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第五回公判について(07/5/25)

第五回公判について(07/5/25)

 第5回公判(平成19年5月25日)

 午前10時より、検察側証人尋問、証人は死亡した妊婦さんの子宮の病理鑑定した、福島県立医科大学医学部病理学第二講座講師です。

 証人は、妊婦さんが死亡した後、提出された子宮の病理所見として、子宮後壁に癒着胎盤が認められるとした病理結果を、県立大野病院に送っている。

 しかし、平成17年6月27日、警察から嘱託された鑑定では、胎盤の成分である絨毛組織が確認される部位を、胎盤が付着していた領域として鑑定し、子宮後壁と子宮前壁にも癒着胎盤があると鑑定している。

 つまり、証人は、脱落膜が存在しておらず絨毛組織が筋層部に侵入していない場合も、癒着胎盤と見なして診断している。

 その後、弁護側からの鑑定書が提出され、鑑定に食い違う部分があったことから、平成19年1月に再度鑑定書を検察側に提出している。そのときの鑑定書では、床脱落膜が少なくとも一部欠如し、絨毛が子宮筋層に直接、またはフィブリンや栄養膜細胞を介して接着するものを広義の癒着胎盤と診断したとしている。

また、癒着胎盤でも癒着部に栄養膜細胞が介在することがあるが、この場合、栄養膜細胞の形態が脱落膜細胞に類似するため、癒着胎盤の診断が容易でないことがあるとも記載している。

このように、まず、病理診断、鑑定書2回の記載で、診断基準と診断が少しずれており、提出するごとに内容が少しずつ変わってきている。

 午前中の検察側の尋問内容をまとめると、

 子宮後壁右側に嵌入胎盤が認められたが、残存している組織から鋭利な刃物で胎盤剥離したとは考えられなかった(標本上凹凸があったことから)。従って、クーパーで広範囲に切除したとは考えられないと証言。

 また、今回の帝切時に、子宮前壁から切開した所には、癒着胎盤も、胎盤もなかったとも証言した。

 その後検察側から胎盤が付着していた位置についての質問があったが、胎盤が付着していた所は不明であるが、癒着胎盤であったところを子宮の写真上に書き込んだ、その図は以下の如くであった。

 午後1時45分より公判再開された。午後は、弁護側の尋問が主であった。

 まず、弁護側は、なぜ2回目の鑑定書では、1回目の鑑定と異なってきたのかの質問に対し、過去の症例を集め文献も参考にした結果、1回目と異なり癒着胎盤の部分が多くなったと証言。

 つまり脱落膜細胞と考えていたものは栄養膜細胞であったと考えたため、その部分は癒着胎盤と診断したという。

証人は脱落膜細胞と栄養膜細胞とは鑑別するのは非常にむずかしいと述べていながら、どのように区別したのかの質問には、細胞質が濃く、核が大きい細胞が栄養膜細胞、細胞膜が明瞭で細胞質が明るく、核が小さい細胞が脱落膜細胞であると証言しているが、実際に見ると、簡単に区別ができない細胞が多い。

教科書的な答えでは、我々は納得いかなかった。もっと科学的な根拠となる鑑別法を述べてほしかった (実際には困難である)。

 従って、はっきり区別できない場合、鑑定では、はっきりと区別できないと答えるのが事実に沿う答えと考える。

 また、弁護側はまず、胎盤と子宮との関係について質問し、癒着胎盤の場合、娩出された胎盤は癒着胎盤の診断には重要ではないかという質問に対し、重要であると答えていながら、胎盤の写真の呈示 (実際の胎盤は埋葬されてしまった) に対し、まじめに見ることもせず、写真でははっきりしたことはいえないと証言した。

 警察側から嘱託された鑑定事項には、胎盤の付着部位及び面積、形状についての項目にあったにも拘わらず、胎盤の写真をきちんと見ていなかったのが残念であり、以下に示す如く、我々には考えられない証言をすることとなった。

 その前に、娩出された胎盤の写真のおおよその図を示す。

 図がうまくなく、わかりづらいと思いますが、比較的めずらしい分葉胎盤と考えられる胎盤です。

 前述したように、証人は胎盤が癒着したと思われる部分を子宮前壁、後壁に示したが、胎盤は大部分は後壁に存在し、子宮切開創の下の子宮前壁から頚部 (子宮の下の方) ところにある胎盤は分葉胎盤であったと考えられる。

 また重要な点は、後壁にあった胎盤の部分を除き、胎盤実質のまわりに卵膜がきちんと存在していることである。

 とくに、母体面の右側の端は、子宮前面の帝王切開時の切開創のところであり、これを見ても、胎盤実質を切開していないことがわかる。

 また、証人がいっている、子宮前面の癒着しているところの大部分は、子宮を切開した部の上部であり、臨床上、子宮を切開した上部に胎盤があったとしても、手をつけない (つけられない) 位置であり、胎盤が存在していたとしても剥離 (用手的に) はしないところである。

 また、卵膜が切開創のところにあることから、胎盤があるとしたら、分葉胎盤が子宮前壁上部に存在していたと考えられる。また、そこが癒着胎盤であったとしたら、用手的又は鈍器で剥離しないかぎり、自然に剥離して来ないのであるから、大量出血が起こるとは考えられない。

 従って、摘出された子宮前壁上部に、肉眼的に胎盤が認められたはずである。しかし、病理所見としては、そのことは記載されておらず、microで (検鏡で) 絨毛が認められ、そこが癒着胎盤と診断している。

 我々の考えとしては、子宮前壁子宮切開創の上部のところは、絨毛膜無毛部のところであり、満期でも絨毛が卵膜に遺残している症例もあることが文献上指摘されており、又、私が検鏡したところ、脱落膜細胞が存在していると思われる。

 また、問題の子宮前壁下部の癒着胎盤の有無であるが、前回帝切時の糸が残存していた部分では、絨毛は筋層とは離れているところに見られ、筋層と絨毛との間は何もなく、はっきり絨毛が筋層内に侵入している像はなく、また一部に脱落膜細胞と思われるところも存在していることから、癒着胎盤ではないと考えている。

他の鑑定人で鑑定してもらいたいと考えている。

 弁護側から、午前中に示した癒着があった胎盤の図からすると、胎盤はひょうたん型の胎盤になるのではないかと考えるがどうかという質問に対し、証人は、胎盤は剥離すれば楕円形になるなどと、ちょっと医学的に考えられない様な答えをするなど、我々としては、あ然としたところである。

 実際には、前壁に付着していた胎盤はスムーズに剥離したと加藤医師は答えており、病理診断と大きくくい違いをみせていることから、しっかりした鑑定が望まれると考えている。

 次回は、この事件を医学的に鑑定した医師 (某大学産婦人科教授) の検察側からの証人尋問となる。

 当初、6月29日(金)の予定でありましたが、証人が外国出張とのことで、証人尋問は7月20日(金)午前10時からとなりました。

 (追) 証人が証言したとおり、癒着胎盤のところから想像する胎盤は (胎盤が付着したところは不明と証言しているが)、少なくとも下のような胎盤が想像される。しかし、実際の胎盤の写真と比較してみていただきたい。

 また、もしも子宮前壁の帝王切開創の上に胎盤が存在していたならば、術中、加藤医師は超音波で胎盤の位置を確認しているのであるから、子宮切開創上部に胎盤が存在していたならば、もっと上部で切開していたと考えられるし、想像される胎盤であれば、子宮切開創に胎盤がない狭い部分を切開したことになり、私としては神業のような切開をしたとしか、考えられない。またこのような胎盤は非常に稀なものと考える。

 以上、記載した如く、今回の子宮病理鑑定に対し、疑問が多く、私としては納得できない一日でした。

                     (文責 佐藤 章)

 第5回公判 2007年5月25日の傍聴記録

 傍聴人のメモを書き起こしたものであること、完全に正確でない部分がある可能性があることをご了承ください。

【検察側主尋問】10:00〜

裁判長: それで開廷します。早速証人尋問を始めます。

名前は S職業、年齢は記載通りですね

宣言、

裁判長: これから証人に対する質問がありますが、偽証責任を問われる可能性があります。

裁判長: よろしいですか。じゃ

検察1: 検察官の鈴木からお尋ねします。最初にご経歴を確認させていただきます。ご職業は医師ですね

証人: はい

検察1: ご出身大学は

証人: 福島県立医大医学部です

検察1: 医師の資格を取得されたのは何年ですか

証人: 昭和59年です

検察1: 免許をとられてからご専門は

証人: 病理学です

検察1: 主にどちらで

証人: 福島県立医大医学部です

検察: 現在の所属はどちらですか

証人: 福島県立大医学部病理学第二講座です

検察: 患者さんの摘出子宮について病理鑑定をされたことがありますか

証人: はい

検察: 平成16年6月27日の鑑定書を前提に尋ねます。このときの肉眼的観察をされた所見について、まず証人は子宮壁に胎盤の断片が残存していたのは確認されていますね

証人: はい

検察: 胎盤の残存が確認されたのは子宮壁のどの部分ですか

証人: 子宮壁の、後壁右側です

検察: 証人はその部分を子宮の写真に書き込みをすることは可能ですか

証人: はい

検察: では証人の記憶を明確にするため、甲6号証、の3の60を示したいが、よろしいでしょうか。見て頂いている写真で、上に一枚、下に一枚ありますが、これはどのような写真でしょうか。

証人; 上の写真は子宮後壁内面全体の像です。上の右は黒いところがありますが、これが肉眼的に残存が確認された胎盤で、下は胎盤の残存の拡大を上げた写真です

検察: ではこの二枚の写真に赤い線で胎盤の残存した子宮壁の範囲を記入してください

証人: この場で? 上の写真ではこの範囲。下の写真では、この部分に肉眼的に胎盤を確認される部分です。

裁判長: 大型モニタに映すことになるが (モニタに写真が写される)

検察: ただ今赤で書き込んで頂いた部分が、子宮に胎盤の断片が残存していたということでよろしいですか。

証人: はい

検察: 続いて証人のご記憶を明確にするために、甲6号証鑑定書添付の写真4をご覧いただきますがよろしいでしょうか。

裁判長:はい。どうぞ。

検察: 上に1枚、下に2枚写真があります。では、上の写真はどのような写真でしょうか。

証人: 先ほどの子宮全体の像で、子宮全体を8分割し、その断面を見えるよう並べた物です。

検察: 前壁はどちらですか

証人: それぞれについて右側に見えるのが前壁、左が後壁です。

検察: 写真の中に左右の書き込みがあるが、右が前壁ですね

証人: はい。右が前です。

検察: 下の2枚の写真は

証人: 下の二枚は、子宮後壁に肉眼的に胎盤が残存しているのが確認された部分の割面の拡大です。

検察: 胎盤の残存が認められた部分の断面の拡大ですね。

証人: 上のは黒っぽい組織片で、下のは右と書いてある断片から二番目の、黒っぽい盛り上がった部分が胎盤の残存、右の下の写真はここでも盛り上がった部分が黒っぽく見えていますが、これが胎盤の残存です。

検察: 続いて質問いたします。証人は患者さんの子宮壁の厚さを計測されましたか

証人: はい

検察: 証人は肉眼的に子宮壁の厚さを計測されたとのことでしたが、どのくらいでしたか

証人: はい。肉眼的に胎盤残存を確認した子宮壁の厚さは約7mm〜10mmでした。

検察: 胎盤が残存している部分の子宮壁の厚さは、他の部位と比べるとどのくらいでしたか

証人: 子宮壁の厚さは、上と中央部、下部で厚さは通常でも均しくはありませんので、胎盤が残存している部分と同じレベルの後壁と比較して、胎盤が付着していない部分の厚さは約15mm程度でした。

検察: 今おっしゃったレベルというのはどういうことですか

証人: レベルというのは、この写真でみても、子宮の上のほうは生理的に厚い壁になっているが、同じ高さの部分はだいたい同じくらいの厚さであろうという仮定のもとに、子宮の同じ高さの部分を比較しました。

検察: 上の方向が頭、下が足側で、同じ高さでということですね。胎盤残存部分の子宮壁は、他の部位と比べて薄い理由は何ですか

証人: 理由は二つ考えられます。ひとつは、癒着胎盤は子宮筋層の中に胎盤が入り込み、筋層が損なわれて薄くなる可能性、もう一つは、胎盤が残存しているために、分娩後の子宮の収縮が不良で、薄いままになるという理由です。

検察: 証人があげた二つの理由は、両方があるのか、それとも片方だけが理由として存在するのか、どちらでしょうか。

証人: 両方が関わる

検察: 胎盤が残存する部分で、子宮の収縮が良くなかったという理由がありましたが、そこでは、どうして子宮壁が薄くなるのですか

証人: 通常は妊娠後期になると、子宮が引き延ばされて35cm程度になって、その場合子宮壁が薄くなる。分娩直後に子宮収縮で壁が厚くなるが、胎盤が残存する場合にはそれが障害されると言われております。

検察: 胎盤が残存すると子宮が収縮しないので、壁の厚さがどうなるのですか

証人: 壁の厚さが薄いままになるということです。

検察: 証人は、鑑定書には、子宮の収縮は良好と記載されたご記憶はございますか

証人: あります。

検察: どういう理由で

証人: 一般的に、子宮収縮では、35cmが15cmに小さくなるといわれております。この子宮は約19cmであった。子宮全体の形はそれほどいびつではなかったので、全体的な子宮の収縮は不良ではないと判断した

検察: 証人は鑑定書に、患者さんの子宮は急速に収縮したと書かれた覚えはありますか

証人: はい

検察: どのような理由で

証人: 子宮の大きさは分娩直後に収縮すると一般的に言われています。この場合、胎児の娩出からすみやかに19cmまで収縮と推測されたので、急速に収縮と考えました。

検察: 証人は、子宮の収縮良好、急速に収縮と言われましたが、それは顕微鏡で組織学的に確認されたことではないのですか

証人: 子宮の直径、収縮は顕微鏡的に示すような証拠はない

検察: 肉眼的にみた証拠から判断されたということですね

証人: はい

検察: 子宮の収縮のプロセスはおわかりになりますでしょうか

証人: プロセスとは?

