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第八回公判について(07/9/28)

 第八回公判傍聴記(平成19年9月28日)

 開廷が約25分遅れる。今回の証人は、弁護側からの証人で、胎盤病理に詳しい中山雅弘先生(大阪府立母子保健総合医療センター検査科部長)でした。

 午前中は弁護側からの尋問

 中山先生は留学を含め約26年間胎盤病理に携わってきており、「目でみる胎盤病理」(医学書院)を出している先生である(そのほか多数の胎盤病理の文献あり)。つまり、現在の胎盤病理の日本での第一人者といってよい先生である。

 結論として、先生は今回の胎盤は766 g (普通500 g )であり、胎盤の所見(写真)から分葉または二分胎盤といってよく、稀な症例であったこと、今回の癒着胎盤は子宮後壁の一部に認められ、前壁には癒着があったとは認められなかったこと、癒着の程度も筋層の5分の1 程度であったと証言した。

 特に検察側の病理鑑定と大きく異なった点について、前壁に癒着胎盤があったとした子宮切開創の左下のところに認めた絨毛は筋層内に入っておらず、筋層から離れたところに存在し、その部分は子宮のかなり下部であり、頚管部の近くであり、そこに絨毛が存在することは考えにくく、帝王切開、前置胎盤?、その後子宮摘出していることから絨毛は散らばりやすく、従って、そこに存在している絨毛は artifact の可能性が大きいと証言。

 また、その所に存在している糸について、前回帝切時の糸であれば、糸の周囲に陳旧性の炎症反応があってよいが、そのような所見はなく、また、2つの糸は引っ張られるように間隙が認められることから、今回の帝王切開時の止血のために結紮した糸ではないかと証言した。

 帝王切開時に子宮を切開した切開創より上部の子宮前壁の標本において、生きのよい(変性していない)絨毛と変性した絨毛が認められたが、変性していない絨毛は、筋層の中には入っておらず筋層から離れたところにあり、これも artifact の可能性が大きいこと、変性した絨毛が存在しているところは脱落膜があり、ここは、絨毛膜無毛部のところにある絨毛であり(胎盤などないところである)、癒着胎盤ではないと証言。

 午後は1時50分より開始

 午後は中山証人に検察側が尋問したが、重要な検察側の鑑定書の問題に入らず、もっぱら、なぜ1回しかプレパラートを見なかったのかなど質問。私としては医学的な質問ではなく、検察側は時間を浪費しているようにしか受け取れなかった。

 かなり時間が過ぎてから本題に入り、筋層内に絨毛が浸潤していた部分がなぜ5分の1か、その計測方法について質した。中山先生は標本の写真から線を描いて、筋層部分と絨毛の浸潤部分を示し、計測し、約5分の1と示した。検察側は納得せず食い下がったが、医学的に浸潤度合を測定することを検察側はわかっておらず、検察側の鑑定の計測(他の部分で絨毛が浸潤していない筋層と比較して厚さが2分の1であるので2分の1の浸潤と主張したが、他の筋層部分と真に浸潤している部分の筋層は子宮収縮の関係で厚さは一様にならない点を理解していなかった。

 質問に対し、中山先生は丁寧に一般の人にわかりやすく教えるように答えていたのが印象的であり、裁判官の人たちもじっと聞いていたのが印象的であった。子宮切開創上部の癒着についても、執拗に中山先生に聞いていたが、やはり、医学的知識が不足しているため、何を問いただそうとしているのか不明な質問もあった印象であった。裁判所が医学的に正しいことを理解してもらうことを期待している。かなり、執拗な検察側の尋問で、閉廷は午後7時を過ぎていた。

 次回は弁護側証人として、10月26日岡村州博東北大学産婦人科教授が出廷することになっている。

                (文責 佐藤 章)

 第八回公判 2007年9月28日

 傍聴人のメモをもとに書き起こしていますので、正確でない部分があることをご了承ください。

10時22分開廷

【弁護側尋問】

裁判長: 開廷。まず、前回の事実間整理の結果を受け、それに対応して、中山証人に説明していただきます。中山証人、前に出ていただけますか。

(証人宣誓)

裁判長: これから弁護人、検察官の順に質問がありますが、端的にお答えください。それと宣誓されてますんで、嘘の証言は偽証罪に問われることがありますので注意してください。では。

弁護1: 弁護人ヤスキから、おたずねします。まず冒頭にお詫びいたします。弁護人が本日の書類を途中で置き忘れる過失があり、お詫びいたします。開廷が遅れ申し訳ございません。では証人にお尋ねします。まず、先生の立場、専門についてです。

証人: 現在大阪府立母子保健総合医療センターの検査課の部長で、主に周産期の病理を担当しながら検査の全体をみています。

弁護1: 周産期病理ということですが、どのようなものを扱うのですか

証人: センターは周産期全体、また小児全体を扱うので、小児がん、乳児突然死もあります。周産期の児、母体、小児がん、突然死、そういったところの病理が専門です。

弁護1: さらに先生の御経歴で、先ほど申し上げた事情で紛失しており急遽作成した経歴書を示してお尋ねしますが

検察1: それは鑑定書追加に添付されたのと同じものですか

弁護1: 同じです。それではおたずねしていきます。経歴書の通り、間違いないですね

証人: はい

弁護1: 大学医学部を卒業されてから四年間は小児科の臨床医として働かれた

証人: はい

弁護1: 先生が臨床から病理に進まれた理由、きっかけは

証人:  小児の中で、どういう専門をと考え、病理に近い小児科医より、病理を自分の専門として選んだということです

弁護1: それがK県立こども医療センターに移られた理由ですか

証人: 当時、今でもですが、K県立こども医療センターは小児で屈指の施設でしたので。

弁護1: 実際に手がけられた病理は

証人:  一般的なもの、小児がん、突然死等、研修的なことが多かった

弁護1: その後英国に留学されていますね

証人: そうです

弁護1: 具体的には

証人:  大阪に周産期センターができる話があり大阪に戻ってくるという話やったんですけど、一年、周産期病理をやっている所で勉強して、ということで、イギリスのH病院で周産期病理を勉強しました。

弁護1: W博士が当時の第一人者ということですね。

証人: そうです。何人か先生がいらしたんですが、W博士がやっぱり胚、胎盤の第一人者でしたね。

弁護1: そのH病院は、ロンドンではどういう病院ですか

証人: ロイヤル、という、王立病院で、日本の大学病院とは違いますが、H病院はロンドン大学のブランチで、ロンドン大学の卒後研修を引き受けている病院です。専門的医療を行い、かつ卒後教育を行っている。

弁護1: 先生は現在の母子医療センターに移られたのは

証人:  ‘81年5月です。開院前に半年準備期間があったので。

弁護1: 大阪府立母子総合医療センターはどういう病院ですか

証人: 大阪の周産期センターです。設立から10年ほどたって小児科も併設されました。母体ハイリスクの母体、胎児や、新生児をあつかう病院です。

弁護1: ハイリスクの母体、ハイリスクの胎児・新生児を扱う。当時から

証人: そうですね。乳児や小児がんも扱うようになったのは、それから10年してですが、当時からハイリスクの妊婦と新生児を扱う病院でした。

弁護1: 先生は‘81年以来、今日までいらっしゃった。

証人: そうです

弁護1: 26年間一貫して周産期病理、胎盤病理をなさってきたのですね

証人:  そうですね

弁護1: 胎盤病理、周産期病理は具体的にどういう臓器をみるのですか

証人: 主として胎児、胎盤、亡くなられた新生児や母体です。妊娠周辺で亡くなられた母体、新生児、出された胎盤、新生児で受けられた手術の臓器など。

弁護1: 経歴からみますと、先生が診断された胎盤の数は5万例ということですね

証人: そうですね

弁護1: 年間2千例を26年間ということですか

証人: そうですね。年平均2千くらいで、25年で5万になりますから、そんな感じです

弁護1: 大阪では胎盤は全部先生のところにまわってくるのですか

証人: 分娩数は1500なんですが、よそで生まれてうちに入院する新生児の胎盤はうちでみます。それからうちでどうしてもみれなくて、よそに搬送して分娩するときも胎盤だけはうちに来ますので、それあわせてそういう数です。

弁護1: そのうち3分の1は顕微鏡観察されるということですね

証人: そうです。肉眼で全部見まして、臨床情報と肉眼所見から必要なものを組織標本をつくる、それがだいたい3分の1くらいかということです

弁護1: すると、顕微鏡でごらんになる胎盤は、5万の3分の1だから1万6千件くらい、年615、月51、1日1.7件、それだけ毎日ご覧になっているということですね

証人: 計算おおてればそうだと思いますね

弁護1: 周産期病理では、子宮もみますね

証人: はい

弁護1: 今まで先生がごらんになった病理診断の子宮の数は履歴書で子宮体部(頚部?)が280、子宮頸部(体部?)は370、全摘子宮60例程度ということですが

証人:  それくらいですね

弁護1: 胎盤は顕微鏡観察3分の1ということですが、子宮は顕微鏡診断どれくらいですか

証人: 全部です。手術材料は、もちろん全部標本つくります

弁護1: 先生がなさった顕微鏡診断は710例くらい、年間27例ということですね

証人:  そうです

弁護1: 子宮体部、頚部、というのはどこを指しますか

証人: 頚部は下のとこです、体部は上のほう。

弁護1: 羊膜があって胎児を支えるのが体部、その下につながっているのが頚部

証人:  そうですね

弁護1: 体部はどういうことで摘出されるのですか

証人: 筋腫ですね、多いです。全部妊婦さんです、うちに来るのは全部妊婦さんですから

弁護1: 体部は妊婦で周産期に筋腫があって摘出されたものですか

証人:  いろいろありますが、筋腫で帝王切開のときに一応とってきたとか、大きなもので妊娠中にとったとか、色々ありますけど。筋腫は多い思います。

弁護1: 頚部は

証人: ポリープが多いですね、妊娠合併のとき、とってしもたほうがいいやろ、というのが多いと思います

弁護1: 全摘子宮が60例、妊娠子宮だったものですか

証人:  ほとんどそうですね

弁護1: 全摘された子宮の、摘出の理由は何だったのか、出血多量だったのか。

証人: 出血がほとんどですね、

弁護1: 止血処置としての摘出であったということですか

証人: そうですね。出血がとまらなくてとってきた、DICとか羊水栓塞などがありますが、やっぱり出血がとまらないというのが大部分で、あとは感染症とか、がんとか、稀なものもいくつかあります。出血ですね。

弁護1: 全摘子宮60例のうち、大部分が出血のための摘出ということですが、先生の経験の中に母体死亡例はありますか

証人:  当科のその中ではないですね

弁護1: 母体死後の母体解剖例はありますか

証人: あります、解剖例は一例あります。先ほどのは手術材料の中での話です

弁護1: 周産期の母体死亡で、いかなる原因が多いですか、出血ですか

証人:  そうです。話しますと、当時大阪府では1980年に30人くらい母体死亡が、一年で亡くなられてまして、センターができて、大阪北にはたくさん病院があったんですが当時南にはなくて、だから大阪南は死亡率が高かったのが、そういう時代やったんですが、センターができて数年で母体死亡が半分の15例になったんです。産後の大出血に対応できる病院ができたことが重要やと思います

弁護1: 母体死亡の解剖では、何を調べるのですか

証人: 解剖を承諾いただける例が少ないんですね、出血という原因がわかっているからなかなか解剖を承諾していただけないんですけど、何をみるかは、羊水栓塞の肺とか、DICの肝臓とか子宮、胎盤とかをみます

弁護1: 経歴では、先生の診断された癒着胎盤症例数は、楔入胎盤accreta 15、嵌入increta 8、穿通percreta 1例とかいてありますが、あわせて24例、これが今まで病理診断された例ですね

証人: 手術材料ではそれだけですね。他に胎盤のみの例もオーバーラップしてますが、胎盤だけの例が1,2例あります

弁護1: 御略歴では胎盤のみの癒着胎盤の診断は5例とのことですが

証人: 5例程度ですね

弁護1: 5万例の中の、その数ですね

証人:  そうですね、1例か2例、よそからどうしても見てほしいって、うちの病院でみたのもあるので、おおざっぱには

弁護1: 5万の中の24例が癒着胎盤の症例

証人: 分娩数とあわせるとそうですね

弁護1: とすると、0.04%となり、めずらしい、極めて稀な病気ですか

証人:  はい

弁護1: ハイリスクを扱う大阪母子センターの

証人: そうですね

弁護1: 公判調書に経歴の添付を申請します

裁判長: よろしいですね

弁護1: 先生が診断された癒着胎盤の症例は、すべて子宮胎盤の観察、病理診断で行われていますか

証人: そうです、子宮胎盤のマクロ・ミクロも含めてです。

弁護1: 胎盤のみでの例もあるということ

証人:  そうです

弁護1: 胎盤のみで診断もあるとのことですが、剥離をしたけれどその後の病理診断で癒着胎盤と診断された例、胎盤は剥離したけれどもともとの子宮は温存されていた例はありますか

証人: もちろんそういう例ですね

弁護1: 病理診断の目的は何ですか

証人:  母体、胎児、新生児の死亡、圧倒的に多いのは胎児、新生児で、昔は死亡が多かったんですけど、死亡の理由を調べることです。胎児や新生児の死亡は少産少死の時代、一人なくなったら大変なことで、正確な診断が大事で、病理は正確な診断ということで、次の子のためにというところで、母体側の問題が無いかとか、今後おこらないようにということですね

弁護1: 癒着胎盤の病理診断は具体的にどのようにされますか

証人: 臨床医の方からの情報、子宮標本、これは固定されてるもの生の標本ありますが、この場所中心に肉眼観察、写真とって標本つくって、また胎盤の肉眼観察をして、組織標本を見ます

弁護1: 子宮の肉眼観察、胎盤の肉眼観察、加えて顕微鏡も、ということですね

証人: 両方が必要です。肉眼だけとか、それいい加減にして顕微鏡だけ、は間違いです。

弁護1: 臨床医から情報があることも大事ですか

証人: ここから出たと臨床医が言ってくることもあります、癒着かどうか微妙なところがありますし、臨床医がここから血が出たという情報が大事なことはあります、病理医は手術には立ち会わないですが、情報は、はい。

弁護1: 臨床の先生から情報がないと診断間違うこともありますか

証人:  そういうこともあります

弁護1: 顕微鏡で観察のため切片をつくる準備は

証人: ホルマリンにつけた状態でしばらく固定、プレパラートにするため、脱水、脱アルコール、ろうにするパラフィンのプロセスを経て、ろうの中に組織を固めて切片をスライスし、染色して顕微鏡で観察です

弁護1: スライスは刃物で切り出すということですか

証人:  ろうになった状態でね。最初はカセットにいれて漬けておいて、固めて、薄く切ってガラスの上にのせて染めて

弁護1: 様々な工程の最後は切り出し、スライス、物理的な力が標本に加わりますか

証人: 切り出しは肉眼のときの最初の作業です、それをパラフィン包埋してそっから切片にするところがスライスです

弁護1: 何回か刃物が。切り出したり、スライスの作業で、標本に力が加わって、アーチファクトがおこることがありますか

証人:  アーチファクト、それはもちろんあるわけで、切り出しはある部分を切りますし、その後、パラフィンにする中で機械の中でたくさんのものががさっと一緒にありますから、ばらけたりすることも可能性としてあります

弁護1: ばらけるというのは、何が。

証人: 胎盤絨毛はばらけやすいんです。アルコールは絨毛がばらけやすいですし、色々なカセットが一緒に入るので、脳の中で絨毛が入っとったりとかするわけです

弁護1: オートメーション化されていますよね

証人:  オートメーションの中で他の組織とぐるぐると色々なカセットを一緒にがしゃっといくわけで、カセットには液の浸透のため穴があいてますから、ばらけた組織が入ったりすることがあります

弁護1: それがパラフィンですか

証人: 最後がパラフィンです。蝋に近いものです。

弁護1: アーチファクトの理由についてうかがったが、顕微鏡でそれをどうやって見分けるのですか

証人:  本当にわからんこともありますけども、脳の組織に胎盤絨毛があったら、それはアーチファクトですよね、別の組織に混ざっていたらわかりますけど、ある組織の上にぽっとそれだけ乗っかって見えるとか、そういうときは要注意です。

弁護1: 別の臓器だったらわかるが、本件は子宮なので、どこに絨毛があるか、見分けるときには慎重にということですね

証人: そうです

弁護1: 本件では胎盤摘出のため用手剥離、双手圧迫や、ガーゼ充填して、Z縫合したり、様々な外科的処置をしているとアーチファクトがおこりますか?

