊になる。一方GREは180°パルスがなく，磁化がz軸から倒れる角度であるフリップアングルも90°以下にすることによりMzの回復を待つ時間であるTRが短くできるので高速収集が可能である。 スティミュレーテッド・エコー　stimulated echo：STE 3個（以上）のRFパルスの印加によって収集するエコー信号 　3次元データの受信 MRIに再構成する方法は、波動の3要素を利用する。 波動の3要素 周波数（波長） 位相 振幅 MRI ｘおよびｙ座標に周波数 位相 信号強度 デジタル画像にするには、ｘ、ｙ座標とその座標における階調（信号強度）が全てのマトリクスにおいて決定されることが必要である。 周波数、位相およびスライス選択（断層面）のいずれも傾斜磁場を静磁場中に発生させることで、位置情報を持った信号強度が決められる。 周波数情報を数学的に計算する手法として、フーリエ変換が使用されている。 画像データセットを収集するには、傾斜磁場と励起パルスの印加をそれぞれ正しい手順またはタイミングで行う必要がある。　←→パルスシーケンス z方向の勾配を印加すると、2Dスライスを励起するために必要な共鳴周波数をその面内で変化させることができる。したがって、励起周波数を変化させることで、画像化する2D平面の空間的位置を制御することができる。 この励起手順を完了したあとに、x方向にも勾配を正しく印加すると、定常状態に戻っていく原子核の共鳴周波数を空間的に変化させることができる。この信号の周波数情報を使用すると、それらの原子核のx方向の位置を特定することができる。 同様に、傾斜磁場をy方向に正しく印加すると、共鳴信号の位相を空間的に変化させることが可能で、したがって、原子核のy方向の位置を検出することができる。勾配とRF励起信号を正しい手順と周波数で正しく印加することによって、MRI装置は特定の人体部位を3Dで構成する。 傾斜磁場　gradient magnetic field　←→傾斜磁場コイル 磁場強度が位置によって変化するような磁場 MR装置はX、Y、Zの各軸ごとに、磁場中心からの距離に正確に比例するような磁場を作ることができる。 MRIにおいてMR信号の画像化のためには、均一の静磁場に対して、ある方向に関して小さく（線形に）変化する磁場を重ね合わせて静磁場に勾配をかけて、MR信号に位置の情報を付加している。このとき用いる磁場を（線形）傾斜磁場という。この強さによりスライス厚・FOVの大きさなどが決定される。 実際は、パルス状に傾斜磁場が印加され、その波形の精度や励起される渦電流が画質に影響する。 スライスの選択・位相エンコード・信号の読み出しに用いる傾斜磁場をそれぞれ、スライス選択磁場勾配・位相エンコード磁場勾配・読み出し磁場勾配と呼ぶ。 単位は、単位長さあたりの磁場強度の変化量（mT/m）である。 斜磁場によって横磁化の位相に空間的に変化する波が形作られる。この波は方向と、波の細かさによって特徴付けられるが、これは（kx, ky, kz）で表される空間中の点として表すことができる。この空間をk-空間と呼ぶ。 90°パルスや180°パルス（RFパルス）を印加する時、位相が崩れないように一定の強さの傾斜磁場で行う必要がある。通常はスライスの位置や厚さを決定するためのスライス選択用傾斜磁場：GXとRFパルスを同時に行う。そのため他の位相エンコード傾斜磁場：Gyや周波数エンコード傾斜磁場：Gxが同時間に被ってしまうとそれらの影響により傾斜磁場が一定にならず位相が崩れてしまう。これは180°パルスも同様であり、RFパルス印加時にGz以外の傾斜磁場をかけることはない。 スライス選択用傾斜磁場：Gz 体軸のz方向に磁場勾配を持つ傾斜磁場 RFパルスを与える間隔 を印加する時の傾斜磁場 z方向の勾配を印加すると、2Dスライスを励起するために必要な共鳴周波数をその面内で変化させることができる。したがって、励起周波数を変化させることで、画像化する2D平面の空間的位置を制御することができる。 位相エンコード傾斜磁場：Gy 位相エンコードに必要な傾斜磁場 →ky：phase-encode（PE） 周波数エンコード傾斜磁場：Gx 　＝読み出し磁場勾配、読み出し傾斜磁場　readout gradient echoを収集する時は読み取りに必要な傾斜磁場 周波数エンコーディングに使用 →kx：read-out（RO） パルスシーケンス、パルス系列、シーケンスチャート　pulse sequence サンプルに照射した一連の高周波パルス磁場を表したもの 撮像手法を記述するために、高周波磁場（RF）パルスや傾斜磁場（Gx，Gz，Gz）パルスの印加強度およびタイミング、データ収集のタイミングを図示したもの フーリエ変換後は、シグナルは周波数領域のNMRスペクトルとして表すことができる。核磁気共鳴画像法では、磁場の切り替えによる、勾配パルスが使われ、これは空間依存勾配を示すのでフーリエ変換後の再構築に使われ、空間分解能がよい画像が得られる。 パルスシーケンスのいろいろな情報を何本かの時間軸上にプロットしたものをタイミング・ダイアグラムという。 タイミング・ダイアグラム、タイミング、タイミングチャート　Digital timing diagram 電子工学において複数の信号の関係や振る舞いを時間軸に表した図（ダイアグラム） 他の信号とタイミング関係を比較するために、通常は複数行になりクロック信号を含んでいる場合もある。デジタル回路の基礎から、集積回路検査・デバッグなど幅広く使われている。 RF　----------------------------- Slice: Gz　--------------------- Phase: Gy　------------------- Readout: Gx　---------------- Echo　-------------------------- Time　-------------------------- 90°FIDシーケンス　 90 fidsequence　←→自由誘導減衰： FID 90°FIDパルスシーケンスでは、 磁化は90°RFパルスによりX'Y'平面に倒される 。この磁化ベクトルは+Z軸のまわりに歳差運動を始める 。このベクトルは時間とともに減衰する。 90°FIDパルスシーケンスのダイアグラムには，RFエネルギーおよび信号強度が時間軸上に示されている。 IR法（反転回復法） スピンエコーシーケンス スピンエコー法で用いられるパルスシーケンス スピンエコーシーケンスは90°RFパルスを印可後、ある程度の時間をおいて180°RF パルスを印可することでスピンエコー信号を収集するシーケンスである。 スライス選択傾斜磁場と同時に90°パルスを印可すると、プロトンは XY 平面に倒れるが同時に位相分散が始まる。 このプロトンを反転し、コントラストを得たいエコータイム：TEでプロトンが収束するようにするのが 180°パルスである。TE における信号が最大となるよう、180°パルスは TE/2 の時間において印可される。 90°パルス　90-degree pulse 磁化ベクトルの方向を回転座標系から見てちょうど90°回転させるRFパルス フリップ角が90°になるようなパルス ある均一磁場中に置かれた核スピンの巨視的磁化ベクトルの向きを、z軸方向からx-y平面上に90°倒すためのRFパルス 信号は水平面からしか取れないので、90°パルスを与えることによって縦方向の成分（密度：PDやT1）を水平に倒すことで、FID 信号（電磁波）として信号を受信することができる。90°パルスから時間が経てば、横緩和（T2緩和）によって信号が減衰する。 90°パルスから信号を受信するまでの時間をエコー時間：TEという。TEが短いと、ほぼ縦方向の成分（PDやT1）の信号強度を得ることができる。 実験室座標系から見ると、磁化ベクトルはらせん軌道を描きながらx-y平面上に倒れる。 180°パルス　180-degree pulse MRIまたはNMRの観測において、磁化ベクトルの方向をちょうど180°回転させるのに等しいRFパルス フリップ角が180°になるようなパルス ある均一静磁場中に置かれた核スピンの巨視的磁化ベクトルの向きを、z軸のプラス方向からマイナス方向に180°倒したり、x-y平面上の横磁化成分を180°反転させる。 スピンエコー法では、90°パルス付加後に外部磁場の不均一性で起こる位相のずれをリフェーズさせる作用がある。 エコータイム：TEにおける信号が最大となるよう、180°パルスは TE/2 の時間において印可される。 フリップ角、フリップアングル flip angle：FA 磁化がZ軸となす角をフリップ角 均一静磁場中の核磁化ベクトルがRFパルスの印加によって静磁場の方向（ｚ軸のプラス方向）から倒れた角度 RFパルスの振幅および印加時間に比例して変化する。 フリップ角が90°になるようなパルスを90°パルス、180°になるようなパルスを180°パルスと呼ぶ。 高速撮像法においては、90°以下の励起パルスが使用される。 印加　applied, impressed 電気回路に電源や別の回路から電圧や信号を与える事を意味し、「電圧を印加する」「信号を印加する」という様に使われる。 またこの時、印加された電圧、電流はそれぞれ印加電圧、印加電流と呼ばれる。 2次元の画像（MRI）に再構成：イメージングとフーリエ変換　参考1 フーリエ・イメージング：均一静磁場中でRRF磁場と勾配磁場によって生成したMR信号を、多次元フーリエ変換することによって画像再構成を行う。 撮像 物理的プロセスによるフーリエ変換 　↓ MR信号 再構成 数学的プロセスによるフーリエ逆変換 MRIの計測はk空間と呼ばれる、いわゆるフーリエ変換された空間上で計測される。従って、計測されたデータは、フーリエ逆変換することによって、像を結ばせる。 通常用いられているスピンエコー法では、90°パルスをかけたあとにFIDが放出され、その一定時間後に180°パルスをかけ、そのあとに出てくるエコー信号を計測する。この計測データだけでは、空間位置情報は入っていないので、これをイメージングに利用するには、空間の位置MR信号に対応させる必要がある。 通常のNMR計測法では、パルス・フーリエ変換法が使われていて、そこでは、周波数ωの関数は計測されず、そのフーリエ変換であるFIDやエコーのような時間tの関数が直接の計測対象となる。 空間位置に対して静磁場強度を線形的に変化させると、その磁場強度にしたがって、放出される信号の周波数が変わってくる。静磁場カが小さいところでは周波数は小さくなり、大きいところでは大きくなる。このときパルス・フーリエ変換法では、それぞれの周波数に対応する波の形で信号が放出される。周波数が小さいところでは緩やかな波が放出され、大きいところでは細かな波が放出される。 放出される信号 静磁場カが小さいところでは周波数は小さい 静磁場カが大きいところでは周波数は大きく パルス・フーリエ変換法 周波数が小さいところでは緩やかな波 周波数が大きいところでは細かな波 実空間　 real space MRIの座標系　MRI coordinate system z軸 上：頭 ←→ 下：足 断 層 面 x軸 左：被験者の左 ←→ 右：被験者の右 y軸 前：被験者の腹側 ←→ 後：被験者の背側 被験者が装置の天板に仰向け状態で、頭尾方向がz軸（頭方向が上） 左右方向がx軸,（被験者の右側が右）、前後方向がy軸（前方が前）とする。 DICOM（digital Imaging and communica-tion in medicine）規格で統一されている。 MR撮影時には、静磁場に加えて3種類の傾斜磁場の強度がかけられている。 実空間の画像データのフーリエ変換した空間がk空間である。k空間がフーリエ逆変換されて、実空間の画像が再構成される。 スカウト画像　scout image CTなどの断層画像における位置を確認するための別視点から見た画像 位置決めのための画像 断層撮影では頭から足に向かって輪切りに撮影するのが一般的だが、人体を正面から見た画像（スカウト画像）を1枚用意し、そこへ位置を示す線を表示すれば、どの部分の輪切り画像なのかが素人目にも非常に解りやすいというもの。 MRIのraw data、画像生データ、実データ 画像再構成する前のスキャン生データ MRI信号を並べ替えた画像で、フーリエ逆変換すると再構成MR画像が得られる。 MRI信号（FID信号やスピンエコー信号）は単一のアナログ波であり、周波数変換してからディジタル変換したものが raw data である。 一つのエコー信号はスライス内の全ピクセルが発生するエコー信号の和である。 raw data は実数部と虚数部の二つからなる複素数である。 MRIではMR信号読みとりの間に傾斜磁場を印加し、位置のエンコードを行い、時間軸をk軸に対応させていて、raw dataの集合がk空間を構成する。k空間の端の信号が撮影対象の端から、中央部の信号が撮影対象の中央部から発生しているのではない。 k空間　k-space MRIのraw dataの二次元配列をk空間と呼ぶ。MRIデータは直接画像化できないので、k空間に信号を配置する。 CGS単位系の「波数」の単位 kayserに因んでいる。Heinrich Gustav Johannes Kayser（1853/3/16〜 1940/10/14）は化学におけるスペクトルの膨大な地図を作ったドイツの物理学者および分光学者である。 k空間という概念はMRIの撮像法を直感的にわかりやすくするために考案されたものである。 通常の空間（実空間）は位置を軸としているのに対して、k空間は空間周波数を軸とする空間である。 画像生データを周波数分解したものがk空間上でのデータということになるので、k空間とは空間周波数を表す空間のことということができる。 k空間の端の信号が撮影対象の端から、中央部の信号が撮影対象の中央部から発生しているのではない。 k空間の中央領域は画像の低周波成分を表し、中央から離れた領域は画像の高周波成分を表す。 エコー信号読み取りのタイミングは、エコー信号の中心の最大信号値がサンプリングの中心と一致するように行われる。その結果、K空間のマトリクス上の中央が最大信号値となる。 空間周波数　spatial frequency 空間的な周期をもつ構造の性質である。 空間周波数とは、単位長に含まれる構造の繰り返しの多さを表す。 k空間は空間周波数を軸とする空間である。 国際単位系では空間周波数は、メートルあたりの周期のことである。 2次元画像では、y軸方向に位相エンコードを行った後に、x軸方向に周波数エンコードと同時にエコー信号を取得するが、そのデータを2次元マトリクスのデータ空間にデータを充填する。 このマトリクスはk空間と呼ばれている。 