Annals of Internal Medicine5月5日号よりOriginal Researchを紹介します。
潜在性甲状腺機能低下症と甲状腺機能低下症状のある高齢者に対するL-チロキシン治療:無作為化試験の二次解析
L-Thyroxine Therapy for Older Adults With Subclinical Hypothyroidism and Hypothyroid Symptoms: Secondary Analysis of a Randomized Trial
https://annals.org/…/l-thyroxine-therapy-older-adults-subcl…
背景
L-チロキシン服用では潜在性甲状腺機能低下症(SCH)の成人患者の甲状腺機能低下症状は改善されない。しかし、治療前に症状による負担が大きい患者にはある程度有効だろう。
目的
SCHで症状による負担が大きい高齢者ではL-チロキシンによって甲状腺機能低下症状と疲労感が改善されるかを検討すること
研究デザイン
無作為化プラセボ比較試験TRUST(潜在性甲状腺機能低下症の未治療高齢患者での甲状腺ホルモン補充治療試験)の二次解析(ClinicalTrials.gov: NCT01660126)
セッティング
スイス、アイルランド、オランダ、スコットランド
被験者
持続性SCH(甲状腺刺激ホルモンTSH値4.60-19.9mIU/Lが3か月以上で持続し、遊離チロキシンFT4が正常値)で完全な転帰データのある65歳以上の患者638人
介入
L-チロキシンまたは偽装の用量調節でマッチングしたプラセボ服用
測定
症状による負担が大きい患者群(研究開始時での甲状腺機能低下症状スコア>30または疲労感スコア>40)と症状による負担が小さい患者群で、甲状腺関連QOL患者申告転帰問診票(Thyroid-Related Quality-of-Life Patient-Reported Outcome Questionnaire)の甲状腺機能低下症状スコアと倦怠感スコア(Hypothyroid Symptoms and Tiredness scores)(範囲、0-100;スコア高値であるほど症状が多いことが示唆される)の1年後の変化をL-チロキシン服用群とプラセボ服用群で比較した。
結果
132人の被験者が甲状腺機能低下症状スコア>30、133人が疲労感スコア>40であった。症状による負担が大きいループでは1年後の甲状腺機能低下症状スコアの改善はL-チロキシン服用群患者群(平均群内変化、-12.3[95% CI, -16.6~-8.0])とプラセボ服用者群(平均群内変化.-10.4[CI,-15.3~-5.4])で同程度であった。;調整後群間差は-2.0(CI,-5.5~1.5;P=0.27)であった。倦怠感スコアの改善もL-チロキシン服用群(平均群内変化、-8.9[CI, -14.5~-3.3])とプラセボ服用群(平均群内変化、-10.9[CI, -16.0~-5.8])で同程度であった。;調整後群間差は0.0(CI,-4.1~4.0;P=0.99)であった。研究開始時での甲状腺機能低下症状スコアや倦怠感スコアにはL-チロキシンとプラセボの投与の比較で効果が確認できなかった(P for interaction は甲状腺機能低下症状スコアで0.20、倦怠感スコアで0.82)。
研究の限界
Post hoc 解析であること、サンプルサイズが小さいこと、1年間の転帰データの患者だけの検討であること
結論
研究開始時にSCHで症状による負担が大きい高齢者では、プラセボと比較してL-チロキシンによって甲状腺機能低下症状や倦怠感は改善されなかった。
主要資金提供
ヨーロッパ連合FP7
PRC委員 川田秀一