2020年1月7日付のAnnals of Internal Medicineから北米の医療費に関する記事を紹介いたします。
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米国とカナダにおける2017年の入院費用の比較
背景:単一支払者制度が確立する以前のカナダにおける医療費支払制度、医療費、人口あたりの医療従事者数は米国と似通っていた。1999年までには入院費用が医療歳出に占める割合は米国では31%であるのに対してカナダは16.7%であった。近年これらのコストに関する包括的な分析はなされていない。
目的:保険者及び医療提供者による2017年の総入院費用の定量化
研究デザイン:政府レポート、医療提供者が規制当局に提出した会計報告、医師への調査、医療機関の雇用に関する国勢調査の分析
設定:アメリカ合衆国とカナダ
評価項目:保険間接費即ち病院施設、医師の診察、老人ホーム、在宅医療、ホスピスなどにかかった支出の合計
結果:米国の保険者と医療提供者は入院に際して8120億ドル、即ち人口あたり2497ドル相当(国の医療支出の34.2%)を支出していた。それに対してカナダは人口あたり551ドル(17%)であった。保険間接費は844ドル に対して 146ドル 、入院費用は 933ドル に対して 196ドル、老人ホーム/在宅医療/ホスピスにかかった費用は255ドルに 対して123ドル、そして医師の保険料に関連した費用は465ドルに対して87ドルであった。
限界:歯科診療、薬局、その他の医療提供者の支出は省かれている。2カ国の会計項目は幾分異なっている。また分析方法の変化により1999年以降の入院費用の高騰を過小評価している可能性が高い。
結論:米国とカナダの入院に際する医療費の格差は大きく拡大しており、米国における民間保険に基づいた複数支払者制度が不十分であることを明らかに反映している。米国での医療従事者の高額な人件費、薬価や最先端医療機器の購入費用などが高額な入院費用に密かに組み込まれているのである。
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論文の全文は以下のリンクからご覧いただけます。
https://annals.org/…/health-care-administrative-costs-unite…
PRC委員 大竹眞央