しんちゃん
情けは人の為ならず ~周りの助けがあったから今の自分がある~
私のがんが発覚したのは2009年1月で、当時21歳で大学4年生だった私は、大学院進学を控え、卒業論文に着手した直後でした。幸いなことに大学院の入試は終わっていたので、後は卒業論文を書き上げるだけという状況でしたが、これから本格的な化学療法を控えた状態で、自力で書き上げるのは困難でした。
そんな状況だったので、1年卒業を延期する方向で指導教官と相談しましたが、「チームで助けるので、何とか頑張ろう」と言ってくださいました。幸い、入院時点で卒業論文の骨子は作っていたので、実験結果のサマリー作成や病室では出来ない分析など、かなりの部分を同じテーマの先輩が助けてくれました。結果的に無事卒業でき、大学院にも進学できました。
大学院進学後は、追加で3カ月ほどお休みを頂きました。退院直後は歩行もままならず、しばらくリハビリ生活でした。しかし今思い返すと、この3カ月間はかつてないほど自分の人生の意味や、大学で学ぶことの意味について考えさせられ、復帰後の学びのモチベーションが大いに高まったと思います。他の人より約半年遅れてのスタートをリカバリーするのは大変でしたが、多くの方に支えられ、無事留年することなく修士課程を修了出来ました。
今振り返ると、留年せずに卒業出来たことは、就職活動やその後のキャリア形成で非常に大きかったと思いますが、それができた理由は確実に周囲のサポートがあったからです。病気になる前は、正直独善的な思いの強い私でしたが、退院後は周囲への感謝を忘れず、自分が助けられるときは常に助けよう、と思うようになりました。いつ何が起きるか分からないからこそ、助け合いの精神は重要だと思います。
2021年執筆