証人: そうですね。先ほど、切り出し、機械の中でと言いましたけれど、三番目のアーチファクトは、手術操作です、あるものが子宮へ移動している可能性もあると思います。

弁護1: 先生には鑑定で、本件で子宮胎盤に関して、大きさ、癒着胎盤の位置、深さ、胎盤組織が残っていたところ、癒着の広さ、そういう状況について鑑定のお願いをし、鑑定をしていただきましたね

証人: はい

弁護1: 鑑定書を作成していただきました

証人: はい

弁護1: 鑑定書を出していただいたのは一回でしたか

証人:  昨年、一回簡単なものをまとめ、意味合いの説明みたいなものを先月か先々月にまとめました

弁護1: 同一性確認のため、鑑定書、鑑定追加を証人に示します。この書類で間違いないですか

証人: 最初の書類がこれで、

裁判長: これ、だとわからないので

弁護1: 弁135号証

証人: 先月のが、弁第151号証です

弁護1: 135号証の二枚目の右下、この名前とはんこは、先生ご自身が

証人: はい

弁護1: 151号証、10ページ目の署名捺印、これも先生のですね

証人: 間違いないです

弁護1: 確認しますが、弁135号証、弁151号証は、先生の周産期病理医としての知識経験に基づき、あるいは文献の考察をまとめられたものですか

証人:  はい

弁護1: 間違いないと、その確認の上で署名捺印していただいたのですね

証人: はい

弁護1: 先生が鑑定していただくにあたり、検証された資料は

証人:  胎盤の写真、胎児面母体面の写真、ホルマリン固定された子宮組織片ですとか標本

弁護1: 標本というのはパラフィン包埋された標本ですか

証人: ホルマリンに残っていた組織と、ガラスの標本と、両方ですね

弁護1: カルテもご覧になった

証人:  カルテも見たと思います

弁護1: 鑑定にあたって、子宮はいつ、どこでご覧になりましたか

証人: 去年の8月、福島医大の中の施設のところで、標本を借りて顕微鏡とか写真を撮らせていただきました

弁護1: 財団法人、福島保険衛生協会の施設ですね

証人:  よくわかりませんがそういう施設の中の一室でした

弁護1: そこで標本をご覧になった

証人: そうです

弁護1: 検察が保管していた保存の状態はどうでしたか

証人: 思いの外きちんと保管されていたと思いますね、子宮のもとの形と同じように復元して写真撮りましたが、ほとんど再現できました

弁護1: プレパラートは顕微鏡で見ましたか

証人:  あった標本は全部みました

弁護1: 標本の顕微鏡写真を撮られましたか

証人: とりました

弁護1: それは残っていますね

証人: はい

弁護1: それは鑑定書、鑑定書追加の135、151号証で一緒に綴っていますか

証人:  綴ってあります。

弁護1: 全部ですか

証人: 全部ではありませんが、かなり入れています

弁護1: 保管されていた子宮切片は、肉眼で観察したのですか

証人: はい

弁護1: 子宮を再現して、それからどうしましたか

証人: 以前撮られた写真とほぼ同じように並べて、再現して、写真をとりました。

弁護1: 再現子宮の写真出せる? 再現して写真を撮ったと言われた写真を示したい

裁判長: 示す理由は

弁護1: 写真の子宮の同一性と証人の行為の確認です

検察1: 何ページですか

弁護1: 別紙3の2です

裁判長: 示されるのは写しですね、別紙3の2

弁護1: 再現して写真に撮った子宮の写真、これですか

証人: そうです

弁護1: 胎盤の状態は観察しましたか

証人:  胎盤は残念ながら保管されていなかったので、写真だけですね

弁護1: 胎盤の大きさは

証人: 大きかったです。写真にスケールが入ってまして、27cm×22cmくらい、胎児面と母体面の二枚の写真。

弁護1: 二枚の写真ですね、母体面と胎児側、甲37,38号証の写真を示します

裁判長: 示す理由は

弁護1: 写真を見て判断された写真の同一性の確認です。この写真ですね

証人:  はい

弁護1: この写真をもとに鑑定されたのですか

証人: はい

弁護1: 胎盤の保存の状態はどうですか

証人: これは写真なので保存はあまり関係ないんですが、血がにじんでいたりしますが、時間がたっていますが、写真としてはある程度観察可能なものです。

弁護1: 加藤医師がこの写真を撮ったのは、12月17日の午後10時〜11時の間とのことで証言があったのですが、この段階、手術の日の夜遅くの写真ですが、病理診断病理鑑定に使えますか

証人:  肉眼写真としては使えます。

弁護1: 写真37、胎児側をご覧になって、この写真で胎盤が子宮のどこにかかっていたか教えていただけますか

証人: ここの左側に大きな、母体面側であって

裁判長: 記録に残らないので言葉で説明してください

証人: 向かって左側の5分の3の部分がおそらく後壁側、右側には実質性の乏しい、膜の部分があり、薄い感じです。でも血管、臍帯がその真ん中に付着しています。胎盤病理からいうと危険な感じです。胎児面からは。

弁護1: 臍帯はどれですか

証人:  記録できるように言いますと、中央のやや右、下から下の方に伸びている、ぐるっととりまいているヒモ状のものですね

弁護1: 臍帯を青いペンで囲んでください

検察1: 別紙弁37号証となりますか、それは示したものとは違うので・・・

弁護1: ありがとうございます・・

裁判長: それは37号証ではないんですね

弁護1: 同じモノですが、鑑定書別紙なので、同一性の証明、鑑定書追記の別紙1で示してもらいます。151号証

裁判長: 写しね、それでいきましょう

弁護1: この写真をもとにして、臍帯を示してください

証人: これでいいですか

弁護1: ここから先の太いものは何ですか

検察1: 見えないですが

証人: 臍帯の胎盤に付着した先から分かれている部分ですね、胎盤の胎児血管と言いますかね

弁護1: 写真で卵膜はわかりますか

証人: 見えてますよ、下側とか、全体

弁護1: 卵膜を今のペンで囲んでください

証人:  はい、この辺に、

弁護1: 欄外に臍帯と書いていただく

証人: 卵膜がひっくり返って、この上にのっかってますから、これもですね

裁判長: 明確にしてもらいます

弁護1: 欄外に卵膜、と。卵膜はどういう印象ですか

証人:  少ないですね

弁護1: 別紙2の写真の写し、これは母体面側の写真の写しですが、胎盤実質はどれですか

証人: 胎盤実質は上側に薄い膜だけのところが卵膜、その下に黒っぽい組織が見えるのが胎盤実質です。真ん中の黒いところは出血ですが、こういう色のところです

弁護1: 丸いものがより集まっているのがそうですか、これが本来の胎盤ですか

証人:  分かれているので分葉といいます、分葉胎盤というものかもしれません

弁護1: 脱落膜がかぶっているところはどこですか

証人: ある程度推測できますね

弁護1: 根拠は

証人:  今、癒着が問題となってますので、ここはないかなあとか、これは左側とやや左の中央部は少し赤みが薄く、もっと左はもっと黒みがある。これは脱落膜をかぶっていると推測できます

弁護1: それを線で

弁護1: 今示していただいた中が、脱落膜が無いように見えるところですね

証人: そうです

弁護1: 脱落膜があると思われるところに斜線を入れてください

証人:  色同じでいいですか、はい

弁護1: そこが脱落膜ありの部分ですね。全体のことを伺います。この写真、大きさで見ると、胎盤かなり大きいですか

証人: 大きいです

弁護1: 胎盤の大きさを測るとき、どこで測りますか

証人:  普通、胎児面を測りますね。母体面でもまあ一緒です

弁護1: 胎児面ですね。大きさはどれくらいですか

証人: 27cmと22cm

弁護1: 胎盤の大きさは看護記録にもありますね、甲15号証、看護記録の前のところ、S(助産師)さんが書かれた

裁判長: あわせて示して

弁護1: はい。これを見ますと、胎盤の形状が書いてあります。写真と左右が逆のようですが、

証人: 多分そうです

弁護1: 記録の右の絵に、膜だけ欠損かと書かれたところですね

証人: はい、

弁護1: 写真を見て、膜だけ欠損ですか

証人: ここですね、膜欠損ととるか、薄い部分あるんですけどね、

裁判長: 記録にとるので

証人: 別紙2の中央右よりのところ、膜だけに見えるというか薄いところが、中央にあります。それと助産師が書かれたところが一致するのではないかということです

弁護1: 記録に色々書かれた部分がありますが、胎盤の厚さとか、写真では

証人: 左側が厚くて、母体面側の右ですが、別紙2の後壁側が厚めで、そこが2.5cmかと推測するが、正確には難しいです

弁護1: 記録には不完全と書かれていますが、膜だけ、というふうに、この胎盤は不完全ですか

証人: 「膜だけ」と「欠損か?」と、ここはわけて読むべきではないかと思うんですけどね。膜だけ、で実質欠損か? てことではないですか。

弁護1: はあ

証人: 要するに個々の部分が膜だけに見えると書いておられる。微妙なところで、だから欠損かにクエスチョンつけておられるんとちがいますか。S助産師さんが膜だけと書いているところは私は

弁護1: 先生がここだろうと思われるところに印を入れて下さい、格子状に

証人: はい

弁護1: 母体面側は、S助産師さんによると、胎盤実質が二つに分かれている

証人: 分かれてます、ここを膜だけととるか、少し実質あるとみるか、

弁護1: 二つに分かれるのはよくあるのですか

証人:  非常に珍しいです

弁護1: 胎児面の写真で、臍帯が胎盤に付着してから右と左に血管が分かれています。

証人: はい

弁護1: これは二つに胎盤が分かれている。

証人: こういう胎盤は、考え方がありますが、副胎盤という場合と、二分胎盤、あるいは分葉胎盤。異状胎盤のうちに入るが、これは分葉胎盤にあたりますね

弁護1: 胎盤重量が766g、これは

証人:  重いですね、この週数、体重だと500g前後かと

弁護1: 妊娠36週、この週数の影響があるんですか

証人: あります。週数と胎児の体重。

弁護1: この赤ちゃんの体重は約3000gということで

証人: それで500gと。だいたい体重の6分の1が重量ですので。

弁護1: 確かに重いですね。

証人: はい

弁護1: 看護記録では、卵膜不完全にマルがついています

証人:  わりと良く見られてますね

弁護1: 先ほどの先生の、少ないというのと同じですか

証人: はい

弁護1: 胎盤と週数との関係ですが、統計的に胎盤の重さの統計データがあるのですか

証人:  統計というか、データは私の施設でずっとやってますので、データあります。

弁護1: どこにありますか

証人: 「目でみる胎盤病理」に書いたんですけど

弁護1: 弁12号証「目でみる胎盤病理」105ページ、107ページの部分、最後に綴じられている資料ですが、資料にある全重量とはどういう意味ですか

証人:  全重量は、卵膜も臍帯も含めた量り方です

弁護1: 対応する言い方は

証人: 純重量というので、胎盤病理を専門とするところではそういう論文もあって、そっちを測ったりすることもありますが、なかなか

弁護1: 横軸が児の重さ3000 gで、そこからみると、474 gから534 gとありますね。全重量は先ほどと同じですか

証人:  はい

弁護1: 107ページ、この表で、右肩のところは体重となっていますが、

証人: 週数ですね、ミスプリ発見していただいて、ありがとうございます

弁護1: それでみると、胎盤重量は489 gから527 gですね

証人: はい

弁護1: 本件の胎盤重量は重いということがわかったのですが、何が原因ですか?

証人:  一般的には母体の糖尿病や梅毒、血液型不適合がありますが、本件ではそういうものはなかったかと思いますので、前置胎盤?が関係したのかなと思いますけれどね。

弁護1: 写真で、脱落膜がない部分囲んでいただいたが、これは癒着部分ですか

証人: 子宮と比べないといけませんけど、まずおそらくその部分かと思われているわけですね。

弁護1: 脱落膜組織が胎盤母体面に残っていると、癒着していないということですね

証人:  胎盤からみますと、大きな癒着はなさそうだと。

弁護1: 脱落膜は胎盤母体面だけに残るのですか

証人: 子宮側にも残ります。

弁護1: 胎盤側に脱落膜が残ると癒着胎盤ではない、ということになりますか

証人: そうですね

弁護1: 脱落膜は、生物学的な役割は何ですか

証人:  妊娠成立、受精卵が着床して子宮壁について、胎児の胎芽に反応して、周囲の母体組織がバリアをつくりますが、そういう反応の層が、簡単にいえば脱落膜です。

弁護1: そこを図でご説明いただくのが間に合わなかったので、該当部分出していいですか

裁判長: 聞いてください

弁護1: 証言の明確化のため、示したいが、「目で見る胎盤病理」の9ページを示したいのですが、図を見ながらご説明いただきたいのですが

検察1: 弁12号証ですね

弁護1: 弁12ですね、すみません

証人: 中央に胎児の組織があり、初期のころのこういう層が脱落膜、胎児を丸く、全体を囲んでいる膜が、脱落膜です。だんだん発達して大きくなって、基底脱落膜、絨毛膜有毛部、この部分が後に胎盤組織となる。それ以外の部分は絨毛があるが、退化していって絨毛膜無毛部になります。胎盤組織、卵膜組織をみるのにこの知識が参考になります

弁護1: 図で胎盤となる部分を示したい

裁判長: 説明ができないので線を引いてもらって

証人: 無毛部の色変えますかね

弁護1: 妊卵着床から胎盤が形成される

証人: はい

弁護1: 脱落膜はどんな細胞ですか

証人:  基本的には脱落膜細胞です、胎児側から栄養膜細胞trophoblastが発達するのでその中で栄養膜細胞もありますね

弁護1: 別紙1、別紙2の写真で、胎盤が切開された跡はありますか

証人: 周囲は切られただろうが、この写真の胎盤には切られたところはないです

弁護1: 胎盤に切られた部分はないですね。帝王切開で胎盤を切開することあるのですか

証人: あります

弁護1: どういうときですか

証人:  前置胎盤?では緊急に児を娩出するために胎盤をずばっとあえて切って胎児を取り出すことがあります。

弁護1: 残存子宮片を復元されて、肉眼観察でわかったところは

証人: 後壁に対応する部分がざらざらとしていました、前壁は比較的なめらかでした。

弁護1: 癒着はどこにありましたか

証人: 癒着は後壁です

弁護1: 癒着は後壁ということですが、前壁には癒着はどうでしたか

証人:  肉眼ではなかったです

弁護1: 前回帝王切開部分はいかがですか

証人: あの復元では最初から切られていたので、それは確認できませんです

弁護1: 胎盤と残された子宮を見比べて、何がわかりましたか

証人: 後壁のところで先ほど印をつけたところが、子宮側のざらざらしたところが一致していました

弁護1: そこが癒着の部分ですか

証人: そうです、そこは癒着しているところです

弁護1: 癒着部に、無理な、器具を使った剥離をした痕跡はありますか

証人:  おそらくないと思います、ざらざらしており、そういう部分はないと思います。

弁護1: 組織の顕微鏡観察の結果は

証人: 鋭利な刃物ですか?