MRIにおいて、k空間は実空間の画像データのフーリエ変換した空間 MRI信号（FID信号やスピンエコー信号）は単一のアナログ波であるが、これを周波数変換してからディジタル変換したものが raw data である。raw data は実数部と虚数部の二つからなる複素数である。 MRIでは、信号読みとりの間に傾斜磁場を印加し位置のエンコードを行い、時間軸をk軸に対応させていて、raw dataの集合がk空間を構成する。 MRI信号を周波数差と位相差によってk空間を充填する。 MR画像はフーリエ変換の結果であるから、MR画像のｘ軸・ｙ軸は空間周波数 k空間と実空間は互いにフーリエ変換の関係にある。実空間の座標軸は位置座標（x, y）であり、k空間（kx, ky）での軸は空間周波数である。 raw dataを二次元フーリエ変換するとMR画像になる。 k空間のｘ軸：kx＝ 周波数エンコード傾斜磁場：Gxの強度 k空間 のｙ軸：ky＝ 位相エンコード傾斜磁場：Gy の強度 k空間は画素の行列になっている。 k空間は複素数であるので、中央領域は画像の低周波成分 0 ↑ 位 相 エ ン コ ー デ ィ ン グ 方 向 0 周波数エンコーディング方向→ フーリエ変換 Fourier transform 信号の中に、どのような周波数成分が、どれだけ含まれているか（スペクトル）を求める方法 時間tの関数f（ｔ）を、周波数ωの関数F(ω)に移す変換 与えられた波形を、周波数の異なる正弦波の重ねあわせで表現している。 フーリエ逆変換　Inverse Fourier transform 時間信号は，あらゆる実数を周波数とする複素指数関数の重ね合わせで表すことができる。 sinc関数　sinc function カーディナル・サイン（cardinal sine）とも呼ばれ、ラテン語のsinus cardinalisの短縮形と言われている。 正弦関数sin(x)をその変数xで割ったもの ↑ 振 幅 実空間の 信号 ＝MRI信号 時間→ フーリエ変換→ ↑ 振 幅 周波数→ 　 ↑ 位 相 K空間 周波数→ フーリエ逆変換→ ↑ 腹 側 再構成 2次元 MR画像 右→ CW法　continuous-wave：CW-NMR 様々な周波数の磁場を掃引しながら系に与えるNMR フーリエ変換NMR　Fourier transform NMR：FT-NMR パルス・フーリエ変換法 パルスFT法 静磁場中のサンプルにパルス磁場を与え、その後観察されるインパルス応答である自由誘導減衰：FIDをフーリエ変換することでNMRの吸収スペクトルを得る手法である。 60年代の終りに導入された。 FIDの横軸は時間領域の情報であるが、NMRのスペクトルの横軸は周波数領域なので、フーリエ変換する。 パルス・フーリエ変換法はCW法に比べ、検出感度に優れ、応用範囲も広く、主流となっている方法である。 CW法の掃引（周波数または磁場を連続的に変化させる）の代りに、共鳴周波数の幅に相当する電磁波をすべて含むパルスを照射し、得られる時間領域スペクトルをフーリエ変換して周波数領域スペクトルを得るものである。 ラジオ波磁場B1を短時間(10〜100μs)だけパルスとして与え、横磁化を作る。パルスを切った後は静磁場があるだけである。従って、磁化Mは元の状態に戻ってゆく。パルスの直後から観測されるMR信号も、横磁化の減衰に伴い消失する。これを自由誘導減衰：FIDと呼ぶ。FIDは、周波数スペクトルやスピン系の緩和の時定数 を情報として含むため、FIDをフーリエ変換するとスペクトルが得られる。 CW法では様々な周波数の磁場を掃引しながら系に与えるのに対し、フーリエ変換NMRではパルス磁場を系に与える。この2つの入力、つまり「多数の周波数成分の和」と「パルス」は、互いにフーリエ変換の関係になっている。また系が線形応答するときは、入力の間の数学的関係（つまりフーリエ変換）が、そのまま出力の数学的関係に伝達される。つまりCW法で得られる応答と、パルス法で得られる応答との間にもフーリエ変換の関係が成り立っている。従ってパルス磁場を与えたときのインパルス応答をフーリエ変換すれば、CW法によって得られる吸収曲線と分散曲線と同じものを得ることができる。 2Dフーリエ変換法 2D Fourier transformation：2DFT 生画像データを再構成して、対応したプロトンのMR信号に比例したピクセル輝度値の２次元画像を作成する方法 薄いスライスを励起した後、周波数エンコード・位相エンコードによって２次元画像を作成する。 3Dフーリエ変換法 3D Fourier transformation：3DFT 厚いスライスまたはスラブを励起した後、位相エンコード・周波数エンコードによってスライス面内の空間分解能を決定する収集技法 スライス厚は、スライス選択方向に沿った位相エンコードによって分解されるため、薄い隣接スライスの収集が可能になる。信号はスラブ全体から繰り返しサンプリングされるため、従来の2D撮影と比較してSN比が改善される。 2次元MR画像　2-dimensional MRI image　←→2DFT 実空間の再構成画像 raw dataを二次元フーリエ変換するとMR画像になる。 再構成 スライス面内の位置決め　 spatial encoding スライス選択後、デジタル信号としてマトリクス上にデータ配列を行う。 通常y軸方向には位相エンコードを、x軸方向には周波数エンコードを行う。 スライス選択　slice selective 位置情報の最初はスライス面の決定から行われる。 NMRの原理より磁場内におかれた被験体に外部からプロトンのラーモア周波数をもつRFパルスを照射すると、そのエネルギーを吸収したプロトンはエネルギー準位が低い方から高い方へと遷移を起こす。 被験者が静磁場1TのMRI装置内に入った場合に外部から共鳴周波数の42.58 MHzの電磁波を照射すると、被験者体内のすべてのプロトンがその対象となり位置を特定できない。 対象とするスライス面はある厚さを有するので、対象スライス面だけを特定の磁場強度として、それ以外は異なる磁場強度にする必要がある。 対象スライス面を含んだ部位に傾斜磁場を印可し、その範囲だけを共鳴させる周波数を与える。しかしスライス面は厚さがあるので、それに対応した共鳴周波数は連続的な範囲が必要となる。 スライス選択傾斜磁場に沿ったスキャン方向 通常はスキャンレンジの方向に対応する。 z軸方向の傾斜磁場によるスライス選択磁場強度B0の断面 スライス選択後、巨視的磁化ベクトルの歳差運動の位相と周波数を傾斜磁場で修飾してMR信号を受信する。 スライスエンコーディング　slice encoding 3Ｄ撮影ではスライス方向にもエンコードが行われ、実行するスライスエンコーディングの回数により、1つのスラブ内に任意のスライス数を設定できる。 スキャン時間は次のように設定される。 　3D scan time = TR x3 位相エンコーディング数×スライスエンコーディング数 X NEX3Dで収集した画像は、スライス間のギャップがなくてもクロストークアーチファクトが発生せず、薄い隣接スライスを収集できる。 位相エンコード　phase encoding：PE　←→位相エンコード傾斜磁場 k-spaceのy軸方向のエンコード エコー信号のの読み出し（read-out）に先だって、空間の特定の方向への傾斜磁場を作用させることによって、その方向への位置情報に対応する位相信号を与えること。 位相エンコードでは強さを変えて傾斜磁場をくり返す。 静磁場と直交するx-y平面において、y軸に沿って磁場勾配Gyをτy時間だけ印加したあとでは、各核スピンの位相φyはy軸方向のそれぞれの位置yに応じてγ・Gy･y･τyだけ変化する（γ：磁気回転比）。励起の度にGyをある増分で変化させ、エンコード量の異なる信号を得る。これをフーリエ変換させることにより、最終的には各位相変化を通してそれぞれの核スピンのy軸上の位置情報を得ることができる。 位相差を利用する。 折り返しアーチファクトが出ることがある。 位相　phase 波動などの周期的な現象において、ひとつの周期中の位置を示す無次元量で、通常は角度（単位は「度」または「ラジアン」）で表される。 位相のずれ、位相差、位相シフト、フェーズシフト phase shift 量子力学の散乱理論において、散乱によって入射状態と散乱状態の間に生じる位相差 核スピンの位置情報を得るためには、スライス選択傾斜磁場や読み出し勾配磁場が印加される。そのために静止系の核スピンの場合はその位置に応じて位相がずれてくる。さらに、この勾配磁場が印加されている際に、血流や脳脊髄液のように核スピンが移動すると、その位置での勾配磁場の強度に応じて核スピンの角速度は変化していき、位相はますますずれることとなる。これが位相シフトである。そのシフト量は勾配磁場の強度とその印加時間、核スピンの位置、速度、加速度さらに高次の成分などの関数として求められる。 ディフェージング、位相分散、脱位相、スピンの分散　dephasing（dephase）　←→拡散強調画像 位相が揃った状態から不揃いの状態になること スピン回転位相のばらつきの増強 スピンの位相が揃った状態から不揃いの状態になり、MR信号の強度が減弱状態になる。 揃っている位相にの傾斜磁場をかけるとdephasingが起き、逆の方向に傾斜磁場をかけると、rephasingされて再び位相が揃う（再収束）。 スピンエコー法では揃っている位相に90°パルスをかけるとdephasingが起こり、180°パルスをかけるとrephasingされて再び位相が揃い（再収束）、エコー信号が出現する。 磁場不均一性 In-phase 全てのスピンの位相が揃った状態、MR信号が最もよくなる。 リフェージング、スピンの収束、位相の再収束　rephasing（rephase） 位相の揃っていない状態から揃った状態になること スピン回転位相のばらつきの修正 エコー信号は複数のRFパルスを印加することによってrephasingを起こして、FIDのように振幅の減衰が生じないようにして観測されるMR信号 傾斜磁場をかけてdephasingが起きた後、逆の方向に傾斜磁場をかけると、スピンの位相が再び揃い、MR信号の強度が強められた状態になる。 echoを収集する時はGxを同時に行うが、発生するechoが一番強い時にちょうどrephasingされて位相が再収束する時と、タイミングを合わせる必要がある。 コヒーレンス　coherence 波の持つ性質の一つで、位相の揃い具合、すなわち、干渉のしやすさ（干渉縞の鮮明さ）を表す。 コヒーレンスという概念は、複数の波の相互の関係だけでなく、一つの波についても適用される。ある一つの波の異なる2つの部分を取り出したとき、それらの位相・振幅に一定の関係があるかないかによって、その波はコヒーレントまたはインコヒーレントと形容される。 デコヒーレンス　decoherence　←→コヒーレンス 複数の状態の重ね合わせにより、それらの状態の間にいったん確立された位相関係が壊れること 古典的波動においては干渉性が失われることに対応し、量子力学的にはいったん確立された重ね合わせ状態が壊れて単なる混合状態に移行することに対応する。 シュレーディンガーの波動方程式で表される波は、いくつかの状態が重ね合わさって並存する状況を意味するが、その状況は周りの環境の影響でたやすく壊される。 人間による観測行為も、そういう影響の1つ。  周波数エンコード　frequency encoding：FE 読み出し　Read out：RO k-spaceのx軸方向のエンコード 周波数エンコードはエコー信号の取得時に、同時に一般的にはx軸方向に行われる。そのエンコードラインに沿ったプロトンは磁場強度が変化することでエコーの周波数が変化する。周波数は磁場強度に比例するので，傾斜磁場の強度が高いほど周波数は高くなる。この周波数の違いをフーリエ変換することによってそれぞれのライン上の位置とその地点における信号強度が求められる。 化学シフトアーチファクトが出ることがある。 2次元MR画像はスライス面内の核スピンのMR信号で構成されるが、各核スピンの位置や信号強度の情報は、エコー信号が生じる時点で、スライス面内の一軸（X軸とする）に沿って磁場勾配Gxを印加しながら信号データを取得することで得られる（信号の読み出し）。 Gxを印加すると、これに平行なスピンはその位置に応じたラーモア周波数を有し、撮像視野の一辺がＬであれば撮像視野内の核スピンはγ・Gx・Lの周波数帯域内に存在することになる。 これらの周波数成分を含むMR信号をフーリエ変換すれば、X軸方向の位置に応じた信号情報を得られる。これが周波数エンコーディングである。 通常は画像の長軸に対応する。 エコー信号読み取りのタイミングは、エコー信号の中心の最大信号値がサンプリングの中心と一致するように行われる。その結果、K空間のマトリクス上の中央が最大信号値となる。タイミングは用いられているシークエンスにより、最初の電磁波（ラジオ波）の照射から次の電磁波照射（90°パルスや180°パルスなど）または磁場印可までの時間を基に、理論的に計算できることで決められている。 MRIでは折り返しアーチファクト、モーションアーチファクト、磁化率アーチファクトや化学シフトアーチファクトなど、様々なアーチファクトにより画像が劣化する。 折り返しアーチファクト　aliasing artifact FOV内に写りこむアーチファクト 位相エンコード方向で起こる。 周波数エンコード方向でも起こりうるが、通常発しない。 アーチファク卜はFOVの外側のイメージが移動して、反対方向の領域に現れる。 これを防ぐにはFOVを大きくして被写体を完全にカバーする方法や、カバーできない方向を周波数エンコード方向にとる方法がある。 化学シフトアーチファクト、ケミカルシフトアーチファクト　chemical shift artifact　←→ケミカルシフト 水と脂肪のわずかな共鳴周波数の違いから起こるアーチファクト 2DFT法の場合は、周波数エンコード方向に水を多く含んだ組織と脂肪組織の境界に、強信号または弱信号の帯として描出される。 静磁場強度に比例して顕著になり、また周波数エンコード方向の勾配磁 場強度に反比例して顕著になる、という関係にある。 渦電流　eddy current 傾斜磁場のスイッチングにより誘起される渦電流は渦電流磁場を生成し、画像に歪みやアーチファクトをもたらす。 MR装置は位置情報や信号収集のために用いられる傾斜磁場のスイッチング時に、傾斜磁場コイルの外側に位置する主磁石などの金属部分のいたるところに複雑な誘起電流を生ずる。 渦電流が形成するこれらの磁場の影響で、傾斜磁場パルスは立ち上がり・立ち下がり部分でタイムラグを生じ、設計通りの傾斜磁場が印加されないことになり、画像の歪みなどの悪影響をもたらす。 対策としては、渦電流の影響を相殺するようにあらかじめ傾斜磁場コイルから外側の磁束の漏出を防止するためのシールド型傾斜磁場コイル（SGC）の採用がある。 