ACP日本支部2019年次総会 黒川賞(研修医部門)を受賞して
岩国市立美和病院 内科 岡本麻衣
この度はACP日本支部2019年次総会において黒川賞を受賞することができ、大変光栄に存じます。全面的にサポートしてくださった方々に、この場を借りて心から感謝申し上げます。
研究の経緯
私は医学生時代から適切な抗菌薬使用について興味を持っていましたが、初期臨床研修医として臨床の現場に出てみると、理想通りにはいかない難しい場面にも遭遇しました。その理由の1つが、検体から起因菌を識別するのに数日かかることでした。起因菌を想定して抗菌薬を決定しても必ずしも想定どおりにいくとは限りません。経験的治療でも起因菌をカバーできていないこともあれば、必要以上に不適切な広域抗菌薬を使用してしまうこともしばしばありました。
研究の転機
研修医2年目の2018年7月、「FilmArray」という機械が当院で導入されることとなりました。これは従来の血液培養に比べ、迅速に起因菌を判別することのできる機械であり、FilmArrayを使用することで血液培養が陽性になった時点から約1時間で菌を同定することができます。。海外ではすでにこのFilmArrayが導入され、いくつかの研究では抗菌薬使用に対する有用性が示されていました。一方日本では使用経験がほとんどなく、また微生物検査の背景も海外と相違点があるため、これまでの異なる結果が出る可能性が考えられました。そこで今回、FilmArray使用による当院の抗菌薬使用の変化について研究しようと考えました。
今後の期待
今回の研究では、FilmArrayを用いることでMRSAに対する抗MRSA薬開始までの時間の短縮、さらにグラム陽性球菌菌血症群での28日生存期間改善を認めました。生存率改善については先行研究と異なる結果でありさらなる検討が必要と考えますが、今回の研究でFilmArray使用により日本でも抗菌薬の適正使用に役立つ可能性が示唆されました。さらなる研究が進み、ASPへの貢献につながることを願っています。