Changing high impact journal

2017年はproductivity の高い年を過ごしました。この文章の大部分を書いているのは2017年秋ですが、この記事を公開できるのはAnnals of Internal Medicine誌およびJAMA oncology誌でarticleが出版され公開された後にしましたので、もう2018年の冬です。2017年1年でCirculation のリサーチレター、Bone Marrow Transplant, Ann Int Med のレターそしてJAMA oncologyの短報が受理・出版されました。C誌、A誌、J誌でそれぞれ驚いた点があります。


Circulation: この雑誌に掲載された私の論文はVEGFシグナル系の阻害薬についての論文でした。投稿から受理まで、編集部・レビューワーとやり取りしてる間、一貫してVEGF阻害薬という表現でコミュニケーションしていました。解析したのはVEGFつまりリガンド側を阻害するものと、その受容体側を阻害するものがありました。これらをひっくるめて受容体の活性化を阻害するものという事で、広義ではVEGF阻害薬とまとめて表現しても間違っているわけではありません。その表現で一応専門家によるレビューも通っているのでアクセプトした状態から、その表現を変えるようにリクエストが来ることは通常はありません。ですが、今回はいざ出版という、ガリプルーフをもらうタイミングで「(狭義で)VEGF阻害といえば、リガンドの阻害薬であって、受容体の阻害薬を含める表現ではない」というような横やりが入り、出版直前で論文のタイトルの修正を依頼されました。一旦受理されていますので、出版部の方は低姿勢で依頼してきました。もちろん快く引き受けて、タイトルから本文、何か所も修正しました。ちゃんと全部修正ができているか念のため確認したりするのに神経と時間を使いました。

欧米の出版社とかは、業務をやっつけ仕事としてやっている人が多いだろうと思っていたので、出版物のクオリティを高めるけど出版スケジュールに悪影響が出かねない今回の様な対応をとったことは驚きでした。


Ann Int Med: この雑誌は、レターの投稿方法が一風変わっています。あたかもFacebookや一般のblogにコメントするような形で投稿します。ホームページ上で掲載された多くの研究論文には、下の方にコメント欄があって、そこに入力すれば投稿することになります。簡単な審査はあるようですが、スパムのようなものでなければ、投稿したコメントはしばらくしたら、ホームページ上で公開され、インターネットを介して誰でも見れるようになります。ただし、ホームページで公開されたコメントがすべて雑誌に掲載されるわけではありません。ホームページで公開されますと、一般の読者や元の研究論文の著者らの目に触れ、そうした人たちがコメントに対してさらにコメントしたりします。こういった、世の中の反応を見て編集者が雑誌に掲載するコメントを選びます。おそらく、盛り上がったやり取りがなされていたら、それはつまり、世の研究者らの関心が高い話題についての議論だということでしょう。ホームページにコメントを公開することで、世の中の注目度を観察して、それを参考に編集者は選んでいるのです。インターネットでの記事の公開と、紙面での雑誌の編集が双方向に作用しているのです。

一方で、この手軽さが問題を引き起こしました。通常の雑誌の記事の投稿であれば、投稿時に共著者の情報も正確に提出することが求められます。しかし、今回はとりあえずコメントと、筆頭著者の連絡先だけが求められていました。ですので、accept のレターには、共著者のメールアドレスを教えてほしい、という内容が書かれていました。ここで、大変な粗相をしてしまいました。じつは別のコメントについてacceptのレターが来たのと勘違いして、別の共著者にCOIのフォームやcopyright transferの確認をしてしまったのです。この時連絡を取ったみなさん、Ann Int Medにお名前が掲載されるとして喜ばれたはずです。「間違っていました、別の共著者と投稿した奴」でしたと説明するのが本当に気まずかったです。