検察: 実際どのように収縮がおこったかということは

証人: それはわかりません

検察: 証人は、収縮が不良な部分があったということで証言されましたが、その収縮については標本からわかるか

証人: 収縮の後、ホルマリンで固定した標本なのでそれはわかりません

検察: 証人は鑑定書に収縮良好と記載されていますが、胎盤遺残部分はどうして収縮不良という結論になるのでしょうか。

証人: 他に比べて壁が薄いからです。

検察: 収縮良好と言えない理由は、子宮壁が薄いことですね。どうして薄いことから収縮不良の結論になるのですか

証人: ・・・

検察: 今、証人は、他の部分と比べて子宮の壁が薄いから、収縮不良だと証言されましたが、薄いことから理由はどのようなことが考えられますか。

証人: 他の壁から比べ、薄いということ、薄い理由は胎盤が筋層に侵入しているということと、子宮の収縮が阻害されているということです。それは両方考えられます。はっきりどちらがどうとわからない。収縮阻害の可能性はある。

検察: 胎盤が残存している場合は子宮の収縮不良、今回も同じことが言えるかどうかについては、いかがでしょうか

証人: 胎盤残存は例えればつっかえ棒というか、収縮を阻害する因子とは、言われて・・います。

検察: 私のほうからの質問は、今回、胎盤の残存が、子宮収縮の阻害の原因になったのかということについてお聞きしております。

証人: はい、その可能性はあります。

検察: 証人は、児と胎盤娩出後の子宮の収縮に、母体から胎盤への血行に対して、止血効果があることはご存じですね。

証人: はい

検察: 今回胎盤が残存しているということですが、子宮収縮の阻害による、出血状況、止血効果はいかがでしたか

証人: 止血は、不良だった

検察: どうしてそのようなことが言えるのでしょうか

証人: 胎盤が肉眼的に残存しているのと血管断端、血管の周囲がそのまま露出している。ということで、血管の止血が不十分であると判断しました。

検察: 子宮の収縮による血管の閉塞についてはいかがでしょうか

証人: 子宮収縮によって、残存する血管が圧迫によって閉塞するという機序で、子宮収縮が不全であれば血管が閉じないので、止血困難と考えられる。

検察: 胎盤剥離後、先ほどの胎盤残存部分の出血は具体的にどのような状況でしょうか

証人: 推測になるが、胎盤が残存して、血管が露出しているのと子宮収縮不全により、止血は困難な状況であったと考えられる。

検察: 証人が観察された中で、子宮筋層が削られていた部分があったということですが、そういったところは、どういう影響を受けますか

証人: 子宮筋の収縮が止血のメカニズムだが、子宮筋が損なわれると子宮収縮が障害される。

検察: 子宮の収縮が障害されると、その部分の止血はどうなりますか

証人: 不良になります。

検察: 鑑定書に記載された項目について、伺うが、証人は患者さんの胎盤がどのように剥離されたかということについて、鈍的または鉗子による剥離が想定されると記載されましたが、それは、具体的にどのような剥離を想定されているのでしょうか

証人: 鉗子というのは、通常組織を挟むものですが、剥離鉗子は先端部で組織を剥離するために用い、一般的。私は、鉗子の先端で胎盤を剥離したものと想定しました。

検察: 鉗子は先端にどのような特徴を持っているものでしょうか

証人: 先端は鈍的、鋭的ではなくて、丸いということです

検察: 鋭利ではないということですか

証人: はい

検察: 証人は、剥離について、用手または鉗子剥離と推測されたわけですが、それはどのような理由から判断されたのでしょうか。

証人: 鋭利な刃物で切るとその部分が平坦になりますが、この断面の像をみると、そうではなくて凹凸があったので、鋭利な刃物で剥離をしたものではない、と推測しました。

検察: 他には覚えていらっしゃらないでしょうか。鑑定書に、「断端にちぎれたような痕がある」と記載された覚えはないですか

証人: 残存胎盤の断片の断端は鋭利な刃物で剥離した痕はないと考えました。

検察: 残存胎盤にちぎれたような痕があるとは、具体的にどのようなことでしょうか

証人: 表面に凹凸があり、でこぼこしていて、スポンジを手で引きちぎった様なイメージだった。カッターや鋭利な刃物で切ったものではない。

検察: 先端が鈍であり、鉗子剥離ということだが、これにはクーパーで刃を閉じて、そぐようにはぐことも含まれるか

証人: はい。両者は同じです。

検察: 証人が鑑定された中で、今回胎盤を子宮から剥離する際に、クーパーの刃を閉じて先端でそぐように剥離したかどうかはわかりますか

証人: 用手的に剥離してもクーパーで剥離しても同じような像になり、区別できません。鋭利な刃物で切ったということではありません。

検察: 証人が観察された像と、クーパーでそぐように剥離した像と矛盾しますか

証人: 矛盾はしない。

検察: 証人は子宮観察をされて、子宮から胎盤の剥離の際に、クーパーの先をはさみのように使った剥離があったかどうかについては、いかがでしょうか。

証人: 肉眼的なことについてでしょうか

検察: 肉眼的に子宮全体を見た結果はいかがでしたか

証人: 子宮内壁全体で、クーパーで広範囲に切ったという所見はありません。

検察: 広範囲の中の局所、一部分について、クーパーで切ったという所見があったかどうかは

証人: これは例えば、血管など索状の組織を局所的に切っても、残存する胎盤からそれがわかるかどうか、わかりません、否定できません検察: 否定できないということですね。

証人: 否定はできません。

検察: 次に組織的に観察された結果について。証人は子宮を顕微鏡で観察されるために、標本を作成されましたね。それは何枚ですか

証人: 39枚です。

検察: 甲6号証の鑑定添付資料をお示しします。証人は39枚の標本を作られたということですが、どのようにブロック、標本を作成しましたか

証人: どのように、というのは

証人: できるだけ子宮の状態を見ようと、多くの標本を作成しようと思い、子宮を8つに分割し、その割面をすべて標本にしました。

検察: 8分割されたものから、証人が作成された39のブロックと、実際の標本との範囲はいかがでしょうか

証人: 39枚のブロックのすべてから標本を作製しました。

検察: どの範囲を見ることができる標本を作られたのでしょうか。

証人: 基本的に割面の標本から、肉眼的に見える全体が見れると考えました

検察: 例えば、39に分けられた10番の標本については、その隣の9や11のブロックとの境界はすべて観察できるということですね

証人: はい

検察: 作成された標本について、顕微鏡で観察される厚さはいかがでしょうか

証人: 顕微鏡標本は薄いので、3〜5μmの範囲。

検察: 証人は39のブロックについて、断面は全て顕微鏡で観察できるように標本を作製されたことになりますね

証人: はい。

検察: 証人は顕微鏡観察の際、どのような見解で癒着胎盤の有無やその程度について鑑別されたのですか

証人: 癒着胎盤という言葉の定義は、胎盤の絨毛組織が子宮組織に脱落膜を介さず接しているか、または、子宮筋層に絨毛組織が侵入しているかどうかをみるということで。

  (ここで傍聴席の携帯電話が鳴り)

裁判長: 携帯電話は電源を切ってください

検察: 癒着の定義から、どのように判断されたのかということについて

証人: 一般的診断基準として、絨毛組織と子宮筋層の間に脱落膜組織が介在しないということが定義です。顕微鏡で組織を観察して絨毛組織と子宮筋層の間に脱落膜組織があるかないかを観察し、ないものを癒着胎盤と診断いたしました。

検察: 癒着胎盤には、程度による分類がなされていることはご存じですね

証人: はい。

検察: 癒着胎盤の分類を整理してください

証人: 癒着胎盤には広義には、分類が3つあり、楔入胎盤といい絨毛が脱落膜を介さず子宮筋層に直接接するもの、筋層に絨毛組織が入り込む嵌入胎盤、子宮外膜にまで絨毛、胎盤組織が達する穿通、穿入胎盤があります。

検察: 証人に癒着胎盤の定義、分類について説明してもらいましたが、今回の診断の際は定義に基づく診断をされたのですか。

証人: そうです。

検察: 証人が今回の子宮を観察された際に、癒着胎盤がどの程度の範囲に観察されたのでしょうか

証人: はい

検察: 証人が平成17年6月27日鑑定書を作成されましたね。

証人: はい。

検察: その鑑定書に、患者さんの子宮のどの範囲に癒着胎盤が認められたのかということを結果を伺ってもよろしいですか

証人: はい

検察: 記憶を整理するため、甲4号証の7を示したい

裁判長: はい、7ですね

検察: こちらの上の写真には黒い番号と赤い番号がつけられていることは確認できますね

証人: はい

検察: これはどのような区分けでしょうか

証人: この番号で記された部分の顕微鏡的な観察において、癒着胎盤が認められた標本において、赤い番号が書いてあります。

検察: 癒着胎盤が認められなかったものについては黒い番号が付されているわけですね。

証人: はい

検察: このような区別は鑑定書に記されていますね

証人: はい

検察: 写真が2枚あります、左右の記載がありますね

証人: はい

検察: 左右誤記はありませんか

証人: その通りです。

検察: 左、とかいてある方が左、右とふられているのは右半身ですね。

裁判長: 今まで右、左とかありましたが、逆にはなっていない、そういうことですね。

検察: 写真3の上と7の下、写っているものとしては、同じでよろしいですね

証人: はい

検察: 写真としては同じものということですが、左右は両者で違いますね

証人: はい。写真3が正しいほうです

検察: 写真7が、左右を誤記ということですね。正確なものは先ほど述べた通りですね

証人: はい

検察: 質問に戻りますが、証人は、写真3で、どの部分が楔入胎盤で、どの部分が嵌入胎盤か、鑑定書には記載されましたね

証人: いいえ

検察: 証人が鑑定の際に使用された標本の写真を顕微鏡写真には添付しましたか

証人: いいえ

検察: 具体的に、鑑定書には子宮組織像という顕微鏡写真を示しましたか

証人: はい。

(上記までの質問と回答から、最初の鑑定書には、具体的に写真のどの部分にどういう所見があるということが事細かに書いてあるわけではなく、数点の写真とまとめとしての文章があるだけであったというように聞こえた。)

検察: 鑑定書には、組織の図を添付されたご記憶はおありですね。証人のご記憶喚起のため、甲6号証の写真6をお示しします。こちらの写真が、証人が鑑定されたときの写真ですが、これはどのような図ですか

証人: これは嵌入胎盤ですね、顕微鏡写真

検察: この写真は嵌入胎盤。

証人: はい

検察: どなたの標本かということについては

証人: 患者さんのものです

検察: 患者さんのこの標本については、鑑定の際に証人が作成されたものですか

証人: いいえ

検察: どの時点で作成されたものですか

証人: 以前に病理診断を依頼されたときの標本のものです。

検察: 病理の診断はいつでしたか

証人: えーっと、平成・・17年、16年か、11月か

検察: 鑑定に先立って、病理診断をされたときですか

証人: はい

検察: 病理診断の際の嵌入胎盤は、どの部分の組織でしたでしょうか。

証人: 肉眼的写真はなく、不明ですが、子宮後壁でした。

検察: 証人が鑑定書に今回の写真ではなく以前の顕微鏡写真を添付されたのは、どうしてですか

証人: この顕微鏡写真は、癒着胎盤の典型的像が見られたので添付いたしました。

検察: 説明の資料ということでよいですか。

証人: はい。

検察: 証人は平成17年6月27日付で鑑定書を作成されていますが、その際には、標本についてさらに検査をされたということですが、それは自発的にですか、依頼によってですか