弁護1: そうではなくて、組織の病理所見

証人: 後壁中心に癒着の所見で、肉眼所見と合致しました

弁護1: 先生に作成していただいた鑑定書を確認しました。写真がいっぱいありますね。それは先生が写した写真ですか

証人:  杉野先生の写真もありますが、基本的には自分の写真がだいたいです

弁護1: 先生がとられた写真の意図は

証人: まず低倍率で一枚とって、問題になる部分、異常などの所見があれば拡大しました

弁護1: 絨毛はどこで観察されましたか、組織標本で

証人:  絨毛だけなら至る所にありました。癒着胎盤の時には絨毛は筋層にありますが、癒着でないところにも見えます

弁護1: 絨毛があった部分は癒着かどうかは別として、そこに胎盤があったことになるのですか

証人: 子宮観察の限りは、前壁や後壁の上、肉眼ではない部分に絨毛があったけれど、胎盤があるとは考えにくい部分で、何故見えるかは考えないといけませんが、絨毛があっただけで胎盤がのっかっていたというのは乱暴ですね

弁護1: 絨毛があっただけで胎盤があったとは断定できないということですね

証人: そうです。絨毛の細胞が数個乗っていただけで、胎盤があるという推論は無理ですね

弁護1: 癒着胎盤の診断は肉眼所見と一致しましたか

証人:  ほぼ一致しました

弁護1: どの部位に癒着があったかの診断は、先ほどの鑑定書に一括してまとめましたか

証人: はい

弁護1: 写真というか図にまとめましたか

証人: はい、まとめました

弁護1: 写真をごらんいただくと説明できますか? 証言明確化のため、子宮割面の写真、弁151号証、別紙3の1を示します

裁判長: スライドを映してください

検察2: 全体で示すのは書いてある懸念のため、(聞き取れず)

弁護1: 先生の検討結果の結論をまず、書面の確認です。

弁護1: 写真の中で先生が癒着と診断した場所をおっしゃってください

証人: 後壁の17,20,21,22,11,12,13,19,7,8,3,4に癒着を認めました

弁護1: 先生がおっしゃった部分で、色が違う理由は

証人: incretaを赤い部分で、黄色はaccretaです。

弁護1: 他に絨毛が発見された場所は

証人: 14,9,4,29,30,34,24,26の広範に絨毛はあります。

弁護1: これらは絨毛があっても癒着ではないのですね

証人: はい。癒着とは診断できないですね

弁護1: 結論をまとめますと、癒着胎盤として診断できるのは後壁のみ。前壁には癒着は認められなかった。これでよろしいですか

証人: はい

弁護1: incretaの程度は

証人:  測って5分の1だと

弁護1: どうやって測るのですか

証人: 筋層から、最も深そうなincretaの部分、全層の内の、胎盤が入り込んでいる部分、それが5分の1です

弁護1: それは筋層全体を顕微鏡で見て

証人:  肉眼でもわかりますけど、肉眼と顕微鏡の両方です

弁護1: 顕微鏡写真をご覧いただくと、先生のおっしゃったことが具体的に

証人: 図でも全層をとったと思いますが、それで5分の1程度ということ

弁護1: 今の証言の明確化をはかるため、写真を示したい弁151号別紙7の21、22

裁判長: 別紙のですね、提示してますね

弁護1: そうです。二枚の写真を示しましたが、

証人: 22の1の部分の下が2に連続した部分です。全層の中、22の上、全体の上の部分が胎盤なんですが、全体の中で胎盤の部分がどれくらい侵入しているかを測ったところ、5分の1でした。

弁護1: 胎盤絨毛を測ったのですね。絨毛部分はどこですか

証人: 絨毛ですか

弁護1: 先生が線を示したのは

証人: 筋層と絨毛です

弁護1: 線の右側が絨毛

証人: そうです。

弁護1: 具体的に絨毛部分を示して

証人: こうですか

弁護1: 線の上に絨毛と書いてください。22の2の写真で並べてみると、左側にも筋層の中に絨毛がありますが、これ以上は絨毛は入り込んでいない

証人: そうです

弁護1: この標本をご覧になったとき、顕微鏡でひとつひとつ具体的に侵入具合を確認してご覧になったんですね

証人: そうです

弁護1: この中で侵入が深いものとして22が出てきた

証人: はい。写真を撮っていったのがそっちのほう中心に撮っていったので、

弁護1: 肉眼でも観察されたのは残存子宮片ですね

証人: はい

弁護1: 残存子宮片の写真でも具体的に確認されますか。弁151号証、鑑定追加の別紙6の写真。これで左側の切片でどれが子宮筋層、どこが胎盤かわかるんですか

証人: それは白いのが筋層、黒いのが胎盤絨毛組織が入り込んでいるところです

弁護1: 今示された黒いところ、これは胎盤

証人: 胎盤です

弁護1: 癒着の胎盤ですか

証人: 胎盤の一部です。

弁護1: ここで癒着の程度をはかるというと、どこからどこですか、線で示して

証人: 自分が測った感じで

弁護1: 子宮の厚さを測るとき、子宮筋層の厚さ、どこを測るのかは

証人: だいたい子宮筋層の厚さがこれで、こういう感じです。

弁護1: 上の部分が分厚い

証人: この部分は厚いので、この部分で・・

裁判長: これはどこか、記録に残るように

弁護1: 記録に残るように言葉で

証人: ・・四角に囲んだ右側の線

弁護1: 子宮片の壁の厚さを今囲んだところでどこからどこですか

証人: 子宮の表面から入って一番奥まで入った部分を分母、筋層に入っている胎盤の厚さを分子

弁護1: すると分母分子を図では

証人: 分母、分子です

弁護1: 絨毛の深さを測る方法として同じ子宮の癒着していない部分の同じ高さの子宮壁の厚さと比べて、本件の場合は胎盤が癒着していない部分と比べると半分くらいだから、絨毛の入り具合は2分の1だという主旨の検察側の証言がされましたが、先生はどう思われますか

証人: 子宮の厚さは収縮の具合によって多少厚みが違うが、どこまで入っているかはその部分でどれだけ厚さがあるかで測る。子宮底や厚みがもともと違うところを測るのはお門違いやという気もしますし、その部分の筋が溶けた所見もない。だから、こういう測り方が最も普通やと思います。

弁護1: 今、溶けた所見がないと言われましたが、子宮壁に胎盤が侵入することで、筋層が損なわれる、trophoblastがタンパク質を溶かすので筋層溶ける、そういう推論がなされるという考え方はご存じですか

証人: 仮説はまあ色々ありますが、何故そういう風に考えるのかいうのも色々ありますけど、現実に胎盤見たら筋肉が溶けている標本はないので、現実から考えないといけない。

弁護1: そういう考え方はどうかは別として、先生は先ほどの観察から、筋肉が溶けた所見は認められない、だから杉野仮説はあわない、ということ

証人: ええ、溶けた筋肉をどう測るのか、測りようがない

弁護1: 先ほどの22の写真で、この写真で筋層が溶けたところはない

証人: ひっぱられたようなところはありますが、溶けたところはないですね

弁護1: 具体的に標本をもとに、14の3、151号証19の写真の写しを示します。この標本をご覧いただき、標本14番、子宮後壁の高い位置にありますが、子宮底部、この写真で絨毛はどこにありますか

証人: 絨毛は生きている部分、拡大しないと難しいですが、

弁護1: 同じく14の2、7の19。

裁判長: 今の絨毛は

検察1: 写真違うのでは、

弁護1: 7の18です、すみません、私の勘違いで、14の1と14の3を訂正して示します。先ほどの拡大図が3の写真です。どこに絨毛がありますか、書いてください。これはaccretaである、incretaでない

証人: はい

裁判長: 14の3ですね

証人: ここに絨毛見えるんですけど、ここ14の1で、絨毛が見えてた部分に黒っぽいところが層状に見えて、その隣に白っぽい層があって、その上に少し絨毛が見える。全体像の中でみるとほんの一部分です。拡大するとあるように見えるが、肉眼所見の膜だけの部分と思います、そうではないところに見える絨毛は、他からとんできたかというふうに考えるのが普通やと思います

弁護1: ここは脱落膜ですか

証人: そうですね

弁護1: 脱落膜と思われる部分を緑で囲んでください。

証人: ここですね

弁護1: XX-14の14の3、杉野鑑定の写真をお示ししたいですが、標本のXX-14の写真です。

裁判長: 示す意義は

弁護1: 杉野先生が癒着とされた部位について、証人にaccretaかincretaがあるかないか見てもらう

検察1: 甲53号証の添付の写真が示しているものです。

弁護1: 甲53号証の写真を見てください。この写真で、脱落膜組織は認められますか

証人: ここの部分が脱落膜組織になると思いますが

弁護1: この写真で脱落膜組織が認められる。14の3で示す部分と重なる部分か示して

証人: この拡大図で、

弁護1: しめしてください

証人: この部、右のほうが脱落膜かと思います。高率の写真でひょっとみるとわからないですよね。低倍率の14の1でみると、ここがこうなって、とわかるわけですが、いきなり拡大をみると全体が見えない

裁判長: こういう、は記録できないので、言葉で

証人1: 14の1の低倍率の写真で囲んである部分の拡大だと思われる、ということで

弁護1: 拡大がXX-14ですか

証人: 拡大所見からみると、むしろ全体が見えないということで結構かと思いますけども

弁護1: XX-14のa、かなり大きいですが、この写真の中で脱落膜組織はわかりますか

証人: ここ全体

弁護1: これが脱落膜細胞ですか

証人: これが脱落膜です、栄養膜細胞も入ってるかもしれませんが

弁護1: 今おっしゃったところに印を。

弁護1: 標本27、弁151号証の添付された写真の別紙の27の42,43をあわせて示します。これは27の部分をとった写真。この中で27の3、4の2の写しの写真を見てください。この写真で絨毛は認められますか

証人: 認められます。

弁護1: 青線で示して、量はいかがですか

証人: 量は多くはないです。

弁護1: この写真に糸は写っていますか

証人: 写っています。

弁護1: 糸だけ示してください。縫合糸でしょうか

証人: そうではないですかね

弁護1: 3年前の帝王切開の際の糸ではないですか

証人: ではないと思いますね

弁護1: 古い糸ではない

証人: 古い組織反応がなくて、左側の糸は、組織が縫合によって左から右に、右側の糸は右側のほうから圧力が加わったように組織が曲げられています。そうすると、糸が組織がしぼっていたのかなと類推します。

弁護1: 2本の糸で組織がしぼられている、

証人: はい

弁護1: 2本の糸の間の組織は何ですか

証人: 組織はそこにある組織やと思います。そこは頚管だと思いますけど

弁護1: 古い組織ではないというのは

証人: 古い組織の場合は、こういうふうに空隙ができませんし、正反対の方向に空隙できませんし、3年前になりますと糸をとりまいて組織が形成されますが、そういう組織はないですよね

弁護1: 縫合糸の周りに膠原繊維が増えて、瘢痕組織が形成される

証人: 膠原繊維かもしれませんけど、縫合して3年もたった膠原繊維やと思いませんけど

弁護1: とすると比較的新しいという

証人: ですから、古いという根拠がない

弁護1: 今子宮頚管と。それはこの組織の場所が低いからですか

証人: 子宮筋層といえる組織ではなくて、薄いですし、そういうのを見ていると通常の筋肉組織とは違うんですね

弁護1: 子宮体部の組織ではない

証人: 肉眼写真とも比べてみますと、そうではないかと

弁護1: 肉眼写真というのは

証人: 子宮の組織片の写真です

弁護1: 組織片写真と肉眼所見、弁136号証の子宮写真、p6、p7の写真、136号証の別紙3-1、甲6の7の写真をまず示します。

裁判長: 前回書き込みがないですが

弁護1: 弁36と7の写真を拡大したいですが、27はBの下のところですね

証人: はい

弁護1: 弁36、弁151号証の別紙4の写真、の写しということで、では。この子宮片の写真のBの部分、摘出子宮の写真を比べて。先生は27が別紙4の写真のどこにあたるとお考えですか

証人: ここが子宮頚管と推測します。

弁護1: 先生はこういう低いところに胎盤はない

証人: 通常はここにこないと思いますので、最初申した人工産物の条件ですね、ありえないところにあるものはそういうことも考える

弁護1: あとは子宮筋層の写真で、27に写っている糸の周りの筋肉の状態が子宮体部の筋層の状態と違うとか、糸が新しいということで

証人: 糸自体はわかりませんが、周囲の組織の反応の形が、古いものではないということです

弁護1: 次に標本24について、別紙7の、35,36,37を示します。いずれも子宮前壁で帝王切開の部位の上にあたりますが、この部分に絨毛はありましたか

証人: 絨毛はありました

弁護1: では癒着胎盤と判断できるんでしょうか

証人: 先ほど、無毛部のような所見をあわせもっているので、肉眼的には膜のような部分で、解釈が難しい。

弁護1: 24の3、別紙7の37の部分で絨毛のところは

証人: 通常の絨毛はここにありますね

弁護1: 丸で書いてください

証人: ここですね

弁護1: さきほど先生は無毛部の組織と言われましたが何を言われたか

証人: 胎盤になれなかった部分が子宮表面のところに膜として子宮に残る、そういうところに古い絨毛が見えるわけですね。

弁護1: 古い絨毛

証人: 古い絨毛というのは、無毛部で、初期には全体が絨毛で、退化していったときに無毛部になる、と説明しましたけど、退化した絨毛を無毛部といいますが、そういう無構造物がここに見えます。

弁護1: 壊死とは違いますか

証人: 壊死とはあんまり言いませんね。他と紛らわしいので、退化した絨毛と言った方が区別しやすい

弁護1: 生きてないということですか

証人: そうです。退化した絨毛といったほうが良いですね

弁護1: そういう絨毛がそこにある

証人: あるように見える。

弁護1: それを丸で囲んでください

証人: 評価困難ではあるんですが、ひとつひとつは人工産物や、無毛部なんだけど(聞き取れず)ところもある

弁護1: アーチファクトの可能性はあるんですか

証人: あります

弁護1: こういうところに絨毛が見えるけど、死んでいる

証人: 死んでる言うか無毛部ですね。場所的にも、胎盤ののる範囲外ですしね

弁護1: 範囲外、胎盤の範囲外の膜部。その膜部というのは卵膜ですか

証人: そうですね。卵膜が表面を覆っている可能性がある、先ほど胎盤にほとんど卵膜がない、というのは子宮壁に残っているわけです。

弁護1: 古いというか死んでいる絨毛のとなりに新しい絨毛があって実態はきわめて近いところにある、一緒にあることもあるのですか、

証人: あまり経験はないです。ないとはいえないが非常にまれ。

弁護1: 考えにくいのですね。卵膜は具体的に説明して

証人: 卵膜は胎盤の外側の膜で、外から羊膜、絨毛膜、脱落膜の三つの層からなる。病理では卵膜とはあまり使わないけど。

弁護1: 子宮帝王切開部分の上だが、本件の胎盤癒着の外側と理解されますね

証人: 外にあるのは間違いないです

弁護1: 結論的に胎盤、絨毛の関係はまとめると、

証人: 後壁中心に明らかに癒着はあり、incretaは深さ5分の1、その周囲にaccretaがある。子宮底部にも絨毛だけ残存しており、前壁にもあるが、人工産物の部分もあるし、基本的に前壁に癒着はなかったという所見です。