多断面再構成像、MPR像　multi-planar reconstruction 脳の3次元形態画像から切り出した、3方向の断面 冠状断、前頭面　coronal plane 生物の体を腹側と背側に（ヒトの場合は前側と後側）分割する任意の平面 矢状断、矢状面　sagittal 左右相称な動物の体の正中に対し平行に、体を左右に分ける面 正中に沿って体を左右に等分する面（正中矢状面）が最も有用だが、左か右にずれた平行な面もまた矢状面である。 ヒラメなどわずかな例外を除き、鉛直面である。 矢状面は横断面と直交するため、縦断面の1種である。また冠状面とも直交する。 水平断、軸位断　axial ＝横断面　transverse plane 細長い物体について、その長さ方向に対し垂直な平面である。通常、切断・断層撮影・模式図などで断面図として図示される。 細長い物体の三次元形状は、横断面をそれに垂直な方向に平行移動した柱体として近似できる。 動物の場合、横断面は体軸に垂直な面となる。ヒトでは体を上下に分ける水平面（horizontal plane）だが、四足歩行する動物では前後に分ける垂直面となる。このような煩雑さ避けるため、水平面ではなく横断面という用語が使われる。 また全身の横断面とは別に、四肢や首などに対しては、胴体との位置関係とは無関係に、その長さ方向に垂直な横断面を定義できる。 横断面に対しそれに垂直な縦断面も定義できるが、放射相称でない動物では矢状面と冠状面を区別する必要がある。横断面・矢状面・冠状面は互いに垂直である。 スピンエコー法 spin echo：SE　←→スピンエコー信号 励起パルスとして90°パルスを印加し，磁化をＸ−Ｙ面上に倒しその後ある時間（TE／2）経過してからrephaseパルスとして180°パルスを印加して信号を取得する方法 スピンエコーシーケンスは最も一般的に用いられるパルス系列であり、90°パルス－180°パルスの組み合わせを一定間隔 (1TR で連続的に印加する。均一静磁場中の核スピンに対して、まず90°パルスを印加し、巨視的磁化ベクトルをx-y平面上に倒す。90°パルス印加直後から、核スピンが定常状態に戻る緩和の過程で、巨視的磁化ベクトルはT2*の時定数 で消失する自由誘導減衰 ：FID信号を放出するが、この途中で、90°パルス印加からτ（TE/2）時間後に180°パルスを印加すると、各核スピンの角速度がキャンセルされ、τ時間後に、T2の時定数で求められる信号強度に該当するエコー信号が観測される。これがスピンエコーである。Short-TR&TEでT1強調画像を、Long-TR&TEでT2強調画像を得ることができる。 励起パルスの後に観測されるMRシグナルは、スピン-スピン緩和ならびに異なるスピンが異なる速度で歳差運動する原因となる全ての「不均一」効果（例えばケミカルシフトの分布あるいは磁場勾配）によって時間とともに減衰する。緩和の結果として不可逆適な磁化の損失（デコヒーレンス）が起こるが、不均一な離調は磁化ベクトルを反転させる180°パルスあるいは「反転」パルスを適用することにより逆転させることができる。 スピンエコーシーケンスでは1回の励起でk空間の位相方向 1 回分のデータが埋められる。 反転回復法 inversion recovery：IR MRIにおけるパルス系列のひとつ 90°パルスの印加の前に、まず180°パルスを印加することにより、z軸方向の縦磁化成分を反転させておく。 縦緩和により縦磁化が回復してくる過程で90°パルスを印加して、FID信号もしくはスピンエコー法によるエコー信号を測定する。 反転状態からの回復の速度は、T1にのみ依存するので、T1強調度の強い画像を得ることができ、180°パルスから90°パルスまでの時間（反転時間:TI）の調節によりT1強調度を変えることができる。 反転時間 (TI) を変化させることにより、脂肪の抑制 (STIR) や脳脊髄液の抑制（FLAIR）画像を得ることが可能 グラジエントエコー法 gradient echo：GE, GRE　←→グラジエントエコー信号 スピンの磁化を観測するための一方法 スピンエコー法における180°パルスに変えて、磁場勾配を反転（傾斜磁場反転）させることによりグラジエントエコー信号を発生させる。 TR、TEの短縮が可能となり、高速スキャンや3Dボリュームスキャンに応用されている。 しかしリフェーズに180°パルスを用いないので、静磁場の不均一性の影響を受けやすく、スピンエコー法よりも画質が劣化する。 エコー信号収集後に残存横磁化成分を強制的に消滅させるためにスポイラーパルスを付加するタイプ（FLASHやSPGRなど）と完全なSSFP（定常自由歳差）状態を意図したタイプ（FISP、GRASSなど）に分けることができる。 TR、TE、フリップ角の調整で画像のコントラストを変化させる。 拡散強調画像 diffusion (weighted) image：DWI MRIのシーケンスの一種で、水分子の拡散運動（自由運動度）を画像化したものである。 拡散が低下した領域が高信号として描出される。 通常用いられるスピンエコー法のパルス系列では拡散による信号の減衰は無視できるが、大きな傾斜磁場が長時間にわたって印加されると、その間の各磁化ベクトルの移動によって生じる位相のずれが無視できなくなり、拡散が活発な領域ほど低信号として現れる。 スピンエコー法のパルス系列において、傾斜磁場の強さや印加時間を変えることによりディフェージングの効果を付けて得られた複数の画像から、見かけ上の拡散係数：ADC を求めて画像化することができ、これを「みかけの拡散係数画像：ADC map」と呼ぶ。 コンピュータ断層撮影（CT） で描出できない、超急性期または急性期の脳梗塞診断に非常に有用で、救急医療で広く用いられている。また脳腫瘍の一部（類上皮腫とくも膜嚢胞との鑑別）、脳膿瘍の診断にも有用である。 急性期の脳梗塞では、拡散が低下してくるため、超急性期の脳梗塞の部位判定（白色に描出される）に有用である。 運動検出磁場　motion probing gradient：MPG ＝双極傾斜磁場　bipolar gradient 同じ強度で極性が反対の2つの傾斜磁場 MPGを印加している間に、拡散により移動したプロトンのスピンの位相の分散の程度により、信号低下を来す。MPGの影響の強さをb value(b factor)と呼ぶ。 みかけの拡散係数　apparent diffusion coefficient：ADC MRIのボクセルサイズは、計測しようとする動きの大きさに比べ非常に大きいため、毛細血管の血流に代表される灌流や他の種々の勾配もボクセル全体を巨視的にみれば、種々の方向を向いていて、ランダムな動きと同じことになる。つまりMRIで計測される「拡散」では、濃度勾配は他の温度、圧力（灌流）、イオン勾配などの要因と区別できない。そのため、同じくらいの水分子の動き（移動）をひとまとめにして「拡散」として扱う。そのためMRIでは、拡散係数に「みかけの」をつけた「みかけの拡散係数」という係数が拡散の指標として広く用いられている。 みかけの拡散係数画像　apparent diffusion coefficien map：ADC map motion probing gradient：MPG（傾斜磁場）は振り子の共鳴と同じ ADC mapはMPGをほぼかけない画像（S0）に対する信号強度から、あるMPG(b)をかけた画像MPG(Sb)の信号強度の対数をとったものを画像化している。 拡散テンソル画像 diffusion tensor image：DTI 組織内の水分子の微小な動きである「拡散」の方向と速さをパラメーターとして画像化する方法が拡散強調画像であるが、拡散の三次元的な方向性の定量的画像 水の拡散は神経線維に沿った方向では速く、神経線維と直交する方向では遅くなる性質を活かし、この画像により神経線維の微細な変化を描出することができる。したがって、DTIは神経線維の集合体である白質の病変検出に最適である。 motion probing gradient：MPGの方向を変えた複数の拡散強調画像をもとに、テンソル解析を用いてMPGの方向に依存しない、すなわち測定系の座標系に依存しない指標に変換し、そのうち異方性拡散を表したもの。 脳梗塞・脱髄性疾患および萎縮性疾患・脳腫瘍などに応用した報告がみられる。 プロトンは無秩序（ランダム）な熱運動（ブラウン運動）によってあらゆる方向に動いていて、このようなプロトンのランダムな運動をMRIでは拡散と呼んでいる。MRIにおける拡散は、等方性拡散と異方性拡散に大きく分けられる。 テンソル解析　tensor calculus ベクトル解析をテンソル場（時空などの多様体上を変化するテンソル）に対して拡張するもの Gregorio Ricci-Curbastro とその弟子Tullio Levi-Civitaによって展開され、 Albert Einsteinが自身の一般相対論の展開に用いた。無限小解析と対照的に、物理方程式を多様体上の座標の取り方に独立な形で表すことができる。 物理学や工学における応力解析、連続体力学、電磁気学、一般相対論など、テンソル解析は多くの実生活的な応用を持つ。 等方性拡散　isotropic diffusion　←→異方性拡散 ある点からすべての方向に対して一様に広がる物理現象 異方性拡散　anisotropic 一様ではなく、インクが制限されたある方向のみに広がる物理現象 VNMRJ　参考1/2/3/4/ MRI用ソフトウェア 動物のMRI　参考1/2/3 造影剤 MRI造影剤は造影効果の違いにより、T1短縮効果による陽性造影剤とT2短縮効果による陰性造影剤の2種類に分類される。造影剤の材料としては常磁性金属が用いられるが、その中でもガドリニウムはT1短縮効果が高く、常磁性体として優れた特性を有している。また、肝臓造影に使用される酸化鉄コロイドは、非常に強いT2短縮効果を有する陰性造影剤である。 ガドリニウム gadolinium 原子番号64の元素。元素記号は Gd 希土類元素の一つ（ランタノイドにも属す） 最大14個の電子が入る 4f 軌道が、占有可能な電子数の半分にあたる7個の電子で占有されており、7つの不対電子を持つ。そのため、7つの異なる軌道に合成スピン角運動量による磁気モーメントが最大となる。このことからガドリニウム錯体（Gd-DOTA 等）は磁性材料や MRI 検査用の造影剤（T1短縮効果）に利用されている。 ガドリニウム造影剤（臓器非特異性）はヨード造影剤ほぼ同じ体内動態をとり腎機能が正常な患者での血中半減期は1時間前後であるが、末期腎障害患者では35時間程度まで延長する。 ガドリニウム造影剤の副作用発現率は1〜2％程度であり、ヨード造影剤に比べ安全性が高いとされてきたが、重度腎障害患者に発現する副作用として腎性全身性線維法（NSF）が報告されて以来その認識は一変し、安全性について世界的に再考されるようになった。 →マンガン造影磁気共鳴画像法：MEMRI　manganese-enhanced MRI：MEMRI　←→ガドリニウム Mn造影剤を使用したMRI撮像法 2価の陽イオンMn2＋の特徴を生物学的特性に応用したMRI マンガン（Mn）は体にとって必須微量金属の一つである。 Mnの約80％が脳で必要とされている。 1973年 Paul C Lauterburが硫化マンガンを世界初のcontrast mediaとしてNature誌に紹介した。 1997年 Car-negie Mellon大学に在籍していたAlan PKoretskyとその大学院生だったYi-Jen Linが神経細胞の脱分極に伴うCa2＋イオンの流入を、2価のMn2＋イオンを用いて検出した報告した。 Pautlerらが神経経路トレースに塩化Mnを使用した論文で、マンガン造影MRIという用語を使用した。 Gdキレート製剤がその構造自体に明確な機能性や集積特性をもたないのに対して、Mn影剤がCa2＋チャネルに依存する機能性をもつ。 Mnイオン大きさがCa2＋イオンの大きさと近いなどのことにより、Caチャネルを介し細胞内に流入すると考えられている。金属イオントランスポーターを介する細胞内流入系も報告されている。このMnの脳内や細胞内に流入しやすい性質と、常磁性体としてMnイオンが水分子のプロトン緩和時間（T1）を減少させる特性を利用して、T1強調MR画像が得られ、Mnを造影剤として小動物の脳を造影する方法が考案された。 Mnイオンが電位依存型Caチャネルを介して神経細胞内に流入することから、神経活動依存的な変化をMRIで観察することができるfMRIの一つの手法となる可能性である。 磁気共鳴血管画像、MRアンギオグラフィ　magnetic resonance angiography、MR angiography：MRA MRI装置を使用した血管撮像 X線による血管造影検査と違い、X線の被曝もなく、造影剤も使わずに検査することが可能 タイム・オブ・フライト法と位相コントラスト法 (phase contrast, PC) がある。 タイム・オブ・フライト法　time-of-flight method: TOF ＝inflow-MRA 非飽和の撮像面内流入血流（撮像に用いるRFパルスにより飽和されていない血液）が撮像面内において高信号であることを利用して血管像を得る方法 主に流入効果（inflow効果）に基づいて、流動スピンと静止スピンを識別し、血管画像を作成する（流速を持つ核スピンは、静止系とは異なる信号強度を持つ）。 スライス内に流れ込む血液はRFパルスを受けないため、静止組織よりも高信号になる（白く見える）。 Time-of-Flight 血流により信号強度が変化する現象：MRI の血流信号 増強要因 流入効果（TOF）：新鮮なスピンの断面内流入 リフェージング：スピン回転位相のばらつきの修正 造影剤の使用 減弱要因 流出効果：スピンエコー法での信号減弱 上流効果・前飽和：飽和スピンの断面内流入 ディフェージング：スピン回転位相のばらつきの増強 流入効果　flow rerated enhancement 血液の流れが遅い場合やTEが短い場合は、90°と180°パルスの両者を受け、血流部分（血管）からも信号が得られることになる。さらにこの場合は、常に新鮮な血液がスライス面内に流入してくる。したがって血液は、初期状態である。 一方、静止部はRFに何度も印加され信号は低下する。この状態で信号を検出するため、相対的に血流部分（血管）が高信号に描出される。 流出効果　flow void、High-Velocity Signal Loss SE法では、90°パルスと180°パルスの両者が印加されて信号が読み取れる。血管内の血液は90°パルスを受けて励起されるが、スライスを移動し、180°パルスを印加した時にはスライス面から流出している。この場合、血管からの信号は得られない。 2D-TOF法 3D-TOF法