証人: 依頼によってです。

検察: 誰からの依頼ですか

証人: 検察庁からです

検察: 検察庁からどのような主旨の依頼を受けましたか

証人: 顕微鏡的に癒着胎盤が見られる像、全ての写真を添付するように、言われました。

検察: 他には依頼はありましたか

証人: 癒着の部位について、範囲を詳しく

検察: 部位についてですか

証人: 子宮のどこにどの程度の癒着なのか、ということについて

検察: 証人は鑑定書ではどこが楔入胎盤で、どこが嵌入胎盤かお書きになっていますね。検察から具体的にどの部分がどうなのか聞かれませんでしたか

証人: と、思います

検察: 内容は覚えていらっしゃいますか

証人: 定義によって、楔入胎盤か嵌入胎盤か、明かに示すよう言われました

検察: どの部分が楔入胎盤か嵌入胎盤か、区別を明確にするよう言われましたか

証人: はい。

検察: 癒着胎盤について、検察からは、再度検査をするよういつ依頼されたのですか、その契機については言われましたか。再度癒着胎盤の範囲や有無を検査するに当たり、検察から何か説明がありましたか

証人: 弁護側の鑑定書とくい違いがあると言われ、そのくいちがいの見直しをするようにということでした

検察: 検察から依頼を受けたのはいつでしたか

証人: 去年の4月だったと思う。記憶があいまい。

検察: 今おっしゃったのは、弁護側の鑑定書が作成された時期ですね。平成18年11月に弁護側の鑑定書がでたのですが、検察官からの依頼があったのはいつでしたか

証人: 今年の1月です。

検察: 先ほどのは証人の勘違いですか

証人: はい

検察: 平成19年1月で間違いありませんね

証人: はい

検察: 組織検査を検察から依頼され、鑑定書から新しいことがわかりましたか

証人: 以前の鑑定書で癒着ではないと判断していた部位から、新しく鑑定した結果、癒着を認めました。

検察: どうして鑑定書では癒着でないとしていた部分が、あらためて癒着と判断されたのですか

証人: 理由は、一つには、残存している胎盤絨毛組織が少なく、しかも子宮剥離が原因と考えられる挫滅変性が加わって判定できなかったことがあって、そういうまぎらわしい部分について、以前鑑定書では癒着ありとしなかったが、改めて見直して絨毛組織の構築が残っていて、癒着ありと判断し直しました。もう一つには、癒着胎盤は、絨毛組織と子宮筋層の間に脱落膜が介在しないのが定義ですが、しばしば胎盤側の栄養膜細胞が境界に入り込む。栄養膜細胞は脱落膜と同じような構造を示していて、両者が鑑別診断できない。いずれの場合にも両者の区別が困難で難しいところは脱落膜でないとしておりました。私自身、過去の病理標本を含め、勉強してもう一度見直したら、栄養膜と判定する部分があり、そうした理由で癒着胎盤と診断し直しました。

検察: 癒着胎盤の場合、栄養膜細胞は子宮側にあるのですか

証人: はい

検察: 証人の説明では、脱落膜が子宮側にあると癒着でないということですが、最初の鑑定では、栄養膜と脱落膜の鑑定は困難だったのですね

証人: そうです

検察: 最後鑑定していただいた時には、栄養膜と脱落膜の区別ができたということですね

証人: はい

検察: 栄養膜と、脱落膜の違いは何ですか

証人: 比較的なので、言葉が難しいのですが、脱落膜細胞は、細胞質が明るく核が小さい、栄養膜細胞は核が大型で細胞質が濃い

検察: 証人は癒着胎盤を病理検査で扱ったか

証人: はい。3例あります

検察: 先ほど証人は、過去の癒着胎盤を勉強したということでしたが、癒着胎盤を集めたのですか、何例ですか

証人: 福島県立医大の過去の病理10例ほどです。

検察: 証人は参考にしたのはどのようなものでしたか

証人: 専門書、胎盤の病理写真を納めた教科書、医学論文の文献、症例報告を参考にしました

検察: 再度勉強されたうえで、鑑定をやりなおされたのですね。

証人: はい

検察: 検察の依頼に対して回答されましたか

証人: はい、回答書で

検察: 説明は、検察の照会の書面にどのように書かれましたか

証人: 照会。癒着胎盤が認められた標本を全て提出しました。

検察: 証人は、回答書にあたってはどのような回答の仕方をされましたか

証人: 顕微鏡標本で癒着が認められる部分をすべて写真に撮ってプリントアウトしました。

検察: プリントアウトされた写真に記載されたのですね

証人: はい

検察: どのような記載をしましたか

証人: 写真の撮影(強拡大・弱拡大)、標本番号、癒着の程度(楔入・陥入)、標本の拡大の部位

検察: 楔入か嵌入かは記載されましたか

証人: 写真の中に胎盤の範囲、筋層、子宮の内腔がどこか、位置関係の矢印をつけながらやりました

検察: このようなことにより、癒着胎盤について記載されたのですね

証人: はい

検察: 甲53号証、照会回答書を示します。

裁判長: 同一性についての確認ですか

検察: これに見覚えはありますか

証人: はい

検察: 証人が鑑定されたものによる照会に対して回答したものですね

証人: はい

検察: 証人ご自身による回答でしょうか

証人: はい

検察: 証人の御名前と押印がありますね

証人: はい

検察: 証人がおされましたか

証人: はい

検察: 平成19年1月10日に検察官から依頼され、1月22日に回答されていますね。それはご記憶と一致しますか

証人: はい

検察: 添付のブロック以外に癒着胎盤はありませんでしたか

証人: ないと思います。

検察: 全ての胎盤の写真を添付しましたか

証人: 全ての写真ではなく、癒着が認められた標本について添付しました

検察: 患者さんの子宮の範囲にどの程度癒着が認められたかということについて

裁判長: もういいでしょ、書面は

検察: 癒着胎盤がどの範囲に認められたかについて、説明可能ですか

証人: はい

検察: それについては写真があればご証言可能ですか

証人: はい

検察: 御証言には顕微鏡写真はあった方がよろしいですか

証人: はい。写真がないと、示すのは難しいです。

検察: 53号証を示します

弁護3: 検察側の方が、平成18年3月に、公判を維持するに足る証拠があるということで起訴しているわけですから、新たな鑑定記録は弁護人は不同意としております

裁判長: 異議ですね

弁護3: はい

検察2: 癒着胎盤の範囲を示したいので、写真なしでの証言は困難であるという証言から必要性は条件を満たしております。この書証は刑事訴訟法321条4項に該当するとして、後ほど証拠として提出します。

裁判長: 留保事項との確認はいかがでしょうか

弁護3: 留保事項にかかわらず、弁護側は不同意としております。

(裁判官で相談)

裁判長: 証拠の番号ですが、甲6号証と同じ区分けで、どれかがこれにあたるか、あたらないかを聞きたい。

検察: 6号証は写真です

裁判長: 場所の問題ですか

検察: 部位と根拠についてお示ししたい

裁判長: 全く別のものですか

検察: 番号は同じだが、あれは肉眼像、今回のものは拡大像です

検察2: 子宮全体の写真より、6番のもの、その上で癒着と判断したものについてです。

裁判長: そうすると、写真にはどこの標本が記載されたか、どの写真と対応しているか記載されているということですか

(裁判官で相談)

裁判長: じゃ、異議を棄却します。

弁護3: この写真は今の39の番号とどのように対応するかは良いが、結論が記載されています。文字部分は伏せて証人の意見をきいてほしい

検察2: 321条4項に基づいて、今後請求予定ですが、またお示ししたい。

弁護3: いつ切り出したか、いつ撮影したのか、書いていない。どの部位かも記載されていないので、それを証拠とするのは不適当です。

(裁判官で相談)

裁判長: 裁判所としては、写真だけ示して証言してください。じゃ

検察3: 回答書には文字が記載されていますが、写真だけ示すのは困難です

裁判長: なるべく文字部分が見えないような形で、写真だけで説明するようにしてください。

弁護3: 結論が書いてある、それは結論を示してから質問するのが不適当。それは相談して用意がございます。

裁判長: 確認していただいて

検察: 確認させていただいて良いですね

裁判長: どうぞ

(検察で相談)

検察3: 書き込むことはよろしいですか

弁護3: 説明は裁判官の判断で

裁判長: では53号証の写真部分については示した上で尋問することとします

検察: まず、証人は写真を見て頂けますか。証人、色あいはどうですか

弁護2: まず、その写真はいつの撮影ですか、記入はいつですか、明らかにしてほしい

弁護3: 39番まであり、1番の標本なら1番のどの部分なのか、わからない

裁判長: 撮影について、証人に疑義がありますか

検察: 顕微鏡写真については、どの時点でコメントされましたか

証人: 今年平成19年1月10日に照会依頼があり、その後標本を撮影して回答を出しました。その、2,3日くらいです。

検察: 写真の、標本は鑑定前の段階で作成したものですか

証人: はい

検察: 撮影のみは、2,3日でしたか

証人: はい

検察: 依頼を受けられてから、2,3日ですか

証人: 依頼をうけてから顕微鏡写真作成に3日くらいかかりました。写真撮影に3日かかり、それをデジタル組みかえて、文字を入れるのにかかりました。

検察: 回答書は1月22日に検察に返されていますが、この間に作成されたものですか

証人: はい

検察: 写真のプリントアウトの色は、これで説明可能ですか

証人: 不鮮明ですが可能です

検察: ではこれからご質問していきます。XX-1という記載の意味はどういうものですか

証人: XXは記号で、1は番号で、39個の切り出しブロックの番号と一致しています。

検察: 癒着胎盤についてですが、この子宮の標本は癒着ですか

証人: この標本では癒着があります

検察: XX-1の癒着の程度はいかがですか

証人: XX-1は、楔入胎盤です。

検察: 標本には胎盤絨毛の範囲はいかがですか。緑の線で書き込んでください。子宮筋層を水色で記入してください。

証人: (書き込む)

検察: 続いて、下の写真について

証人: (書き込む)

検察: 全部の書き込みについて、AとBの関係についてはいかがですか

証人: Aは対物レンズが10倍、Bは20倍です。

検察: Bの写真で示される部分の範囲をAにおいて囲むとどうですか。黒で記入してください。大体で結構です

証人: (Bで拡大した部分をAで四角で図示)