弁護1: そういう所見をまとめていただいたわけですね。弁151号証ですね。添付7の13をご覧ください。これは標本10。絨毛はわかりますか

証人: 四角で囲まれている部分です。拡大している写真もあったと思いますけど

弁護1: 拡大写真は甲53号証に添付された杉野先生のXX-10。対応する部分があるんですね。

証人: 変性はしてますが、ばらけたように見えますね、退化絨毛ではないですが、やや挫滅している印象を受けます。

弁護1: 脱落膜はありますか

証人: 脱落膜はこの層です

弁護1: 書き込んでください。この中に脱落膜細胞がある

証人: あります

弁護1: 栄養膜細胞は

証人: あるでしょう

弁護1: 識別する方法はあるのですか

証人: 簡単かどうかわかりませんが、一応あります。免疫組織化学という方法で、脱落膜細胞の抗体、栄養膜細胞の抗体で染めます

弁護1: 18の写真、弁151の添付の別紙の写真の24,25,26、まず7の26。これは絨毛ありますか

証人: 18の3でこれが絨毛ですね

弁護1: 7の25、これの拡大は、これは絨毛ありですか

証人: これはこういう低倍で全体をみますと、他になくて空隙にぽんと出てくる。ここの組織の上に何かのっかっているように見える。この場合は人工産物も考えないといけない典型例ですね。この部分とこの部分がもともとの組織の上にぽんと乗っている印象があるんですね。全体の中で、空隙だけに出てきています。確定は難しいです。

弁護1: 終わります。これまで提示した写真、すべて添付します。

裁判長: では休憩で、次は午後1時50分から始めます。

午後1時50分〜

【検察側尋問】

裁判長: それでは検察の方から

検察1: 鈴木から質問します。前を向いてお答えください。今日先生は、証人は胎盤子宮について鑑定をされたとき、実際に証人が書いた証言は鑑定書という部分であることはご記憶ですね

証人: はい

検察1: 先生は通常病理診断はされると思いますが、病理診断と病理鑑定との違いについて先生のご意見はありますか

証人: 急にきかれても何を答えたらよいのかわかりませんが、フォームが違いますね。病理医が所見を書いて診断を書くのが病理の診断書ですね。

検察1: フォームが違う、書類の書き方が違う、他には

証人: もう少し具体的に言っていただいた方が良いのですが。たとえば今回の鑑定に関して病理診断とは違うのか、というような問い方で

検察1: 先生が提出された書類に「鑑定」と書かれていたので、何故病理「診断」ではないのかお聞きしたいのです

証人: それは診断書の形で依頼されたのではなくて、鑑定書だったからです

検察1: 証人はこれまで鑑定をされたことはありますか

証人: はい

検察1: 具体的にはどのような鑑定ですか

証人: 突然死のことでいくつか仕事をしていまして、外来で突然死の形で来られたことを書いたことがある。

検察1: いつ頃のことですか

証人: 2、3年前です

検察1: 鑑定を依頼してきたのはどこですか

証人: いくつかありますが、大阪のある開業医さん、他には大阪府の鑑定をしたこともあります

検察1: 鑑定の件数は何件ですか

証人: 数件です

検察1: 具体的には

証人: 5,6件くらい

検察1: 刑事事件と民事事件の区別ではいかがですか

証人: だいたい民事です

検察1: だいたい、とは

証人: 頼まれ方が色々で、書面で書いたときも、病理のみのサポートをしてくれとか

検察1: 新生児の突然死とおっしゃった

証人: 新生児の突然死もありますし、5歳くらいの子供さんが外来で開業医さんで亡くなって、法医の鑑定をしたり

検察1: 小児以外の分野では

証人: 胎盤の鑑定では、警察の依頼でとか、胎児の解剖で肺の鑑定で生まれてきたかどうか、とか、子供が行方不明でいないのだが、その胎盤みて、生きて生まれたか死産だったのか判定したりとかいうのがありますね

検察1: 刑事民事という詳細ははっきり覚えていられない

証人: はい

検察1: 鑑定書をお書きになったことは

証人: 今回のような形のは、あと1件くらい

検察1: 鑑定書を書かない例はどんな例ですか

証人: 病理のところだけ見てくれというような、手伝いですね

検察1: 補助ですね、証人自身鑑定書作成は何件ありますか

証人: 警察依頼分も何か書いたと思いますが、今回のようなものではなかったですね。

検察1: 今回みたいな鑑定書を書かれたのは

証人: あと1件です

検察1: いつですか

証人: それは、先ほど言いました、外来での突然死の鑑定のとき

検察1: 法廷で証言されるのは初めてですか

証人: はい

検察1: 今回の鑑定について、証人にお願いするような最初の話はいつありましたか

証人: 去年の6月くらいです

検察1: どのような経緯でしたか

証人: 平岩弁護士から、電話があって、初めてだったんですが、そのとき横浜で国際学会がありましたので、話をきくことになりました。

検察1: 最初はどんな話の内容でしたか

証人: 電話であまり聞いてないような気がしますけれども

検察1: 最初から鑑定の依頼がありましたか

証人: そうじゃなかったような気がしますが

検察1: 鑑定に至った経緯は

証人: 横浜でお話を聞きまして、胎盤の写真を見て、意見を述べたと思います

検察1: 6月の時点でどのようなものを見せてもらったのですか

証人: 胎盤の写真と、カルテとか、あまりはっきり覚えてないのですが

検察1: そのとき、本件が刑事裁判になっていることは認識されていたのですか

証人: してたと思いますけどね

検察1: 癒着胎盤を剥離したというようなことでということは

証人: 把握してたと思いますけど

検察1: 6月頃に話しがあって、実際に鑑定を引き受けたのはいつですか。鑑定書ではわからなかったものですから

証人: あまり覚えてないですね、去年、そういう話になったと思うんですが

検察1: 当初の鑑定書は、去年、平成18年11月に作成されてますね。で、鑑定書には残存子宮と顕微鏡標本、胎盤の写真、カルテなどを参照したということですが、他に資料で参照されたものはどういうものがございますか

証人: たとえば?

検察1: 例えば杉野博士の鑑定書とかは参照にされましたか

証人: 覚えていないが、いずれかのときに見せてもらったと思う

検察1: では杉野鑑定の写真は参考にされましたか

証人: 必要な写真は見たと思いますが、あまり覚えてないですね。鑑定書は見た記憶あまりないですね

検察1: カルテはご覧になりましたか

証人: 鑑定の時に送られてきて見たと思いますが

検察1: 外来カルテですか、入院カルテですか、両方ですか

証人: 必要なものは見てると思いますが、あまり覚えてないですね

検察1: 状況について、加藤被告から話しを聞きましたか

証人: 直接聞いてはいないですね

検察1: 加藤医師の説明は耳に入ってないですか

証人: 夏頃に標本をみて、自分の写真をまとめたので、そのときにはあまり入ってないでしょうね

検察1: 当初の鑑定では杉野博士の鑑定は見ましたか

証人: 多少は見たと思いますけど

検察1: 当初の鑑定で、杉野博士の鑑定を参照されたりというようなことは

証人: 当初の鑑定の時には、あんまり覚えてないんですけど、克明に参照してないですね

検察1: 加藤医師の話は

証人: ですから、必要なものは資料を見て参考にしてると思いますけど、克明に参照、というか、そういうことは、ないかと思います。

検察1: 鑑定の際の資料について、鑑定書に記載しましたか、カルテを参照したとか

証人: 書いていると思いますけども

検察1: カルテは書いてないですよね。証人が何を参照して、判断材料にしてどう判断したか、ということについて、鑑定書に記載がないものですから、お伺いしているのですが

証人: 必要なものは書いた思いますけども

検察1: 証人の判断に必要なもの、必要な資料について、鑑定書には書いたということですね

証人: 書いたと思います

検察1: 根拠となるものを記載したということですよね

証人: はい

検察1: 証人の結論にあわないものを書いていないということですね

証人: あわないもの、て何ですか

検察1: 証人の結論とはあわない資料について

証人: 結論にあわないものを書かないとは言うてませんよ

検察1: 残存子宮、顕微鏡標本を直接観察されたのは平成18年8月に福島県立医科大学でということで、よろしいですね

証人: はい

検察1: 医大で組織をみた時間帯は

証人: 昼から夕方6時くらいだったでしょうかね

検察1: 午後1時10分から午後4時50分、というご記憶はないですか

証人: そうですかね

検察1: 午後1時10分に医大に到着され、午後4時50分に資料を返却したと、記録ではそうなっています

証人: ならそうでしょうね

検察1: 子宮片の復元にかかった時間はどれくらいですか

証人: 30分くらいでしょうかね

検察1: 復元と観察とあわせてではどれくらいかかりましたか

証人: そんなん復元しながら観察しますよ。見ながら復元するわけですから

検察1: では復元観察あわせては

証人: 30分言いましたね

検察1: 顕微鏡観察にかかった時間は、開始は何時頃でしたか

証人: さっき4時50分に返却と、おたくが時間を把握してらっしゃるから、そうでしょう

検察1: 最初に顕微鏡をご覧になったのは、何時何分からですか

証人: 最初、顕微鏡のセットアップの時間もありますから

検察1: O社の人が顕微鏡のセットアップのために来ていて、1時20(?)分頃から顕微鏡観察と言われています。

証人: そうかもしれませんね

検察1: 顕微鏡観察されてから子宮片の復元されたのではないですか

証人: 覚えてません

検察1: 再度、標本をご覧になったことはないですか、8月29日から以後

証人: ないですね

検察1: 最初の鑑定書が11月8日ですが、鑑定のお時間はどの程度かけられましたか

証人: なかなかまとまった時間がとれないんで、実際にかけた時間てのは難しいですね。依頼原稿よう書きますよね、それ何時間かけたかて言われると難しいですよね

検察1: お忙しいんでしょうね。鑑定書を書く時間についてはどうですか

証人: 細かい時間を積み上げると難しいですね

検察1: 何時間かというのは難しいということですね

証人: はい

検察: 証人は11月に鑑定書を提出したあと、追加の鑑定を出されましたが、追加を頼まれたのはどういう経緯ですか

証人: 前のところの細かいところについて、説明とか、絨毛膜無毛部とか、わかりにくいところがあるので、それついて付け加えました

検察1: 8月28日日付で追加の鑑定書を出されてますが、追加の分はどのくらい前に依頼を受けられましたか

証人: あまり覚えてないんですけれどね

検察1: 依頼された日付が追加鑑定書に書かれてないので

証人: 弁護士さんから頼まれて、いつかは覚えていない

検察1: 今回の裁判、公判がどのように進んだか、状況聞いていましたか

証人: あまり聞いていないですね

検察1: 杉野博士が証人で、追加鑑定、捜査鑑定書は用いましたね

証人: はい

検察1: いつでしょうか

証人: 4月頃でしょうかね

検察1: 杉野博士が裁判所で作成された、図面は届いていますか

証人: あります、一応見てます

検察1: 追加鑑定の際に新たに資料にしたものはありますか

証人: 杉野先生のファイルは一応見ましたが

検察1: 何の資料を使って追加の鑑定をしましたか

証人: 自分の前の鑑定書です。

検察1: 自分の前の鑑定書。あと資料としては

証人: 資料

検察1: 例えば杉野先生が作成された写真とか資料なんかについては

証人: 杉野先生の資料も、写真は見ましたが、あまり使っていない

検察1: 追加の鑑定書をだされる際に、子宮片やプレパラートは再度見られてないですよね

証人: はい

検察1: 今日までに子宮片をご覧になったのは、平成18年8月29日の午後の4時間だけだったということですか

証人: そうですね

検察1: 追加の鑑定書に要した時間はどれくらいでしたか

証人: 前よりはだいぶ、整理するのに使いましたが、何時間か、言われても

検察1: 被告人の加藤医師の所見や説明など新たに参考にしましたか

証人: あまり参考にしてないですね。助産師さんの記録とかは見ましたが

検察1: 胎盤剥離面の状況とか

証人: 書いてありましたでしょ。

検察1: 加藤医師の書かれたものについては

証人: 必要なものはその都度見るという形ですね

検察1: 追加の鑑定書にも、証人が使った資料について掲げていないのですが

証人: そうかもしれませんね

検察1: どういう資料を使ったか、どういう資料に基づいて判断したか、鑑定書には書かないのですか

証人: そうですね、書き慣れてないからかもしれませんし、内容の方が重要と思ったからかもしれませんね

検察1: 書き慣れてないですか

証人: あまりね

検察1: 追加鑑定書に証人がお書きになった中で、病理鑑定の方法や理念、留意点は書かれましたか

証人: はい

検察1: ここで使われた鑑定は、通常の病理診断と違うのですか

証人: あまり変わらないと思いますけども

検察1: ここで使ったもの、先生の記載された留意点とは、一般的な病理診断と同じですか

証人: そうですね

検察1: 書いたのは、何故ですか

証人: あ、そういうことですか。守られてないことが多いし、これが守られないと診断が違ってくるということで、書きました

検察1: 癒着の診断には子宮の組織を顕微鏡で観察することが最も重要と書かれたのを、覚えていますか

証人: 大事なもののひとつですね

検察1: 他に重要なものは何がありますか

証人: 午前中と同じですが、言いましょか。肉眼所見、低倍・高倍の胎盤、子宮の観察

検察1: 肉眼所見とは、直接見ることですか

証人: はい

検察1: 肉眼所見、とおっしゃってますが、顕微鏡で観察の場合、写真を見ることがあるのでしょうか

証人: そりゃありますよ

検察1: 直接顕微鏡を見るのと、写真を見るのとでは、どちらが忠実に診断できますか

証人: もちろん、直接顕微鏡を見るのは本人しかできません。我々プレパラート見ないと、というのはありますが、自分で見て、写真を撮って相手に見てもらうというのは部分ですよね。

検察1: 基本はプレパラートを直接見るということですか

証人: 組織ではね。プレパラートは肉眼の中でどこを撮られたか、というのがまず大事なとこです

検察1: 証人は、福島県立医大で写真をとられていますね、どのようなところを撮られたのですか

証人: 午前にも言いましたけど、まず全体像をみるために低倍で、その中で病変があるところを高倍率で観察することは基本やと。いきなりね、部分をみるんじゃなくて

検察1: 低倍率の撮影は鑑定書の追加に添付されましたね。追加鑑定書の説明には、低倍率の観察は、対物レンズが4倍で、対眼レンズが0.5倍ということで、2倍の倍率で書かれたということですか

証人: 4倍で確認しました、中倍率

検察1: 低倍率のもので全体を見て、気になるところを高倍率で観察されたということですか、それとも中倍率

証人: だいたい中倍率でわかるんですけども

検察1: 脱落膜かどうか、中倍率でわかりますか

証人: どっちでもわかるものとわからんものあります。典型的なものは中倍率でだいたいわかります

検察1: 低倍率撮影を、100倍で拡大するのと、最初から顕微鏡で直接200倍で見たのとでは、組織の見え方は違いますか

証人: 見え方ってどういうことですか

検察1: 鮮明さとか、

証人: そんなの一緒ですよ。その倍率にあげようが

検察1: 低倍率の観察を

証人: 低倍率は、細胞の形を見るもんと違うんでね。組織の構造を見るもんですよ

検察1: 組織の構造、基部について、絨毛や栄養膜細胞か脱落膜細胞なのか、知りたいときに、先生は直接標本をご覧になってないですね、それで

証人: それはどういうことか、わからんのですが

検察1: 先生は、全体の構造を低倍率で観察されて、気になるところがあると

証人: わかりました。低倍率でみて、それをズームアップしていったときに、もとから高い倍率で観察したほうがいいかってこと。

検察1: 肉眼で顕微鏡で200倍で見たときと、もと低倍率で観察した写真を引き伸ばしたのと

証人: そりゃ最初に撮った方がいいでしょう。

検察1: 最初から顕微鏡で高倍率でみたほうが

証人: 直接見ながら40倍とかね、そりゃそっちのほうが鮮明やと思います

検察1: 撮影したものはデジタルで保管され、資料作成の時には印刷されたとのことですが、プリントアウトのときに、どの程度デジタル画面と印刷物との差があるのか、というのは