●機能的MRI functional MRI：fMRI　←→MRI
　→fMRIのデータベースneurosynth.org

• 1992年に小川 誠二先生（1934/1/19〜 , 日本の物理学）がBOLD法に基づいた画像処理法として、機能的磁気共鳴画像法 (fMRI) を開発した。
• fMRIは脳の機能解析に欠かせないツールになっている。

  課題遂行型fMRI 課題遂行型fMRIは、ある課題を遂行する脳領域の賦活が比較的簡単に、かつ非侵襲的に検討することが可能であり、脳機能研究に大きな前進をもたらした。 fMRIによる脳活動計測は、特定の刺激やタスクに伴って生じる一過性に賦活される脳領域を高い空間分解能で同定する計測法 fMRIでは神経活動に伴う脳局所血液灌流量変化を賦活の指標として計測する。 fMRIは5mm程度の空間分解能を持ち、鮮明な画像を得ることができるが、時間分解能は100ms程度と優れない。 fMRIは被験者のタスク実行時と、安静時の画像を比較し、磁気共鳴信号の変化を統計的に分析することにより、 脳の活動部位を推定する。 単純計算の課題では頭頂連合野を中心に広い範囲で賦活領域が観察され、手指対向運動と比べても大きな領域が賦活される。ここで、賦活領域の大きさが、いわゆる良く脳を使っている、と言えるのか否か不明ではある。 fMRIでは刺激やタスクを負荷しない対照条件としての安静時条件では、（1）明確な脳活動が存在せず、（2）ほぼ一定の状態が保たれている、という暗黙の前提があるが、どちらの前提も必ずしも満たされているとは限らないことは知られてはいた。　←rsfMRI

  安静時機能的ネットワーク resting state　network：RSN 安静時機能的fMRI　Resting state fMRI：rsfMRI Marcus Raichleが2004年にアルツハイマー病において デフォルト・モード・ネットワーク:DMNの機能的結合が顕著に低下していることを報告した。これを契機として神経・精神疾患を対象にした rsfMRI 研究が急速に増えている。その後，DMN 以外にも安静時において同調した活動を示す複数のネットワークが確認されている。 脳全体の機能的結合性を簡便かつ鋭敏に解析できる方法 脳のどの領域同士が機能的に接続しているかを把握する。 安静時のfMRI時系列データを用いて、領域間のfMRI信号の相関から機能的結合性を計算して、全脳の自発性活動を複数の領域が協調して活動する数種類のネットワークに分類し、健常者と精神神経疾患患者での相違や意識との関連を検討する研究 グラフ理論を用いてネットワークの特性を表す種々の指標を計算し、安静時の自発性脳活動を情報ネットワークの観点から定量的に評価する方法も用いられている。 認知症を始めとする精神神経障害を有する患者での測定に適している。 シードに基づく解析は rsfMRIデータに対する基本的なアプローチの一つ 脳局所の活動の同期性を評価するregional homogeneity：ReHoやfMRI信号の0.1Hz以下の周波数帯域におけるパワを用いて脳の自発活動の程度を評価するamplitudeof low–frequency fluctuation：ALFFなどの解析法も痛み研究に応用されている ←→安静状態での脳活動の機能的ネットワーク：デフォルト・モード・ネットワーク

  
  
  
• 一番よく使われているfMRI 測定法は、ベル研究所の小川誠二博士によって発明されたBOLD
  

  Blood Oxygenation Level Dependent：BOLD 血液中の酸素化ヘモグロビン（オキシヘモグロビン）および還元型ヘモグロビン（デオキシヘモグロビン）は磁気的な性質が異なる。オキシヘモグロビは反磁性体の性質があり、周りの水の緩和時間に影響を与えないが、デオキシヘモグロビンは常磁性を示す（磁場で磁化する）。 したがって、血管中のオキシヘモグロビンの周辺には、磁場の不均一がおきないが、デオキシヘモグロビンは磁場の中で磁化してもともとの磁場の不均一をもたらし、磁気共鳴によって引き起こされたプロトン（水素原子核）のスピン回転の位相を乱して磁気共鳴（MR）信号を減少させる。見かけ上のT2緩和時間が短縮する。 脳活動に伴い賦活領域において血流が20〜40％増加する。神経細胞において酸素と結合したオキシヘモグロビが還元され、デオキシヘモグロビンとなるが、血流の増加に対し酸素消費量は5％しか増えないことから、静脈中のオキシヘモグロビの量が相対的に増加することになる。また、オキシヘモグロビはデオキシヘモグロビンに比べ磁化されにくいため、賦活領域では磁化率が減少し、磁気共鳴信号の強度が変化する。したがって、脳が刺激を受け､局部血流が増大し、オキシヘモグロビが増加すると､その変化分をMRI信号として検出することができる。

  
  
• fMRIで用いられる撮像法

  エコープラナー画像法　echo planar imaging：EPI 非常に高速な撮像法 EPI法の欠点：空気などが近接する構造では綺麗な画像にならないことや画素数が少ない。 fMRI画像とされる画像は、従って通常臨床でも使われているT1強調画像に、多数のGE-EPI画像（gradient echo type echo planar imaging）を基に統計学的処理を行い、有意な血流増加が見られた部分のみを重ね合わせた画像なので、相当に粗い（画素数が少ない）画像を統計処理し、得られた有意な領域を通常のMRI画像に位置合わせを行い、重ね合わせて表示しているので、実際は比較的空間分解能の粗い画像である。