検察: これをもとに説明を加えていただきます

裁判長: 緑の部分(胎盤絨毛のこと)の色が見えないので、説明してください

証人: ここ、ここと、ここです。

検察: 胎盤について、どうしてこの図が楔入胎盤か、説明していただけますか

証人: 胎盤絨毛と筋層の中身に、脱落膜が存在しない。かつ絨毛と子宮筋層が直接接しています。よって楔入胎盤です。

検察: 残っている他の部分(ペンで囲んでいない、絨毛と筋層の間の組織)は、どのような組織ですか

証人: どこですか、ここですか

検察: この部分です。

証人: もともとは、胎盤腔です。この部分に血液の凝固があって、フィブリンの析出した固まりです。

検察: フィブリンを介して接しているのは、楔入胎盤というご判断でよいのですか

証人: 癒着の診断には影響しません

検察: XX-1は、楔入胎盤ですね

証人: はい

検察: 33についても説明していただきます。XX-33については結論は癒着胎盤ですか

証人: 癒着胎盤です

検察: 33番はどの種類の癒着ですか

証人: 楔入です。上が4倍、下が10倍の倍率になっていて、×4写真が、絨毛組織がこの部分、下は球状のが胎盤絨毛のユニットです。

検察: 子宮筋層についてはどこになりますか。

証人: 子宮壁、こちらが内腔で、筋層はこの部分です。平滑筋です。

検察: AとBの写真の関係はいかがですか、これで癒着胎盤と診断された理由は何ですか

証人: Aを拡大したのがBです。胎盤の絨毛と筋層が直接接しているからです。

検察: 顕微鏡標本で脱落膜の確認はできますか

証人: はい。こちらの標本には脱落膜は確認できません。

検察: 剥離のために、胎盤絨毛の大部分ははがれたというのは、わかりますか

証人: 剥離されているとはいえ、かなりの胎盤絨毛の量が残存しています。

検察: どのようなことから、はがれているかわかりますか

証人: 胎盤絨毛細胞の核が残っているので、変性や退縮ではない

検察: XX-3、この標本について癒着はいかがですか

証人: 癒着胎盤の像です。程度は嵌入胎盤です。

検察: 絨毛組織については、色のペンで

証人: 胎盤絨毛はこの部分です。この場合絨毛組織が若干失われている。

検察: AとBの関係は

証人: 拡大したもので、この範囲の部分です。

検察: 嵌入胎盤と診断された理由をご説明ください。

証人: 子宮筋層内に、楔入胎盤であれば筋層に接するが、嵌入胎盤は筋層組織に入り込む。この標本では絨毛が筋層内部に入り込んでいるので、嵌入胎盤と診断できます。

検察: 楔入、嵌入について、判断された例を三例、お示しいただきましたが、他の標本についても、同じようにご判断されたのでしょうか

証人: はい

検察: その他、何枚かについても、ご説明いただきます。XX-14について、程度はどうですか

証人: 楔入胎盤です。

検察: 見て頂いた標本の中に、脱落膜はありますか

証人: ありません。

検察: 脱落膜があるが、薄く見えるところはありますか

証人: この部分です。拡大写真でこのあたりで、ここには脱落膜はなく、コラーゲン繊維がある組織です。

検察: XX-30について、癒着はいかがですか

証人: 結論は楔入胎盤です。脱落膜がない

検察: Aの上の組織が薄いところは、膜でしょうか

証人: ここですか、この拡大がBで、ここについて

検察: AとBの拡大関係について示してください

証人: この部分です

検察: 写真拡大の中のBの赤い部分の上の白いところはどのような組織でしょうか

証人: 脱落膜と栄養膜の区別の難しいところですが、栄養膜組織です。

検察: なぜそのように判断されたのですか

証人: 細胞の核が大きく、細胞質の色が濃く、細胞同士が密集していないことからです。

検察: XX-27については癒着胎盤の程度はどうですか

証人: 嵌入胎盤です。

検察: AとBの関係はいかがですか

証人: この写真ではAの強拡大がBではなく、AととなりをBにしました。絨毛細胞の像です。

検察: 筋層を水色で示してください。嵌入胎盤の判断はいかがですか

証人: Bは、筋層の間に絨毛組織が入り込んでいるので、嵌入胎盤です。Aは部分的に絨毛があり、嵌入胎盤です。

検察: Aには縫合糸と書いてあるが?

証人: 瘢痕化があり、古い組織。前回帝王切開創と判断しました。

検察: 何点か顕微鏡写真で説明していただきましたが、癒着の範囲を図示していただけますでしょうか。甲6号証の5,割面写真をお示ししたいと思います。子宮割面の癒着胎盤の各層をご記入いただけますか。赤の線で後壁、緑で前壁をご記入ください。

証人: こちらが左、こちらが右です。左後壁の左の3-4は、子宮口の前壁まで、後壁には肉眼的に癒着胎盤が診断された部位があります。

検察: 前壁については、癒着胎盤はどの部位に認められましたか

証人: 左側の下部、前壁に27番、少し離れるが左の上、中央部の24,29,30,31,34番に認めました。

検察: 証人が説明された範囲を明かにするために、添付の3を示したい。子宮後壁内面を写真撮影したものに、子宮割面に記入いただいた癒着の部位を後壁内面に記入してください。

検察: 癒着部位の推定を、青い線で結んでいただけますでしょうか。なぜ、その部位だとご判断されましたか

証人: 胎盤は円盤状であり、癒着は局所的でなく、面としておこります。癒着の認められた点を線で結びました。

検察: 丸く塗られなかったところはどのようなところですか

証人: 顕微鏡的に胎盤が無かったところです。

検察: その部分が癒着胎盤でなかったのでしょうか

証人: 判断は難しい。胎盤が残っていないからと言って癒着ではないとは、言えません。

検察: 何故言えないのでしょうか

証人: 胎盤剥離の後で、残された絨毛組織を見ているので、胎盤剥離の際に剥離しきった所もあると考えられます。従って、胎盤組織がなくても、剥離前はあったのかもしれませんし、本当に胎盤組織がなかったのかもしれません。

検察: 赤い4つの点と、青の範囲の関係はいかがですか

証人: 残っている絨毛組織は少ないので、下部には明かに残存しているところがありました。癒着の有無は言えないと考えられます。

検察: 同様に、甲6号証の前面で、癒着の範囲はどのように推測されるでしょうか

証人: 連続するかの判断は難しい

検察: Bの子宮面で、2番目は癒着かどう書かれていませんが、どういった理由からですか

証人: 標本作成面はこの部分を作成していないので、

検察: 証人としては、連続性についてはどのようにお考えでしょうか

証人: 胎盤の形状で推測すると、丸いので、AとBの間にも同様の範囲で癒着があったと考えられます。

検察: 子宮面の後面について、癒着があったと証人がご判断されるところはどこでしょうか。波線でご記入ください

証人: このように連続するのではないかと考えられます。

検察: 子宮前面についても同様でしょうか、撤回します。推定されますでしょうか

証人: 連続すると推定すると、このように考えられます。

検察: 証人は子宮の連続性から、癒着の範囲について、どのようにご判断されましたか

証人: 後壁にも広い範囲で後ろから前にかけて、子宮頚部をはさんで癒着が認められました。

検察: BとCの下の線のところ、3と示したところまで、子宮前面について子宮口をはさんで連続するか示していただけますでしょうか

証人: おそらく、このあたりです

検察: 癒着範囲をお示しいただきましたが、癒着胎盤の範囲と面積的に一致するとご判断されるでしょうか

証人: 一致しておりません。

検察: 現実の面積として一致するとご判断でしょうか

証人: 必ずしも一致しません。子宮は胎盤の娩出後、収縮するので。

検察: 証人としては、収縮後の面積ということでよろしいですか

証人: はい。

検察: 子宮の今回の帝王切開創をお示しいただけますか。証5の下にはいかがですか

検察: 子宮前面にも書き込んでいただけますでしょうか。

検察: 証人は今回の帝王切開創と、癒着の関係について、どのようにご判断されていますか

証人: 改めてマッピングしてみたところ、癒着と帝王切開創とは必ずしも一致していない。

検察: 証人は以前、警察に、癒着と帝王切開創は一致すると話しましたか

証人: はい

検察: なぜ、お考えを変更されたのですか

証人: 作成した切片の判定の基準が違うからです。

検察: 理由は何ですか

証人: 34で前回の鑑定では、ブロックに一部癒着があった場合に、全体に癒着ありと鑑定しました。今回はより詳細に癒着範囲を検討しました。その結果、癒着範囲と前回の帝王切開創は違っていました。

検察: 前回帝王切開の瘢痕と、癒着の関係についてですが、瘢痕の部位を図に書いてください。

証人: 瘢痕は27の部分で、縫合は2箇所です。

検察: 子宮前面でご覧になってください。前回帝王切開層の縫合糸の瘢痕をお示しください

証人: この部分です。

検察: 前回帝王切開の縫合糸の箇所を記入していましたでしょうか。これと癒着がどのように連続していたか、証人が推測できる箇所をピンクの線でご記入ください。

証人: 写真5で、ここに縫合の瘢痕があり、ここに前回帝王切開創が認められました。肉眼的に縫合糸中心に前壁がゆがみ、壁が薄くなっている所見があり、瘢痕形成で子宮壁がゆがんでいると考えられることから、ここが帝王切開創と考えられます。

弁護1: 図が斜めでよく判らない (図を裁判長に見せる)

検察: 追加でご確認いたしますが、前回帝王切開創は、子宮割面の写真の下の写真では、どこにあたりますか

証人: 縫合糸は27番

検察: 写真5のピンクの線は、割面を書いてもらえますか。27と31に、前回帝王切開創を書いて頂いたら、いかがでしょうか

弁護: あくまでも推定ですから、推定と文字を入れて頂きたい。

検察: あと若干伺います。証人としましては、子宮筋層のどのあたりまで癒着していましたか

証人: 約二分の一程度です。

検察: それはどのような理由からですか

証人: 癒着胎盤のある部分の筋層が、他のそれに相当する部分の半分程度に薄くなっていました。

検察: 相当する、とは

証人: 先ほど述べたように、子宮の同じ高さの部分です。

検察: 証人がそのような方法をとられた理由についてご説明いただけますか

証人: 先ほど言いましたように、子宮が収縮しているので判定が難しいですが、癒着胎盤があった部位は子宮壁が浸食されているということで、子宮の厚さが減っていると考えられます。

検察: 顕微鏡でみて、ここまで入っているから、何割、という判定で診断はできないのでしょうか

証人: 無理です

検察: それはなぜですか

証人: 胎盤が剥がれた後なので、もとの厚さを推測できません。

検察: 正確には、なぜ、絨毛が残っているとその方法をとることができないのですか

証人: 子宮と胎盤の境界に絨毛が入っているので、もともとの筋層がどこまであったかが、わかりづらい。

検察: 筋層の厚さが不明ということでしょうか

証人: そうです

検察: 子宮筋層がどこまでか、判断方法が適切かどうかについては、いかがでしょうか

証人: 深さについては判定できません。

検察: 警察から鑑定前に検査を依頼された経緯については、いかがですか

証人: 摘出子宮を病理組織的に診断するよう言われました。

検察: それはどこからですか

証人: 県立大野病院からです

検察: それは直接ですか

証人: 病理診断をおこなっている会社が、大野病院と提携していて、そこからの依頼でした。

検察: それはよくあることですか

証人: あります

検察: 時期についてですが、平成16年12月末でしたか

証人: そうです

検察: 診断はいかがでしたか

証人: placenta accreta

検察: 部位は後壁にありましたか、前壁にありましたか

証人: 後壁です

検察: どのような主旨で診断されましたか

証人: placenta accretaは、広義と狭義の定義がありますが、広義で診断いたしました。

検察: 当時の判断では、癒着胎盤の分類はいかがですか

証人: 診断書には診断と所見を書きます。所見に、筋層の浅いところに胎盤組織が入っていると書いています。嵌入胎盤と診断しました。

検察: 診断書を書かれた際にどのような検査をされましたか

証人: まず肉眼で見て、後壁から2箇所、前壁・頚部から1箇所ずつ標本作成した

検察: その結果診断書を出されたのですか

証人: そうです

 (検察官で相談)

検察: 以上です。

裁判長: 追加はよろしいですね

検察2: 一点確認させていただきます。証人に記入していただいた写真3の、赤が胎盤の残存ですね。そこが胎盤の遺残であると、どうやってご確認されましたか

証人: そこが胎盤遺残の理由は、胎盤は血液を多く含むスポンジ状の組織ですので、固定すると黒くなります。拡大でみてもそのような所見になります。

裁判長: どの写真ですか

証人: 4です。残存胎盤と接する子宮壁を見ると、子宮壁は筋肉組織でできているので白く、胎盤は血液が多いスポンジ状の組織なので、黒く見えます。触った感じでも、筋層は硬く、胎盤は柔らかい。

検察2: 写真を示しながらの説明から、判断されたのですか

証人: そうです。

検察2: 以上です。

裁判長: では休憩に入ります。午後は13時45分からです。

【弁護側反対尋問】13:45〜

裁判長: それでは弁護側の反対尋問にうつります。

検察1: 証人に午前中、いくつか図に書き込んでもらいましたが、それを証拠に添付してほしい。

・・番号を振らなければ、、とかやりとり

裁判長: 聞いている範囲ではそのままでいいんじゃないですか。

弁護2: こちらの反対尋問などでも質問もありますから。

弁護1: 53号証として以前お出ししたものについて、今出てきたものだけに限定することでいいですか

裁判長: それでは始めてください。

弁護1: それでは弁護人の水谷から伺います。先生はいつから病理医としてご活動ですか

証人: 昭和59年からです。

弁護1: いままで活動の期間は何年ですか

証人: えっと、23年でしょうか。

弁護1: その間に臨床の現場に立たれたことはありますか

証人: 臨床の現場といいますと病理診断ですか?