証人: どうでしょうね、支障をきたすほどのものはないと思いますけどね

検察1: 杉野写真も、プリントアウトのコピーを見られたんですよね

証人: ええ

検察1: 顕微鏡写真の限界、実際に顕微鏡を通して観察されたらもっと見えたというように実際にお感じになりませんでしたか

証人: あまり思いませんね

検察1: パラフィン包埋の過程で、組織の混入が起こりうるのは、絨毛に限らず一般的に起こりえますか

証人: 程度が全然違うんですよ。午前中もちょっと言いましたけどね、絨毛は枝がいっぱい伸びてるもので、すぐばらばらになりますね。肝臓とか実質臓器はそんなの伸びてないからあまりばらけないです。そんなのと全然違いますね

検察1: 癒着、嵌入胎盤ではどうですか。incretaの部分を切り出す作業で、絨毛はばらけますか

証人: そうですね、その可能性はありますね、そこに絨毛があるわけですから

検察1: 癒着、嵌入胎盤でもですか

証人: そうです。

検察1: 証人は胎盤標本の作製をされたことはありますか

証人: 胎盤は絨毛で構成されていて、うちでは毎日やってます

検察1: 絨毛がばらけやすいんですか

証人: 胎盤が、絨毛組織が入っていると、絨毛がばらけやすい

検察1: いろんな過程で、アーチファクトが混入すると指摘されていますが、手術手技のときに絨毛がはがれて別のところに付着することがある、はがれた先にどういうところにいくか傾向あるのでしょうか、どこかに集まるとか

証人: アーチファクトは3つの過程でおこるの、繰り返しますけど。1つは手術の中ですが、どこからどこへ動くのかは私は良くわかりません。2つめは切り出しのときまな板の上で切りますので、そこで混入したりする、3つめは絨毛が入った組織を機械に通すときにカセットに入れるのでどこかにいく。絨毛はどこにでも行きうるんです。だから観察のときに、ありえるのかどうか慎重にしないといけないということで。理論的には機械にかけるのが1日1個、切り出すのも1個だけ、というんやったらいいですけど、そんなん不可能ですからね。

検察1: 標本作製のときのカセットで、というお話されましたが、小さな穴があいているということですが、記憶はございますか、

証人: まあ1mmか2mmですね

検察1: (聞き取れず)

証人: それは標本の中の話です。

検察1: 本来ありえない場所の絨毛組織はアーチファクトということで、今回子宮の外壁に絨毛を認めたということでアーチファクトということですが、子宮内壁、漿膜の外側の絨毛はアーチファクトの可能性が高いと、鑑定書に

証人: そうですね

検察1: 漿膜の外側はアーチファクトですか

証人: 漿膜の外側ってのはないです、はい

検察1: アーチファクトかどうか、注意して観察するのは病理一般的な考えですか

証人: 病理では常に気をつけることです

検察1: どういう場合アーチファクトか、場所以外に他に気をつけるところはありますか

証人: 場所、空隙にのっかってるとかいう場合ですね、組織に接着せず浮遊している場合、アーチファクトかどうか常に気をつけます

検察1: 証人としても浮遊を癒着と診断された例はありますか

証人: 空間にあるもの、それは癒着とは言えないですからね

検察1: 癒着の組織間の生体反応はいかがですか

証人: 今回のようなのはないですね

検察1: どんなものがありますか

証人: マクロファージなど、炎症で反応性に出てくるもの、ある程度時間がかかって出てくるものです

検察1: 今回はいかがですか

証人: なかったですね。挫滅はありましたけど、リンパ球とかなかったですね

検察1: たとえば、絨毛と組織の間にフィブリンを認めたとき、そこに絨毛がもともとあったと判断するのですか

証人: フィブリンは微妙なところで難しいですが、フィブリンという言葉の対応が微妙で、フィブリンは血液中の好中球とかと共にあるんでね。そこにフィブリンがあるという書き方を混同するとややこしいですね

検察1: 一般的にアーチファクトの判断の際の考慮というか、基準として、フィブリンは重要ですか

証人: フィブリンがあってもアーチファクトの可能性がありますね

検察1: フィブリンがあると、もともとそこにあった胎盤ということにならないですか

証人: 言葉だけでいいますと、筋層があって、そこにフィブリン膜があって、という言い方だといいですが、血液があってもフィブリンと言ってしまうので。既存のフィブリンがあってならそうですが、血液があるなら既存でないですね。

検察1: 証人が顕微鏡標本をご覧になった際には、その際アーチファクトに気をつけてみたということですね

証人: 私は毎日胎盤見てますんでね

検察1: 当初の鑑定書でもアーチファクトについて考慮されていたのでしょうか

証人: はい

検察1: しかし当初の鑑定書にはアーチファクトについて一切言及されていませんね

証人: はい。当初は自分のみた所見中心に書いているので、そういうアーチファクトには触れない

検察1: 今回アーチファクトがあることについては、絨毛であるが、胎盤の外であるという結論を(聞き取れず)

証人: 胎盤外の膜の部分という結論はありますね

検察1: 胎盤外の膜の可能性については、当初の鑑定書では指摘されていない

証人: はい

検察1: 追加の鑑定書では胎盤外の絨毛について、アーチファクトの可能性を説明しているのに、最初の鑑定書ではそのように説明されていないのは何故ですか

証人: だんだんわかってくるというか、最初は自分の写真中心に鑑定書を書いてますんで

検察1: ご自身で写真を撮影されていますね。そのときはアーチファクトとは書いていないですよね

証人: 最初の鑑定書は軽く書いていますんで、アーチファクトも含めて、癒着胎盤の診断をしてますから、考慮はしていてもそこまで書いてないってことですね

検察1: どんな資料を見て、2回目はアーチファクトにしたのですか

証人: 子宮頚管部なんかは、標本を何度も見ているとここは違うなとか、認識が深まって

検察1: 今27番をおっしゃいましたが、他はいかがですか

証人: 切開の上のところは、マクロ所見でなく、膜だけのところがいっぱい出てきた。解釈について考えて認識が深まったんですね。

検察1: 当初の鑑定ではそこまで深く考えていなかったという

証人: 深く考えないというか、絨毛がある、ないについて書いたと思いますけどね

検察1: 27の1の4、低倍率で観察されていますが、アーチファクトの検討で高倍率の写真はありますか

証人: 写真に撮ってませんが、アーチファクトの検討に高倍率は必要ないんです

検察1: 必要ないんですか

証人: はい

検察1: 他の標本いくらかお見せしますが、

証人: はい

検察1: 追加のところのアーチファクトについてうかがいます。

証人: 僕のものですね

検察1: 杉野博士が4月に作成された顕微鏡写真のプリントアウトがあるのですが、ご記憶は

弁護1: もうちょっと具体的に示してください

検察1: 甲53号証の標本Aの1、これは今年の4月にアーチファクトの判断には杉野博士の追加の顕微鏡写真を参照されたということですが、

証人: 高倍率が多いので、比べてそれはここと違うかというところがありました。それで、それはちょっと違うやろ、というところもたくさんありました。

検察1: 追加の鑑定書ではアーチファクトに気をつけると記載されていますよね、これは当初の鑑定よりも気をつけるという意図になっているのですか

証人: 見てね、こういうところにこういうのがある、これが出てるのは違うわ、というところがあったん違いますかね

検察1: 子宮でどちらが、前壁、後壁かについて、どう判断されたのですか

証人: 母体側の胎盤と後壁と、臍帯がついている側を見て判断しました

検察1: 補助の資料を使ってということは

証人: ありません

検察1: 子宮の前壁、後壁が間違っている可能性はありませんか

証人: まずないと思います。壁の状態と胎盤の状態と、胎盤の形をみれば、間違っている可能性はないでしょ。逆を考えろ言うんですか、成り立たないでしょ

検察1: 前壁癒着で、こちらが前壁と特定したとして、どういうふうに癒着していたかわかりますか

証人: だいたいわかります。

検察1: どういうふうに

証人: あの形で、あの位置だったら、多分あの部分が子宮口に位置していたんだな、反対の部分が後壁というようにです

検察1: 鑑定のとき、前に前置胎盤?かわかっていたのですか

証人: わかっていました

検察1: 子宮標本は直接ご覧になりましたか。写真は最初から拡大しているのですか

証人: 両方見てます、標本の写真も見てます

検察1: 胎盤の写真のみのご判断はこれまでにありましたか

証人: 臨床上ね、写真見せて、意見聞くいうことありますからね、基本は胎盤の標本が残っていたらベストだがないですから、

検察1: 標本観察がベストですか

証人: はい

検察1: 写真の場合、光のあてかたとかで見え方が変わってくることは

証人: 可能性はありますね

検察1: どういう

証人: そりゃ全体は、そうですが、ある部分の間の差とかはわかります。写真は写真で制限はありますが

検察1: 母体面で、脱落膜のあるとかないとかは、確定可能ですか。

証人: その他のところはずっとあるんですが、写真ではある、ない、見てわかります。

検察1: その他の所に脱落膜があるかどうかについて、

証人: 肉眼的な写真ではあるように見えますということですが、左みたいに見えます

検察1: 白い光沢のように見えるということですね

証人: もっといい表現あったら、言い換えますけど

検察1: 脱落膜ないところはどのように見えますか

証人: むき出しになってないようなところは膜があるように見えますから、それ以外の部分の見え方ですね

検察1: 写真からの判断には限界がありますか

証人: 限界はありますが、それくらいはわかりますね。後壁の胎盤癒着はそれくらいで判断できます

検察1: 証人は右とか左の説明は、写真をみてされていますか

証人: 写真をつけました

検察1: 追加鑑定書では左右はどうなっていますか

証人: 追加鑑定書ではたくさんの写真を並べたので、最初と比べて数枚で天地が違っているのがあります。

検察1: 鑑定書では、母体面右、左、と説明があり、それが写真の向きか子宮の癒着の方向かわかりにくいのですが

証人: 写真じゃなかったですかね

弁護1: 話がかみあっていないんではないですか

検察1: 弁135号証、写真の2。こちら上下左右は証人の右側が写真の右ですか

証人: そうですね

検察1: 弁151号証、写真の2では、こちらは上下左右の説明がないですが

証人: そうですね

検察1: 具体的に標本の説明で、絨毛をどういうものか表現するのに、変性、退縮、壊死、胎盤絨毛、と説明されていますが

証人: それはありますね

検察1: 変性はactiveだけど変性しているものですか

証人: 退化は壊死とか、退縮と退化は同じです。変性は構造変わっているもので、挫滅とか細胞質がばらけているものとかは変性と言っています。

検察1: 変性や挫滅があっても、胎盤の絨毛を否定するのもではないのですね

証人: そうです

弁護1: 検察官は言葉の使い方が違うのです。胎盤絨毛はその由来を示すものです

検察1:胎盤由来かどうか聞いただけです。妊娠に従って、絨毛が退縮し無毛部になるのですか

証人: はい

検察1: 退縮しなかったらどうなりますか

証人: 全部絨毛がとけあっていたりします。退縮してこれくらいのうまい大きさに胎盤がなっていくわけです

検察1: すべて退縮したら、膜様胎盤ですね、一部退縮するとはどういうことですか

証人: 今回の例のように分葉胎盤になるんではないかと思います

検察1: なぜそういうことがおこるのですか

証人: 一般にはおこらないですね。そういう風に考えたらということです。

検察1: 膜様胎盤は珍しいのですか

証人: そうですね

検察1: 退縮した絨毛は組織的にはどうなっているのでしょうか

証人: ゴースト化といって、絨毛の形がみれなくなっています

検察1: もともとの組織が変化してそういう結果になるのですか

証人: はい

検察1: 普通の核はどうなっていますか

証人: 卵膜の膜の外の(書き取れず)

裁判長: 証人は一呼吸あいてから答えてください

検察1: 具体的に標本について伺っていきます。番号を言われたら標本がわかりますか

証人: わかる部分とわからない部分があると思いますね

検察1: 標本番号弁151の別紙3の1、標本20について、子宮の後壁側、incretaの判断でよろしいですか。

証人: はい

検察1: 嵌入胎盤の診断について、別紙7の29を示します。まず、左側、証人の顕微鏡写真、これでincretaの判断が可能ですか

証人: 肉眼で明らかですね

裁判長: 映してもらえませんか

検察1: 組織は別に説明します。甲6号証の写真5の部分を示します。下の割面のNo.20ですが、肉眼でどうしてわかるのですか

証人: 黒っぽく見えている部分が胎盤と思われる場所です

検察1: 肉眼でもわかりますが、顕微鏡でも説明していただけるということですので、別紙7の29。これで絨毛はわかりますか。青で囲んでください

証人: この部分です。この写真を見ると、20番の写真をみると、亀裂なんですよね。アーチファクトの可能性があります

検察1: 証人が撮影された場所はここですか

証人: そう思いますよね

検察1: プレパラートを見たらどこかわかりますか

証人: 同じですよね

検察1: 標本がここにあれば、証人はどれかわかりますか

証人: わかりますよ

弁護1: 今何をおっしゃっているのかよくわからないのですが

検察1: 証人の写真が標本の場所であるということがわかると、こちらとしてはプレパラート標本をみて確認してもらいたいのですが

裁判長: いくつあるのですか

検察1: プレパラートの20番だけです。XX-20と書いてあります。XX-20はプレパラートの番号です

証人: あったら見ましょか

裁判長: プレパラートは無いですよね

検察1: 見ていただいたので、どこかわかれば表示できます

弁護1: プレパラートの組織は小さいから見てもわからないんじゃないですか

検察1: でも今、証人がわかるとおっしゃっていますが

裁判長: 見ていただいてどこか認証してもらうだけでよいということですね。どんなものかこっちに見せて。じゃ証人に見せて。

弁護1: 確認とらせて

検察1: 質問ですが、No.20は子宮割面の20の上の区切りと下の区切りを網羅しています。その中の一部について写真を撮影されましたね。その場所は胎盤の場所と思われると。

証人: はい

検察1: 直接プレパラートを見ていただいて、No.20の写真とも比較いただいて

証人: なるほどわかりました、違てますね

検察1: 今ご覧になったのを、線で、甲6号証の写真5の下の拡大図に撮影された場所を四角でいれてください

証人: 恐らくここかなと思いますわ

検察1: 四角で囲んだところについて

証人: ちょっとそれは顕微鏡で見ないとわかりませんわ

検察1: 今緑で囲まれたあたりが標本20、線で下に線を引いて、標本20の写真撮影範囲と書いてください

弁護1: 標本20というのは、XX-20は杉野証人が20を撮ったということですよね。切片とったのは、技師でしょ

検察1: 伺いますが、今のプレパラートが標本ですよね。XX-20が子宮割面の20の部分、証人が鑑定で見たのも、今の部分ですよね。この一部分を写真撮影したと、それが標本20の写真ですか

証人: はい

検察1: 同じように杉野先生も自分の気になるところを写真撮影されたと

裁判長: それで先ほどの書き込みが問題なの? もう一度説明して

検察1: 標本20は写真の撮影の範囲です

弁護1: XX-20が標本20のタイトルですよね

証人: はい

検察1: 標本20を撮影した場所ですよね

証人: それは正確なことは言えないと思いますけどね

裁判長: 標本20の撮影か? と書いたのですね。特定されてれば問題ありません

検察1: 顕微鏡写真で説明の、絨毛の部分をその緑色の範囲のあたりでありますか

証人: 見たかぎりは変更させてもらいますけど、正確には顕微鏡みないとわかりませんね

検察1: 引き続きお伺いしますが、嵌入胎盤の程度は、筋層のどの部分まで侵入か、分母の特定の必要がありますが、外側については確定できますが、子宮の内側についてはどういう観察から特定するのですか

