第三回公判について(07/3/16)
平成19年3月16日(金)、福島地方裁判所第一法廷において、県立大野病院事件の第3回公判が開催されました。午前に当該手術に立ち会った県立大野病院のS助産師、午後に当該手術の麻酔医だった県立大野病院麻酔科H医師の証人尋問が行われました。
当会メンバーが傍聴しました公判の内容を、掲載させていただきます。この傍聴録は傍聴者のメモを基に再現したものです。できるだけ正確な内容を記す努力をしておりますが、完全な正確性を保証するものではありません。ご了承ください。当日傍聴された他の先生方のご協力も賜り、内容を充実することができました。深謝いたします。 傍聴希望者は119人でした。
裁判長からの注意
裁判長:開廷前に傍聴人の方に注意いたします。傍聴にはメモは許可しますが、録音はすべて禁止していますので、疑われる行為はしないでください。わかれば退廷してもらいます。その点注意してください。
開廷【10:10】
証人:手術に立ち合った看護師・助産師
検察:五十嵐から質問します。質問の意味がわからなかったら聞き直してください。まず、証人は看護師および助産師ですね。看護師の資格はいつ取得しましたか。
証人:平成12年です。
検察:助産師の資格は
証人:平成14年です。
検察:証人が勤務した県立大野病院にいつから勤務していましたか
証人:平成14年4月からです。
検察:平成16年12月17日に、帝王切開手術に助産師としてかかわりましたか
証人:はい。
検察:それまで出産には何回立ち合っていましたか
証人:40から50くらいです。
検察:その経験の中で帝王切開立ち会いは?
証人:10回以下です。10にはいっていなかったと思う、5回から10回の間くらい。
検察:帝王切開立ち会いのときの助産師の役割は一般的にはどのようなことか
証人:医師が取りあげた新生児の処置をし、新生児のスタッフに引き継ぐこと、胎盤の計測、母のお迎えと手術後の観察です。
検察:それらの役割のうち、胎盤の計測ということだが単に計測だけか
証人:胎盤に欠けているところがないか見ます。
検察:胎盤に欠けていることがないかの確認は、何故行うのか
証人:欠けている部分があったら、子宮面が欠けていると子宮収縮が悪く、出血が止まらなかったりするので、確認します。
検察:質問を変えます。その手術にかかわったのは一人でしたか
証人:二人です。私のほかにもうひとりです。
検察:通常は帝王切開に助産師が二人はいるのですか?
証人:いつもは一人です。
検察:なぜそのときは二人入ったのですか
証人:手術に対して患者さんの不安が強く、不安軽減のため新生児係と母への声かけ係とでスタッフが二人になった。
検察:もうすこし大きな声でお願いします。ではそうすると、患者さんの不安ということで、不安の内容はどういうものか。
証人:具体的に不安をきいていないですが、手術の前に、前が帝王切開で、前置胎盤??だから、出血が多くなる可能性があるとか、危険性の説明をされているので不安なのかなと思っていました。
検察:前置胎盤??のとき出血が多くなるということですか。他にはどういうことが考えられますか
証人:出血が多くなると、子宮摘出術や他の施設への搬送の話などです。
検察:患者さんが子宮摘出を嫌だといっていましたか
証人:そういう言葉をきいたことはなかった
検察:手術の説明は誰がやったのですか
証人:K先生です。
検察:患者さんの出血が多くなるとか子宮摘出に不安をいだくことは手術の支障になりますか
証人:特別そういうことはない。
検察:患者さんが不安を感じていたということだが、証人自身は不安を感じていましたか証人:感じていました。
検察:その内容は
証人:手術の前に、県立医大で似たような症例の帝王切開をして、多量出血でとても大変だったという話を聞いたので。
検察:具体的に教えてください。その手術は12月17日より前のいつ頃のことですか
証人:そういうことがあったと聞いたのは、患者さんが入院された後だった
検察:県立医大で手術が大変だったと、それと比較してどういうところがどう違っていたのですか
証人:県立医大には産婦人科医がたくさん、何人かいる中で大変だったということだが、大野病院では産婦人科医が一人しかいなく、同じようになるとは限らないが、医師一人だし、輸血を注文しても届くのに時間がかかるし、同じようになったとき、時間がかかるし、同じようになったとき大野病院で対応できるか不安でした。
検察:他の同僚に不安を話したことはあったか
証人:ありました。
検察:K医師に進言した方はいましたか
証人:先輩助産師が進言したというふうに聞いています。
検察:先輩助産師は誰ですか
証人:○さんだったと思う
検察:K医師は進言をききいれたのか
証人:直接聞いていないのでわかりません
検察:患者さんは不安ということの他に問題となることはあったか
証人:他にはなかった。
検察:手術について伺う。15号証の麻酔記録を、見えますか? 麻酔記録によりますと、麻酔開始は14:26。児娩出は14:37。これは証人の記憶と矛盾しないか
証人:矛盾しません
検察:手術の際、証人はどこにいて娩出を待ったのですか
証人:外科医師の右のとなりの側に立っていました。
検察:患者さんは仰臥か
証人:はい
検察:K医師の位置は
証人:外科医師のむかいがわです。
検察:33号証の図をみてください。図面、まちがいがないかどうか。33号の5図になります。図面でいうと手術台にむかって頭側、証人はどの辺か
証人:?となります。外科医はその左。
裁判官:図面でいうと上、下? 下っていうことですね
証人:はい。
検察:そうしますとね、証人はK医師が患者さんを切開するのをみていましたか
証人:はい。
検察:患者さんの腹部切開後、何が見えましたか
証人:子宮です。
検察:子宮以外の臓器は見えましたか
証人:見えませんでした。
検察:どれくらい離れていましたか?
証人:腕を伸ばせばさわれるくらいの位置にいました。
検察:視界を遮るものはありましたか
証人:ありませんでした。
検察:子宮の様子はどんな状態でしたか?
証人:血管がぼこぼこと隆起して網状になっている様に見えた。
検察:隆起した血管の太さはどれくらいか
証人:男性の腕の血管がうきでているくらいの太さでした
検察:血管の数は
証人:覚えていませんが、一本ではありません。
検察:証人は帝王切開に6回くらい立ち合ったとのことですか、5回ですか、今説明の隆起はいつもみられますか
証人:初めて見ましたし、その後も見ていない
検察:そのときの子宮の様子を図に書いてください。
検察:このような状況で子宮を目にしたとき、どうでしたか
証人:子宮の血管が沢山なのでどこを切るのかと思った。
検察:被告人はどのような処置を加えましたか
証人:臍に切開をひろげ、超音波検査の器械をつかって、胎盤の位置を確認しました。
検察:帝王切開の手術時に超音波を使うことはよくありますか? 証人は何度も経験していますか?
証人:初めてでした。
検察:検査の後は何をしましたか
証人:子宮前を切開しました。
検察:出血については、証人がどのように考えたのですか
証人:いつもより多いなと思いました。
検察:手術記録より、手術開始から11分で娩出している。手術で困る状況か
証人:違います。エコーで見た時間が追加になっただけと思った
検察:赤ちゃんの娩出後、赤ちゃんを受け取ったのは誰ですか?
証人:私です。
検察:新生児の処置は何をしましたか
証人:仕事台(インファントウォーマーと表現)の下で羊水吸引をしたり、酸素を投与したり体を拭いたりしました。
検察:そのような処置は、いつもと違うものでしたか
証人:少しいつもより時間がかかりました。
検察:なぜですか
証人:赤ちゃんの泣き方が弱かったので。
検察:結局赤ちゃんは産声をあげたのですか
証人:はい。
検察:その後どうしましたか
証人:赤ちゃんと母親を面会させました。
検察:そのとき患者さんの意識はしっかりしていましたか
証人:はい。赤ちゃんの手と握手をして、ちっちゃい手ね、と言っていました。
検察:患者さんの意識には問題なかったのですか
証人:はい。私が見た限りでは。
検察:質問を変えます。被告は赤ちゃんを取りあげた後、証人は新生児の処置を行ったとのことだが、医師はどのような処置をしていましたか?
証人:私は赤ちゃんにかかりきりで、ちらっと見たきりで、どんな様子か覚えていない。
検察:まず何をしていましたか
証人:目に入ったのは、臍帯を引っ張って、胎盤を持ち上げていた。胎盤はテントのように三角形にもりあがった。
検察:臍帯を引っ張ると、胎盤は簡単にはずすことができますか
証人:理由は不明です。帝王切開で胎盤は手ではがれますが、そういう例にはじめて遭遇した。
検察:その後証人はどうしましたか
証人:赤ちゃんを抱いて手術室を出、分娩室へ行き赤ちゃんを計測し、新生児室へ行き、スタッフに引き継ぎました。
検察:時間的には、どれくらいでしたか
証人:5〜10分くらいかと。
第30号証?病棟見取り図を見ながら手術室や分娩室などの場所を確認
検察:分娩室では何を計測しましたか
証人:赤ちゃんの体重、身長、胸囲、頭囲を計測したり・・・。
裁判長:分娩室、新生児室はこの一ヶ所ですか
証人:はい。
検察:患者の赤ちゃんについても、これまでの一連の作業について、通常と同じくらいの時間がかかりましたか
証人:はい。
検察:証人は新生児室から手術室に戻りましたか
証人:はい。
検察:証人が手術室を出る時と、様子は同じでしたか
証人:私は手術室の中に入らず、入り口でスタッフに、薬をとってきてと頼まれました。とてもあわてている感じでした。
検察:薬の名前は
証人:ノルアドレナリンという薬でした。
検察:どういう薬ですか
証人:血圧を上げる。
検察:どうしてですか
証人:手術室にあるものはなくなったので、病棟にあるものを持ってきてと言われました。取りに行きましたがどこに置いてあるかわからなかったので人に聞いたところ、薬局にとりに走った方が早いと言われ取りに行きました。
検察:誰が言いましたか?
証人:Tさんです。
検察:急いで行ったと。
証人:はい
検察:証人が赤ちゃんを新生児室へ運んで戻ったら、薬を急いで取りに行ってと、結局は薬局へとりに行ったということですね。
証人:はい
検察:手術室を出た後とは様子が変わっていたか
証人:ひとりしか会っていませんが、様子が変わっていました。あせっている感じでした。
検察:そのときの状況について他にはないですか
証人:それしか記憶に残っていません。
検察:助産師の仕事に、胎盤の計測があるということですが、胎盤を計測したのは誰ですか証人:私です
検察:証人はどこで観察しましたか
証人:分娩室の流し台のところです。
検察:どこから持ってきましたか
証人:はっきり覚えていませんが、私が持ってきたのかな、と。
検察:証人がそれまで見た胎盤と比べてどうか
証人:かわっていました。
検察:どこがですか
証人:大きさが大きいのと、母体面がぐちゃぐちゃで分葉がなく、胎盤実質がないところがあって、こういうのは見たことがありませんでした。
検察:図でかいてください
弁護;胎盤は写真で出ているので、図にかくより写真のほうがわかりやすい
裁判官:証人は記憶の残っている通りの図を書くよう検察が指示したので、異議却下。
証人:うまく描けないですけど。これは母体面は上からみた感じです。臍帯は下です。
検察:胎盤のイメージはそのとおりですか
証人:丸いかたまりがあって、その通りです。
検察:実質についてはどうですか
証人:胎盤の母体面は丸く模様が見えるが、これは表面が癒着していて、分葉がわからなかった。
検察:胎盤が大きいのは何故わかりましたか
証人:膿盆の上に一部のせられなかったので。
証人の図中の胎盤実質がない部分を指して、
検察:どうして実質がなかったと思いましたか?
証人:取れてなくなったのか、何なのか・・・。
検察:先ほど、(助産師の役割として胎盤の)欠損部を確認すると言っていたが?