弁護1: いや、病理以外の、例えば診断とか患者さんと対面して活動されたことは、ありますか

証人: ありません弁護1: 医師になってから帝王切開に立ち合ったことはありますか証人: ありません弁護1: 同じく医師になって前置胎盤?、癒着胎盤の出産に立ち合ったことは、ありますか

証人: ありません

弁護1: 県立医大の病理学の講座はどのような講座ですか

証人: 病理学第1講座と、第2講座、病院の病理部があります。

弁護1: 大学にある講座は二つですね

証人: そうです

弁護1: それぞれの専門分野は何ですか

証人: 第1講座は主に血液系腫瘍の病理、第2講座は腫瘍です。

弁護1: 先生はどちらの講座に所属していらっしゃいますか

証人: 第2講座です。

弁護1: すると先生のご専門は腫瘍ですか

証人: そうです。

弁護1: 先生は胎盤病理について、専門的に研究されたことがありますか

検察1: 異議あり、専門的にという意義がわかりません。

弁護1: どういうことかわからないですか

検察1: 抽象的です。

弁護2: 医師において専門性かどうかということは、医学の世界において明確です。

裁判長: 異議を棄却します。

弁護2: 先生は、胎盤病理について専門的に研究されたことはありますか

証人: ありません。

弁護1: 日本において、胎盤病理の専門家として思いつく人はいますか

証人: 専門家いうことですか

検察1: 異議あり、質問の意義がわかりません。

弁護2: 関連事項としてお尋ねしています。

裁判長: 棄却します。

弁護1: 日本の胎盤病理の専門家の御名前をあげてください。

証人: いますが、名前を忘れました。

弁護1: 「目で見る胎盤病理」の本は読んだことがありますか

検察1: 異議あり、示す理由がわかりません。

弁護2: 証人が答えた知識について聞いています。

裁判長: 棄却します。

弁護2: この本があるのはご存じですか

証人: はい。

弁護1: この著者の中山雅弘先生が日本の胎盤病理の第一人者であることはご存じですか

検察1: 異議あり、第一人者と認定された上でのことだ。

裁判長: 質問を変えてください。

弁護1: 中山先生が胎盤を良く研究をされていることを知っていますか

証人: 知っています。

弁護1: 証人の、胎盤子宮の鑑定経験について訊ねます。先生は摘出子宮の鑑定経験がどのくらいおありですか

証人: 鑑定か診断かどちらですか

弁護1: 鑑定です。

証人: 鑑定はありません。

弁護1: 癒着胎盤の摘出子宮の鑑定をしたことはありますか

証人: ありません。

弁護1: では病理診断はされたことはありますか

証人: 三例ほどあります。

弁護1: 胎盤は癒着していましたか

証人: 癒着しているものとしていないものがありました。

弁護1: 三例について、いつごろわかりましたか

証人: いつごろというのは・・わかりません。一例目はかなり前です

弁護1: 二番目の診断はいつごろか

証人: 本例です。

弁護1: 三番目の診断はいつでしたか

証人: 詳しい日を忘れました。

弁護1: 本件の前に病理診断をされたのは一例だったのですか

証人: そうです。

弁護1: 癒着の程度はいかがでしたか

証人: はっきりと記憶ありません。

弁護1: 三例目の病理の時期はいつでしたか

証人: 覚えていません。

弁護1: 特定してください。今年ですか、去年ですか。

証人: 今年ではない。一昨年か去年

弁護1: そのときの癒着の程度の記憶にありますか

証人: 三例目はかなり深い嵌入胎盤でした。

弁護1: そうすると、楔入胎盤か嵌入胎盤は、初めて診断されたのですか

証人: え・・・どういうことですか。

弁護1: 楔入胎盤か嵌入胎盤かのこの診断は本件が初めてですね

証人: え、本件? 三例目は陥入胎盤でした

弁護1: 明かな嵌入胎盤でしたか、三例目は

証人: あきらかでした。

弁護1: 楔入胎盤か嵌入胎盤か、微妙な例の診断は本件が初めてでしたか

証人: え・・・1例目の記憶があいまいなので

弁護1: 先生の胎盤の鑑定の方法についてお聞きします。記憶喚起のため、甲6号証を示します。

検察: 異議あり、主旨が不明です。示す理由は何ですか。

弁護2:甲6号証で証人は、肉眼的所見と、組織学的所見を分けています。

裁判長: 示す理由を明かにしてですね

弁護1: 証人が鑑定した方法についてきいています。

検察: そうであれば尋問中で示して欲しい。

(というわけで、とりあえず、示さずに尋問することに)

弁護1: 甲6号証は、先生がつくられたものですね

証人: 甲6号証とは?

弁護1: 記憶喚起のため示します。これが甲第6号証です。この二頁目で、先生は肉眼的、組織学的に分けて鑑定されていますね証人: はい。

弁護1: 分けて鑑定するのが適切かつ必要ですね

証人: はい

弁護1: 通常癒着胎盤の診断について、どんな標本を用いますか

証人: 一般的なことですか? 場合によりますが、子宮と胎盤と両方そなわっているのが一番よい

弁護1: 病院によっては、組織標本を切り出したり、手術時の状況をききながら鑑定していますが、そういう方法をとられないのですか

検察1: 異議あり、前提が確認されていない事柄です

弁護1: そういうことが行われているかどうか証人が知っているかどうかを聞いているだけです。

裁判長: 確認してからにしてください。

弁護1: 場合によっては、臨床医に確認、討議をしながら診断することがありますか

証人: それは日常的な病理診断でそうです。

弁護1: 今回先生はそういう方法をとられましたか

証人: 今回とは・・鑑定のことですか・・していません

弁護1: 平成16年12月29日、検査会社の病理診断において、臨床医とディスカッションしながら診断をされましたか

証人: していません。

弁護1: 鑑定書作成のときはどうでしたか

証人: していません

弁護1: 甲6号のときは

証人: していません

弁護1: 12月29日作成の組織診診断書について伺います。甲36号証(外来カルテを見せようとしたところ、)

検察: 示す理由は

弁護1: 記憶があいまいだからです。

検察: あいまいかどうか尋問で明らかになっていません

裁判長: 質問を変えてください

弁護1: 12月29日診断書を作成しましたね

証人: はい

弁護1: 組織診断のときに、組織診検査依頼票をご覧になりましたか

証人: はい

弁護1: 詳しく思い出せますか

検察: 異議あり、詳しくとは何か

弁護1: 本件子宮摘出の理由について書いてありましたか

証人: はい

弁護1: 思い出せますか

証人: 正確な文章について思い出せません

弁護1: 甲36号証を示します。もう一度、どのような理由で摘出か

証人: これは違うページです。

弁護1: 甲36号証、もう一度伺います、どこに書いてありますか

証人: 警察の経過と所見です、前回41週誘発、分娩停止にて帝王切開、今回平成16年12月17日、36週で帝王切開

弁護1: 子宮摘出の理由はどこですか

証人: 理由は、子宮後壁から下壁に癒着あり、剥離後出血

弁護1: 依頼の主旨は何ですか

証人: 前壁、後壁、子宮下部の癒着胎盤の程度の検索

弁護1: 診断の欄には何と書いてありますか

証人: placenta accreta, uterus resection

弁護1: 日本語訳は

証人: 子宮摘出後、癒着胎盤

弁護1: 診断の欄は、依頼の主旨に対する回答ですね

証人: これは病理診断です

弁護1: はいか、いいえで答えてください。

証人: そうです。

弁護1: 本件で刑事捜査が始まることを想定されていましたか

証人: していませんでした

弁護1: 捜査と無関係に作成されたのですね

証人: そうです

弁護1: どういういきさつでこの鑑定を頼まれましたか

証人: 摘出子宮の診断に関わったということで、富岡警察の刑事より問い合わせがあり、子宮の鑑定をしてくれと依頼がありました。

弁護1: 子宮・胎盤鑑定の専門家という主旨で先生が頼まれたのですか

検察: 異議あり、それは証人は認識していない

裁判長: 質問を変えてください

弁護1: そういう話はありますか、専門的な研究をされたことがないという証人に対して、病理診断の専門家として依頼してきたわけでないですよね。

検察: 異議あり、証人が知らないことです

弁護1: 経緯は、警察から説明があったとのことなので聞いているはずです

裁判長: だったらそういう訊き方をしてください

弁護1: 証人が専門家であることで頼まれましたか

証人: 病理診断の専門家として頼まれました

弁護1: 胎盤診断の専門家としてですか

証人: そういう話はなかったかもしれません。記憶がありません。

弁護1: 鑑定の際に警察から提供された資料はどのような資料か、全て挙げてください。

証人: はっきりした記憶はないのですが、

検察: 異議あり、質問の主旨が不明です

弁護2: それはこちらが考えることだ

裁判長: 主旨不明の異議に対して回答は

弁護1: 明確だと考える

裁判長: 異議棄却します

証人: 何をという記憶はありません

弁護1: 何をみて鑑定をされましたか

証人: 子宮と、依頼書です。

弁護1: その二点のみですか

証人: 何かあったかもしれないが、認識はありません

弁護1: 胎盤の写真はありましたか

証人: ・・・(と、長い沈黙のあと)わかりません。

弁護1: カルテは提供されましたか

証人: ・・・いいえ

弁護1: 癒着胎盤の鑑定に、胎盤の状態は鑑定に有用ですか

証人: 胎盤そのものですか

弁護1: 情報です

証人: 情報は有用だと思います。

弁護1: どうして有用ですか

証人: ・・・・。

弁護1: どうして有用ですか

検察2: 一般論か

弁護1: 一般論だ。

検察3: 情報とは、写真なのか、何なのか、明確にして聞いてくれ

弁護1: 胎盤そのものは示されましたか

証人: いいえ。

弁護1: 胎盤の写真は示されましたか

証人: 覚えていません

弁護1: では示します

裁判長: 何をですか

弁護1: 胎盤の写真です。弁36号証

検察: 説明の主旨がわかりません

裁判長: 主旨がわかるように説明してください

弁護1: 記憶喚起のため示します。(胎盤の写真を示し)、こんな写真をみた記憶はありますか

証人: こんな大きな写真を見た記憶はありません

弁護1: 小さな写真は?

証人: ・・・うーん。

弁護1: 記憶喚起のため、小さな写真を示します。カルテ添付の、15号証添付の胎盤の写真を示します。見た記憶はありますか

証人: ・・・よく覚えていないです。当時の記憶はあいまいです。わかりません。

弁護1: 胎盤の写真は鑑定に有用ですか

証人: ・・・えー、まあ、有用だと思います。

弁護1: 癒着の範囲の特定に有用ですか

証人: 有用であることもある

弁護1: 本件はいかがですか

証人: あれば有用だったと思う。

弁護1: 先生は胎盤の通常の大きさをご存じですか

証人: 直径20cm程度です

弁護1: 本件の胎盤の大きさはご存じですか

証人: 27cm程度と聞いております

弁護1: 長い径が27〜28cmですね。短い長さはどれくらいですか

証人: 25cmくらい

弁護1: このような写真を見ればどのようなことがわかりますか

検察: 質問が抽象的です

裁判長: 質問を変えてください

弁護1: 本件胎盤は普通に比べて大きいですか

証人: やや大きい

弁護1: やや、ですか

証人: 大きい

弁護1: 他にどういうことが

検察: どういうって、

裁判長: 写真を示すなら、写真にそって、具体的に聞かないと

弁護1: 写真を見て、大きさのほかに、分葉胎盤とわかりますか

証人: 今ちらっと見ただけなので

検察: 異議あり、主尋問にない内容です

弁護1: 胎盤は鑑定に有用だと証人が言っています

裁判長: 異議を棄却します

弁護1: 弁37号、ではなく弁39号証を、先ほどの続きですが、分葉胎盤だと

裁判長: 原本を示してください

弁護1: 分葉胎盤だということはわかりますか

検察1: そうかどうか、事実がわからないと

弁護1: そうかどうかも含めて聞いています

裁判長: 検事のように質問しなおすように

弁護1: どういう分類ですか

検察: 写真を見ればわかるのか

弁護1: 写真からは、胎盤はどのような分類になりますか

証人: 写真からははっきり診断できません

弁護1: 分葉胎盤の可能性の診断ができますか

証人: わかりません

弁護1: あるいは、膜様胎盤という可能性は

証人: それは母体側を見ないと

弁護1: 依頼書に膜様胎盤だとあれば、可能性についてはわかりますか

証人: これではわかりません

検察: 異議あり

裁判長: 質問を変えてください

弁護1: 弁37号証、

検察: 示す理由が明かにされてません

弁護1: 母体面の写真を見れば、わかる可能性はありますか

証人: わかりません、参考にはなるかもしれません

弁護1: 分葉胎盤の可能性は

証人: 写真だけではわかりません。

弁護1: 、膜様胎盤の可能性は

証人: 膜様胎盤は絨毛が母体側に露出しているものという知識だが、この写真はそうではないので膜様胎盤とは考えられない

弁護: 膜様胎盤の根拠は

証人: 一般的なことか?