JAMA oncology: こちらの編集の方にも驚かされました。投稿して2-3週間ほど経過したときにdecision letterが来ました。1週間ほどで来る連絡は通常忘門前払いです。編集者がざっと見てレビューワーにも回さずに返却します。2-3週間も速い方です。このタイミングで来る返信も経験的にはrejectが少なくありません。レビューワーがあまり深く読み込まずに、「この雑誌には向いていない」とか言って返します。でも今回は忘れもしません。健康診断を受けるために近くの医療センターで検査を待っているときにメールが届きました。健康診断の検査を受け、その待ち時間に何度もメールを読み返しました。それとほぼ同時にCOIのフォームやcopyright transferのレターが共著者の方にも送られていました。そして、内容はと言うとレビューワー二人がそろって興味を示してくださっていました。
・ This article should be prioritized for publication. (reviewer#1)
・ The conclusions are important to disseminate to practitioners quickly. (reviewer#2)
ところが、このprioritize, quicklyは若干曲者で、再解析が必要な内容を含め2-3週間で回答するようにという内容でした。通常であれば、2-3か月の間にリバイスするように要求されるのですが、異例の短さです。幸い、初回の投稿前に検討したようなデータでしたので、実際には再解析することなく、以前検討したデータを探してテーブルにまとめる程度で対応できました。

さらに、奇妙な指摘は続きます。「FDAのデータを使用したということだが、FDA内部でこの件は検討されているのか?」そう言われても、FDAを辞めたのは20年前だし、知り合いがいないわけではないが内部の事を聴けるような間柄ではないし。「公式の公開文書を見る限り、FDAが検討した形跡はない」としか答えられません。

異例なことは次のリバイスでも起きます。reviewer#2がなぜかご自身の名前を明かしたうえで、リバイスをリクエストしてきました。そんなに難しいことではなかったのですが10日ほどで対応しろと、その、スケジュール感が若干つらかったです。幸い、その週は会社の仕事がそこまで厳しくなかったので、平日も帰って夜にも集計をする気力が残っていました。

無事アクセプトされ、ガリプルーフが来ると驚いたことに、タイトルを修正され、アブストラクトの項目を結合して文章をまとめ、テーブルのタイトルを修正し、とかなりジャーナルのスタイルを優先した形での変更がなされていました。数値が多いのでQC箇所が多数です。テーブルも体裁が修正されたので一通り数値をチェックです。数か所コメントと修正依頼を書いて、それでアップルーブしました。アップルーブ後に共著者から、修正した個所に文法的な間違いが発生していることを指摘されましたが、データやデータの解釈等論文の主旨にかかるものではないエラーであるため、アップルーブ後の修正を求めないことにしました。

最後に、もう一点、JAMA oncologyは初回のレビューが終わった時点でtwitterでつぶやく言葉を一緒に述べるようにとリクエストしてきました。そう。出版社がつぶやく記事の宣伝のためにtwitter用の言葉も一緒に提出させるのです。このJAMAのtwitterやAnn Int Medのレターを見ますと、新しい技術・仕組みを取り入れて出版社も生き残りにチャレンジしているのです。また、Circulationの件のようにリスクを冒しても質を高めるようなこだわりの側面を見ました。これまで抱いていた欧米人のイメージを書き換えるような経験です。彼らチャレンジャーは旧態依然としたままでは、それぞれの世界で生き残れないのを知っているのでしょう。


2017年の年末に、東京大学医科学研究所の病院同窓会が開催されました。そこでの、研究所の所長の挨拶が印象に残っています。まず、第一声がマスメディアのカメラの前で頭を下げなければならないような事態が発生せず無事年を越せそうだ、として、職員に対して感謝の意を述べました。このくだり、言葉は違いますが同じ内容を病院長も延べられました。東京大学の研究所やその附属病院という、世間からの注目度も高い、そして、かなり大きな組織ですので、その組織の長をすることで神経をすり減らしていることが伝わってくるご挨拶です。

次に述べられたのが、研究所の歴史に絡んで、今後の生き残りについてのお話でした。東京大学医科学研究所は昨年開所125周年を迎えた記念行事を開催しましたが、開所当時は国民の健康に大きな影響を持っていたのは感染症でした。開所当時の伝染病研究所(現医科学研究所)が戦った標的は、感染症であり、感染性病原体でした。そしていまから50年前には、医科学研究所に改組され、遺伝子やゲノム研究に研究対象や手法がシフトしてゆきました。そして、現在医科研は研究対象を実社会で膨大に拡張してきている大規模データに舵を切ろうとしています。これもまた、生き残りをかけて新しい可能性にチャレンジしようとしているものだと思われます。

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