証人:そこにあったものが取れてしまったのかなと。
検察:どこにあると思いましたか
証人:膿盆に入っていなかったので、子宮にあるのかなと思いました。
検察:それ(実質のない部分があること)を医師に報告しましたか
証人:言ったような記憶はないです
検察:なぜですか
証人:・・・・。
検察:先ほどの説明では、胎盤が残っていると後で出血したり、母体に影響すると言われたが、報告しなかったということなので、どういうことが考えられますか
証人:しなかったと思います。はがした先生が分かっていると思ったか、タイミングを逃したか、そういう状況ではなくなっていたか・・・。
検察:そういう状況でないというのはどういうことですか
証人:病棟が忙しくなっていました。
検察:なぜ忙しくなっていたのか
証人:輸血を発注したり、A型の職員を集めたり、
検察:それはこの帝王切開のためですか
証人:はい。
検察:この記録や数値は誰が書きましたか
証人:私です
検察:手術記録の部分に当時の記録図があります。胎盤の中央部はどうなっていましたか
証人:膜だけ残っていました。
検察:胎盤付着物の様子について、胎盤の実質部分はどうなっていたか
証人:分葉がわからなくなっていました。
(実際には、上記のようなまとまった質問回答ではなく、図や記録内容を逐一確認している)
検察(高宮):証人は最初の証言の中で、胎盤の欠損がないかを助産師の立場で確認するといいましたね
証人:はい。
検察:その理由として、子宮収縮不良になるといいましたね
証人:はい。
検察:看護師あるいは助産師としての勉強の中で、子宮収縮不良について知っていましたか
証人:学校で習いました。
検察:どんな危険があると習いましたか?
証人:出血が多くなると。
検察:出血が多くなる危険を医師に分かってもらうために報告をするのですか
証人:はい。
検察:被告が臍帯を引っ張った時、テントのような感じになったと言いましたが、どういう感じですか
証人:・・・・。(しばらく黙ったあと)はがしている途中だと思いました。はがれている甲斐ないかは分かりませんでした。
検察:はがしている途中ということは、はがれていないということですか
証人:中央が持ち上がり、周辺はまだ中にあるようでした。
検察:テント状ということでしたが、臍帯が頂点でテントの地面側はどこですか
証人:ここです(臍帯について)(母体面側です)←地面側に対しての回答
検察:母体面とは、子宮に付いているところのことですか
証人:はい。
検察:手術前に患者さんが不安になったということだが、そのときの患者さんの不安は何故わかったのか
証人:普段はにこにこしていたが、笑顔がみられなかった
検察:不安を訴えていたということでしたか
弁護:異議。先ほどは、本人から不安を直接聞いていないといっていたが、今の質問は聞いたことを前提にしている。
裁判官:異議却下します
証人:直接聞いていません。
検察:生れたばかりの赤ちゃんを対面させた時、患者さんの意識はありましたか
証人:はい。
検察:このときの患者さんの表情で覚えていることはありますか
証人:涙を浮かべていました。
弁護:田中から質問します。高校卒業後、どこの学校で勉強をしましたか
証人:国立S病院付属の看護学校です。
弁護:卒業後どこで働きましたか
証人:福島市内のTクリニックに1年と少しパートで働きました。
弁護:勤務形態は
証人:週4〜5回、勤務表にしたがってです。
弁護:そのクリニックに出産施設はありましたか
証人:ありませんでした。
弁護:その後どうしましたか
証人:福島市内のE学院助産学科に1年通学し、平成14年卒業しました。
弁護:大野病院での出産立会いは何件くらいですか
証人:平成16年12月までに、おそらく40〜50回くらいです。
弁護:出産立会いは大野病院だけですか
証人:学生実習以外ではそうです。
弁護:証人はそれまで何回帝王切開に立ち合っていましたか。6回ではありませんか
証人;ちゃんと数えていませんが、10回までです。5回から10回。
弁護:5回に近いということですね。
証人:はい。
弁護:前置胎盤?ははじめてですか
証人:はい、見たことがありません。おそらく。
弁護:この事件のあとには
証人:記憶にないので、ないと思います。
弁護:癒着胎盤の手術への立会いは初めてですか
証人:はい。
弁護:この事件のあとには
証人:ありません。
弁護:前置胎盤?の剥離された胎盤を見たことはありますか
証人:多分、見たことはないと思います。
弁護:癒着胎盤の剥離された胎盤を見たことはありますか
証人:見たことはないと思います。
癒着胎盤の子宮はどうですか
証人:見たことはないと思います。
弁護:用手剥離された胎盤を見たことはありますか
証人:帝王切開ではないが、経膣分娩ではある。
弁護:事件後に前置胎盤?や癒着胎盤の症例はありましたか
証人:多分ないと思います。
弁護:手術について質問します。最初に網目状の血管が見え、次にエコーのプローベを当てていたといいましたが、それで子宮の表面をなでていたのですか。
証人:はい。
弁護:プローべを当てたあと、隆起した血管はどうなりましたか
証人:多分そのままだったと思います。
弁護:それを見ましたか
検察:異議。重複である。
証人:ぼこぼこしたイメージが残っていたのかもしれません。
弁護:それはいつのイメージですか。切開(開腹の意)直後ですか
証人:切開直後もそうですが、子宮に切開を入れるときも変わっていなかったのではと思います。
弁護:証人が助産師として立ち合った帝王切開の中で、エコーを用いて確認したことは初めてでしたか
証人;はい。
弁護:子宮の前面の血管のあるところを切開したのですか。
証人:そこをさけ、血管の隆起していないところを切開していました。
弁護:切開していた場所には血管がなかったのですね。
証人:はい。
弁護:赤ちゃんの処置には何分かかりましたか
証人:何分かは分かりませんが、胎盤娩出より前(に終わった)です。
弁護:赤ちゃんの処置後、K医師が臍帯を引っ張っていたのを見たと言いましたが、患者さんに赤ちゃんを見せたのとどちらが先でしたか
証人:対面させる前かな、あいまいですが。
弁護:赤ちゃんを連れて手術室を出てからまた戻るまでは何分くらいでしたか
証人:正確な時間はわかりません。
弁護:10分より多いですか
証人:・・・。
弁護:結構です。胎盤は通常より大きかったですか
証人:はい。
弁護:重さはどうですか
証人:重かったです
看護記録をモニタに表示
弁護:「膜だけ」と書いてあるところは、膜だけだと思ったのですか
証人:そう書いてありますから、そうでしょう。
弁護:胎盤病理の専門家でこれは「膜様胎盤」ではないかと言っている人がいますが、これについてどう思いますか
証人:その時はそういうことは考えませんでした。
弁護:卵膜については「不完全」に○がついていますがこれはどういうことですか
証人:卵膜がない部分があったので。
弁護:臍帯の位置については図の左側の6(cm)と書いてあるあたりですか
証人:はい。膜だけになっていて実質がないところから出ていたと思います。)
弁護(2):患者さんの不安の話は、本人から直接にはきいていないのですね。
証人:はい。県立医大の話があったので、不安がありました。
弁護:あなた自身が不安だと思ったのはどういう症例ですか
証人:はっきりしませんが、同じように前回帝王切開の前置胎盤?だったと思います。
弁護:そういう症例と聞いて、あなたも手術前に不安を感じたのですか
証人:はい。
弁護(2):大野病院で手術しない方が良いと進言した本人から直接聞いたのですか?
証人:よく覚えていません。ナースステーションで何人かでそういう話をしていたのでそう思いました。
弁護:誰かが「進言したらしい」と聞いたのですね。
証人:はい。
弁護:大野病院で前置胎盤?を扱ったことがあるのは知っていましたか。
証人:はい。
弁護:知っていてもなお不安だった。
証人:はい。
弁護:点滴ルートの確保は誰がしましたか。
証人:私です。
弁護:何ゲージの針を使ったか覚えていますか。
証人:2本取るように言われました。18か20ゲージだったと思いますが、覚えていません。
弁護:では看護記録を見てみましょう。(当日朝の部分に「右(?)前腕よりサーフロー20G刺入しヴィーンF500ml開始」とある) この署名はあなたのものですね。
証人:はい。
弁護:これを見るといくつのラインですか。
証人:20ゲージです。
弁護:医師の指示は何ゲージだったか覚えていますか。
証人:覚えていません。
弁護:では指示書を見ましょう。何と書いてありますか。
証人:「術前輸液はヴィーンFを2本、左(?)前腕に18Gから20G」と書いてあります。
弁護:20Gを選んだのはあなたですか。
証人:そうだと思います。
弁護:なぜ20Gを選んだのですか。
証人:なぜだかは分からないです。
弁護:分からないときは、いつも20Gを選ぶのですか。
証人:18Gは太いので、失敗するかもしれないと思いました。
弁護:20Gの方が細いのですね。
証人:はい。
弁護;あなたにとって細いゲージの方がやりやすい。
証人:はい。
弁護:大野病院では夫の分娩立会いを認めていますが、帝王切開ではどうですか
証人:医師の許可があれば。
弁護:本例ではどうでしたか
証人:許可は出ていました。
弁護:家族にオープンになっていたということですね。
主任弁護士に交代
弁護:夫が帝王切開に立ち会う予定だったことを知っていましたか
証人:はい。
弁護:風邪のために立ち会わなかったのですね
証人:はい。
弁護:県立医大の例で不安だということだが、不安の内容は出血でしたか。
証人:はい。対応できるかどうか。
弁護:そうであれば出血に備えて点滴ラインは太いものを確保すべきではなかったのですか。どうして太い18Gで確保しなかったのですか。
証人:18Gの方が良いのでしょうけれど、この場合は・・・
弁護:現実に不安を感じていたのなら、18ゲージで確保すべきだったのにしなかった。それはどういうわけですか。
証人:・・・(10秒ほど無言)
検察:異議あり。誘導である。医師の指示からは逸脱していない
裁判長:端的に質問してください。異議は棄却します。
弁護:分からないなら分からないで結構ですが、証人はそれほど具体的な危険を感じていなかったので、20Gを選択したのではないですか
証人:そうかもしれません。
弁護:近くの病院では、同様の症例でも医師が助手もなしに、10例ほど(前回証人のK医師のこと)手術していましたが、知っていましたか
証人:いいえ
弁護:証人は前置胎盤?や癒着胎盤の胎盤を見たことがないですね
証人:はい
弁護:胎盤の写真で白くすじのように見えるのは卵膜ですか
証人:はい。(と指差し説明)
弁護:実質欠損か?の「?」はどういうことですか。欠損か、もともとなかったのか考えましたか
証人:はい。
弁護:胎盤病理の専門家は「分葉胎盤」「膜様胎盤」の可能性を言っていますが
検察:異議。その文書は(胎盤の病理診断書のことか)不同意のはずである
弁護:これらの胎盤について知っていましたか
証人:その当時は知りませんでした。
弁護:今は知っていますか
証人:はい。
弁護:こういうものだったと思いますか
証人:私には判断できません。
弁護士交代
弁護:証人は手術中どこに立っていましたか
証人:(図を指で示す)
弁護:ずっとここに立っていましたか
証人:だいたいここに立っていましたが、後ろのインファントウォーマーを見に行ったこともあります。
質問者検察に交代
検察:先ほど検察からの質問に対し、娩出された胎盤に分葉が認められなかったといいましたね
証人:はい。
検察:その際、表面がぐちゃぐちゃだったと言いましたね。
証人:はい。
検察:先ほど書いた図で、ぐちゃぐちゃというのはどのあたりのことですか
証人:この表面です(と、指で示す)。
検察:この部分や実質のない部分をどういう風になっているんだろうと考えましたか
証人:なんでこうなっているんだろうと思いました。
検察:子宮に残っているのか考えましたか
証人:子宮に残っているか、一生懸命はがす際に握ってぐちゃぐちゃになったか・・・。
検察:帝王切開に従事した経験で、通常の出血量はどれくらいと思っていますか
証人:だいたい1500くらいかと。
検察:1500とは羊水を含んだ量ですか
証人:はい。
質問者主任弁護士に交代
弁護:あなたが子宮を見た時、血管が隆起していたと証言しましたね
証人:はい。
弁護:それはあけた(開腹した)時に見たのですか
証人:はい
弁護:K医師がプローベでなでているところを見ましたか
証人:はい。
弁護:血管の上もなでているところも見ましたか
証人:血管をなでようと思ったかは知りませんが、プローベを当てているのは見ました。
検察:異議。すでになでようとしているかはわからないと言っている。
弁護:なでているところは見いていないのですか
検察:異議
裁判長:プローベでなでるのとプローベを当てるのの違いが分かっていないのかも
弁護:血管の上をなでているところは見ていないのですか
証人:
弁護:(図を見せながら:本人の絵では開腹創の結構頭側まで血管があるように見える)血管の位置はもっと下(尾側)ではなかったですか
証人:血管の印象が強くて・・・。血管は下にいっぱいありました。上にはあまりありませんでしたが、さらに創を切り開いたら、上はつるつるしていました。
弁護:プローベを当てたあと、血管の隆起は消えましたか
証人:わかりません
弁護士交代
弁護:手術室での証人の位置はM医師(手術助手)の隣でしたか。
証人:やや右後ろです。
弁護:K医師とは向かい合っていましたか。
証人:斜めに向かい合っていました。
弁護:赤ちゃんを受け取る前に医師が行った処置は何ですか。
証人:へその緒を切ってから渡されました。
弁護:へその緒を切るだけですか。赤ちゃんを拭ったりはしないのですか
証人:しないと思います。
弁護:娩出までにかかった時間はいつもと同じでしたか
証人:はい
弁護:検察官の質問に対し、赤ちゃんの処置に時間がかかったと言い、あとではいつもと同じだったといいましたが
検察:異議
証人:はい。普通と比べて少し時間がかかったのは、赤ちゃんを受け取った後でした。
弁護:患者さんが子宮摘出を嫌がっているとは聞いていないといいましたが、本人から直接聞かなかったということですか
証人:はい。訴えがありませんでした。
裁判官:赤ちゃんを被告人から受け取って分娩室内での処置に時間がかかったのですか
証人:それは手術室内の処置です。
裁判官:同じくらいの時間というのは、分娩室で計測する時間のことですか
証人:そうです。
裁判長:ぐちゃぐちゃの胎盤、と証言されましたが、上からみたらどうでしたか
証人:表面がつるっとしておらずけばだったような感じでした。
裁判官:具体的には、
証人:うまく表現できないのですが、通常は滑らかで丸い固まりが見えるのですが、へんなたとえをするならば、今回のは固まったカレーがぐちゃっと置いてあるような感じでした
弁護:A型の職員を集めたというのは
証人:輸血を追加注文しても時間がかかるので手術室からの指示で必要時にはすぐに取れるようにといわれた。
弁護:誰の指示でしたか
証人:わかりません
弁護:あなたは誰から聞きましたか
証人:私が電話を受けたのではなく、電話を受けた人が師長へ報告をして、そこから広まりました
裁判官:誰からきいたのですか
証人:はっきり言っていませんでした。
弁護:院内で採血は行われましたか
証人:はい
裁判官:胎盤の絵と写真の対応関係を説明してほしい。全体的にぐちゃぐちゃしていたという印象というのは、写真のもののようなものに対して、あなたの表現が「ぐちゃぐちゃ」ということですね。
証人:はい。
閉廷
開廷【13時30分】
証人:麻酔科医H医師
検察側主尋問
検察:職業は医師ですね。
証人:はい。
検察:専門は。
証人:麻酔科です。
検察:略歴を。
証人:平成4年卒。(以下、勤務病院を証言)
検察:平成16年12月17日当時、県立大野病院に勤務していましたね。
証人:はい。
検察:本件帝王切開手術に麻酔担当医として関与しましたね。
証人:はい。
検察:それまでに帝王切開で麻酔担当医として入ったことはあるか。
証人:あった。
検察:何例?