弁護1: 分葉胎盤の可能性は

証人: 写真からは判定できない

弁護1: 先生はこういう胎盤の鑑定をされたことがあるか

証人: ありません

弁護1: 病理診断の経験はありますか

証人: ありません

弁護1: 見たことはありますか

証人: 実際に、ということですか

弁護1: そうです

証人: 実際にはありませんが、専門書の図解などでは見たことがあります。

弁護1: 専門書でしかみた ことがないですね

裁判長: 質問を変えてください。異議で時間を取られるので、正確にきっちり言ってください。

弁護1: 写真をみて、脱落膜か胎盤についてあるかどうか、わかりますか

証人: 胎盤側からみて、できないと言われております。

弁護1: 母体面から見てわかりますか

証人: 肉眼的には脱落膜があるかないかは不可能です。

弁護1: 仮に胎盤をメスで切ったとすれば、わかりますか

証人: ・・・

検察: 異議、写真をみて抽象的な尋問です。切ったとすればとか、仮定の質問ばかりである。

弁護1: 本件では、証人が、「胎盤を切った」と鑑定していますので質問しております。

裁判長: 仮定の質問は良いですが、きっちり条件を言わないと答えられない。

弁護1: 今回の子宮切開部分の下に、胎盤があったと考えていましたか

証人: 帝王切開部分ですか

弁護1; そうです。

証人: 午前中に言いましたが、帝王切開部分に癒着胎盤はありませんでした。

弁護1: 胎盤があったかどうかはいかがですか

証人: あったかどうかは、わかりません。ないと思う。

弁護1: 甲8号証には

裁判長: 証人にはわからないですよ。

弁護1: 証人の供述調書において、「写真7に示すとおり、子宮切開時に胎盤が一緒に切られているのは明か」とあるが、そう発言されたご記憶はありますか

証人: そう・・記録にあるなら・・

弁護1: では写真を見れば、胎盤を切ったかどうか、わかりますか

証人: そう写っていれば

弁護1: 弁37号証を示します。

検察: 証人の発言の正確性を示すためなのか、明示すべき

裁判長: 示す理由は

弁護1: えっと・・はい、では、質問を変更。平成16年12月29日、検査をおこなってから鑑定まで5ヶ月経過していますが、本件の子宮の保管は適切でしたか

証人: ホルマリンに漬かった状態で、

弁護1: どのように保管されていましたか

証人: 検査会社の組織診科のバケツにつかっていました。

弁護1: この検体だけでしたか

証人: 違います。

弁護1: 温度・湿度管理は?

証人: ホルマリン固定されているので、温度・湿度管理は不要。

弁護1: 何名分の臓器が一緒にバケツに入っていましたか

証人: おそらく20名です

弁護1: 子宮は本件だけでしたか

証人: 子宮は一件のみだったと思います。

弁護1: 子宮はビニールに入っていましたか

証人: いいえ

弁護1: バケツから取り出すときの作業についておききします。

証人: バケツから全て取り出し、復元できるものをすべて復元しました。

弁護1: 先生のあつかわれたものだけでしたか

証人: 他のものもありました。

弁護1: 切片が並べられていましたが、本件のすべての子宮がそろったものですか

証人: 一部欠けていると思います。

弁護1: プレパラート作成手順について、説明いただけますか

証人: 手順・・ですか? 子宮が最後の診断時に6分割されていたので、さらに2分割して8分割にし、断片すべて観察できるようプレパラート切片を切り出しました。

弁護1: 組織診検査のときには6分割、プレパラートは何枚作成しましたか

証人: 4枚です。

弁護1: 警察から依頼の時にはプレパラートは何枚ですか

証人: 6分割から2分割追加しました。プレパラートは39個です。

弁護1: それ以外につくったものはありますか

証人: ありません

弁護1: プレパラート1枚あたり、何枚くらい写真を撮りましたか

証人: 色々ですが・・・5〜6枚は撮っています。

弁護1: 39枚かける5,6枚の分だけですか

証人: いえ、癒着が確認されたプレパラートについて写真をとりました。

弁護1: プレパラートの大きさは

証人: ガラス板の大きさは6cm×3cm程度、組織片の大きさは、約2.5cm×2.5cm、長さ2.5cm、幅2〜2.5cmです。

弁護1: 組織片は子宮片から直接切り出すのですか

証人: いろんな過程があります。子宮から、5mm程度の組織を切り出して、パラフィン包埋、できたものがパラフィンブロックで、3μm〜5μmに薄く切り、ヘマトキシリン・エオジンという染色をして、顕微鏡で観察できるようにしたものをプレパラートといいます。

弁護1: 切り出しは誰がしましたか

証人: 私です。

弁護1: パラフィン包埋は、

証人: 組織診課です

弁護1: パラフィンブロックと、プレパラートの観察切片の面積は?  質問を撤回します。

弁護人: 複雑な工程で、証人がおこなったのはプレパラートを作るまでの間の切り出しのみですね。では工程の確認はしていませんね。

証人: いえ、プレパラートを見れば確認できます。

弁護1: 実際のところを確認されていませんね

証人: オートメーション化されていますので、確認している人はいません

弁護1: ゴミなどがまぎれても確認できませんね

証人: プレパラートを見れば明らかです。

弁護1: 複雑な過程で、子宮組織が挫滅することがありますか

証人: ないとは言えないが、かなり少ない

弁護1: 組織挫滅の可能性が低い理由はなんですか

証人: 作成の中で挫滅しない精度管理を、組織診全てでやっています。

弁護1: 鑑定書がつくられた中で癒着のない筋層に比較して約半分という根拠は

証人: 肉眼的に鑑定し、胎盤付着部位の子宮壁の厚さが半分くらいだったということ

弁護1: 絨毛陥入の程度がその観察でわかりますか

証人: わかりません。

弁護1: 今おっしゃった、半分というのは、想定にすぎないということですね

証人: 午前中にも話しましたが、収縮不良でうすいままという因子もあるので、あくまで推定です。

弁護1: 胎盤が子宮に浸食というが、浸食はどうなるのか

証人: ・・

弁護1: どうして浸食されるのですか

証人: 色々な説があるが、あまりはっきりわかっていません

弁護1: ひとつ説明してください

証人: ひとつは、絨毛の栄養膜細胞が蛋白を融解し筋組織を融解する

弁護1: それが二分の一にまで達するのか

検察: 仮説として一つあげたものについて説明したまでです

弁護1: そういうことがあるかどうか、確認している

裁判官: その説によれば、という過程をいってください

弁護1: 栄養膜細胞が子宮筋を溶かすという過程について、二分の一にまで入ることがありますか

証人: 私はあまり完全に信じているわけではありません

弁護1; 先生は、筋層を二分の一まで溶かしたとおっしゃったが

検察: 機序を議論しても仕方がない。証人は子宮収縮不良もあるといっています

弁護1; 絨毛が二分の一にまで入っているという鑑定について質問しています

裁判長: 続けてください

弁護1: 二分の一まで絨毛を溶かすという説ですね

証人: はい

弁護1: どこに書いてありますか

証人: Foxが書いた、・・・placental pathology、pathology関係の本です。

弁護1: そこには、栄養膜細胞が子宮筋層を二分の一溶かすと書いてあるのですか

証人: 溶かすという学説は適切でないかもしれないと私は考えています。筋層が失われるのは確かです。

弁護1: 鑑定書をおつくりになる際に、写真を何点か追加、組織の写真を添付されていますね。写真7でいうと、何番の組織を拡大されたのですか

検察: 特定できない質問です

裁判長: 質問を変えてください。

弁護1: 写真6は、どの部分からとった標本を鑑定したかわかりますか

証人; 後壁です

弁護1: どの場所からとっていましたか

弁護1: 鑑定書に記載していますか

証人: しておりません

弁護1: どうして記載してないんですか

証人: 写真をとった標本が鑑定書で作成しているものではないからです

弁護1: これは何倍の写真ですか

証人: 対物20倍と思う。

弁護1: 鑑定書には書かれていませんね。通常書かないのですか

証人: 鑑定書をこれまで作成したことがないので、普通かどうかはわかりません。

弁護1: 鑑定書を書いたことがないのですか。写真は何割くらいの範囲を撮影したものですか

検察: 写真をみないで、

弁護1: プレパラートがあって、そのうち何%を撮影されたかという質問ですよ

裁判長: 続けてください

弁護1: プレパラートの何割を撮影しましたか

証人: 計算しないとわからない。微少な部分なので、1%以下でしょう。筋層を含めた部分がプレパラートになっています。長さのうちの5%、面積の1%程度です。

弁護1: 写真6について、写真として、実際の寸法で何ミクロンですか

証人: 計測していないので不明です

弁護1: およそはわかりませんか

証人: 対物レンズが約20倍ということだけで、その写真を拡大しているので、わかりません

弁護1: 細胞をみて、およそ何μmと特定できますか

証人: 写真を見ただけでは不可能です。

弁護1: 栄養細胞1ヶは何μmですか

証人: 写真6で、1ヶの栄養膜の大きさを示したいが

検察: 口頭で、ですか?

裁判長: 映してください。

弁護1: 栄養膜細胞一個は

証人: これです

弁護1: この栄養細胞一個のコピーを測ってください。何μmですか

証人: バリエーションはあるが、20から 30μmです

裁判長: 書かないで、後でわかりますか

弁護1: 書きましょう。栄養膜細胞・・

弁護1:写真の右・左・下はどうなっていますか。

証人:標本が続いている。

弁護1: 甲63号証について、証人一般論、後に鑑定の結果が再現性のあるようなことを試みたのですか

検察: 質問がわかりにくい

裁判長: ちゃんときいてください

弁護1: 後から再現性があるような工夫をされないのですか

証人: しているつもりです

弁護1: でも、どこからとった標本かわからないし、倍率も書いていない。再現性があると思えないが、どうしてですか

検察: 異議あり

裁判長: 質問を変えてください

弁護1: placenta accretaにふりがなをふったのを覚えていますか

証人: はい

弁護1: 正しいですか

証人: 間違っています。

弁護2: 種川から伺います。先生は追加の報告書を作成されましたね

証人: はい

弁護2: それが午前中に示されたものですね

証人: はい

検察2: 違うと思います

裁判長: じゃ、やり直して

弁護2: この写真は甲53号証に添付されたものですか

裁判長: 示さないとわからないですね

弁護2: 平成19年1月22日に回答書を作成されましたねこれに添付されたのが午前中の写真、平成19年1月22日、追加の説明書を作成されましたね。

証人: はい。

弁護2: 標本はいつ作成されましたか

証人: 鑑定の際にです。

弁護2: 照会をうけてから新しくプレパラートを作成されたものですか

証人: いいえ。

弁護2: 写真のプレパラートはいつ作成したのですか

証人: 平成17年6月27日作成の鑑定書作成のときのプレパラートを使いました。

弁護2: 鑑定書作成のとき、全ての部分を作成したと言われたが。

証人: 子宮を8分割し、すべての見えている部位の出ている面をできるだけ見られるように標本を作製した。

弁護2: 一つの切片か、一つのブロックから

証人: そうです。

弁護2: 切片は、ブロック全体のどのくらいですか

検察: 異議あり、面積か体積か明確でない。

弁護2: 面積で

証人: 切片全体が見えるように

裁判長: 切片というのは共通ですか

弁護2: 39に分割し、一つのブロックを切片にしたのですね

証人: はい

弁護2: 一つのブロックから、パラフィンブロックですね

証人: はい

弁護2: ひとつのパラフィンで、切片の厚さは

証人: 切片の厚さは3〜5μmです

弁護2: 写真7,10番、一つのブロックから、パラフィンブロックはどのようにそぐのですか

証人: 水平に5μmの厚さで切ります

弁護2: 10番のブロックが全て入ったパラフィンブロックができるのですか。中間のプレパラートは作成されてない。10番のブロックの大きさは

証人: 2.5〜3.1cm×2.5〜3.1×1〜1.5cm

弁護2: パラフィンブロックは10番の1面のみですか

証人: はい

弁護2: それでは癒着の根拠について伺います。午前中は癒着の定義として、脱落膜がないとの定義に従って下していましたが、

検察: 追加は証拠採用されていません

弁護2: 撤回します

弁護2: 脱落膜の有無の判定はどのように

証人: 見て。定義は明確にあるので、それに従った。

弁護2: 鑑定書に対する追加説明書ではどのように書いたかは?

証人: 同じだと思う。

弁護2: 定義の中に、栄養膜細胞またはフィブリンを介して絨毛膜と子宮筋層が接していても、癒着胎盤の診断を妨げない?

証人: そう。

弁護2:脱落膜の判断は?

証人: 脱落膜細胞がないこと。

弁護2: 脱落膜がないことが、癒着胎盤の定義ですか

証人: ないことが、一つの条件で、絨毛が子宮筋層に接している、

弁護2: 脱落膜と栄養膜細胞と区別は難しいと思うが、先生は今は見分けがつくのですか

証人: 今はほぼつく

弁護2: 写真をみれば判定できますか。53号証の添付の写真を示します。午前中のもの。まず、標本9の写真で、絨毛のある部分はどこですか

証人: 丸い形をした・・

裁判長: 記録に残らないので、

検察: 書き込んだ物を使うか。午前中のものと色が混じる。

弁護2: XX-9を示します。絨毛について、書き込んでください。栄養膜細胞を書いてください。この色の薄いところは?