証人: 胎盤が遺残していない部分の両端から推定します

検察1: 子宮が彎曲している場合はどのように特定するのですか。切り出すとき、縦に切って分割しますが、中央は直径、壁に垂直に切っています。右端、左端にいくと子宮がカーブをかいていますね。

証人: そうですね

検察1: 厚みは実際よりも多く出てくることになりませんか

証人: 理屈を言えばそういうことになりますが、切り出す時の角度とか、そこまで細かいことになるときりがないんですね。通常は2点を見て、だいたいこれくらいだろう、と判断します。

検察1: どのていどの癒着ですか

証人: 半分にはいかないが、10分の1まではいかない程度ですね

検察1: 今回2カ所の切片ですが、別の場所を切っていますね。浸潤の度合いが変わるということはありますか

証人: 可能性を言えばキリがないので、病理の方法は合理的な方法で、標本をつくって、肉眼と両方で判断するということになっております。

検察1: No.22、後壁の下のほうで判断されているのは何故ですか

証人: 僕はNo.21かNo22のどちらも見たと思っているけれど、No.22の方が深かったので、それで測ったわけです。

検察1: 肉眼でこんなもんだと説明いただいたということでよろしいですか。午前中書き込みをしていただいた割面の写真をお示しします。別紙6の写真の写しです。だいたいですが、分母分子を物差しで測って

証人: 31分の6くらいですね。午前中にはきわめてすっと線を引いたので、正確にさせてもろてもいいですか? すっと書けいわれて線をすっと引いたんで、それを測れ言われたらフェアじゃないですよね

検察1: 分母と分子を測定できませんか

証人: 微妙に違うでしょ、午前中はそこまで正確には書いていないものを、測ってやれてのは、僕フェアやと思いませんけど

検察1: それではいいです。今回、子宮に胎盤残存があった、No.21、No.22だけでなく、となりにも残存があった、というご記憶はございますか

証人: はい

検察1: 写真を見れば、胎盤残存部分を説明していただけますでしょうか

証人: ある程度は可能です

検察1: 追加鑑定書の別紙の6、これで左の方は21、22、右の方にも胎盤の残存は指摘していただけるでしょうか

証人: これではちょっとわからないですが

検察1: 左側と同じレベルのところではどうですか

証人: これはちょっとわからないですね

検察1: 写真の精度の問題ですか

証人: 出血をまじえた組織ですから、これは肉眼だけではわからないですね

検察1: 写真下のU字型のくぼみですが、このあたりの胎盤残存はわかりますか

証人: その前の全体を撮った写真ありますか。ここだけ言われてもようわからないですね

検察1: 追加鑑定書の別紙の6では、どうですか

証人: 後壁ですか、よくわからないですね

検察1: 角度を変えた拡大写真があればわかるかどうかについてはいかがですか

証人: 出してみてください

検察1: 甲35号証、写真7、上下左右を入れ替えて、写真7の上の右側、内壁の右と書いてありますが、このあたりはいかがでしょうか

証人: うーん、可能性はあるかもしれませんが・・

検察1: 顕微鏡でこの標本をご覧になりましたか

証人: 覚えていません

検察1: No.20が嵌入胎盤だったか、覚えていらっしゃいますか

証人: すぐには思い出せませんが

検察1: では、嵌入胎盤ではなかったですか

証人: はい

検察1: 子宮壁が薄くなっている理由はいかがですか

証人: 収縮不良かもしれませんね

検察1: 収縮不良はどういうことからおこりますか

証人: 癒着胎盤と関係するかもしれません

検察1: 壁が薄いから収縮が悪いとのことですが、収縮の早さはどのくらいでしょうか

証人: それは難しいですね。死産で子宮掻爬した後でも、どれくらいで収縮するかは、個人差があっていろいろですから難しいです。

検察1: 証人は鑑定書で癒着胎盤の程度を5分の1と指摘されていますね。当初の5分の1の説明では、何の資料を使って判断されたか覚えていらっしゃいますか

証人: 何か、とは?

検察1: 写真2枚つけてお書きになっていますね。1枚についてはこの写真とご記憶にありますか? また、もう1枚は顕微鏡写真だったのですが

証人: そうだろうと思います

検察1: 証人の記憶喚起のため、示します。

証人: 最初の方はそうかもしれません

検察1: どこかご記憶ですか

証人: 21番じゃなかったかと思います

検察1: 何故どこか、鑑定書にお書きにならなかったのでしょうか

証人: 書いたかどうか覚えてませんけど

検察1: 写真の倍率が何倍かも書かれていませんが

証人: 写真から類推するに、4倍くらいやないですか

裁判長: ここで休憩を入れたいですね、午後4時20分からとします。

【午後4時20分 再開】

裁判長: それでは

検察1: では引き続いて伺っていきますが、標本16について、説明いただきます。まず、結論として、No.16はわかりにくいと思いますので、特定のため、弁151号証別紙3の1をお示しします。標本16について、これを見ますと、癒着と判断されていませんね。また、絨毛ありとも診断されていませんね。

証人: しなかったようです

検察1: 顕微鏡写真を示します。別紙7の21。こちらも説明文をマスキングしたものです。顕微鏡写真の中に、絨毛が写っているかおわかりになりますか

証人: 絨毛は写っていないと診断したと思います

検察1: 拡大してご覧になりましたか

証人: していないかもしれません

検察1: 標本16の中央の下、5mmほどの丸い固まりはいかがでしょうか

証人: これですか

検察1: これが絨毛である可能性はわかりますでしょうか

証人: わかりかねますね

検察1: 別紙21には、杉野博士の写真を引用されていないのは、何故ですか

証人: 対応がついていなかったか、後壁のことはどうということもないので

検察1: 対応がないとはどういうことですか

証人: 同じ写真の部分がなかった、のか、あまり覚えていません

検察1: 杉野博士の写真と対応する写真を撮っていないのでしょうか

証人: 覚えていませんが

検察1: 証人の記憶喚起のため、甲5号証、XX-16を示します。こちらは同じ標本の写真で杉野博士が撮影されたものですが、覚えておられますか

証人: 何枚かあるかもしれません

検察1: ご記憶はありますか

証人: 撮るときにはなかったので、覚えてないですね

検察1: XX-16と対応する写真を発見されましたか。XX-16には絨毛があるでしょうか

証人: このあたり絨毛が浮かんでいるように見えます

検察1: 青い線で囲んでください

証人: はい

検察1: 今回追加の鑑定書では、証人は杉野博士の写真を参考にされていますか

証人: 自分の写真中心で、あまり参考にはしていないかもしれません

検察1: 先生の写真だけのものと、杉野博士の写真を載せている紙と両方があるのですが、杉野博士の写真を引用していないものは、証人がその写真を撮っていないところ、という認識でよろしいですか

証人: そういうところもあるかもしれないと思います。あまり重要でないところについては、同じ重要性をもたせていないので、写真にしていないと思います。ここもちょっと絨毛が浮いていますが、癒着ではないので、ここは重要ではないところです

検察1: ご自分が撮られた写真が優先ということですが、杉野博士の写真の位置づけはどのような位置におかれたのですか

証人: 自分の写真が優先ですね。杉野先生の写真と同じのがあれば、あると思って並べて載せたところもありますが、自分が撮っていないところについては見ませんから

検察1: 証人は追加の鑑定にあたって標本を見直されましたか

証人: していませんね

検察1: 見直したとしたら、もっと正確な鑑定になったのではないでしょうか

証人: それはそうかもしれませんが、大変ですから

検察1: 大変ということは、福島まで来て、ということですか。先生はお忙しいですからね

証人: そうですね

検察1: 別紙3の1、No.4を示します。後壁の一番体の左下側にあたる部位ですが、これについて、証人は見ればわかりますか? 標本4は縦に長い切片のため、これをプレパラートに作成する際は、横に並べてプレパラートにしましたが、ご記憶にございますか

証人: ちょっとわかりませんけれど

検察1: 長い場合、組織を半分に切って横に並べてあったというご記憶はございますか

証人: かもしれませんが、正確な記憶はないですね

検察1: 証人の記憶喚起のため、弁151号証、別紙7の4を示します。見ていただいて、左側の方に絨毛と筋層が見られて、右にスペースがあって、さらに組織がありますね

証人: はい

検察1: 縦に半分に切ったので、並べて見えているという覚えはございますか

証人: 覚えはありませんが、そうかもしれません

検察1: 横に並べてまた、横に出てくるわけですが

証人: そうかもしれません、という程度です

検察1: 証人は、No.4は2つ並べて写真を示しているかどうか、別紙7の4の5を示します。長い切片を縦に2つに切ったものを観察されました。4の1、4の2は、上の方だけか、下の方だけか、ご記憶ございますか

証人: 記憶はありません

検察1: 標本4の癒着が、どういう種類だったかご記憶ございますか

証人: これはaccretaと診断したと思います

検察1: その診断はどちらの側からされましたか

証人: 4の1の方がそれらしいですかね

検察1: 4の2はいかがですか

証人: 絨毛はありますね

検察1: 4の1、4の2、それぞれ絨毛のところに青い線を引いてください。では、青いところに絨毛と書いた線を、この2枚は絨毛があって、accretaとご判断をされていますね。そうすると、この絨毛と筋層の間に、脱落膜があるかどうかについて、いかがですか

証人: こういうところは、脱落膜の可能性もありますが、越えたところに絨毛があります。

検察1: おっしゃったところを線で囲んでください。で、accretaと判断されたので、この絨毛はアーチファクトの可能性は否定されるということでよろしいですか

証人: 可能性は考えますが、しっかりした組織に見えます。

検察1: 4の1ですか

証人: 4の1ですね

検察1: 4の2についてはいかがですか

証人: こっちは変性っぽく見えますね

検察1: 4の2について、アーチファクトの可能性は指摘されていませんが、

証人: 今訊かれると、その可能性もあると考えますね

検察1: No.31、別紙弁151号証、別紙3の1をご覧ください。この標本は、当初鑑定でどのような評価をなさったか覚えていらっしゃいますか

証人: 恐らく絨毛があるんですが、確定できません

検察1: 胎盤外の膜かということですね

証人: そうですね

検察1: 2回目はどういう鑑定をされたか覚えていらっしゃいますか

証人: 胎盤外と考えました。最初はその上に胎盤が一部あったかもしれないと思いましたが

検察1: 当初は指摘されていないですが、追加鑑定で証人がそう考えるようになった理由は何ですか

証人: ずっと考えていくと、かかったかもしれないと思うようになった

検察1: 胎盤の位置関係についてですか

証人: はい

検察1: 追加の鑑定で、下の説明があったのを、覚えていらっしゃらないですよね。弁151号証、別紙の7をお示しします。こちらには絨毛は認められますか

証人: はい

検察1: 同じように、絨毛を青で特定してください。絨毛はあることから、この場所が癒着かどうかについていかがですか

証人: もちろん考えますけどね、絨毛はあっても殆どが空隙にありますね。絨毛の下側がすごく変性してますしね。No.27で説明しましたが、ここは頚管ではないかと思います。No.31も下は頚管に非常に近いですよね。かなり外力が加わったもので、そこに巻き込まれた可能性が高い思います。4番目くらいに、軽いaccretaの可能性がありますが、1番高いのはアーチファクトです。

検察1: 脱落膜はありますか

証人: ここにあるんじゃないでしょうか

検察1: 書いて示してください

証人: 空隙にある組織であることが重要なんですけど

検察1: まず書いてください

証人: (記入)

検察1: 標本31を撮った場所が、切片のどのあたりか推測可能でしょうか

証人: 覚えてないですね

検察1: 割面の写真を見て、おわかりになりますでしょうか

証人: (弁151号証を見て)ちょっとわからないですね。

検察1: 彎曲しているということで、後壁側の4の左に見える、31の彎曲でしょうか

証人: そこだったら、子宮頚管やないですか

検察1: どこの写真ですか

証人: 今覚えてないです

検察1: 彎曲ということで、ご判断されたのでしょうか

証人: そんなとこにその組織がありえないからです。アーチファクトの可能性が高くなりますけど、と言うてるんですけどね

検察1: 31番についても、杉野博士の標本XX-31を引用されていませんが、これについても対応がなかったのでしょうか

証人: しっかり全部記憶にないんで、わかりません

検察1: 甲5号証、XX-31の写しを添付させていただきたい。同じところの写真ですが、この写真に絨毛はありますか

証人: ありますね

検察1: 青でお示しください

証人: (書き込む)

検察1: このXX-31の絨毛には変性や挫滅が認められますか

証人: 軽い変性があります

検察1: この絨毛については見え方から癒着胎盤ですか

証人: 癒着はないです。空間でしょ、くっついてませんやん。さっき言うた通り、これで癒着と言うのは無理です

検察1: 引用したところについて、証人が示された部分は一致しないのですが

証人: 見てみないとわかりません

検察1: 一致するか、杉野先生の写真を引用する作業もされたんじゃないですか

証人: うまく対応つかなかったんで、つけなかったのかもしれません。そもそも頚管だとすると、書く必要ないんですわ

検察1: 標本27、午前中に弁護人から示されましたが、その記載したものをお示ししたい。別紙40−47です。

弁護1: 40, 41しかないですよ

検察1: 示したものだけ、まず、標本27について、絨毛の場所をご指摘されてなかったかと思いますが、標本27の41から47までこちらで出しますんで、27の1を見ていただいて、お答えください。27の2の四角は、27の1の場所を示しているということでよろしいでしょうか

証人: はい

検察1: 27の2は、右上で27が切れていて、27の3の写真につながる。また、27の3は上の方に27の4に対応するということでよろしいですか

証人: そうです

検察1: 27の1から4の写真で、絨毛が認められるのは、どのあたりですか。27の1から4の写真に書いていただけますか

証人: (記入)

検察1: 杉野博士の追加写真も、追加の鑑定書で確認されていますが、杉野博士の倍率の高い写真も見ていただきます。甲5号証添付のXX-27をご覧ください。こちらのAで絨毛は確認されますか。このU字型のつながりの中に何個か異質のものがありますが。

証人: 絨毛の可能性ありますね

検察1: 場所が特定できるようにお示しください

証人: (記入)

検察1: 高倍率で見てわかりやすくなるのではないですか

証人: 多少そんなところはありますね

検察1: 標本27については、子宮頚管部であると午前中、証人は話されましたが、子宮頚部の内腔ということでよろしいですか

証人: はい

検察1: 子宮頚管部は、頚管内膜で覆われているということでよろしいでしょうか

証人: はい

検察1: 子宮頚管内膜と子宮内膜の境目が子宮口であると

証人: はい

検察1: 頚管内膜にはどのような特徴がありますか

証人: 頚管腺上皮を持っています

検察1: 管腔腺腔ということですね

証人: はい

検察1: 頚管粘膜と子宮内膜は、顕微鏡で確認できますか

証人: 難しいこともあるかもしれませんが

検察1: わかりますか

証人: 今も言ったように、上皮が見えないとわからないですね

検察1: 頚管内膜がどのような特徴があるか、病理学では一般的な知識ですか

証人: そうです

検察1: 正常妊娠では、頚管部分には着床しないのですね

証人: そうです

検察1: 脱落膜は、子宮内膜が肥大増殖したものという認識でよろしいですか

証人: はい

検察1: となると、頚管内膜は脱落膜からそう変わらないのではないですか

証人: そうではありません。もっとも脱落膜性変化は出てきます。

検察1: 通常で起こる変化なのでしょうか

証人: いいえ、例えば子宮頚管ポリープを見ていますが、妊娠すると、脱落膜様変化をします。

検察1: それは頻度はいかがですか

証人: 必ずすると思いますね

検察1: 栄養膜細胞は、頚管には出ないのですか

証人: はい

検察1: すると、標本27を観察されて、子宮頚管部であれば、アーチファクトでなければ、絨毛は認められないということですか

証人: ああいうふうに見えたらアーチファクトということです

検察1: 通常、そうですか

証人: 通常とは

検察1: 帝王切開の娩出後に、絨毛とかがある状況について

証人: はい

検察1: 今回、絨毛はNo.27にはありましたね

証人: はい

検察1: No.27に絨毛があった理由は何ですか

証人: アーチファクトとしか考えにくい。後壁を巻き込んで組織を引っ張り込んできたとか

検察1: アーチファクトの可能性の中で3つあげておられましたが、

証人: ここについては、手術手技のアーチファクトの可能性が高いと考えますけどね。糸がかかっていたりとかいうことではないですか

検察1: No.27で、脱落膜は認められましたか

証人: 脱落膜様変化はあります

検察1: 栄養膜は認められましたか

証人: ないと思いますが、高倍率で確認しないとわからないので、そうだろうということです

検察1: 頚管部とお考えになったことについて、筋層には違いがありますか

証人: 筋層が厚いところは子宮体部です

検察1: 頚管部かどうかの判断には、位置関係が重要とお考えですか

証人: はい

検察1: どういう位置関係から、ここが頚管部とご判断されたのでしょうか

証人: 普通摘出のときは、頚管を含め摘出しますが、一番下にあるDのすぐ上のとこのように思います。別紙3の1、ここの部分がつながっているかどうかわからないんですよね

検察1: 復元の時には連続性はありましたか

証人: それは僕がした復元の写真じゃないんでね

検察1: 証人自身が復元された時は、Eと書いてある上にある子宮片と、EとDの子宮片は確認されなかったのでしょうか

証人: うまくあわなかったと思います

弁護1: 今の質問ですが、別紙3の1、前に撮っている部分でするべきではないですか

裁判長: どちらでされても同じであれば

検察1: これを見て、証人も復元して写真を撮られたとのことですので、お尋ねしているのですが、復元のときにDの上の子宮片も残っていましたよね。

証人: どうだったか、

検察1: Dの上の子宮片も、位置関係を入れて、写真を撮られましたか

証人: 記憶がはっきりしないですね

検察1: Dの上の子宮片を見ると、間に黒い筋が見えますが、

証人: Dの?