証人:正確にはわからない。大野病院では30例弱。それ以前は定かではない。
検察:30例以上ということでいいか。
証人:はい。
検察:一般に麻酔担当医はどのような役割を担うのか。
証人:術前には診察を行う。術中には麻酔はもちろん、呼吸や循環、全身状態の管理を行う。
検察:全身状態とは具体的にどういうことか。
証人:呼吸や血圧、脈拍など循環の管理、出血量を見て輸液などを管理します。
検察:術前に患者の状態を確認するのか。
証人:はい。
検察:大野病院では具体的にどのようにしていたのか。
証人:各科の医師から麻酔申し込みがあり、手術前に患者に会って術前状態を見る。
検察:手術実施の申込書はあるのか。
証人:直接私に届けられるのではないが、手術室に来るのを朝確認する。
検察:その書類のタイトルは。
証人:手術麻酔申込書と言ったか……。
検察:甲第50号証添付の手術麻酔表を示したいが、弁護人は同意するか。
弁護:裁判所が持っていない不同意書証について、この場で判断しろと言われればNoと言うのが弁護人の務めだ。
(協議の結果、最終的に同意)
検察:これは本件患者の帝王切開について事前に確認したものですか
証人:はい。
検察:記載部分の確認をしたい。手術前にはどの部分が書かれているのか。
弁護:異議。示すことには同意したが、内容にまで質問するのはおかしい。
検察:この証拠は既に開示している。弁護人も確認済みでありチェックできる。
弁護:裁判所は持っていない。裁判所は確認できない。
裁判長:異議は棄却する。
検察:証人の手元に来た時点でどこが記載されていたか。
(証人が説明)
検察:いま証言いただいたのは、B4の左側左端に各欄があり、上から8段目を含むそれより上の部分ということでよいか。
証人:はい。
検察:通常、手術麻酔表に麻酔担当医が書く前に、誰が記載するのか。
証人:主治医。
検察:手術麻酔表を受け取った以外に患者について説明を受けたか。
証人:立ち話程度に。
検察:その時の被告人の説明内容は。
証人:おおよその内容は、前回の帝王切開創に胎盤の一部がかかっているかもしれない。子宮に胎盤が食い込んでいて血が出るかもしれない。手術中に出血が多くなった時には子宮を摘出します、と。
検察:確認すると、前回帝王切開創に胎盤がかかっているかもしれない、と。
証人:はい。
検察:具体的な文言を覚えているか。
証人:覚えていない。
検察:胎盤が食い込んでいると言ったかは記憶がちょっと曖昧だと。
証人:はい。
検察:おおよその主旨はどのようなものと理解したのか。
証人:言葉通りで……。胎盤付着部が創面にかかっていると。イメージがわいた訳ではない。
検察:摘出について具体的には。
証人:どうなったら摘出するかという具体的な説明は無かった。
検察:被告人から説明を受けて、手術について何か処置をしたか。
証人:直前に点滴ラインを2本取った。
検察:それは何故か。
証人:通常、帝王切開では1本だが、2本ではより多くの輸血・輸液ができる。
検察:より多くの輸血・輸液ができるとは、そういう事態がありうると考えたのか。
証人:出血が多くなるかもしれないという話があったので。
検察:どういう部分が出血するかもしれないと認識していたのか。
証人:子宮ということは間違いないが、具体的にはどこという認識は無かった。
検察:それはどういうことか。
証人:出血するとすれば、創の切り口か胎盤付着部しかないだろうと
検察:出血が多くなるかもしれないといわれた時、子宮のどこからの出血を想定していたのか。
証人:その時どう思ったかは分からないが、今思うと剥離面かと。
検察:証人が帝王切開で2本ラインを確保したことは以前にあったか。
証人:初めてだった。
検察:今回の手術を開始するに当たって輸血を準備していたことは分かっていたか。
証人:はい。
検察:手術前に輸血を準備したのは誰か。
証人:K先生。
検察:量は。
証人:MAP5単位。
検察:通常、手術前の輸血の準備は誰がするのか。
証人:当時の大野病院では執刀医や主治医。
検察:被告人が準備したのは通常業務ということか。
証人:はい。
検察:手術に先立って麻酔を実施した。
証人:はい。
検察:麻酔の実施は記録していますね。
証人:はい。
(麻酔記録を提示。モニタにも映される)
検察:これは今回の手術中の麻酔記録か。
証人:はい。
検察:この麻酔記録には麻酔の状態以外も記録されている。
証人:血圧、脈拍、使った薬、使った輸液などを記録している。
検察:出血量も記録されていますね。
証人:はい。
検察:これらの記録は誰がしたのか。
証人:すべて私が。
検察:記録するのはリアルタイムか。
証人:基本的には。後で書くこともある。
検察:使った薬剤はどこに記録しているのか。
証人:時間の下の欄と備考欄に。
検察:出血量はどこに。
証人:麻酔記録の出血量の欄に。
検察:上向き、下向きの山が血圧ですね。
証人:はい。
検察:点で示されているのが脈拍。
証人:はい。
検察:手術に先立ち実施した麻酔はどういう種類のものか。
証人:脊髄くも膜下麻酔と硬膜外麻酔の2種類。
検察:その効果はどういうものか。
証人:脊椎麻酔は下半身、乳頭部から下を麻酔する。
検察:患者の意識ははっきりしているのか。
証人:はい。
検察:全身麻酔か部分麻酔かで言うと。
証人:部分麻酔。
検察:実施時刻は分かるか。
証人:麻酔記録の×印が脊椎麻酔を始めた時刻(14時〜14時5分)。
検察:この後、14時5分ごろに血圧が低下している。
証人:はい。
検察:これは身体に問題のある変化か。
証人:脊椎麻酔にはよくある。
検察:どういう理由か。
証人:血管が拡張するので、相対的に循環血液量が少なくなる。また、妊婦では妊娠子宮が下大静脈を圧迫して心臓に戻る血液量が減少する。麻酔が上半身まで効いてしまうと心臓の収縮が弱まることもある。
検察:麻酔の効果はどうだったか。
証人:十分と記憶している
検察:手術開始時刻は。
証人:麻酔記録で丸に点を打ったものが手術開始。
検察:手術時間は14時26分からとあるが、それでいいか。
証人:はい。
検察:手術開始時点で、証人は患者について不安に感じることは無かったか。
証人:特に無かった。
検察:手術室での証人の位置は。
証人:患者の頭側。
(現場見取り図を提示。モニタにも映される)
検察:証人はどこか。
証人:1番の位置。
検察:被告人は。
証人:2番。
検察:3番は。
証人:助手の外科の先生。
検察:被告人が腹壁を切開すると子宮が見えましたね。
証人:はい。
検察:子宮はどのような状態だったか。
証人:通常同様以外に、血管が浮いていた。
検察:見えた血管は何本か。
証人:具体的な本数は覚えていない。少なくとも1本ではない。
検察:複数本ということか。
証人:はい。
検察:複数本というのは2本くらいか、5本くらいか、それ以上か。
証人:何とも覚えていない。2本以上。
検察:証人はそれまでの帝王切開でそのような浮いた血管を見た事があったか。
証人:なかった。
検察:どのような色だったか。
証人:赤系統だったがはっきりとは覚えていない。
検察:浮いて見えたとは具体的にどのような感じか。
証人:男性の手の甲の静脈に似た状態。
検察:血管が隆起とか怒張とか言い方があるだろうが、証人の表現としては。
証人:浮いている、という言い方になってしまう。
検察:表面よりも血管部分が盛り上がっているという認識で言いか。
証人:はい。
検察:浮いた血管を見てどう思ったか。
証人:何だろう、これは、と。
検察:何だろう、というのは何故か。
証人:見た事が無かったので。
検察:被告人は気付いていた様子だったか。
証人:覚えていない。視野には入るので気づかないはずはない
検察:被告人は血管について言葉を発したか。
証人:覚えていない。
検察:腹壁を切開後、子宮が見えたわけだが、被告人は何をしていたか。
証人:エコーのプローブを当て、子宮内部を観察していた
検察:その後、子宮を切開した。
証人:はい。
検察:証人から見てどのような部分を切開したか
証人:はっきりと覚えていない。
検察:切開した子宮内から赤ちゃんを取り出した時刻は覚えているか。
証人:覚えていない。
(麻酔記録提示)
検察:14時37分とあるが、これがその記録か。
証人:はい。
検察:赤ちゃんを取り出した後、患者の様子は。
証人:変化は無かった。
検察:被告人は臍帯を切り、臍帯血を取り、子宮収縮剤を注射していたようだが。
証人:はっきり覚えていないが、一連の流れ。
検察:手術の際、出血量について看護師から報告を受けていたか。
証人:はい。
検察:その時点での出血量を記録したと。
証人:はい。
検察:赤ちゃんを取り出して間もなくの時点で報告を受けたか。
証人:覚えていないが、記録にある。
(麻酔記録提示)
検察:出血量の欄、14時35分と14時45分の間に2000という数字があるが、これがその記録か。
証人:はい。
検察:出血量の計測はどのように行われたのか。
証人:通常通り。出血のしみ込んだガーゼの重さを量って、そこからガーゼの重さを引いたものと、吸引の目盛りを読んだものを合計。
検察:出血量はどのように報告されたのか。
証人:看護師が壁の記録用紙に記録するのと同時に口頭でも。
検察:口頭で報告があったと。
証人:はい。
検察:今回の帝王切開について、子宮壁を切開して赤ちゃんを取り出した時、実際に出血は見たか。
証人:はい。
検察:出血量についてどう思ったか。
証人:いつのことか。40分前後か。
検察:赤ちゃんを取り出すまで。
証人:通常よりやや多いと思った。
検察:出血量には羊水を含んでいますね。
証人:はい。
検察:2000mlというのは羊水を含んでいるのか。
証人:はい。
検察:それでも多いと。
証人:やや多いかな、と。
検察:それまでの帝王切開ではどのくらいの出血があったか。
証人:個人差はあるが、1000mlくらい。もちろん多くなることもある。
検察:1000ml程度までという印象か。
証人:はい。
検察:その多くて1000mlまでと言うのも羊水込みか。
証人:はい。
検察:この14時40分時点で、血圧は麻酔記録から上が100、下が50強でいいか。
証人:はい。
検察:被告人は児娩出の後、胎盤を取り出そうとした。
証人:はい。
検察:胎盤を出すために何をしたのか。
証人:臍帯を引っ張った。
検察:被告人が臍帯を引っ張ると、胎盤はどうなったか。
証人:胎盤と子宮が一緒になって、子宮底部がへこむ感じで持ち上がった。
検察:そのようなことは証人のそれまでの経験であったか。
証人:なかった。
検察:それを見てどう思ったか。
証人:何だろう、と。
検察:なんでくっついているんだろう、ということか。
証人:はい。
検察:その後、被告人はどのような処置をしたのか。
証人:胎盤を子宮に戻して子宮に手を入れて何かしていたが、手の先は見えなかった。
検察:手の先の作業が見えなかった理由は。
証人:手先は子宮壁の陰にあったので。