証人: これはフィブリンです。

弁護2: XX-10も同様に書き込んでください。(証人が絨毛と書いたところについて)ここはなぜ離れているのか。

証人: 枝分かれした構造なので。

弁護2: 組織の挫滅で離れているのでは?

証人: 通常離れたものがこういう風になるのはまれなので、つながったものと考えられる。

弁護2: 下の部分は脱落膜ではないですか

証人: 違います。脱落膜細胞はない。栄養膜細胞だと思う。

弁護2: ○のところ(栄養膜細胞のところ)2箇所で細胞の核の大きさがだいぶ異なるようだが?

証人: そう違わないと思う。いずれも栄養膜細胞だと思う。

弁護2: XX-18で、絨毛組織はどうですか

弁護2: 絨毛繊維は、一ヶ所しかないですね

証人: はい。

弁護2: 絨毛1本の太さはどれくらいですか

証人: 先端と根元で違う

弁護2:これは根元ですか、先端ですか。

証人: わからない。

弁護2: 先端の太さはどれくらいか。

証人: 300μmくらいか。

弁護2: 根元の太さは

証人: それより少し細い。

弁護2: 癒着の程度は

証人: 嵌入です

弁護2: どうしてですか

証人: 筋層に入っている

弁護2: 18のブロックに一ヶ所あっても、嵌入と判断されるのですか

検察: 異議あり、パラフィンの標本の中で

弁護1: 一ヶ所でも嵌入ですか。

証人: 18番のブロックが全てではないが、定義上そうなる。

弁護2: XX-34を示します。青っぽいところは何ですか。

証人: 組織の挫滅が強いところ。

弁護2: 標本のダメージが激しいところに線をひいてください。

証人: このあたり難しい

弁護2: 挫滅が激しい標本でも、癒着の判断をされるのですか

証人: 脱落膜をみます。栄養膜細胞がこの部分で、ここについては挫滅がありません。絨毛と筋層が接していたので少なくとも楔入胎盤と判断した。

弁護2: XX-27を示します。縫合糸はどこですか。フィブリンはどこですか

弁護2: 先ほどから本件で癒着の場所ではなくそもそも胎盤がどこにあったかはどうですか。胎盤があった場所は指摘できますか

証人: できません。脱落膜で胎盤がはがれるので、子宮側には胎盤が残らないので、胎盤がどこかは不明です。

弁護2: 後壁の癒着部分と前壁の癒着部分はつながっているのですか

証人: そう思います

弁護2: どうつながっていたのですか

証人: 正常の胎盤は推定できない。癒着の範囲だと、子宮口をまたぐように存在。

弁護2: 後壁から前壁まで存在したと

証人: そう思う

弁護2: 帝王切開の切開はどの部位ですか

証人: 右下部です

弁護2: 今の記録で、後壁から前壁まで、切開は29,30の下ですね。切開部分も胎盤で覆われていましたか

証人: そうとは限らない

弁護2: どうなっていたと考えますか。

証人: 前壁では左側、左側側壁をまたいでいた。右前壁下部に癒着胎盤はなかった。

弁護2: 癒着の範囲を示しましたが、左側は前壁から、右側は癒着は、右下には認められていませんが・・切開した部分だけ胎盤がなかったのか

検察: 異議、要約してください

裁判長: 言い換えてください

弁護2: 右上側壁をとおって、前壁、子宮口を覆っていたのですか

証人: 必ずしも子宮口をすべて覆うものではありません。全部とは言わないが、一部は覆っていたと思う。

弁護2: 午前中の癒着部位を示します。胎盤の位置は

証人: 癒着の部位は示しましたが

弁護2: 前回帝王切開まで示されたので、示して頂けるかと

検察1: 前提が違う

弁護2: 癒着部に帝王切開創はかかっていないと思うが、胎盤は楕円形ですね

証人: いや子宮は胎盤娩出後に収縮し形が変わるのでわかりません

弁護2: 本件の胎盤は楕円形ですよね

証人: 写真を見る限りではそうです

弁護2: この形で付着した胎盤は楕円形ではないですか

検察: 異議あり、証人が知らないことをきいています。証人は子宮収縮すると言っています

弁護2: 収縮は癒着部位以外は良好なので

裁判長: 答えられる範囲で答えてください

証人: 収縮があるので、体部と頚部かでも違う

弁護2: 胎盤は収縮しないんですよね

証人: しないでしょうね

弁護2: 胎盤の形状と子宮の収縮は関係ありますか

証人: ・・・

検察: ここで証人は収縮した後の子宮から癒着範囲を推測している

弁護2:絨毛があったところに胎盤があり、でも一体となっていたことがあきらかなのだから

検察: 証人は前壁と後壁の付着が連続しているかどうかわからないと言っているので

裁判長: 異議の理由か

検察: 補充です

裁判長:答えにくい質問と思うので、もっと端的に

弁護2: 胎盤の収縮と子宮収縮は無関係ですか

証人: はがれた胎盤は無関係です

弁護3: 平岩から訊ねます。楔入、嵌入、穿通の三種類ありますが、癒着については諸説勉強されたというお話しでしたね

証人: はい

弁護3: 6月29日鑑定書を作成されましたが、そのとき、三種類のうち、楔入胎盤について、「きつにゅう」とフリガナをうたれていますね

証人: はい

弁護3: そのときは十分な知識をお持ちでなかったのですか

証人: いいえ、タダの誤記です

弁護3: 重大な書類を読み返さなかったのですか

証人: したが、間違えました

弁護3: 捜査照会があってから、詳しく勉強されたことですか

証人: 見返したということです。鑑定書作成の際にできるだけの文献を集めました。勉強は常にしているし、文献も常に集めています。

弁護3: 詳しく勉強したのは、いつのことですか

証人: 日時はわかりません。鑑定書作成後です

弁護3: 臓器の保管について、復元できるものを収集したと言われましたが、バケツの中に臓器を入れたのはいつですか

証人: 私ではないのでいつかはっきりわかりません

弁護3: では取り出した、収集したときには何ブロックにわかれていたのですか

証人: 6分割です

弁護3: 一番最初は4つではありませんでしたか

証人: いいえ6分割です

弁護3: 6分割を今のように取り出したのはいつですか

証人: 鑑定書依頼の1〜2ヶ月前です。

弁護3: 6分割入れた時期は不明で、取り出したのは鑑定書の時期、では取り出すまでの期間は

証人: 最初がわからないのでわかりません

弁護3: 他にも臓器が入っていたというが、どのような臓器ですか

証人: 全部覚えていませんが、胃、大腸など。

弁護3: 子宮拡大図を見せてください

検察: 主旨を明確に

弁護3: 癒着の鑑定書について聞いています

弁護3: 子宮割面で、XX-27のところ、ずっと線をひかれています。写真は27のどこですか

証人: AとBは場所が違う。Aはこのあたりで、Bはかなり近接しているので、殆ど同じような位置。

弁護3: 写真がどこか示せないとなると、癒着胎盤がここ、と示せないので、再現性がないことになりますね。27は癒着あり、と線をひかれていますが、示したのは、点ですよね、ごく一部を示したのみですね。どこに根拠があるのですか。27番の根拠はどこにあるのですか。線を全部にひいていますが、この線の根拠は推定ですか

証人: 推定ではありません

弁護3: ずっと写真にはあったのですか。なぜそれを出さないのですか

検察: 異議あり、証人の判断事項ではありません

弁護3: No4に線をひいている。でも、No4は癒着は、長い線のうちのどこを指すのですか、4の写真は、一点のどこかですね。他の部分は顕微鏡でのぞいたら、あった、と、そういうことですか

証人: そうです

弁護3: それでは説明になっていないのではないですか

検察: 証人に聞くには抽象的です

弁護3: 絨毛をずっと顕微鏡で調べていたということですか

証人: そうです

弁護3: 絨毛の判断は肉眼では無理ですか

証人: 何μmの世界です。

弁護3: 0.5μmの世界でしょ。実際はもっと微少なものではないんですか。そういうものが、顕微鏡でみたら、接していたりしたと。被告人は術前超音波検査をしていますが、絨毛は見えますか

検察: 異議あり、証人は経験していません

弁護3: 証人は超音波検査で絨毛が見える見えないがわかると思いますか

証人: プローベ、超音波で観察できるのは、胎盤組織という大きいmassであり絨毛一つ一つは見えない

弁護3: 絨毛があるかないかわからんということですね

証人: はい

弁護4: 現在福島県立医大第二病理において、籍をおかれる医師は何人ですか

証人 現在6人です

弁護4: 本件鑑定書の作成時は何人ですか

証人: 7人です

弁護4: それぞれの専門領域に、子宮・胎盤病理の研究者はいましたか

証人: いいえ、専門的に研究しているものはいない。

弁護4: 県立医大病理部には、摘出妊娠子宮、あるいは子宮胎盤病理の依頼は、本件前には何件でしたか

証人: 子宮内容物も含めてですか?

弁護4: 子宮胎盤の病理を含めて何件ですか

証人: 千件くらい

弁護4: 年間ですか

証人: 流産の子宮内容物があるので、千件くらいです

弁護4: 妊娠子宮を癒着胎盤を理由に摘出というのは先生の経験では三例ですが、福島県立医大の経験は

証人: 資料がないので不明です

弁護4: 先ほど先生は、目を肥やすため10例見たとのことですが、10例は病院でですか

証人: 病院でです

弁護4: 10例見たのは、平成17年6月に警察の鑑定書依頼のときに参考にしたのですか

証人: はい

弁護4: 他の病理医が子宮胎盤の鑑定をしたか、相談しましたか

証人: しています

弁護4: 鑑定書作成のアドバイスを受けましたか

証人: 受けました

弁護4: 診断書か、鑑定書か。先生の意見ではないものが入っていますか

証人: 基本的には一致

弁護4: あの子宮は胎盤摘出後短時間で収縮したと言われたが、どのくらいの時間で収縮しましたか

証人: 娩出後摘出の時間の間にこういうことがある

弁護4: 何分か、先生の言っている時間は

証人: 娩出後、ほぼ一時間

弁護4: これが、短時間の意味ですか

証人: はい

弁護4: 34の標本の中で挫滅の部分があったことは覚えていますか

証人: はい

弁護4: できた部分は何ですか

証人: 推定でしかないが、胎盤を剥離したことです

弁護4: 手術中に挫滅ということですか

証人: 慢性でなく急性のものと考えるので、おそらく。

弁護4: 標本作成時のアーチファクトの可能性は

証人: 標本作成はあまり考えられません。

弁護4: 理由は

証人: 通常固定後標本作成する間に核が引き伸ばされるようなことはありえない

弁護4: 画像の証言で、絨毛のそばに栄養膜細胞があり、脱落膜がないと言われましたが、栄養膜細胞の有無について、栄養膜細胞は、通常妊娠時には絨毛との間に入り込んでいますが、脱落膜細胞はそれしかないのですか

証人: 栄養膜細胞の有無は癒着胎盤と関係ない。栄養膜細胞と脱落膜細胞は似ており、鑑別が難しい。脱落膜細胞には、栄養膜細胞が入ります。

弁護4: どのような栄養膜細胞ですか。

証人: 中間型栄養膜細胞です。

弁護4: 絨毛性の栄養膜細胞ですか、非絨毛性の栄養膜細胞ですか

証人: 絨毛が着床のときに母体側に入ってくると理解しています

弁護4: 栄養膜細胞が絨毛に発達していく中で絨毛に発達しないものですね。栄養膜細胞とは何を言っているか確認しました。 鑑定書の確認ですが、説明で、4頁のあたり、「胎盤剥離後の子宮には通常・・」とありますが、これは正常ということですか

証人: そうです。

弁護4: 児の娩出後、胎盤を娩出した後で、子宮には卵膜は残らないのですか

証人: 一部残る可能性があります

弁護4: 平成16年12月19日、証人は組織検査依頼に基づいて病理診断をおこない、所見、「子宮後壁に胎盤の付着を認める」、とありますが、絨毛が接しているということですか、そうなら、癒着ということではないですか。何故癒着を言わず付着というのですか