検察1: Dのスケールのすぐ上の番号のない頚部の写真ですが、真ん中に黒い線が見えますよね。これは頚管ですか

証人: そうかもしれませんが、まだ上があるような感じがするんですけどね。そこで終わってるかどうか

検察1: 見えている裏側に、黒い線が続いているか、確認された覚えはありますか

証人: 覚えないです

検察1: Dの上に写っているものは、復元の時に確認できなかったのですか

証人: はい。13と色があわないですよね

検察1: Dの下にあった可能性を考えてるんですか

証人: うまくDに乗っかりますか? よくわからないんですけどね

検察1: Dの上のが、Dの下だったとすると、いかがですか

証人: その可能性があるとしか言えませんね

検察1: では、続いて、別紙3の1をお示しいたしますが、Bの下の4と27はおわかりになりますか

証人: はい

検察1: 4と27の下がつながっているように、見えませんか

証人: ・・

裁判長: 4と27がつながっている、はい

検察1: 5の2、子宮前面の拡大写真ですが、4と27に、Bの子宮片の下にあたる、Dの子宮片を見て、下の方でつながっているように見えませんでしょうか

証人: ちょっとわからないですよね

検察1: 同じく、子宮割面の写真をお示しします

証人: ここも27の数字がわかりにくいんですけども

検察1: 4と27とがつながっているように、見えませんでしょうか

証人: 確認できないですね

検察1: Bのところの下が、頚管とすると、そこから下につながりとしては、Dの上の頚管のつながりになるということではないでしょうか

証人: Dもわからないですよ。だって標本無いんですもん

検察1: 確認できないということですか、Dの上の頚部の写真を見ると、

弁護1: 異議あり、Dの上は頚管だと、先ほどから言われていますが、わからないのではないですか

裁判長: 確認してください

検察1: ではお聞きしますが、Dのスケールの上の、これが子宮頚部ですか

証人: 可能性はあるかもしれないが、標本がないので、確認できない

検察1: 今回27は、頚管の可能性ありと、指摘されていますが、27が頚管だと、4の標本は頚管部でしょうか

証人: その写真が再現されているか、わからないですよね。4と27が、厚さも形も違いますよね

検察1: 31は

証人: 31の下の方は、普通の筋層とは違う思いますけど

検察1: 8はいかがですか

証人: 後壁の筋層のように見えますね

検察1: 13は

証人: 筋層に見えます

検察1: 復元されて、垂直のつながりを確認されて写真を撮られたんですよね

証人: 僕の写真は、切片の写真にあわせて、並べて撮ったんですが。復元が間違うてたら、私のも間違ってることになりますけどね

検察1: 27と4は、前後壁の関係ですね。31が頚管部なら、絨毛、栄養膜細胞が認められるのですか

証人: 頚管部なら認められません

検察1: 8、13はいかがですか

証人: 8、13は見えないですね

検察1: 8、13は楔入胎盤とされています。体部であることを前提に鑑定されたのではないですか

証人: そうですね

検察1: 31も

証人: 31は微妙なところですね。下は細く彎曲していますが、上は筋層にも見えます

検察1: 27も組織的に観察を行ったら、頚管内膜をご覧になったのですか

証人: はっきりと見えませんでした。ダメージが強くて確認できてないんですね。見てたら断定しているんですが、可能性で書いたところです

検察1: 追加の鑑定書には、記載されていませんね。内膜の違いとかについて

証人: してません

検察1: 何故でしょうか

証人: 筋層の形は違いますが、手術で変形を受けていますので

検察1: 27と31は、彎曲しているように見えますね

証人: 筋層の形がちがうんですよ

検察1: 摘出子宮の肉眼観察において、該当する写真は特定できますか

証人: 難しいと思いますね

検察1: 弁151号証、写真4をお示しいたします。こちらをご覧になって、下にスケールがありますが、25に相当する場所から上にいったところで、スケール上端から7cmのところで、子宮撮影されているところについて、こちらの写真では、上のところの子宮壁が薄いかどうか、おわかりになりませんでしょうか

証人: どの場所を言われているか、わかりません

弁護1: それだけじゃ、わかりませんよ

裁判長: 訊きたい部分を青で説明してください

検察1: 青で囲んだ部分の中の子宮は、他のところより壁が薄いか、どうでしょうか

証人: 薄いようには見えますね。写真からだけですが

検察1: 切開創が見えますが、25の上のところ、切開創ではないところ、緑で書きますが、緑で囲んだ場所と、青いところは、段差のようには見えないでしょうか

証人: 見えますね

検察1: この彎曲している部分が、27と31の部分かどうかということはいかがですか

証人: 可能性はありますけどね

検察1: ここは頚部ではないですか

証人: 違います

検察1: 追加鑑定書で、27が子宮頚管部と証人が考えるようになったのはいつからですか

証人: ここ1、2ヶ月のことではないでしょうかね。今年にはいってからです

検察1: 27は、それまでは、当初27は卵膜付着の体部だとお考えでしたね

証人: はい

検察1: 当初は、肉眼的に鑑定され、27も顕微鏡で見られたということですが、検査をふまえた上で、27は体部であると。その後追加のときには頚管部とご判断された。どういう事情の変化がおありだったのでしょうか

証人: ああいう形の筋層の体の違いからということです

検察1: 何か新しい資料が出てきたわけではないのですね

証人: はい

検察1: 27は頚管部と考えると、胎盤は付着しない、アーチファクトというご意見ですね

証人: 先ほどの絨毛は表層のみで、体部であったとしても癒着ではないです

検察1: 杉野先生の写真をご覧になっても、変わりませんか

証人: はい

検察1: 頚管部とも考えられるとされ、説明されていますが、体部の可能性も検討されていますか

証人: はい

検察1: 体部である場合についての、結論を鑑定書に書かれていないのは何故でしょうか

証人: そう訊かれても困りますが、全部の可能性を鑑定書に書いていないですからね

検察1: 先ほど、縫合糸について書かれましたが、異物により周囲はどう変化するのですか

証人: 午前中にも言いましたが、もう一回言いましょか、異物反応、炎症反応がおこって、長いのちにそれを取り囲む繊維性の変化がおこります

検察1: 肉芽組織ですか

証人: そうです

検察1: それが瘢痕化するということですね

証人: はい

検察1: 膠原繊維で置き換わるのは、どれくらいの時間がかかるのでしょうか

証人: そうですね、月単位ですね

検察1: 膠原繊維はそのまま残りますか

証人: 膠原繊維は動きませんから

検察1: 膠原繊維が出てくるのは、生きている子宮ですよね

証人: 摘出してからはおこりません

検察1: 標本27の3、別紙42をお示しいたします。じゃ先ほど提出したもので。この縫合糸の周囲は、午前中、膠原繊維とおっしゃいましたね

証人: そうですね

検察1: 両方の縫合糸でしばられている。今回の縫合とされていますが、前回の帝王切開の可能性はございませんか

証人: まず考えにくいですね

検察1: それは何故ですか

証人: 異物反応が起こってとりかこむので、3年前くらいでしたら、違った変化になってますね

検察1: 切り出しの時、縫合糸のあるところを切ることになりますよね

証人: 僕がその切り出しをしてないんですけどね

検察1: 現象として、プレパラート作成のときに、縫合糸を切り出しているのですが、縫合糸を切り出すときに周囲が引きずられて、アーチファクト化することはありますか

証人: あまりそんなこと考えにくいですけど。片方が逆向きになって、切り出されることはあまりないですね。そういうアーチファクト作るのんは難しいですけどね

検察1: 右斜め上45度の組織が走っているところが確認されますか。こちらがどういう組織かおわかりになりますか

証人: わかりませんが

検察1: 結合組織ですか

証人: かもしれません

検察1: この赤い組織がどうながれるかですが、縫合糸のある上の組織からつながるように、流れているんですが

証人: 意味がわかりません

裁判長: 今写っていないところを訊かれているんですか

検察1: 観察されたかどうか、訊いているだけです。右側の頂点と、左の赤いものの関係について、ご記憶はございますか

証人: 記憶ありません

検察1: つながっていないですか

証人: かもしれない

検察1: 先ほどの摘出直後の子宮で、赤で囲んだところ、そちら・・・撤回します。27と31の前壁の子宮片について、彎曲していると。子宮壁は薄くなっているということですね

証人: そうですね

検察1: そのような変化は、よくあるのでしょうか

証人: あまりないですね

検察1: なぜ彎曲した子宮壁は薄くなるのですか

証人: わかりませんが

検察1: 前回帝王切開創で、というのは、矛盾しないとお考えになりますか

証人: 可能性としてはあります

検察1: あと、やりますが、No.33, 34の前壁について、34かどうか、別紙3の1、弁151の別紙3の1をお示しします。33と34の場所は確認されましたね

証人: はい

検察1: 前壁のDブロック、34に絨毛があるかどうか、ご記憶ございますか

証人: 認められたように思います

検察1: 34に絨毛あり、で△(三角の記号)をつけておられませんが、理由はなんですか

証人: 絨毛はあったと思いますが

検察1: ご指摘になるのを忘れたということでしょうか

証人: と思います

検察1: 証人の顕微鏡写真で、絨毛をご指摘いただけるのでしょうか

証人: と思います

検察1: 別紙50, 51をお示しいたします。

証人: (記入)

検察1: 今の絨毛はどのような所見でしょうか

証人: 挫滅が強いですが

検察1: 標本34には、脱落膜はありますか

証人: あるように見えます

検察1: 脱落膜の特定は写真でされましたか

証人: 低倍率でもそう見えます

検察1: 標本34には、絨毛はこれ以外にありますか

証人: 覚えていないですね

検察1: 前壁の中でも、34は絨毛が確認できるのですね

証人: そうです

検察1: No.33は34の上ですね。こちらには絨毛はありますか

証人: ここにありますね

検察1: こちらは生きていますか

証人: 変性が強いです

検察1: 壊死絨毛というのが、これですか

証人: はい

検察1: 表層には膜様の壊死絨毛と書かれていますが、対応する写真を撮られましたか

証人: はい

検察1: その際に杉野博士の写真をご覧になりましたか

証人: おそらく見ました

検察1: 見ればわかりますか

証人: 見せていただいたほうがいいですね

検察1: 甲53号証、こちらには絨毛はありますか

証人: ありますね

検察1: これは生きている絨毛ですか

証人: はい

検察1: 顕微鏡写真をみて、癒着かどうかご判断ください

証人: No.33はやはり無毛部で、こういう出血組織が下の膜みたいなところに接して見えます。ですから難しいが、無毛部に一部の絨毛の可能性があったという、可能性があります。

検察1: これ以外に、絨毛があった可能性はいかがですか。

証人: 追加の鑑定書では絨毛ありにはしていないのですか、33は上の位置で、胎盤がある部分ではないので、どう考えるかですね。僕はそういう、自分の撮った写真ではアーチファクトと考えました。

検察1: 最後に伺いますが、証人は、昨年8月に標本を観察され、11月に鑑定書を出されましたね。そして今年の8月に追加の鑑定書を出されたということですね

証人: はい

検察1: 追加では、アーチファクトの可能性を指摘されています。また、前壁左側について体部から頚管部と変更されています。前壁の一部について、当初の鑑定書では触れられていませんが、追加の鑑定書ではNo.34に絨毛ありとされましたね

証人: はい

検察1: 追加の鑑定書の際に、追加で標本は見なかった。最初の鑑定書は本文2枚、追加の鑑定書では、本文2枚に資料を添付された。当初鑑定書では、証人は添付資料を手書きで作成されています。この時は、証人お一人で作成されたのですか

証人: そうですね。基本的には一人で

検察1: ワープロ打ちもご自分で、写真のところも手書きですね

証人: はい

検察1: 追加の時には、ずいぶん体裁が変わりましたね。写真はデジタル加工されているようですね

証人: 弁護士さんに手伝ってもらいました

検察1: どういう所ですか

証人: 写真の並べ替え、向きを変えたりです

検察1: 杉野博士の写真のかこみの処理は、弁護士さんですか

証人: そうです

検察1: それは先生の依頼ですか

証人: そうです。時間的に自分で全部は無理でしたので

検察1: 先生のお仕事はお忙しいですからね。そうすると作業は弁護士がされたのですか

証人: 基本的には自分でやってますよ。

検察1: 母子医療センターの職員の方に手伝ってもらうことはお考えにならなかったのですか

証人: ないかと思います

検察1: 弁護団に手伝ってもらったのはどういうところですか

証人: 並べ替えですね

検察1: 当初の鑑定書は、表題をつけずに、1,2,3,4で書かれていますが、追加の鑑定書では、I、(1)、?で番号がふられています。それは公文書の書き方ですが、これは先生が書かれたのですか

証人: あまり気にしませんので

検察1: どういう理由で、弁護士に体裁を整えてもらったのですか

証人: ディスカッションしたことはあります

検察1: それはどういう

証人: 資料や撮った写真についてですね

検察1: どういうディスカッションですか

証人: 結論は僕が書きます。医者の世界では天地がこうとするが、法廷ではどうか、とか。

検察1: 証人は書類に署名するときには、弁護士に見てもらってから、署名をされたのですか

証人: ああ、みておられると思います

検察1: この結論とか、言われたのはありますか

証人: それはありません

検察1: なんで証人は弁護士に相談されたのですか

証人: 写真の向きや、医学用語がわかりにくいので、そういうことは相談はしました。

検察1: 追加の鑑定書は資料も立派ですが、何故最初から、そういうものを提出されなかったのですか

証人: すみませんね

検察1: 終わります。

裁判長: 休憩を10分入れますか、休んでも遅くなるだけですよね

弁護1: あとどれくらいかかりますか

検察2: 15問です

弁護1: 何分かかるんですか

裁判長: ま、休憩しましょう。5分

【18時24分 再開】

裁判長: では

検察2: 西村から数点確認します。先の検察官鈴木に対する証言で、平成18年6月、平岩弁護士と横浜で会って意見を話した、とおっしゃいましたが、その際にはどういう意見を述べられたのですか