検察:子宮に差し入れる手の一部は見えたのか。
証人:差し入れている所から中枢側は。
検察:何をしていると思ったか。
証人:胎盤を剥離していると思った。
検察:その際に出血は見られたか。
証人:ある程度は。具体的な状況は曖昧。
検察:証人は出血があると感じられて何か措置を取ったか。
証人:ヴィーンFという補液を14時45分にヘスパンダーに切り替え2本入れた。
検察:ヘスパンダーを始めたのは何故か。
証人:出血が多くなっていたので。ヘスパンダーはヴィーンFに比べ血管内にとどまる。
検察:ヘスパンダーは出血に対して効果が高いと。
証人:はい。
検察:ヘスパンダーはどのように投与したのか。
証人:通常の点滴と同様に。ヴィーンFと差し替えた。
検察:ヘスパンダーの注入は通常の滴下のみか。何か併用したのか。
証人:pumpingを行った。
検察:pumpingとは何か。
証人:三方活栓と注射器を使って強制的に輸液を吸引して投与する。
検察:pumpingはいつ開始したのか。
証人:正確には思い出せない。
検察:14時45分にヘスパンダー500ml投与という記録があるが、これの前か後ろか、その近くか。
証人:つないだ前後だが、はっきりと覚えていない。
検察:幅としては前後何分ぐらいか。
証人:記憶があやふやだが、10分も開いてはいない。
検察:5分とか1〜2分とか、どのくらいか。
証人:そこまで覚えていない。
検察:今証言されたヘスパンダーは出血に対する措置か。
証人:はい。
検察:そういう措置を取る理由について、出血量以外に何か理由があるか。
証人:血圧が下がり始めたことも考慮した。
検察:血圧低下は麻酔記録で確認できるか。
証人:はい。
検察:14時40分時点で上が100、下が50強だった。45分時点では上80、下40弱になっている。これがその血圧低下か。
証人:はい。
検察:このように血圧が低下した理由は。
証人:出血量が多くなったため。
検察:出血量が増えたことで血圧が低下したということか。
証人:はい。
検察:先ほどヴィーンFからヘスパンダーに替えてpumpingをしたと証言した。
証人:はい。
検察:それまで帝王切開でpumpingをしたことはあったか。
証人:短時間、一時的にはあったが、長時間するのは初めてだった。
検察:帝王切開でpumpingを利用する頻度は。
証人:少ない。
検察:補液を替えてpumpingをしていた14時45分頃、被告人は何をしていたか。
証人:記録から言うと、胎盤剥離。
検察:どのように剥離作業をしていたか。
証人:手を差し入れていた。器具を使っていた。
検察:どうして器具を使っていると分かったのか。
証人:(手元に)銀色の(持ち手)部分が見えたので。
検察:何の器具かその場で分かったか……撤回します。
検察:器具の握る部分を見たのか。
証人:はい。
検察:器具の先端は見えたか。
証人:覚えていない。
検察:何をしていると思ったか。
証人:胎盤剥離。
検察:この頃、剥離中に証人の方から出血の様子が見えたか。
証人:見えたが、時間ははっきり覚えていない。
検察:どんな出血の様子だったか。
証人:お風呂がわいてくるような。
検察:お風呂がわいてくるような、とはどういうことか。
証人:スイッチを入れると水面が上がってくるようなお風呂のように。
検察:上の特定の出血点からピンポイントに、というより、下からわき上がると。
証人:はい。
検察:そのような出血はそれまでの帝王切開で見た事があったか。
証人:初めてだった。
検察:その出血状況を見てどう思ったか。
証人:だいぶ出ているな、輸液の準備をしなければ、と。
検察:そのような出血を見たのは、被告人がどのようなことをしていた時か。
証人:はっきり覚えていない。
検察:手を入れてクーパーを使って作業している……
弁護:証人はクーパーとは一言も言っていない。
検察:証人としては、被告人が何をしているときに出血を見たのか。
証人:前後関係は覚えていない。その前後。
検察:その、とは。
証人:剥離作業。
検察:剥離作業には手での剥離と器具での剥離があるがどちらか。
証人:記憶があやふや。
検察:どういう段階でどのくらいの出血量か。
証人:覚えていない。記録に頼るしかない。
検察:手、器具のどちらの頃にどのくらいかも覚えていないと。
証人:はい。
検察:証人は被告人が胎盤を剥がす作業をどのくらいしていたという認識か。
証人:記録を見るしか……。具体的には覚えていない。
検察:麻酔記録には胎盤娩出時刻が記録されていますね。
証人:はい。
検察:どこにどう記録されているのか。
証人:備考欄の7に、14時50分。
検察:14時50分に胎盤娩出、14時37分に児娩出。その範囲内で剥離したと。
証人:はい。
検察:この間13分のうちどのくらいか。
証人:児娩出後、臍帯血を取ったりしていたので10分くらいでしょうか。想像の範囲でしかないが。
検察:それは記憶と矛盾しないか。
証人:矛盾しない。
検察:それまで帝王切開で胎盤娩出の場面は見たことがありましたね。
証人:はい。
検察:いつもより短かったか長かったか。
証人:長かった。
検察:10分前後というのはどのくらいの幅なのか。
証人:覚えていない。
検察:手を用いていた時間と器具を用いていた時間、どちらが長かったか。
証人:はっきり覚えていない。
検察:出血が増えた状況は目で確認したのか。
証人:はい。
検察:そのような状況で、被告人に何か言ったか。
証人:いつ言ったかは覚えていないが、出血をコントロールできないか、というようなことを。
検察:それは何故か。
証人:押さえるか何かして出血を遅くしてもらって、輸液や輸血をたくさん入れて循環動態を改善しようと。
検察:循環動態とはどういう意味か。
証人:一言で言うのは難しい。(循環動態の説明:簡単に言えば、血圧や脈拍)
検察:証人の発言に対して被告人は何か言ったか。
証人:何も。聞き取れなかっただけかもしれない。
検察:出血の増加に対してどのような措置を取ったか。
証人:ヘスパンダーに切り替え、pumping、輸血をした。
検察:輸血を始めたことがあったということか。
証人:はい。
検察:輸血はヘスパンダーを注入し終えた後から行ったのか。
証人:はい。
検察:出血量について輸血前後に報告を受けたか。
証人:輸血の前に。
検察:報告を受けた量は。
証人:14時40分の2000はまだ輸血していない時点。
検察:2555というのも出血の記録ですね。時刻は。
証人:数字の真ん中が時刻になるように書いているが、数分はずれることもある。おおよそだが14時50分くらい。
検察:2555は14時50分と14時55分の間の、52〜53分くらいということでよいか。
証人:はい。
検察:先ほど出血量の報告方法について聞いたが、ガーゼの重さと吸引ボトルの目盛りの合計ということでよいか。
証人:はい。
検察:報告を受けた時点で記録するのか。
証人:はい。
検察:実際に出血があってそれを計測し、報告されたものを記録する。記録はリアルタイムよりは遅くなるのか。
証人:若干遅くなる。
検察:証人は血圧も確認していましたね。
証人:はい。
検察:14時55分頃の血圧は。
証人:記憶に無い。記録上は書いてある。
検察:14時55分頃の血圧は上50弱、下30でよいか。
証人:はい。
検察:その前の血圧の記録は、14時50分頃、上が80弱、下が40弱となっているが、下がっていますね。
証人:はい。
検察:この下がり方は感覚的にどのくらいのものと説明できるか。
証人:感覚的にですか? だいぶ下がったな、ということになる。
検察:この血圧低下はどのような理由によるものか。
証人:出血が多くなったことによる。
検察:先行する出血があって血圧が低下したということか。
証人:はい。
検察:そうすると、先ほど確認したように、100/50から14時55分の50弱/30弱になっている、この間、血圧低下をもたらす相当量の出血があったと。
証人:はい。
検察:胎盤剥離開始が14時40分前後、14時50分に娩出となると、血圧低下は胎盤剥離後としてよいか。
証人:剥離開始後になる。
検察:この血圧低下を受けて、証人はどのような措置を取ったか。
証人:ヘスパンダーに切り替え、pumping、輸血を行った。
検察:輸血開始時点を明確に記憶していないということだが、記録上それがいつか推測させるような記録はあるか。
証人:※印を丸で囲んだ印(以下「※」と省略)の前後。
検察:※の説明はこの麻酔記録上にあるか。
証人:麻酔記録の一番上にある。
検察:上の左、※の右に説明文がある。
証人:はい。
検察:これはどのようなことが書いてあるのか。
証人:※前後から後に使った輸液・輸血の総量。
検察:「出血↑↑」は何を示しているのか。
証人:出血がとても多くなったということ。
検察:※の地点は14時55分から15時の間、真ん中より14時55分寄りと読めるが。
証人:はい。
検察:この間に輸血を開始したであろうと。
証人:8、9(ヘスパンダー投与記録の番号)の前後としか分からない。
検察:幅があるので聞くが、前後とは30分くらいの幅を持つのか。
証人:それはない。
検察:幅はどれくらいか。
証人:5分くらい。
検察:8、9がヘスパンダーで14時45分に投与。これの後に輸血をしたと。
証人:はい。
検察:この45分に投与開始した500、500(8、9がそれぞれヘスパンダー500mlに対応している)から、10〜15分くらいで輸血を開始したとして矛盾はないか。
証人:だいたい10分くらい。
検察:輸血以外に血圧を上げる薬は投与したのか。
証人:はい。
検察:その薬はどういう名前か。
証人:手術前にはエフェドリン、開始後にはノルアドレナリンを使った。
検察:14時40分から45分、50分から55分の血圧に対して薬は投与したのか。
証人:ノルアドレナリンを使った。
検察:麻酔記録上は。
証人:左上の方のいろいろ書いてある所の上から4段目と6段目にノルアドレナリンがある。
検察:これがいわゆる昇圧剤か。
証人:はい。
検察:血圧低下時間帯の記録では、どこでノルアドレナリン投与したのか。
証人:14時54〜55分が最初。その後、数回。
検察:ノルアドレナリンを投与して血圧は回復したのか。
証人:記録上は一時的に回復している。
検察:14時55分での血圧が50弱/30弱だったものが15時で70弱/30強に上がっている。
証人:はい。
検察:これがノルアドレナリンの効果ということか。
証人:はい。
検察:そうして上がった血圧は上がったまま持続するのか。
証人:15時05分には再び低下している。
検察:15時05分には50弱/20弱に下がっていますね。
証人:はい。
検察:輸血は誰の判断で行ったのか。
証人:私。
検察:その判断の理由は出血の増加と血圧低下か。
証人:はい。
検察:輸血開始後、被告人に何か言ったか。
証人:出血のコントロールができないかと。
検察:一度だけ?