  
  

  voxel-based morphometry MRI：VBM-MRI 3.0T-MRIの優れた感度により、通常のT1画像でも脳全体を1mm程度のvoxel dataとして得ることが可能となっている。 頭部MRIを半自動的に処理し、脳全体を細かなボクセル単位で統計解析 ボクセル voxel ボクセルとは、3Dオブジェクトを小さな立方体(VOXEL)で表現する技術。 2次元デジタル画像を構成する単位のピクセルに対して、厚み情報を加えた3次元デジタル画像を構成する単位のこと。 ボクセルは厚みを持った粒子として表現されることから、3次元画像の断面図を表現できる。 1〜8mm立方程度 3D-MRIを応用したVBMにより、脳内組織の容積を直接測定する形態学的画像診断法も確立されつつある。 解剖学的標準化、組織分画法（tissue classification）と画素ごとの画像統計の手法 分解能に優れた脳形態解析によって、早期の病変を検出できる可能性が高まってきている。 VBMは各個人のMRI画像データを標準脳座標上に変換し、空間正規化をする事で、自動的に全脳の形態学的解析を行なう事が出来る比較的新しい方法である。 仮説に基づいた関心領域のみを手書きで計測するROI方法と対照的に、比較的簡便に自動的に解析でき、測定者の違いに左右されないという特徴がある。また、より大きなサンプルでの研究が可能で、これまでは境界の定義が困難であるために研究されにくかった脳部位についても研究でき、ある特定の要因に関連のある部位を全脳から検出出来るという利点が得られている。 各個人のMRI画像データを標準脳テンプレートを用いて標準脳座標上に変換（空間正規化：Spatial normalization）し、画素の持つ信号強度の情報とその画素の位置情報から推測される灰白質（白質）である確率（Probability map）を基に灰白質と白質と脳脊髄液を区分し（Segmentation）、同一の脳座標空間上で濃度の情報として局所体積の個人差が反映される。この濃度が正規分布に近づく様に、そして空間正規化の精度を高める様に平滑化（Smoothing）を行う。これらの前処理を経て、特定の位置における濃度の統計解析が行える事になる。脳全域では数10万ボクセルの多重検定を行う事になるためfalse-positive やfalse-negativeを最小限にするための有意水準補正の方法が問題になる。用手的な体積測定法との一致もある程度示されているが、正確には体積とは異なる指標を用いて統計解析を行っている事には留意が必要である。 画像の前処理の際の空間正規化や組織の区分において精度を高める様に、Optimized VBMやDARTELといった方法が出現してきた。 VBM解析ソフト VSRAD VSRADは1mm前後で撮像された全脳の三次元T1強調画像からVBM手法を用いて健常高齢者の脳画像データベースと統計学的に比較することで、個々の患者の相対的な局所脳容積を評価するフリーソフトウエアである。 VSRADはWin-dows OSのコンピュータ上で単独ソフトウエアとして動作し，全自動で解析が行われることから、わが国で広く普及、1000以上の施設で認知症診療におけるルーチン検査として用いられている。 SPM FunctionalImagingLab oratory,UniversityCollegeLondonのメンバーによって開発されている統計画像解析パッケージ SPM8、SPM12 Brain Anatomical Analysis using Diffeomorphic deformation：BAAD　参考1/2/3/4

  
  

  ネットワーク解析 脳はネットワークを形成していて、多くの部位にはそれ自身の機能を持ち、お互いに情報を伝達し合っている。 データにおけるネットワーク解析は、1)機能的連関性　2) 実効的連関性　に大きく分けられる。 どちらも空間的に配置された脳部位同士の関係を表す。 機能的結合性　functional connectivity network 無向グラフにより時間的な相関を表し、実効的連関性では有向グラフにより因果的な関係を表す。 近年では安静状態に注目が集まって、そのネットワークを明らかにすることによって健常者や罹患者別にこのネットワークを参照（DMN）として、あるタスクによる相対的な活性状態を把握する。 解析者が解剖学的知識を基に定める複数のボクセルからなる関心領域：ROIにおける平均時系列を算出し、それらから相関係数を推定する。機能的連関性解析では、相関係数に閾値を設けて隣接行列を作成しそれに基づきグラフを描画する。相関係数ではなく周波数領域での相関、すなわちコヒーレンスを用いる方法もある。 実効的連関性解析　effective connectivity 実効的連関性解析では，構造方程式モデル（Structural Equation Modeling; SEM）などのモデルに基づく方法が多く用いられてきたが、遺伝子ネットワークで有用であるベイジアンネットワークはこのような研究においても有用である。

  独立成分分析　Independent Component Analysis：ICA ICA はデータ駆動型の手法で、事前の領域設定を必要としない点において優れる。 ICA により複数のお互いに独立した空間パターンが分離され、これらが安静時ネットワークとなる。しかしいくつの独立成分に分離させるかに関しては事前設定が必要で、これは多くの場合経験的に決定される。

  関心領域（ROI: Region-of-interest）法 1990年代までは多くの脳形態解析研究には、関心領域（ROI）法が用いられていて、知見のほとんどがROI法によって得られたものであった。 ROI法では、測定者がスライス一枚ごとに、解剖学的構造物を基準として厳密に定義された方法で、関心領域の境界を手書きで書き込んでいき、部位によっては数10スライスにわたる作業をやり遂げて、初めて体積が測定可能となる。 十分に測定の妥当性と信頼性を高めるために、測定者は繰り返しトレーニングを受ける必要があった。 ROI法では測定に著しい時間と労力が必要とされるために、研究対象となる脳部位はある特定の仮説に基づいた部位に限定され、サンプルサイズも制限されがちであった。また、明確な境界を定義可能な部位に制限されやすく、出来るだけ簡便で分かりやすい境界を用いて測定者間一致度を高めることと、細胞構築や脳機能の観点から出来る限り妥当な境界を設定することとは、時として食い違う場合もあった。

  シードに基づく解析　Seed-basedanalysis rsfMRIデータに対する基本的なアプローチの一つ まず関心領域：ROIを決め，その BOLD変動を抽出し，他のボクセルや ROIとの相関行列を作成する。 機能的結合を定量化する際に、その意味が明確である点が利点となる。 一方で事前にシードとなる ROI の選択、サイズ、形状をどう決定するかにより結果は影響を受ける。この問題に対する解決策の一つとして独立成分分析が挙げられる。

  局所均一性 Regional Homogeneity：ReHo ReHo は機能的に同一の役割を果たす領域内のボクセルは同調した活動を示すという前提の元に、隣接したボクセルとの同調の程度を定量化する手法である。 シードに基づく解析におけるROI を ReHo により機能的側面から決定することもできる。

  低周波摂動振幅 Amplitude of Low Frequency Fluctuation：ALFF ALFFは神経活動を反映するとされる 0.01〜0.1 Hz の低周波帯域の合計パワをーを意味する。 ALFFは機能的結合の指標ではないが、rsfMRI の解析としてはしばしば用いられる。 この指標は必ずしも神経活動の量を反映しているわけではないため、機能的意義が曖昧である。

  
  
• グラフ理論により脳全体を情報ネットワークとみなして、脳の状態を推定する研究が飛躍的に増大している（restingstatenet-work及びdefault mode network）。

  グラフ理論　graph theory ノード（節点・頂点）の集合とエッジ（枝・辺）の集合で構成されるグラフに関する数学の理論 機能的ネットワークの組織的特徴を定量化する手法である。 ROIやボクセルをノード、ノード間の有意な結合をエッジとして、脳全体を一つのネットワークとして捉える。 ネットワーク全体の効率性であるスモールワールド性やハブとして機能する領域の検出のようなトポロジカルな解析が可能となる。 計算論的な複雑さにより、ノード数が大きいと計算量が膨大になるため、測定時のボクセルサイズを保持したままグラフ理論解析を行うことは困難でなる。そのため，全脳を ROI に分割することになるが、これは ROI 選択と同様の問題を抱えることとなる。また，ノードの設定においてどのように基準を設定するか（例えば領域間の相関が 0.5 以上など）も重要となる。この恣意性を回避するため，特定の閾値のみで構成されたネットワークではなく、閾値をスライドさせて作られた階層的ネットワークを解析対象とすることがほとんどである。 一筆書きの絵のように、いくつかの点とそれらを結ぶ線からなる図形がグラフである。線は何本あってもよく，曲がっていてもよいし長短もとわないことは電気系統の配線図と同様である。グラフを考えるときは，線のつながり方が重要であって形は問題としないが，線が余分に別な点を通るように変形したり、くぐらせるべきところを交わらせたりすれば別なグラフと考える。このようにグラフに対して許される変形を限定しておいて、それによって不変である性質を研究するのがグラフ理論である。 基本的には、グラフは頂点と辺から構成され、辺は二つの頂点を結ぶ。 グラフ（graph）とは組（V,E）で表される。 Vは有限集合で、EはVの２項関係である。Vは 頂点集合（vertex set）と呼ばれ、その要素を 頂点（vertex,node）と呼ぶ。Eは辺の集合で、 辺（arc,edge）とは（u,v）の組でu、vはVの要素である。 有向グラフ（directed graph） においては、辺は順序付けられた組で、 始点（source） を 終点（target）へと接続する。 無向グラフ（undirected graph）においては、辺は順序付けされていない組で、２つの頂点を両方向につなぐ。つまり、無向グラフでは（u,v）と（v,u）は同じ辺の２通りの書き方である。 脳のボクセルが円弧状に隣接した二つのノードは神経線維で繋がっている確率に比例すると仮定された重みから非指向のグラフとしてモデル化された。 グラフ理論を用いてネットワークの特性を表す種々の指標を計算し、安静時の自発性脳活動を情報ネットワークの観点から定量的に評価する方法も用いられている。　参考1 グラフ理論を用いた解析法では、 全脳に数十〜数千のnode（region of interest：ROI）を設定、 各nodeから安静時のfMRI時系列データを抽出、 node間のfMRI信号時系列データの相関マトリックスを計算、 一定の閾値で二値化、 一定値以上の相関を示すnode間に機能的結合があるとみなしてedgeでつなぎ、全脳を情報ネットワークとして再構成、 pathlength,clusteringcoefficient,centrality,modularityなど、ネットワークの特性を表す種々のパラメータを算出する。 これにより自発性脳活動から脳の情報ネットワークとしての特性を定量的に評価する事が可能である。

  
  

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●ポジトロン(陽電子)放出断層撮影 positron emission tomography：PET

• ポジトロンは、正の電荷をもった電子であり、Paul Adrien Maurice Dirac（ノーベル賞物理学者）が存在を予言した素粒子である。
• 投与された放射性トレーサー（人工核種：RI）は体内でとりこまれると同時に、β崩壊を起こして、反物質粒子のポジトロンを生じる。体内にとりこまれたポジトロンは、わずかな距離を飛んだ後、通常の電子と反応し、光子が２方向に向かって、高い光エネルギーを放出する。光子のエネルギーは電子の質量に相当する511keVである。
• 比較的短時間の半減期を持つ放射性トレーサーを体内に投与し。体の周りに光の検出器を並べて､２方向に放出される光エネルギーを同時測定し，CT やMRI と同様の計算処理を行って、断層写真として再構成される。
  
  
• 利点：多様なトレーサーを用いることで、血流、代謝、受容体結合能、伝達物質合成量、遺伝子発現など、様々な生体情報が収集できる。
• フェムト・モルオーダーの非常に微量な物質の体内分布を測定できる。ドーパミン、アセチルコリン、ヒスタミン、ノルアドレナリン、エンドルフィンなどの合成、代謝、受容体機能など、数多くの分子をターゲットとした基礎・臨床研究が行なわれている。
• 最近世界的に注目を集めているトレーサーは18F（フッ素18：半減期110分）で標識されたfluorodeoxyglucose（FDG）。FDG は，glucose transporter により細胞内に取り込まれhexokinase によってリン酸化されるが，それ以上は代謝を受けずにフッ素の陰電荷によって細胞内にトラップされる。FDGを用いて、脳のグルコース代謝などが測定できる。
• 酸素15（半減期2分）で置き換えた水を投与する事で､脳血流量の変化が捉えられる。
• 炭素11（半減期20分）､窒素13（半減期10分）で置き換えた薬剤も用いられる。
  
• 被検者には放射線による被曝がある。

●近赤外光トポグラフィー NIRS-OT: Near Infra-Red Spectroscopic Optical Topography

• 頭皮上から光ファイバを通して照射される近赤外光を使って、大脳の表面付近の血液量の変化を計測し、それを２次元的なマップに表わす。被験者がはある程度動くことができ，装置などに閉じ込められず，騒音もない環境で記録ができる。
• 780nmと830nmの波長を使い分けて解析する．(等吸収点は800nm近傍にある)．
• 計測と演算処理にかかる時間は０.1秒程度でできるので、リアルタイムの連続測定が可能である。
• 頭皮上から深さ2〜3cmの部を通過した近赤外光のヘモグロビンによる吸収を利用して大脳表面付近の血液量の変化を測定する。
• 近赤外線が脳を通り抜けるときに、赤血球のなかの酸化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンがそれぞれ吸収する光の波長がことなることを利用する。脳のある部位が活動をすると､それに伴って、その部位に酸素を送る為の血液量が増大する。この血液中のヘモグロビンによる近赤外光の散乱を利用して、酸素化および還元ヘモグロビン、またこれらの合計である、総ヘモグロビンの変化を求めることによって、大脳皮質の血液量の変化を観察する。
• 時間分解能がきわめて良いこと。時間分解能＝数10msec、空間分解能＝8mm以上

