この度FACPにご昇格された先生方をご紹介させていただきます。(PRC委員 宮内隆政)
佐藤 光博 先生 (長崎大学大学院 熱帯医学・グローバルヘルス研究科)
FACP昇格にあたり、寄稿の機会を頂戴しました。昇格に際し、ほとんど面識のない先輩FACPのお二人に突然メールで推薦人となることをお願いしたことも含め多くの先生方に協力を頂きました。感謝の気持ちをこめ、また昇格時期に所属先の変更も重なったためご挨拶させて頂く次第です。
平成30年9月をもってJCHO仙台病院(旧仙台社会保険病院)腎センター診療部長を辞し、10月に長崎大学大学院熱帯医学・グローバルヘルス研究科に入学しました。以後臨床医としてのキャリアは一旦中断し、学生として過ごしております。
JCHO仙台病院腎センターには20年以上勤務し、その間一貫して田熊淑男先生の指導を受けてきました。田熊先生は1985年のN Engl J Medに糖尿病性腎症におけるACE阻害剤の尿蛋白減少効果を世界に先駆けて報告したことで有名ですが、学会等の対外的な活動よりも目の前の患者さんを大切にするという姿勢が終始徹底された方でした。1人1人の患者さんに起こる現象を問題意識を持って丁寧に観察することが臨床医学の原点であり、その姿勢を支えるのは医師の情熱に他ならないと考えておられました。臨床的に多くのことを教えて頂いただけではなく、論文執筆や学会のガイドライン作成に携わる経験もさせて頂きました。
夢中で過ごしてきましたが、気がつけば多くの先輩方が次のステップ(開業)に向かった年齢に自分も達していました。同じように開業を考えないわけでも、まして臨床腎臓病学に対する興味が薄れた訳ではありませんでしたが、日々の臨床のなかで①感染症に対する知識が不足している。特にグローバル化に伴う輸入感染症や新興感染症など。②日本の透析医療はすばらしいが、高齢化や医療費の高騰を考えると世界的には特異な状況?といったことが気になっていました。慰留頂きましたが、入学選抜試験に合格したこと、家族の理解も得られたことから、思い切って仙台を離れることにしました。
同期入学者は30名ですが、半数以上が外国人で、その背景も医師は約3分の1のみで、獣医師、看護師、薬剤師、理学療法士、非医療系と多彩です。すべての講義・事務連絡は英語で行われ、留学を含め海外居住歴のない自分にはかなり大変です。私が所属している熱帯医学コースのコース長は、長崎大学熱帯医学研究所臨床感染症学分野教授の有吉紅也先生です。有吉先生は初期研修後単身日本を飛び出し、以後10年間英国とアフリカを行ったり来たりしながら臨床と研究に従事した方です。とても情熱的で、日本がもっと世界の保険医療に貢献するにはどうしたらよいかを常に考えていらっしゃいます。入学セレモニーでは学生に、情熱が何よりも大切で、日本よりはるかに難問を抱えた途上国の現場で活躍したいなら、さらに努力して勉強する気概を持って欲しいとメッセージを贈っていました。
修了後どのような形で臨床の現場に戻るかはまだ分かりませんが、今は目の前のことに集中するつもりです。将来AIが医師の仕事を奪うという話も聞かれますが、少なくとも二人の師の情熱にはかなうまいと思われ、少しでも近づくことができるよう決意を新たにしております。
微力ではありますがACP日本支部の発展に貢献できるよう努力させていただきます。先輩方にご指導を頂く機会が今後もあろうかと存じます。どうかよろしくお願い申し上げます。