証人:はい。
検察:輸血開始時点の被告人の様子は。
証人:はっきりと覚えていない。止血操作をしていたと思うが。
検察:輸血開始は14時55分から15時頃か、この頃に出血量の報告は受けたか。
証人:はい。
検察:どういう量が記録で確認できるか。
証人:7675mlと記録されている。その前にも報告はあった。
検察:その前にはどう記録されているか。
証人:記録していないが、頭に入れておけばいいと思った。
検察:どういう数字だか思い出せるか。
証人:覚えていない。
検察:7675mlと報告を受けて記録した。
証人:はい。
検察:報告時刻は15時05分と15時10分との間くらい。
証人:はい。
検察:血圧の動きや出血の報告から、どう思ったか。
証人:出血しているな、何とかしなければと。
検察:輸血開始して、使用量はMAP5単位か。
証人:はい。
検察:MAP5単位の輸血で十分だったか。
証人:不足だった。
検察:不足と認識して何か措置を取ったか。
証人:MAPを追加発注した。
検察:追加発注は被告人の指示か。
証人:私の判断。
検察:追加発注の時刻は。
証人:はっきりと覚えていない。
検察:発注のあて先はどこになるのか。
証人:日赤の血液センター。
検察:追加発注はFAXを使っていたことは知っているか。
証人:はい。
検察:そのFAXを確認することで、何時ごろ発注したか確認できるか。
証人:おおよそ分かる。
検察:不同意書証であるが、甲第42号証、血液製剤発注票を示したい。
弁護:異議がある。被告人の過失と関連性が無い。
検察:関連性を証明するために示したい。
裁判長:不同意なら……
検察:不同意に対して証人申請し、裁判所の判断はいただいていない。
弁護:被告人の過失について、検察は子宮を摘出しなかったことが過失と言っている。輸血は関連性が無い。
検察:それでは裁判長……
裁判長:ちょっと待ってください。
(裁判官、検察官がそれぞれ何かの確認作業)
検察:直ちに示すことができないので、発注票を示すことは控える。開示するのでそれを前提に尋問を続行する。
検察:証人はこの追加輸血の時刻について、検察官と打ち合わせた事がありますね。
証人:はい。
検察:発注票を目で見て確認した。
証人:はい。
検察:その時示された伝票の1回目の送信時刻は記憶にあるか。15時10分とあるが。
証人:はい。
検察:FAXの送信時刻が15時10分ということは、発注時刻は少なくともそれより前ということでよいか。
証人:はい。
検察:だいたい15時10分より何分くらい前か。
証人:はっきり覚えていない。分からない。
検察:輸血を使い終わってから発注したのか。
証人:使っている前後。
検察:15時10分までには発注している。
証人:指示はそれより前だが。
検察:10分より前、と。
証人:はい。
検察:追加輸血が到着するのにどのくらい時間がかかるという話だったか。
証人:はっきり覚えていないが、1時間以上だったと思う。
検察:1時間以上という認識でよいか。
証人:はい。
検察:どう思ったか。
証人:1時間以上は手元に輸血が来ないので、手元のもので何とかしなければ、と。検察:不安はあったか。
証人:はい。
検察:日赤以外で調達できないかという話は無かったか。
証人:近隣の病院に在庫がないか聞くことになった。
検察:それ以外には。
証人:師長から、職員から血液を募ろうかという話があり、お願いします、と。
検察:師長とは看護師長のことか。
証人:はい。
検察:追加輸血を手配中、被告人は何をしていたか。
証人:時系列は分からないが、クランプしたり子宮を手で圧迫したりしていた。
検察:止血できた様子だったか。
証人:できていなかった。
検察:出血が増えて患者はどのような様子だったか。
証人:痛がったり気持ち悪いとおっしゃったり、大丈夫なんですかと不安そうだった
検察:どのような原因か。
証人:痛みは脊椎麻酔の効果が下がってきたため。気持ちが悪いのは血圧が下がってきたためだと思う。
検察:それに対してどうしたか。
証人:痛みに対して全身麻酔に移行。血圧低下に対してノルアドレナリンを投与した。
検察:全身麻酔の時刻は。
証人:ケタラールとサクシンを投与しているあたり、15時32〜33分で全身麻酔。
検察:記録のT字の記号は全身麻酔に何か関係があるのか。
証人:気管挿管を表す。
検察:15時35分頃だが、全身麻酔の時刻は。
証人:15時32~33分頃。サクシンが効いてすぐ挿管をしているので、30秒くらい後。
検察:子宮摘出の話は出たか。
証人:はっきり覚えていない。
検察:全身麻酔と子宮摘出の関連は。
証人:ない。
検察:全身麻酔の判断は誰がしたのか。
証人:私の判断。
検察:酸素の供給を増やしたことはあるか。
証人:ある。
検察:記録上どこか。
証人:13時37〜38分から2 L /minで流していたが、15時05分から6 L /minに増やした。
検察:酸素を増やした理由は何か。
証人:血圧低下と気分不快に対して
検察:呼吸困難が理由ではないのか。
証人:違う。
検察:証人、被告人で応援の話はあったか。
証人:あった。
検察:誰がどのように。
証人:私が1度と、院長が。
検察:誰を呼ぼうと言ったのか。
証人:私からは双葉厚生病院の先生を、院長からは外科部長の先生を。
検察:被告人は何と答えたか。
証人:院長の時は覚えていない。私から言ったときは「いいです」と。
検察:輸血が到着した後で子宮を摘出したのか。
証人:はい。
検察:子宮摘出を開始して出血は止まったか。
証人:記録上、止まっていない。
検察:子宮摘出手術を実施して以降、輸血を追加注文したのか。
証人:15時前後に1回と、1回目の注文後,もう一回MAPと、さらにFFP、PCを。
検察:子宮摘出実施時刻は記録上分かるか。
証人:分からない。
検察:この麻酔記録では16時25分から30分にかけて血圧が上がっている様子だが。
証人:はい。
検察:この血圧上昇はどういうことか。
証人:MAP輸血の後と記憶している。
検察:その後、血圧は安定していたか。
証人:何をもって安定と言うかによるが……。80と100の間を行ったり来たりしているが、循環動態としては安定とは言えない。脈拍が高く、ノルアドレナリンも入っているので。
検察:子宮摘出終了以降の循環動態は。
証人:同様で、80から100を行き来していて血圧はまずまずだが、循環動態が安定しているとは言えない。
検察:記録によれば17時15分以降も出血の記録があるが、出血が続いていたということか。
証人:そういうことになる。
検察:18時05分以降、循環の記録が無いが、何故か。
証人:血圧・脈拍は測れなくなった。
検察:測れなくなったのは何故か。
証人:備考欄に血圧測定不可、VTの可能性、Vfとある。心臓がポンプとして機能せず、血圧測定が不可能になる。
検察:14のVTとはどういう状況か。
証人:事実上心停止。正常な収縮のサイクルではなく、心臓が痙攣しているだけで、ポンプとして血液を送り出せない。
検察:19時01分永眠とあるが、このとき亡くなった。死因はどう考えたか。
証人:出血性ショックと考えた。
検察:それは何故か。
証人:程度差はあるが出血が持続していた。解剖していないので断言できないが、出血性ショックと考えるのが自然。
(検察官交代)
検察:出血について報告があっても頭に留めておけばよいとした時もあったとおっしゃった。報告のすべてについて記載があるわけではないということでよいか。
証人:はい。
検察:出血の数字は全て証人が書いたのか。
証人:どこからかははっきりしないが、看護師が書いたところもある。
検察:通常は看護師が書くのか。
証人:普通は私が書く。
検察:何故看護師が書いたのか。
証人:私はpumpingをしていたので。記録は看護師もできるので。
検察:輸血開始時刻は記録していないが、通常記録しないものなのか。
証人:通常は記録する。
検察:何故この時はしていないのか。
証人:pumpingで忙しく、両手がふさがっていた。後で記録する暇があればしようと。
検察:pumpingを優先したということか。
証人:はい。
(検察官交代)
検察:pumpingをどの時点で開始したか覚えていないと言うことだが、いつまでしていたかは覚えているか。
証人:死亡確認まで中断無く。
検察:pumpingによって補液を入れている場合、どのくらいの速度になるのか。
証人:製剤や患者の血管の状態による。一概には言えない。
検察:最大限の速度は。
証人:分からない。
検察:通常の滴下では重力加速度以上にはならないということでよいか。
証人:はい。
検察:重力加速度以上の速度が必要と。
証人:はい。
検察:それは何故か。
証人:通常の滴下では血圧が下がっていたので。
検察:それはつまり出血が速かったということか。
証人:はい。
検察:患者は160cm、68kgという記録がある。
証人:はい。
検察:このくらいだと全身の体内血液量はどのくらいか。
証人:おおよそ5リットルから半ばくらい。
弁護側反対尋問
弁護:大野病院での帝王切開症例経験数は30弱とおっしゃった。他院での帝王切開経験は。
証人:具体的な件数は覚えていない。
弁護:国立S病院で帝王切開に立ち会った事があるか。
証人:はい。
弁護:大野病院以外では国立S病院のみか。
証人:はい。
弁護:専門医はいつ認定されたのか。
証人:申請は99年だったので、認定は2000年の4月。
弁護:認定後、S病院で立ち会ったということか。
証人:認定前から上の先生とともに立ち会った。
弁護:その他の病院では帝王切開に立ち会ったことは無いのか。
証人:ない。
弁護:それは産婦人科が無かったということか。
証人:はい。
弁護:産婦人科があったのはS病院と大野病院だけということか。
証人:はい。
弁護:その経験の中で、大野病院では30例弱。30例全てK先生と一緒だったのか。
証人:その前に赴任していた先生とも入った。
弁護:その内訳は。
証人:数までは覚えていない。
弁護:他の先生と10例くらいか、それ以下か。
証人:覚えていない。
弁護:前置胎盤??症例に立ち会った回数は。
証人:何度か。
弁護:1〜2件か、もうちょっとあったか。
証人:S病院を含めて、多くても5件。
弁護:大野病院では。
証人:この時のみ。
弁護:癒着胎盤症例に立ち会ったことは。
証人:ない。
弁護:S病院では産婦人科の手術は全て上の先生と一緒に入っていたのか。
証人:S病院でも産婦人科手術に一人で入ったことはある。
弁護:麻酔科の仕事の範囲は全身状態の管理とおっしゃった。
証人:はい。
弁護:手術開始後、一番意識することは何か。
証人:どれを一番とか二番とか言うのは難しいが、血圧、脈拍、呼吸。
弁護:3つ挙げられたが、分けて質問したい。血圧、脈拍について、何を注意して麻酔担当医として手術に臨むのか。先生の役割は何か。
証人:その患者で許容される血圧というものがあって、それを維持するために薬や輸液を入れる。
弁護:輸液は何のために入れるのか。
証人:、術前の絶飲食による脱水に対して、術中は蒸発分、浮腫として血管外にもれる分+出血分。
弁護:全身の水分を一定に保つということか。
証人:全身というより、血管内。
弁護:必ずしも輸血である必要は無く、輸液でよいということか。
証人:はい。
弁護:輸液で間に合うのは何故か。
証人:人体は余裕を持ってできている。どこまでヘモグロビン濃度が許容されるかがあるので、それが保たれていれば、量があれば大丈夫。
弁護:血管内の血液量は輸液、補液で維持すると。
弁護:出血が多くなるかもしれないと聞いて、より多くの輸液を送ることができるように2本ラインを確保したと。先生が指示を出したのか。
証人:はい。
弁護:ゲージ数は指示したのか。
証人:していない。
弁護:それは何故か。
証人:通常、20Gかそれ以上が使われるのでそれでいいと。
弁護:それ以上とは、22とか23とか数字が大きいということか。
証人:18Gなど、太いもの。
弁護:20Gとか18Gとかそういうもの。
証人:はい。
弁護:実際には何が使われたのか。
証人:20Gが2本。
弁護:これで大丈夫と判断したのか。
証人:はい。
弁護:MAP5単位は確認したのか。
証人:はい。
弁護:5単位は適切と判断したのか。
証人:通常、術者が判断した量でやっている。
弁護:麻酔科医としての判断は無いのか。
証人:全く無いとは言わないが。
弁護:この程度あれば大丈夫という意識か。
証人:はい。
弁護:それについて異論や違和感は無かったか。
証人:無かった。
弁護:術前の麻酔は脊椎麻酔と硬膜外麻酔の2つがあるということだが、両方使ったのか。
証人:硬膜外は準備をしてカテーテルを入れただけで投与していない。
弁護:脊椎麻酔だけでよいと判断した理由は。
証人:麻酔の効きを調べて、帝王切開ならこれで大丈夫、硬膜外の追加は不要だと思った。