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• 2009年4月に「光トポグラフィーを使ったうつ症状の鑑別診断補助」が精神医療分野で初めて承認された。　参考1

●Single Photon Emission Computed Tomography：SPECT

• シンチグラフィの断層撮影で、異常に薬剤が集まっている部位をより詳しく見ることができる。

  シンチグラフィ　scintigraphy　←→骨シンチグラフィ 放射性同位元素で標識された薬剤を体内に投与後、放出される放射線を画像化することによって薬剤の分布を調べる検査。薬剤の種類によってどの臓器に分布し、どの様な機能を反映するかが決まり、検査の種類が異なる。 99mTc-HMDPや99mTc-MDPは骨代謝が盛んな部位に集まる性質を持っているため、骨転移の検索に用いられる。 シンチグラフィは単に「シンチ」と略して呼ばれることが多く、RI検査や核医学検査はやや範囲の広い呼び方である。 単純X線写真やCTなどは体の構造を調べる検査（形態診断）であるが、シンチグラフィでは体の機能や病気の活動性などを調べることができる（質的診断）。

  
  

  ドパミントランスポーターシンチグラフィーイメージング　Dopamine transporter scintigraphy Imaging：DAT-Imaging パーキンソン症候群や、レビー小体型認知症を診断するためのドパミントランスポーター（DAT）シンチグラフィ 線条体におけるDAT分布密度を反映するSPECT画像 パーキンソン病を含むパーキンソン症候群やレビー小体型認知症は、黒質線条体ドパミン神経細胞が変性する運動失調疾患であり、その神経終末に存在するDAT密度が低下している。 N-ω-フルオロプロピル-2β-カルボメトキシ-3β-（4-123I-ヨードフェニル）ノルトロパン（123I-イオフルパン：123I-FP-CIT：イオフルパン（放射線を出す検査薬）（Ioflupane　商品名DAT Scan） イオフルパン：線条体ドパミンニューロンのシナプスにおけるDATに高い親和性を示す123I-(1R)-2β-カルボメトキシ-3β-（4-ヨードフェニル）トロパン(123I-β-CIT)の改良により、短時間で高画質の画像が得られるように開発されたSPECT検査診断用放射性医薬品 日本核医学会は「イオフルパン診療ガイドライン」を出している。* イオフルパンを静注することにより、パーキンソン症候群の早期診断や、レビー小体型認知症をアルツハイマー病から鑑別診断することができる。

  
  

  脳血流シンチグラフィー　Brain perfusion scintigraphy　（99mTc-ECD／123I-IMP） Brain perfusion imaging techniques、Brain perfusion SPECT 脳の血流を評価する検査 脳血流の異常を検出することで、脳血管障害の病態評価、認知症や変性疾患の鑑別診断、てんかん焦点の検出などに役立つ。 99mTc-ECD／123I-IMPの2種類の薬を使用する。 99mTechnetium-ethyl-cryteinate dimer：99mTc-ECD 99mTcの放射活性の半減期が約6時間であることから、静注後ある程度の時間がたってから撮影しても静注時の血流を判定した画像を得ることが可能である。 テクネチウム99m　Technetium-99m：99mTc テクネチウムは原子番号43の元素。マンガン族元素の1つで、遷移元素である。 テクネチウムの同位体であるテクネチウム99の準安定核異性体 テクネチウム99mは放射性トレーサーとして使用され、ガンマカメラによって体内から検出することができる。 テクネチウム99mは光子エネルギー141keVの検出可能なガンマ線を放出し、この8.8pmの光子は、従来のX線診断装置が放出するのとほぼ同じ波長である。ガンマ線放出の半減期が6.0058時間、つまり24時間で93.7%が99Tcに崩壊することから、この役割に適している。 同位体の物理的半減期が比較的「短く」、生物学的半減期が1日であることから、迅速にデータを収集しつつ、患者の総被曝量を低く抑える事が出来る造影方法が可能となる。 N-isopropyl-123I-p-iodoamphetamine：123I-IMP ヨウ素123　半減期：13.27時 IMPは静注後脳内分布が決定するまでに約10 分を要し、その後も脳内分布が変化するため、発作時SPECT には使用されない。 検査時間は30分～1時間程度

  Subtraction Ictal SPECT CO-registered to MRI：SISCOM　参考1 MRIとSPECTの融合を行い、かつ2回のSPECT間で変化した脳血流量の絶対値の変化率を、被検者のMRI上に登録する。 てんかん発作時と発作間欠期にそれぞれ脳血流シンチグラフィー（99mTc-ECD）を行い、その差分をMRI画像に重ねる方法 SISCOMはてんかん発作時における血流増加量をZ-score（cut off=2.0）で表示し、てんかん焦点の同定に有益な解析方法である。 SISCOMに用いる画像データはfiltered back projection（FBP）法で再構成をしている。他に画像再構成の方法として、コリメータ開口補正を組み込んだ逐次近似法であるthree dimensional ordered subsets expectation maximization（3D-OSEM）法がある。3D-OSEM法はFBP法と比較し、空間分解能とsignal-noise ratio（SNR）が優れている。このことから脳血流シンチグラフィーを3D-OSEM法で画像再構成をし、SISCOMを行うことで解析結果が向上することが期待できる。てんかん発作時と発作間欠期における脳血流シンチグラフィーをFBP法と3D-OSEM法それぞれの画像再構成データを用いてSISCOMを行い、解析結果を比較、検討することを目的とする。

●磁気共鳴スペクトロスコピー
　Magnetic Resonance Spectroscopy：MRS

• MRSは従来のMRI（MRを使った画像化法）やCT等の器質的画像とは異なり、生体内における代謝産物を非侵襲的に測定し、解析するMR 装置で行う技術。
• 様々な物理化学現象 (水分子密度、緩和現象、分子拡散など) が間接的に画像強度として現れる。
• PETと同じように放射性薬剤を体に投与して、その分布の断層像として撮影する核医学検査であり、Tc-99mやGa-68などで標識された物質を体内に投与する。
• MRS は測定対象中の決められた位置のNMRスペクトルを取得し、局所的な分子情報を得る。
• 局所スペクトル法は大きく分けて二つの手法がある。

  ボクセル voxcel内のNMRスペクトルを得る方法 その代表は、プレス法 （point resolved spectroscopy：PRESS）とスティーム法 （stimulated echo scquisition mode：STEAM）

  化学シフトイメージング法 (Chemical ShiftImaging）：CSI 　←→ケミカルシフト　参考1 MRIで用いられている位相エンコード法を導入し、あるスライス面や体積を分割した各ボクセルに対応するNMRスペクトルを同時に取得する。 一般的なMR画像は、水の信号が用いられているが、水以外の1Hの化合物、あるいは1H以外の31P、13C、19Fなどの核種の化合物の画像を構築することができる。 phase encodingを用いて2次元、あるいは3次元空間内のマルチボクセル に対応するNMRスペクトルを得ると、化合物ごとに特有のケミカルシフトを有する信号として区別して検出されるので、化合物に固有の画像を構築することができる。 31P-CSIを利用すれば、クレアチンリン酸、ATP、無機リン酸などの化合物の含量やその比率を表わす画像、無機リン酸のケミカルシフトから得られる細胞内のpHを表わす画像などを構築することができる。

○プロトンMRスペクトロスコピー：プロトンMRS、1H-MRS

• プロトンMRSは、1.5T（3T）の臨床用高磁場装置を使用し、1H，31Pをプローブとして、生体内の生化学物質や代謝物質を測定する検査法。
• 脳のプロトンMRSは腫瘍、梗塞、アルツハイマー病の診断などにおいて、そのスペクトルのピーク信号が病理状態を示す有益な指標として用いられている。
• 脳から得られるMR信号には水のプロトン由来と水以外のプロトン由来の信号がある。アミノ酸などの代謝産物由来の信号は水の10000分の1程度であり画像化は困難である。
• 生体内代謝物の炭素原子に結合したプロトン原子が固有の周波数を持っている。
• 代謝物を構成するプロトン原子からの信号を周波数解析し、ケミカルシフトを基準に代謝物の濃度を測定する。
• 目的とするプロトンのケミカルシフトが異なることを利用し、MRSの結果は横軸を周波数、縦軸を信号強度にとったMRスペクトルとして展開すると、物質は共鳴線の周波数（ケミカルシフト）から同定される。
• すべての代謝産物を測れる訳ではなく、乳酸・脂肪を含めてもせいぜい5つのピーク信号しか評価できないが、細胞の代謝活動を調べることが可能なので、「MRIやCTの画像に現れない変化を捉えることができる。
• 以前は、シングルボクセルによる方法により脳のそれぞれの必要な場所に対して数回の測定が必要であったが、マルチボクセルによる脳の広範囲の部分のスペクトル及び、ケミカルシフトイメージ（ＣＳＩ）の撮像が可能になった。
  
  
• 脳のプロトンMRSでは、水に近いところから、コリン（Cho）、クレアチン（Cr）、NAAの大きな３つのピークが明瞭に認められ、このほかにはミオイノシトール，グルタミン酸，グルコース，GABA，ラク酸などの小さな山がある。*
• プロトンMRSで解析できる代表的な物質

  Choline containing compound（コリン）：Cho 細胞膜代謝に関係するリン脂質の材料 細胞膜代謝の亢進や破壊と相関

  Creatine（クレアチン）：Cr　 クレアチンとリン酸化クレアチンの総量 神経細胞・グリア細胞の密度に相関

  Myoinositol（ミオイノシトール）：Myo グリア増生のマーカーであり、細胞内カルシウムの調節を担うセカンドメッセンジャーである。 細胞内の浸透圧保持に利用されていると考えられている。

  乳酸 嫌気性代謝の際に生成される産物、嫌気性代謝の亢進により増加すると考えられる。

  Glx グルタミン酸とグルタミンの総量

  →NAA（Nｰアセチルアスパラギン酸） 神経細胞内に局在 正常神経細胞の密度に相関

  GABA 3.0T（テスラ）以上の高磁場となると、さらに抑制系神経伝達物質とされている、GABAを特に評価することも可能である。 GABA編集法(MEGA-PRESS)

  
  　