証人: 状態を表すものです。診断を表してはいません。

弁護4: 筋層の浅層とは、標本上、子宮筋の上の部分か。子宮筋層の1/2を含むか、含まないか。

証人: 最初の診断はどの程度か呈示なく、全体の深さがわかりません

弁護4: 依頼票は、依頼の主旨として、癒着胎盤の程度を訊ねていますね。その答えがそこに書かれているのですね

証人: はい

弁護4: この段階で先生は、前壁には癒着の記載がないが、認識はなかったのですか、あったが、書かなかったのですか

証人: ありませんでした

弁護4: 回答書の中で、6月の鑑定書より癒着の範囲が広がったと

証人: そうだと思います

弁護4: 鑑定書によれば、前壁にも癒着があるよう記載されていますね

証人: はい

弁護4: 病理診断といいながら、16年の病理診断を病理鑑定と、今年1月の鑑定結果が一貫していないですね。違うことは認めますね

証人: はい

弁護4: 再度鑑定すると、また変わりますか

検察: 異議あり、仮定の質問です

弁護4: 撤回いたします

検察1: 質問が長いようです

弁護4: 検察の質問も30分超過したものですから、すいません。

弁護3: 癒着の部位が広がったことについて、証人は二つの画像で、プレパラートの一つに認めた場合その部位を癒着ありと判断したという推定のために、広がったのではないですか

証人: そうではない。そのように推定したのは、最初の鑑定書。

弁護3: 私が今読んでいたのは追加説明書の一部ですよ。27番に全部に線をひいてあるが、示された癒着は一点の病理だけ、根拠は見たらあったんだと。しかし証人の文書では、一ヶ所にあれば、全体にありとして推定していますよね。

証人: 私の記憶ではそれは鑑定書なんですが

弁護3: 2月19日の鑑定書に対する追加説明書として署名押印があります。説明書の中にあるのですが。

証人: 見ても良いですか

弁護3: でも、検察が異議を言うでしょうから

裁判長: じゃ、どうぞ

弁護3: 平成19年2月19日、プレパラートの少なくとも一部に認めた場合・・・と書いてありますね

証人: はい

弁護3: 終わります。

弁護1: 絨毛の発達について、受精卵が栄養膜合胞体層が、絨毛膜ですね

証人: はい

弁護1: 着床後、絨毛膜が胎盤を形成し、着床部以外の絨毛膜が退化して当初発達した絨毛構造が消褪していき、卵膜となる、滑平絨毛膜とも呼ばれるのですが、卵膜に絨毛が残ることがありますか

証人: はい

弁護1: このことが記載された文献がありますか

証人: あります

弁護5: 最初の診断で、作成プレパラートの場所はどこですか

証人: 写真をとっていなかったので、推定でしかありませんが、後壁左より

弁護5: 甲6号証の切片で特定できますか

証人: 番号がわかりません

弁護5: このあたりで教えてください。ご記憶の明確のために甲6号証の7番、

証人: この断面で、Bの3番の切片がはなれている。標本の復元であり切り出し前に比べてBが少し薄くなっている。前の診断のときに標本作成した部位であろう。

弁護5: 4つの部位なので、他はどこからですか

証人: わかりません

弁護5: 後壁2,前壁1.頚部1という話は、うち一ヶ所と推定とのことか

証人: はい

検察1: 鈴木より伺います。平成16年12月の病理診断の際には、標本作製3つ、他の子宮片6つの中で、3以外のところからつくったという記憶はありますか

証人: 記録がないので、形からみて、3だろうと推測しています

検察1: placenta accretaと残りの診断について、平成17年の鑑定で鑑定書が、病理診断を鑑定したときと結果が変わった理由はなんですか

証人: 結果が変わるものではないが、診断のときに切り出した部位が小さかったことから、癒着のないところが切り出された。病理診断時には4ヶ所で、鑑定時には39ヶ所なので。

検察1: 鑑定のとき、子宮を復元したとのことですが、他の臓器も一緒に入っていたと。他に子宮はありましたか

証人: 全部ひっくり返して出しましたが、子宮はありませんでした

検察1: 病理のときにみた形状や大きさと記憶にあっていましたか

証人: あいました

検察1: その時点で子宮は6分割だったのですね。可能なかぎり復元したということでしたが、欠損がありましたか

証人: 完全に復元でなく、一部前壁下部でないところがありました。

検察1: 甲7、写真で示して、欠損箇所は?

証人: Bの切片の下部34の下の部分、頚部は探せませんでした。

検察1: その他については、復元され、欠損部位はなかったのですね

証人: ほぼ復元できました

検察1: 先ほど標本作製のはなしで、パラフィンブロック作成は、検査会社ですね。

証人: はい。

検察1: どれくらいの数つくられていますか

証人: 日によって変わるが、毎日の集計は、50〜100

検察1: オートメーションということだが、機械でか

証人: そうです

検察1: 証人がこれまでここで作成したプレパラートでみて、瑕疵が生じた物がありましたか

証人: 割面とパラフィンは同じか見比べて確認している。

検察1: 鑑定書のとき、作成を警察に依頼されたが、子宮胎盤の存在については言われたか

証人: 胎盤は遺棄されてないと聞いた

検察1: 証人の鑑定事項で、膜様、異状胎盤の鑑定はどういう考えでしたか

証人: 依頼がなかったので、認識していなかった。胎盤剥離された子宮から形状の異状を推定できない。

検察1: 甲6号証で、組織像、標本写真ですが、これがどこと、説明を添付されたのですか

証人: 癒着、嵌入の異状例として添付しました

検察1: その際ですね・・変更します

検察1: 鑑定の時点では、癒着であるかどうか、ブロックで認められれば癒着と推定で鑑定されましたね。子宮割面について赤で記した。その後検察の依頼で、再鑑定をし、私が申した方法で鑑定しましたか

証人: どちらですか

検察: 鑑定では、一部認めればブロック全体が癒着ですよね

証人: はい

検察: 午前中書いた子宮後壁に記入した癒着について、どのように記載しましたか

証人; 可能な限り厳密にしました。顕微鏡でみても分けて考えました

検察1: 癒着胎盤の範囲拡大について、鑑定時に癒着胎盤が認められる標本数が増えたということですか

証人: 7つほど増えたということです

検察1: 2月19日の追加意見書には、プレパラート一部の像はブロックに癒着と全体を見たことですか、標本にですか

弁護: 異議、標本全体に、と明確に書いてあります

検察: どのような意図でか訊いている

弁護: こういう文書に明確に書いてある

裁判長: 質問を変えてください

検察: プレパラートの一部に見たのを、標本全体としたのは証人としてどのような主旨ですか

証人: 胎盤の癒着は連続という推測のもと、切片の領域には癒着と判定した

検察: 午前中の範囲の特定については、一部を全体とみなすのか、顕微鏡でみて特定したのか

弁護3: 異議、重複です

検察: 午前中の特定についてです

裁判長: 続けて

検察1: 午前中に、癒着範囲を示してもらったが、一部ブロックの癒着を認めたところを全部癒着とみなしたのか、顕微鏡でみて

弁護3: 顕微鏡でブロックを見ることはありえない、見たのはプレパラートです

検察1; 正確にはプレパラート

裁判長: そういう意味では重複ですね

検察1: 質問を、ブロックをプレパラートにおきかえて

証人: 追加説明書には、癒着範囲を文章で書きました。切片すべてに癒着ありとみなして、推定し回答しました。その結果広い範囲に癒着となった。今日肉眼的に見えた部分のmappingは必ずしも一致していない。今日のmappingは、切片の中のどこに癒着があるか、より詳細にみて書きました

検察: さっきの挫滅について、覚えていますか

証人: はい

検察1: 子宮剥離の際にできたと

証人: はい

検察1: 証人は後壁内面に癒着の中に、二箇所、癒着を認められなかったところを記載しましたが、このところはどのようなふうになっているのですか

証人: 理由は二つあります、一つは、そこに癒着がなかったため剥離で胎盤でとられた可能性、二つは、癒着があったけれども深いところを剥離し、その部分に絨毛が残っていない可能性です

検察1: 今回の質問ではどちらですか

証人; 特定できません

検察1: 胎盤以外の場所について、絨毛について、顕微鏡的には違いがありますか

証人: 妊娠後期、滑平絨毛は退縮し、数が減り細胞が変性する。胎盤部の絨毛と形態が違う。

検察1: 退縮変性絨毛の呼び方が滑平か

証人: 数が少なくなり、絨毛はふつうは葡萄の房状だが、数が減りバラバラになり組織の中に埋もれる。核が変性し消失していきます。

検察1: 証人は証言の絨毛については、違いを意識していますか

証人; 線で結んだところは、かなり絨毛が密にあり、核が正常で活きが良いところを

裁判長: 以上ですね

弁護1: 今質問の部分、推測の部分について

裁判長: どうぞ

弁護4: 12月29日の病理診断について、診断書のときに、先生はプレパラートをつくって、顕微鏡のところは4つ、それだけで診断を書いたのですね

証人: そうです

弁護4: 子宮の肉眼的観察をしなかったのですか

証人: それは6分割する際に見たものです

弁護4: 6分割のとき、後壁、前壁をみていますよね

証人: はい

弁護4: 先生が考える検索をしたから診断をしたんでしょ、肉眼的観察が反映されていますよね

証人: はい

弁護4: なぜ肉眼的観察が必要ですか

証人: 胎盤組織が残っているかどうかを見ます

弁護4: 推測の根拠は病理診断としてプレパラート画像以外に何かありますか

検察: 異議あり、何の推測ですか

弁護4: 鑑定書について、病理所見以外には

証人: 肉眼的所見です。鑑定書では肉眼とプレパラートを含めて判断

弁護4: 今日の午前中はいずれ片方ですか

証人: 両方です

弁護4: 午前中で変わったのは、肉眼的観察も含めてですね

証人: はい、肉眼は前からいれています

弁護4: 鑑定は、胎盤の鑑定を依頼されていないことについて、癒着の範囲とバケツについて訊きます

弁護4: 臓器がバケツに入っていて復元したが、下の部位がなかった、間違いないと主旨で答えられたが、全部臓器を取り出していますよね。先生以外の人も臓器を入れていますか

証人: 通常のことですか

弁護4: 先生以外の人もひっくりかえす、それまでの間に先生以外の人がバケツをひっくり返して臓器を取り出したことがあったのですか

証人: 刑事さんが来たときに問題になるので調べたが、ないとのことだった

弁護4: 現在子宮はどう保管されていますか

証人: ヒストパックにホルマリンを入れて保管されています

弁護4: 胎盤には証人に関心がなかったが、依頼がなかったからですか

証人: 胎盤の形状については要求されなかった

弁護4: 鑑定事項に、胎盤の付着部位、位置及び面積も依頼事項にありますが

検察1: 異議あり、胎盤の付着部位です。

弁護4: 付着と癒着の違いがわからない検察官の異議ですね

検察1: 胎盤の面積を鑑定することはありえない

裁判長: 本人にきいてください

弁護4: 4番に面積形状、とあります。5に癒着胎盤の形状と胎盤の形や面積について検討するのも先生の事項。

証人: 胎盤の付着した位置・形状と考えました。検事とも確認し、そこまでは不要と考えた。

弁護4: 5は、癒着胎盤の深度・位置・程度です

検察: 異議あり、討議事項に入っていません

弁護4: 認識について尋ねています。胎盤について、鑑定事項について書いてあるのに、その認識はなかったということですね

証人: 付着ということで認識していました

弁護4: 付着は、のっている、癒着は病理学的に癒着する

検察1: 弁護側の考えをおしつけているものです

弁護4: いえ病理医であれば当然もっている能力についてです

検察1: 証人はすでに付着は現象、癒着は診断と使い分けています。

裁判長: 次の質問にいってください

弁護2: 黒で赤で囲んだところ、午前中ありましたね、撤回します。午前中の癒着胎盤が認められたところにつけられた範囲を示します。間違えました、甲6号証写真7、赤が癒着、顕微鏡的に絨毛と筋層が癒着した部位、先ほどの証言で午前中、癒着胎盤の範囲は鑑定時と違うと言われましたね

証人: そうです

弁護2: 写真7で、癒着があっても総合的に考えて癒着胎盤と診断できないところおあるということですか

証人: 絨毛がはがれて癒着がわからないところもあります

弁護2: 癒着胎盤と診断したが癒着とは標本上認められない部位もあるということですね

証人: そうです。絨毛がとれたところもある

弁護2: 追加説明書のところで示したが癒着と判断しないところがあるということですね

証人: 本日の標本でも、癒着あるところもないところもある。

弁護2: これで終わりです    (17:50)

裁判長: えっと、次回は、予定していた田中さんについて、尋問にしますが、証人の差し支えあり、7月20日になります。時間がかかっていますが、朝早くしたほうが良いですか

弁護: 検察は何分ですか

裁判長: だいたいオーバーしますからね

検察: 証人が遠方からなので、10時からで

裁判長: 270分ということで、四時間半で、何となるでしょう。