弁護:脊椎麻酔では薬剤は何を使ったのか。
証人:ケタラール、サクシン、マーカイン。
弁護:ケタラールやサクシンは15時35分より後では。
証人:14時02分に高比重0.5%マーカインを2.2ml投与した。
弁護:ケタラール、サクシンは。
証人:15時35分頃。
弁護:今は脊椎麻酔の話をしている。脊椎麻酔ではマーカインを14時02分ということか。
証人:はい。
弁護:硬膜外麻酔は必要なかったと。
証人:はい。
弁護:必要になることは。
証人:たまにある。手術が長引いたり効き目が弱い時に。
弁護:麻酔の効果はどのくらい続くのか。
証人:最初の効き等によるし、だんだん切れてくるので一概には言えない。
弁護:60〜90分持つということでよいか。
証人:90分くらいは持つ。
弁護:15時30分くらいまでは持つのかな、と。
証人:広がり方にもよるが、90分くらいは持つ。
弁護:手術前に患者と直接話したか。
証人:はい。
弁護:何分くらい話したか。
証人:覚えていない。
弁護:手術前のいつ話したのか。
証人:当日ではない。
弁護:手術は14時過ぎにスタートした。手術前の患者の点滴管理はどうなっていたという認識か。
証人:主治医がやっているので、指示などは出していない。
弁護:手術前に確認したか。
証人:していない。
弁護:ヴィーンFが何本入っているか知らないまま手術に入ったということか。
証人:通常は1本くらいなので、そういう意識で入った。
弁護:出血が多かったということだが、出血が多い時に麻酔担当医として考えるべきことは何か。
証人:まず出血に負けない程度に輸血・輸液をして循環血液量と血圧を維持する。
弁護:出血の際には麻酔担当医の役割も重要ということか。
証人:はい。
弁護:子宮表面に血管が見えたというが、具体的に言うとどういう状態か。脈を打っているとかは。
証人:脈を打っている感じではなかった。浮いているという状態。
弁護:静脈ということか。
証人:はい。
弁護:どういう風に見えたか。
証人:男性の手の甲の静脈のように。
弁護:子宮のどのあたりに見えたのか。
証人:助手の先生側に。
弁護:子宮全体ではないと。
証人:はい。
弁護:子宮全体に血管が浮いているわけではない。
証人:はい。
弁護:表面全体の色は。
証人:通常の子宮同様。
弁護:肌色みたいな感じの色か。
証人:肌色からピンク。
弁護:帝王切開中に超音波検査を行うのははじめて見たのか。
証人:はい。
弁護:何をどのくらいしていたか。
証人:プローベで子宮表面をなぞるようにしていた。時間までは分からない。
弁護:丁寧な操作だったか。
証人:はい。
弁護:プローベ操作は何のために。
証人:子宮切開を入れるところを決定するためと思った。
弁護:14時37分の児娩出までは順調だったのか。
証人:はい。
弁護:児娩出直後、14時40分の2000mlの出血はやや多いと。
証人:はい。
弁護:やや多いという程度か。
証人:輸液を速めに落とそうかと思った。
弁護:具体的にはどうするのか。
証人:クレンメを調節して速くする。
弁護:クレンメを全開するとかか。
証人:pumpingをしていた。
弁護:2555mlという記録は間違いない事実だと思うが、検察官の質問に対して、14時52〜53分に2555ml、ここの数値はひょっとしたら前かもしれない、若干ずれがあるかもしれないと言ったが、最大限14時50分に2555mlと聞いていいか。
証人:はい。
弁護:ここまでの出血量は確かに増えているが、「やや多い」か、「大量」か。2555mlの時点で。
証人:かなり、とまでは言えないが、増えてきたな、と。
弁護:欄外の※は先生の字か。
証人:はい。
弁護:この書き込みはいつの時点で書いたのか。
証人:患者が亡くなった後に、使った輸液の空パックなどを数えて。
弁護:直後、その日のうちに。
証人:はい。
弁護:14時55分の後、「出血↑↑」とあるが、先生の言葉で「大量」か。
証人:大量と言っていいと思う。
弁護:ヘスパンダー2、ヴィーンF500×3とある。ヴィーンも落としている。(ほか、MAP、FFP、PCの字が並ぶ。PPFとも書かれていたと思うが・・・量は書き取れなかったし、量についての発言もなし)
証人:はい。
弁護:FFPとはどういう意味か。
証人:新鮮凍結血漿。
弁護:具体的にはどういうものか。
証人:献血から血球成分を除いた血漿を凍らせたもの。
弁護:MAPとはどう違うのか。
証人:FFPは血漿成分なので血球は無い。MAPは赤血球主体。
弁護:これ以降、先生が一生懸命やったことは記録から読み取れるが、この部分、点で書かれているのが脈拍ですね。15時以降、頻脈が続いているがこの原因は。
証人:循環血液量が減少したため。
弁護:輸液が足りないと。
証人:はい。
弁護:14時55分に血圧が落ちた。
証人:はい。
弁護:その理由は血管内の血液量が足りない、出血が多かったとおっしゃった。頻脈は血液量の減少によると。血液量が減少することで心臓が一生懸命動いて頻脈になりますね。
証人:はい。
弁護:14時55分には脈拍も落ちている。いくつか。
証人:70弱。
弁護:ここでは血圧と一緒に脈拍も落ちているが何故か。血液量が減少すると脈拍が上昇するのが普通ですね。血液量の減少だけで血圧低下が説明できるのか。血圧低下と脈拍低下を同時に説明する理由は分からないのではないか。
弁護:脈拍を記録したのは先生か。
証人:はい。7675は自分。
弁護:2000、2555は先生の字か。
証人:はい。
弁護:補液の8、9というのは先生の字か。
証人:はい。
弁護:やや右上、14時50分の7は先生の字か。
証人:はい。私の字です。
弁護:7の胎盤娩出までは確かに自分で記録できたと。
証人:はい。
弁護:出血量でお風呂のたとえがあったが、麻酔記録を見て、14時55分より前と言えるか。
証人:ちょっと曖昧になっている。
弁護:手を入れている時に(出血の面が)水面が上がってきたというが、手を入れて剥離をしていた時か、止血時か、Z縫合を行っていた時か。
証人:曖昧。
弁護:止血のためにZ縫合をしていたのは知っているか。
証人:糸をかけているのは知っていたが。
弁護:子宮にK先生の手が入る場面はよくあったはずだが、湧き上がりを見たのはいつだか記録から分かるか。
証人:分からない。
弁護:用手剥離は見たことがあったか。
証人:卵膜遺残をはがしているのは見たことがあった。
弁護:用手剥離は卵膜遺残以外に見たことは。
証人:初めて。
弁護:用手剥離についてどういう認識があったか。
証人:産婦人科に限ってですか。用語としては知っているので一般的なことかと。
弁護:産婦人科以外ではどういう認識か。
証人:外科で以前に手術をした事があると癒着している事があり、それを手を用いて剥がすことがある。
弁護:外科では一般的ということか。
証人:はい。
弁護:外科でクーパーを用いることはあるのか。
証人:よくある。
弁護:今回、器具を使ったことに違和感は無かったか。
証人:無かった。
弁護:それは何故か。
証人:他科の手術で器具を使うというのは普通なので。
弁護:胎盤剥離は普通、クーパーの使用も普通と。胎盤剥離は適切だったか。
証人:専門外なので分からない。印象としては、剥がした方が止血できるという印象。
弁護:それは何故か。
証人:全く問題のないケースでも、胎盤剥離跡から出血するはずだが、子宮収縮によって止血される。収縮が弱い場合も、子宮マッサージや収縮剤を注射することでそれまでの出血がうそのように止血できるということがあるので。胎盤が残ると子宮収縮の邪魔になり子宮収縮がうまくいかず、最初の剥離面から出血が続くと想像する。
弁護:チャートの14時45分、補液の欄の8と9でヘスパンダーを使ったと。
証人:はい。
弁護:ここでヘスパンダーを使った、輸血でなく輸液の使用を開始したのは何故か。
証人:ヴィーンFから直接輸血に替えることは普通無い。ヘスパンダーは代用血漿だが、まず代用血漿をつなぐ。輸血は手術室の外にあるが、ヘスパンダーはすぐ手の届くところにあるので、その間のつなぎという意味もある。
弁護:出血があったら即危険というのではなく、循環血液量を守るのが大切ということか。
証人:はい。
弁護:そのためにヘスパンダーを使った。
証人:はい。
弁護:45分にヘスパンダー500、500とあるが、1000使ったと。これは2つあったから。
証人:はい。
弁護:この段階からpumpingをしていたのか、それともクランプを全開にするなどの調節だったのか。
証人:曖昧。
弁護:ヘスパンダーを吊るして補液が始まったと。いきなり全開にしていたのか、少し絞っていたのか。
証人:その時点の血圧は100くらいか。
弁護:80ちょっと上。
証人:そうすると全開させていたのではないかと。
弁護:80に落ちたのが理由でとりあえず全開と。その後、pumpingが始まったのか。
証人:うーん。
弁護:そういう処置をして、50分に胎盤娩出、出血は2555ml以内。
証人:はい。
弁護:5分後、明らかに脈拍に変化があり、血圧も変化した。14時55分に脈拍と血圧がともに落ちた。本当に循環量が減少したなら心臓が頑張って脈拍が上がっているはず。この時、先生は反応したか。
証人:pumpingをしている。
弁護:このダウンでノルアドレナリンを使った。
証人:14時55分ですよね。はい。
弁護:ワンショットですね。14時55分の血圧低下でノルアドレナリンを2発、ワンショットで打った。持続静注は15時20分から。ノルアドレナリンは効くとどのくらい持つのか。(15時までにノルアド20×2回iv、15:00〜15:05に60×3回iv、15:15 10ml/hr、15:18 60 iv、15:20 20ml/hrとある。希釈濃度は不明なので、ワンショットで何ミリグラム入ったかは不明)
証人:数分以内。
弁護:ノルアドレナリンは1時間も2時間も効かない。
証人:はい。
弁護:効果は瞬間的と。
証人:はい。
弁護:それでは対応できないから、15時20分から持続で流し始めた。
証人:はい。
弁護:これ以外に循環動態を維持する方法はなかったのか。
証人:その時思いついたのはこれだけ。カタボンも使った。
弁護:カタボンは腎機能を維持するためでしょ。
証人:昇圧の効果もある。この時は腎機能の維持が主な目的だが。
弁護:他に循環量を増やす方法は無かったのか。ワンショットではすぐに落ちる。だから静注するしかなかったと。
弁護:気管挿管を行った理由は。
証人:脊椎麻酔の効果が切れてきたことと、全身状態が悪化し呼吸管理が必要となるかもしれないので。また、全身麻酔に移行するために
弁護:結果としてMAP 5単位では足りなかった。
証人:そうですね。
弁護:5単位より多ければ助かったのか。
証人:断言できない。
弁護:病院内で血液が用意されたということだが、どのくらいか。
証人:記憶が曖昧だが、3000mlくらいではないか。
弁護:師長の提案で、先生が指示したのはいつか。
証人:わからない。
弁護:新鮮血が3000ml集まって用意されたのはいつか。
証人:MAPが届いた16時30分より前には、院内で集めた新鮮血がいくらかは来ていた。
弁護:点滴をしようと思えばできたのか。
証人:はい。
弁護:したのか。
証人:しなかった。
弁護:使用しなかった判断は誰がしたのか。
証人:私が。
弁護:使わなかったのは何故か。
証人:通常、検査しないで使うことはありえない。GVHDという怖い合併症があり、ぎりぎりまで使わない。
弁護:GVHDというのは。
証人:1週間ほど後に全身に発疹などで発症し、発症すると危険。
弁護:リンパ球によるものか。
証人:MAPにもリンパ球が含まれるが、放射線で不活化してGVHDを防いでいる。新鮮血をすぐ入れるのは、リンパ球が悪さをしてGVHDを起こすのが心配。
弁護:K先生が子宮摘出を決めたのはいつか分かるか。
証人:覚えていない。
弁護:子宮摘出が終わった時刻は何時ごろか。
証人:わからない
弁護:不同意の調書に、あなたが17:30と話したと書いているが
証人:書いてあるなら、そうでしょう。
弁護:子宮摘出手術は順調だったか。
証人:止血しながらなので子宮筋腫などの手術より大変。
弁護:子宮摘出は見たことがあったか。
証人:単純子宮摘出術は見た事があった。
弁護:子宮摘出について人手不足は感じたか。
証人:鉤引きは特に必要とは思わなかった
弁護:鉤引きとは。
証人:第2助手が視野の妨げになる邪魔な臓器を鉤でどかす。
弁護:特別やりづらかった様子はなかったか。
証人:(このあたりの証人の返事はよく聞き取れず)
弁護:もしpumpingを支えてくれる人がいたら先生は助かったか。
証人:(よく聞き取れず)
弁護:もし応援が必要とすれば、それはK医師よりは証人のほうだったのでは?