証人: 覚えていないが、最初の鑑定が11月で、8月に着手したので、大まかにはそれに書いた内容だったんじゃないかと思います

検察2: その時には胎盤の写真のみご覧になったとのことですが

証人: 胎盤の写真と子宮の写真を見せてもらったんじゃないかと思います。そのあたりで私の意見はあまり変わってないですね

検察2: このとき述べられたのはどの程度の意見ですか

証人: 後壁中心の癒着胎盤だということです

検察2: 胎盤の写真で、どうしてそのような印象が出たのですか

証人: 肉眼所見からです

検察2: 胎盤写真で後壁メインだと

証人: メインはメインです

検察2: 前壁・後壁の上の方に観察される絨毛について、アーチファクトとされましたね。また、前壁下方、No.27は子宮頚管部の可能性を指摘された。

証人: はい

検察2: 1回目の鑑定書と内容を変更されたのですか

証人: 一回目は膜様胎盤としておりましたが、分葉、二分胎盤と変わりました。胎盤外に膜様物があり、胎盤外の膜を広げると、子宮が再現できることになるのですが、それが足りないので、胎盤外をどう考えるか、色々考えました。

検察2: アーチファクトについて、色々考えられたのは、また考えが変わったのはいつくらいでしょうか

弁護1: 異議あり、一回目の鑑定のときにアーチファクトについて考えていないなどとは証人は言ってないですよ

裁判長: 誤導ですね、では

検察2: そういう質問はしてないです。よく考えてきたのはいつからですか

証人: だんだんとです。あるきっかけってのはない。

検察2: きっかけは無いのですか。

証人: どんなきっかけですか? これひらめいた、ということとかですか? それとも誰かから何か吹き込まれたとか言われるんですか? そうではないですよ

検察2: 1回目の鑑定書以降であることは確かですか

証人: 説明を書くのに考えたり、標本を見直している中で、少しずつ深められてきたということです

検察2: 1回目の鑑定で、No.27が子宮頚管部という可能性について、言及しなかったのは何故ですか

証人: 考えつかなかった

検察2: 1回目の鑑定で、アーチファクトについて書かなかったのは何故ですか

証人: 書かなかっただけで

検察2: No.27について、子宮頚管部の可能性については、頭の中で推論されたんですか

証人: そうですね

検察2: 自然科学においては、考察されて頭の中で仮説をたて、検証をして、さらにそのまた推論を実証によって裏付けて、というのが、本来の姿ではないですか

証人: 画像しか残っていないので、それを見て、杉野先生の鑑定を見て、それは違うだろうとわかってくるところはありましたけどね

検察2: 議論を深めて(書き取れず)・・・まあ推論を深めて

証人: 自分は深めて見れたと思いますね

検察2: 先生の推論が変更になったので、実証が必要ではないかと思います。

証人: 絨毛あるないとか標本の見立ては、僕は変わってませんよ。

裁判長: 検察官の質問、何がききたいのか、わからないので、端的に聞いてください

検察2: 推論が変更になった場合には、あらためて子宮の実物を見てから意見が出せることになるのではないですか

証人: 鑑定書追加でも、あといくつかやるようなところはあるが、やらないよりはbetterだが、そこまで時間がとれるか疑問ですけどね

検察2: 杉野先生の写真を

弁護1: 異議あり、重複です

裁判長: 最後のところがわからないので、質問を聞いてみたら

検察2: 杉野先生の写真を載せていないところ、そこは重要でないと考えられたのですか

証人: accreta、increta、言葉ではすっきりしますが、病理は微妙な判断があります。大勢に影響があるポイントかどうかが違う、と言っているんです

検察2: けど何が大勢かどうか

証人: わかりませんか? 後壁に癒着が認められることはお互い認めているわけです。子宮切開部より上に絨毛があるかどうかについてのところの意義が違うというのがポイントとちがうんですか

検察2: 弁護側と検察側とで争いがある部分とない部分ということですね

弁護1: 意義あり、そんなこと、我々は言ってない

検察2: 中山証人が考えるところでの、裁判上の鑑定のポイントですか

証人: そういうところありますね。裁判の鑑定で、そこはちょっと違っててもいいなというところと、ここは違うとちょっと違うでしょ、というところの違いですよ。わかりませんか

検察2: 今回加藤医師からの臨床情報は得ていないのですか

証人: 今回は誰から接触していいかわからないので、見せてもらった資料から自分で判断しました。先ほど言ったのは、自分の施設では臨床医に情報をもらうということです。

検察2: No.27についてもですか

証人: 緊密に医師と接触すれば良かったかもしれませんけど、今回はしていません

検察2: 弁護士とのディスカッションを介して、臨床情報を得たことはないですか

証人: カルテ見せてもらったり、ということはありますが、例えば助産師さんと接触したりはしていません

検察2: 先ほど弁護側の尋問をやり直すということでしたが、癒着の深さの絵を書きなおすということですが、書いた絵では何cm、何cmでしたか

弁護1: 異議あり、それはやめられたのではないですか

裁判長: しかしセンチメートルが出ていたのではないですか

検察2: 何cm、何cmではなかったですか

証人: ですからそれは、線をひき直すということになりましたよね

検察1: 先ほど証人は、鑑定で争いのある部分、一致しているところ、という表現を使われ、後壁の部分の一致については争いがないとおっしゃいましたが、先生のおっしゃる比較の対象は何でしょうか

証人: 杉野先生ですよね

検察1: すると、杉野先生の鑑定を先生は見たわけですよね

証人: 癒着胎盤とされた広がりの図は見ましたよ

検察1: すると杉野鑑定が比較の対象ですね

証人: 1回目の鑑定のときは定かではありませんでしたが、2回目の時には見ました。

検察1: 違う話ですが、膠原繊維はどうやって見分けるのかご存じですか

証人: アザン染色等です

検察1: 記録の関係でゆっくりおっしゃってください。こちらは医学には素人ですので

証人: エー、ゼット、エー、エヌ、Azan染色です

検察1: 午前中、証人は母体面の胎盤について、脱落膜がないところ、残るところで脱落膜があるとご指摘になりましたが、子宮標本でご覧になったおとき、子宮にも脱落膜を確認された場所があるとのことでしたね。そうすると、胎盤母体面の脱落膜と子宮の関係はいかがでしょうか

証人: 子宮表面の脱落膜化があり、胎盤の脱落膜があります。accretaは、それもなくて、筋層に直接接していることを言います

検察1: 子宮のところの脱落膜は、どうなっているのですか

証人: 胎盤側表層も、脱落膜化しますからね。その表層にのっていても、accretaとは言えないんですね。胎盤標本がないので、それ以上のこと言うのは難しいですね

【弁護側 最終尋問】

弁護1: 添付別紙の6の写しをご覧ください。弁151号証で、癒着胎盤の程度としてお示しいただいた31mm 分の 5mmを改めて示していただきます。

裁判長: まず、その、正確に書いてもらった方がいいですね、主旨としては。線もひいてもらってね

証人: (図示)

弁護1: 最初の、証人がひかれた線と、少し線の位置が変わっていますが、線の書き方は午前中、どういう主旨で書かれたのでしょうか

証人: こういう測り方ということを説明するために書いたのみです。だから今はできるだけ正確に書き直しました

弁護1: 杉野先生のものと並べたところ、並べていないところについては、検察側から再々質問があったのですが、基本的に先生は、自分の写真をご覧になって、その上で杉野先生の写真を見て、違うご判断をされたところは、写真を並べてお示しになった、で、いいですか

証人: はい

弁護1: 弁護団とのディスカッションというところですが、我々は写真はわからないので、証人にお尋ねしたところや、こういうことは専門家でないのでわからないので書いてほしい、とお願いするということはありましたが、それで先生ご自身の意見が変わった、というところはありましたか

証人: ないと思います。ありません

弁護1: XX-16をお示しします。鈴木検察官から、証人に絨毛の存在を質問したところです。先ほど写真をご覧になって、絨毛か と書かれた

証人: はい

弁護1: これは癒着胎盤ですか

証人: その証拠はないですね。絨毛はありますが、浮かんでいて、組織にくっついてはいないですよね

弁護1: 組織と離れて存在している

証人: そうです

弁護1: 同じく、XX-4の写真を示します。・・これ撤回します。時間がもったいないので。XX-31を示してください。

裁判長: 検察が示したものですか

弁護1: はい。これには絨毛が写っているのですね

証人: はい

弁護1: 脱落膜はありますか

証人: となりのは脱落膜の断片に見えます。

弁護1: これは癒着ですか

証人: そう診断する根拠はありません

弁護1: 弁151号証 別紙3の1を示します。これでご覧になって、No.31の場所、前段の下の方で、標本26,27と対応するかということを前提に、写真にもどっていただいて、XX-31には脱落膜がありますか

証人: 脱落膜を含めた部分が組織とつながっていないので、決定しにくいです

弁護1: 標本31の上と下は、位置関係からして、子宮体部、全部頚管部とは言えないということですね。この写真をご覧になったまま、27をご覧ください。27はさらにその下になります。31は26と27を足したようなところですね。そこで、杉野鑑定の甲6号証、写真5。じゃ写しで。ここでみるとB、Cの上に頚管部かどうかというところが写っていますね。別紙3の1か、その下の写真でみると、同じ頚管部と思われるところが、Dに写っています。この部分は杉野先生の作成された写真で、違っています。その意味で、頚管部が27の下だと、そう鑑定されたのですね。

証人: その可能性があるんではないかと書きました。

弁護1: 先生が子宮標本を復元した写真でも、頚管部は写っていませんね。

裁判長: 示すだけでしょ

弁護1: ここに、頚管部はつくってないですね

証人: はい

弁護1: この部分は残っていなかったんですね

証人: そうなんでしょうね

弁護1: 検察の質問、先ほど鈴木検察官からの質問で、用語について確認いたします。胎盤、胎盤絨毛、この二つの用語を時々使い分けておられましたが、先生はどう使い分けられましたか

証人: 胎盤絨毛は組織的な言い方、胎盤はマクロ的な言い方になります

弁護1: 胎盤絨毛は、その上に胎盤があるということでお使いになっているのですか

証人: それはないです

弁護1: 別紙3の1、弁151号証別紙4の子宮の写真で、この写真は両方原寸大と書かれていますが、3の1の子宮の大きさと、左の4の写真の大きさは同じでしょうか

証人: だいたい同じでしょうね

弁護1: 子宮で測ってみて、縮んでいませんか、3の1は

証人: 多少は縮んでいますね

弁護1: 別紙7の50、7の51で34の1の写真と34の2の写真をご覧ください。又はXX-34となっています。別紙7の50、51を示します。まず、34の1、34の2ですが、先ほど34の1に関して、絨毛と脱落膜、34の2には脱落膜を書き込んでください。

証人: (記入)

弁護1: 34の1で、挫滅があると言われましたが、どういう所見ですか

証人: 34の1は切開創のまっただ中なので、脱落膜があって癒着ではないです。

裁判長: 記録に残すので、具体的に言ってください

証人: 右端4分の1のところに筋層があり、その上の組織に挫滅が縦に、手術操作がもろにくわさっています。中央にある組織が、全体に圧しつけられています。中央部の上全体が、浮遊組織である可能性があります。先ほどは言えませんでしたけど

弁護1: 挫滅は、帝王切開手術の断端と、手術操作によって加わったものですか

証人: そういう可能性がある

弁護1: アーチファクトの表現ですが、最初の鑑定書の中では書かれなかったですが、想定は含まれていたのですか

証人: いつも考えてますが、そういう表現を使わなかったということです

弁護1: No.27、No.31の組織が薄いという検察側からの指摘についてですが、前回の帝王切開の影響もあったかもしれないという答えとなったのですが、これは体部にあったのですか、それとも頚管として答えられたのですか

証人: 難しいですね。

弁護1: こんな低い位置での帝王切開創はご覧になったことがありますか

証人: いや、難しいですね。そうとは限らないんですよ

弁護1: では今の質問は撤回します。

弁護2: 弁護人の平岩からです。私が平成18年度、最初に先生にお会いしたとき、胎盤の写真をお見せして意見を伺った。先生はその写真をご覧になって、結論的なことを言われました。そのときおっしゃった癒着部位はどこでしたか

証人: 後壁部分です、と言いました

弁護2: もう一つ、脱落膜についておっしゃったことはご記憶ですか

証人: 記憶にあります

弁護2: どの部分に脱落膜がありますか

証人: それ以外のところです

弁護2: 脱落膜があるから、それ以外のところには癒着はないとおっしゃいましたね

証人: そうです

弁護2: 帝王切開創の下に胎盤はなかった。だから胎盤は切っていない、とおっしゃった

証人: そうです

弁護2: で、その帝王切開創前壁の、上の方に絨毛がある

証人: 組織的にはね

弁護2: しかし、そこには胎盤はないんですね

証人: そう考える方が素直ですね。飛び火的にあることも100%無いとは言えませんが、99.9%とかものすごい薄い確率です。しかしもしそうだとすると、もうちょっと見えるはずですし、仮にそう仮定すると胎盤が飛び火・飛び火的にないといけないので、そんなことはすごく低いです。弁護2: そうすると、胎盤がないから、そこには癒着胎盤はない、ということですね

証人: そこに癒着胎盤があるて言う人いないですね

【検察側最終尋問】

検察1: 鈴木からです。最終尋問で、嵌入胎盤の測り方について、お伺いしたいのですが、では、最終尋問でご記入された別紙6、あとで正確だと記されたもの、これが証人が新たに描かれた線ですね。分母を出すときの、子宮内腔側のスタート地点について、そこから始めた根拠はいかがですか

証人: ここのつながりが、スリット状にあります。内膜のスリットが見えるので、ここが起点です。

検察1: 右下の角のところ、内腔の分母の端の根拠は何でしょうか

証人: ちょうど筋層の部分と胎盤の間のところが筋層のポイントです

検察1: 子宮の形がくの字形になっています。この形には影響されないのでしょうか。例えば、左側の曲がり方とかですが

証人: どういう影響のしかたか、と言い出すと難しいですよ。今は写真だけで判断しろ、と言われてやったので、この条件で、ここで言うのなら、こうだ、ということを言ったわけでね。切片が変わったら変わるもので、そんなん言い出したらキリがない

検察1: だいたいのものだということですか

証人: そうです

検察1: 組織を見たら、変わるということですか

証人: 午前中は、はめられましたもんね

裁判長: 答えて

証人: はい、でもその標本見てる思います

検察1: 肉眼的にはこうですね

証人: はい

検察1: 続いて話題になっている、頚管部について、Dの上と午前中に私の方で言っていた所について、写真を見ていただきますが、残存子宮の前と割面、甲6号証の写真5、下の割面のDの上の子宮片について、形が違う、とおっしゃったのは、何と比べてですか

証人: Dの上と、13とは、形が合わないですね

検察1: その横の、Eの割面の子宮片を、前から見たのが、上の写真で、Eの子宮前面のEのすぐ上の子宮片は、DとEに挟まれた子宮片と、BとCの子宮片ですが、異同は確認できますか

証人: 連続するとは思いませんね

検察1: 何故ですか

証人: 見たら違てますやん

検察1: 子宮片について、標本作製時に切れたところを、お聞きになってないですか

証人: 聞いてません

検察1: DとCの間、DとEの間、長さは違うが、下のほうでつながるとは考えないでしょうか

証人: あわなかったら考えないですよ。間にどれくらいのものが入るか、わからんから

検察1: じゃこれで終わりです

裁判長: では最終尋問これで終了です。証拠責任こちらで、事実鑑定ですね。次回、期日指定していなかったですね。10月26日の10時でよろしいですか、はい。

(19:30終了)