  N-アセチルアスパラギン酸 N-asetyl-aspartate：NAA　←→アスパラギン酸/NAAG/ASPA 正常に機能している神経細胞のマーカー：NAAの増減を解析する。 NAAは中枢神経系におけるもっとも豊富な分子である。 NAAはアスパラギン酸とは違い、神経伝達物質ではない。 しかし、神経細胞内でNAAとグルタミン酸が結合して合成される、N-アセチル-アスパルチル-グルタメート：NAAG（mGluR3の作動物質）は神経伝達物質として働く。 逆に、NAAGがglutamate carboxypeptidase IIによって分解されると、グルタミン酸とNAAとなる。 NAAの合成と酸素消費やATP合成と相関がみられるので、NAAの合成は神経細胞のミトコンドリア代謝のマーカーと言える。 NAA は神経細胞のミトコンドリア内でl-aspartate と acetyl coenzyme Aを基質として l-aspartate N-acetyltransferase の作用によって合成される。 NAAは NAAトランスポーターによってミトコンドリアの外部に輸送され、神経細胞からオリゴデンドロサイトの軸索結合部でミエリン鞘の原形質膜内部へ放出または輸送される。 NAA はオリゴデンドロサイト内でaspartoacylase（アスパラギン酸サイクラーゼ：ASPA）によって酢酸に代謝され、酢酸はacetyl CoA synthetase Iによって acetyl CoAに変換され、ミエリン脂質合成の前駆体として働く。 オリゴデンドロサイト内のASPA および acetyl CoA synthetase I はミエリン（特にgalactocerebrosides、sulfatides、 cholesterol.）の合成に重要な役割を担う。 NAA は神経細胞およびグリア細胞の恒常性維持に関与していることが明らかにされている。 アスパルトアシラーゼ（aspartoacylase）：ASPA=NAAの加水分解酵素 NAA は制御された状態下に神経細胞から放出され、浸透圧を制御して水の分布を調節し、アストロサイトに取り込まれ、全身循環されることで中枢神経系での窒素の担体として機能している。 NAAは神経細胞内のミトコンドリアの酸化的リン酸化に関与する細胞内マーカーであり、ミエリン合成に重要な役割を担うので、神経およびシナプス密度の間接的測定に使用される。 NAAの代謝回転は遅いので、NAAの低下は可逆性の神経機能低下や細胞数の減少を反映すると考えられている。 通常のMRIでは白質におけるNAAの低下を感知することができないが、MRSでこれらの変化を感知できる。 MRSによって測定される局所NAAの低下は、外傷性脳損傷、脳卒中、てんかん、多発性硬化症、腫瘍などの占拠病変、HIV脳症、アルツハイマーなどの認知症疾患などの神経疾患において、神経細胞や軸索の減少を示すマーカーとして認知されている。 可逆性の脳虚血がおこる脳卒中後には灰白質におけるNAA濃度の回復がおこる。 NAA/クレアチニン比率の低下は、側頭葉てんかん患者の患側だけでなく健側においても生じるが、てんかんの焦点部位を切除すると健側の値は正常化する。 福井弥己郎先生による慢性疼痛の病態を評価した。前頭前野や前帯状回が萎縮し、視床の神経機能が低下している。視床については、VAS値とNAA値が逆相関している。

  
  
  

●脳波 Electroencephalogram：EEG　→BIS/終夜睡眠ポリグラフ/LFP　参考ー1/2/3/4

→睡眠脳波　→睡眠薬による脳波　→麻酔中の脳波　→記憶と脳波


• ヒト・動物の脳から生じる電気活動を、頭皮上、蝶形骨底、鼓膜、脳表、脳深部などに置いた電極で記録し観察する方法である。
• 医療での臨床検査として、また医学、生理学、心理学、工学領域での研究方法として用いられる。
• 個々の神経細胞の発火を観察する単一細胞電極とは異なり、電極近傍あるいは遠隔部の神経細胞集団の電気活動の総和を観察する（少数の例外を除く）。
• 脳波は大脳皮質のたくさんのニューロンにある、さらに膨大な数のシナプス結合での電位（シナプス後電位）の集合と考えられている。
• 大脳皮質の活性度が低下した時にはある程度の同期性がみられ、その代表的な状態が睡眠時の脳波である。

  1875年	Richard Caton（P 1842〜1926, Liverpoolの生理学者）が初めての脳波の記録した。露出したウサギの大脳皮質表面に２本の電極を置き、その間につないだ電流計に電気が流れるのを観察しました。
  1924年 1929年	Hans Berger（P 1873〜1941, イエナ大学精神科教授）が初めてヒトの脳波を記録した。1929年に論文として発表したが、その当時はあまり注目されなかった。
  1932年	Jan Friedrich Tonniesがペン書きの脳波計を開発した。
  1933年	Edgar Douglas Adrian（P 1889〜1977）が1933年に追試し、ベルガーの脳波記録をBerger Rhythmとして紹介した。1年後にやっと脳波学会からも注目された。
  1936年	松平正壽先生（東北帝国大学教授）が実験用の脳波計を製作した。その後1943年までに北海道大学、東京大学で製作された。
  1937年	Alfred Loomis, E. Newton Harvey, and Garret Hobartらがヒトの覚醒から睡眠までの脳波を記載した。---ステージI〜V
  1942年	文部省の脳波研究班が1943年に組織され、名古屋大学の勝沼（「脳波」という呼び方を提案）、東北大学の本川らによって 臨床用の脳波計について討議された。1950年の「脳波班インク記録装置に関する協議会」で定められた規格を基に東京大学生産技術研究所の糸川らにより試作された。この時期、臨床用の脳波計開発には東京大学生産技術研究所(糸川)、東京大学脳研(島薗)、東京大学第一工学部(阪本)が独自に取り組んでいた。
  1951年	東京大学工学部阪本研究室の指導を受け、三星電機（後に三栄測器と改名）が「木製号」を商品化した。

  
  

  δ波	徐 波	1〜3Hz	熟眠状態（ノンレム睡眠ステージIII ）
  θ波		4〜7Hz	うたたねしたり、ぼんやりしているとき、浅い眠り、催眠状態
  α波		8〜13Hz	閉眼、安静、覚醒した状態でより多くみられる。
  β波↓	速 波	14〜30Hz	起きている時の日常生活状態
  γ波↓		30〜64 (90)Hz	興奮状態、記憶と脳波↓
  ω波		64〜128Hz
  ρ波		128〜512Hz
  σ波		512〜1024Hz

  
  

  徐波 slow wave　←→徐波睡眠 α波より周波数が低いという意味で、δ波とθ波に分けられる。 両者とも覚醒状態にある正常成人の安静閉眼時には、ほとんど出現しない。 徐波は生理的には、幼小児の脳波、睡眠時の脳波にみられ、病的状態としては、てんかん、脳腫瘍、脳血管障害、などの器質脳疾患、意識障害、低酸素状態、低血糖状態など種々の脳機能障害の際出現する。 δ波の発生源は視床起源（thalamocortical neuron）と新皮質起源の2種類ある。

  速波 fast wave α波よりも周波数が早い波を総括したもの。 速波は徐波とは異なり正常脳波にもα波とともに出現するが、振幅が小さいのが普通であり（10〜20uV）、振幅が50uV以上と大きい場合には異常とみなされる。 速波は正常成人の覚醒時に見られるほか入眠時、薬物使用時にもみられる。 病的な場合としては、精神遅滞、頭部外傷、脳手術後などに見られる。

  棘波と鋭波　←→PGO波 α波、徐波、速波は波形がおよそ正弦波形であるから主に周波数によって分類される。しかし波形が正弦波形でない波の場合には、周波数だけではその波を記載できない。 棘波と鋭波とは、波形が他の部分に比べてきわだって尖鋭あるという特徴で分類されたもので、背景脳波とは区別される。 棘波（きょくは） spike 持続が20〜70msの波 棘波は過同期性発火を表す。てんかん患者の場合には、棘波成分は最も特異的な所見で、その出現部位がてんかん原損傷部位に近いことを示す。 鋭波 sharp wave 70〜200msの波 鋭波はノンレム睡眠中および安静時に観察される脳波で，波形が正弦波形でなく際立って先鋭であるという特徴をもつ。特にラットの海馬では数十〜数百ms持続し、同期的な興奮性シナプス入力を反映したものと考えられている。 鋭波は棘波同様にその出現部位がてんかん原焦点に近いことを示すが、持続時間が棘波より長いことから、比較的広いてんかん原損傷部位の存在を表すか、他の部位にある原発焦点から伝播した電位を示す。

  瘤波 hump, vertex sharp wave 睡眠ステージIの後期〜ステージIIの初期にかけて出現する波。 2〜3相の高振幅の波が、両側中心・頭頂部優位に著明に現れる。

  紡錘波 spindle 14Hz前後。14Hz前後のものは頭頂部が中心で、12Hzのものは前頭部が中心。 12~15Hz（ヒト）、 7~14 Hz（ネコ）、 ~14 Hz（ラット） 睡眠ステージII（ノンレム睡眠）に出現する波。 発生源はthalamic reticular (RE) neuronがペースメーカー。ただし、広域でのspindleの同期には、Neocortexが必要。 麻酔中にもよくみられる。 睡眠紡錘波の発生機序　←→1/2/3/4/5 視床皮質回路のオシレーション 睡眠によりマイネルト基底核が抑制されると、抑制性入力を受けていた視床網様核ニューロンが脱抑制する。　←→覚醒時のβ波の賦活 視床網様核ニューロンが興奮すると、長い脱分極に重畳して律動性のEPSP-IPSPが現れる。 視床網様核から抑制性入力を受けた視床神経ニューロンが GABAb 受容体による過分極応答からの回復時に再び発火し、オシレーションを引き起こす。過分極に、律動性のEPSP-IPSPが乗ってくる。 このリズムが大脳皮質の錐体細胞に伝わり、皮質が活動電位がオシレーションする。

  K-複合 K-complex 睡眠ステージII（ノンレム睡眠） 瘤波と紡錘波が結合してできた波形（瘤波が先行）。 音などの感覚刺激で誘発されたり、自発性に出現することもある。 Mircea Steriadeによる、slow wave (K-complex) ヒトのEEG記録では、slow oscillationはノンレム時に下向きの（この記録では下向きが＋らしい）大きな波として観察される。 睡眠ステージIIではslow waveに紡錘波が続くのが観察される（KC/spindle）。 睡眠ステージIII~IVではslow waveにdeltaが続くのが観察される（KC/delta）。 Slow oscillation：SO 1 Hz以下, generally 0.5~1 Hz 発生源：新皮質 視床を切除してもcortexでslow oscillationが残るが、皮質を切除すると、視床ではslow oscillationが消える。 （いわゆるUP-DOWN stateは基本的には麻酔のアーティファクトと考えられている、脳波的にはslow oscillationに対応する。）

  
  
  

  β波の賦活　→覚醒時のβ波の賦活 覚醒時閉眼状態はα波がメインであり、さらに覚醒レベルがあがるとβ波が出現する。 β波は覚醒状態以外に、入眠期には増強されて大きくなったり，低振幅のα波がメインであり、さらに覚醒レベルがあがるとθ波と交互に出現したりする。 β波の発生機序としては、以前はα波の律動性が外れることによる「脱同期化」ととらえられていたが、現在ではβ波のジェネレーターが存在することが明らかとなった。 睡眠紡錘波出現と逆の機序でβ波が賦活される。 大脳皮質や視床にジェネレーターが存在して、リズム形成が生じる。 覚醒によりマイネルト基底核と脳幹網様体が活性化すると、ここからの抑制性ニューロンが視床網様核ニューロンを抑制する。 視床網様核ニューロンが抑制されることによって、皮質投射ニューロンを脱抑制する。同時に脳幹網様体からの入力も皮質投射ニューロンを活性化する。 活性化された皮質投射ニューロンにfast prepotentialが生じる。活動電位を出した後の過分極時に律動性の電位を出し、ときには活動電位も発生する。 この皮質投射ニューロンの活性化を受けて、大脳皮質の錐体細胞も脱分極する。 マイネルト基底核から来ているACh作動性神経も錐体細胞を活性化し、この2つの入力により錐体細胞がβリズム形成する。

○てんかん発作時の脳波　←→てんかん

複雑部分発作　complex partial 左中側頭葉に焦点性〔限局性〕に棘波が出現する。 棘波とは、持続時間が20〜70msecの尖ったてんかん型〔てんかん発作〕波形です。

全般性強直間代発作 全般性棘徐波複合が出現する。 棘徐波複合とは、棘波のあとに高振幅のゆるやかな波〔デルタ波〕を呈するてんかん型波形

欠神発作 全般性３Hz棘徐波複合の出現が特徴的 ３Hz棘徐波複合とは、2.5〜3.5Hzの周期で、棘徐波複合が出現するてんかん型波形

○ベンゾジアゼピン系の睡眠導入薬による脳波 ←→睡眠

• ベンゾジアゼピン系の睡眠導入薬は、睡眠中枢に作用する。
• ベンゾジアゼピン系の睡眠導入薬によって誘発される脳波は、睡眠脳波からδ波領域の成分が減弱し、ベンゾジアゼピン速波と呼ばれる 15∼20 Hz にピークを持つ異常な脳波が観察される。
• ベンゾジアゼピン系の睡眠導入薬による睡眠のは、入眠後の覚醒は困難であり、薬物の過剰摂取は昏睡を引き起こす。従って、睡眠導入薬による睡眠は「軽度の昏睡」と表現できる。

○麻酔中の脳波 ←→全身麻酔/BIS

• 麻酔時は麻酔薬により深い意識消失状態にコントロールされているが、麻酔と睡眠とは異なるものである。
• 多くの麻酔薬では脳内麻酔薬濃度の上昇に伴い脳波は同期化され、低振幅速波から高振幅徐波への変化を示す。