証人:それはそうだが、一方のラインにはノルアドレナリンが入っており、そこでポンピングをするわけにはいかない
弁護:輸血の速さには重力だけでなく針の太さも関係するのではないか。太いほど入りやすい。20Gより18G、それより16Gの方が補液量はずっと増える。18Gに増やすことを決断して、できなかったか。
証人:やることで却って危なくなるかもしれないと思いやらなかった。末梢はノルアドレナリンで収縮している。中心静脈カテーテルは、脚の方は砕石位なので難しい。首や鎖骨下はそばの動脈を刺すおそれがある。首の場合、万一刺して血が噴き出し、皮下血腫ができると危険。鎖骨下は肺を刺すことがある。危険を冒してまでできない。
弁護:2555の直後、血圧がストンと落ち、ノルアドレナリンを選択した。患者は気持ち悪くなっていた。この時点でヘッドダウンして中心静脈の確保が可能だったのではないか。
証人:この時は思い浮かばなかった。
裁判官:ヘッドダウンとは何か。
証人:手術台は傾ける事ができる。頭を下げるように台を傾けること。大事な心臓、脳に血を送る。心臓に戻る血液が増えるので血圧も上がる。
弁護:患者の頭を下げると当然、血は液体なので、心臓から上に流れると。子宮における出血量も少なくなるという2つの効果があるのではないか。このタイミングで新しい点滴ラインを確保できたのではないか。
証人:(口ごもって明確な回答はしていない)
弁護:17時45分にV2、R、Hb、Hct、W、Pltの記録があるが、これについて説明を。
(数値は、R:231、Hb:7.4、Ht:19.1、W:21000、PLT:6.75)
証人:V2というのは静脈採血。Rは赤血球、Hbはヘモグロビン、Hctはヘマトクリット、Wは白血球、Pltは血小板。
弁護:正常値と比較してどうか。
証人:やや貧血で、血小板は減っている。
弁護:血小板が減っていると出血は止めにくい。
証人:はい。
弁護:ヘモグロビンが低い。
証人:やや貧血。
弁護:このあとVTが来るが、この数値からVTにはつながりにくい。
証人:つながりにくい。
弁護:実際にはVTが起こっているが、この数値が患者の状態を正確に反映していないというのと、数値は正しいが何か我々にとって未知の原因があるという2つの可能性があるということでよいか。
証人:はい。
弁護:VTの原因は。
証人:出血のコントロールができず、心臓に回る血液が減ったことによる。
弁護:データは悪くない。とすると何が考えられるのか。
証人:濃度は濃度。量が少なければ起こりうる。
(弁護人交代)
弁護:先生はK先生と仕事をしていましたね。
証人:はい。
弁護:帝王切開でもチームを組んで仕事をしていた。
証人:はい。
弁護:K医師の医師としての技量についてどう考えていたか。
証人:どうというのは。
弁護:たとえば、未熟であるとか、十分であるとか。
証人:少なくとも未熟では全くない。十分かどうかは専門外なので……。
弁護:先生も第一助手の先生も被疑者として取り調べられて、K先生だけが逮捕勾留され起訴された。
証人:はい。
弁護:証人は手術の最初から最後までその場にいた。K先生には医師として、刑事被告人になるような過失があったと考えるか。
証人:誤った臓器や血管を切ったことは無く、過失があったかは疑問。
弁護:血液量について、身長体重から5リットルとお答えになった。妊娠女性では多くなりますね。
証人:はい。
弁護:5リットルというのは一般の方についてか。
証人:妊娠した状態で。
弁護:妊娠で3割ほど増えるのはご存知か。
証人:はい。
弁護:本件は病理解剖をしていれば死因が特定できたか。
証人:一般には
検察:異議がある。証人は証人なりの判断で死因を既に証言している。
弁護:では、死因がよりはっきりと分かったと思うか。
証人:はい。
弁護:被告人が病理解剖を希望していたことは知っているか。
証人:はい。
弁護:何故病理解剖ができなかったのか。
証人:家族が拒否したため。
(弁護人交代)
弁護:風呂場のたとえの時期は特定できないか。
証人:はい。
弁護:助手が吸引している状態で、風呂場のように増えてくることは一般にあるのか。
証人:ケースとしては少ない。
弁護:一般と異なる特段の理由、一般と違う印象はあったか。
証人:(吸引時にわき上がることはあまりない という内容か)
弁護:吸引していれば風呂水が溜まるようになることはならない、吸引している状態で剥離中に溜まるようになることはないということか。
証人:そうかも知れません
弁護:ヘスパンダーについての記載は8、9だが、これは先生が書かれた。
証人:はい。
弁護:pumpingを始める前か。
証人:はい。
弁護:※以降、先生は書いていないと。
証人:はい。
弁護:まだ8、9の時は記録をつける余裕があった。
証人:はい。
弁護:15:00?のところで、血圧が2つ書いてあるところがあるが
証人:間違うこともある。
弁護:この時の脈拍低下はなぜ?
証人:ノルアドレナリンのせいかもしれません。
検察側再主尋問
検察:記憶では今回子宮内で風呂がわき上がるような出血ということでよいか。
証人:子宮内か、あふれ出た血かは分からない。
検察:その時期については胎盤剥離開始後、手なり器具なりが見えた時点と証言した。
弁護:証人はそのようなことは言っていない。重複質問である。
検察:確認のために尋ねている。
弁護:主尋問の時と全く同じ質問である。
裁判長:確認する限度ならよいが、「そう言ったでしょ」というのはよくない。
検察:わき上がるような出血を見た記憶はある。
証人:はい。
検察:見た時点ははっきりしない。
証人:はい。
検察:14時45分にヘスパンダーを投与したという記録がある。
証人:はい。
検察:14時45分のヘスパンダー開始は、証人の当時の認識としてどういう理由か。
弁護:重複質問だ。
検察:検察官に対する証言と弁護人に対する証言が違うので、確認するために質問している。
検察:45分時点で何故つないだか。
証人:出血量増加と、血圧が落ちていたから。
検察:出血量が増えているとは、目で見てなのか。
証人:目で見たかまでは覚えていない。
検察:出血量が多いという印象だったのか。
証人:2000は多いという印象。血圧も落ちていたので。
検察:出血量が多いというのは血圧のみからの判断か。出血を見たためか。
証人:(出血は続いていた。記憶は曖昧だが、血圧から主に判断だったと思うという内容)
検察:今日の証人尋問の前に取調べを受けたはずだが、その時は当時の記憶に従って説明したということでよいか。
証人:はい。
検察:話した内容は供述調書を読んで確認したか。
証人:その場で確認した。
検察:内容に訂正したいところがあれば訂正し、確認し署名をした。
証人:はい。
検察:複数回取調べを受けて、はっきりしたところ、曖昧なところがあったが、証言した。
証人:はい。
(複数の供述調書の捺印を確認。証拠請求していない開示済調書を含む)
検察:甲23号証、平成18年3月3日に検察で取調べを受けたのは覚えているか。
証人:日付までは覚えていないが、取調べがあったことは覚えている。
検察:pumpingの理由を説明しているが、覚えているか。
証人:覚えていない。
検察:記憶喚起のために読み上げる。「2000mlの報告があり、目に見える出血があった。通常の輸液では間に合わないので、2本あったラインの左側でpumpingを開始した」。3月3日当時の供述を聞いて、pumping開始が2000mlの報告と目に見える出血を受けてのものと証言したことを思い出したか。
証人:思い出せないが、その時はそういう記憶があってそう話したのだろう。
検察:pumpingとヘスパンダー投与の前後関係は覚えているか。
証人:覚えていない。
検察:「pumping開始後まもなく血圧が下がったので、pumpingによってヴィーンFを全て体内に送り込んでから、さらに左右それぞれヘスパンダー500mlをつないだ」。
証人:そうしゃべったかどうかは覚えていないが、そう記録されているならそう言ったのだろう。
検察:目に見える出血もヘスパンダー投与の理由と話しているが。
証人:そう言ったかは覚えていない。そう調書にあるならそう言ったのだろう。
(傍聴人の電話が鳴り一時中断)
検察:子宮内から風呂のようにわき上がってきたのが、どの時点からかは今ははっきり記憶していないのか。
証人:はい。
弁護:異議。不同意調書について読み上げている。
検察:証人の記憶喚起のためである。
裁判長:捜査時点と今との一致を確かめているわけですよね。異議は棄却します。
検察:「子宮を切開した開口部と手やクーパーの隙間から子宮内の様子が見えた事が何度かある。子宮内から血がわき上がるように出ていた」。
証人:調書の記憶はほとんど無い。
検察:記録があるなら喋ったのだろうということか。
証人:はい。
検察:「子宮から大量に出血していることが分かった」。
証人:書いてあるなら。
検察:そう話したんだったなと思うか。
証人:記憶がないが。
検察:どういう器具だと思ったのか。
証人:クーパーかと思ったが、全部が見えていたわけではないので断言はできないと言ったと思う。
検察:「どの時点からクーパーを使っていたのかは分からない。子宮を切開した開口部と手やクーパーの隙間から子宮内の様子が見えた事が何度かある。子宮内から血がわき上がるように出ていた」。
証人:、特に警察の調書でそうだったが、あいまいに言ったところを断言するような感じにされたが、調書というもはそういうものかとも思った。
検察:表現がどうかはともかくとして、内容として伺うが、記憶に無いことをあるとして述べたことは。
証人:ない。
検察:「子宮を切開した開口部と手やクーパーの隙間から子宮内の様子が見えた事が何度かある。子宮内から血がわき上がるように出ていた。子宮から大量に出血していることがわかった」という記憶があって説明したと。
証人:そうだと思う。
検察:「実際の出血範囲は分からないが、見た感じの印象として子宮内全体からわき出るように出血していた」。
証人:そう調書にあるなら。
弁護:主尋問の時点で既に予定時間を30〜40分オーバーしている。長すぎないか。
検察:反対尋問の内容を受けて、新たに質問する必要がある。
裁判長:棄却する。
検察:器具を使い始めたことと出血の増減については、今は曖昧か。
証人:はい。
検察:捜査当時は「クーパーを使い始めたのと2000mlの報告の前後関係ははっきり思い出せない。ただ、出血が急激に増えてきたのはクーパーを使った後だった」。
証人:そうなんでしょうね
検察:検察の最初の事情聴取が平成17年4月23日にあった。
証人:日付は覚えていないが、警察で取調べを受けたことはあった。
検察:出血についてどう説明したかは覚えていないということだが、「子宮が壁となって断言はできないがクーパーのように見えた」と。
証人:細かいニュアンスは無視され、断言していないところを断言したように書かれた。警察に対しては半分諦めていた。
弁護:(事前調書と聞こえたが、員面調書?)は関係ない。
裁判長:関係ないですね。(うなずく)
検察:証人の認識として、警察より検察の方がニュアンス的なものを取ってくれたということか。
