この度FACPにご昇格された先生方をご紹介させていただきます。(PRC委員 宮内隆政)
塩田 哲也 先生
(岡山市久米南町組合立国民健康保険福渡病院)
岡山県の中山間地域にある小規模国保病院の院長として赴任して、四半世紀近くが過ぎようとしています。フルタイムとしては院内に唯一の内科医として、内科全般の診療に従事することからスタートしましたが、当時、県内では決して多くはなかった内科専門医であることを誇りに感じ、可能な限り、安価で良質な医療を地域に提供できるよう心がけて参りました。自らの専門性や能力の及ばない分野は、非常勤の専門医を招聘して、診療の質の維持と、都市部へのアクセス手段に乏しい高齢者の利便性との両立を図りました。
その後、介護保険制度の導入をはじめとして、地域医療を取り巻く環境は大きく変化しました。勤務先の性質上、行政・保健・福祉などの他職種と連携し、診療に直結しない部分でも、地域に貢献できるよう努めましたが、院長業務や診療以外の雑務に時間を取られ、内外の論文に目を通すことも、つい疎かになってしまいました。 ACPに、そして、Publication Committeeに参加させていただいたのは、少しでも論文に接するきっかけにしたいという気持ちからでした。日常診療に追われる中での翻訳は、時に負担に感じることもありましたが、定期的に多彩な分野の論文を読み、また、各委員からの、単に翻訳だけではなく、内容にまで踏み込んだ生の意見も伺うことができ、とても有意義でした。毎年のように年次総会とCommitteeの打ち合わせ会に参加し、各委員と顔の見える関係が築けていたように思います。
ここ数年、昨今の医師不足の関係で、週末であっても、勤務先を留守にしづらいことが多くなり、年次総会参加の機会が限定的となっていました。それでも、ホームページやFacebookにアクセスすることで、日本支部の活動に接することができます。Facebookで送られてくるQuizは楽しみですし、一日に一度はDynaMed Plusを開いて、その日の診療を振り返るとともに、英文を読む機会を失わないよう、心がけています。今年、京都での年次総会に久しぶりに参加できましたが、ACPから与えられる内容の豊富さを改めて再認識いたしました。
ACP憲章に謳われるプロフェッショナリズムは、医師が高い水準の能力と誠実さを維持し、患者の利益に重きを置き、社会に対して専門的な助言を与えることが柱となります。その根底には、医師自身の誠実さとそれに対する公衆からの信頼がなければなりません。医師確保も含めて、過疎地の小規模自治体病院の経営が厳しくなった今日、自らに課した「安価で良質な医療の提供」が困難となりつつあるのではないかと不安に思うことがあります。自身のキャリアの中では、少し遅くなってしまいましたが、自らのプロフェッショナリズムをさらに高め、これまで以上に,内科医として地域に貢献できるよう、FACPを目指しました。サポートいただいたCredentials/Membership Committeeの先生方、Annals翻訳の時代からお世話になり、今回、ご推薦いただいた宇野久光先生、安藤聡一郎先生に、この場をお借りして、厚く御礼申し上げます。