○記憶と脳波　←→記憶/海馬　参考1

→シータバースト　→ガンマ波　→鋭波／リップル波　→紡錘波 spindle 波
• 低周波θ波は動物が新規環境で探索行動を行う時に海馬や嗅内皮質で6〜12Hzの顕著な定在波として出現し、γ波とθ波は位相的に密接に結合することが示されている。
• 乳頭体上核の神経活動は、海馬θ波と同期しているので、海馬θ波の発生源の可能性がある。
  
  

  シータバースト theta burst↑ 神経細胞において、3-15ミリ秒の間隔で立て続けに起こる活動電位をバーストといい、さらに約100ミリ秒の間隔をあけて立て続けにおこるバーストをシータバーストという。 脳切片を用いた電気生理学実験では、このシータバーストにならった電気刺激により、長期増強というシナプス可塑性を誘導できることが知られていた。 記憶エングラムは記憶獲得時にシータバーストを示す。

  ガンマ波　γ波↑ ガンマ波は海馬体－嗅内皮質を含むさまざまな脳領域で観察される周波数30〜90 Hzの脳波 γ波は約30〜100Hzの散発性の脳波パターンであり、主に動物が行動しているときに出現し、静止している際にはそのパワーは比較的低レベルである。 γ1：30-59Hz　γ2：60-90Hz 動物が間違いに気づく瞬間に、高周波γ波の同期が発生 高周波γ波の同期が主観的な意識に関わる可能性を示唆 高周波γ波は高次精神機能に関与しているとされるが、そのメカニズムは明らかではない。 空間記憶におけるγ波　参考 ラット海馬CA1領域において、異なる周波数のガンマ帯域局所脳波が海馬CA3と嗅内皮質それぞれからの入力に伴って発生することが報告され、これらγ波の活動はラットの行動状態や学習の進度に依存して変化することが示された。 海馬CA3の活動は連想記憶、嗅内皮質の活動は高次感覚情報との関連が示唆されていて、海馬-嗅内皮質回路の入出力関係やその機能的役割の研究が行われてきている。また、海馬で顕著に観測されるθ波とγ波とのカップリング（cross-frequency coupling）が報告されていて、脳内情報伝達の神経基盤の一つとして提案されている。　参考1 海馬体－嗅内皮質間で、高周波γ波が同期することが、空間的なワーキングメモリーを正しく読み出し、実行するために重要な役割を果たしている。　　参考1 動物が新奇の環境を探索するときには遅いガンマ波が一時的に増強し，このガンマ波へのCA1領域の錐体細胞の位相固定が強まる。 ニューロンの活動パターンはガンマ波の影響を受け、しばしばガンマ波の特定の位相で発火するようタイミングが固定される。この現象を位相固定という。 ニューロンが集団で特定のガンマ波に位相固定すると、ミリ秒の精度で同期した発火となりシナプス後細胞に活動が伝達されやすい。そのためガンマ波への位相固定は領域間の効率的な情報伝達に貢献すると考えられている。 海馬体-嗅内皮質では、遅いガンマ波と速いガンマ波の2種類の周波数帯のガンマ波が観察される。 CA3野→CA1野経路：遅いガンマ波 slow gamma 嗅内皮質→CA1野経路：速いガンマ波 fast gamma 遅いガンマ波と速いガンマ波が、それぞれ同期して生じ、CA1野にはおのおののガンマ波に位相固定する場所細胞の存在する。 この2つの経路におけるガンマ波の同期性や位相固定の強さは行動に応じて変化する。そのため上流のCA3野および嗅内皮質はおのおののガンマ波の帯域の神経活動を介して、CA1野の場所細胞の活動をダイナミックに制御するものと考えられる。こうした知見から、ガンマ波への位相固定は場所細胞の活動パターンに密接に関連すると考えられた。しかし位相固定を制御する細胞機構や、位相固定と場所細胞の活動との具体的な関係は不明だった。 CA1の記憶エングラムにおいては、速いガンマイベントにおいてより多くの発火が起こっていて、数が多い場所細胞が速いガンマ波と位相固定されている。遅いガンマ波においては、記憶エングラムと場所細胞とでの違いは検出されない。＊ シナプス可塑性は、細胞レベルにおいては個々のニューロンの時間的あるいは空間的な発火パターンの形成に寄与するとともに、回路レベルにおいては、記憶形成時にCA3野→CA1野→嗅内皮質という経路の情報伝達を選択的に増強する役割をもつと考えられる。

  
  

  鋭波／リップル波　sharp wave/ripple：SWR　参考1/ リップル　ripple さざ波 木綿や化学繊維の布の表面にさざ波状の凹凸をつけた織物の一種 （Ripple）仮想通貨XRPを用いた即時決済システム。独自のシステムを用いており、ビットコインに比べて決済が短時間で行える。従来の通貨との取引も可能 ノンレム睡眠時や静止覚醒時に海馬でよく観察されるオシレーションパターン、局所場電位（local field potential：LFP、脳波） György Buzsáki（1949/11/24〜　ハンガリー→ニューヨクの神経科学者） のラボで報告された。 海馬に一時的に保管された記憶が、大脳新皮質に送られる時の情報媒体 脳波がブルブルっと震える感じに見えるので、リップル波と呼ばれる。 SWRは振幅の大きい局所電場電位におけるsharp wavesとリップルと呼ばれる速いフィールドオシレーションで構成される。 150〜250 Hz ripple oscillations：周波数が5〜20Hzほどの鋭波に、約100〜250Hzのリップル波が重なってあらわれる。 リップル活動は海馬CA1やCA3領域の錐体細胞層において鋭波発生中に観測される100〜200Hzの高周波振動で、CA3領域の錐体細胞の同期発火による集合スパイクを反映したものと考えられている。 出力はCA1である。 海馬の神経細胞集団の同期活動である。リップル波は記憶の固定や行動の予測に必要と考えられていて、リップル波の活動が消失すると、行動課題が正確に実行できなくなる。正常ラットでは、海馬CA3野においてリップル波が検出されるが、歯状回を破壊するとリップル波の活動が減少する。 課題遂行中のラットの海馬で、神経細胞の同期活動を反映した特徴的な脳波。この活動は歯状回からの神経入力に依存する。正常ラットでは、リップル波に含まれる場所細胞の発火は、訪れるべき報酬位置に対応して次々と変化する。　参考1/2 学習の直後の睡眠においてリップル波を観察すると、その頻度が一過的に上昇することが知られている。 記憶の再生時にもリップル波は見られる。課題遂行のマウスが睡眠中に、迷路を解くのに使っていた神経細胞がリップル波を出している。 SWRの発生時に直前の記憶に関与したニューロンがリプレイされることは記憶の固定化に重要な役割を果たしていると考えられている。 海馬においてリップル波は神経回路をクールダウンする　参考 　リップル波が海馬において長期抑圧をひき起こすが、その長期抑圧は直前の新奇経験に関与したニューロンには影響しない。リップル波が不要なシナプスの結合強度を弱めることにより必要なシナプスのコントラストを強め、その結果，海馬において長期増強が飽和することを防いでいる。 CA3ニューロンの終末に対する急性サイレンシングは劇的に多くのCA1ニューロンの場所受容野の反応を減少させるが、影響を受けないニューロンや、反応を増加させるニューロンもある。　→SWR/アーキロドプシン3/CaMK　参考

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●事象関連電位 event related potential：ERP

• ERPは、認知活動に伴って大脳皮質で発生する活動電位
• 光、音などの外来からの刺激や運動動作に関連した脳電気活動の変化。
• ERPはきわめて小さい変化であり、背景脳波に隠れている。反応を平均加算して、解析することができる。

  P300 後期陽性電位：頂点潜時約300 msecで発生する陽性(Positive)電位、十数μV。 1965年にSamuel Suttonらによって報告された。 　まず手がかり刺激を与え、被検者に次に来る刺激が何であるかを予想して報告させた後、2種類の第2刺激を提示し、実際に提示した刺激と被検者の予想していた刺激とが同じ場合とそうでないときの電位を比較した。そうすると第2刺激として何が来るかが被検者に知らされている場合に比べ、何が提示されるかを知らなかった場合に潜時300msecの陽性電位が大きく出現することが確認された。すなわち、標的刺激と非標的刺激を弁別されることによって潜時刺激と非標的刺激を弁別されることによって潜時約300msecの陽性電位が大きく出現することが観察された。 P300は、頻繁に出現する刺激と希に出現する刺激を選別し、希に出てくる刺激を認知した後、約300 msecで頭頂部から記録される。 P300は被験者が提示された標的刺激に注意を集中すると出現し、注意をそらせると出現しなくなる。 内因性の誘発脳波：外部刺激に直接呼応するものではなく、刺激受容の後の脳内精神活動によるもので、主に知覚・認知処理活動を反映する誘発脳波として注目を集めてきた。 その波形の振幅からは注意・集中力を、潜時からは認識、判断 力を検討する指標と考えられている。 1980年代くらいからP300はまず医療現場で、認知症の診断に使われるようになった。 脳指紋法 brain fingerprinting アメリカではP30を犯罪捜査に利用され始めた。 Lawrence Farwell（アイオワ州の神経化学者）によって開発され、彼自身の設立した会社 Brain Fingerprinting Laboratories)よって商業化されている。 Farwellはこのテスト法を、MERMER ("Memory and Encoding Related Multifaceted Electroencephalographic Response") と呼んでいる。 被験者に写真や質問を提示し、その際の脳波を検出する。もし被験者が写真や質問の中身を見聞きしたことがあれば、P300が検出される。 捜査側と真犯人しか知りえない情報を容疑者に情報を提示して、P300脳波が出現すれば、容疑者は犯罪に関わっている可能性があるという。 ポリグラフとは違い、自分でコントロールすることはできないとされたが、そうではないという報告もある。 1998年Farwellは脳指紋法による証拠をミズーリ州警察に提供して15年前の婦女暴行殺人犯の起訴につながる。2000年ティモシー・オグレイディ判事はテリー・ハリントンの再審請求審で「脳指紋法」を証拠として採用することを認めた。「ドーバート基準」

  
  
  

  ポリグラフ polygraph　←→ 終夜睡眠ポリグラフ検査　参考1 ポリグラフィ：呼吸、脈拍、血圧、精神性発汗など複数の生理現象を、電気的または物理的なシグナルとして同時に計測・記録する装置。 Cesare Lombroso （1836〜1909/10/19日, イタリアの精神科医、犯罪人類学の創始者、Golgiの師匠）が1902年に、人が嘘をつくと血圧や脈拍が変化することを発見し、その原理を応用したプレチスモグラフ plethysmograph（---全身、器官、体の一部分の体積変化を測定する装置、ポリグラフの原型）を犯罪捜査に使用した。* 1921年にJohn Augustus LarsenとLeonard Keelerが嘘発見器としてポリグラフを発明した。 1947年4月22日に日本の警視庁がアメリカ製のポリグラフを初試験した。 嘘をついていなくても、緊張状態では通常以上の反応を示すことがある。 意図的に緊張状態を作らない訓練をすれば、ポリグラフで嘘が嘘として検出されないこともある。 P300では偽証が困難。

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●マイクロニューログラフィー（微小神経電図） microneurography

• 無麻酔で経皮的にヒトの末梢神経にタングステン微小電極を刺入し、目的とする神経の活動を記録する手技

  1960年代 後半

  Karl-Erik Hagbarth（1926〜2005/5/17　スウェーデン）とÅke Valboがマイクロニューログラフィーを開発した。

  
  
• 先端直径は約1μmであるが、神経束内で条件が良ければ、直径10μm前後の有髄神経1本の活動電位が記録できる。さらに困難であるが、直径10μm程度の無髄神経の活動も単一に記録できる場合がある。
  
  
• ランヴィエの絞輪で発生する神経の活動電位は小さいのでmicroneurographyなどのような特殊な電極でしか記録できない。神経伝導速度検査の記録電極からの距離が遠くなると急激に電位は小さくなるため、電気刺激によって同期された複合活動電位（SNAP/CNAP）でしか記録できない。

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