証人:そうですね。警察よりは。(これも、聞いていた限りは大差ないっていう感じで、ちょっと投げやり)
検察:証人はミラクリッドを投与した。
証人:はい。
検察:記録上あるか。
証人:はい。
検察:ミラクリッドを投与した理由は。
証人:出血性ショックの際に少しでも良くなってくれればと。ショック対策だが、これで良くなるという期待はあまり無かった。ソルメドもそうですけど、お祈りかおまじないのような感じで使った
検察:追加輸血の発注の際、子宮摘出を輸血が来るまで待つように言ったか。
証人:言ったかもしれないが記憶が曖昧。
検察:証人は麻酔科医ですね。
証人:はい。
検察:今回、患者は癒着胎盤という症状だったようだが、どういうメカニズムであるとか、どういう措置を取るとかいうことは知っていたか。
証人:知らなかった。
検察:胎盤が子宮に癒着しているので、剥離しない部分は収縮しないという知識があったか。
証人:手術前には知らなかった。
検察:胎盤剥離部から出血するメカニズムは。
証人:知らなかった。
検察:用手剥離が困難な場合、子宮摘出せざるを得ないという知識はあったか。
証人:無かった。
弁護:また主尋問をしているようなものだ。
裁判長:棄却する。検察官は簡潔に。
検察:今回の当時、被告人と人間関係に問題があったとかいうことは。
証人:ない。
検察:先ほど弁護人から麻酔記録2枚目のV2を示されて質問を受けた。この数値がVTに結びつくかは疑問と証言した。
証人:はい。
検察:数値の正確性について疑問はないか。
証人:正確性には疑問がある。
検察:それは何故か。
証人:これは足先から採血しているが、ノルアドレナリンを使っていて末梢循環が低下している。また、輸血や輸液を上から入れているので、患者の状態を正確に反映しているか疑問。仮に正確であったとしても、循環血液量が足りていないのであまり意味の無い数字。
検察:証人が今回手術前に被告人からどのように言われていたか、文言は覚えていない。
証人:はい。
検察:警察官や検察官から聞かれたか。
証人:聞かれた気もするが、はっきりおぼえていない。
検察:甲23号証に「手術中も出血が多くなるかもしれない、創に胎盤がかかっているので、かかっていたら子宮摘出すると聞いて、ラインを2本取った」とあるが、それでよいか。
証人:断言はできないが、主旨はそういうこと。
弁護:異議。確認だけでなく、内容にまで質問している。
裁判長:棄却します。
検察:平成18年2月10日にも検察官に説明しているが覚えていないか。
証人:覚えていない。
検察:訂正した箇所がありましたね。
証人:はい。
検察:その内容は。
証人:覚えていない。
検察:「K先生からの説明内容で、「前回帝王切開の部分にかかっている」というのを訂正したい」とある。
証人:かかっているかもしれないと言われ……
弁護:異議がある。請求していない証拠に基づく質問である。記憶喚起と称して許された範囲を超えた朗読をしている。
裁判長:法廷と捜査段階とで違うことを摘示しようとしている。棄却します。
検察:「前回帝王切開の部分にかかっている」というのを、違和感があってどう訂正したか覚えているか。「前回帝王切開の傷の部分に胎盤がかかっている」と訂正したと覚えているか。
証人:覚えていないが、その時はそう言ったのだろう。
検察:平成19年3月16日現在と、平成18年3月3日、2月10日ではどちらが記憶が鮮明に残っていると考えるか。
証人:先に聞かれた方が残っていると思う。
(検察官交代)
検察:麻酔記録について、患者の管理をするのに、血圧、脈拍、呼吸はどう測定しているのか。
証人:脊椎麻酔では機械で記録することもあるが、今回は手書きで記録した。
検察:測定は機械なのか。
証人:測定は機械で。
検察:その機械に時刻は出るのか。
証人:出る。
検察:出血の記録には吸引して計測、報告などタイムラグがあるということだが、リアルタイムという意味では、血圧、脈拍の方が正確に近いのか。
証人:はい。
検察:血管内循環量が減ると脈拍が上がり血圧が下がると言ったが、一般的にはそうか。
証人:はい。
検察:血圧、脈拍の変化をきたすのは循環量以外に薬剤の影響等はあるか。
証人:当然ある。
検察:14時55分で確かに脈拍と血圧が下がっている。ところが次のところでは脈拍が上がっている。証人はピンポイントの値から状態を把握するのか、推移を見て体調を把握するのか。
証人:全体の流れの中で見る。
検察:血圧だけでなく、脈拍、出血報告、出血を見た状況からヘスパンダー等の措置を講じたと。
証人:はい。
検察:弁護人と面会したことはあるか。
証人:はい。
検察:それはいつか。今年に入ってからか。
証人:はい。
検察:3月に入ってからか。
証人:はい。
検察:その時、弁護人以外に誰か同席していたか。
証人:1回は同席者がいた。
検察:面会は証人から申し出たのか、弁護人からか。
証人:弁護人の方から。
検察:同席したのは誰か。
証人:産婦人科のY先生。
検察:それはどのような人か。
証人:福島医大の助教授。
検察:その方からは何か話があったか。
証人:
検察:Y先生は何科の医師か。
証人:産婦人科。
弁護側再反対尋問
弁護:警察から被疑者として取調べを受けた。
証人:はい。
弁護:今まで被疑者として取調べを受けたことはあるか。
証人:今回初めて。
弁護:警察の取調べでは半分諦めていたということだが、何を諦めていたのか。
証人:細かなニュアンスが無視され、断言していないところも断言したようになっていた。不快な態度も取られ、調書というものは断言した感じに書かれるものなのだろうと諦めた。
弁護:調書を取られる時に不快な態度を取られたりして、自分が不利益を被るかもしれないと思ったことはあるか。
証人:ある。
弁護:検察官の調書は3月3日。2月18日のK先生の逮捕の直後、ちょっと後だが、あなたも逮捕されるかもしれないという不安はあったか。
証人:逮捕を覚悟しておりました。
弁護:検察官の取調べでも断定したように書かれたか。
証人:警察よりましだったが、裁判で使われるとは知らなかった。
弁護:断定的に書かれたのか。
証人:断定的に書かれた。
弁護:警察で話した内容に引きずられて、検察で考えた内容が言えずに不正確になったことはあるか。
証人:おおよそ合っていたが、ニュアンスの面や、断言については微妙。
弁護:現在、法廷証言では心理的圧迫は無く、記憶にしたがって証言できているか。
証人:はい。
弁護:Y先生との打合わせで記憶と違うことを話しているということはないか。
証人:ない。
弁護:警察や検察での取調べの時のあなたの心理状態と、公判廷でのあなたの心理状態を比べて、どちらが自由に、真実に近く話せているか。
証人:(基本的に今)
(弁護人交代)
弁護:検面調書で確認したいところがある。甲23号証「出血2000mlの報告と、目に見える出血を受け」の前、「2000mlには羊水が含まれ全部が血液ではないが、羊水を含むとしても2000mlは多量と感じた」。これを受けて次につながるが、「出血コントロールするように頼んだ」という訂正箇所、「児娩出14時37分」の前に、「通常より特に多いとは感じなかった」とある。あまりにもニュアンスが違っている。矛盾してはいないか。
検察:異議がある。「多いとは感じなかった」は14時37分、「2000mlは多量と感じた」は14時40分であり、これを矛盾と言うのは誤導である。
裁判長:前提が正確ではありませんね。
弁護:平成17年4月?には、14時50分の時点で、「わずか10分足らずで5000ml」とあるが、客観的事実に反しますね。これについて訂正していませんね。(注:事故報告書では「14時50分胎盤娩出、総出血量約5000ml」とあり、この部分は事故報告書の記載を基に書かれたものと思われる)
証人:5000については記録も記憶もない。
弁護:(4?月19日?)(その2ページ後)には、「既に5000mlを超えており、出血が増えてきた」とあるが、この認識は15時以降ではないのか。
証人:覚えていない。
検察側
検察:検察官の取調べで、2555mlの報告は14時45分と話していたが、麻酔記録から14時50〜55分と訂正したか。
証人:覚えていないが、調書がそうなっているのなら訂正したのだろう。
検察:2555mlは14時50〜55分と訂正している。
証人:内容は覚えていない。
(検察官交代)
検察:検察官の取調べで断定できないところでも断定するように取られたということだが、訂正を申し立てなかったのか。
証人:申し立てたかもしれない。覚えていない。
検察:自信の無い部分も断定的にされたと。
証人:断定的に書かれた。
検察:どういった方法で確認したのか。プリントアウトしたものを黙読し、同時に検察官が音読するという方法で確認したのか。
証人:はい。
検察:違うと思うところがあれば言ってください、と言われたか。
証人:はい。
検察:何度か申し立てをして訂正するところを訂正した。
証人:はい。
検察:それからさらに確認した。
証人:はい。
弁護側
弁護:甲23号証、37分には大した出血ではない、特に多いとは言えないとあり、14時40分には2000mlで多量という供述がある。3分間に大量出血があったという記憶はあるのか。矛盾していないか。
証人:そんなに出ていなかったと思う
検察:異議。「通常より」が抜けている。
弁護:37分では通常と比べて特に多いとは感じなかった、40分には通常より多量の出血があることは明らか、となっており不自然。矛盾ではないのか。
証人:表現は変わっていますね(首をかしげながら)
検察:異議がある。40分は2000mlの報告を受けての反応である。そこを引用しないのは誤導である。
補充尋問
右陪席裁判官:出血が多いのは間違いないようだが、輸血が届かないと子宮摘出はできないのか。
証人:そんなことはない。ただ、出血速度を抑えるために圧迫やクランプをして、とりあえず根本的な止血策ではないが、輸血が届くのを待って、状態を回復させてからやりたい。出血を放っておいて子宮摘出したくないため。
裁判官:子宮摘出開始は16時30分だが、状態回復を待ってこの時刻になったのか、追加の輸血を待っていたためにこの時刻になったのか。
証人:ある程度、余裕を持った状態で子宮を摘出したほうが安全なので。
裁判官:15:30全身麻酔になっているが、全身麻酔は子宮収縮に影響はあるのか。
証人:吸入麻酔を大量に使えば影響するが、今回は吸入麻酔を使っていないのでこの程度なら影響しない。
裁判官:子宮摘出終了後はひと安心していたのか、安定していないという状態か。
証人:安心したという感じではない
裁判官:胎盤剥離の時の出血は剥離面からじわじわとにじみ出る出血だったのか。
証人:記憶にない。
裁判官:風呂の水のたとえとにじみ出るというのはニュアンスが違うが。
証人:しみ出るというのではない
裁判長:今回の公判の前に、検察官と会ったことは。
証人:ある。
裁判長:その時、何か指摘されなかったのか。
証人:こう喋りましたね、と言われた。そう書いてあるのならそうなんでしょうね、と言った。裁判長:訂正したいところは特に無いと。
証人:本当にそういったかはあいまいだが、明らかに間違いというほどではない